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<論文>図地分化と容器のメタファに見る「自己」の概念研究(その1)--英語、スペイン語の異言語対照を中心に

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Academic year: 2021

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(1)文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. 第2号/2011.3. 図地分化と容器のメタファー に見る 「自己」の概念研究(そ の1) 一 英語 、スペイン語の異言語対照を中心 に一. 福. 森. 雅. 史. 1、 は じ め に 次 の(1)に示 され てい る よ う に、 我 が 国で 外 国語 を学 んで い る学 生 の 関心 は 「 外国 語 を 自 由 に話 した り聞 い た りで きる よ う に な る こ と」 にあ る よ うに感 じ られ る。. (1)こ. れ は 一 般 的 な 風 潮 か と 思 い ま す が 、 学 生 た ち は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの 道 具. と して 英 語 を学 びた い とい う要 求 が 強 い よ うで す 。 世 問 で もよ く 「使 え る英 語 」 と か 「役 に 立 つ 英 語 」 と い う よ う な 言 葉 が 聞 か れ ま す が 、 い っ た い 「使 え る 」 と か 「役 に 立 つ 」 と は何 を 意 味 す る か は こ こ で は さ て お き 、 学 生 た ち の 間 で は 、 他 の 人 が 話 し て い る 英 語 を 聞 き取 りた い 、 ま た 、 自 分 が 思 っ て い る こ と 、 考 え て い る こ と を英 語 で 話 せ る よ う に な りた い と い う 希 望 が 強 い よ うです 。 一 永 松(1999:144)(下. 線 筆 者). そ の こ とが 関 係 し て い る か 否 か は 定 か で は な い が 、 現 在 の 外 国 語 教 育 に 目 を 向 け て も、 以 下(2)に 示 さ れ る よ う に 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン能 力 の 向 上 を 目 的 と し た 授 業 が 重 要 視 さ れ て い る と言 え る 。. (2)従. っ て 、 現 代 の 外 国 語 指 導 者 は 異 口 同 音 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン能 力 育 成 の た め の 指 導 、 つ ま りCommunicativeLanguageTeaching(CLT)を. 代表的 な. 教 授 法 と して あ げ る で あ ろ う 。 一 津 波(2003:211). 確 か に 、 こ の よ う な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 中 心 と した 学 習 指 導 法 は 海 外 に お い て も. 一166一. 111>.

(2) 図地 分化 と容器 のメタ ファーに見る 「 自己」の概 念研究(そ の1)一. 英 語、スペ イン語の異言 語対照 を中心に一. 福森. 行 な わ れ て い る も の で あ り、 外 国 語 を 習 得 す る 際 の 必 要 条 件 の 一 つ で あ る こ と は 言 う まで もな い 。 し か し な が ら 、 現 実 に 日本 の 外 国 語 教 育 で 行 な わ れ て い る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 授 業 に 目 を 向 け れ ば 、 下 記(3)に も見 ら れ る よ う に 、 名 ば か り の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 授 業 が 多 数 存 在 して お り、 そ う し た 学 習 指 導 を 行 な う こ と で 、 本 当 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンが で き る だ け の 外 国 語 運 用 能 力 が 身 に つ く と は 到 底 考 え ら れ な い 。. (3)現. 在 行 な わ れ て い る オ ー ラ ル ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 指 導 に は 単 な る 「お 遊 び 」 と受 け 取 れ な く も な い も の が 多 く み ら れ る か らで あ る 。 ま ず 、 イ ン プ ッ トに 関 す る 配 慮 が ほ と ん ど な さ れ て い な い 場 合 が 多 い 。 ト ピ ッ ク だ け 与 え て 、 「さ あ 、 話 し合 っ て み よ う 」 と い う ふ う な 活 動 の さ せ か た は 少 な く な い 。 あ る い は 配 慮 さ れ て い る に し て も極 め て 不 十 分 な 場 合 が 多 いo…. 楽 し さ を 強 調 す る あ ま り、 楽 し さ だ け に な っ て い る 場 合 も見 受 け ら れ る 。 楽 し さ に もい ろ い ろ あ っ て 、 理 解 や 進 歩 を 意 識 で き る 楽 し さ で な い と、 最 初 の う ち は 喜 ん で い た 生 徒 で も 「飽 き 」 が 来 て し ま う こ と に な りか ね な い 。 一 金 谷(2002:135-136)(一. ま た 、 英 語 を 含 む ヨ ー ロ ッ パ 言 語(以 習 ・指 導 す る 際 に は 、 そ れ らの 類 似/近. 部 省 略 筆 者). 下 、 「ヨ ー ロ ッパ 言 語 」 と し て 記 載)を. 学. 接 言 語 を母 語 とす る学 習 者 と 日本 語 を母 語. と す る外 国 語 学 習 者 と の 間 に は 決 定 的 な 差 異 が 存 在 す る こ と も 忘 れ て は な ら な い 。 ま ず 、 ヨ ー ロ ッ パ 言 語 は ア ル フ ァ ベ ッ ト言 語 で あ り、 そ の 記 述 に 関 して も、 ほ と ん ど同 じよ う な文 字 が 用 い られ て い る点 が 挙 げ られ る。確 か に、厳 密 に言 え ば、 そ れ らの 言語 間 に も文 字 の 違 い は存在 す る 。 例 えば 、 ス ペ イ ン語 に は英 語 に は存 在 し な いnの もa、Bの. 文 字 が 、 ま た ポ ル トガ ル 語 に はa、e、cな. ど の 文 字 が 、 さ ら に ドイ ツ 語 に. 文 字 が 存 在 す る 。 さ ら に 、 フ ラ ン ス 語 に はaとeの. 文 字 やoとeの. 文 字 を 合 わ せ たoeな. 文 字 を合 わ せ た お の. ど の 文 字 が 存 在 す る 。 しか し な が ら、 こ れ ら. は 部 分 的 な 相 違 で あ り、 大 局 的 な 見 方 を す れ ば 、 大 き な 違 い は な い こ と は 明 ら か で あ る 。 そ の た め 、 日本 語 を母 語 とす る 多 くの 外 国 語 学 習 者 が 中 学1年. (112). 一165一. 生 で 英 語 を初.

(3) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. め て 学 習 す る 時 に 、A、B、C…. 第2号/20]1.3. の 読 み 書 き の 練 習 か ら始 め な け れ ば な ら な い の に. 対 し、 ヨ ー ロ ッ パ 語 圏 の 言 語 を母 語 と す る 人 々 が 、 類 似/近. 接 言語 体 系 の外 国 語 を. 学 ぶ 場 合 に は 、 元 々 同 様 の 文 字 を使 用 し て い る た め 、 そ う い っ た 練 習 に 多 くの 時 聞 を割 く必 要 は な い の で あ る 。 次 に 、 ヨ ー ロ ッパ 言 語 の 大 多 数 は 、 語 順 の 点 で も よ く似 た 構 造 を持 っ て い る 。 例 え ば 、 下 記(4a-b)に. 示 さ れ る よ う に 、 英 語 文 の 各 々 の 語 句 に 番 号 を付 け 、 そ れ. ら に 意 味 論 的 に 並 行 す る 各 ス ペ イ ン語 文 の 語 句 に 同 様 の 番 号 を 付 け て 示 せ ば 、. (4)a.[英. 語] Mysonisreadingabookthat工boughtyesterday. OO●. ●. ●. ●O. (私 の 息 子 は 、 私 が 昨 日 買 っ た 本 を 読 ん で い る) b.[ス. ペ イ ン 語]. Mihijoestaleyendounlibrol璽. .(yo)COmpreayer.. 000●oOo (私 の 息 子 は 、 私 が 昨 日 買 っ た 本 を 読 ん で い る). 両 者 の 語 順 が 非 常 に よ く似 て い る こ と が 観 察 さ れ る 。 他 方 、 下 記(5)に 示 さ れ る よ う に、 (5)[日. 本 語]. 私の OO. 息 子 は、 私 が. 昨 日. 買 っ た(と. こ ろ の)本. を. 読 ん で い る。. OO. 日本 語 は、 英 語 や ス ペ イ ン語 とは全 く異 な る語 順 に な っ てい る こ とが 確 認 さ れ る。 そ の ため 、 ヨー ロ ッパ 語 圏の 言 語 を母 語 とす る人 々が 類 似/近 接 言 語 体 系 の 外 国 語 を学 ぶ 際 に は、 そ の 多 くの 場 合 、 母 語 の 単 語 と並 行 させ て 、 学 習 言 語 内 で そ れ ぞ れ に相 当 す る単 語 に置 き換 え る だ けで ほぼ 正 しい 文 を作 る こ とが で き る よ う に な るの で あ る。 他 方 、 日本 語 を母 語 とす る外 国 語 学 習 者 が 同 じよ う に(文 単 位 内 で の)単 語 の 置 き換 え だ け を行 な う と、非 文 に な っ て しま う こ とが 多 くあ る。 以 下(6a-b). 一164一. (113).

(4) 図地分化 と容器の メタフ ァー に見 る 「自己」 の概念研 究(そ の1)一. 英語 、スペイ ン語 の異言語対 照を中心 に一. 福森. が そ の 実 例 で あ る。. (6)a.*MysonIyesterdayboughtthatabookisreading. b.*Mihijo(yo)ayercomprequeunlibroestaleyendo.. そ の た め 、 我 々 が ヨ ー ロ ッ パ 言 語 を正 し く運 用 し、 自 由 に 話 した り聞 い た りで き る よ う に す る た め に は 、 統 語 に 関 す る 学 習 ・指 導 は 欠 く こ と の で き な い もの で あ る と  . エ. 言zる. 。. さ らに 、幾 つ か の英 単 語 に関 し、英 西 辞 典 を使 っ て そ れ らに相 当 す るス ペ イ ン語 の 単 語 を調 べ た 下 記(7a-d)を. 見 て み よ う。. (7)a.animalnanimalm -OSDD(s. .v.anima,nl)(一. 部 変 更. ・ 下 線 筆 者). .V.university,n)(一. 部 変 更. ・下 線 筆 者). 部 変 更. ・下 線 筆 者). 部 変 更. ・下 線 筆 者). b.universityn(pl-ties)universidadノ ーOSDD(S. c.stationlln[口(a)(Rail)estaci6nノ (b)(bus∼)estaci6n/orterminal/deautobuses -OSZ)D(s. .v.university,n)(一. d.comprehendvtcomprenderf -OSDZ)(s. .v.comprehend,vt)(一. 上 記(7)に 示 さ れ る よ う に 、 ス ペ イ ン語 は 、 語 の 形 と そ の 意 味 が 英 語 と非 常 に よ く似 た 単 語 を 有 し て い る こ とが 観 察 さ れ る1。 ま た 、 次 の(8)一(9)に 見 ら れ る よ う に 、. (8)[英. 言 吾] library1図. 書 館 、 図書 室 一. (114). 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s .v.library,n). 一163一.

