Kobe Shoin Women’s University Repository
Title 荘子・寓の系譜
Author(s) 高馬 三良
Citation 文林(BUNRIN),No.18:85-113
Issue Date 1983
Resource Type Bulletin Paper / 紀要論文
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荘 子 ・寓の系譜
荘
子
・
寓
の
系
譜
よ局
馬
良
一 す で に 前 号 で 述 べ た よ う に 、 荘 子 は 天 道 の 公 理 を 措 定 し て か ら 、 地 上 に 住 む 人 聞 と し て あ る べ き 定 理 を 三 項 に わ た っ て 帰 納 し た 。 イ 、 為 是 不 用 、 而 寓 諸 庸 ( 是 物 の た め に 用 い ら れ ず し て 、 こ れ を 庸 も ち う る こ と に 寓 せ よ ) ロ 、 寓 諸 無 寛 ( こ れ を 無 寛 無 限 に 寓 せ よ ) ハ 、 寓 於 不 得 已 (已 む を 得 ぎ る 自 然 に 寓 せ よ ) こ の 小 論 で は 寓 や 物 の 創 造 、 寓 の 思 想 か ら 假 観 へ 、 な ど に つ い て 考 え て み た い 。 段 注 説 文 に よ っ て 寓 の 字 解 を 引 用 す る 。 寓 、 寄 也 、 段 玉 裁 注 、 方 言 日 、 寓 、 寄 也 、 左 伝 日 、 寓 書 、 史 記 日 、 木 禺 者 、 寓 之 假 借 也 、文林 十八号 右 の 注 の 方 言 と は そ の 巻 二 で あ る 。 ま た 左 伝 の 例 は 裏 公 二 十 四 年 の 文 、 子 産 寓 書 於 子 西 、 以 告 宣 子 、 ( 子 産 、 書 を 子 西 に 寓 し 、 以 て 宣 子 に 告 ぐ ) 注 、 寓 、 寄 也 、 史 記 日 ・ は 封 禅 書 第 六 を 指 し 、 木 禺 龍 と は 天 を 祭 る と き に 用 い る 木 製 の 龍 で あ る 。 そ の 集 解 に い う 、 漢 書 音 義 日 、 駆 案 、 禺 、 寄 也 、 寄 生 龍 形 於 木 也 、 索 隠 、 禺 、 音 偶 、 謂 偶 其 形 於 木 、 禺 馬 亦 然 、 ( 龍 形 を 木 に 寄 生 す る な り 。 索 隠 、 偶 、 音 偶 、 其 の 形 を 木 に 偶 す る を 謂 う 、 掲 馬 も 亦 然 り ) ま た 史 記 ・ 孝 武 本 紀 に は 、 以 木 稿 馬 代 駒 焉 、 (木 縞 馬 を 以 て 駒 に 代 う ) 、 そ の 索 隠 に 、 一 音 偶 、 孟 康 云 、 寓 寄 龍 形 於 木 、 又 眺 ヨ ゥ 氏 云 、 寓 、 假 也 、 以 言 假 木 龍 馬 一 晒 、 非 寄 寓 龍 馬 形 於 木 也 、 ( 寓 は 俣 る な り 。 以 て 木 に 假 る 龍 馬 一 駆 乗 、 ひ と く み を い う 。 龍 馬 の 形 を 木 に 寄 寓 す る に は 非 ざ る な り ) 木 寓 は 木 偶 と も 木 鵜 と も 書 い た し 、 ま た 偶 車 馬 (漢 書 列 伝 四 十 六 ・ 韓 延 寿 伝 ) と も 。 禺 ・ 縞 ・ 偶 は い ず れ も 寓 の 恨 借 で あ る 。 史 記 . 孟 嘗 君 伝 に は 木 偶 人 と 土 偶 人 の 会 話 が 記 さ れ て い る が 、 い ず れ に も 木 の 一 部 に 龍 や 馬 を 彫 り こ む の で は な く て 木 製 の 龍 で あ り 馬 で あ る 。 従 っ て 老 子 五 章 の 、 天 地 不 仁 、 以 万 物 為 鋼 狗 、 聖 人 不 仁 、 以 百 姓 為 甥 狗 ・ の 鋼 狗 は 草 寓 狗 で あ る し 、 准 南 子 の 説 林 訓 、 旱 天 に 雨 を 呼 ぷ と い う 土 龍 は 土 寓 龍 で あ っ て 材 質 を 異 に す る だ け で あ る 。 そ れ ぞ れ の 材 質 に 身 を 寄 せ た も の 、 身 を 託 し た も の で あ る 。 説 文 で そ の 語 群 を み る と 次 の 通 り 、
寓 、 寄 也 、 寄 、 託 也 、 託 、 寄 也 、 客 、 寄 也 、 ま た 挑 氏 注 で は 寓 、 偶 也 、 で あ る 。 亡 国 の 君 で 他 国 に 寄 寓 す る も の を 寓 公 と も 寄 公 と も 言 っ た が 、 概 し て 寓 に は 自 分 自 身 に は 主 体 性 が な く て 、 あ る 物 に わ が 身 を 寄 託 す る 、 客 と な る こ と で あ り 、 そ の 物 を 假 (借 ) る こ と で あ る 。 そ こ で 寓 が 成 立 す る た め に は ま ず 物 が 存 在 し な け れ ば な ら な い 。 客 の 字 の 段 注 に 自 此 託 彼 ・ と あ る よ う に 、 こ ち ら か ら か の 物 に 身 を 託 す の で あ る 。 そ の 意 味 で 寓 は 物 (有 ) の 世 界 の 出 来 事 で あ る 。 荘 子 ・寓 の系 譜 物 の 世 界 、 物 の 創 造 に つ い て 荘 子 は 自 分 の 言 葉 を 持 っ た 。 造 物 者 、 造 化 者 、 造 化 ・ の 新 語 で あ る 。 造 物 者 は す べ て の 物 を 造 る 、 人 間 世 篇 で 櫟 レ キ 社 の 神 が い う 、 若 与 予 、 皆 物 也 、 奈 何 哉 其 相 物 也 (汝 と 予 と は み な 物 な り 、 い か ん せ ん や 、 そ れ た が い に 物 た る こ と ) 。 物 で あ る こ と は 存 在 の 前 提 で あ る か ら 、 互 い に 物 で あ る こ と は い か ん と も し が た い 。 そ の 物 は 造 物 者 か ら み れ ば 与 え 、 選 び 、 授 け た も の で あ り 、 被 造 物 者 か ら み れ ば 与 え ら れ 、 選 ば れ 、 授 け ら れ た
文林 十八号 も の で あ る 。 一 受 其 成 形 ・ ( 一 た び 其 の 成 形 を 受 く る や ) と 斉 物 論 篇 に 受 。 と い う の は こ の こ と で あ る 。 貸 借 の 関 係 で い え ば わ れ わ れ は こ の 身 を 造 物 者 か ら 假 借 力 シ .、 し て い る 。 眺 注 に い う と こ ろ の 寓 、 候 也 、 で あ る 。 こ の 小 論 の 大 切 な テ ー マ と な る 。 造 物 者 の 創 造 に つ い て 荘 子 は 彫 刻 と 密 接 に 関 係 ず け 、 そ の 造 形 を 比 喩 的 に 説 明 し て い る 。 従 っ て 被 造 物 、 つ ま り 物 は 一 つ の 作 品 と 解 し て よ い 。 こ う い う 点 で は 思 想 家 と し て の 荘 子 よ り 詩 人 と し て の 彼 の 素 質 を 顕 わ す も の で 、 そ れ が ま た 大 き な 魅 力 で あ る 。 以 下 造 物 に 関 す る 資 料 を 引 用 し て み た い 。 徳 充 符 篇 に い う 、 恵 子 謂 荘 子 日 、 人 故 無 情 乎 、 荘 子 日 、 然 、 恵 子 日 、 人 而 無 情 、 何 以 謂 之 人 、 荘 子 日 、 道 与 之 貌 、 天 与 之 形 、 悪 得 不 謂 之 人 、 恵 子 日 、 既 謂 之 人 、 悪 得 無 情 、 荘 子 日 、 是 非 吾 所 謂 情 也 、 吾 所 謂 無 情 者 、 言 人 之 不 以 好 悪 内 傷 其 身 、 常 因 自 然 而 不 益 生 也 、 恵 子 日 、 不 益 生 、 何 以 有 其 身 、 荘 子 日 、 道 与 之 貌 、 天 与 之 形 、 無 以 好 悪 内 傷 其 身 、 今 子 外 乎 子 之 神 、 労 乎 子 之 精 、 僑 樹 而 吟 、 拠 槁 梧 而 瞑 、 天 選 子 之 形 、 子 以 堅 白 鳴 、 恵 子 、 荘 子 に 謂 い て 日 わ く 、 人 は 故 固 、 も と よ り 情 な き か 。 荘 子 曰 わ く 、 然 り 。 恵 子 日 わ く 、 人 に し て 情 な く ん ば 、 何 を 以 て か こ れ を 人 と 謂 わ ん 。 荘 子 日 わ く 、 道 、 こ れ に 貌 を 与 え 、 天 、 こ れ に 形 を 与 う 。 い ず く ん そ こ れ を 人 と 謂 わ ざ る を 得 ん 。 恵 子 日 わ く 、 既 に こ れ を 人 と 謂 う 、 い ず く ん ぞ 情 な き を 得 ん 。 荘 子 日 わ く 、 こ れ 吾 が い わ ゆ る 情 に 非 ざ る
