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学習内容の情報構造化と構造操作タスクの設計に基づくModerately-definedな問題による教科学習におけるプログラミング的思考の部分タスク化

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学習内容の情報構造化と構造操作タスクの設計に基づく

Moderately-defined な問題による教科学習における

プログラミング的思考の部分タスク化

Computational Thinking Exercise in School Learning with

Moderately-defined Problem based on Information Structuration of

Subject Matter and Design of Structure Manipulation

雄介 平嶋 宗

Yusuke HAYASHI and Tsukasa HIRASHIMA

広島大学大学院工学研究科

Graduate School of Engineering, Hiroshima University

Abstract: Recently, computational thinking and logical thinking have attracted attention as required ability in 21st century and incorporation of them into subject learning in school. This paper proposes an approach to incorporate computational thinking into subject learning with the design of tasks of abstraction, evaluation, algorithm, decomposition, and generalization in subjects. This approach is based on Information structure open approach and this paper discusses how the approach contribute to incorporation of computational thinking into subject learning in school with an example.

1.

はじめに

近年,世界的に「コンピュテーショナル・シンキ ング(計算論的思考)」[21]という概念が注目され, 日本でもコンピュテーショナル・シンキングや論理 的思考をベースとした「プログラミング的思考」が 今後求められる能力として学校教育の中に取り入れ ることが求められている[8].この「プログラミング 的思考」とは,「コンピュテーショナル・シンキング」 の考え方を踏まえつつ、プログラミングと論理的思 考との関係を整理しながら提言された定義である. ベースとなっている「コンピュテーショナル・シン キング」は,単語としてはパパートが最初に使った 言葉であるが,概念的にはそれよりも古いものであ るといわれている[18].ただし,現在の注目を作った のはWing であり,[21]の中で近似や再帰的思考,抽 象化,分解,冗長性,障害抑制,誤り訂正,ヒュー リスティックな推論などがその代表的思考として挙 げている.ここで重要なのはコンピュータ科学者の ように問題を定義して解くということであり,プロ グラミングを直接的に指すものではないと明確に述 べている[21].一方で,この定義は曖昧であり,その 効果も保証されていないとの批判もある[18].その ため,コンピュテーショナル・シンキングの学習の ための具体化の動きは,世界各国で行われているが, 統一されたものではなく,明確な定義とその学習の 実現を模索している状況である[17].日本における プログラミング的思考もその流れの一つである.こ の特徴の一つは,名称に「プログラミング」とある が,プログラミングを他の科目から独立に扱うので はなく,教科の中で「プログラミング的」に思考さ せるということである[8]. 「コンピュテーショナル・シンキング」への注目 の下で様々な事例も提案されており,scratch などの 子どもが扱いやすい,ビジュアルなプログラミング 環境および実行環境を利用したものが多い[20].こ のような環境を使うことは,環境自体は一般的なも のであり,様々な科目で活用可能であるというメリ ットがある.しかし,その一方で,科目の内容をプ ログラミング環境に合わせないといけない.つまり, 教科の内容をビジュアル的であろうと,変数や関数 といったプログラミングの世界に写像する必要があ り,教科内容についての思考を実行して検証できる というメリットの代わりに,写像のコストを要求す るものとなっている. 筆者らはこれまで,学習対象を構造化し,その(再) 構成によって学習活動を行うという情報構造オープ ンアプローチ[16]に基づいて,単文統合型作問環境 モンサクン[23][24]や Kit-build 概念マップ[13][14], 人工知能学会研究会資料 SIG-ALST-B508-03

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Error-based シミュレーション[9][10]などの学習環境 を設計,開発し,実験や実践を通じて効果を実証し てきた.これらの環境の特徴は,学習対象の内容に 基づいて部品を作り,それを具体的で外在的な作業 として学習者に組み合わせさせると共に,システム はその構造を診断してフィードバックできるという ことである[16].これは,プログラミング環境を利用 した場合に,そこで用意された命令を学習者が組み 合わせ,システムの実行結果が返ってくる,つまり, 組み合わさせる,フィードバックを返すということ では一緒であるが,学習者に教科の内容を命令に変 換する,実行結果を科目の内容として解釈させると いう写像を課さずに行わせる点で異なる. 本稿では,筆者らの情報構造オープンアプローチ をコンピュテーショナル・シンキングの解釈の一つ である抽象化,評価,アルゴリズム化,分解,一般 化といった基本タスクをそれぞれ設計することで, 教科学習の学習内容に合わせてプログラミング的思 考を学習する手法について提案する.