(5) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. (9)[ス. 第2号/2011.3. ペ イ ン 語]. a.libroO本 一 b.1ibreriaO本. 屋 、 書 店;書. 『現 代 ス ペ イ ン 語 辞 典 』(s .v.libro,n). 籍 販 売 業 一. 『 現 代 ス ペ イ ン 語 辞 典 』(S. .V。libreria,n). 日 本 語 訳 は 多 少 異 な る 場 合 で も 、 意 味 の 上 で 何 らか の 共 通 点 を 有 して い る 単 語 は 多 数 存 在 す る 。 例 え ば 、 上 記(8)一(9)の 英 語libraryと. ス ペ イ ン 語libro、libreriaと. の. 問 に は 、 全 て 「本 」 に 関 係 す る 語 で あ る と い う 共 通 点 が 存 在 し て い る2。 そ の た め 、 ヨ ー ロ ッパ 語 圏 の 言 語 を母 語 と す る 人 々 が 類 似 言 語 体 系 の 外 国 語 を 学 ぶ 場 合 に は 、 初 め て 目 に す る 単 語 で あ っ て も 、 そ の 単 語 の 意 味 を容 易 に 推 測 す る こ と が 可 能 に な る と考 え ら れ る 。 そ れ に 対 し 、 日本 語 を母 語 と す る 外 国 語 学 習 者 は 、 母 語 を 頼 り に し て 日本 語 訳 か ら推 測 す る こ とが で き な い 。 そ れ 故 、 語 の 意 味 や 用 法 に 関 す る 学 習 ・指 導 も欠 く こ とが で き な い も の で あ る と言 え る 。 こ の よ う に 、 英 語 を 含 む ヨ ー ロ ッパ 言 語 を 母 語 とす る 学 習 者 と 日本 語 を 母 語 と す る 外 国 語 学 習 者 と の 聞 に は 決 定 的 な 差 異 が 存 在 す る に も拘 ら ず 、 下 記(10a-b)の よ う な 理 由 で 、 外 国 語 を 用 い た 名 ば か りの コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の み を重 視 し、 「文 法 」 や 「語 彙 」 の 習 得 を 蔑 ろ に す る 学 習 ・指 導 法 に は 疑 問 を 持 た ざ る を 得 な い 。. (10)a.ヨ. ー ロ ッパ 言 語 を 母 語 と す る 学 習 者 は あ ま り 文 法 の 学 習 ・指 導 に 時 間 を. 割 い て い な い の だ か ら 、 日 本 で も 文 法 の 学 習 ・指 導 に は あ ま り時 間 を 割 く必 要 は な い 。 b.ヨ ー ロ ッ パ 言 語 を 母 語 と す る 学 習 者 は 会 話 を 中 心 と し た 練 習 を して い る の だ か ら 、 日 本 で も そ ち ら の 学 習 ・指 導 に よ り多 くの 時 間 を 当 て る べ き で あ る。. さ ら に、 日本 の外 国語 教 育 の 現 状 を鑑 み る と、 「どの よ う な既 製 の教 材 を授 業 内 で 使 う と効 果 的 な学 習 ・指 導 が 行 な え る か 」、 ま た は 「 一 コマ の 授 業 内 の 時 間 配 分 は ど うす れ ば効 果 的 な学 習 ・指 導 が 行 な え るの か につ い て 、 そ の時 間配 分 例 を挙 げ. 一162一. 115>.

(6) 図地 分化 と容器 のメタ ファーに見る 「 自己」の概念 研究(そ の1)一. る 」 と い っ た`howtoteach'の. 英 語、スペ イン語の異言 語対照 を中心に一T° 森. 点 ば か りが 優 先 さ れ て い る 。. し か し な が ら 、 こ の よ う な`howtoteach'中. 心 の 学 習 ・指 導 法 で は 、 学 習 者 の. 興 味 を 一 時 的 に は 引 く こ とが で き る もの の 、 根 本 的 な 理 解 に は 決 し て な り得 な い と 考 え られ る 。 例 え ば 、 再 帰 代 名 詞oneselfは. (11)1[強. 通 常 以 下(11)に示 さ れ る よ う に 、. 勢 を 置 い て 強 調 用 法 と して]自. 2[再. 帰 用 法 と して]自. 語 のoneに. 分 自 身、 み ず か ら. 分 自 身 を[に]、. み ず か ら を((米)himself)《. ◆主. 呼 応 し、 他 動 詞 の 目 的 語 ま た は 前 置 詞 の 目 的 語 と な る 》 一. 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(S .V.oneself,pYOn.)(下. 線 筆 者). 「自 分 自 身 、 み ず か ら 」 と い っ た 意 味 で 用 い ら れ る と 学 習 ・指 導 さ れ る こ と が 多 い 。 確 か に 、 次 例(12a-c)に. 見 られ るoneself(以. 下 で は 全 てmyself)は. いずれ も. 「自分 自 身 」(以 下 で は 全 て 「私 自 身 」)と 解 釈 す る こ と が 可 能 で あ る 。. (12)a.IwenttoMadridynyself. (私 は 私 自 身 マ ド リ ッ ド に 行 っ た の で す) b.Ilookedatynyselfinthemirror. (私 は 鏡 で 私 自 身 を 見 た) c.Ihurtynyself. (私 は 私 自 身 を 怪 我 さ せ た →. 私 は 怪 我 し た). しか し な が ら、 次 の(13)の記 載 が 示 す よ う に 、. (13)besideoneself〔 一. … で 〕 我 を 忘 れ て 、 逆 上 して 、 気 が 狂 っ て. 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s. besideoneselfと. .v.oneself,【. 成 句 】besideoneself)(下. 〔with〕 線 筆 者). い う 連 語 表 現 を 学 習 ・指 導 す る に 当 た っ て は 、 「besideoneself=. 我 を 忘 れ て 」 と い う 機 械 的 な 日 本 語 訳 の 「丸 暗 記 」 に よ る 学 習 ・指 導 が 行 な わ れ て お り、 そ こ に は 既 に 学 習 ・指 導 した 「oneselfは. (116). 一161一. 「自 分 自 身 、 み ず か ら 」 を 意 味 す.

(7) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. 第2号/2011.3. る」 とい う内容 は全 く生 か され てい ない 。 ま た、 この よ う な 日本 語 訳 の 機 械 的 な丸 暗 記 に頼 ら な けれ ば な らない 表 現 が 数 え る程 度 しか な けれ ば よい が 、 そ の 数 が 増 え る に した が って 記 憶 の 負 担 は一 層 大 き く な る。 負 担 が 大 き くなれ ばそ れ が 苦 痛 と な り、 学 習 に対 す る意 欲 さ え も削 が れ か ね ない 。 こ う な る と、 日本 語 訳 ば か りを重視 して 、 音 楽 や 英 語 な どの 学 習 ・指 導 教材 を使 った と ころ で 、 そ の根 本 的 な原 因 を取 り除 か ね ば 、 学 習 者 の興 味 ・関 心 を取 り 戻 す こ とは もは や 不 可 能 で あ ろ う。 さ ら に、教 え る側 で あ る語学 教 員 に関 して も、学 生 か ら次 の(14)の よ うな 質 問 を受 け た場 合 、. (14)「 真 横 」 を 意 味 す るbesideと besideonselfと. 「自 分 自 身 」 を 意 味 す るoneselfを. 合 わせ て. す る と 、 何 故 「我 を 忘 れ て 、 逆 上 し て 、 気 が 狂 っ て 」 と い う. 意 味 に な る の で す か?. ` whattoteach'で. は な く`howtoteach'を. 優 先 して い る現 状 で は その 質問 に的. 確 な 解 答 を 与 え る こ と は で き な い た め 、 筆 者 の 経 験 上 、 「そ う 覚 え る し か な い ん だ1」. とい う一 点 張 り の 回 答 を す る しか で き な い こ と に な る 。 こ う し た 対 応 を 繰 り. 返 す と、 英 語 に 対 す る 学 習 者 の 興 味 ・関 心 を 削 ぐ だ け で な く、 教 壇 に 立 つ 者 と して の 資 質 さ え 問 わ れ か ね な い 。 こ れ で は 、 「フ ァ カ ル テ ィ ・デ ィ ベ ロ プ メ ン ト([英 語]FacultyDevelopment/[ス. ペ イ ン 語]DesarrollodeFacultad)」(以. 下FD). の 最 重 要 懸 案 の 一 つ で あ る 「教 員 の さ ら な る 資 質 の 向 上 」 が 具 現 化 さ れ る 十 分 条 件 に は 至 る べ く も な い3。 も う少 し平 た く言 う と、`howtoteach'を な ら ば 、 そ の 「内 容 物 」 は 「言 語 」 で あ る の だ か ら 、`whattoteach'も. 「容 器 」 と す る また 、 そ. の必 要 条 件 と して さ ら に問 わ れ るべ きな の で あ る 。 Pedagogy(教. 育 学)と. 人 間 や 自 立 し た 個 人(理 か?」. は 「子 育 て 学 」 で あ る 。 つ ま り、 「目 的 の 先 に 在 る 理 想 の 想 の 人 間 像)を. 育 て る に は 「何 を 」 ど う教 え た ら よ い の. と研 究 す る 学 問 で あ る 。 数 多 く の 教 育 者 の 涙 ぐ ま し い 努 力 に は 頭 が 下 が る 思. い で あ る 。 し か し な が ら 、 昨 今 の 日本 の 教 育 に お い て は 「何 を 」 と い う 内 容 で は な く、 「ど う教 え た ら よ い の か?」. ば か りが 先 行 し、 教 育 学 の 根 本 理 念 を 欠 い て い る. 一160一. (117).