な り 。 吾 が い わ ゆ る 情 な き も の と は 、 人 の 、 好 悪 を 以 て 内 に そ の 身 を 傷 や ぶ ら ず 、 常 に 自 然 に 因 り て 生 を 益 さ ざ る を い う な り 。 恵 子 日 わ く 、 生 を 益 さ ず ん ぱ 何 を 以 て か そ の 身 を 有 た も た ん 。 荘 子 日 わ く 、 道 、 こ れ に 貌 を 与 え 、 天 、 こ れ に 形 を 与 う 。 好 悪 を 以 て 内 に そ の 身 を 傷 る こ と な か れ 。 今 、 子 は 子 の 神 心 を 外 に し 、 子 の 精 力 を 労 す 。 樹 に 僑 り て 吟 じ 、 槁 梧 机 に 拠 り て 瞑 想 す 。 天 、 子 の 形 を 選 び し に 、 子 は 堅 白 を 以 て 鳴 る の み 。 道 与 之 貌 、 天 与 之 形 (道 こ れ に 貌 を 与 え 、 天 こ れ に 形 を 与 う ) 即 ち 天 道 に よ っ て 物 の 形 貌 が 与 え ら れ る 。 こ の 天 道 を 擬 人 化 し た の が 造 物 者 で あ る 。 特 に こ こ の 天 選 子 之 形 (天 、 子 の 形 を 選 ぷ ) は 意 味 深 長 で 、 他 の 生 物 に 生 れ 出 る 可 能 性 も あ っ た の に 、 せ っ か く 人 間 と し て 造 物 者 か ら 大 切 な 生 命 を 与 え ら れ て い な が ら 、 恵 子 が 内 に は そ の 身 を 傷 り 、 外 に は 不 合 理 な 籠 弁 を 弄 し て 世 間 に 有 名 な こ と を 椰 愉 し た 。 し か し 恵 子 施 と は 無 二 の 親 友 で あ っ た 。 何 で も い え る 仲 で あ っ た 。 濠 梁 の ほ と り の 、 魚 の 気 持 が わ か る か わ か ら ぬ か の 両 者 の 談 論 風 発 は 面 白 い 。 (秋 水 篇 ) 荘 子 ・寓 の 系譜 次 に 大 宗 師 篇 に 許 由 の 言 葉 に 託 し て い う 、 吾 師 乎 、 吾 師 乎 、 躰 万 物 而 不 為 義 、 沢 及 万 世 而 不 為 仁 、 己 、 長 於 上 古 而 不 為 老 、 覆 載 天 地 、 刻 彫 衆 形 而 不 為 巧 、 此 所 遊 吾 が 師 や 、 吾 が 師 や 、 万 物 を 整 サ イ 、 細 砕 、 く だ い て 義 と な さ ず 、 沢 は 万 世 に 及 び て 仁 と な さ ず 、 上 古 よ り 長 じ て 老 と な
文林 十八号 さ ず 、 天 地 を 覆 載 し 、 衆 形 を 刻 彫 し て 巧 と な さ ず 、 此 れ 遊 ぶ 所 の み 。 こ れ と 類 似 の 文 が 天 道 篇 に 見 え 、 そ こ で は 荘 子 の 言 葉 と し て い う 、 荘 子 日 、 吾 師 乎 、 吾 師 乎 、 埜 万 物 而 不 為 戻 、 沢 及 万 世 而 不 為 仁 、 長 於 上 古 而 不 為 寿 、 巧 、 此 之 謂 天 楽 、 覆 載 天 地 、 刻 離 衆 形 、 而 不 為 右 の 二 段 の よ う な 内 容 は 老 子 に い う 玄 徳 に 相 当 す る が 、 荘 子 で は 擬 人 化 し て 吾 が 師 、 造 物 者 の 徳 を 指 し て い る 。 前 者 の 所 遊 巳 . は 後 者 の 天 楽 ・ に 当 る の で 、 遊 の 意 味 は 論 語 ・ 述 而 篇 に い う 游 於 芸 (芸 に 游 ぶ ) の 游 の 義 と 考 え た い 。 従 っ て 衆 形 を 造 物 者 の て な ぐ さ み ・ 玩 具 と し な い で 、 作 品 と 訳 す 方 が ふ さ わ し く 思 う 。 万 物 は 造 物 者 の 一 手 に な る 作 品 群 で あ る 。 次 は ま た 大 宗 師 篇 の 文 で あ る 。 今 大 冶 鋳 金 、 金 踊 躍 日 、 我 且 必 為 鎮 郷 、 大 冶 必 以 為 不 祥 之 金 、 今 一 犯 人 之 形 、 而 日 人 耳 、 人 耳 、 夫 造 化 者 、 必 以 為 不 祥 之 人 、 今 一 以 天 地 為 大 鍾 炉 、 以 造 化 為 大 冶 、 悪 乎 往 而 不 可 哉 、 成 然 探 、 遽 然 覚 、 い ま 大 冶 か じ ゃ 金 を 鋳 い る に 、 金 、 踊 躍 し て 我 ま さ に 必 ら ず 鎮 錦 名 剣 た ら ん と 日 わ ば 、 大 冶 必 ら ず 以 て 不 祥 吉 の 金 と な
荘 子 ・寓 の系 譜 さ ん 。 今 、 一 た び 人 の 形 を 犯 侵 さ ん と し て 、 わ れ は 人 の み 、 人 の み と 日 わ ば 、 か の 造 化 者 必 ら ず 以 て 不 祥 の 人 と な さ ん 。 今 、 一 た び 天 地 を 以 て 大 炉 と 為 し 、 造 化 を 以 て 大 冶 と な さ ば 、 い ず く に か 往 く と し て 不 可 な ら ん や 。 成 然 ぐ っ す り と 罧 ね 、 遽 然 け ろ り か ん と し て 覚 め ん 。 天 地 を 大 い な る 溶 鉱 炉 と 見 る 。 老 子 は そ の 五 章 で 、 天 地 の 間 は 其 れ な お 案 箭 タ ク ヤ ク 、 ふ い ご の ご と き か と い っ た が 、 荘 子 の こ の 文 ほ ど 造 物 者 の 作 業 を 大 胆 に 明 確 に 表 現 し た も の は な い 。 こ の 徹 底 と 達 観 が 荘 子 の 書 を 一 層 面 白 く さ せ る の で あ ろ う 。 こ こ で は 造 ら れ る も の は そ の 恣 意 を 強 く 否 定 さ れ る 。 生 れ る に は 名 剣 で な け れ ば な ら ぬ と か 、 人 間 で な け れ ば な ら ぬ と か 、 と い う 気 ま ま な 選 択 は 許 さ れ な い 。 こ の 意 味 で 恵 子 を 批 判 し た 荘 子 が 、 天 選 子 之 形 (天 、 子 の 人 と し て の 形 を 選 ぶ ) と い っ た そ の 心 を 酌 ま ね ば な ら な い 。 と に か く 万 事 は 全 面 的 に 造 化 者 の 本 意 に 委 せ る な ら ば 、 い ず く に か 往 く と し て 可 な ら ぎ ら ん や 、 何 も の に 生 れ で よ う と 構 わ ぬ で は な い か 、 人 間 で あ る と き は 人 間 を 屈 託 な く 生 き る こ と だ 。 こ れ は 常 因 自 然 ( 常 に 自 然 に 因 る ) で あ り 、 定 理 の 寓 於 不 得 己 ( 己 む を 得 ざ る に 寓 す ) で あ る 。 悟 り の 境 涯 で あ る 。 次 に あ げ る 二 つ の 文 は 神 人 に 関 す る も の で あ る が 、 山 に 住 む 神 人 を 説 い て い う 、 や は り 造 物 の 発 想 は 同 じ で あ る 。 遣 遥 遊 篇 に 、 貌 姑 射 ば く .﹂ や の
文林 十八号 之 人 也 、 物 莫 之 傷 、 大 浸 稽 天 而 不 溺 、 大 旱 金 石 流 、 土 山 焦 而 不 熱 、 是 其 塵 垢 枇 糠 、 猶 将 陶 鋳 尭 舜 者 也 、 執 肯 以 物 為 事 、 こ の 人 や 、 物 こ れ を 傷 や ぶ る な し 。 大 浸 洪 水 天 に 稽 い た る も 溺 れ ず 、 大 旱 、 金 石 流 れ 、 土 山 焦 や く る も 熱 あ っ か ら ず 、 こ れ 其 の 塵 垢 ・ 枇 し い な 糠 ぬ か よ り 、 な お ま さ に 発 舜 を 陶 鋳 せ ん と す る 者 な り 。 な ん ぞ 肯 え て 物 を 以 て 事 と 為 さ ん や 。 陶 鋳 の 語 は や は り 大 冶 と 大 炉 の 働 き を 連 想 さ せ る 。 彫 塑 の 技 を さ し て い る 。 ま た 応 帝 王 篇 に 、 南 海 之 帝 為 憔 、 北 海 之 帝 為 忽 、 中 央 之 帝 為 渾 沌 、 憔 与 忽 、 之 徳 、 日 、 人 皆 有 七 籔 、 以 視 聴 食 息 、 此 独 無 有 、 嘗 試 繋 之 、 時 相 与 遇 於 渾 沌 之 地 、 渾 沌 待 之 甚 善 、 日 墾 = 撒 、 七 日 而 渾 沌 死 、 憔 与 忽 、 謀 報 渾 沌 南 海 の 帝 を 憔 シ ュ ク と 為 し 、 北 海 の 帝 を 忽 と 為 し 、 中 央 の 帝 を 渾 沌 と 為 す 。 憔 と 忽 と 時 に 相 い 与 と も に 渾 沌 の 地 に 遇 う 、 渾 沌 こ れ を 待 つ あ し ら ・っ こ と 甚 だ 善 し 。 憔 と 忽 と 、 渾 沌 の 徳 に 報 い ん こ と を 謀 る 。 日 わ く 、 人 皆 七 籔 キ ョ ゥ あ り て 以 て 視 聴 ・ 食 息 す 。 此 れ 独 り 有 る な し 。 嘗 試 こ 、乞 み に こ れ を 馨 つ が た ん と 。 日 に 一 籔 を 馨 っ が ち し に 、 七 日 に し て 渾 沌 死 す 。 す べ て の も の を 人 間 化 す る 。 人 間 の 立 場 の み を 固 執 し て 物 を み る こ と の 危 険 さ 、 人 為 偏 重 を き び し く 批 判 し て い る 。 人 間 の 姿 に 神 を 似 せ よ う と い う 発 想 も 奇 抜 で あ る 。 こ の 寓 話 の 場 合 も の み を 用 い て 七 つ の 穴 を 穿 つ 、 刻 彫 の 表 現 を か
