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汎用分散遺伝的アルゴリズムの実装とグリッドミドルウェアへの対応

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Academic year: 2021

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57回 月例発表会(2003年4月) 知的システムデザイン研究室 汎用分散遺伝的アルゴリズムの実装とグリッドミドルウェアへの対応 澤田 淳二

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はじめに

構造物の設計,化学反応シミュレータのパラメータ設 定など,様々な分野において最適化が必要とされている. そのため,特定の分野に特化した最適化ソフトウェアで はなく,汎用的に利用可能な最適化ソフトウェアが有用 となる.また,大規模な実問題の最適化には,非常に長 い時間を必要とする.そのため,最適化ソフトウェアで は,計算時間短縮のために,処理の並列化が可能である ことが望ましい. 広範囲の問題に適用可能な最適化手法に遺伝的アルゴ リズム (Genetic Algorithm : GA) がある.一方,大規 模な計算を行うための環境として,グリッドが注目され ている.グリッドとは,広い地域に配置された計算資源 や情報資源を結びつけて,広域的に分散/並列計算を行 うための基盤のことである. 本研究では,汎用最適化ソフトウェアである ga2k の グリッド環境での使用を想定し,グリッドのミドルウェ アとして,Condor を利用する場合と NetSolve を利用す る場合を比較する.

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遺伝的アルゴリズム

GAは,生物の進化を模倣した確率的な最適化手法で ある.GA では,探索空間上の探索点を生物の個体とみ なし,個体の集合体である母集団に,選択,交叉,突然 変異という遺伝的操作を繰り返し加えることにより,解 探索が行われる.GA は,目的関数の勾配情報を使用せ ずに解探索を行うため,連続問題にも離散問題にも適用 できるという利点がある.また,多峰性の関数に対して も大域的最適解を得ることが可能である.

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グリッドとそのミドルウェア

ネットワーク技術が進歩を遂げることにより,高い通 信性能を持つネットワークが利用できるようになった. これに伴い,広い地域に配置された計算資源や情報資源 を結びつけて,広域的に分散/並列計算を行うための基 盤となるグリッドと呼ばれる計算環境が研究されるよう になった.グリッド環境では,いくつかの問題点が存在 する.例えば,異なるアーキテクチャをもつ計算機間で のデータ形式の変換や計算資源の管理などである.通常, これらの問題を解決するために,ミドルウェアを使用す る.ミドルウェアの例として,ジョブスケジューリング を行う Condor 1) やグリッド上に存在する計算資源を 利用するための RPC システムである NetSolve2) が挙 げられる.

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汎用最適化ソフトウェア ga2k

最適化ソフトウェアに求められる機能は,次の三点で ある. • 任意の対象問題に適用可能であること • 並列化が可能であること • 高精度の解を探索可能であること 本研究では,汎用最適化ソフトウェアとして ga2k を 作成した.ga2k には次のような特徴がある. (1) 最適化手法として分散 GA を使用 (2) 任意の対象問題のためのインターフェース (3) MPIを用いたサブ母集団ベースの並列モデル (4) MPIを用いたマスタースレーブモデル Condorでは,MPI プログラムの実行をサポートし ている.Condor を用いてジョブを実行することによ り,MPI マスタースレーブモデルをグリッド環境で 使用することが可能となる.この場合,マスターも スレーブも Condor Pool 中の計算機が用いられる. (5) NetSolveを用いたマスタースレーブモデル NetSolveマスタースレーブモデルでは,評価計算処 理が NetSolve Server に分配され,それ以外の処理 は NetSolve Client が行う.NetSolve により,自動 的に評価サーバの負荷状況に応じて評価計算処理の 分配が行われる.