(8) 図地 分化 と容器 のメ タファー に見 る 「 自己」の概 念研究(そ の1)一. 英語、スペ イン語の異 言語対照 を中心 に一T● 森. もの が 目立 っ て い る よ う に思 え て な らな い 。Pedagogyの. 存 在 意 義 と は 「教 育 そ の. もの と は何 か 」 とい う普 遍 的概 念 を見 つ め 、(法 学 で あ ろ う と数 学 で あ ろ う と)如 何 な る分 野 に も効 果 的 に還 元 し得 る帰 納 的 メ カ ニ ズ ム を明 らか にす る こ と にあ っ た はず で あ り、 欧州 諸 国 の ア カ デ ミズ ム で は そ れ が共 通 の認 識 で あ る 。 そ れ に も拘 わ らず 、 そ の学 問 的実 体 か ら外 れ 、英 語 を特 別視 し、授 業 運 営 と学 習 者 の 反応 に過 度 に重 点 を置 くそ の逆 方 向 のベ ク トル に こ そ 、 日本 の大 学 語 学 教 育 が 多 くの諸 問題 を 孕 ま ざ る を得 な い主 た る原 因が 隠 され て い る よ うに感 じ られ て な らな い 。我 々 が下 りるの で は な い 、学 習 者 を引 き上 げ るべ きな の だ。 机 の並 べ 方 か ら始 まる 「ク ラ ス 単 位 の 運 営 外 郭 」 の メ ソ ッ ド論 の形 成 に帰 属 す る 日本 の英 語 教 育 学 の 人 々 は(そ の 習 得 を希 望 す る小 中 高 の教 員 育 成 を 目指 して)教 育 大 学 ・教 育 学 部 に 、 そ の 「中 身 」 と も言 うべ き外 国語 そ の ものの メ カニ ズ ム を解 明 して学 習 者 に演 繹 を 図 る言 語 学 者 は 外 国 語 大 学 ・外 国 語 学 部 に、 とい う棲 み 分 け が 、 今 後 の 日本 にお け る語 学 FDを. 展 開 す る前 提 と して の 急 務 とな ろ う。 「英 語 を母 語 と しな い 人 た ち が 大 学 で. 英 語 を教 え る 資 格 」 を旗 印 に 外 国 人 の 人 材 を育 て 上 げ て そ れ ぞ れ の 母 国 へ 送 り出 し、 外 国 人 に対 して 自 国の 学 問 業 界 の パ イ を守 る よ う な 国策 と も言 うべ き商 業 主 義 を採 る大 国 の後 を盲 目的 に追 随 す る こ と だ け は避 け な けれ ば な らな い。 海 洋 立 国 と して の 立 場 もあ ろ うが 、 学 習 者 に と って 真 に 自 由で 自立 的 な空 間 を築 き上 げ る 国益 の た め に は真 正 面 か ら向 き合 わ な けれ ば な らない 問 題 で あ る。 今 こ こ で 、 も う一 度 見 つ め 直 す べ くは 「個 」 で あ る。 「 個 の 時 代 」 が 強調 され て 久 しい 今 日、 我 が 国 で は、 オ リ ジナ ル ・テ キス トの 作 成 や オ フ ィス ・ア ワー の活 用 な ど個 の 活 動 が 大 学 教 育 で盛 ん に求 め られ て い る。 しか しなが ら、 そ の 反 面 、 語 学 教 員 と して 「個 」 が 如何 にあ るべ きか 、 とい う研 究 ・教 育 姿 勢 につ い て は必 ず し も 重 視 され て い な い 。 そ こで 、 本 論 文 で は、 大 学 教 育 にお け る語 学 教 員 と して 各 自の 研 究 が教 育 に反 映 され るべ き姿 勢 の 在 り方 を、 ま さ に 「個 」 を表 す 表 現 で あ る英 語 再 帰 代 名 詞oneselfお よび ス ペ イ ン語 再 帰 代 名 詞si/seを. 11s. 一159一. 通 じて提 議 す る。.

(9) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. 2.先. 第2号/2011.3. 2.1.主. 行 研 究 とそ の 間題 点 語 の 指 示 物 と 同 一 物 を 指 示 す るoneself. 従 来 、 再 帰 代 名 詞oneselfは. 、 前 出 §1.⑪. で 既 に 見 た よ う に 、 「自 分 自 身 、 み. ず か ら 」 と い っ た 意 味 で 用 い ら れ る と 学 習 ・指 導 さ れ る こ と が 通 常 で あ る 。 確 か に 、 前 出 §1.(12a-c)で 下 で は 全 てhimself)は. も確 認 し た よ う に 、 下 記(1a-c)に 、 い ず れ も 主 語(以. 見 られ るoneself(以. 下 で は 全 てJohn)の. 指 示 物 と 同一 物 を. 指 示 し て お り、 「自 分 自 身 」(以 下 で は 全 て 「彼 自 身 」)と 解 釈 す る こ と が 可 能 で あ る。. (1)a.JohnwenttoMadridhiynself. (ジ ョ ン は 彼 自 身 パ リ へ 行 っ た の で す) b,Johnlookedathimselfinthemirror. (ジ ョ ン は 鏡 で 彼 自 身 を 見 た) c.Johnhurthimself. (ジ ョ ン は 彼 自 身 を 怪 我 さ せ た →. ジ ョ ン は 怪 我 し た). しか しなが ら、 こ こで 一 つ 問 題 が 生 じる。 従 来 の 意 味 論 の考 え 方 の 一 つ と して 、 次 の(2)に 示 さ れ る. 「構 成 性 の 原 理([英. 語]principleofcompositionality/[ス. イ ン 語]principiodecomposicionalidad)」. (2)従. ペ. が 挙 げ られ る 。. 来 、 意 味 論 の 世 界 に は 、 構 成 性 の 原 理(PrincipleofCompositionality) と 呼 ば れ る 考 え 方 が あ る.こ. れ は 部 分 の 意 味 の 総 和 が 全 体 の 意 味 で あ る とい. う考 え 方 で、 個 々 の単 語 の意 味 を足 しあ わ せ て い くこ とで 、 ボ トム ァ ッ プ. 式、いわば 「 積 み 木 式 」 に、 全体 の 句 や 文 の 意 味 が 得 られ る とす る もの で あ る.例. え ばfemaledancerと. い う と 、 〈female>+〈dancer>の. よ う に 、 「女. 性 」 と 「踊 り手 」、 そ れ ぞ れ の 意 味 を 知 っ て い れ ば 、 句 全 体 の 意 味. 「女 性 の. 踊 り手 」 も得 ら れ る 、 と言 う 考 え 方 で あ る. 一 河 上(編)(1996:3)(下. 一158一. 線 筆 者). (119).

(10) 図地 分化 と容器 のメタ ファーに見 る 「 自己」の概 念研究(そ の1)一. こ の 考 え に 基 づ け ば 、 連 語 表 現besideoneselfの. (3)自. 分 自身 の. 〔oneself〕 真 横 に. 〔beside〕. 英 語、スペ イン語の異言 語対照 を中心 に一. 福森. 意 は 以 下(3)に しか な り得 な い 。. い る。. に も拘 らず 、 実 際 に は 次 の(4)に 示 さ れ る よ う に 、. (4)Hewasbesidehimselfwithブoy.う 一. 連 語 表 現besideoneselfは. れ し さ に 我 を 忘 れ た. 『英 和 活 用 大 辞 典 』(s .v.joy,【 前 置 詞+】)(下. 、 通常. 線 筆 者). 「我 を忘 れ て 」 の 意 と して 用 い ら れ て い る の で あ. る 。 そ の た め 、 こ の 「我 を 忘 れ る 」 の 意 とoneselfが. 持 つ 「自 分 自 身 、 み ず か ら 」. の 意 と の つ な が り は 如 何 な る もの か 、 とい う疑 問 が 生 じ る の で あ る 。 こ の 点 に 関 し、 下 記(5)に 示 さ れ る 、 ゲ シ ュ タ ル ト(Gestalt)知. 覚 の 観 点 か ら説. 明 を 与 え る こ とが で き る と 考 え る 人 も い る か も しれ な い 。. (5)個. 体 を 超 え た 全 体 性 と い う も の は 、 固 体 を 綜 合 す る こ と で 得 られ る もの で は. な く、 む しろ 逆 に、 知 覚 にお い て は全 体 こそ 部 分 の 前提 と な る もの だ と考 え ら れ る(こ. れ を 「部 分 の 全 体 規 定 性 の 問 題 」 と い う).要. 素 は、 全 体 に埋 め. 込 ま れ た 以 上 、 単 な る 要 素 で は な く、 ゲ シ ュ タ ル トを構 成 す る 全 体 の 中 の 部 分 と して 有 機 的 に機 能 す る も の で あ り、 ま た そ の よ う に 認 知 さ れ る. 一 河 上(編)(1996:3)(下. つ ま り、 こ の ゲ シ ュ タ ル ト知 覚 の 観 点 に 基 づ け ば 、 連 語 表 現besideoneselfは. 線 筆 者). 、そ. れ 全 体 で 「我 を忘 れ て 」 と い う 意 を 表 す の で あ り、 所 謂 イ デ ィ オ ム と言 わ れ て い る `ki ckthebucket'(く. た ば る)と. 同様 、部 分 の総 和 が全 体 の意 味 に な らな い 典 型 的. な 例 の 一 つ で あ る と言 え る4。 しか しな が ら、 こ の よ うに説 明 した と して も、上 述 の疑 問が 解 消 され た とは 決 し て 言 え な い 。 な ぜ な ら 、 確 か に 部 分 の 総 和 か ら全 体 の 意 が 容 易 に 類 推 で き な い と し て も、 そ こ に は 全 体 の 意 が 生 じ得 る だ け の 何 ら か の メ カ ニ ズ ム が 存 在 し て い る と考. (120). 一157一.

(11) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. 第2号/2011.3. え ら れ る か ら で あ る 。 も し 、 い か な る 語 句 の 結 合 を も許 す の で あ れ ば 、 以 下(6)に 見 られ る よ うに 、. (6)beside,alongside,abreast,abeam,lam,ontheflankof,alongby,bythe sideof,alongthesideof -RIT(S. し ば し ばbesideの. 類 義 語 と さ れ るbyを. .V.218SIDE,prep.,11)(下. 用 い たbyoneselfと. 線 筆 者). い う 表 現 が 「我 を 忘. れ て 」 の 意 で あ っ た と して も 何 ら不 思 議 で は な い 。 しか し な が ら 、 実 際 に は 、 次 の (7)に 示 さ れ る よ う に 、 そ こ に はbesideoneselfが. 表 す よ う な 「我 を忘 れ て 」 と い う. 意 が 生 じ得 る こ と は な い 。. (7)(1)ひ. と り ぼ っ ち で(alone). (2)独. 力 で(withouthelp)、. (3)ひ. と りで に 一. ひ と り で(cf.forONESELF). 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s. .v.oneself,【. 成 句 】byoneself). つ ま り、 連 語 表 現 と 日本 語 訳 とが 一 見 結 び つ き難 そ う な も の で あ っ て も、 そ こ に は 連 語 表 現 を 構 成 す る 各 々 の 語 句 が 選 択 さ れ る べ き必 然 性 が 存 在 す る の で あ っ て 、 何 の 脈 絡 も無 く、 単 に 部 分 を 足 し た 総 和 以 上 の 意 味 が 付 加 さ れ て い る と い う 考 え 方 は 改 め ね ば な らな い。 そ の た め 、 「自分 自 身 の. 〔oneself〕 真 横 に 〔beside〕 い る 」 と い う 文 字 通 りの 意. と 「我 を 忘 れ て 」 と い う 連 語 表 現 と して の 意 と の 間 に 存 在 す る 意 味 の 隔 た り を 埋 め る た め に は 、 ど の よ う な 説 明 を す れ ば よ い の か 、 と い う 疑 問 は 、 依 然 と して 存 在 す る こ と に な る。 さ ら に 、 再 帰 代 名 詞oneselfは. 、 以 下(8)に 示 さ れ る よ う に 、 主 語 の 指 示 物 と 目 的. 語 の指 示 物 とが 同 一 の場 合 に用 い られ る もの と され て きた 。. (8)Acommonuseofreflexivepronounsistotalkaboutactionswherethe. 一 ユ56一. (121).