2.

プログラミング的思考とコンピ

ュテーショナル・シンキング

「プログラミング的思考」とは,自分が意図する 一連の活動を実現するために、どのような動きの組 合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号 を、 どのように組み合わせたらいいのか、記号の組 合せをどのように改善していけば、より意図した活 動に近づくのか、といったことを論理的に考えてい く力とされる.この定義は,前述のように「コンピ ュテーショナル・シンキング(計算論的思考)」の考 え方を踏まえつつ、プログラミングと論理的思考と の関係を整理しながら提言されたものである. コンピュテーショナル・シンキングについては, いくつかの定義があり,一意に定まっているもので はない.代表的な定義としては,Wing[21][22]による ものやBrennan と Resnick[2]によるものがある. Wing による定義では,コンピュテーショナル・シ ンキングの核となる思考であり,しかし,一番難し いのは,問題の抽象化,つまり,問題の適切な表現 方法を選び,問題を解きやすくするために問題の適 切な側面だけモデル化することが挙げられている. そして,それを元に処理を考えたり,ヒューリステ ィックな推論で解を発見する.これを基本としてコ ンピュテーショナル・シンキングが何であり,何で は無いか,なせ必要なのかを例を挙げて示している. Brennan と Resnick による定義では,コンピュテー ショナル・シンキングをScratch と対応づけたコンテ キストで述べている.しかし,根本にあるのはコン セプト,プラクティス,パースペクティブの3つで あり,Scratch に限定されるものではない.コンセプ トは,コンピュテーショナル・シンキングで用いる 基本概念を示している.これは逐次処理,ループ処 理,条件分岐といった制御構造やそれを構成する処 理やデータである.これらを使って,対象をモデル 化することがコンピュテーショナル・シンキングで 求められる.プラクティスはその実践方法であり, デバッグをするとか、他者の作ったコードを拝借し て作り変えたりすることを通じて,コンセプトで挙 げられた基本概念をどのようにして対象に適用する かを学ぶかについて述べている.パースペクティブ は,価値観を提供するものであり,問題を表現でき ること,共有できること,質問できることなど,コ ンピュテーショナル・シンキングの意義を示してい る.

Wing による定義と Brennan と Resnick による定義 を比較すると,Wing による定義は Brennan と Resnick による定義におけるコンセプトとパースペクティブ を包括的に述べており,多くは共通すると考えられ るが,プラクティスについては触れていないと言え る. 教育の文脈では,これらのコンセプトやパースペ クティブを受け入れた上でどう実践にブレイクダウ ンするかが重要な問題であり,プラクティスについ ての知見をまとめることが重要であると考えられる. 太田らは英国,オーストラリア,米国での全国レベ ルでの情報教育カリキュラムを調査しており[17], これらの国で実際に行われているのは,コンピュテ ーショナル・シンキングを中核とした独立した教科 であるコンピューティング(computing)やテクノロジ ー(technology)としての実施であり,その中で実践と してプログラミング環境を用いることを想定してい る.コンセプトに関しては,細かな点では違いはあ るが,基本的には共通で,抽象化による問題の定式 化,その上でのアルゴリズムの検討(解法の記述か ら,問題の分割,解法の一般化や比較,変更などま で)を含んでいる. 一方,日本では,独立した教科ではなく,各教科 の中でプログラミング的思考を取り入れ,実践して いくことを目指して,指針が提案されている[8].し かし,そこで提案されている例は,プログラミング との関連性を学ぶことの重要性や,プログラミング を取り入れるだけではプログラミング的思考の育成 にならないことを示しているが,どのようにすれば プログラミング的思考の育成になるかは明確に示さ れてはいない. 例えば,教科との関連について,以下のような記 述があるが,計算という抽象化された世界は要素や