り て い る 。 こ の よ う に 造 物 者 の 営 為 を 刻 彫 に よ っ て 具 象 的 に 、 し か も 立 体 的 な 映 像 を ユ ー モ ラ ス に 描 く 才 能 、 そ こ に は 詩 人 と し て の 素 質 を 充 分 に 察 知 す る こ と が 出 来 る 。 ま た こ れ に は 当 時 の 社 会 状 勢 、 と く に 工 芸 美 術 の 発 展 と も 深 い 関 係 が あ る の で あ ろ う か 。 荘 子 は と く に こ の 方 面 に も 関 心 が あ っ た の で あ ろ う 。 荘 子 ・寓 の系 譜 三 前 に も い っ た よ う に 、 寓 は 寄 で あ り 託 で あ り 身 分 と し て は 客 で あ る 。 つ ま り 何 物 か 客 体 が あ っ て そ れ に 身 、 主 体 を 寄 せ る の で あ る 。 初 め に こ の 例 を 人 間 世 篇 か ら 引 用 し 、 つ づ い て 人 間 が 人 間 自 体 に 宿 る こ と も 寓 で あ り 、 挑 注 に 寓 、 假 也 ・ と あ っ た よ う に 、 こ こ に 荘 子 の 假 借 観 ・ 帳 相 観 を う か が っ て み よ う と 思 う 。 人 間 世 篇 に い う 、 匠 石 之 斉 、 至 於 曲 帳 、 見 櫟 社 樹 、 其 大 蔽 数 干 牛 、 黎 之 百 囲 、 其 高 臨 山 、 十 似 而 後 有 枝 、 其 可 以 為 舟 者 、 労 十 数 、 観 者 如 市 、 匠 石 不 顧 、 遂 行 不 畷 、 弟 子 厭 観 之 、 走 及 匠 石 日 、 自 吾 執 斧 斤 以 随 夫 子 、 未 嘗 見 材 如 此 其 美 也 、 先 生 不 肯 視 、 行 不 畷 、 何 邪 、 日 、 已 、 勿 言 之 、 散 木 也 、 以 為 舟 則 沈 、 以 為 棺 榔 則 速 腐 、 以 為 器 則 速 殿 、 以 為 門 戸 則 液 欄 、 以 為 柱 則 叢 、 是 不 材 之 木 也 、 無 所 可 用 、 故 能 若 是 寿 、 匠 石 帰 、 櫟 社 見 夢 日 、 女 将 悪 乎 比 予 哉 、 若 将 比 予 於 文 木 邪 、 夫 租 梨 橘 柚 果 菰 之 属 、 実 熟 則 剥 、 剥 則 辱 、 大 枝 折 、 小 枝 泄 、 此 以 其 能 、 苦 其 生 者 也 、 故 不 終 天 年 、 而 中 道 天 、 自 接 撃 於 世 俗 者 也 、 物 莫 不 若 是 、 且 予 、 求 無 所 可 用 、 久 、 幾 死 、 乃 今 得 之 、 為 予 大 用 、 使 予 也 而 有 用 、 且 得 有 此 大 也 邪 、 且 也 若 与 予 、 皆 物 也 、 奈
文林 十八号 何 哉 其 相 物 也 、 而 幾 死 之 散 人 、 又 悪 知 散 木 、 匠 石 覚 而 診 其 夢 、 弟 子 日 、 趣 取 無 用 、 則 為 社 、 何 邪 、 日 、 密 、 若 無 言 、 彼 亦 直 寄 焉 、 以 為 不 知 己 者 詣 属 也 、 不 為 社 者 、 且 幾 有 蕩 乎 、 且 也 彼 亦 所 保 与 衆 異 、 而 以 義 誉 之 、 不 亦 遠 乎 、 匠 石 、 斉 に ゆ き 、 曲 較 に 至 る 。 櫟 社 の 樹 を 見 る に 、 そ の 大 い な る こ と 数 千 牛 を 蔽 お お う 。 こ れ を 黎 は か る に 百 囲 、 そ の 高 き こ と 山 に 臨 み 、 十 似 に し て 而 る 後 に 枝 あ り 。 そ の 以 て 舟 を つ く る べ き も の 、 数 十 に 労 あ ま る 。 観 る 者 、 市 の 如 し 。 匠 伯 、 顧 み ず 。 遂 に 行 き て 畷 や ま ず 。 弟 子 、 厭 く ま で こ れ を 観 み 、 走 り て 匠 石 に 及 び て 日 わ く 、 吾 、 斧 斤 を 執 り て 以 て 夫 子 に 随 い し よ り 、 未 だ 嘗 て 材 の か く の 如 く そ れ 美 な る を 見 ざ る な り 。 先 生 、 肯 え て 視 ず 、 行 き て 朝 や ま ざ る は 何 ぞ や と 。 日 わ く 、 已 や め よ 、 こ れ を 言 う な か れ 。 散 木 な り 。 以 て 舟 を つ く れ ば 沈 み 、 以 て 棺 榔 を つ く れ ば 則 ち 速 か に 腐 り 、 以 て 器 を つ く れ ば 速 か に 殿 れ 、 以 て 門 戸 を つ く れ ば 則 ち 液 欄 マ ン 、 や に わ き 、 以 て 柱 を つ く れ ば 則 ち 轟 む し く う 。 こ れ 不 材 の 木 な り 。 用 う べ き 所 な し 。 故 に よ く か く の ご と く 寿 な り と 。 匠 石 、 帰 る 。 櫟 社 、 夢 に 見 あ ら わ れ て 曰 わ く 、 女 汝 は た い ず く に か 予 を 比 す る 。 若 汝 は た 予 を 文 木 に 比 す る や 。 か の 租 サ 、 こ ぼ け 梨 橘 柚 、 果 頑 ラ の 属 、 実 熟 す れ ば 則 ち 剥 撃 た る 。 剥 た る れ ば 則 ち 辱 か し め ら る し ゃ ぶ ら れ る 。 大 枝 は 折 ら れ 、 小 枝 は 泄 典 ひ か る 。 こ れ 其 の 天 年 を 終 え ず し て 申 道 に 天 す 。 自 ら 世 俗 に 拮 赤 ウ 、 ・っ っ 撃 せ ら る る 者 な り 。 物 か く の 若 、 ﹂と く な ら ぎ る は な し 。 且 つ 予 、 用 う べ き 所 無 き を 求 む る こ と 久 し 。 死 に 幾 ち か く し て 、 乃 ち 今 こ れ を 得 て 予 が 大 用 を 為 す 。 予 を し て 用 あ ら し め ば ま さ に こ の 大 あ る を 得 ん や 。 且 つ 若 汝 と 予 と は 物 な り 。 奈 何 ん そ や 其 れ 相 た が い に 物 た る 。 而 汝 死 に 近 き の 散 人 、
ま た い ず く ん ぞ 散 木 を 知 ら ん 。 匠 石 、 覚 め て 其 の 夢 を 診 う ら な う 。 弟 子 日 わ く 、 趣 す み ゃ か に 無 用 を 取 る に 、 則 ち 社 と 為 る は 何 ぞ や と 。 日 わ く 、 密 に せ よ 。 若 漕 言 う な か れ 。 彼 櫟 社 も 亦 、 直 た だ 寄 る の み 。 以 為 お も え ら く 、 ゴ] を 知 ら ぎ る 者 の 詣 は ず か し め る 属 に く む す る や 、 社 た ら ぎ れ ば 、 且 つ は ほ と ん ど 蕩 き ら る る こ と あ ら ん か と 。 且 つ 彼 そ の 保 つ 所 は 衆 と 異 な る 。 而 る に 義 を 以 て こ れ を 誉 む る 、 亦 遠 か ら ず や と 。 荘 子 ・寓 の系 譜 右 の 文 章 は 大 樹 の 描 写 と い い 、 弟 子 と 師 匠 の 活 澱 な 機 智 に 富 ん だ 会 話 と い い 、 ま た 夢 を 挿 入 し て 文 の 流 れ に 巧 み な 変 化 を も た せ た 技 巧 の 上 か ら も す ぐ れ た 作 家 だ と 思 う 。 ま た 荘 子 の 思 想 が 所 所 に 点 描 さ れ 、 ま と ま り の よ い 美 し い 小 品 で あ る 。 散 木 ・ 散 人 ・ 文 木 と 出 そ ろ う か ら に は 当 然 文 人 が 考 え ら れ て い た だ ろ う し 、 無 用 と 有 用 を 説 き わ け て 独 特 の 面 白 味 を も っ て い る し 、 最 後 に 社 神 の エ ゴ を 暴 い て 痛 烈 で あ る 。 櫟 樹 が 不 材 で あ り 、 人 間 に と っ て 無 用 で あ れ ば 切 り 倒 さ れ る 心 配 も な く 、 従 っ て そ こ に 身 を 寄 せ る 社 神 も ま た 安 全 で あ り 、 長 寿 を 保 つ こ と が 出 来 る 。 彼 社 神 亦 直 寄 焉 ・ の 直 は 詞 詮 に よ れ ば 、 与 特 同 、 為 但 ・ 僅 之 義 、 与 今 語 不 過 同 . で 表 態 の 副 詞 で あ る 。 た だ か り に 櫟 樹 に 身 を 寄 せ て い る 、 身 を 託 し て い る に 過 ぎ な い 。 直 寄 が 直 寓 に な っ て も 同 じ で あ る 。 ( 後 出 ) 匠 石 の 言 葉 に 、 日 、 密 、 若 無 言 、 彼 亦 直 寄 焉 、 以 為 不 知 己 者 詣 属 也 、 不 為 社 者 、 且 幾 有 勇 乎 、 右 の 文 は 異 義 が 多 く 殆 ん ど は 詣 属 也 ・ で 句 読 を き っ て し ま う 。 以 為 ・ が そ こ ま で 掛 る と す る 。 私 は そ う で は な く 有
