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<論説>1270年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について

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(1)1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について. 1 2 7 0 年頃の法史料 「マグデブルクの参審人法J について. 稲. JL. 格. 1.はじめに 筆者は, I 日稿において, P・ラーバントによって編纂された法史料集『マ グデブルクの法源Jl (ケーニヒスベルク, 1 8 6 9 年出版)の中に収録された,. 1 3 世紀のマグデブルク法に関する主要な法源である「裁判制度の法書 ( D a s R e c h t s b u c hvond e rG e r i c h t s v e r f a s s u n g )J と「マグデブルクの参審人法 ( D a sMagdeburgerS c h o f f e n r e c h t )J の内の,前者の「裁判制度の法書」の eichb i 1 d r e c h tと Wi 1 1 kurの比較という観点から,粗描しておい 内容を, W た(1)。本稿は,その続編であり,ここでは後者の「マグデブルクの参審人 法」の内容について紹介し,その内容の基本的な特徴を指摘しよう。 この法史料は,その表題も示す通り,まちがいなく参審人の手になるも のである。この限りで,既に指摘しておいたように,この「マグデブルク の参審人法J (一一以下,参審人法と略記する一一)は,厳密に言うなら ば,当時のマグデブルク法を知る上での,客観的な法史料とは言えないか もしれない。しかし,そのような主観的な法文の混在は,前述の「裁判制 度の法書」等の他の法史料の法文との比較検討によって,少なからず取り 除かれうるであろうから,これは,当時のマグデブルク法の実態に接近す るための有効な法素材の一つであると言える ( 2 )。 - 2 5(140)一.

(2) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. この参審人法の,もう一つの長所は,かなりの条文が 1 1 2 6 1年のマグデ ブルク=ブレスラウ法 (Magdeburg-BreslauerR e c h tvon1 2 6 1 )Jと呼ばれ る法源に収められた条文,と重複することである (3)。しかも幸いなことに, ラーバントの,この『マグデブルクの法源』には,後者の法文も収録され ている ( 1 4 頁-26 頁)。この結果,我々は,両者の法文を対比的に読むこと によって,少なくともこの部分については,あの難解な中世ドイツ語を読 むという苦難から一ーなお理解不可能な条文も存在するのであるが一一免 れることができる ω 。 ラーバントは,前述の法史料集『マグデブルクの法源』の中で,この参 審人法について,他の法史料よりも,はるかに多くの頁一一70 頁から 1 3 2 頁 5 ) 。その法文自体は, 1 1 3頁から始ま までの約50 数頁一ーを費やしている (. り,全部で約20頁程度に過ぎないのであるが,その解説(いわゆる E i n l e i t u n g )が70 頁から 1 1 2 頁まで及び,この43 頁に及ぶ解説部分において, ラーバントは,参審人法の1 1写本を詳細に比較検証し,それらの写本間の 系統関係を描き出している。彼の研究によれば,最も本来の姿に近い史料 仕a l b i b l i o t h e k ) に残さ は,当時ブレスラウ市の中央図書館 ( k o n i g l i c h eCen. れ て い た II.Q.3と 呼 ば れ る 羊 皮 紙 の 写 本 (DasS c h o f f e n r e c h td e r 世 I I .Q .3 . )である俗)。そして,この史料に基づいて,本 B r e s l a u e rHandschr. 来の参審人法が, 1 1 3 頁から始まる史料篇において再現されることになる のである。 ところで,既に旧稿においても指摘しておいたように,ラーバントは 個々の法史料について,本来の法文が誰によって,何のために作成された のか,について言及しておらず,その作成年代も彼がどのように画定した のか,について触れることはない。したがって,彼の読者は,これらの点 で一一特に作成年代について一一常に不安を感ぜざるえない。しかし,現 在までの所,少なくとも,ラーバントによって画定された,その作成年代 - 26(139)一.

(3) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法J について が大幅に修正された史料は存在しないようであるから. とりあえず我々は. 彼の解説に満足しなければならない。 参審人法についても,おそらく参審人の手になるであろうということを 除けば,同様のことが言え,その作成年代も不明である。ただ,前述のよ うに, 1 1 2 6 1年のマグデブルク=ブレスラウ法」という,作成年代のかな り確実な史料からの借用が認められるから,一般的には, 1 2 7 0 年頃に作成 されたとされている(7)。 ここで,旧稿で論じた「裁判制度の法書J と,この参審人法の類似性に ついても少し触れておこう。このテーマについて,節を改めて論じないの は,両者の類似性が必ずしも高くはないからである (8)。 「裁判制度の法書Jは , ~1-~23(第 I 条-第 V 条), 1-13( 第V I条一 第X咽条),第XIX条一第XX V l I 条 の 3つの部分からなる。この第 3番目の第 X医条一第XX VlI条の部分には 1 1 2 6 1年のマグデブルク=ブレスラウ法」の. 条文とほぼ同じ内容の条文(第XIX条)もある。これら 3部分の内,第 2 番目の 1-13 ( 第V I条ー第X咽条)が最古の部分とされ,それは 1 2 5 0 " ' 6 0 年頃に由来すると言われる。この法書は,参審人法と同年代か,またはそ れよりも幾分早い時期の作品となる。 参審人法と,文字通り似た法文が登場する条文は,最後の第XIX 条一第 XX VlI条の部分だけであり. これらはまたザクセンシュピーゲル・ラント法. とも関係している(紛。最初の~ 1-~23 ( 第. I条一第 V条)の部分も,ザ. クセンシュピーゲル・ラント法 3 ・ 42 ・~ 3以下の歴史的な記述の条文を. 主に再現しており. このような法文は参審人法にはない。第 2番目の 1 -. 1 3( 第V I条-第X四条)の部分は主にブルクグラーフの裁判について規定 しているが,この部分も,参審人法では,その第 4 条と第 5 条~. 広義で関連するだけである。したがって. 3のみと. 1 裁判制度の法書」は,この参. 審人法よりも,むしろザクセンシュピーゲル・ラント法に近いと言える。. -2 7(138)一.

(4) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. 「裁判制度の法書」は,ブルクグラーフの裁判を念頭におかれた第 2番目 の 1-23 ( 第V I条一第X四条)の部分を除けば全体として,あまり体系 性を感じさせず,主にザクセンシュピーゲル・ラント法に由来する条文を 並べた,という印象を与えるだけである。 本稿では,参審人法とザ、クセンシュピーゲル・ラント法との関連性につ いて幾分詳細に論じるつもりであるから. 「裁判制度の法書」についてはこ. れ以上言及しない ω 。 註. ( 1 ) 拙稿「中世マグデブルク法における W e i c h b i l d r e c h tと W i l l k u r J,W近畿大学法 学~,第49巻第 2 ・ 3 号。. ( 2 ) この参審人法の内容も,後述するように,全体としては「裁判制度の法書」. と異なるものではないが,そこには後者の法源には知られていないような条文 が登場したり,あるいは,法文の意味は同じでも,微妙に異なる表現を使用し ているような条文も登場する。これら全体が,当時のマグデブルク法への一層 の接近を,可能にするのである。 侶 ) r 裁判制度の法書」の作成年代も この法史料によって画定された可能性が高 い。拙稿「中世マグデブルク法における W e i c h b i l d r e c h tとW i l l k u r J ,2 1 9 頁以下。 ( 4 ) この『マグデブルクの法源』には, r 1 2 9 5 年のマグデブルク=プレスラウ法」 2 7 頁-31頁),その条文は,内容的に参審 と呼ばれる法文も収録されているが ( 人法と類似するものの,明らかに,その外形は異なっており,後者の史料との 同一性または直接的な関連性は認められない。 日 ( 因みに, r 裁判制度の法書Jは38 頁。他の史料は 1 0 頁以内であり,その解説も ほとんどない。 ( 6 ) 7 3 頁-80 頁と 1 1 2 頁を参照。なお,ラーバントのこの, 43 頁からなる解説部分 を詳細に紹介することも重要と考えたが,紙幅の関係で省略した。 ( 7 )H e l m u tR o s s l e ru n dG u n t h e rF r a n z,S a c h w o r t e r b u c hz u rD e u t s c h e nG e s c h i -. e n ,1 9 5 8 ,S .6 9 3 . c h t e,M也 氏h 侶 , ). r 裁判制度の法書」と参審人法の対比表(※関連性の度合いは考慮していな. い。) 裁判制度の法書. │. 参審人法の条文. ( 第 I条 第 V条) ~1""'~3. ~4. ~. 129 (市場裁判権). 5" " '~ 1 8. - 28(137)一.