(12) 図地 分化 と容 器のメ タフ ァー に見 る 「 自己」 の概 念研究(そ の1)一. 英語、 スペ イ ン語の 異言語対照 を中心 に一. 幅森. subjectandobjectarethesameperson. (再 帰 代 名 詞 の 通 常 の 用 法 は 主 語 と 目 的 語 が 同 じ 人 物 で あ る 行 為 に つ い て 話 す こ と で あ る) Icutmyselfshavingthismorning.(NOT轍. …). (私 は 今 朝 、 髭 を 剃 っ て い る 私 自 身 を 傷 つ け た →. 私 は 今 朝 、 髭 剃 り 中 に 切 り 傷 を 作 っ た). Wegotoutofthewateranddriedourselves.(NOT...mod--tts.) (私 た ち は 水 の 外 に 出 て 、 私 た ち 自 身 を 乾 か し た →. 私 た ち は 水 か ら 出 て 、 体 を 乾 か し た). 1'yngoingtotheshopstogetmyselfsoynetennisshoes. (私 は 私 自 身 の た め に テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う と い う 目 的 で 店 に 行 っ て い る →. 私 は テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う た め に 店 に 行 っ て い る) -Swan(1995:471)(下. こ の 考 え に 基 づ く と、 下 例(9)のmyselfの. 線. 指 示 物 と 主 語 で あ る1の. ・ 日 本 語 訳 筆 者). 指 示 物 と は 同一. 物 で あ る はず で あ る。. (9)Iwasbesidemyselfwithanger. (怒 り に 逆 上 し た) 一. 『英 和 活 用 大 辞 典 』(S. .V.ranger,【. 前 置 詞+】)(下. 線 筆 者). しか し な が ら 、 上 例(9)を 文 字 通 り に 捉 え た 下 記 ⑩ の よ う な 事 象 は 、1の 指 示 物 が 複 数 人 存 在 し得 な い こ と か ら 、 決 して 起 こ り得 な い こ と だ と 言 え る 。. ⑩. 「私 」 は怒 りを伴 った 「私 自身 」 の 真横 に位 置 した 。. こ の こ と は 、 上 記(9)の 場 合 、myselfの. 指 示 物 と 主 語 で あ る1の. 指 示 物 と は 全 くの. 同 一 物 と は な り得 な い こ と を 意 味 す る 。 つ ま り、 上 記(9)に お い て は 、 上 出(8)の よ う な 指 示 関 係 は 成 立 しな い の で あ る 。. (122). 一155一.

(13) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. 2.2.「. 第2号/20]1.3. 本 来 の 自分 」 と し て のoneself. 従 来 のoneselfの. 指 示 関 係 で は 、 既 に §2.1.(8)で. 見 た よ うに 、 主 語 の 指 示 物. と 目的語 の指 示 物 とが 同一 の場 合 に用 い られ る もの と され て きた 。 そ の 主語 の 指 示 物 と 目 的 語 の 指 示 物 と の 関 係 を 以 下(1a-c)に. 示す。. (1)a.Icutmyselfshavingthismorning.. (私 は 今 朝 、 髭 を 剃 っ て い る 私 自 身 を 傷 つ け た → 私 は 今 朝 、 髭 剃 り 中 に 切 り 傷 を 作 っ た) b。Wegotoutofthewateranddriedourselves.. (私 た ち は 水 の 外 に 出 て 、 私 た ち 自 身 を 乾 か し た →. 私 た ち は 水 か ら 出 て 、 体 を 乾 か し た). c.1'mgoingtotheshopstogetmyselfsometennisshoes.. (私 は 私 自 身 の た め に テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う と い う 目 的 で 店 に 行 っ て い る → 私 は テ ニ ス シ ュ ー ズ を買 う た め に 店 に 行 っ て い る) -Swan(1995:471)(一. 確 か に 、 上 記(1a-c)に. 部 変 更 ・日本 語 訳 筆 者). 見 られ る例 にお い て は、 全 て 主 語 の 指 示 物 と 目的 語 の指. 示 物 と が 同 一 で あ る よ う に 感 じ ら れ る 。 しか し な が ら 、 既 に §2.1.(9)で よ う に 、 連 語 表 現besideonselfを. も見 た. 用 い た 下 記(2)に お い て 、. (2)Johnwasbesidehimselfwithanger. (ジ ョ ン は 怒 り で 我 を 忘 れ た). 現 実 世 界 の 物 理 的 物 体 と して 論 理 的 に 考 え れ ば 、 「「ジ ョ ン 」 が 「彼 自 身 」 の 真 横 に 位 置 す る 」 と い う こ と は 有 り得 な い 。 そ の た め 、 上 記(2)の 場 合 、himselfの と主 語 で あ るJohnの. 指示 物. 指 示 物 と は 全 く の 同 一 物 と は な り得 な い の で あ る 。. ま た 、 こ う し た 問 題 は 、 以 下(3a-b)に. 一154一. 示 さ れ る よ う なoneselfを. 用 い た そ の他. (123).

(14) 図地分化 と容器の メタフ ァー に見る 「自己」 の概念研 究(そ の1)一. 英語 、スペイン語 の異言語対 照を中心 に一. 福森. の 連 語 表 現 にお い て も同 様 に当 て は まる 。. (3)a.be[feel](like)∼. 〈人 が 〉 精 神 的[肉 一. b.beoutof∼. 体 的]に. 本 来 の 調 子 で あ る.. 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s .v.oneself,pyon.,3.). 我 を忘 れ る 。 一. 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s. .v.oneself,Aron.,3). そ こ で 、 こ の よ う な 問 題 点 を解 決 す べ く、 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』 で は 、 次 の (4)の よ う な 意 味 が 記 載 さ れ て い る 。. (4)3本. 来 の 自分 一. 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(S. こ の よ う に 、oneselfを の指 示 物 は. .V.oneself,pyon.,3.)(下. 線 筆 者). 「本 来 の 自 分 」 と 解 釈 す れ ば 、 他 方 、 主 語 に 現 れ る 名 詞 句. 「本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 と 捉 え る こ と が で き る 。 と す る と 、 上 記 に 見. た 連 語 表 現besideoneself,be[feel](like)oneself,beoutofoneselfは れ 下 記(5a-c)の. 、 そ れ ぞ. よ う に捉 え る こ と が 可 能 と な る 。. (5)a.besideoneselfの. 捉 え 方:. 「本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 が. 「本 来 の 自 分. 〔oneself〕 」 の 真 横. 〔beside〕. に. 存 在 す る。 b.be[fee1](like)oneselfの. 捉 え 方:. 「本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 が 在 す る. 〔be〕[感. c.beoutofoneselfの. じる. 〔oneself〕」 の よ う に. 捉 え 方: 「本 来 の 自 分. 〔oneself〕 」 の 外 に. 〔outof〕. 存. 〔be〕。. しか し な が ら 、 こ こ で 新 た な 問 題 が 生 じ る 。 も し、oneselfを. (124). 〔like〕 存. 〔feek〕]。. 「本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 が 在 す る. 「本 来 の 自 分. 一 ユ53一. 「本 来 の 自 分 」、 主.

(15) 文学 ・芸術 ・文 化/第22巻. 第2号/2011.3. 語 に 現 れ る 名 詞 句 の 指 示 物 を 「本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 とす る な ら ば 、 上 出(1)で 見 た 例 文 に お い て も、 こ う した 考 え 方 が 当 て は ま る は ず で あ る 。 しか し な が ら、 そ の 予 想 に 反 し、 こ れ ら の 例 に お い て は 、 各 々 下 記(6a-c)に. 見 られ る よ う に奇 妙 な. 解 釈 に な って しま う。. (6)a.Icutmyselfshavingthismorning. →. 「本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 が 今 朝 、 「本 来 の 自 分 」 の 髭 を 剃 っ た 。. b.Wegotoutofthewateranddriedourselves. →. 「本 来 の 姿 で は な い 自 分 」 が 水 の 外 に 出 て 、 「本 来 の 自 分 」 を 乾 か し た 。. c.1'mgoingtotheshopstogetmyselfsometennisshoes. →. 「本 来 の 自 分 」 に テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う た め に. 「本 来 の 姿 で は な い 自. 分 」 が 店 に行 っ て い る。. そ の た め 、 上 記(6a-c)を. 解 釈 す る た め に は 、 こ こ で のoneselfは. 「主 語 の 指 示 物. と 同 一 物 を 指 示 す る もの 」 で あ る と す る 従 来 の 捉 え 方 が 必 要 と な る 。 こ れ らの 主 張 に 基 づ け ば 、 場 合 に よ っ て2種. 類 のoneselfが. 存 在 す る こ と に な って しま う。. しか し な が ら 、 次 の(7)に 見 ら れ るOneForm,OneMeaningと 立 場 か ら 鑑 み れ ば 、oneselfと. い う1つ. い う認 知 言 語 学 の. の 形 に 、 「主 語 の 指 示 物 と 同 一 物 を 指 示 す る. も の 」 と 「本 来 の 自 分 を 指 示 す る も の 」 と い う 異 な る2つ. の 意 味 は 存 在 し難 い と 考. え られ る 。. (7)本. 書 の 奏 で る 旋 律 は 、 意 味 と 形 は 一 対 一 の 対 応 を 成 す(oneform,one meaning)、. と い う と こ ろ に あ る 。 形 が 違 え ば 意 味 に も違 い が あ り、 意 味 が. 違 え ば 形 に も違 い が あ る とす る 。 い ず れ か 一 方 が 他 方 に 対 し一 対 多 の 関 係 を もつ 、 とす る の で は な い 。 一 中 右(訳)(1981:iv)(下. と い う こ と は 、oneselfは. 以 下(8a-b)の. 線 筆 者). い ず れ か を指 す こ と にな るが 、. 一152一. (125).

(16) 図地分 化と容器の メタフ ァー に見る 「 自己」の概念 研究(そ の1)一. (8)a.主. 英語 、スペイ ン語の異言語 対照を中心 に一. 禧森. 語 の指 示 物 と同一 物 を指 示 す る もの. b.本 来 の 自 分 を 指 示 す る もの. 上 記 で 観 察 し た よ う に 、(8a-b)は. い ず れ も が 単 独 でoneselfの. た す こ と は で き な い 。 そ の た め 、oneselfの. 必 要 十 分 条 件 を満. 概 念 的 正 体 を 明 らか に す る た め に は 以. 下(9)の 代 案 を 提 示 す る 新 しい 見 解 が 必 要 と な る 。. (9)oneselfは(8a-b)以. 外 の 別 の も の を 指 し示 す の で あ り、 そ の 指 示 対 象 が 何. か を解 明 しな けれ ば な ら ない 。. こ う した 問 題 点 を 解 決 す る た め に は 、 語 句 と そ の 語 句 が 指 示 す る 物 と の 聞 に は ど の よ うな概 念 的 関係 が 存在 す るの か につ い て 見 直 す 必 要 が あ る と考 え られ る。 そ こ で 、 以 下 で は 「図 地 分 化([英 segregaci6ndeFigurayFondo)」. 語]Figure-Groundsegregation/[ス. ペ イ ン 語]. の観 点 か ら、 語 とそ の 指示 物 との 関 係 を観 察 す. る こ とに す る 。. 3.再 3.1.語. 帰 代 名 詞oneselfの. 概 念 メ 力 ニズ ム. とそ の指 示 物 との概 念 的関 係. 「図 地 分 化([英. 語]Figure-Groundsegregation/[ス. deFigurayFondo)」5と. は 元 々 心 理 学 で 用 い ら れ て い た も の で 、 同 じ図 形 で あ っ. て も 、 ど の 部 分 を 「前 景 」、 即 ち 「図([英. 語]Figure/[ス. と す る か 、 ど の 部 分 を 「背 景 」、 即 ち 「地([英 Fondo)」. ペ イ ン 語]Figura)」. 語]Ground/[ス. ペ イ ン 語]. と す る か に よ っ て 、 そ の 捉 え 方 が 異 な っ て く る こ と に 着 目 し た もの で あ. る 。 「ル ビ ン の 盃([英. 語]Rubin'surn/[ス. ペ イ ン語]copadeRubin)」. れ る 下 記(1)の 図 は 、 こ の 典 型 例 で あ る 。. (126). ペ イ ン 語]segregaci6n. 一151一. と呼 ば.

