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Title
№6:メカニカルストレスを与えた歯根膜線維芽細胞に
対するニコチンの影響
Author(s)
飯島, 由貴; 末石, 研二; 松坂, 賢一; 井上, 孝
Journal
歯科学報, 115(5): 473-473
URL
http://hdl.handle.net/10130/3828
Right
目的:エナメル質欠損,歯肉退縮により露出した象 牙質への温度・圧力・酸塩基等の刺激は象牙細管内 液の移動を生じ,象牙質痛を誘発する。近年,象牙 芽細胞が感覚受容器として歯髄ニューロンと神経伝 達を確立することで,象牙質感覚に関連することが 報告された。歯痛において重要な役割をもつ象牙芽 細胞であるが,一方でその生物物理学的・電気生理 学的特性は未だ解明されず残されている。そこで本 研究では,急性単離した象牙芽細胞膜に発現してい る電位依存性イオンチャネルの電気生理学的特性を 検討した。 方法:57日齢の新生仔ウィスターラット切歯か ら歯髄スライス標本を作製し,象牙芽細胞を得た。 Whole-cell patch-clamp 法を用いて,象牙芽細胞膜 からイオンチャネル電流を計測した。標準細胞外液 と し て Krebs 液(pH7.4)を 用 い,電 極 内(細 胞 内)液組成として(mM),140KCl,10NaCl,10HEPES (pH7.2)を 用 い た。細 胞 外 液 K+ 濃 度([K+ ]o)は, Krebs 液から Na+ を等モラー濃度で置換することで 様々な細胞外[K+ ]o溶液(10,50,100mM)を作 製した。また,同様に細胞外 Cl-を等モラーで glu-conate に置換し,Cl-free 細胞外液を作製した。 結 果:象 牙 芽 細 胞 の 静 止 膜 電 位 は−48mV±12.5 (n=17)であった。保持電位(Vh)70mV から10 mV ステップの電位刺激を行ったところ,delayed rectifier type(遅延整流型)の外向き電流が記録さ れた。[K+] oを10mM,50mM,100mM と変化させ たところ,[K+ ]oが増加するにつれ外向き電流の反 転電位は脱分極側にシフトした。また細胞外 Cl を gluconate に置換すると,その反転電位は純粋な K+ 透過性を示す Nernst の方程式によく近似した。 考察:結果から遅延整流型電位依存性 K+ チャネル の象牙芽細胞膜における発現が示された。また細胞 外 Cl の除去により反転電位が変化することから, 象牙芽細胞に Cl 透過性が存在することも示唆され た。 目的:近年,喫煙率の増加が社会的な問題となって おり,歯科領域では歯周病に対するニコチンの影響 が報告されている。歯科矯正学分野においては矯正 学的歯牙移動に対するニコチンの影響を検討してい るものは少なく,基礎科学的に証明したものはほと んどない。本研究では,ラット歯根膜線維芽細胞に ニコチンを投与し,矯正力を想定したメカニカルス トレスを与えることで産生される RANKL,OPG, IL-6,TNFα,VEGF について分子生物学的な検 討を行った。 方法:4週齢の Sprague-Dawley 系,雄性ラットの 切歯より歯根膜を採取し通法に従って培養したの ち,第5継代目の細胞を実験に用いた。ニコチンと メカニカルストレスを与えた群を実験群とし,対照 群としてはニコチンとメカニカルストレスを与えて いない群,ニコチンを与えた群,メカニカルストレ スを与えた群の計4群に分けた。ニコチン濃度は20 ng/ml とし,メカニカルストレスは遠心機によっ て2000rpm の 遠 心 力 を20分 間 毎 日 与 え た。1, 3,5日 後 に 通 法 に 従 い mRNA を 抽 出 し,定 量 RT-PCR(TaqMan 7500Fast,Applied Biosystems)
に て RANKL,OPG,IL-6,TNFα,VEGF の 発 現 量 を検索した。 成績および考察:RANKL および OPG の発現量は ニコチン投与群において3日後および5日後に高く 発現したが実験群では発現がみられなかった。IL-6の発現量はいずれにおいてもニコチンの影響はな く,5日後においてメカニカルストレス群および実 験群で高い発現がみられたが,両群に有意な差は認 めなかった。TNFα の発現は,ニコチン投与群の 5日後で高い発現がみられたが,メカニカルストレ ス群,実験群では発現はみられなかった。VEGF の発現量はいずれの群においても発現はみられたが 有意な差はみられなかった。これらの結果より,歯 根膜線維芽細胞にニコチンを投与すると RANKL と OPG,TNFα,VEGF が発現するが,メカニカ ルストレスによってそれらの発現は抑えられること が示された。一方,メカニカルストレスはニコチン の有無に関わらず IL-6の発現を促進した。以上よ り,ニコチン投与は骨吸収に影響するサイトカイン を放出するが,メカニカルストレスは,その影響を 抑えることが示唆された。