文 林 十八号 勢 乎 . ま で を 社 神 の 思 惑 と し た 。 従 っ て 不 為 社 者 ・ の 者 を 条 件 を 表 わ す 助 詞 と み る 。 詞 詮 、 者 の 八 項 に 、 語 末 助 詞 、 表 假 設 、 と あ り 、 例 文 に 魯 無 君 子 者 、° 斯 焉 取 斯 (論 語 、 公 冶 長 、 魯 に 君 子 無 か り せ ば 、 斯 れ い ず く に か 斯 れ を 取 ら ん ) 伍 奢 有 二 子 、 不 殺 者 、 為 楚 国 恵 (史 ・ 世 家 、 伍 奢 に 二 子 あ り 、 殺 さ ざ れ ば 、 楚 国 の 患 と な ら ん ) 棟 梁 の 石 は 目 覚 め て か ら そ の 夢 を 占 っ た 。 弟 子 が い う 、 は や く か ら 無 用 の 用 を 求 め な が ら 、 有 用 の 社 神 と な る の は ど う い う こ と か と 。 棟 梁 の 石 が 答 え る 、 黙 っ て い な さ い 、 お 前 は 何 も い い な さ る な 、 彼 も や は り た だ か り に 櫟 樹 に 身 を 寄 せ て い る だ け だ 。 彼 は こ う 考 え て い る 、 も し も 自 分 の 価 値 を 理 解 し な い 者 が あ し ざ ま に 自 分 を 罵 倒 し た と き 、 土 地 を 守 る 地 主 神 で な け れ ば 恐 ら く 切 り 倒 さ れ て し ま う だ ろ う と 。 さ て か の 地 主 神 が も つ 意 味 は わ れ わ れ 俗 世 の 人 間 た ち と 立 場 が 違 っ て い る 。 そ れ を 俗 世 の 考 え で も っ て あ げ つ ら う の は 、 こ れ も 随 分 見 当 は ず れ で は あ る ま い か 。 無 用 の 大 木 で あ る が ゆ え に 長 寿 を 保 ち 、 そ の 上 に 社 神 が 宿 る と い う の で さ ら に 人 人 の 尊 崇 を あ つ め て い る 。 そ の 彼 が 長 い 間 無 用 を 求 め て い た と い う こ と は 自 家 撞 着 で あ る 。 こ の 矛 盾 は 死 に よ っ て の み 解 決 さ れ る も の で 、 臨 終 の 今 に な っ て や っ と 無 用 の 大 用 を 与 え ら よ う と し て い る 。 且 予 求 無 所 可 用 、 久 、 幾 死 、 乃 今 得 之 、 為 予 大 用 (且 つ 予 、 用 う べ き 所 な き を 求 む る こ と 久 し 、 死 に 幾 ち か く し て 乃 ち 今 こ れ を 得 、 予 が 為 め に 大 用 を 為 す ) 右 は 櫟 樹 と 異 質 の 社 神 と の 寄 寓 の 関 係 で あ っ た が 、 次 に 引 用 す る も の は 人 間 も ま た 人 体 に 寄 寓 す る も の で あ る こ と を い う 。 こ こ に 假 借 観 ・ 假 相 観 が 生 ま れ る 。 徳 充 符 篇 に い う 、
夫 保 始 之 徴 、 不 愕 之 実 、 勇 士 一 人 、 雄 入 於 九 軍 、 将 求 名 而 能 自 要 者 、 而 猶 若 是 、 而 況 官 天 地 、 象 耳 目 、 一 知 之 所 知 、 而 心 未 嘗 死 者 乎 、 彼 且 択 日 而 登 俣 、 人 則 従 是 也 、 彼 且 何 肯 以 物 為 事 乎 、 府 万 物 、 直 寓 六 骸 、 そ れ 始 め 道 を 保 つ の 徴 あ か し は 催 れ ざ る の 実 信 念 力 な り 。 勇 士 一 人 、 雄 お お し く 九 軍 に せ め 入 る 。 名 を 求 め ん と し て 自 ら 要 趣 、 む か う る を 能 く す る 者 に し て 而 も 猶 か く の 如 し 。 而 る を 況 ん や 天 地 を 官 管 し 、 万 物 を 府 蔵 し 、 直 た だ 六 骸 を 寓 と し 、 耳 目 を 象 か た と し 、 知 の 知 る 所 を 一 無 に し て 、 心 未 だ 嘗 て 死 せ ざ る 者 超 越 著 を や 。 彼 ま さ に 日 を 択 び て 登 俣 せ ん と す れ ば 、 人 は 則 ち こ れ に 従 わ ん 。 彼 か つ 何 ぞ 肯 え て 物 を 以 て 事 と 為 さ ん や と 。 荘 子 。寓 の系 譜 道 を 保 持 す る こ と の 証 は 物 ご と に び く と も せ ず 、 お び え な い 信 念 力 で あ る 。 そ の 困 難 さ は 戦 場 に た だ 一 人 攻 め 入 る 勇 士 を お も わ せ る 。 ま し て や 天 地 を 管 領 し 万 物 を 内 蔵 し て 、 た だ 假 り に 六 骸 に 身 を 寄 せ 、 耳 や 目 は 人 間 の 象 と し て 具 え 、 知 の 知 る と こ ろ の も の す べ て を 無 に し て 、 し か も そ の 精 神 は 死 滅 す る こ と な く 永 遠 に 生 き つ づ け よ う と す る 超 越 者 に と っ て は 、 そ の 困 苦 と 勇 猛 心 は な み な み の も の で は な い 。 そ う い う 人 物 は 必 ら ず や い つ か 日 を 択 ん で は る か な 天 に 登 り 、 人 ぴ と は 彼 を 追 慕 し て や む ま い 。 彼 の よ う な 人 物 は 物 を ば 専 一 に 考 え る よ う な こ と を ど う し て し よ う か 。 物 を 専 一 に し て そ の 為 め に 身 を 滅 ぼ す よ う な こ と は 絶 対 に し な い 。 一 の 字 は 荘 子 に あ っ て は 無 の 意 味 を も っ て い る 。 こ こ に い う 直 寓 六 骸 ・ の 直 寓 は 櫟 樹 の 社 神 の 彼 亦 直 寄 焉 ・ の 直 寄 と 同 じ で あ る 。 骸 は も と 脛 也 . で あ る が 六 骸 の 場 合 は 引 伸 し て 人 体 と し た 。 斉 物 論 篇 で は さ ら に 詳 細 に 百 骸 九 籔 六 蔵 ・ と 述 べ て い る 。 直 寓 ・ 直 寄 は し ば し 寄 寓 す る 意
文 林 十八号 で 人 体 を 假 り の 宿 り と 考 え る 。 さ ら に 深 く 正 面 か ら と り く ん だ 人 間 論 は 次 の 文 で あ る 。 斉 物 論 篇 に い う 、 e 百 骸 . 九 簸 . 六 蔵 、 骸 而 存 焉 、 吾 誰 与 為 親 、 汝 皆 説 之 乎 、 其 有 私 焉 、 如 是 、 皆 有 為 臣 妾 乎 、 其 臣 妾 不 足 以 相 治 乎 、 其 逓 相 為 君 臣 乎 、 其 有 真 君 存 焉 、 如 (是 ) 、 求 得 其 情 与 不 得 、 無 益 損 乎 其 真 。 ⇔ 一 受 其 成 形 、 不 亡 以 待 尽 、 与 物 相 刃 相 靡 、 其 行 尽 如 馳 、 而 莫 之 能 止 、 不 亦 悲 乎 、 終 身 役 役 、 而 不 見 其 成 功 、 茶 然 疲 役 、 而 不 知 其 所 帰 、 可 不 哀 邪 、 入 謂 之 不 死 、 輿 益 、 其 形 化 、 其 心 与 之 然 、 可 不 謂 大 哀 乎 、 人 之 生 也 、 固 若 是 芒 乎 、 其 我 独 芒 、 而 人 亦 有 不 芒 者 乎 、 日 夫 随 其 成 心 而 師 之 、 誰 独 且 無 師 乎 、 奨 必 知 代 而 心 自 取 者 有 之 、 愚 者 与 有 焉 、 未 成 乎 心 而 有 是 非 、 是 今 日 適 越 而 昔 至 也 、 是 以 無 有 為 有 、 無 有 為 有 、 錐 有 神 禺 、 且 不 能 知 、 吾 独 且 奈 何 哉 、 e 百 骸 . 九 籔 ・ 六 蔵 、 骸 そ な わ り て 存 す 。 吾 、 誰 と と も に か 親 を 為 さ ん 。 汝 ら 皆 、 こ れ を 説 悦 、 よ ろ こ ば し む べ き か 。 其 れ 私 特 定 者 あ ら ん か 、 か く の 如 く ん ば 、 皆 臣 妾 た る こ と あ ら ん か 。 其 れ 臣 妾 は 以 て 相 い 治 む る に 足 ら ざ る や 、 其 れ た が い に 相 い 君 臣 と 為 る か 。 其 れ 真 君 の 存 す る あ ら ん か 。 か く の 如 く ん ば 、 求 め て 其 の 情 を 得 る と 得 ざ る と は 、 其 の 真 に 益 損 す る こ と な か ら ん か 。
⇔ 一 た び 其 の 成 形 を 受 く れ ば 、 亡 無 に し て 以 て 尽 く る を 待 た ず 、 物 と 相 刃 は む か い 、 相 廃 し た が い 、 其 の 行 き 尽 く す 死 こ と 馳 す る が 如 く 、 こ れ を 能 く 止 む る な し 。 ま た 悲 し か ら ず や 。 終 身 役 役 と し て 其 の 成 功 を 見 ず 、 茶 デ ッ 然 ぐ っ た り と し て 疲 役 し 、 其 の 帰 る 所 を 知 ら ず 。 哀 し ま ざ る べ け ん や 。 人 こ れ を 不 死 と 謂 う も 、 な ん ぞ 益 あ ら ん 。 凡 庸 の 人 は 其 の 形 化 す れ ば 、 其 の 心 こ れ と と も に 然 り 化 す 。 大 哀 と 謂 わ ざ る べ け ん や 。 人 の 生 や 固 ま こ と に か く 若 ご と く 芒 荘 た る か 。 其 れ 我 独 り 芒 と し て 、 人 は 亦 芒 た ら ざ る こ と あ る か 。 日 そ れ 其 の 成 心 に 随 い て こ れ を 師 と せ ば 、 誰 か 独 り 且 つ 師 無 か ら ん や 。 な ん ぞ 必 ら ず し も 代 か わ り を 知 り て 、 心 に 自 ら 取 る 者 こ れ 有 ら ん 。 愚 者 も と も に こ れ 成 心 あ り 。 い ま だ 心 に 成 ら ず し て 是 非 あ る は 、 こ れ 、 今 日 、 越 に ゆ き て 昔 昨 日 至 れ り と す る も の な り 。 こ れ 有 る 無 き 未 着 を 以 て 有 到 着 と 為 す な り 。 有 る 無 き を 有 と 為 さ ば 、 神 禺 有 り と 錐 も 、 ま さ に 知 る こ と 能 わ ざ ら ん 。 吾 独 り ま さ に 奈 何 せ ん や 。 荘子 ・寓 の系 譜 9 の 文 は 二 つ の 文 段 に 分 け て み る と 、 第 一 項 は 百 骸 か ら 始 ま っ て 相 為 君 臣 乎 ・ ま で 、 第 二 項 は 其 有 真 君 ・ か ら 始 ま っ て 其 真 ・ ま で と な る 。 内 容 が 違 う か ら で あ る 。 第 一 項 の 百 骸 か ら 存 焉 ・ ま で は 一 個 の 肯 定 文 で あ る が 、 そ れ 以 下 の 諸 句 は 荘 子 の 大 発 問 と み る 。 従 っ て 其 某 ・ の 文 は 其 或 某 ・ と い う 風 に 反 詰 の 形 式 と 考 え た い 。 ま た 如 求 得 其 情 与 不 得 ・ の 文 は 其 有 私 焉 、 如 是 ・ と 同 じ 文 形 と 思 う の で 、 こ こ も 如 ・ は 如 是 ・ の 方 が 正 し い と 思 っ た 。 要 す る に 百 骸 以 下 の 文 は 肉 体 に 関 す る 発 問 、 真 君 以 下 は 心 に 関 す る 発 問 と 考 え た い か ら で あ る 。 弁 証 法 家 で あ る