(5) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法J について ~ ~. 1 9 2 0 " -~ 2 3. 3 0 (都市の空気は自由にする). ( 第V I条一第X四条). 1 .. ~ ~. 1. 2. 序文 ( W e i c h b i 1 d r e c h tの定義). 1 2 3 4. 序文 4 (ブルクグラーフの裁判) 4 (ブルクグラーフの裁判) 5~ 3 (参審人の判決発見). 2 . 3 .. 4 . 5 .. ~ ~ ~. ~ (~1-3) (~1-2) 8 (~1-4) 9 (~1-2) 1O (~1-2). 6 7. 1 1 (~1-3) 1 2 (~ 1-5) 1 3 (~ 1- 2) ( 第X医条. 第沼田条) Xl X . ~1 ~ 2 ~ 3 ~. 4. X X .~ 1 2 i !3 ~ ~. 4. ~. 2. XXI .~ 1. I4 I4 I4. (ブルクグラーフの裁判) (ブルクグラーフの裁判) (ブルクグラーフの裁判). 1~ 4 (市参事会員の裁判権) (類似) 29 (市場での販売) 1~ 4 (市参事会員の裁判権) (類似). 1 6 ,1 7~ 2,3 6 ,3 8 ,4 5 (定期裁判集会) 3 5 (占有指定の手続き:動産) 1 7~ 2 ,3 6 (裁判人と参審人の証明) 2 1 a( 1シリングの手数料). X X l l .~ 1 i !2 ~ 3 X X I I I .i !1 i !2 ~ 3 ~ 4. XXN.~ 1 ~ ~ ~ ~ ~. x x v .. 2. XX. 47~ 1 (ゲラーデの種類) 47~ 1 (ゲラーデの種類) 45 ,4 6~ 2 (ムースタイル) 1 6 (一期分). 3 1. 2. X X V I . 1 ~ ~ V l I .~ ~. 1 6 (モルゲンガーベ) 1 6 (モルゲンガーベ) 47i !1 (ゲラーデの種類) (類似). 2 3. 1. 46(世襲財産) 46~ 1 と~ 2 (ムースタイル) (類似) 5 1 (現行犯について). 2. - 2 9(136)一.

(6) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. 市長の市場裁判権について規定する第X医条,ゲラーデについて規定する第 X X I I I条,ムースタイルについて規定する第XXVI条のみである。 ( 1 0 ) 拙稿「中世マグデブルク法における Weichbi 1 d r e c h tと Wi l 1 k u r J .2 2 0 ー2 2 8 頁 。. 劫 (. 2 .r 参審人法』の概要 この参審人法の最初部分には,いわば「前文J としての,簡単な,皇帝 オットー 1世とオットー 2世への謝辞が付けられている。すなわち,オッ トー 1世がマグデブルクを創建し,次のオットー 2世の時期に司教区が設 w i c h b i l d er e c h t ) が付与されたことである。 置され,市民には都市法 (. それから,本文としての条文が来る。それらの条文には,すべて表題が 付けられ,条文によっては,さらに. sの付いた項に細分されている場合も. ある(1)。他に,第 7条(傷害罪について)と第 1 5条(傷害罪について)と 第2 1条のように. aとbの文字のついた 2つの条文に,それぞれ分割され. ている場合もある (2)。ただし,それらの条文は,本来の 1条を 2条に分割 したものなのか,それとも異なる条文を,関連する条文として,集めてき たものなのか判然とはしない。例えば,第2 1a条(贈与について)と第2 1. b条(証人について)は,その表題も互いに異なっており,両者の関連性 はない。. ( 1 ) 第1 5 条までの体系的な条文構成. 5 条までは,明らかに,体系性を指向した条文構成が看取 第 1条から第1 される。これは,後述するように. r I2 6 1年のマグデブルク=ブレスラウ 法」と比較すれば,一層明らかとなる。 大まかに言えば,この第 1 5 条までの部分は,都市の統治に関する,いわ ゆる公法に属する条文からなっている。第 1条(人はどのようにマグデブ - 30(135)一.

(7) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について ルクに定住したのか)から第 3条(不正な升について)までは,市参事会 とその権限について規定し,第 4条(ブルクグラーフの裁判集会について) と第 5条(シュルトハイスの裁判集会について)は,都市君主の役人が開 催する裁判集会について規定し. そして第 6条(傷害罪について)から第. 1 5 b条までは,市内の秩序維持と関係する刑罰法について規定している ( 3 )。 これらの第1 5条までの条文について,中世都市法として,次のような特 徴を指摘することができる。 ①. 参審人の市参事会に対する優位 市参事会と都市君主の権力関係については,既に旧稿においても指摘し. たように,都市君主である大司教の権力が1 3 世紀中に次第に弱体化する傾 向にあったことである。それに伴い,都市君主の役人でもあった参審人は 市民自治への関与を弱めてゆき,他方, 1 2 4 0 年頃に成立した市参事会が,. 1 2 8 1年頃までに,参審人を排して市民の代表機関としての地位を確立させ ていくことになる。そして参審人は,都市君主の役人であるブルクグ. 2 9 4 年には,その官職を市参事会が買い取っ ラーフとシュルトハイス一一一1 たとされるのであるが一一一の裁判所における判決活動のみを担うだけに なっていく ( 4 )。 本稿で論じる参審人法は. 一般的には 1 2 7 0 年頃に,マグデブルクの参審. 人によって,作成されたと言われているから,この時期は,まさに都市君 主を背景とする参審人と市参事会の権力関係が逆転していく時期でもあ る。このような政治・法状況の中で登場してくるからであろうか,この参 審人法には,参審人が市参事会員に対して優位する地位を占めることを, 意図的に強調するような条文も登場する。 第 1条から第 3条までの,市参事会についての条文をよく読むと,それ がよく分かる。第 1 条の~. 1では,市参事会員職も参審人職も,同じ様に. 選挙によるとしながら,市参事会員の任期は 1年間にすぎず,しかも毎年. -3 1( 1 3 4 )一.

(8) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. 彼らは都市に対する忠誠を誓約しなければならないのに対して,参審人の 職務は長期に及ぶというだけである。第 1 条~. 1r そこで彼ら(=市民). が決定したことは,彼らが参審人と市参事会員を選挙することで、あった。 参審人は長期であり,市参事会員は 1年間である。彼ら(=市参事会員) は,そこで誓約し,そしてさらに毎年彼らが新たに選挙する場合には,都 市の名誉と利益を守ることを誓約し,そのように彼らは,最も賢き人々の 助言とともにすることができるし,そうしなければならない j ( 5 )。 同条~. 2によれば,市参事会員は市民集会で法 (W i l 1 k u r e ) を制定しう. る。「市参事会員はその市民集会を,彼らが望む場合には,最も賢き人々の 助言とともに(日時を)決定する。彼らが市民集会において決定すること は何であれ,それを人は遵守すべきであり,誰であれ,それに違反するの であれば,それを市参事会員は訴えるべきである j(6)。しかし,同条~ 4に よれば,彼らの裁判権は市場裁判に限定されている。つまり,彼らの法. (W i l 1 k u r e ) が及ぶのは,市場に関する事項だけとなる。「市参事会員は以 下の権限を有する。すなわち,彼らは,あらゆる種類の計量升と不正な秤, 不正な桶,不正な分銅と,あらゆる種類の食料品販売(に関する事柄)と 詐欺的な商法について裁判する。それがどのように違反されたのであれ, その者は 3ヴェンデ・マルクで償うのが法である。それは36シリンクに相 当する j(7)。このような市参事会の限定的な裁判権のあり方は,旧稿におい て論じておいたそれとほとんど変わりはない (80 これに対して,都市君主の第一の役人であるブルクグラーフの裁判集会 は,第 4 条~. 1によれば,市内における最高の裁判所であり,その管轄権. には何の限定も付けられていない。「汝らの最高の裁判人はマグデブルク 9 )。 のブルクグラーフであり,彼は年三回のフォークト集会を開催する (. ……」。シュルトハイスの裁判集会の管轄についても,同様に,制限的な法 ) 。 文は登場しない(第 5条 - 3 2(133)一.

(9) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について. これらの 2つの裁判集会であ. 参審人が判決発見人として活躍したのは る。第 5 条~. 3i ブルクグラーフまたはシュルトハイスに対して,参審人. も市民も,裁判集会以外では,判決を発見する義務を負うことはない。た だし,それが現行犯である場合を除く ω ……」。そして,その後の第 6条以 下の傷害事件に関する条文は. まさに. これらの 2つの裁判集会において. 審理されるべき事項を規定しているのである。 ②. 決闘の容認 第 6条から第1 5条までに傷害罪の条文が殆ど連続して並べられているの. は,編纂者が市内における傷害事件の対応に腐心していたことを示すよう に思われる。 どのような都市であれ,市内において傷害・殺人事件が発生することを 阻止することはできない。問題は,そのような刑事事件における争いの解 決方法である。筆者がここで指摘したいのは,決闘 ( d e rkamp) がその解 決方法として認められている,ということである。この用語は第 6条から 第1 5 条までの, 1 2 条中の 6カ条に登場する(第 7b条,第 8条,第 1 0 条 ,. 1条,第1 2 条,第 1 4 条)。特に第1 0 条では「決闘に値する ( k a m p w i r d i c )J 第1 傷という言葉も登場する。これは,傷害事件における被害者の傷が剣によ るものであり,その傷の程度が一定以上であれば,被害者側は,加害者に 決闘を申し入れることができるというものである。その傷の程度は,一般 には,第 6条に登場する「その傷が爪よりも深く,関節程長いのであれば. ( o fd i ewundei s tn a g e l st i e fundel i e d e sl a n c ) J とされている。つまり,一 0. 定以上の深刻な傷を負った被害者側は,法廷での平和的な解決としての裁 判によることなく,加害者に決闘を無条件に求めることができる,という のである。 おそらく,このような決闘が市内で容認されるとすれば,それは決闘に 対する再度の決闘という,際限のない流血事件を市内で繰り広げることに - 3 3(132)一.