(17) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. 第2号/2011.3. (1). 上 図(1)で は 、 白 い 部 分 を 「図 」、 黒 い 部 分 を 「地 」 とす れ ば 、 中 央 に 白 い 「盃 」 の 形 が 浮 か び 上 が っ て 見 え る が 、 逆 に 黒 い 部 分 を 「図 」、 白 い 部 分 を 「地 」 と す れ ば 、 「向 か い 合 っ た2人. の 人」 の 形 が 浮 か び 上 が っ て くる 。 この 時 、 注 意 しな けれ. ば な らな い の は 、 両 方 の絵 は一 度 に見 る こ とが で きな い とい う こ とで あ る。 つ ま り、 一 方 を 「図 」 と して い る場 合 に は 、 必 ず 他 方 は 「地 」 と して 認 識 さ れ て い る と 言 え る6。 まず 、 下 記(la-b)の. 例 にお い て 、. (1)a.Johnisdragginghisumbrella. (ジ ョ ン は 傘 を 引 き ず っ て い る) b.Johnisdragginghisrightleg. (ジ ョ ン は 足 を 引 き ず っ て い る). (la)のJohnの. 指 示 物 と(lb)のJohnの. 指 示 物 と は 、 一 見 す る と 、 全 くの 同 一. 物 で あ る と 考 え る か も しれ な い 。 しか し な が ら 、 言 語 世 界 の 認 識 上 、 両 者 の 指 示 物 は 全 く同 じ も の で は な い 。 ま ず 、(1a)に. お い て 、Johnの. 指 示 物 と 、 行 為 の 対 象 物 で あ るhisumbrellaの. 指 示 物 は 分 離 可 能 な 全 くの 別 の 物 で あ り、Johnの. 指 示 物 はhisumbrellaの. を 引 きず る こ と が で き る と言 え る 。 つ ま り、 こ の 時 、Johnの. 指 示物. 指 示 物 は 全 身が 前 景. 化 さ れ て い る と言 え る 。 こ れ を 以 下(2)に 簡 単 な 図 と し て 示 す 。. 一15fl一. (127).

(18) 図地分化 と容 器のメ タファー に見 る 「 自己」 の概念研究(そ の1)一. 英語、 スペ イン語の異 言語対照 を中心 に一. 福森. (2)Johnisdragginghisumbrella.(_(1a)) (ジ ョ ン は 傘 を 引 き ず っ て い る). こ れ と 同 様 に 考 え る と 、 上 記(1b)は. 、 引 き ず る 行 為 者 で あ るJohnの. 指示物  . と引 き ず ら れ る 物 で あ るhislegの  .  .  .  .  .  . 指 示 物 と は 分 離 可 能 な 別 の 物 で あ り、 言 語 世 界.  . の 認 識 上 、hisrightlegの 示 物 は 「hisrightfootの こ の 時 、Johnの. 指 示 物 を 分 離 可 能 な 物 で あ る と す る な ら ば 、Johnの 部 分 を 除 い たJohn」. 指. で あ る と考 え ね ば な ら な い 。 つ ま り 、. 指 示 物 の 右 脚 は 「背 景 化 」 さ れ て い る と言 え る 。 も しJohnの. 物 が 右 脚 を も含 ん だ 形 で 全 身 が 前 景 化 さ れ て い る の で あ れ ば 、hisrightlegは. 指示 別の. 人 の 右 脚 を 指 し示 す こ と に な っ て し ま う か らで あ る 。 循 環 論 め くが 、 言 語 世 界 の 認 識 上 、 右 脚 を2本. 持 っ て い な い 限 り こ こ で のJohnの. て い な い 。 こ の よ う な 理 由 か ら、 上 記(1b)で. 指 示 物 に は そ の右 脚 が 含 ま れ. はJohnの. 指 示 物 とhisrightleg. の 指 示 物 と を 合 計 す る こ と に よ っ て 初 め て 、 「右 脚 を 持 っ た ジ ョ ン 全 体 」 と な る の で あ る 。 こ れ を 以 下(3)に 簡 単 な 図 と して 示 す 。. (3)Johnisdragginghisrightleg.(_(1b)) (ジ ョ ン は 足 を 引 き ず っ て い る). (128). 一149一.

(19) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. こ こ で 、 以 上 の こ と を 下 記(4)と. 第2号/2011.3. して ま とめ る 。. (4)a.aJohnisdraggingbhisumbrella. (ジ ョ ン は 傘 を 引 き ず っ て い る). 匡麹]:aジ. ョン全体 b.傘. 1言 語 世 界1:a.ジ. ョ ン の 全 身 が 前 景 化=現. 実世 界 の ジ ョン全体. b.傘 b.aエohnisdraggingbhisrightleg. (ジ ョ ン は 右 脚 を 引 き ず っ て い る). 匡藪]:aジ. ョン全体 b.ジ. ョンの 右 脚. 1言語世界1:響. 謙. したジ獅} 計 ・現実世界のジョン全体. 同 様 の こ と は 、 以 下(5a-b)に. も当 て は ま り、. (5)a.aGeorgeputbthebookup. (ジ ョ ー ジ は そ の 本 を 上 げ た). 匡薩]:a.ジ. ョー ジ全 体 b.本. 1言 語 世 界1:a.ジ. ョ ー ジ の 全 身 が 前 景 化=現. 実 世 界 の ジ ョー ジ 全 体. b.本 b.aGeorgeputbhisrighthandup. (ジ ョ ー ジ は 右 手 を 上 げ た) 匡 甕]:a.ジ. ョー ジ 全 体 b.ジ. 1言語世界:酵. ョー ジ の 右 手. 雛. たジ ョージ全体} 計 ・現実世界のジョージ全体. 一148一. (129).

(20) 図地分 化と容器 のメタ ファーに見る 「 自己」の概念 研究(そ の1)一. 英 語、スペ イン語の異言 語対照 を中心に一. 「身 体 の 具 格 名 詞 句 」 と して メ タ フ ァ ー 化 を 引 き起 こ し た 次 の(6a-b)に. 福森. も観 察 さ. れ る。. (6)a.Marypushedthebuttonwithbthepencil. (メ ア リ ー は 鉛 筆 を 用 い て そ の ボ タ ン を 押 し た). 塵]:aメ. アリー全体 b.鉛 筆. 1言 語 世 界:a.メ. ア リ ー の 全 身 が 前 景 化=現. 実 世 界 の メ ア リー 全体. b.鉛 筆 b.aMarypushedthebuttonwithbherthumb. (メ ア リ ー は 親 指 を 用 い て そ の ボ タ ン を 押 した) 匡 轟]:aメ. ア リー全 体 b.メ. 1言語世界1:謬. ア リー の 親 指. 雛. 灘. たメアリー全体} 計 ・現実世界のメアリー全体. さ ら に 、 以 下(7a-b)に. 示 さ れ る よ う に 、 「記 憶 」 の よ う に 、 実 際 に 目 で 見 た り. 触 っ た りす る こ と の で き な い 抽 象 的 な も の で あ っ て も 、 背 景 化 さ れ る 場 合 も あ る。. (7)a.aEmilylostbhercarintheaccident. (エ ミ リ ー は そ の 事 故 で 記 憶 を 失 っ た) 匡 醗]:a.エ. ミリー 全 体 b.エ. 言 語 世 界1:a,エ. ミ リー の車 ミ リ ー の 全 身 が 前 景 化=現. b.エ. ミ リー の車. b.a旦mylostbhermemoryintheaccident. (エ ミ リ ー は そ の 事 故 で 記 憶 を 失 っ た). (130). 一147一. 実 世 界 の エ ミ リー全 体.

(21) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. 彊. a.エ. ミ リー全 体. b.エ. ミ リー の記 憶. 第2号/20]1.3. 旨 語世界 懇. 響. 嘉藁たエミリー全体}計 ・現実世界のエミリー全体  . の. こ の よ うに 、一 見 、名 詞 は常 に そ の指 示 対 象 全 体 を指 示 して い る よ うに考 え られ るが 、言 語 世 界 の認 識 上 、実 際 は そ の一 部 を指 示 して い る場 合 も存 在 して い る こ と を識 別 しな け れ ば な らな い。. 3.2.「. 肉 体 」 と. 「精 神 」 の 観 点 か ら 考 察 し たoneselfの. 3.2.1.LakoffandJohnson(1999)に §2.1お (1)に 示 す. よ び §2.2で. お け るoneselfの. 考 察. 指 摘 した 問 題 の 解 明 に 大 き な 効 力 を 発 揮 す る の が 、 以 下. 「容 器 の メ タ フ ァ ー([英. MetaforasdeRecipiente)」. 捉 え方. 語]ContainerMetaphor/[ス. ペ イ ン 語]. と い う比 喩 の フ ィ ル タ ー で あ る 。. (1)Wearephysicalbeings,boundedandsetofffromtherestoftheworldb thesurfaceofourskins,andweexperiencetherestoftheworldas outsideus.Eachofusisacontainer,withaboundingsurfaceandanin-out orientation.Weprojectourownin-outorientationontootherphysical objectsthatareboundedbysurfaces.Thuswealsoviewthemas containerswithaninsideandanoutside. (我. 々 人 間 は 物 理 的 存 在 で あ り 、 自 身 の 皮 膚 の 表 面 に よ っ て 外 界. と境 を 接. し 、. ま た そ こか ら 区切 られ て い る。 そ して 、 自 身 の 肉体 以 外 の 世 界 を我 々の 外 に あ る 世 界 と し て 経 験 して い る 。 我 々 一 人 ひ と り が 容 器 で あ り 、 外 界 と 境 界 を 接 す る 表 面 と、 内 一外 の 方 向 性 を持 っ て い る の で あ る 。 我 々 は 自 身 が 持 っ て い る 内 一 外 の 方 向 性 を 、 表 面 に よ っ て 境 界 を 接 して い る 他 の 物 理 的 物 体 に も投 影 し て い る 。 こ の よ う に 、 我 々 は そ れ ら も ま た 内 側 と 外 側 を 持 っ た 容 器 で あ る と 見 な して い る の で あ る 。) -LakoffandJohnson(1980:29)(下. 一146一. 線 ・日 本 語 訳 筆 者). (131).

