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ロボットの心と知性

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Academic year: 2021

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ロボットの心と知性

Mind and Intelligence of Robots

寺田 和憲

Kazunori Terada

岐阜大学

Gifu University

映画「2001 年宇宙の旅」に登場する HAL のように, 人は知的エージェントに対して意図を感じることがあ る.人はどのような対象に対して意図を帰属するので あろうか.マキャベリ的知性によると,人間の持つ高 度な知的能力は,複雑な社会的環境への適応として進 化したとされている [2].特に協力によってより高い利 益が得られる状況(非ゼロ和ゲーム的状況)において 他者を搾取する必要性と協力を装った搾取者を見破る 必要性の対立する二つの必要性が知能の進化的圧力と なったと考えられている.本稿では知性と心(意図帰 属)の関係を振舞いの多様性と振舞いの抽象化という 観点から形式化することを試みる.またロボットの社 会的位置づけについて議論する. 知性の属性の一つは,目的を達成するために,合理 性基準に基づき無限に代替能力を生成可能,すなわち 探索能力を有することである [1].この能力によって環 境適合的な新規手段を発見することができる [12, 16]. 個体内において行動多様性と合目的性評価機構を備え た生物は,世代間においてのみ多様化し合理性を外部 評価に委ねるエージェントよりも有利である.協力/競 合の両方において,そのような知的エージェントと共存 するための方法は相手の振舞いのモデル化において振 舞いの起源として抽象的な心的状態を帰属することで ある (mind-reading).行動抽象化の利点は抽象化の一 般的な利点である細部の無視による複雑さの軽減だけ でなく,将来の振舞を予測することにある [8, 5, 3, 6]. 意図帰属による振舞い予測のメカニズムは次の通りで ある [6].まず,エージェントは与えられた目的を達成 するための手段を合理性基準に従って探索するという ことを仮定する.この前提を受け入れると,環境の制 約,行為者の振舞い,行為終端状態を観察することで, 意図を推測することができる.なお,この制約,行為, 意図の関係についての「常識」は進化的に形成され,世 代間で伝達されている [4] ため,エージェント間で共有 されていると考える.一旦意図を理解することができ れば,新規環境に関する相手の信念を理解することで, 連絡先:岐阜大学工学部電気電子・情報工学科       〒 501-1193 岐阜県岐阜市柳戸 1-1        E-mail: [email protected] 相手が取るであろう行動を推測することができる. 心的状態の帰属による振舞い理解方法は表面的な振 舞い(入出力関係)を法則や統計的性質によって理解す る戦略 (behavior-reading) と比較される [5, 21, 13, 3]. 前者は進化的にも発達的にも後者よりも後に発現する ためにより高度な認知能力と考えられている.機械に 対して心を感じてしまうという研究が多数あるが,法 則性による振舞い理解戦略は機械に対する振舞い理解 戦略として最も適している [5].しかしながら,法則性 による振舞い理解戦略を協力/競合環境(社会的相互 作用)に適用することは困難を引き起こす.協調作業 においては,共有する目的を達成するための代替手段 の生成によって相手を補助できなければ,目的が達成 できない.また,表面的には異なる発話に対して単一 の意図を割り当てなければならない語用論的理解も困 難になる [17].さらに,悪意を持った他者を識別でき なければ容易に搾取されてしまう. 協力者と搾取者が混在している社会においては,例 え騙しが意図的に行われていないとしても [18],観察 者にとっては詐欺師というラベル付けが可能であるこ と,すなわち騙す意図の帰属が可能であることは重要 である [20, 7].競合状態において,一旦相手が敵対的 だと分かるとそれに対抗した戦略をとることができる. 混合戦略である [19, 11, 9].無限に代替手段を生成可 能な合理的搾取者に対抗する最善の戦略は混合戦略で ある.それ以外のいかなる純粋戦略も洗練された行動 モデル化能力のある他者に対しては無意味である.行 動モデル化戦略者同士の軍拡競争は結局混合戦略に落 ち着く. 上述の論理に基づき我々は「心」を観察者が知的な相 手の振舞いを理解するために獲得した行動モデル化戦 略だと考える.特に競合状態においては自分の知的レ ベル(行動理解能力)を上回る相手に対して意図を帰 属することは重要である.そのような観点から,我々は 「人は競合状態において,例え相手エージェントが騙し (に見える)行動を生成したとしても,相手が知的でな いエージェントの場合には人は騙しの意図を帰属しな い」という仮説を我々の開発した競合ゲーム,ボーナ ス付きマッチングペニーゲームを用いて検証した [23]. 人工知能学会研究会資料 SIG-SLUD-B501-03 − 13 −

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この実験において我々は明らかに知的に見えないエー ジェントとしてクマのぬいぐるみロボットを用いた.ク マロボットはあからさまに,誤信念とそれに基づく不 利益行動(クマロボットに対して利する行動)を誘導 するための振舞い(騙し行動)を行った.この実験で は behavior-reading による相手戦略への適応が高得点 に結びつく設定であったのにもかかわらず,同様の振 舞いを人の対戦相手が行った場合には実験参加者は混 合戦略を採用すなわち mind-reading を行ったのに対し て,クマロボットに対しては behavior-reading を行っ た.この実験結果によって,競合状態においては相手 が自分の能力を上回る知的な存在だと思うかどうかが 心を感じるための要因の一つになると言える. では,協力/競合の混在する状況ではどうであろう か.我々は,囚人のジレンマと同様の非ゼロ和ゲーム で,協力/裏切りの宣言がインプリシットな 1, 2, 5 じゃ んけんゲームを用いて検証した [22].このゲームでは 実験参加者が相手に対して搾取的態度を取るのか協力 的態度を取るのかの判別ができる.対戦相手として人, コンピュータプログラム,アンドロイドロボットを用 いて実験を行った.実験の結果,人はコンピュータプ ログラムとアンドロイドロボットに対してはともに搾 取的な態度を取ることがわかった.搾取的な態度を取 るということは,behavior-reading を行うということ である.さらに,社会的順位として下位にみなした行 動だと考えることができる.この結果は協働環境にお いては労働者がロボットを心を持った社会的存在とし て捉えるという結果 [15] と照らし合わせると興味深い. 本稿では,進化心理学の観点から知性と心の関係に ついて形式化を行い,それにもとづき,ロボットが社 会的にどう位置づけられるかについて議論した.この 議論は将来ロボットが真に人を凌駕する知性を獲得し た場合に人がロボットに対してどのような態度を取り, 社会的にどう位置づけるかについて考えるための一つ の材料になると考える.

謝辞

本研究は JSPS 科研費 25119502,26118005,15H02735 の助成を受けた.

参考文献

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