(10) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. もなるであろう。そして,このような状況がマグデブルクやブレスラウで は少なからず頻繁化していたであろうか,参審人たちは,決闘自体を禁止 することができないまでも,そのような決闘の頻繁化を阻止するために, 決闘に様々な条件を付加したり,あるいは刑事訴訟の手続きを一層厳格に することによって. 流血事件を平和的に解決しようと腐心しているように. 見える。 例えば,第 7b条は,原告である被害者には,叫喚告知を,被告には, 裁判への出頭を求め,原告が負傷の数よりも多い人数を訴えるのであれ. 2 条 ば,被告側はその訴え自体を証人によって免れうる,としている。第 1 も,延期された決闘の際に,雇用した決闘人を利用することを禁止し,違 反の場合は,相手方は決闘を拒むことができる,としている。職業的な決 闘人と戦うことは,余りに不利であり,これは決闘の本来の趣旨に反する からであろう。第14 条は,お互いに傷を負わせた者の,いずれか一方が死 亡した場合には,死亡した者の血縁者は,決闘ではなく,通常の平穏な裁 判を要求しうる,としている。 このような参審人法の,決闘についての条文は,同じく決闘について詳 細に規定するザクセンシュピーゲル・ラント法との親近性を感じさせる. (1・6 3 )。しかし,すべての中世都市法がそうであった訳ではない。参審 人法と時期的に近似するリューベック市の「キール法典(Ki e l e rK o d e x )J には,決闘は,筆者の管見する限り,規定されていない。これは,リュー ベックでは決闘が完全に禁止され,すべての争いが裁判において解決され た,ということを意味するのではないであろう。問題は,決闘を当時の 人々がどのように法的に扱おうしていたのか,なのである。少なくとも, この時期までには,リューベックの場合とは異なり,マグデブルク法都市 では,決闘を禁止することを参審人たちは可能と考えてはいなかったと言 えるであろう ω 。 - 34(131)一.

(11) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について. ( 2 ) 参審人の判断または教示 このような体系性が感じられるのは第 1 5 条までである。その後の第1 6 条 以下の条文は,民事・刑事法,手続き法等に関する様々な法文を並べてい るにすぎない。その配列は,それぞれの条文が出現した時期に従っている のかもしれないが,そこに,学問的な法則性は余り感じられない。せいぜ いの所,多くの条文に,関係する法文が集められ~に細分されているだ. けである ω 。 これらの条文からは,そのような配列の体系性ではなく,別の意味での. 5条までの条文にも現れてお 特徴が明らかとなる。これは,実は,既に第 1 り,第 1 6 条以下の条文のみにおいて登場するわけではなく,この参審人法 の全体的な特徴でもある。それは,条文の書き方に見られる,一定の共通 性である。 多くの条文において,次のような表現方法が多用されていることであ もし る。すなわち, 1. ω であれば(例,. (司 である J という主節が来る. O f t e ) Jという条件節の後に, 1 . . . .. ということである ω。. 例えば,第 6条(傷害について) ~ 1は次のような法文からなる。「あ る者が負傷し,彼が叫び声を上げ,彼がその者を捕らえ,彼が彼を裁判所 に連行し,彼がそれについて彼とともに 6人の証人を持っているのであれ ば 」 ωという条件節がまずあり,その後に「彼は,彼が彼に誓約によって訴 えを雪ぐことに優先して彼の(罪を)立証することができる」 ωという主 節が来る。 この法文の読み手にとって,最も重要なのはまちがいなく,それは後者 の主節であろうが,しかし,その,証人による証明が雪菟誓約に優先する という法原則は,少なくとも,我々のように,. ドイツ中世都市法を見慣れ. た者には珍しいものではない。これは当時の人々にとっても同じであった であろう。 - 3 5(130)一.

(12) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. そうであったとすれば,彼らの関心は,むしろ前者の条件節にあったの ではなかろうか。つまり,この法原則は,どのような条件を満たしていれ ば,妥当するのか,換言すれば,その適用可能性の限界はどこにあるのか, ということではなかったであろうか。この第 6 条~. 1の場合であれば,証. 人による犯罪の証明は刑事被告人の雪菟誓約に優先する,という,周知の 法原則(主節(日)が適用されるためには,被害者側は,叫喚告知によって 加害者を自ら捕らえ,彼を裁判所に連行し,そして,その現場に立ち会い 一緒に加害者である被告を捕らえた人々を. 証人として 6名伴う必要があ. る,ということ(条件節 ω) である。常識的な解釈からすれば,後者の条 件の中でも,特に重要であったのは証人の人数であったろう。なぜなら ば,証人の数は,しばしば事案毎に異なるのが普通であったからである。 無論,第51 条~. 2にも見られるように,誰が証人となりうるのか,も重要. であったろうが。 このように,まず,周知の法原則の条件を記した条件節が最初に来て, その後,その法原則が記される主節が来る一一場合によっては,両者が倒 置される一ーという書き方が,この参審人法の条文の大多数なのである。 これは,明らかに,マグデブルクの参審人団の法教示または法判決の活 動とも符号する。すなわち,彼ら参審人に対して,一般にマグデブルク法 都市から,法原則についての問い合わせが行われたのであるが,問い合わ せを行う都市の参審人や訴訟当事者が知りたかったのは,多くの場合,周 知の法原則ではなく,その法原則が,どのような場合に適用可能か一一例 えば,当事者の一方が提示する証人の人数で十分か一一,あるいはある具 体的な事例には,どの法原則が適用されるのか,ということであったであ ろう。 筆者には,この参審人法に収録された,このような書き方による条文の 大半が,彼ら参審人たちの法教示等の実例を集めたものであったように見. -3 6(12 9 )一.

(13) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について える。極論すれば,これは,当時の周知の法原則一一例えば,ザクセン シュピーゲル・ラント法一一一の注釈書であったように見えるのである。こ 条以下の条文では一層顕著に のような傾向は,後述するように,特に第46 なる。なぜなら,それらの条文は,第51 条~. 2を除いて,ザクセンシユ. ピーゲル・ラント法に,関係する法原則を見出すことができるからであ る 。 一般には,他のマグデブルク法都市からの法の問い合わせに対して,彼 ら参審人たちは理由を挙げて回答することはなかったと言われているか ら,おそらく,この参審人法は,本来的には,彼ら自身のため編纂された マニュアルではなかったであろうか。 ただし,なぜ第1 5条までのような体系的な編纂が,第1 6 条以下では行わ れなかったのか,不明である。そのような体系化の試みが,この時期に始. 4 世紀半ばの『体系参審人法 C S y s t e m a t i s c h e sSchぽfenrecht)~ に まり, 1 至って一つの成果をあげた,ということかもしれない。因みに, 1 2 5 0 ' " ' ' 6 0 年頃に由来する「裁判制度の法書」は,第 2番目の 1-13C 第VI条一第X四 条)に,既に体系化の兆しを感じさせてはいる。 国言回. 、王. ( 1 ) ただし,第 16条は~が付けられることなく細分されている。 侶) 括弧内の各条文に付けられた表題である。以下も同様である ( 3 ). 0. ・. (括弧内は内容の要約). 前文(皇帝オットー 1世とオットー 2世への謝辞) 1.人はどのようにマグデブルクに定住したのか(市参事会の権限) ~ 1 .(参審人職は終身職。市参事会員の毎年の選挙。誓約。) ~ 2 .(市参事会員による市民集会の招集。市民の Wi 1 1 k u r e遵守義務。) ~ 3 .(市民集会出席義務と違反の場合の罰。) ~ 4 .(市参事会員の市場裁判権。) 2 . 小売り商人の法について(彼らに対する市参事会の裁判権) 3 . 不正な升について (W i 1 1 k u r eによる裁判) 4 . ブルクグラーフの裁判集会について ~ 1 .(市内の最高裁判所。年 3回の定期裁判集会。) ~ 2 .(緊急、の裁判集会。刑事裁判。). -3 7( 1 2 8 )一.