文林 十八号 が 故 に 心 身 を 対 比 さ せ た も の だ 。 其 れ 或 は 真 君 心 、 神 が 存 在 す る の で あ ろ う か 。 も し そ う な ら 、 心 の 情 態 を 求 め て 理 解 す る の と 理 解 し な い の と で は 、 人 間 の 真 実 を 知 る 上 に 於 て 損 益 ・ 効 用 が あ る の で あ ろ う か 、 ど う だ ろ う 。 心 の は た ら き を 理 解 す る こ と は 大 切 だ と い う 。 第 二 段 で 、 肉 体 に 関 す る こ と は 一 受 其 成 形 ・ ま た は 其 形 ・ で 受 け 、 真 君 ・ は 其 心 ・ と な り 、 第 三 段 で は 成 心 と な っ て 成 形 に 対 応 す る 。 し か も 成 形 (物 ) は 直 寓 ・ 直 寄 の 対 象 で 、 寓 す る も の は (吾 ) で あ る 成 心 と い う こ と に な る 。 し か も こ の 成 心 は 賢 愚 を 問 わ ず 生 れ な が ら に 具 わ る も の で 、 こ れ こ そ 万 人 が わ が 師 と す べ き も の で あ り 、 た っ て 別 に 代 理 者 を 求 め さ が す 必 要 は な い 。 こ の 成 心 が 充 分 に 練 り あ げ ら れ ず し て 、 是 だ の 非 だ の の 論 を な す の は 、 あ の 恵 施 が い っ た よ う に 、 今 日 、 越 の 国 に 向 っ て 出 発 し な が ら 、 昨 日 到 着 し た と い う よ う な 時 間 の 矛 盾 に 陥 る の で は な い か 。 成 心 を 成 就 す る こ と が ま つ 肝 要 で あ る 。 そ れ は ま た 常 心 純 粋 心 と な る 。 第 一 段 の 真 君 を 宇 宙 の 主 宰 者 と 解 す る 説 が 多 い が 、 そ れ は こ こ に 引 用 し た 文 段 の 前 に 位 置 す る 次 の 句 の 、 真 宰 を こ そ 指 摘 す べ き で あ る 。 非 彼 無 我 、 非 我 無 所 取 、 是 亦 近 突 、 而 不 知 其 所 為 使 、 若 有 真 宰 而 特 不 得 其 朕 、 可 行 己 信 而 不 見 其 形 、 有 情 而 無 形 、 彼 を 非 と せ ば 否 定 す る 我 な く 、 我 を 非 と せ ば 否 定 寸 ろ 取 る 所 感 受 す る も の な し 。 こ れ も 亦 道 に 近 し 。 而 れ ど も 其 の 為 使 っ く り う こ か す 所 の も の を 知 ら ず 。 真 宰 ま 、芝 の 支 配 者 あ る が 若 ご と く に し て 特 た だ そ の 朕 あ と か た を 得 ず 。 真 宰 は 己 が 信 ま こ と を 行 う べ く し て
荘子 ・寓の系譜 其 の 形 を 見 ず 、 情 三 ﹂ ろ の は た ら き あ っ て 形 な し 。 ( 斉 物 論 篇 、 可 乎 可 、 不 可 乎 不 可 、 道 行 之 而 成 、 可 を 可 と し 、 不 可 を 不 可 と し 、 道 こ れ を 行 め ぐ り て 成 す ) 。 物 の 世 界 の 背 後 に そ れ ら を 造 り 動 か す も の 、 操 る も の 、 ( 造 物 者 、 造 化 者 ) を 直 観 的 に 感 知 し な が ら 、 そ れ は こ れ だ と 提 示 で き な い 。 有 形 を 操 る 無 形 の も の (為 使 ) 形 而 上 な る も の を 真 宰 と 呼 ん で い る (老 子 第 十 四 章 な ど 参 照 ) 第 二 段 は 、 物 の 世 界 か ら 脱 出 す る こ と の 肝 要 さ を 知 ら ず 、 物 と 終 始 角 逐 し 苦 闘 す る 衆 生 の 無 明 を 働 果 す る 荘 子 で あ る 。 荘 子 も こ う し た 苦 悩 の 時 代 を 経 過 し て か ら 、 大 宗 師 篇 に 見 え る 次 の よ う な 境 地 に 達 し た の で あ ろ う 。 夫 大 塊 載 我 以 形 、 労 我 以 生 、 侠 我 以 老 、 息 我 以 死 、 故 善 吾 生 者 、 乃 所 以 善 吾 死 也 、 そ れ 大 塊 、 我 を 載 す る に 形 を 以 て し 、 我 を 労 す る に 生 を 以 て し 、 我 を 侠 安 伏 す る に 老 を 以 て し 、 我 を 休 息 せ し む る に 死 を 以 て す 。 故 に 吾 が 生 葱 善 み す る も の は 、 乃 ち 吾 が 死 を 善 み す る 所 以 の も の な り 、 と い う 。 こ れ は 信 念 力 で あ る 。 文 中 の 、 終 身 役 役 と し て 其 の 成 功 を 見 ず 、 茶 然 と し て 疲 役 し 、 其 の 帰 る 所 を 知 ら ず 、 哀 し ま ざ る べ け ん や 、 な ど な か な か 思 い つ め た 力 の こ も っ た 名 文 で あ る 。 読 者 を し て わ れ と わ が 胸 い た ま し め る 迫 力 を も っ て い る 。 反 面 か ら い え ば 荘 子 の 深 い 人 間 愛 で あ ろ う 。 こ れ と 同 じ く 物 に 惑 溺 す る 救 い 難 い 人 間 に つ い て 述 べ た 文 は 次 の 通 り 。 斉 物 論 篇 に い う 、 大 知 閑 閑 、 小 知 間 間 、 大 言 炎 炎 、 小 言 磐 蒼 、 其 探 也 魂 交 、 其 覚 也 形 開 、 与 接 為 構 、 日 以 心 闘 、 縷 者 、 客 者 、 密 者 、 小 恐 喘 喘 、 大 恐 綬 縷 、 其 発 若 機 括 、 其 司 是 非 之 謂 也 、 其 留 如 誼 盟 、 其 守 勝 之 謂 也 、 其 殺 如 秋 冬 、 以 言 其 日 消 也 、 其 溺
文林 十八号 之 所 為 之 、 不 可 使 復 之 也 、 其 厭 也 如 絨 、 以 言 其 老 油 也 、 近 死 之 心 、 莫 使 復 陽 也 、 大 知 は 閑 閑 た れ ど も 小 知 は 間 間 多 分 別 た り 。 大 言 は 炎 炎 美 盛 た れ ど も 小 言 は 、 讐 セ ン . 多 弁 た り 。 ( か く 小 知 小 言 の も の た ち は ) 其 の 罧 い ぬ る や 魂 交 わ り 悪 夢 を み る 、 其 の 覚 め て や 形 身 は (外 物 に 向 っ て ) 開 く 。 (物 と ) 与 と も に 接 し て 構 敵 を 為 っ く り 、 日 ひ び 以 て 心 を 闘 わ す 。 縷 慢 、 不 畏 也 な る 者 あ り 、 智 陰 湿 な る 者 あ り 、 密 無 口 な る 者 あ り 。 小 恐 に は 喘 喘 び く っ く た り 、 大 恐 に は 縷 縷 ほ ほ け る た り 。 (物 欲 の た め に ) 其 の 発 は た ら き す る こ と 機 括 弓 の 速 射 器 の 若 、﹂ と し と は 、 其 の 是 非 を 司 ど る ( 是 非 の 判 断 を 自 分 が 掌 握 し た い ) の 謂 な り 。 其 の 留 っ か が ーっ こ と 誼 盟 誓 約 の 如 し と は 、 其 の 勝 を 守 る の 謂 な り 。 其 の 殺 サ イ 、 衰 す る こ と 秋 冬 の 如 し と は 、 以 て 其 の 日 に 消 ゆ る 死 を 言 う な り 。 そ の 搦 の こ れ を 為 す と こ ろ 死 、 こ れ を 復 さ し む べ か ら ざ る な り 。 其 の 厭 圧 せ ら る る こ と 絨 封 印 の 如 し 死 と は 、 以 て 其 の 老 泣 キ ョ ク 、 老 廃 を 言 う な り 。 死 に 近 き の 心 、 ま た 陽 生 に 復 さ し む る 莫 な き な り 。 右 の 文 の 恐 ・ 溺 ・ 圧 は 礼 記 、 檀 弓 上 に よ れ ば 、 死 ん で も 人 ぴ と か ら 弔 問 し て も ら え な い 非 業 の 死 を 指 し て い る 。 こ の 文 で は 物 欲 の 為 め に が ん じ が ら み に な っ た 人 間 の 悲 劇 を 比 喩 的 に 言 っ た も の で あ る 。 礼 記 、 檀 弓 上 の 文 は 左 の 通 り 。 死 而 不 弔 者 三 、 畏 、 厭 、 溺 、 注 、 謂 軽 身 忘 孝 者 也 (身 を 軽 ん じ 孝 を 忘 る る 者 を 謂 う な り 。 ) 荘 子 の 文 で は 畏 が 恐 に 改 め ら れ て い る 。 物 に 寓 す る が 故 に 物 の 恐 怖 か ら 離 脱 す る こ と が 出 来 な い 小 知 小 言 の 人 び と を 憐 ん で い る 。