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処理が明確にされており,コンピュテーショナル・ シンキングにおけるコンセプトと対応させやすいこ とは示されているが,理科ではパースペクティブ的 なことしか述べられていない. 小学校で筆算を学習するということは、計算 の手続を一つ一つのステップに分解し、記憶し 反復し、それぞれの 過程を確実にこなしていく ということであり、これは、プログラミングの一 つ一つの要素に対応する。つまり、筆算の学習 は、プログラミング的思考の素地を体験してい ることであり、プログラミングを用いずに計算 を行うことが、プログラミング的思考につなが っていく。 (理科での)実施に当たっては、プログラミン グを体験することが、理科における学びの本質 である、自然事象について問題を見いだし、よ り妥当な考えを導き出す学習過程として適切に 位置付けられるようにすることとともに、子供 一人一人に探究的な学びが実現し、一層充実す るものとなるように十分配慮することが必要で ある。 何らかのプログラミング環境でのコーディングを 前提とした学習では,学習対象を理解し,データ構 造とアルゴリズムを記述することを用いるプログラ ミング環境での要素に合わせて抽象化する必要があ る.つまり,学習者に用いることができるデータ型 や処理単位,実行できる制御構造(逐次,ループ, 条件分岐など)に合わせて,学習対象をうまく抽象 化し,記述実行できるようにすることが求められる. しかし,Wing が述べているように抽象化は一番難し いとされるタスクであり[22],それと同時に慣れな いアルゴリズムとデータ構造という枠組みをベース に抽象化するのは,とても負荷が高いと考えられる. 小林と兼宗は,教科におけるコンピュータを使わ ない(アンプラグドな)実践例をまとめている[5]. これらの実践では,教科の内容を教師が一部または 授業で利用する範囲全てを抽象化し,その上で学習 者に必要なデータや処理を作らせたり,解法をアル ゴリズムとして記述させる.これは一般的なプログ ラミング教育の想定とは違い,教師が部品を大なり 小なり用意することで学習内容の抽象化を学習者が すべてする必要は無く,その上でアルゴリズムを記 述するというところにより多くの認知的リソースを 活用できると考えられる.しかし,コンピュータを 使わないことで,その実行や評価については個々の 学習者が実施することが難しく,自学自習や多くの 課題に取り組むことは難しい. これらの取り組みで求められているのは,一般的 に ill-defined とよばれる問題に取り組ませることで あると,筆者は考える.例えば,Wing はコンピュテ ーショナル・シンキングの代表的な思考として,抽 象化とヒューリスティックな推論を挙げていたり [21],プログラミング的思考が主張される背景の一 つとなっていると考えられる 21 世紀スキルの柱の 一つである「協調的問題解決」の中で「問題解決の ために問題の構造や解決の手続きを見いだす力」が 挙げられている[1].ここでは,これを学習者が自分 で対象をモデル化し,その上で解法を考えると解釈 し,問題と解法が明確に定義されているwell-defined な問題ではなく,問題と解法を自分で定義しなけれ ばならない ill-defined な問題に取り組むことが求め られていると考えられる.つまり,単なる宣言的知 識や手続き的知識の暗記によって対応できるもので はなく,対象の理解と思考が求められる問題に取り 組むことを求め,それができるように知識を獲得す ることを目指していると考えられる.

3. ill-defined な問題を設計する

情報構造オープンアプローチ

3.1. moderately-defined な問題

プログラミング的思考およびコンピュテーショナ ル・シンキングに求められることが ill-defined な問 題に取り組むことであるという考えを述べたが,ill-defined な問題はそのままでは基本的に解くことが できない.よって,与えられた問題を自分が取り組 みやすい具体的な問題に置き換える定式化をし,そ れを実際に解決することになる[18]. 問題の定義には様々なものがある[7]が,ここでは Jonassen[4]や Laxman[5]を参考に,対象(問題を設定 する領域)と問題の定義にill と well があるし,さら に問題の定義を設定と解に分けて,表1 のように定 義する. 表1 問題の分類 学習対象 問題 設定 解 要素や操作 の定義 解を求めれる 問題空間の 設定 解が決定論的かつ 一意に求まるか ill × well ○ ill × well ○ ill × well ○ 学習対象は,その問題が扱う内容の領域とそのモ デル化に対応する.問題の定式化は一般的にその領 域にで現れる要素とそれに対する操作の定義として