(14) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. i : !3 .(罰金と蹟罪金の支払いについて。) 5 . シュルトハイスの裁判集会について i : !1 .( 年 3回の定期裁判集会。) i : !2 .(シュルトハイスが不在の場合 ブルクグラーフが任命。) i : !3 .(参審人はブルクグラーフとシュルトハイスの裁判集会で活動。) 6 . 傷害について i : !1 .(叫喚告知。 7人の証人>雪菟誓約。傷の定義。) i : !2 .(市民が刑事被告人の場合, 6人の証人と雪菟誓約で免訴。) 7a . 傷害について(原告の不出頭。 6人の証人と雪菟誓約で免訴。) 7b. 傷害について(叫喚告知。原告は被告人に決闘を求めうる。) 8 . 傷害について(決闘。敗訴者は手の刑。勝訴者の死亡の場合,死刑。) 9 . 傷害について(原告は,裁判所に最初に出頭した者。) 1 0 . 傷害について(短剣所持者は首の刑。剣所持者は手の刑。) 1 1.一晩経過した事件について(次の裁判日まで猶予。決闘に値する傷の 場合,直ちに裁判開始。) 1 2 . 傷害について(決闘の請求方法。決闘人。) 1 3 . 傷害について(平和付与後の,殴殺の立証。) 1 4.傷害について(原・被告の負傷と,裁判開始後の一方の死亡。) 1 5 a . 傷害について(加害者が最初に訴えた場合の被害者の防御方法。) 1 5 b . 傷害について(ヴェンデン人の方法による訴えの禁止。) ( 4 ) 注意すべきは,これらの裁判所は, 1 4 世紀以降も,市内の裁判権を基本的に. 掌握し続け,マグデブルクでは,市参事会によって都市法典が編纂されること もなく,参審人は言わば法一一市参事会の Wi l 1 kureを除いて一ーの番人として の地位を維持し続けたことである。拙稿「中世マグデブルクの参審人裁判所J, 巻第 3 ・4号。参審人団と市参事会の関係については同 『近畿大学法学.!I,第45 e i c h b i l d r e c h tと Wi l 1 k u r J, W近畿大学法学.!I, 「中世マグデブルク法における W 第4 9 巻第 2・3号 , 2 51-252 頁 。 ( 5 ) Dow urdens iz ur a t ed a ss ik u r e ns c h e p p e nundr a t m a n;s c h e p p e nz ul a n g e r ,d ir a t m a nz ueinemi a r e,d is v u r e ndovndes v e r e nnocha l l ei a rs v e n n es i z i t nuwek i s e nd e rs t a tr e c h tvnde r evndvrumenc z ubewaren,s os ib e s t ekunnen. vndemugenm i td e rw i c z i g i s t e nr a t e .最後の毎年新たに市参事会員を選挙する のは,一体,市民なのか,それとも市参事会員自身なのかは,この条文からだ けでは読み取れない。なお,参審人職は一般に終身職と言われているが,ここ z ul a n g e rz i t )J という文言が出てくるだけである。 では「長期に及ぶ ( 侶 . ) D i eratmanl e g e ni rb u r d i n gv z,swennes os i ew o l l e n,m i td e rw i s e s t e nl u t e r a t e,s w a zs i ed a n n ez udemeb u r d i n g eg e l o b e n,d a zs o lmanh a l d e n,s w e l i c h ,d回 s u l e nd i er a 佃l a nv o r d e r e n . mand a zb r i c h e t ( 7 ) D i er a t m a nhabend i egewa , t 1d a zs i er i c h t e nu b e ra l l e r h a n d ewanemazeunde u n r e c h t ewageundeu n r e c h t es c h e p h e l eundeu b e ru n r e c h t eg e w i c h t eunde u b e ra l l e r h a n d es p i s e k o v fundeu b e rmeynkoぱ~ s w i es od a zb r e i c h e t ,d a zi s t , d a zd e rw e t t e nd r i ew i n d e s c h emarch ,d a zs i n ts e sunded r i z i c hs c h i l l i n g e . r e c h t 第 4条でも,不正な升の使用に対する訴えも Wi 1 l kureによらねばならず,その - 38(127)一.

(15) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について 6シリンクである。第2 9 条(偽った売買について)も参照。 罰金額は3 ( 8 ) 拙稿「中世マグデブルク法における W e i c h b i l d r e c h tと Wi 1 1 ku, J r 223-224 頁 裁判制度の法書」は,その第四条で,この管轄は市長の裁 と246頁。ただし r 1 2 6 1年のマグデブルク=ブレス 判権に属すと規定し,ラーパントは,これは r ラウ法」の第 2条と第 5条に類似した条文を見出すと指摘していたが,上述の ように,後者は,それが市参事会の裁判権であることを規定し,市長の裁判権 であるとはしていない。 ( 9 ) I rh o g e s t er i c h t e ri s td e rb u r g r e v ez uMagedeburg ,d e rs i t z i td r iv o g e td i n g e l m m e j a r e . a o ) Demburegrevennochdemeschu1 t h e i z e ne n i s tn e h e i ns c h e p p eo d e rb u r g e r e zn ewerevmbee i n eh a n t h a f t et a t.ここで, p f l i c h t ev r t e i lz uv i n d e n eb u z e nd i n g e,i 参審人と市民がなぜ並列的に記載されているのか不明である。なぜなら,実際 には,参審人のみが判決発見を行ったと思われるから,である a ) 1 拙稿rIi'キール法典』仮訳J , W近畿大学法学』第4 1巻第 1・2号 第4 1巻第 3 ・4号 。 例外もある。第 1 6 条(一期分について)には,下位区分としての s はつけら 6 条(レヒテ・ゲ、ヴェーレについての)の!3 1と!32は,前 れていないし,第2 者は仲裁とレヒテ・ゲ、ヴェーレ違反に対する刑罰を,後者が決闘に敗訴した者 0. ω. の刑罰を,それぞれ規定し,両者は内容的には無関係である。. 1 6 . 一期分について 一一(妻へのモルゲンガーベと一期分の贈与は裁判集会において。) 一一(子供による母への一期分の贈与。羊はゲラーデ。) 一一(モルゲンガーベの立証。 6人の証人。) 一一(財産分与されていない子供の相続分。) 一一(子供間での均分相続。) 1 7 . 差押えについて .(差押え後の,差押え物件への立ち入り禁止と罰金。) 3 !1 .(裁判での譲渡後の 1年と 1日の経過。裁判人と参審人の証明。) 3 !2 .(裁判人と参審人の死亡。) 3 !3 1 8 . 臨終の床での贈与について (3シリンクまで。) 1 9 . ジッペ数について(兄弟姉妹は世襲財産について同等。) 2 0 . 聖職者のゲラーデについて 21a. 贈与について(裁判人と参審人への 1シリンクの平和金の付与。) 2 1b . 証人について(裁判集会への出頭は, 1 4 夜毎に開催される 3回の集会 の聞に。) 2 2 . 債務について .(不定期裁判集会の場合,支払いは即日。) 3 !1 .(債務支払いは 1 4 夜以内。遅延の罰金。ゲ、ヴェーレの差押え。) 3 !2 2 3 . ある者が巡礼に赴く場合(債務の提訴は禁止。商業旅行も同様。) 24.参審人法について(参審人の判決への非難は罰金。) 2 5 . 和解について .(和解と復讐放棄の証明は,裁判人と参審人とともに。参審人の死 3 !1 亡。). - 3 9(126)一.

(16) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. 3 !2 .(裁判外での仲裁。 6人の家臣とともに立証。) 2 6 . レヒテ・ゲヴェーレについて 3 !1 .(仲裁とレヒテ・ゲ、ヴェーレに対する違反。) 3 !2 .(決闘に敗訴した者の刑罰。) 2 7 . 父が息子を(訴えから)免れさせる場合(同居。 6人の証人。) 2 8 . 奉公人の賃金について 3 !1 .(既に支払いの場合,使用者と 6人の証人。) 3 !2 .(ワイン等についての訴え。) 2 9 . 偽った売買について(市参事会の裁判権。) 3 0 . 裁判役人の権利について(寡婦の再婚。手数料の徴収。) 31.馬の保証について(売り主の証明義務。) 3 2 . 窃盗犯の裁判について ( 3シリンク以下は皮髪刑。それ以上は絞首 刑。) 3 3 . 家宅侵入について(家の平和違反者は首の刑。 6人の証明。) 34.拘束について(身請けされた者を裁判人が認めない場合の,後者の罰 金。) 3 5 . ある者が財貨を差し押さえる場合(手続き方法。) 3 6 . ある者が彼の財貨を贈与する場合(裁判集会での贈与。相続人の同意。 裁判人と参審人の証明。) 3 7 . 賃借地について 3 !1 .(妻への建物の贈与。領主と隣人の面前。寡婦の占有。) 3 !2 .(賃借入の相続人の優位。土地の贈与は裁判人と参審人の面前。) 3 !3 .(世襲賃貸地の妻への贈与禁止。領主の同意の場合を除く。) 3 8 . 動産について(動産化。) 3 !1 .(世襲財産によって購入した財産の妻への贈与禁止。裁判人と参審 人の面前の場合を除く。) 3 !2 .(動産化した後の,妻への贈与は可。) 3 9 . 寡婦の権利について(寡婦の再婚と,彼女の死亡後の子供の相続順 位。) 4 0 . 債務について(父の面前での債務引受の証明方法。) 41.世襲賃借地について(教会からの世襲賃借の証明。 6人の相続人の証 明。) 4 2 . 不動産の証明について 3 !1 . (6人または 2人の定住者とともに証明。) 3 !2 . (不動産の債務の証人は定住者。) 4 3 . 支払われた債務について(既払いの証明。 2人の証人。) 44 訴えについて(訴訟を中断し,和解した事案の再審は不許可。) 4 5 . 贈与について(裁判集会で贈与された財産を夫も妻も処分可能。) 4 6 . 世襲財産について 3 !1 .(世襲財産の種類。) 3 !2 .(ムースタイルについて。) 4 7 . ゲラーデについて 3 !1 .(ゲラーデの種類。) 3 !2 .(ゲラーデの相続。) 4 8 . 後見人について(後見人資格。) 4 9 . 世襲財産について(賃貸地としての反訴の方法。) 5 0 . ゲラーデを付与された子供について(付与されていない子供による家 屋処分。) 51.現行犯について 3 !1 .(叫喚告知の方法。). - 40(125)一.