荘 子 ・寓 の系 譜 四 呉 語 に 、 越 王 の 使 者 が い ま は 敗 北 者 の 呉 王 夫 差 に 言 上 し て い う 、 民 生 於 地 上 、 寓 也 、 其 与 幾 何 、 (民 の 地 上 に 生 ま る る は 寓 な り 、 其 れ 幾 何 ぞ ) 注 、 寓 、 寄 也 、 人 間 の 生 を 寓 と 呼 ん で 、 束 の 聞 の 命 を 調 喩 し て い る 。 ま た 荘 子 の 至 楽 篇 で は 、 生 者 假 借 也 、 帳 之 而 生 ( 生 な る も の は 假 借 な り 、 こ れ を 假 り て 生 ず ) 。 生 命 は 造 物 者 か ら 借 り た も の だ と い う 。 以 下 假 に つ い て 考 え て み よ う 。 す で に 武 帝 紀 の 挑 ヨ ゥ 氏 注 に 寓 は 候 也 、 と あ っ た が 、 假 の 字 を 説 文 で み る と 、 假 、 非 真 也 、 (段 注 ) 、 又 部 日 、 段 、 借 也 、 然 則 段 与 假 、 義 略 同 、 六 書 六 日 、 假 借 、 謂 本 無 其 字 、 依 声 託 事 也 、 虞 書 日 、 假 干 上 下 、 ( 段 注 ) 、 尭 典 文 、 此 引 経 説 假 借 也 、 そ 部 日 、 椴 、 至 也 、 経 典 多 借 假 為 復 、 故 称 之 、 略 、 假 、 真 に 非 ざ る な り 。 段 注 、 又 部 に 日 わ く 、 段 は 借 る な り 。 然 ら ば 則 ち 候 と 段 と は 義 ほ ぼ 同 じ 。 六 書 の 六 に 日 わ く 、 假 借 ヵ シ ャ 、 も と 其 の 字 無 く し て 声 に 依 り 事 に 託 す る を 謂 う な り 。 虞 書 に 日 わ く 、 上 下 に 假 い た る と 。 段 注 、 尭 典 の 文 な り 。 こ れ 経 を 引 い て 假 借 を 説 く な り 。 そ 部 に 日 わ く 、 假 は 至 る な り と 。 経 典 多 く 假 を 借 り て 假 と 為 す 。 故 に こ れ を 称 す 。 以 下 略 。 説 文 は 多 く 類 を 以 て 連 な っ て い る 。 候 の 次 は 借 、 假 也 ・ で 両 者 一 組 に な っ て い て 、 假 、 非 真 也 ・ の 解 は そ の 処 を 得 ぬ 感 が あ る 。 偶 借 し た も の は 本 物 で な い 心 か ら 、 非 真 の 義 が 派 生 し 得 る 。 こ の 場 合 、 真 に 対 す る も の は 假 か り で あ る 。
文林 十 八号 真 君 心 に 対 し て 肉 休 を 直 寓 六 骸 ・ 又 は 百 骸 ・ と い う の は 假 で あ る こ と を 示 し て い る 。 寓 は 假 寓 で あ る 。 次 に そ の 假 を テ ー マ と し た 文 を 大 宗 師 篇 か ら 引 用 し て み よ う 、 子 祀 . 子 輿 . 子 牽 . 子 来 、 四 人 相 与 語 日 、 執 能 以 無 為 首 、 以 生 為 脊 、 以 死 為 尻 、 敦 知 死 生 存 亡 之 一 体 者 、 吾 与 之 友 、 四 人 相 視 而 笑 、 莫 逆 於 心 、 遂 相 与 為 友 、 俄 而 子 輿 有 病 、 子 祀 往 問 之 日 、 偉 哉 、 夫 造 物 者 、 将 以 予 為 此 拘 拘 也 、 曲 懊 発 背 、 上 有 五 管 、 頗 隠 於 斉 、 肩 高 於 頂 、 句 贅 指 天 、 陰 陽 之 気 有 滲 、 其 心 間 而 無 事 、 蹉 麟 而 鑑 於 井 日 、 嵯 乎 、 夫 造 物 者 、 又 将 以 予 為 此 拘 拘 也 、 子 祀 日 、 女 悪 之 乎 、 日 、 亡 、 予 何 悪 、 浸 假 而 化 予 之 左 膏 以 為 難 、 予 因 以 求 時 夜 、 浸 假 而 化 予 之 右 脊 以 為 弾 、 予 因 以 求 鴉 表 、 浸 候 而 化 予 之 尻 以 為 輪 、 以 神 為 馬 、 予 因 而 乗 之 、 宣 更 駕 哉 、 且 夫 、 得 者 時 也 、 失 者 順 也 、 安 時 而 処 順 、 哀 楽 不 能 入 也 、 此 古 之 所 謂 県 解 也 、 而 不 能 自 解 者 、 物 有 結 之 、 且 夫 、 物 不 勝 天 、 久 、 吾 又 何 悪 焉 、 俄 而 子 来 有 病 、 喘 喘 然 将 死 、 其 妻 子 環 而 泣 之 、 隼 往 問 之 、 日 、 叱 、 避 、 無 恒 化 、 僑 其 戸 与 之 語 日 、 偉 哉 、 造 化 、 又 将 癸 以 汝 為 、 将 異 以 汝 適 、 以 汝 為 鼠 肝 乎 、 以 汝 為 贔 腎 乎 、 子 来 日 、 父 母 於 子 、 東 西 南 北 、 唯 命 之 従 、 陰 陽 於 人 、 不 翅 於 父 母 、 彼 近 吾 死 、 而 我 不 聴 、 我 則 桿 、 彼 何 罪 焉 、
荘子 ・寓 の系 譜 子 祀 ・ 子 輿 ・ 子 摯 ・ 子 来 、 四 人 相 い 与 と も に 語 り て 日 わ く 、 執 た れ か 能 く 無 を 以 て 首 ど 為 し 、 生 を 以 て 脊 と 為 し 、 死 を 以 て 尻 と な す や 。 敦 か 生 死 存 亡 の 一 体 な る を 知 る 者 ぞ 。 吾 れ こ れ と 友 た ら ん と 。 四 人 相 い 見 て 笑 い 、 心 に 逆 さ か ら う こ と 莫 な く 、 遂 に 相 い 与 に 友 と 為 る 。 俄 か に し て 子 輿 に 病 あ り 。 子 祀 、 往 き て こ れ を 問 う 。 日 わ く 、 偉 な る か な 、 夫 か の 造 物 者 。 将 に 予 を 以 て 此 の 拘 拘 ま が る さ ま を な さ ん と す と 。 曲 縷 刷 背 に 発 し 、 上 に 五 管 臓 あ り 、 頗 は 斉 晴 に 隠 れ 、 肩 は 頂 あ た ま よ り 高 く 、 句 賛 も と ど り は 天 を 指 す 。 陰 陽 の 気 、 滲 み だ る こ と あ る も 、 其 の 心 、 間 閑 に し て 無 事 な り 。 蹉 麟 ヘ ィ セ ン 、 よ ろ よ ろ と し て 井 に 鑑 み て 日 わ く 、 嵯 乎 あ あ か の 造 物 者 、 ま た 将 に 予 を 以 て 此 の 拘 拘 を 為 さ ん と す る な り と 。 子 祀 日 わ く 、 女 汝 こ れ を 悪 に く む か と 。 曰 わ く 、 亡 い な 、 予 何 ぞ 悪 ま ん 。 儂 を 浸 侵 し て 予 の 左 腎 を 化 し て 難 と 為 さ ば 、 予 は 因 り て 時 夜 司 夜 、 望 白 、 使 難 司 夜 、 と き を し ら す を 求 め ん 。 假 を 浸 侵 し て 予 の 右 骨 を 化 し て 弾 と 為 さ ば 、 予 は 因 り て 鴉 ふ く う っ 表 あ ぶ り も の を 求 め ん 。 儂 を 浸 侵 し て 予 の 尻 を 化 し て 輪 と 為 し 、 神 心 を 以 て 馬 と 為 さ ば 、 予 は 因 り て こ れ に 乗 ら ん 。 豊 さ ら に 駕 せ ん や 。 且 つ 夫 れ 、 得 る 者 生 は 時 な り 。 失 う 者 死 は 順 な り 。 時 に 安 ん じ て 順 に 処 お れ ば 、 哀 楽 も 入 る こ と 能 わ ず 。 此 れ 古 え の 謂 わ ゆ る 県 解 と き は な ち な り 。 而 も 自 ら 解 く こ と 能 わ ざ る 者 は 、 物 こ れ を 結 ぶ な れ ば な り 。 且 つ 夫 れ 、 物 の 天 に 勝 た ざ る や 久 し 。 吾 ま た 何 ぞ 悪 ま ん と 。 俄 か に し て 子 来 に 病 あ り 。 喘 喘 然 ぜ い ぜ い と し て 将 に 死 せ ん と す 。 其 の 妻 子 環 め ぐ り て こ れ に 泣 く 。 摯 、 往 き て こ れ を 問 う 。 ,日 わ く 、 叱 し っ 、 避 け よ 。 化 を 慣 お ど ろ か す こ と 無 か れ と 。 其 の 戸 に 椅 り て こ れ と 語 り て 日 わ く 、 偉 な る か な 、 造