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行われる.これらの定義の有無で学習対象の定義の well/ill が決まる.問題の設定は,学習対象の定義に 基づいて考えられる要素の組み合わせとしての状態 と操作による状態遷移で構成される問題空間を設定 することである.問題空間が設定できているかどう かでwell/ill が決まる.解は,解がどのようなもので, どのように求められるかを定義するものであり,決 定論的に求めることができ,一意に決まってしまう divergent なものか,そうではなく解法や解自体が一 意に定まらないものかでwell/ill が決まる. この定義の上で,学習対象として要素や操作の定 義がされていない場合(不可能なときと定義してい ないときの両方を含む)には,完全にill-defined な問 題とし,学習対象から問題の設定,解法まですべて 明確に定義されているときに well-defined な課題と する.この定義で示したいのは,上述のように ill-defined な課題に取り組むのことが求められている が,完全に ill-defined な課題に取り組むことを求め ているわけではなく,実質的には,学習対象や問題 設定が定式化された well-defined なもので,解法が ill-defined なもの,つまり,決定論的ではなく発見的 に解を求めないといけない問題,問題に取り組むこ とを求めていると考えられる. そこで,本研究では表1 のグレー部分に当たる, 学習対象と問題の設定はwell-defined であるが,解法 は一意に決まっていない ill-defined な問題に注目す る.そして,うまくこのような問題にすることで, 学習者が学習対象の定義を考え,その上で解を見つ け出す活動をさせることを期待する.このような well-defined な部分と ill-defined な部分の両方がある 問題をここではmoderately-defined な問題とよぶ.

3.2. 情報構造オープンアプローチ

本研究では,学習として問題に取り組むことのゴ ールが解を得ることだけではなく,学習対象の理解 を深めることであるとし,そのための問題として moderately-defined な問題に注目する.そして,これ を定義するためのアプローチとして情報構造オープ ンアプローチ[16]を位置づける. 問題解決の全プロセスを挙げると,前述のように 定式化と解決の2 つのフェーズが必要であり,これ は必要に応じて循環的に行われる.しかし,Wing が 抽象化は一番難しいとされるタスクである[22] と 述べているように,学習者が自分で問題を定式化, つまり学習対象や問題の設定を定義することは難し い[4].よって,情報構造オープンアプローチでは, 教授者が学習対象を要素とその関係,関係を設定, 変化させるための操作によって構成される情報構造 として定式化し,学習者がその構造を操作すること を問題とする. 情報構造オープンアプローチによる問題の特徴は, 学習者が何らかの思考を通じて解を求められればよ いというものではなく,学習対象そのものについて 考えないと解が求められないことである.そのため に,学習対象をwell-defined なものとして明確に定義 し,それに含まれる要素や操作を部品として学習者 に提供する,つまり,オープンにすることで,well-defined な問題設定で ill-に提供する,つまり,オープンにすることで,well-defined な解の定義をするこ とを提案している. 問題の定式化のために学習対象をモデル化して well-defined にすること自体は新しいことではない. 一般的には,問題を作るというのは,その学習対象 のモデルに含まれる要素と操作を使って問題空間を 設定し,学習者にその問題空間の中で解を求めさせ ることになる.一方,情報構造オープンアプローチ では,学習対象の定義であるモデルを構成する要素 と操作を部品として使って何らかの条件を満たすも のを作り出させるということを要求するタスクを問 題とする.こうすることで,容易に学習対象と問題 設定がwell-defined で解が ill-defined な問題を構成で き,問題自体が学習対象を考えるタスクを本質的に 含むことになる. その具体例は次章で示すが,このようにして問題 を設定すると,問題空間の一つ一つの状態が学習対 象の要素と操作で構成されるものとなり,その構成 を変更することが,その問題における操作となる. つまり,学習者が解く問題で行うタスクが,どんな 学習対象でも「学習対象の中で成立するもの」を状 態として,それを変更するという操作となり,様々 な学習対象に適用できるものとなる. 学習対象を情報構造としてモデル化することの利 点は,知的学習支援システムの研究でこれまでされ てきたように,コンピュータが学習者の作ったもの を評価し,フィードバックを返すことも可能にする. 情報構造オープンアプローチでは,上述のように, 要素や操作の構造として,学習対象の中で成立する 「もの」を作らせることを問題とする.このとき, 情報構造に基づいて,学習者が作った「もの」がそ の学習対象の中で妥当であるか,要求される条件を 満たしているかを診断することができる.さらに, 単に判定するだけではなく,学習者が作ったものが 妥当ではない・要求されたものと違う場合に,妥当 なもの・要求されるものとの差分を抽出でき,その 情報を使ってのフィードバックが可能となる. もちろん,情報構造オープンアプローチは教授者 側で学習対象の抽象化から,システム化する場合に は実行環境の構築までを行う必要があるため,コス トがかかる.それに対して,一般的なプログラミン