(17) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について ~ 2 .(叫喚告知の証人。) 5 2 . 不法行為について ~ 1 .(叫喚告知の立証方法。) ~ 2 .(略奪者の建物の撤去。) ~ 3 .(強姦場所の撤去。). 1 3 ) 1 ) 頂序が逆の場合もある。例えば,第四条「いかなる男も女も,その臨終の床 で 3シリング以上のいかなる贈与も行うことはできない。その棺続人の同意が N i c h e i nmannochn i c h e i n ないのであれば。妻は,彼女の夫の同意がなければ ( es c h i l l i n g e,a ni r w i pd i en i emocha ni r m es u c h e b e t t en i c h tv o r g e b e nb o v e n世i e r b e ng e l o p,n o c hd i ev r o u w ea ni h r e smannesg e l o p . )J。ただし,このような書 き方自体は,マグデブルク法にのみ看取されるものではない。同様の表現方法 は,多くの中世法においても見られる。 1 4 ) 1 s ti za l s o,d a ze i nmange ,同n tw i r d i t , g e s c h r i e th e rd a sr u o c h tundeb e g r i f e t. h e rd e nmanundeb r i n g e th e ri nv o rg e r i c h t eundh a v e te rd e ss i n es c h r e i m a n s e l b es i e b e d e, 1 5 ) h e ri s tn a h e ri nz uv o r z i u g e n d e,d a n n eh e rimeu n t g a nm u g e .. 3 .f l 2 6 1年のマグデブルク=ブレスラウ法Jとの関連性について この参審人法を, 1 2 6 1年のマグデブルク=ブレスラウ法の条文内容と比 較してみよう。. ( 1) 両方の史料の作成時期. 2 6 1年のマグデブルク=ブレスラウ法(一一以下,ブレスラウ法教 この 1. 条の後に, こ 示と略記する一一)は,全部で79条からなる。しかし,第64 の法をマグデブルク市の参審人と市参事会員が ハインリッヒ侯(1)とブレ 2 6 1年に授与したという文言が登場し,その年が1 2 6 1年で スラウ市民に 1. あったことも記載されている ( 2 ) 。つまり. 第64 条までが 1 2 6 1年の法文とい. 5 条以下は,ラーバントによれば, 1 2 8 3 年 , うことになる。その後の第6 - 4 1 (124)一.

(18) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. シュレジェン=ブレスラウ侯ハインリッヒ 4世一一前述のハインリッヒ侯 の息子?一一-によって追加的に承認された条文であるらしいの)。 参審人法と関係する条文は. 第64 条までの条文にほとんど登場し,参審. 人法がブレスラウ法教示と同じ頃に作成されたことをうかがわせる。ただ し,第64 条以降にも関係する条文がない訳ではない。最後尾に近い第75 条 と第77 条にも参審人法の条文一一第27 条(父は息子を(訴えから)免れさ せる)と第28条(奉公(人)の賃金について)の~. 1一一と関係する法文. も登場する。. 2 8 3 年以後の可能性もない訳ではな この限りで,参審人法の作成年代も 1 いが,しかし,その第27 条「人は自分の息子を 3度(訴えから)免れさせ ることができる。彼が彼の住居に留まっているのであれば,あらゆる不法 行為について彼を含めて 7人の者とともに聖遺物にかけて誓約するのであ れば。しかして,父と息子の双方が訴えられているのであれば,彼はその 息子を免れさせることはできない。彼自らがまず不法行為について免れて 条「人は自 いるのでなければ。」 ωは,明らかに,ブレスラウ法教示の第75 分の息子を 3度(訴えから)免れさせることができる。彼が彼の住居に留 まっており,それが彼の首と手に係わるものであれば。 4度目には彼は自 ら応じなければならない。このことは父に,彼の権利について損失を与え るものではない。もし. ( θ より その息子が前もって応答していたならば。 J. も,むしろザクセンシュピーゲル・ラント法の 2 ・ 17 ・~ 2闘に近い。し. たがって,内容的に見れば,後者の法文から,時系列的には,参審人法, ブレスラウ法教示へと発展していったと考えるべきであり,プレスラウ法. 2 8 3 年以後に, 教示から参審人法への,逆の採録はあり得ない。つまり, 1 参審人法が作成された. という可能性はない。. もう一つの参審人法の第28条~. 1も,同様に,ブレスラウ法教示の第77. 条の法文とは,その表現方法が異なっており,前者の条文の方が,後者よ - 42(123)一.

(19) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について りも,ザクセンシュピーゲル・ラント法の 1 ・ 22 ・~ 2には近い。. 2 8 3 年の追加条文とは,直接的 したがって,全体として,参審人法は, 1 2 6 1年のブレスラウ法教示と主に関係していると には関係しない。同法は 1 言ってよい。. 2 6 1年のブレスラウ法教示とは,いずれが先に作成さ では,参審人法と 1 れたのであろうか。一般的には,参審人法は, 1 2 6 1年と 1 2 8 3 年の中間期,. 1 2 7 0 年頃に作成されたと言われている。その根拠は不明である。常識的な 推論によるものであろう。 参審人法一一正確には,ブレスラウ写本の l l .Q.3ーーが,時期的に,ブ レスラウ法教示よりも先に作成され,それが後者に収録されたという可能 性は,両方の条文の配列を比較する限り,あり得ないげ)。 前述のように,参審人法には,各条文毎に表題が付けられ,さらに条文 によっては,その下位区分として項(~ )を有している条文もあること, 他方,ブレスラウ法教示の条文には,そのような表題もなく,ただ条文が 並べられているにすぎないこと,を考慮すれば,そして,先行する,幾分 体系化された法源の条文配列を,わざわざ解体して法典をつくることも通 常は考えられないことから,参審人法がブレスラウ法教示に先行する可能 性はほとんどない。内容的に見ても参審人法の,項(~ )を含む条文が, ブレスラウ法教示では. バラバラに配置されていた同一内容の条文を 1条. に収めているのであるから,この点でも,ブレスラウ法教示が時間的に先 行したとは考えにくい (80 ただし,以上の推測は,両方の法史料に共通の,作成時期の先行する第. 3の法史料が存在しないことを前提にしている。もし,そのような法史料 が存在するのであれば,このような推定も無意味となりそうである。しか し,たとえ,そのような第 3の法史料が存在したとしても,その作成時期 は参審人法やブレスラウ法教示とそれほど離れてはいないであろう。. -4 3( 1 2 2 )一.

(20) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. それは,この 2つの法史料の最初に登場する,市参事会に関する条文か ら推測できる。ブレスラウ法教示の第 1条から第 4条も,参審人法の第 1 条(~ 1 から~ 4) と同じく,市参事会員の選挙方法と,市参事会の権限. について規定している。つまり,両者は,市参事会が既に存在することを 前提に,書かれている。前述のように,マグデブルクでは市参事会は1 2 4 0 年前後に成立したと言われ, 1 2 8 1年頃から参審人を排して市民の代表機関 として地位を確立させていったとされるから,第 3の史料の作成時期も 一一それが存在するとすれば一一ブレスラウ法教示の作成年代の 1 2 6 1年か 年以上は遡ることはないことになるω (。したがって,第 3の法史料の ら20 存在は,考慮に入れる必要はなく,我々は,プレスラウ法教示が 1 2 6 1年頃 まず作成され,これを素材として参審人法が 1 2 7 0 年頃に作成されたという 通説を受け入れてよいであろう。. ( 2 ) 両方の史料の作成者または編纂者. 時期的に両方の法史料は近接しているのであるから,それらが同一人物 または複数の,同様の地位にある人物によって作成または編纂されたこと は十分考えられる。具体的には,マグデブルクの裁判において判決発見を 担う参審人の誰かによってである。編纂の佐方の違いから,同一人物を想 定することは難しい。たとえ,同一人物であっても,彼(等)は,全く異 なる作成または編纂の意思をもって,編纂作業に臨んだことになる。 その違いの一つは,第 1に,プレスラウ法教示には見られない体系性が, 参審人法に見られることである。 再度, 2つの法史料の条文構成を比較しよう。参審人法は,第26 条まで に,ブレスラウ法教示の一一第5 3 条と第54 条を除く一一第3 8 条までの条文 を配列しているが,第 8条から第 1 4 条までの条文には,プレスラウ法教示. 4 条までの条文は,前節 r 2 . の条文は全く存在しない。この第 8条から第 1 -4 4( 1 21)一.