(22) 図地分化 と容 器のメ タフ ァー に見 る 「自己」 の概念研究(そ の1)一. こ こ に 示 さ れ て い る 通 り、 我 々 は 自 ら の 肉 体 を この 下(2)の. 英語、 スペ イン語の異 言語対照 を中心 に一T森. 「容 器 」 と し て 認 識 し て い る 。. 「容 器 の メ タ フ ァ ー 」 の 観 点 か ら 、LakoffandJohnson(1999:274)は よ う にoneselfに. 、 以. つ い て言 及 して い る。. (2)Peopletypicallyfeelincontrolintheirnormalsurroundingsandlessin controlinstrangeplaces.Thisistheexperientialbasisforanother primarymetaphorcentraltoourinnerlife:ThecontrolofSubjectover Selfisconceptualizedasbeinginanormallocation. (人 々 は 、 典 型 的 に 、 自 身 の 通 常 の 環 境 の 中 で は 制 御 し て い る と 感 じ る が 、 見 慣 れ ぬ 環 境 の 中 で は あ ま り制 御 で きて い な い と感 じて い る。 こ の こ と は、 我 々 の 内 的 生 活 に と っ て 中心 的 な、 も う一 つ の 主 要 な メ タ フ ァ ー に と っ て 経 験 的 基 盤 と な る 。 つ ま り 、 自 己(Self)に. 対 す る 主 体(Subject). の 制 御 は 、 通 常 の 場 所 に 存 在 し て い る こ と と し て 概 念 化 さ れ る 。). SELFCONTROLISBEINGINONE'SNORMALLOCATION (自 己 の 制 御 は 通 常 の 状 況 の 中 に 存 在 し て い る こ と で あ る) Aperson‐ (人 NormalLocation-一 (通 常 の 場 所.   →   →. TheSubject 主 体) TheSelf 自 己). BeingInANormalLocation‐.  . (通 常 の 場 所 に 存 在 し て い る こ と. →. BeingInControlOfSelf 自己 を制 御 して い る状 態 で あ る こ と). NotBeingInANormalLocation-一.  . (通 常 の 場 所 に 存 在 し て い な い こ と. →. NotBeingInControlOfSelf 自 己 を 制 御 して い る状 態 で な い こ と). Therearetwospecialcasesofthismetaphor,correspondingtothetwo commonestformsofnormallocations.Thefirsthastodowith. (132). 一145一.

(23) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. 第2号/2011.3. surroundings,somecontainedorboundedspaceonenormallyoccupies: one'shome,placeofbusiness,theearth,andsoon.Inthiscase,theSelfis conceptualizedasacontainer,whateverdefinesfamiliarsurroundings. TheSubiect'sbeingoutofcontrolisconceptualizedasitsbeingoutofthe container,namely,awayfromhome,placeofbusiness,ortheearth,orout ofthepartoftheSelfwheretheSubiectisnormallyunderstoodas residing,namely,thebody,thehead,themind,ortheskull. (通 常 の 場 所 に 関 す る 最 も あ りふ れ た2つ 合 が 存 在 す る 。1つ. の 形 に 対 応 す る 、2つ. の特 殊 な場. 目の 場 合 は 、 環 境 、 す な わ ち 何 らか の 中 身 が 詰 ま っ. た 、 また は 人 が 通 常 占有 して い る 区切 られ た 空 間 と 関 係 が あ る。 た と え ば 、 自 身 の家 や 職 場 、 地 球 な どで あ る。 この場 合 、 如 何 な る もの が 見 慣 れ た 環 境 の 境 界 を 定 め よ う と も 、 自 己(Self)は 主 体(Subiect)が. 容 器 と して 概 念 化 さ れ る 。. 制 御外 にあ る とい う こ とは、 そ れが 容 器 の外 に存 在 す る. こ と 、 つ ま り、 家 や 職 場 、 地 球 か ら離 れ る こ と 、 ま た は 主 体(Sub'ect)が 通 常 そ こ に 存 在 し て い る と 理 解 さ れ て い る 自 己(Self)の. 部 分 、 つ ま り、. 肉 体 や 頭 、 精 神 、 も し くは頭 蓋 骨 の外 に存 在 す る こ と と して 概 念 化 さ れ 亙 。) 一LakoffandJohnson(1999:274)(下. つ ま り 、 我 々 人 間 は 無 意 識 的 意 識(unconsciousconsciousness)に (Self)」. と. 「主 体(Subject)」. の2つ. を 認 識 し て お り、 各 々. と し て 捉 え て い る と 言 え る 。 こ れ を 次 の(3)と. (3)「. 自 己(Self)」 「主 体(Subject)」. →. 容. →. 内 容物. 線. ・ 日 本 語 訳 筆 者). お い て 、 「自 己 「容 器 」 と. 「内 容 物 」. して ま とめ る 。. 器. こ の と き 、LakoffandJohnson(1999:274)で. は 、 「容 器 」 と し て 下 記(4a-b)の. よ うな もの が設 定 され て い る 。. II. (133).

(24) 図地分 化 と容器 のメタ ファーに見る 「 自己」の概 念研究(そ の1)一. 英語、スペ イン語の異 言語対照 を中心 に一T° 森. (4)a.somecontainedorboundedspaceonenormallyoccupies:one'shome, placeofbusiness,theearth,andsoon. (何 ら か の 中 身 が 詰 ま っ た 、 ま た は 人 が 通 常 占 有 し て い る 区 切 ら れ た 空 間 。 た と え ば 、 自 身 の 家 や 職 場 、 地 球 な ど 。) b.thepartoftheSelfwheretheSubjectisnormallyunderstoodas residing,namely,thebody,thehead,themind,ortheskull. (主 体(Subject)が (Self)の. 通 常 そ こ に 存 在. して い る と理 解 さ れ て い る 自 己. 部 分 、 つ ま り 、 肉 体 や 頭 、 精 神 、 も し く は 頭 蓋 骨). そ し て 、 こ の よ う に 考 え る こ と で 、 §2.で. 問 題 と な っ て い たbesideoneselfに. 関. し て も 、 以 下(5)の よ う な 説 明 を 与 え て い る 。. (5)Forexample,in"IWasbesidemyself",theIreferstomySubjectmy experiencingconsciousness.IftheSubjectisbesidetheSelf,thenitisalso outsidetheSelf,thatis,outsidethebody,whichisnotwhereitnormally resides.That'swhy"Iwasbesidemyself'meansthatIwasoutofnormal control. (た と え ば 、"Iwasbesidemyself"[私 忘 れ た]と. は私 自身 の真 横 に い た. い う 表 現 に お い て 、`1(私)'は. →. 私 の 主 体(Subject)、. 私 は我 を つ ま り私. が 意 識 を 経 験 し て い る こ と を 指 示 し て い る 。 も し 、 主 体(Subject)が (Self)の (Self)の. 「真 横(beside)」. 自己. に存 在 して い る な ら ば 、 そ の こ と は ま た 、 自 己. 外 に 存 在 して い る こ と 、 す な わ ち 、 そ れ が 通 常 存 在 し て い る 場 所. で は な い 、 肉 体 の 外 に 存 在 し て い る こ と に も な る 。 そ う い う わ け で 、"Iwas besidemyself"は. 「私 は 通 常 の 制 御 の 外 に い た 」 を 意 味 す る の で あ る 。) -LakoffandJohnson(1999:274)(日. 134). 一143一. 本 語 訳 筆 者).

(25) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. 3.2.2.LakoffandJohnson(1999)の. 第2号/2011.3. 問 題 点. こ の よ う に 、 「容 器 の メ タ フ ァ ー 」 の 観 点 か らoneselfを. 考 察 す る こ とで 、 こ れ. ま で 問 題 と な っ て い た 多 くの 点 を 解 決 す る こ とが 可 能 に な る よ う に 感 じ ら れ る か も 知 れ な い 。 し か し な が ら 、 以 下 に 示 す よ う に 、 こ のLakoffandJohnson(1999)で のoneselfの. 考 察 に も決 定 的 な問 題 点 が存 在 す る。. ま ず 、. §3.2.1.(4)で. oneselfを. は、. 「容 器 」 と し て 捉 え て い る が 、 そ こ で 容 器 と し て 想 定 さ れ て い る 具 体 物. を 以 下(1)に. (1)肉. 見 た よ う に 、LakoffandJohnson(1999:274)で. ま とめ る 。. 体(thebody)、. 頭(thehead)、. 精 神(themind)、. も し く は 頭 蓋 骨(the. skull). こ の 中 で 、 「頭(thehead)」. は 「肉 体(thebody)」. ら は 「部 分 と全 体 の 関 係 」 と して メ トニ ミ ー([英 Metonimia)7関 head)」. の 一 部 で あ る こ と か ら、 こ れ 語]Metonymy/[ス. ペ イ ン語]. 係 に あ る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 「精 神(themind)」. も 「頭(the. で 行 な わ れ る 働 き で あ る こ と か ら、 こ れ ら も 「近 接 関 係 」 に よ る メ トニ. ミ ー と し て 捉 え ら れ る 。 さ ら に 、 「頭 蓋 骨(theskull)」. は 「頭(thehead)」. と. 「部 分 と全 体 の 関 係 」 と も 「近 接 関 係 」 と も 言 え る 。 つ ま り、 こ れ ら は 全 て 「肉 体 (thebody)」. に 集 約 で き る の で あ る 。 こ れ を 以 下(2)と して ま と め る 。. (2)「 容 器 」 と し て 想 定 さ れ る も の は 、 全 て 「肉 体(thebody)」. そ し て 、LakoffandJohnson(1999:274)で. に集約 で き る。. は 、 「容 器 」 と し て 想 定 さ れ る も の に. 関 し て は 上 述 の よ う な 記 載 が あ る も の の 、 下 記(3)の 疑 問 に 関 し て は 詳 し く言 及 さ れ て い ない 。. (3)「 内 容 物 」 と して 想 定 さ れ る も の は 何 か?. さ ら に 、besideoneselfに. 関 し て も §3.2.1.(5)(以. 一142一. 下 に(4)と し て 再 掲 載)の. よ う. (135).