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グ環境の利用では,実行環境を構築するコストはか からないところにメリットはある.ただし,その場 合には,学習対象の抽象化を,プログラミング環境 の制約の中でデータ構造やアルゴリズムへの写像す る必要があり,教授者や学習者が学習対象とプログ ラミングの2 つを理解する必要性が生じ,その分の コストがかかる.アンプラグドであれば,利用する プログラミング環境に左右されずに,教師がプログ ラミング的思考に合わせて学習対象を抽象化した要 素を用意することができ,学習者が直接的に扱うこ とができる代わりに,実行や,特に評価が難しい. しかし,これら3つのアプローチはどれが必ず最善 というわけではなく,教師が教材開発にかけること ができるコストと学習者に求める目標の設定や学習 時の負担のトレードオフであると考えられる.

4. Moderately-defined な問題とし

ての算数文章題の作問の定義例

筆者らは,一つの四則演算だけ含む式として立式 して解ける算数文章題を3つの単文の組み合わせと して定式化した三文構成モデル[11]と,そのモデル に基づく単文構成型作問環境モンサクン[23][24]を 提案し,その効果を実験および実践を通じて示して きた.これは,上記のような算数の文章題を学習対 象とし,それを構成する要素と操作を三文構成モデ ルとしてモデル化した上で,学習者にそれを使って 算数文章題を作成することを課す問題を設計してい る.なお,本事例は,算数文章題という「問題」を 作成する「問題」を扱っており,それには2 種類の 「問題」が出てくる.これらを区別するために,こ の例で学習者が直接的に解く,後者の方を「問題」 と表記し,前者を「文章題」と表記することで区別 する. 三文構成モデルは学習対象である文章題をモデル 化したものであり,学習対象のwell-defined な定義と している.3.2 節で述べたように,情報構造オープン アプローチでは,学習対象の定義は教授者(学習提 供者)側で用意してしまい,それに含まれる要素と 操作を思考の部品として学習者に提供する.この三 文構成モデルの構成部品を使って文章題を作成する ということを問題の設定としてしまうことで well-defined な問題設定で ill-well-defined な解を定義した問題 を設計する.問題設定がwell-defined であるかは,問 題設定として学習者に使える要素と操作を制限した 場合には,ill-defined(解が求められない問題空間) になってしまう場合もあるので,設計時に注意が必 要である.このようにして作問という問題を設定す ることで,学習対象と問題の設定がwell-defined で解 がill-defined な moderately-defined な問題として定義 できる.