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Condor

と NetSolve を用いた ga2k マス

タースレーブモデルの比較

ga2kのグリッド環境での使用を想定し,MPI マスター スレーブモデル ga2k を Condor を利用して実行する場 合と,NetSolve マスタースレーブモデル ga2k を実行す る場合を比較する. 実験には PC クラスタを使用した.実際のグリッド 環境とは異なり,通信速度や各計算機の処理能力は均一 である.各ノードの CPU は Pentium III 800MHz であ

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り,ノード間は 100Mbps の FastEthernet で接続されて いる. 計算負荷の高い問題として HIDECS を用いたディー ゼルエンジン燃料噴射スケジュール最適化問題を使用し た.HIDECS は,ディーゼル燃焼のシミュレートに高い 計算負荷を必要とする.使用した実験環境では,1 回の 評価計算に約 20 秒の時間を要した. 5.1 実行時間 30回試行での実行時間の中央値を Fig. 1 に示す.Net-Solveは,Condor を利用して MPI プログラムを実行す る場合と比較して,長い実行時間が必要なことがわかる. Elapsed time[sec] 0 100 200 300 400 500 600 Condor NetSolve

Fig. 1 Elapsed time

5.2 オーバーヘッド 1 個体あたりの通信時間の平均値を Fig. 2 に示す. MPIでは,通信に要する時間は少ないことがわかる. 一方,NetSolve では,大きな通信オーバーヘッドがか かることがわかる. Communication time[sec] 10-4 10-3 10-2 10-1 100 101 Condor NetSolve Fig. 2 Overhead 5.3 障害耐性 MPIプログラムを Condor を用いて実行する場合は, 障害が発生した場合に常に実行が中断されてしまうが, NetSolveでは,エラーメッセージに応じて障害への対処 が可能である.1 回のジョブの実行に長い時間を必要と する場合,実行の途中でジョブが中断されてしまうとそ の損失は大きい.よって,障害耐性の点では,NetSolve が有利であると言える.ただし,NetSolve の障害対策 を実現するためには,プログラマが適切な処理を記述す る必要がある. 5.4 導入コスト Condorは,NetSolve と比較して,導入時に必要とな る設定項目が多い.また,インストールに必要なディス ク容量も,Condor の方が大きくなる. 5.5 ジョブ投入時のユーザビリティ Condorでは,ジョブを実行する際に,ジョブに関す る情報を記述する必要があり,敷居の高いものとなる. NetSolveは,通常のプログラムと同じようにコマンド ラインから実行するだけでよい.

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まとめ

実行時間,システムのオーバーヘッドという観点で比 較すると,MPI マスタースレーブモデルを Condor を利 用して実行する方が NetSolve よりも有利であると言え る.一方,障害耐性を比較すると,NetSolve では障害 の検出が行えるため,障害が発生した場合でもプログラ ムが継続可能であり,NetSolve マスタースレーブモデ ルの方が有利であると言える. 以上のことから,使用する環境が安定している (障害 の発生が少ない,計算資源の追加・削除が頻繁に行われ ない) 場合は,MPI マスタースレーブモデルを Condor を利用して実行するのが適していると言える.それに対 し,使用する環境が安定していない場合は,NetSolve マ スタースレーブモデルが適していると言える.

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今後の課題

まもなく,NetSolve 1.5 がリリースされる.NetSolve 1.5では,処理の高速化が行われている.今後の課題と して,NetSolve 1.5 でのオーバーヘッドを計測すること が挙げられる. また,Condor 上でマスタースレーブモデル GA を実 装する方法として,MW ライブラリというものが提供さ れている.このライブラリ上に ga2k を実装し,NetSolve との比較を行う必要がある.

参考文献

1) Jim Basney and Miron Livny. Deploying a High Throughput Computing Cluster. In Rajkumar Buyya, editor, High Performance Cluster

Comput-ing, Vol. 1, chapter 5. Prentice Hall PTR, May 1999.

2) Henri Casanova and Jack Dongarra. NetSolve: A Network Enabled Server for Solving Computational Science Problems. The International Journal of Supercomputer Applications and High Performance Computing, Vol. 11, No. 3, pp. 212–223, Fall 1997.

参照

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