(26) 図地分 化と容器 のメタ ファーに見る 「 自己」の概念 研究(そ の1)一. 英 語、スペ イン語の異言 語対照を 中心に一. 福森. に説 明 を してい た。. (4)Forexample,in"Iwasbesidemyself",theIreferstomySubjectmy experiencingconsciousness.IftheSubjectisbesidetheSe比thenitisalso outsidetheSelf,thatis,outsidethebody,whichisnotwhereitnormally resides.That'swhy"Iwasbesidemyself"meansthatIwasoutofnormal control. (た と え ば 、"Iwasbesidemyself"[私 忘 れ た]と. は私 自身 の真 横 に い た. い う 表 現 に お い て 、`1(私)'は. →. 私 の 主 体(Subject)、. 私 は 我 を つ ま り私. が 意 識 を 経 験 し て い る こ と を 指 示 し て い る 。 も し 、 主 体(Subject)が (Self)の (Self)の. 「真 横(beside)」. 自己. に存 在 して い る な らば 、 そ の こ とは また 、 自己. 外 に 存 在 して い る こ と 、 す な わ ち 、 そ れ が 通 常 存 在 して い る 場 所. で は な い 、 肉 体 の 外 に 存 在 し て い る こ と に も な る 。 そ う い う わ け で 、"Iwas besidemyself"は. 「私 は 通 常 の 制 御 の 外 に い た 」 を 意 味 す る の で あ る 。) -LakoffandJohnson(1999:274)(下. 線. ・ 日 本 語 訳 筆 者). しか し な が ら 、 こ の ま ま で は 、 以 下(5)に 示 さ れ る よ う な 問 題 点 に 何 ら妥 当 的 説 明 を 与 え る こ とが で き な い 。. (5)a.何. 故 、 「自 己(Self)が. 主 体(Subject)の. 外 に 存 在 す る こ と 」 が 「制 御 不. 能 」 を 意 味 す る こ と に な る の か? b.単 に 「自 己(Self)が. 主 体(Subject)の. 外 に 存 在 す る こ と 」 が 「制 御 不. 能 」 を 意 味 す る の で あ れ ば 、 主 体(Subject)が (Self)の. 「真 横(beside)」. し ば し ばbesideの. 位 置 す る場 所 は 自己. で な く て も よ い は ず で あ る 。 しか し な が ら 、. 類 義 と さ れ るby8を. 用 い てbyoneselfと. 表 現 す る と、. 「我 を 忘 れ て 」 と い う 意 は 生 じ な い 。 こ の よ う に 、 「我 を 忘 れ て 」 を 意 味 す る に は 、 何 故 「漠 然 と し た 近 接 」 を 表 すbyで すbesideを. (136). 用 い な け れ ば な ら な か っ た の か?. 一141一. は な く 「真 横 」 概 念 を 表.

(27) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. さ ら に 、 上 記(4)に myself"と. 第2号/2011.3. お い て 、LakoffandJohnson(1999)で. は 、"lwasbeside. い う 文 を 取 り上 げ て い る が 、 通 常 こ の 文 は 「我 を 忘 れ る 」 原 因 と な る 喜. 怒 哀 楽 表 現 をwith句. に よ っ て 表 す の が 通 常 で あ る た め 、with句. wasbesidemyself"だ. を伴 っ て い な い"I. け で は 、 容 認 度 の 低 い 文 と して 判 断 さ れ る こ とが 多 い。. LakoffandJohnson(1999)で. は 、 何 故with句. が 用 い られ な け れ ば容 認 度 が 低 く. な る の か とい う 点 に 関 す る 説 明 が 行 な わ れ て い な い こ と も問 題 点 の 一 つ と し て 挙 げ る こ とが で き る9。 (そ の2に. 続 く). 注釈 1. ス ペ イ ン語 だ け に 限 ら ず,英. 語 を 含 む ヨ ー ロ ッ パ 言 語 に は,形. とそ の 意 味 が 非 常 に よ. く似 た 語 が 互 い に 存 在 し て い る と 言 え る 。 そ の 理 由 と し て,ま. ず,そ. す る 語 派 や 語 族 が 同 じ だ か ら と い う 点 が 挙 げ ら れ る 。 例 え ば,ポ ン 語,フ. ラ ン ス 語,イ. タ リ ア語 は全 て. 「(俗)ラ. リ ッ ク 語 派 」 と い う 同 じ語 派 に 属 し て い る(cf.風 [1]に. 示 さ れ る よ う に,各. れ らの 言 語 が 属. ル トガ ル 語,ス. ペ イ. テ ン 語 」 か ら 派 生 し て お り,「 イ タ 間(1998:6-19))。. そ の た め 、 次表. 々 の 語 は 非 常 に よ く似 た 形 を し て い る 。. C1] ラ テ ン語. ポ ル トガ ル語. pater(-trem) mater(-trem). pai. padre madre. mae mao. manus. brachium caballus. piscis(-scem) 且or(且Orem) unus. ス ペ イ ン語. フ ラ ン ス語 Pさre. 、 mere. main. mano. イ タ リ ア語 padre madre mano. bravo. brazo. bras. braccio. cavalo. caballo. cheval. cavallo. ●. 日本語 父. 母 手 腕 馬. ●. peixe. pez. flor. flor. un. uno. poison. fleur. pesce. fiore. 魚、. 花. un. uno. 1. duo. doffs. dos. deux. due. 2. tres. tres. tres. trois. tre. 3. ま た,英. 語 は 「ゲ ル マ ン 語 派 」 に 属 す る た め 上 述 の イ タ リ ッ ク 語 派 と は 異 な る が,さ. ら に 時 代 を遡 れ ば,「 イ ン ド ・ヨ ー ロ ッ パ 語 族 」 と い う 同 じ語 族 に 属 して い る(cf.風 (1998:6-19))。. 例 え ば,下. 記[2]に. 見 ら れ る よ う に,. [2]fathern.1.((OE))父. 2.((OE))祖. 父,先. 祖.. 一140一. (137). 間.

(28) 図地分化 と容器の メタフ ァー に見る 「自己」 の概念研 究(そ の1)一. 英語 、スペイ ン語 の異言語対 照を中心 に一. ◆OEfcedey<Gmc.*fader(Du.Vader/GVater/ON角 Goth.ノadar(通. 福森. ∂it/. 例 はatta))LIE*pater-father(L.pater/Gk.. pater/Olr.athir(lr.&Gael.athair)Arm.hayr/Sktpitar-/ Toch.A.(方. 言)pdcar). 一. 英 語fatherは,ラ. テ ン 語paterと. 『 英 語 語 源 辞 典 』(S .V.father,n.)(下. 同様. 「父 」 を 意 味 す る イ ン ド ・ ヨ ー ロ ッ パ 祖 語. *pater 一に 由 来 す る 。 こ の イ ン ド ・ ヨ ー ロ ッパ 祖 語*pater一 な り,ま. た 他 方 で は,グ. 30-31))こ. と でfatherと. さ ら に,英 Conquestが [3]ノ. が 一 方 で は ラ テ ン 語paterと. リ ム の 法 則 に 見 ら れ る よ う に,p→fに,ま. (cf.『言 語 学 大 事 典 』(第6巻. 述 語 編)(S.V.グ. リ ム の 法 則(ほ. たt→thに う そ く)),寺. な っ た の であ る。. 大 き く 関 係 し て い る 。 こ の 時,以. 下[3]に. 塔 」 な ど 数 語 に す ぎ な か っ た が 、13世. 城 」、pride「 誇. 紀 初 め か ら 徐 々 に 増 加 し、. に 頂 点 に 達 し た 。 中 英 語 期 だ け で じ つ に1万. に 入 っ て き 、 し か も そ の う ち7500語. のNorman. 示 さ れ る よ う に,. ル マ ン 人 の 征 服 以 前 に 英 語 に 入 っ て き た フ ラ ン ス 語 はcastle「. 1350-1400年. な る. 澤 盾(2008:. 語 と イ タ リ ッ ク 語 派 と の 間 に 見 ら れ る 類 似 性 に は,1066年. り」、tower「. 線 筆 者). 語 もの 借 入 語 が 英 語. が 今 日の語 彙 に残 っ て い る。 一 中 尾(1989:59)(下. 多 く の フ ラ ン ス 語 の 語 彙 が 英 語 の 中 に 取 り 込 ま れ,現 の 数 を 占 め て い る と 言 え る 。 そ の た め,フ 派 に 属 す る 各 言 語 と 英 語 と の 間 に は,フ. 線 筆 者). 在 に至 るまでその割合 はか な り. ラ ンス 語 と語 派 を 同 じ くす る イ タ リ ッ ク語 ラ ン ス 語 語 彙 を 介 す る よ う に し て,語. の形 と. そ の 意 味 との 類 似 性 が 顕 著 に観 察 され るの で あ る。 2以. 下[1]の librairieか. 語 源 辞 典 の 記 載 か ら も 明 ら か な よ う に,英 ら の 借 入 語 で あ り,さ. ら に 時 代 を 遡 れ ば,ラ. 語libraryは(古)フ テ ン語librariaに. ラ ンス 語 由来 す る。. [1]◆MEliurarieロ(0)Flibrairie<VL*librdria(m)(lt.librerialibrary,. bookshop/Sp.livreriabookstore/Port.livraria)=Llibrariabookseller's shopLLlibrariuspertainingtobooks.ムlibr-liberbook,(原. 義)theinner. barkofatreeusedasawritingmaterial<*luberL?IEleup-,*leub(h)topeeloff([⇒LEAF). 一. (138). 一139一. 『英 語 語 源 辞 典 』(S .V.library)(下. 線 筆 者).

(29) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. ま た,ス. ペ イ ン語1ibreriaも,次. の[2]に. 第2号/20]].3. 見 ら れ る よ う に,ラ. テ ン 語librariaに. 由来. す る。 [2]libraria⑦(名f)本. 屋. 書籍店. it.fr.sp.po.ru.rh. libreria(f)librairie(f)libreria(f)livraria(f)librarie(f)libreria(f) 一 片 岡(ユ982:235)(一 こ の よ う に,両 現 在 で は,英. 者 は い ず れ も ラ テ ン 語librariaと. 語1ibraryは. 部 変 更 ・下 線 筆 者). い う 同 一 の 語 に 由 来 す る に も拘 ら ず,. 「図 書 館 」,ス ペ イ ン語libreriaは. 「本 屋 」 とい う 異 な る 意. で 用 い ら れ て い る 。 こ う した 意 味 の 違 い に 関 して は,「 メ トニ ミ ー 」 の 観 点 と 「民 族 文 化 と人 間 文 化 」 の 観 点 か ら説 明 す る こ とが で き る。 ま ず,英. 語library及. び ス ペ イ ン語libreriaは,上. 記[1]に. 示 さ れ る よ う に,「 本 」. を意 味 す る こ と が 確 認 さ れ る 。 ま た,英. 語libraryの. ラ テ ン語 の 接 尾 語. 接尾辞. 一ariaは,次. 一ary及 び ス ペ イ ン 語libreriaの の[3]に. 接 尾 辞 一eriaに 相 当 す る. 示 さ れ る よ う に,「 … に 関 係 す る 場 所 」 の 意. の名 詞 を造 る。 [3]2「. … に 関 係 す る 人[も. の,場. 所]」 な ど の 意 の 名 詞 を 造 る 。. ◆ME-ayi(e),-aryロOF-aYie//L-arius(rnasc.adj,suf.),-aria(fem), 一ayiurn(newt. .)pertainingto,connectedwith.. 一 す な わ ち,英. 語library及. 『 英 語 語 源 辞 典 』(S .V.-ary,suf.)(下. び ス ペ イ ン 語libreriaは,本. 来 下 記[4]を. 線 筆 者). 意 味 してい た語. だ と考 え られ る。 [4]本. 〔libr-〕に 関 係 す る 場 所. 〔-ary〕. そ して,「 図 書 ・記 録 そ の 他 の 資 料 や 情 報 を 集 め て 整 理 ・保 管 し,広 供 す る 」(cf.『 明 鏡 国 語 辞 典 』(S.V.と 英 語1ibraryで. あ り,他. し ょ 一か ん. が焦 点化 され た もの が. 方,「 本 を 売 る 」(cf.『 明 鏡 国 語 辞 典 』(S.V.ほ. が 焦 点 化 さ れ た も の が ス ペ イ ン語libreriaで. 3こ. 【図 書 館 】))点. く一 般 に 利 用 に. んや. 【 本 屋 】))点. ある。. ま た,こ. の時. どの よ う な点 が 焦 点 化 さ れ る か は文 化 の違 い に よ っ て異 な る。. のFDと. は 「大 学 教 員 の 教 育 能 力 を 高 め る た め の 実 践 的 方 法 」 の こ と で 、 大 学 の 授. 業 改 革 の た め の 組 織 的 な 取 り組 み 方 法 の 中 で も大 き な 位 置 を 占 め て お り、 近 年 で はFD. 一138一. (139).