4.1. 学習対象の定義:三文構成モデル

三文構成モデルでは,例えば, という文章題を のように,必ず3つの単文で構成することとする. さらに,各単文が持つ要素として文の種類と構成要 素がある. 単文の種類は,物の数量を表す存在文か,物の数 量の変化か二つの物の関係を表す関係文に分けられ る.この例では,「リンゴが3個あります」と「ミカ ンが2個あります」が存在文であり,リンゴとミカ ンの個数を表している.ただし,これだけでは演算 は成立せず,「リンゴとミカンは合わせて?個ありま す」という関係文があることで,「2+3=?」とい う式を立式することができる.この式ができるのは, 「リンゴの数」+「ミカンの数」=「リンゴとミカ ンを合わせた数」として考えられるから成立するも のである. 単文の構成要素としては,オブジェクト,数量, 述語がある.例えば,「リンゴが3個あります」では オブジェクトが「リンゴ」,数量が「3」,述語が「あ ります」となる.述語は単文の種類と関係があり, このようにある単一の物の数量を表す述語の場合は 存在文となる.関係文の場合は「合わせて〜個あり ます」といった2種類の物の関係を表す述語や「〜 個もらいました」といった単一の物の数量の変化を 表す述語になる.数量は,オブジェクトの数量を表 し,「リンゴが3個あります」では数量として「リン ゴの数」が「3」であることや,「リンゴとミカンは 合わせて?個あります」では「リンゴとミカンを合 わせた数」が「?個」で未知数であることが示され ている.これらのオブジェクト,数量,述語という 構成要素の組み合わせによって,上記の文章題では, 「リンゴとミカンを合わせた数」に対して,「リンゴ の数」と「ミカンの数」を扱っているから文章とし て成立するが,「ブドウの数」と「ミカンの数」では 成立しない.このように3つの単文で構成される物 語全体でまずはオブジェクトと数量,述語が整合し ていなくてはならない. また,文章題は計算できることが保証されなけれ リンゴが3個,ミカンが2個あります.リンゴ とミカンは合わせて何個ですか? リンゴが3個あります. ミカンが2個あります. リンゴとミカンは合わせて?個あります.

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ばいけなく,数量の中の数を使って妥当な式が立て ることができないと,単なる物語としては成立する が,文章題として成立しない.上記の例であれば, 「2+3=?」という式と対応づけることができ,? =5であれば成立する.しかし,以下のような問題 文があった場合は成立しない. この場合,物語の意味から「3−5=?」という式を 対応づけることができるが,?を満たす数は設定で きない1. 以上のことから,三文構成モデルでは,文章題の 構成を大きく単文とその組み合わせとし,さらに各 単文の構成をオブジェクト,数量,述語の組み合わ せとすることで,述語による単文の種類の構成(存 在文2つ,関係文1つ),オブジェクトの整合性,数 量の整合性の3つを満たしていないと文章題が成立 しないことを定義している.

4.2. 設定・解の定義:単文統合型作問

三文構成モデルに基づくと,文章題を「解く」と いうのは文の中にある数量から数値を取り出し,単 文の種類とオブジェクトで示される数値の関係を使 って立式し,未知数を求めること,文章題を「作る」 というのは単文の種類とオブジェクト,数量を決定 して3つの単文を作り,式と対応付く組み合わせに することとして定式化できる. 1 特に,ここでは小学校レベルの算数なので負の数は扱わない という前提がある 文章題を解くことは,特に小学生レベルでは,学 習対象,問題の設定および解法のすべてが well-defined な問題になり,解法の理由の理解の有無に関 わらず,決められた手続きを実行することで解が得 られてしまう問題もできてしまう.一方,算数文章 題を作るということを考えると,図を使って誘導は したりするが,学習者にとっては何を考えたら良い か分からない学習対象,問題の設定および解法のす べてがill-defined な問題になってしまうことが多く, 例えば,作成した問題が解けないものであっても, 解けないことは明示化できるが,どこをどう直すか を示すことは難しい.三文構成モデルをベースにす ると,算数文章題が成立する(解が導けるものにな っている)ときには,単文の構成(存在文2つ,関 係文1つ),オブジェクトの整合性,数量の整合性の 3つを満たす必要があることが示せ,それに基づい て学習者が作った問題を診断できる. 筆者らは,三文構成モデルに基づき,学習者が提 示された単文を組み合わせることで算数文章題を作 成する単文統合型作問[24]を提案している.これは 学習者が自由に文章を作って作問するという一般的 な形式における,どのようなものを登場させるか, どのような言葉を使うかといった表現上の負荷を排 除して,文章題の成立条件を満たすことを考えさせ ることに集中させる働きを持たせている.これによ って,作問というタスクを単文の組み合わせとして 行為と条件が明確なタスクとして well-defined な問 題設定にし,学習者が考えている学習対象の文章題 の性質に基づいて解を生成し,その考えを検証する リンゴが3個あります. リンゴを5個食べました. リンゴが?個あります. 図1 モンサクンでの作問画面

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という発見的に解を求める ill-defined な解を持つ moderately-defined な問題にできる.