(21) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について. r 参審人法』の概要」で見たように. すべて傷害罪に関する刑事訴訟法の. 1条と第 条文である。その前に位置する,第 6条(ブレスラウ法教示の第 1. 2 7 条)と第 7a条(問,第 1 3 条)と第 7b条(同,第2 1条)もまた,同じ く傷害罪に関する条文である。それゆえ,推測されうることは,参審人法 の編纂者の手元には既にブレスラウ法教示が存在していたことである。彼 は,その編纂作業の際に,この史料以外の法源からも,傷害罪に関する法 文を追加し補充したのである ω。したがって,両者の作成時期の聞に時間 的な間隔があり,まずブレスラウ法教示が先行し,それを素材としながら, 体系性を重視しつつ参審人法が編纂されたと見てよい。 両者の違いのもう一つは,その体系性の違いと並んで,作成目的の違い である。すなわち,ブレスラウ法教示は,前述のように,明らかにハイン リッヒ侯とブレスラウ市民一一本来的な名宛人は,おそらく後者のブレス ラウ市民一ーに向けて作成されていること,これに対して,参審人法は参 審人自身のために作成または編纂されていると考えられること,である。 前述の市参事会に関する条文には,その違いが明瞭に現れている。ブレス ラウ法教示の第 1 条と参審人法の第 1 条~. 1は,内容的にはほぼ同じであ. るが,後者の参審人法には,新しい法文が追加されることによって,その 条文内容がすっかり変わってしまっている。すなわち,前者のブレスラウ. w i l k u r e )に 法教示の第 1条に規定されているのは,人が,彼らの都市法 ( 従って定めたことが,市参事会員を選挙することと,市参事会員が,市の ために働くべきことを誓約しなければならないということ,だけであり, 前述したように,後者の参審人法の参審人職の長期性はここには全く規定 されていない。. 1 2 6 1年のブレスラウ法教示はプレスラウ市民に向けられて作成されたか ら,それは,彼ら市民の代表機関である市参事会についてのみ規定してい るのであろうか。少なくとも,そこには,参審人について言及する意図は. -4 5( 1 2 0 )一.

(22) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. なかったようである。一般的には,プレスラウでは,マグデブルク市の市 参事会と参審人の対立関係はなかったと言われ,後者の参審人は引退する 1 ( ) 1 市参事会員から選ばれたとも言われている 。. 以上のような相違を考慮すれば. この両者の法史料を作成した人物が同. 一人物である可能性は低い。少なくとも,参審人法を編纂した人物は,編 纂の際に体系性も考慮することのできた,マグデブルク市のある参審人と いうことになるのであろう。 註 ( 1 ) おそらく,シュレジェン=プレスラウ侯ハインリッヒ 3世であろう。 G.. K o b l e r ,B r e s l a u,i nH i s t o r i s c h e sLe x i k o nd e rd e u t s c h e nL a n d e r ,Munchen ,1 9 8 8 , S . 7 6 . ( 2 ) 同法の授与の場に立ち会った証人として, 8人の参審人と同じく同数の 8人 頁 。 の市参事会員の氏名が挙げられている。 22-23 ( 3 ) P .La band,MagdeburgerR e c h t s q u e l 1 en,S .2 3,a n m .他に, τ 1 1 .G o e r l i t z( h r g . V e r f a s s u n g , V e r w a l t u n gundR e c h td e rS t a d tB r e s l a u, 明TurzvonLudwigP e t r y ), b u r g, 1 9 6 2 , S .1 8 . ( 4 ) E i nmanmacs i n e ns u nd r i e su sc z i h e n ,d e ri ns i n e mb r o ti s tvmmea l l e r h a n d e v n t a tぱ denhe i 1 i gens e l b s i b e n d e . 1 s ta b e rb e i d ev a t e rvnds u nbe c 1 a g e t ,s oen h e re nhabes i c hs e l b e ra l l e re r s tu sgenommen mach e rdens u nn i c h tu s c z i h e n, d e sv n g e r i c h t e s . ( 5 ) E i nmand e rmachw o ls i n e ns u n eu sz i e h e n,d e rb i n n e ns i n e nb r o t ei s t ,d a z udemev i e r t e nm a l e .muz imeg e ta ndenh a l so d e ra nd i eh a n tz ud r i nm a l e n,z bd e r h e rs e l b ea n t w o r t e n . Daze n s c h a d e tdemev a t e rn i c h tz us i m er e c h t e,o s u n ew o lv o r eg e a n t w o r d e tha . t 侶) ここでは,父親による,訴えからの免れは 3度までという回数は規定されて いないが,聖遺物にかけての雪菟誓約は規定されており,その後の法文も,参 審人法と,ほぼ同じである。 ( 7 ) ラーバントの前掲書の, 7 4 頁から 7 7 頁に掲載された図表から,両方の法文の みを取り上げ,以下の比較表を作成した。参審人法の第27条以下は,この部分 には,原則として,ブレスラウ法教示の関係条文は登場しないから,ここでは 割愛した。. - 46(119)一.

(23) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法J について プレスラウ法教示(参審人法. 1 .3.4.2. 5 . 6 . 7 .8 . 1 9 . 9 . 1 0 . 1 2 . 1 1 .2 7 . 1 3 . . 21. 1 . 2 . 3 . 4 . 5 . 6 . 7 a . 7 b . 8 . 9 . 1 0 . 1 . 1 1 2 . 1 3 . 1 4 .. プレスラウ法教示(参審人法. 5 3 . 5 4 .. 1 4 .1 5 .2 8 .2 9 . 3 0 . 1 6 . 1 7 . 1 8 . 2 0 . 2 2 . 2 3 . 2 6 . 2 4 . 2 5 . 31 . 3 2 . 3 3 . 3 4 . 3 5 . 3 6 . 3 7 . 3 8 .. 15a. 15b. 1 6 . 1 7 冒頭 1 7 最後 1 8 . 1 9 . 2 0 . 21a. 2 1b . 2 2 . 2 3 . 2 4 . 2 5 . 2 6 .. ( 8 ) 例えば,第 4条 。. ( 9 ) 拙稿「中世マグデブルクの参審人裁判所J , W近畿大学法学~,第45巻第 3 ・ 4. 。 Q O ) P .La band,a . a . O .,S .7 8 f f . Quτh.Goerlitz,a . a . O ., S .3 4 f . 下 ミF. r. 4 . ザクセンシュピーゲル・ラント法』との関連性について. マグデブルク法が一般にザクセンシュピーゲルとかなり親縁関係にある ことはよく知られており,ラーバントもまた,この参審人法が,ザクセン シュピーゲル・ラント法と関係していることを指摘してはいる。しかし, その親縁関係についての論じ方は,これまでの所,一般的には,近似した, 幾つかの条文をエピソード的に採り上げ,それによって両者の親縁関係を 指摘するに止まっている(1)。ラーバントの場合も同様であり,参審人法の 条文とザ、クセンシュピーゲル・ラント法の条文との具体的な比較を試みて はいない。しかし我々が知りたいのは,両者の親縁関係の度合いである。 そこで実際に両者の条文を対比させてみる。参審人法の全52条一一一第 7 - 47(118)一.

(24) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. 条,第1 5条,第2 1条は,さらに aとbに分割されているから,それらを含. 5 条一一中,何らかの形で,ザクセンシュピーゲル・ラント法に関 めると 5 連条文を持つ条文が, 6割を越えている。「何らかの形で」という表現をせ ざるをえないのは,ザクセンシュピーゲル・ラント法の条文が同じ形で参 審人法で繰り返されることは殆どないからである。僅かに,後者の第46条 条(ゲラーデについて) ~ 1のゲラーデ (世襲財産について) ~ 1と第47 の列挙部分が,ザ、クセンシュピーゲル・ラント法 1 ・ 24 ・~. 3にほぼ同じ. 2 ) それ以外の参審人法の,ザクセンシュピーゲ 法文を見出すのみであり (. ル・ラント法と関係する条文は 後者の条文のほんの一部を,その中に再 現しているか,あるいは後者との内容的な親縁性を示すのみである。 このような在り方は,ブレスラウ法教示の場合とは全く異なる。後者の 条中の後半部分で,ザクセンシュピーゲル・ラント法の条文が 場合,全64 頻繁に引用されている。具体的には. 5 条(ザクセンシュピーゲル・ラ 第5. 2 . ~ 4) 以下において,ほぼ原形を保った条文が続いてい ント法 1・2 る侶)。さらに,その後の 1 2 8 3年の追加条文 ( 1 5 条)の部分でも,そのよう な条文が 9条も存在するのである。. ( 1 ) 参審人法の第26 条まで前半部分. ここまでの条文は,ブレスラウ法教示の第3 8 条までの条文に,ほぼ同じ 法文の条文を見出すのであるが,前述のように,この部分をマグデブルク の参審人が,かなり体系性を考慮して編纂した可能性は高く,その条文配 列もブレスラウ法教示とは異なっている。そのような編纂作業のためであ 条以下に比べて,ザクセンシュピーゲル・ラント法と関連性 ろうか,第27. 6 条にまとめられた3 9 のない条文も相対的に多い。筆者が管見する限り, 2 法文ω中に, 1 6 法文も存在する ( 4 1 % ) ( θ。 この41%という比率を見る限り,この部分における,参審人法の独自性 - 48(117)一.