(30) 図地分化 と容 器のメ タファー に見 る 「 自己」 の概念研究(そ の1)一. 英語、スペ イン語の異 言語対照 を中心 に一. に 関 す る研 修 も定 期 的 に開 催 され て い る。 こ の よ うに 、FDに る一 方 で 、以 下[1a-e]に [1]a.研. 幅森. 対 す る関 心 が 高 ま っ て い. 見 られ る よ うな 課 題 も指摘 され て い る。. 究 の ア ク テ ィ ビ テ ィで 授 業 力 が き ま る 教 師 の 自信 と熱 意 が授 業 力 の 源 泉 で あ る 。 魅 力 あ る授 業 、 わ か りや す い授 業 は 自 らの専 門 を極 め る事 に よっ て実 現 す る。. b.創 意 工 夫 が あ る ほ ど授 業 の 満 足 度 が 高 い 教 科 書 頼 りの 授 業 は い ま まで 受 け て きた初 等 中 等 教 育 で学 生 が ウ ンザ リ し て い る。 教 師 が 自 ら作 成 した オ リ ジ ナ ル な教 材 を授 業 に活 用 す る た め の 日ご ろか らの研 鐙 が 求 め られ る。 c.教 科 ご との産 業 界 で 役 立 つ 人 材 像 が あ るか 何 の た め に学 ぶ か の動 機 づ け が 大 切 で あ る 。 教 師 は学 外 の研 究 会 、 企 業 と の 共 同研 究 な どを通 じて 社 会 の ニ ー ズの 変 化 を知 る こ とが 必 要 で あ る。 d.ど ん な変 化 をお こ した か 新 しい こ とで イニ シ ア テ ィブ を と る教 師 の姿 勢 が 学 生 の 心 を動 か す 。 教 師 は孤 立 を怖 れ ず 勇 気 を も って 新 た な試 み をす べ きで あ る。 e.卒 業 生 に とっ て心 の よ り どこ ろ に な っ てい るか 卒 業 生 か ら どれ だ け 相 談 を受 け た か 、 こ れ に対 して 適 切 な 支 援 が で きた か 。 これ も大 学 の レベ ル と教 師 の 力 量 の バ ロ メー ター で あ る。 一 中村(2004:46)(一 4し. か しなが ら、kickthebucketと. 部 変 更筆 者). い う連 語 表 現 につ い て も、 そ の 背 後 に潜 む 人 問 の 認. 識 に光 を当 て る こ とで 、 各 語 の概 念 的 結 び つ き と連 語 表 現 の 然 るべ き意 味 の か ら く り を明 らか にす る こ とが 可 能 とな る 。 なぜ な ら、`bucket'は. 「屠殺 処 理 後 の 豚 な ど を吊. る して お くた め の 梁 」 を指 し(cf.『 英 語 語 源 辞 典 』(s.v.bucketn.))、 屠 殺 物 が`bucket'の. 逆 さ に吊 られ た. 指 示物 を蹴 る 〔kick〕よ うに 見 え る か らで あ る 。 この よ うな 認 識. に 基 づ き、kickthebucketか. らは 屠殺 処 理 後 の 一場 面 の換 喩 と して 「死 」 が想 起 され. る こ とに な る 。 こ う した 連 語 表現kickthebuckeの. 捉 え 方 を以下[1]と. して ま とめ. る。 [1]kickthebucketの. 捉 え方. 屠 殺 処 理 後 の 豚 な ど を吊 る して お くた め の 梁 〔bucket〕 に逆 さに 吊 られ た屠 殺. (140). 一137一.

(31) 文 学 ・芸 術 ・文 化/第22巻. 第2号/201].3. 物 が 、 そ の 梁 を 蹴 る 〔kick〕 よ う に 見 え る 一[屠. 殺 処 理 後 の 一 場 面 か ら の 換 喩]. → 「死 」 が 想 起 さ れ る こ と に 由 来 5. 「図 地 分 化 」 を 用 い た 言 語 研 究 に つ い て 詳 し く はTalmy(1978)、Langacker(19$7, 1988)参. 6. 照。. こ の よ う な 「図 地 分 化 」 と い う 認 識 は 言 語 世 界 に お い て も確 認 さ れ る 。 そ の 証 拠 に 、 我 々 は 客 観 的 に は 同 一 と捉 え ら れ る こ と に 関 し て 、 視 点 の 取 り 方 や 事 象 の 捉 え 方 に よ っ て 、 し ば し ば 異 な っ た 解 釈 を し て い る 。 例 え ば 、 以 下[1a-b]で. は、 い ず れ も. 「瓶 の 中 に 残 っ た ワ イ ン の 量 が 少 な い 」 こ と を 表 して い る が 、 そ の 捉 え 方 は 異 な っ て い る。 C1]a.Enlabotellaquedounpocodevino. (瓶 の 中 に は 少 量 の ワ イ ン が 残 っ た) b.Enlabotellaquedopocovino. (瓶 の 中 に は ほ と ん ど ワ イ ン は 残 ら な か っ た) つ ま り 、 上 記[la]は. 内 容 物 で あ るvinoの. な し、 空 洞 部 分 を 背 景 化 す る こ と で あ るlabotellaの. 指 示 物 を 前 景 化 さ せ る こ と で 「図 」 と み. 「地 」 と み な し て い る の に 対 し、[1b]は. 指 示 物 に お け る 空 洞 部 分 が 前 景 化 さ れ 、vinoの. い る の で あ る(Cf.上. 野 ・森 山 ・福 森 ・李(2006:112-127))。. 容 器で. 指 示 物 が 背 景 化 され て こ れ を 次 の[2]の. よ. う な 図 で 表 せ ば 、 そ の 違 い を よ り明 確 に示 す こ と が で き る 。 [2) 一 一←レ1. 8. 1監1:麟 示物]. 白 瓶の 中に残 った ワイン の量が少 ない. (‐ [1a]). 1監 」:謙. 示物〕 (‐ [1b]). 7. 文 学 の 修 辞 法 で は 、 厳 密 に は 「部 分 と全 体 の 関 係 」 に よ る 指 示 関 係 は 「提 喩/シ ド キ ー 」([英. 語]synecdoche/[ス. よ る 指 示 関 係 は 「換 喩/メ metonimia)と. ペ イ ン 語]sinecdoque))と ト ニ ミ ー 」([英. 一136一. し て 、 「近 接 関 係 」 に. 語]metonymy/[ス. し て 表 さ れ る 。 し か しな が ら、 次 の[1]に. ネク. ペ イ ン 語]. ま とめ られ る よ う に、 本 論. (141).

(32) 図地 分化 と容 器のメ タフ ァー に見 る 「 自己」 の概 念研究(そ の1)一. 英語、 スペ イン語の 異言語対照 を中心 に一. で は 認 知 言 語 学 の枠 組 み に基 づ き、 両 者 を ま とめ て. 幅森. 「メ ト ニ ミ ー 」 と し て 捉 え て い る. (Cf.Ungerer,FriecrichandHans-JorgSchmid(1996:116)) [1]メ. トニ ミ ー. 「部 分 と 全 体 の 関 係 」 に よ る 指 示 関 係(=文 シ ネ ク. ド キ ー)」([英. sinecdoque);別. 名. 学 上 の. 語]synecdoche/[ス. 「提 喩(=. ペ. 「パ ー ト ニ ミ ー 」([英. イ ン 語]. 語]partnymy/[ス. ペ イ ン 語]patonimia). 「近 接 関 係 」 に よ る 指 示 関 係(二 ミ ー)」([英. 語]metonymy/[ス. 「ト ポ ニ ミ ー 」([英. 8. 以 下[1]の. 文 学 上 の. 「換 喩(=メ. トニ. ペ イ ン 語]metonimia);別. 語]toponymy/[ス. 名. ペ イ ン 語]toponimia). 記 述 参 照 。. 1]beside,alongside,abreast,abeam,by,ontheflankof,alongby,bythesideof, alongthesideof -RIT(s. 9. Besideoneselfと 野. ・森 山. ・輻 森. い う 表 現 がwith句. .v.218SIDE,PREPS11)(下. 線 筆 者). を 伴 わ な け れ ば な ら な い 理 由 に つ い て 詳 し く は,上. ・李(2006:460-461)参. 照 。. 参 考 文 献 Bolinger,Dwight(1977)MeaningandFoYn2.London,NewYork:Longman.(中 (1981)『. 右 実(訳). 意 味 と 形 』 こ び あ ん 書 房). Descartes,Rene(Amiel,Olivier(ed.))(1990)Discoursdelasnethode.(Agorales classiques)Paris:PressPocket.(落 613-1)岩. 合 太 郎(訳)『. 方 法 序 説 』(岩. 波 文 庫. 青. 波 書 店.). Hegel,GeorgWilhelmFriedrich(1949)VorlesungenuberdiePhilosophiederGeschichte. Gtuttgart:Fr.FrommannsBerlag.(長 学 講 義(上/下)』(岩. 谷 川 宏(訳)(1994a/1994b)『. 波 文 庫. 青629-9/青630-0)岩. 歴 史 哲. 波 書 店.). Lakoff,George&MarkJohnson(1980)MetaphorWeLiveBy.Chicago:Universityof ChicagoPress.(渡. 辺 昇 一. 他(訳)(1986)『. レ ト リ ッ ク と 人 生 』 大 修 館 書 店.). (Marin,CarmenGonzalez(trad.)(1986)MetafoYasdelaVidaCotidiana. Madrid:Catedra.). (142). 一135一.

参照

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