文林 十八 号 化 、 又 将 に 輿 な に に か 汝 を 以 て 為 さ ん と す る や 。 将 に 婁 い ず く に か 汝 を 以 て 適 ゆ か し め ん と す る や 。 汝 を 以 て 鼠 の 肝 き も と 為 さ ん か 。 汝 を 以 て 虫 の 腎 か い な と 為 さ ん か と 。 子 来 日 わ く 、 父 母 の 子 に 於 け る は 、 東 西 南 北 、 た だ 命 に こ れ 従 う の み 。 陰 陽 の 人 に 於 け る 、 翅 た だ に 父 母 に 於 け る の み に あ ら ず 。 彼 造 物 者 吾 を 死 に 近 づ く 。 而 も 我 聴 か ざ れ ば 、 我 は 則 ち 桿 暴 な り 。 彼 な ん ぞ 罪 あ ら ん と 。 右 の 文 の 一 浸 假 而 化 予 之 左 胃 以 為 難 、 予 因 以 求 時 夜 、 二 浸 假 而 化 予 之 腎 以 為 弾 、 予 因 以 求 鴉 灸 、 三 浸 俣 而 化 予 之 尻 以 為 輪 、 以 神 為 馬 、 予 因 而 乗 之 、 量 更 駕 哉 、 以 上 の 三 項 は い ず れ も 、 浸 仮 而 化 ー 以 為 某 ・ の 形 式 を と っ て い る 。 浸 假 に つ い て 、 浸 を 漸 次 に 、 假 を 至 る 意 に 解 し て 逐 次 に 変 化 さ せ る と い う 訳 が 殆 ん ど で あ る 。 右 の 三 項 の 文 は 次 の 文 に 対 応 し て い る 。 又 将 癸 以 汝 為 ( ま た 将 に な に に か 汝 を 以 て 為 さ ん と す る ) 、 将 癸 以 汝 適 ( 将 に い ず く に か 汝 を 以 て 適 ゆ か し む る ) 、 以 汝 為 鼠 肝 乎 (汝 を 以 て 鼠 の 肝 と 為 す か ) 以 汝 為 虫 腎 乎 ( 汝 を 以 て 虫 の 昏 と 為 す か ) 後 者 の 文 は 浸 俣 を 省 い て 述 べ て い る が 、 死 が あ っ て 化 が あ る の で 、 私 は こ こ で 浸 を 侵 の 假 借 と 考 え て 他 動 詞 と し 、 假 身 を 目 的 の 名 詞 と 見 、 假 を 侵 し て ・ と 読 み た い 。 一 犯 人 之 形 ( 一 た び 人 の 形 を 犯 す ) の 場 合 の 犯 を 侵 と し た の は 人 体 を 侵 し 取 る の 意 、 侵 假 の 場 合 は 受 身 で あ っ て 人 体 が 侵 略 さ れ る 義 で あ る 。 一 犯 人 之 形 は 斉 物 論 篇 に い う 一 受 其 成 形 と
荘 子 ・寓 の系 譜 同 じ も の を 指 し て い る 。 人 体 は 造 物 者 か ら の 假 借 、 借 り 物 で あ り 、 わ れ わ れ は 人 生 を し ば し そ こ に 帳 寓 す る の で あ る 。 い ま ま で 直 寓 や 直 寄 に こ だ わ っ て き た の は こ の 假 即 人 体 (広 く は 物 一 般 ) を 導 き 出 す た め で あ っ た 。 ま た 大 宗 師 篇 の 他 の 個 所 で も 孔 子 の 言 に 託 し て い う 、 彼 有 骸 形 而 無 損 心 、 有 旦 宅 而 無 情 死 (彼 ( 孟 孫 氏 ) は 形 を 駁 か す あ り て し か も 心 を 損 す る な く 、 宅 身 を 旦 担 、 お ど ろ か す あ り て し か も 情 の 死 す る な し ) の 文 で は 、 形 と 宅 と 、 心 と 情 を 対 比 し て 同 じ も の を 指 し て い る 。 宅 は 假 宅 ・ 帳 寓 で あ る 。 説 文 に 、 宅 、 人 所 託 居 也 (人 の 居 を 託 す る 所 な り ) と い う 。 そ し て 託 ・ 寄 也 で あ り 、 ま た 寓 、 寄 也 で あ る 。 そ れ ぞ れ の 語 の 関 連 は 深 い 。 し か し て 假 な る も の は 陰 陽 の 二 気 の 調 和 に よ っ て 保 持 せ ら れ 、 一 旦 そ の 調 和 が 破 れ る と 死 が 訪 れ る 。 陰 陽 之 気 有 沙 乱 (陰 陽 の 気 み だ る る あ り ) さ す れ ば 假 を 侵 し て 化 し て 某 と な す 云 云 と つ づ く 。 人 間 世 篇 に は 、 陰 陽 之 患 ・ の 語 あ り 。 こ の 陰 陽 の 気 は 父 母 の 子 に 対 す る 以 上 に 絶 対 的 な 支 配 力 を も っ て い て 、 わ れ わ れ は 随 従 し な け れ ば な ら な い 。 百 骸 九 籔 六 蔵 は 二 気 の 上 に 成 り 立 つ 假 相 に 過 ぎ な い こ と を 悟 ら ね ば な ら な い 。 死 は 、 反 其 真 ・ ( 大 宗 師 篇 ) ( そ の 真 に 反 か 、兄 る ) で あ っ て 造 物 者 の 手 元 に 帰 る 。 造 物 者 は 大 冶 の よ う な 腕 を ふ る っ て ま た 次 の 生 へ 鍛 え な お す 。 そ れ は A か ら B へ と い う よ う に 完 全 に 異 質 な も の へ 転 移 さ せ て い く 。 こ れ が 化 で あ る 。 こ う い う 点 か ら み れ ば 荘 子 の 人 生 観 は 軽 妙 で 爽 快 で あ る 。 天 楽 が あ る 。 ユ ー モ ア も 湧 こ う と い う も の だ 。 次 に 動 詞 と し て 假 を 用 い た 例 と し て 、 大 宗 師 篇 の 文 を あ げ よ う 、
文林 十八 号 子 貢 反 、 以 告 孔 子 日 、 彼 何 人 者 邪 、 修 行 無 有 、 而 外 其 形 骸 、 臨 而 歌 、 顔 色 不 変 、 無 以 命 之 、 彼 何 人 者 邪 、 孔 子 日 、 彼 、 遊 方 之 外 者 也 、 而 丘 、 遊 方 之 内 者 也 、 外 内 不 相 及 、 而 丘 使 女 往 弔 之 、 丘 則 晒 、 彼 、 方 且 与 造 物 者 為 人 、 而 遊 乎 天 地 之 一 気 、 彼 以 生 為 附 贅 県 疵 、 以 死 為 決 痴 潰 瘍 、 夫 若 然 者 、 又 悪 知 死 生 先 後 之 所 在 、 假 於 異 物 、 託 於 同 体 、 忘 其 肝 胆 、 遺 其 耳 目 、 反 覆 終 始 、 不 知 端 侃 、 芒 然 彷 裡 乎 塵 垢 之 外 、 遣 遥 乎 無 為 之 業 、 彼 又 悪 能 憤 憤 然 為 世 俗 之 礼 、 以 観 衆 人 之 耳 目 哉 、 子 貢 、 反 か え り て 以 て 孔 子 に 告 ぐ 。 曰 わ く 、 彼 何 人 そ や 。 修 行 あ る な く し て 其 の 形 骸 を 外 に し 、 死 休 に 臨 み て 歌 い 、 顔 色 だ も 変 え ず 。 以 て こ れ に 命 名 つ く る な し 。 ,彼 、 何 人 そ や と 。 孔 子 曰 わ く 、 彼 、 方 の 外 に 遊 ぶ 者 な り 。 而 し て 丘 は 方 の 内 に 遊 ぶ 者 な り 。 外 内 、 相 い 及 ば ず 、 而 し て 丘 、 女 汝 を し て 往 き て こ れ を 弔 わ し む 。 丘 、 則 ち 晒 ・っ か っ な り 。 彼 、 方 且 ま さ に 造 物 者 と 人 仁 、 親 し む を 為 し て 、 天 地 の 一 気 に 遊 ば ん と す 。 彼 、 生 を 以 て 付 贅 い ぼ 県 疵 た ん こ ふ と 為 し 、 死 を 以 て 決 疵 か さ ぶ た が と れ る 潰 瘍 は れ も の が っ ぶ れ る と 為 す 。 夫 れ 然 る が 若 、・ と き 者 は ま た 悪 い ず く ん ぞ 死 生 先 後 の 在 る 所 を 知 ら ん や 。 異 物 に 帳 り 同 体 に 託 し 、 其 の 肝 胆 を 忘 れ 、 其 の 耳 目 を 遺 わ す れ 、 終 始 を 反 覆 復 し て 端 侃 端 っ こ を 知 ら ず 円 環 。 芒 然 心 ひ ろ や か に と し て 塵 垢 浮 世 の 外 に 彷 裡 し 、 無 為 の 業 に 遣 遥 す 。 彼 ま た 悪 ん ぞ 能 く 憤 憤 然 あ た ふ た と し て 世 俗 の 礼 を 為 し 、 以 て 衆 人 の 耳 目 に 観 示 さ ん や と 。 右 の 文 の 候 於 異 物 、 託 於 同 体 (異 物 に 假 り 同 体 に 託 す ) の 郭 注 と 成 疏 を み る と 、
荘子 ・寓 の系 譜 郭 注 、 候 、 .因 也 、 今 死 生 聚 散 、 変 化 無 方 、 皆 異 物 也 、 無 異 而 不 候 、 故 所 候 錐 異 、 而 共 成 一 体 也 (假 は 因 る な り 。 い ま 死 生 聚 散 、 変 化 し で 方 常 な し 。 皆 異 物 な り 。 異 に し て 假 ら ざ る は な し 。 故 に 候 る と こ ろ 異 な り と 雛 も 、 共 に 一 体 を 成 す な り ) 成 疏 、 水 火 金 木 、 異 物 相 假 、 衆 諸 寄 託 、 共 成 一 身 、 是 知 形 体 由 来 虚 偽 (水 火 金 木 、 異 物 相 假 り 、 衆 諸 寄 託 し て 、 共 に 一 身 を 成 す 、 こ れ 形 体 は 由 来 虚 偽 な る を 知 る ) ま た 王 先 謙 は そ の 集 解 に 宣 注 を そ の ま ま 引 用 し て い る 、 宣 云 サ 即 円 覚 経 、 地 風 水 火 四 大 、 合 而 成 体 之 説 、 蓋 視 生 偶 然 耳 (宣 云 う 、 即 ち 円 覚 経 に 、 地 風 水 火 の 四 大 、 合 し て 体 を 成 す の 説 あ り 、 蓋 し 生 を 視 る こ と 偶 然 な る の み ) 成 玄 英 と 宣 穎 は そ れ ぞ れ 仏 教 的 な 立 場 か ら 解 説 し て 、 物 は す べ て 異 質 の 四 大 元 素 の 假 和 合 で あ り 、 そ の 意 味 で は 一 体 で あ る が 、 悟 っ て 見 れ ば 元 来 は 虚 偽 屍 般 、 四 大 の み で あ り 偶 然 で あ る と い う 。 郭 象 は 、 す べ て は 異 物 で あ る 、 異 に し て 因 ら ぎ る も の は な い 。 故 に 因 る 所 が 異 な っ て い て も 同 じ 情 形 な の で 一 体 と い え る と い う 。 私 は こ う 思 う 、 子 桑 戸 ・ 孟 子 反 ・ 子 琴 張 の 三 人 は 不 相 与 ・ 不 相 為 ・ の 関 係 に あ り 、 そ れ ぞ れ 異 物 に 身 を 寓 し て い る が 、 造 物 者 に 親 し み 、 天 地 の 一 気 に 遊 ぷ と い う 目 的 に 於 て は 同 一 で あ り 一 体 で あ る 。 つ ま り 道 の 世 界 に 遊 ぷ も の と し て 三 者 斉 同 で あ る 。 こ れ は 斉 物 論 の 趣 旨 と い え よ う 。 理 解 の 手 段 と し て 仏 教 的 な 空 観 も よ い が 、 荘 子 で は や は り 假 や 託 、 寓 や 寄 の 考 え か ら 、 物 は 造 物 者 か ら の 假 借 と い う 風 に と る の が 正 統 だ ろ う と 思 う 。