(25) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について は際立つている。しかし,それらの法文は,すべて内容的にも全く異なる ものであるという訳ではない。. 6 法文を実際に眺めてみよう。前述のように,第2 6条までは, これらの 1 その配列に体系性が感じられるのであるから. これらの 1 6 法文も幾つかの. グループに分類して眺めることができる。 まず,第 1条(人はマグデブルクにどのようにして定住したのか),第 2条(小売り商について),第 4条(ブルクグラーフの裁判について),第. 5条(シュルトハイスの裁判について)の 4条である。これらの条文は市 政や統治構造と関係する条文であり,そもそもザクセンシュピーゲルがほ とんど取り扱っていない法分野である。まさに都市法としての新しさが前 面に出ている。 しかし,第 6条(傷害罪について) ~ 2と,第 7b条(傷害罪について) から第1 0 条(傷害罪について)の 4条と,第 1 4 条(傷害罪について)と第. 15a条(傷害罪について)の 2条の合計 6法文は,第 6条から第 1 5条に至 る傷害罪に関する立証等の刑事訴訟手続きの部分に を 1つのグループとして捉えるならば. 位置している。後者. これはザクセンシュピーゲル・ラ. 6 ) これらの 6法文は,極め ント法に関連条文を見出すことは可能であり (. て広義でのザクセンシュピーゲルの関連法文となる。 その後,差し押さえの手続きについて規定した第1 7条(差し押さえにつ ,第1 8 条(差し押さえについて)も,同様に,ザ、クセンシュピー いて) ~ 1 ゲル・ラント法に関連条文を見出せなくもない。 そして,裁判集会での贈与の際,平和金の支払いを命じた第21a条(贈 与について)と,証人の出頭について規定した第22条(債務について) ~. 1の , 2法文は,参審人と裁判人によって開催される裁判集会に関係す. るから,同じく,ザクセンシュピーゲル・ラント法に,広義であれ,関連 条文を見出すことも不可能ではない。 - 49(116)一.

(26) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. 残りの 2法文の内,巡礼や商業旅行による訴訟の中断を認める第2 3条 (ある者が巡礼に赴く場合)は幾分,都市的な活動を考慮した法文と言えな くもないが,もう一つの,決闘について規定する第26条(レヒテ・ゲ. !2は,第 6条から第 1 5 条に至る傷害罪に関する立証 ヴェーレについて) 3 等の刑事訴訟手続きの部分に含めることもできるように思われる。 以上の言及からも明らかなように,第 5条までの最初の 4条と第2 3条を 除いて,残りの法文は,全体としてみれば,極めて広義において,ザクセ ンシュピーゲル・ラント法と関連し,内容的は,新しい一一少なくとも, 後者には収録されていない一一新たな法内容を包含していると言える。. ( 2 ) 参審人法の第2 7 条から第5 2 条まで 、 , 、 , '-'-. (全部で3 6 法文)では. かなりの法文がザ、クセンシュピーゲル・ラ. ント法に,関連する条文を見出すことができ,類似した法文を見出せない. 1法文に過ぎない(7)。これらの 1 1法文は,第44 条(訴えについて) 法文は 1 までに登場し,その後の第4 5 条(贈与について)から最後の第5 2 条(不法. 1条(現行犯について) 3 !2を除いて,ほと 行為について)までには,第5 んど登場しない。後半になればなるほど,参審人法は,ザ、クセンシュピー ゲル・ラント法との関連性を高めていることになるのであろう (8)。. 6 条(ある者が彼の財産を贈与する場合)から第50 条(ゲラーデ 特に第3 を付与された子供たちについて)までは,かなりの法文が相続法と関連し ており,相続法は,ザクセンシュピーゲル・ラント法がまさに詳細に規定 している部分でもあるから. それだけ重複部分も増えることになる。その. 他の法文も,裁判,刑罰,保証,差し押さえ等と関連し,全体的にも,前 者の法源との類似性は高いのである。 このような中での,ザクセンシュピーゲル・ラント法に関連する条文を. 1法文とは,知何なるものであろうか。 見出せない前述の 1 - 5 0(115)ー.

(27) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について 条(奉公人の賃金について) 3 !2は , まず,飲み代について規定する第28 同!3 1が,言わば,奉公人の賃金に対する先取特権を規定しているから, この!32はその延長線上にあり,差し押さえ等の,裁判集会での民事訴訟 手続きと関係することになる。同じような訴訟手続きの規定であるのは, 差し押さえについて規定する第3 5 条(ある者が財貨を差し押さえる場合). 既に支払われた債務の証明に関する第40 条(債務について).第42 条(不 動産の証人について) 3 !2 裁判の中断と和解に関する第44 条の 4法文であ る。これらの法文は ザクセンシュピーゲル・ラント法と内容的に全く関. 6 条までと同じく,むしろ,新し 連性を持たない,という訳ではなく,第2 い法内容を追加させた,という印象を与える。 同様に,第36 条以下の,主に不動産法と関係する部分に登場する,世襲 賃借地の妻への贈与の禁止を規定する第37 条(賃借地について) ~ 3にも, このことは妥当する刷。. 1条!32は,中世ドイツの裁判において重要な役割を演じる証人の資 第5 格について,きわめて周知の一一ただし,その規定はザクセンシュピーゲ ル・ラント法には見当たらない一一一法原則を繰り返している。「証人として 彼はいかなる者でも持ちうる。その者を人が権利喪失者として非難しえな いので、あれば。ただし『彼の父,彼の兄弟,そして』彼の息子と彼の家僕 を除いて。」 ωこの規定は,証人とはいかなる人物でなければならないか を,再度宣言した印象を与える。 家宅侵入罪の立証に関する. 新たな条文として第3 3 条(家宅侵入につい. て)が登場するが,このような刑事訴訟手続きと関係する条文も,ザクセ ンシュピーゲル・ラント法では少なくない。 これに対して,動産化と関係する第38 条(動産について) ~ 2は,都市 法的な法制度としての動産化を扱っており. これはザクセンシュピーゲ. ル・ラント法にはない。「ある者が財産を相続し. (その後)彼が彼の妻を - 5 1(114)一.

(28) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. 要り,彼がそれを商品または動産におくのであれば(=動産化),それを 彼は,彼が健全な間であれば,贈与することできる。彼が望む時に,いか なる者の異議もなく」 ω 。. 0 条(裁判役人 隷属民である寡婦と婚姻する際の手数料を規定する第3 ( vronenboten) の権限について)も,. ドイツ中世都市法の原則の一つであ. る「都市の空気は自由にする」を前提にしているように見える。「ある者 が一人の寡婦を市内で妻とするのであれば彼は裁判役人に 5シリングと. 1/2プフェニッヒを支払うべきである。しかして,その妻が隷属民の女 性であって,彼女がいかなる夫も有していなかったのであれば,彼はそれ を支払う必要はない。もし彼女が自由の身になっていたのであれば」 ω。 したがって,ここでも,都市法的な,または都市マグデブルクに固有の 数条を除いて,多くの法文が,おそらくザ、クセンシユピーゲル・ラント法 と関連するが,内容的は,新しいー一一少なくとも,後者には収録されてい ない一一法内容を包含していると言える。 註. (1)例,官1. Goer 1 i t z ,a . a . O .,S .1 9 f . H .Luck ,S a c h s e n s p i e g e lundMagdeburger R e c h t ,E U r O p a i s c h eD i mensionenz w e i e rm i t t e l d e u t s c h e rR e c h t s q u e l l e n,Hamburg ,1 9 9 8 .最近の研究である後者のリュック論文でも,ザクセンシュピーゲル が,参審人の判告活動によって都市法に取り込まれていったと指摘するのみで ある。 (訪第46条~ 2も , 1 ・ 24 ・~ 2とほぼ同じである。. 司 ( 第44 条(馬の窃盗)と第50 条(自由身分の証明)も,関連条文をザ、クセンシュ ピーゲル・ラント法に見出す。. ( 4 ). ~に細分された法文や,項目的に分けられた法文(第16条)を 1 法文として. 計算した。周知のごとく,ザクセンシュピーゲルはまさに当時の普通法であ り,その対象とする法領域は極めて広いから, ドイツ中世の大抵の法文は,多 かれ少なかれ,ザクセンシュピーゲルと関連する場合が多い。実際に,参審人 法の条文とザ、クセンシュピーゲルを実際に比較してみても,関連性を全く否定 できないので、はないか,あるいは反対解釈すれば関連性が認められるのではな いかと,判断に窮する場合も少なからず存在する。後掲の比較表も,したがっ て,取り敢えず参考程度にご覧いただければ幸いである。 - 52(113)ー.