4.3. 単文統合型作問環境:モンサクン

単文構成型作問の演習環境としてモンサクンが開 発されている[23][24].モンサクンでは,提示された 単文を組み合わせて作問することに加えて,学習者 に作成させる問題を式と物語種類で条件付けした上 で,システムが正誤判定し,フィードバックを返す ように設計している.これは正解が一意に決まる問 題としているが,解自体は組み合わせの中から発見 的に見つけなければならないため,ill-defined な解で あるといえる.また,問題の設定として,提供する 文の組み合わせや条件付けを変えることによって, 複数の正解を持たせることもでき,他の種類の ill-defined な解を持つ問題を提供する単文構成型作問 環境を構成することもできる 図1にモンサクンの動作画面を示している.左上 に,学習者が作成を要求される算数文章題の条件が 示されており,学習者は右側に配置されている単文 カードの中から3 つを選び,左側の黒板部分に並べ ることにより,課題の要求に合った問題を組み立て る.提示される単文には正解に使われる以外のダミ ーも含まれており,この中から要求を満たす組み合 わせを見つけることがモンサクンで学習者に求める タスクとなる.現状のモンサクンでは,学習者に提 示される単文は6 つであり,その組み合わせは 2 項 演算を対象とした文章題の解決の際の解候補の組み 合わせよりもかなり多くなり,組み合わせの違いを 考えないと正解に辿り着くことは難しい. 三文構成モデルに基づいて,問題の設定自体を学 習者に変更させる演習も定義することができる[1]. 図2,3 に作問の自己説明のための問題変更演習の画 面を示している.この演習では,作問した後に使わ なかった単文を利用して,その単文を使うとしたら, どのような条件や提供する単文構成になっていれば, 作問できるかを考えさせる.例えば,図2 の右下で はカードを変える操作をするためのインタフェース があり,ここで指定することで単文のオブジェクト や数量,述語を変更することができる.また,図3 は 条件を変えるインタフェースを示しており,式と物 語種類を変えることができる.ここでは,学習者に 作問問題の解を求める思考を求めるのではなく,作 問問題の設定を妥当にする思考を求めることになる.

5. おわりに

本稿では,プログラミング的思考のベースとなっ ているコンピュテーショナル・シンキングの定義を 参照しながら,求められている思考に必要な問題の 定義としてmoderately-defined な問題を示し,情報構 造オープンアプローチによってそのような問題を設 定できることを主張した.情報構造オープンアプロ ーチでは学習対象を情報構造としてモデル化し,そ の構成要素を学習者に提供することで,moderately-defined な問題を定義する枠組みとなる.それを算数 文章題の三文構成モデルと,それに基づく単文構成 型作問環境モンサクンを例として示した. プログラミング的思考で求められているのは,コ ンピュテーショナル・シンキングにおける対象の抽 象化から,自分が求めたいことを問題として設定し, その解を発見的に求めるところまですべてを学習者 が行うことであると考えられる.それに対して,情 報構造オープンアプローチでは,対象の抽象化は学 習を支援する教授者側で必ず行い,その定義の下で 発見的に解を求める問題の設定を教授者が定義して 学習者に問題を提供したり,学習者自身に問題の設 定を考えさせることをする.この意味で,情報構造 オープンアプローチでの問題は学習者にプログラミ 図2 問題変更演習の画面 3 条件を変える

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ング的思考を部分的に行わせていると言える. 今後の課題としては,多くの教科で具体的に情報 構造オープンアプローチの手法を適用して,その有 効性を検証すると共に,適用する方法論を確立して いきたい.

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[22] Wing, J.M.: “Research Notebook: Computational

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