(29) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について 参審人法. 1 . 2 . 3 . 4. 5 . 6 .~ 1 ~ 2 7a . 7b . 8 . 9 .. 1 0 . 11 .. 1 2 . 1 3 . 1 4 . 15a. 15b. 1 6 .. ~. 3 (村長). 1 .53. 1. ・~. (叫喚告知), 1 ・ 66 ・~. 1 (7人の証人) 3 (翌日の提訴). 1.67.~1. (被告の不出頭), 1 ・ 70 ・~. 2.71.~2 1 ・ 70 ・~ 3 3 .12 ・~ 1 3 ・ 36 ・~ 1. (市内での帯剣の禁止) (翌日の提訴) (訴えの優先順位:ただし民事) (平和違反). 2 (ヴ、エンド人の訴え), 3 ・ 71 ・~ 1 (言語) 1 (モルゲンガーベ), 3 ・ 76 ・~ 1 (寡婦の請求権) 1 (一期分の付与) 1 ・ 20 ・~ 9 (モルゲンガーベは単独誓約) 1 ・ 13 ・~ 1 (嫁資を与えられた子供と,未だの子供). ・~ 1 ・ 20 ・~ 1 ・21. ~. 2 3. 1 8 . 1 9 . 2 0 . 21a. 2 1b . 2 2 .~ 1. 2 3 .. 2 ・ 13 ・~. 3 .70. 1 7 .~ 1 ~ ~. ザクセンシュピーゲル・ラント法. 2. 1 ・ 5 ・~. 2 (子供間での等分). 2 ・ 44 ・~. 1 (1年と 1日の異議もなく). 3 ・ 25.~1. 1 (兄弟姉妹) 1 ・5 .~ 3 (聖職者である子供の相続分). 2 ・ 20 ・~. 1 ・ 62 ・~. 6 (証人は 6週間以内). 2 ・ 5 ・~. 2( 1 4 夜以内の債務支払い義務). 2 ・ 12 ・~ 5 (判決非難の 購罪金) 1 ・ 8 ・~ 3 (裁判人と 2人の証明:参審人) 1 ・ 8 ・~ 3 (裁判外での和解) 3 ・ 14 ・~ 2 (刑事被告人の保障), 2・1 5 . ~ 1 (保障蹟罪金). 2 ・ 12 ・~. 2 4 .. 2 5 .~ 1 ~. 2. ~. 2. 2 6 .~ 1. (裁判人と参審人の証明). 2 (不当な判決非難),. 日 ( したがって,ザ、クセンシュピーゲル・ラント法にー一一内容的に類似するだけ の法文も含めて一一関係する条文をザ、クセンシュピーゲル・ラント法に見出せ. 3 法文である(約59%)。 るのは2 ( 6 ). 例えば,第 6 条~ 1 と,ザ、クセンシュピーゲル・ラント法の 1 ・ 53 ・~. 1と. 1・ 6 6 .~ 1 0 げ ) 約30%。ただし,後掲の表からも明らかなように,第3 1条(馬の売り主の保 1条(世襲賃借地について)は,ザクセンシュピーゲル・ラント法 証)と,第4. - 5 3(112)一.

(30) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号 との関連性はかなり低い。 侶). 法 一. 2. Is--zal2.LZ ss . a M . 広 明ω . u . ぉ.m.44. .Mta 必a. 人 一 審 一 参一匁犯. m m .ぬ担.沼. 4 6 .~ 1 . ~. 2 .. 4 7 .~ 1 . ~. 2 .. 4 8 . 4 9 .. 5 0 . .~ 1 . 51. ザクセンシュピーゲル・ラント法 2 ・ 17 ・~ 1 ・ 22 ・~. 2 (父による息子の請け出し) 2 (家僕の賃金). 2・1 3 . ~ 3 (虚偽の売買). 3 .51. 2 ・ 13 ・~. 2 (馬の保証:関連性は薄い) 1 (窃盗犯:ほぼ同じ). 2 ・ 4 ・~. 1 (自己の引戻し), 3 ・1 7 .一1 8 . (追放からの. ・~. 引戻し) 1 ・ 21 ・~ 1-~ 2 (妻への一期分の贈与) ~ 1 (賃借地上の建物の相続) 2 ・ 21 ・~ 3 (所有地上の建物の一期分?). 2 ・2 1•. 1 ・ 17 ・~. 1 (相続順位原則:直系卑属親の重視). 1 ・ 54.~3. (賃子の未払い:関連性は薄い) 2 ・ 22.~ 1 (裁判集会義務 者の立証). 1 ・ 62 ・~. 6 (土地の証明),. 2 ・ 6 ・~. 2 (債務支払いの立証:同じ). 1 ・ 22 ・~ 3 (ムースタイ ル) 1 ・22. ~ 4 (ヘールゲ、ヴェーデ) 1 ・ 24 ・~ 2 (肥育豚はムースタイル) 1 ・ 24 ・~ 3 (ゲラーデ) 1.27.~1 (ゲラーデの相続), 1 ・ 31 ・~ 1 (ゲラーデ の相続) 1 ・ 23 ・~ 1 (剣親の後見人) 2 ・ 43 ・~ 2 (世襲財産>獲得財産), 2 ・ 44 ・~ 1 (1年 と 1日) 1 ・ 5 ・~ 2 (嫁資を与えられていない娘のゲラーデ) 1 ・63. ~ 2 (叫喚告知の手続き) 1 ・ 17 ・~. 1 (相続順位原則),. ~2.. 5 2 .~ 1 . ~2. ~3 .. 1 (叫喚告知による裁判所への連行) 1 (犯罪者の建物の破壊) 3 ・ 1 ・~ 1 (強姦の場所) 1 ・ 66 ・~ 3 ・ 1 ・~. 伯) 同じく,世襲賃借地について規定しているのは第4 1条である。ここでは,教. 会の世襲賃借地について賃借入が,何人の証人とともに,その賃借地であるこ とを立証するのか,が定められている。. - 54(11)一.

(31) 1 2 7 0 年頃の法史料「マグデブルクの参審人法」について ω Z ug e c z u g emach e rh a b e ni e g l i c hman,d e nmanr e c h t l o sn i c h tb e s c h e l d e n maca ns i n e nv a t e ru n d es i n e nb r u d e rv n ds i n e ns u ns i n e nknech . t ωHata b e re i nmang u t ee r e r b e i t ,s i n tdemm a l ed a sh e rs i nw i pnamvndl e g e t h e rd a sa nk o u f s c h a c zo d e ra nv a r e n d eh a b e,d a smach e rg e b i nb is i n e mg e s u n e rw i 1,a ni e m a n d e sw i d e r r e d e . deml i b e,swenneh ωNimmte i nmane nw i t u b e nb i n n e nw i c h b i 1 e d e,d e rs 0 1demv r o n e b o t e ngeben 刊 n fs c h i l l i n g evnde i nh e 1 b e l i n c . 1 s ta b e rd a sw i pe i nh u b i s c hw i pgewesen,d a s ,d ie nd o r fn i c h tg e b e n,wennes iv r ig e v a g e t s ik e i n e ne 1 i c h e nmanh a tg e h a b e t . t i s. r. 5 . ザクセンシュピーゲル・ラント法』の解釈. これまでの検討から,参審人法が,多かれ少なかれ,広義であれ狭義で あれ,ザクセンシュピーゲル・ラント法に淵源を持つような条文を多数含 んでいることが分かる。しかし,それらの法文の多くは後者と同じではな く(1)ある種の新しさを持っている。. ( 1) 法原則の修正. ザクセンシュピーゲル・ラント法は,後にドイツ中世における普通法的 な役割を果たすようになるのではあるが,しかしその条文内容は,具体的 な事例に基づいているからであろうか,その読者にとって必ずしも分かり. 3 世紀後半の当時の人々にとっても, やすいものではない。これは,既に 1 そうであったようである。この参審人法に収められたザクセンシュピーゲ ル・ラント法と関連する条文は. このような人々の疑問に対するマグデブ. ルクの参審人たちの教示または判決のように見える。 ① 法文の拡張そして追加・補充. 8 条(奉公人の賃金について) ~ 1は「人は,彼の奉公人と 例えば,第2 しての賃金を,聖遺物への 5シリング(を賭ける誓約)によって獲得する - 5 5(110)一.

(32) 近 畿 大 学 法 学 第5 1巻第 1号. ことができる。しかして,雇い主が聖遺物にかけて,彼が彼に(その賃金 を既に)支払ったことを,彼を含めて 7人の者とともに証明するのであれ ば,彼は,前者が(その賃金を)獲得することに,優先して(その訴えを) 免れることができる J ( 2 ) と規定する。 これとよく似た法文がザクセンシュピーゲル・ラント法の 1 ・ 22 ・~. にある。そこでは. 主人が死亡した後30日忌までに. 2. 家僕は彼らの給料を. 先取りすることができ,もし人がその支払いを拒む場合には,家僕たちは 3 )。これは,前 聖遺物にかけて取得することができる,というものである (. 述の第28条の後半部分と 5シリングの金額部分を除けば,意味的には同じ である。第28条の後半部分の,雇い主側の聖遺物にかけての誓約は,ザク センシュピーゲル・ラント法にはない。明らかに. 参審人法はザクセン. シュピーゲル・ラント法の法文に後者の部分を追加し,それによって雇い 主にも,奉公人と同様の立証方法を許容しているのである。これは何を意 味するのか。 ザクセンシュピーゲル・ラント法の規定は,確かに奉公人の立場に立て ば,自分たちの賃金が自分たちの誓約によって獲得するのであるから,彼 らにとってはありがたい。しかし,雇い主にとって,もし彼らがその賃金 を既に支払っており,そのことを主張したいと思っても,その方法は何ら 規定されていないのであるから,この規定では不都合なのである。つま り,この参審人法の第28条の登場の背景に,このような,雇い主側からの 訴えがあったことを想像させる。すなわち,雇い主が既にその賃金を支 払ったと主張する場合,彼はそれをどのように立証すべきか,という問い 合わせまたは判決質問がマグデブルクの参審人に対して行われたのではな いか,ということである。そして,その彼らの教示または判決が,この第 28 条の後半部分ではなかったのでないのか。. このような,ザクセンシュピーゲル・ラント法への法文の追加・補充に - 5 6(109)一.

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