文林 十八号 こ う し た 假 借 観 、 物 は す べ て 造 物 者 か ら の 借 り も の で あ っ て 本 物 で は な い と い う 意 味 に 於 け る 假 相 観 、 こ れ を さ ら に 透 徹 し て 物 の 真 に 追 り 、 物 の 実 相 を 体 得 す る 。 知 に よ っ て わ が 成 心 を 理 解 し 、 そ の 理 解 し た 心 に よ っ て さ ら に 高 次 元 の 常 心 ・ 純 粋 心 を 悟 得 す る 。 畢 寛 、 一 切 の 知 の 知 る と こ ろ を 否 定 し て 、 つ い に 死 滅 す る こ と の な い 心 、 信 を 得 る こ と が 大 事 で あ る 。 凡 庸 の も の 達 は 、 そ の 形 が 滅 ぶ と 同 時 に そ の 心 も 化 し て し ま う 。 さ き に 引 用 し た よ う に 斉 物 論 篇 に い う 、 其 形 化 、 其 心 与 之 然 (其 の 形 化 す れ ば 、 其 の 心 こ れ と と も に 然 り 化 す ) で あ る 。 こ れ ら は い ず れ も 物 の 世 界 に の み 生 き て 、 物 有 結 之 (物 こ れ を 結 ぶ あ り ) 、 物 欲 ゆ え に 棒 縛 り と な っ て い る か ら だ 。 い わ ゆ る 物 に よ る 県 さ か さ ず り に あ っ て い た も の で 、 そ れ か ら 解 離 脱 す る こ と が で き な か っ た 。 物 の 天 に 勝 て な い 道 理 を 悟 ら ね ば な ら な い 。 そ こ で 兀 者 王 駝 を 聖 と す る 文 を 引 用 す る と 、 ( 徳 充 符 篇 ) 魯 有 兀 者 王 騎 、 従 之 遊 者 、 与 仲 尼 相 若 、 常 季 問 於 仲 尼 日 、 王 騎 、 兀 者 也 、 従 之 遊 者 、 与 夫 子 中 分 魯 、 立 不 教 、 坐 不 議 、 虚 而 往 、 実 而 帰 、 固 有 不 言 之 教 、 無 形 而 心 成 者 邪 、 是 何 人 也 、 仲 尼 日 、 夫 子 聖 人 也 、 丘 也 直 後 而 未 往 耳 、 丘 将 以 為 師 、 而 況 不 若 丘 者 乎 、 奨 假 魯 国 、 丘 将 引 天 下 而 与 従 之 、 常 季 日 、 彼 兀 者 也 、 而 王 先 生 、 其 与 庸 亦 遠 、 若 然 者 、 其 用 心 也 、 独 若 之 何 、 仲 尼 日 、 死 生 亦 大 、 而 不 得 与 之 変 、 錐 天 地 覆 墜 、 亦 将 不 与 之 遺 、 審 乎 無 假 、 而 不 与 物 遷 、 命 物 之 化 、 而 守 其 宗 也 、 常 季 日 、 何 謂 也 、 仲 尼 日 、 自 其 異 者 視 之 、 肝 胆 楚 越 也 、 自 其 同 者 視 之 、 万 物 皆 一 也 、 夫 若 然 者 、 且 不 知 耳 目 之 所 宜 、 而 遊 心 乎 徳 之 和 、 物 視 其 所 一 、 而 不 見 其 所 喪 、 視 喪 其 足 、 猶 遺 土 也 、 常 季 日 、 彼 為 己 、 以 其 知 得 其 心 、 以 其 心 得
其 常 心 、 物 何 為 最 之 哉 、 仲 尼 日 、 人 莫 鑑 於 流 水 、 而 鑑 於 止 水 、 唯 止 能 止 衆 止 、 受 命 於 地 、 唯 松 栢 独 也 正 、 冬 夏 青 青 、 受 命 於 天 、 唯 舜 独 也 正 、 幸 能 正 生 以 正 衆 生 、 夫 保 始 之 徴 、 不 灌 之 実 、 勇 士 一 人 、 雄 入 於 九 軍 、 将 求 名 而 能 自 要 者 、 而 猶 若 是 、 而 況 官 天 地 、 府 万 物 、 直 寓 六 骸 、 象 耳 目 、 一 知 之 所 知 、 而 心 未 嘗 死 者 乎 、 彼 且 択 日 而 登 假 、 人 則 従 是 也 、 彼 且 何 肯 以 物 為 事 乎 、 荘 子 ・寓 の 系譜 魯 に 兀 者 ゴ ッ 、 片 足 王 馳 タ イ あ り 。 こ れ に 従 い て 遊 ぶ 者 、 仲 尼 と 相 若 し く 。 常 季 、 仲 尼 に 問 い て 日 わ く 、 王 胎 は 兀 者 な り 。 こ れ に 従 い て 遊 ぶ 者 、 夫 子 と 魯 を 中 分 す 。 立 ち て 教 え ず 、 坐 し て 議 せ ず 、 虚 に し て 往 き 、 実 に し て 帰 る 。 固 ま こ と に 不 言 の 教 あ り て 、 形 無 く し て 心 に 成 れ る 者 か 。 こ れ 何 人 そ や と 。 仲 尼 日 わ く 、 夫 子 は 聖 人 な り 。 丘 や 直 た だ 後 お く れ て 未 だ 往 か ざ る の み 。 丘 、 将 に 以 て 師 と 為 さ ん と す 。 而 る を 況 ん や 丘 に 若 か ざ る 者 を や 。 案 な ん ぞ 假 た だ に 魯 国 の み な ら ん 。 丘 、 将 に 天 下 を 引 き て 与 と も に こ れ に 従 わ ん と す と 。 常 季 臼 わ く 、 彼 は 兀 者 な り 。 而 る に 先 生 よ り 王 旺 、 さ か ん な り 。 其 れ 庸 と も 亦 遠 し 。 然 る が 若 ご と き 者 は 、 其 の 心 を 用 う る や 、 独 り こ れ を 若 何 い か ん と 。 仲 尼 日 わ く 、 死 生 は 亦 大 な り 。 而 も こ れ が 与 た め に 変 ず る を 得 ず 。 天 地 覆 墜 す と 雛 も 、 亦 こ れ が 与 た め に 遺 う し な わ れ ぎ ら ん と す 。 候 無 き を 審 ら か に し て 物 と 遷 ら ず 、 物 の 化 を 命 と し て 、 其 の 宗 を 守 る も の な り 。 常 季 日 わ く 、 何 の 謂 そ や と 。 仲 尼 日 わ く 、 其 の 異 な る 者 よ り こ れ を 視 れ ば 、 肝 胆 は 楚 越 な り 。 其 の 同 じ き 者 よ り こ れ を 視 れ ば 、 万 物 は 皆 一 な り 。 そ れ 然 る が 若 ご と き 者 は 、 且 つ 耳 目 の 宜 し き 所 を 知 ら ず し て 、 心 を 徳 の 和 に 遊 ば し め 、 物 は 其 の 一 な る 所 を 視 て 、 其 の 喪 う 所 を 見 ず 。 其 の 足 を 喪 う を 視 る こ と 、 な お 土 を 遺 お と す が ご と き な り と 。 一111一
文林 十八 号 常 季 日 わ く 、 彼 、 己 を 為 お さ む る に 、 其 の 知 を 以 て 其 の 心 を 得 、 其 の 心 を 以 て 其 の 常 心 を 得 た り 。 物 、 何 為 な ん す れ そ こ れ に 最 あ っ ま る や と 。 仲 尼 日 わ く 、 人 は 流 水 に 鑑 か ん が み る こ と な く し て 止 水 に 鑑 み る 。 た だ 止 の み 能 く 衆 止 を 止 と ど む ( 止 観 ) 。 命 を 地 に 受 く る 、 た だ 松 栢 の み 独 り 正 し く 、 冬 夏 に 青 青 た り 。 命 を 天 に 受 く る 、 た だ 舜 の み 独 り 正 し く 、 幸 い に 能 く 生 を 正 し て 以 て 衆 生 を 正 す 。 そ れ 始 道 を 保 つ の 徴 あ か し は 催 れ ざ る の 実 信 念 力 な り 。 勇 士 一 人 、 雄 お お し く 九 軍 に 入 る 。 将 に 名 を 求 め ん と し て 能 く 自 ら 要 通 、 む か う る 者 に し て 、 な お か く の 若 ご と し 。 而 る を 況 ん や 天 地 を 官 管 し 、 万 物 を 府 蔵 し 、 直 た だ 六 骸 を 寓 と し 、 耳 目 を 象 し る し 、 か た と し 、 知 の 知 る 所 を 一 無 に し て 、 心 い ま だ 嘗 て 死 せ ぎ る 者 を や 。 彼 ま さ に 日 を 択 ぴ て 登 假 昇 天 せ ん と す れ ば 、 人 は 則 ち こ れ に 従 わ ん 。 彼 か つ 何 ぞ 肯 え て 物 を 以 て 事 と 為 さ ん や と 。 王 騎 は 荘 子 の 描 く 聖 人 の ひ と り で あ る 。 文 中 の 審 乎 無 假 、 而 不 与 物 遷 、 命 物 之 化 、 而 守 其 宗 也 、 に 相 当 す る 文 が 天 道 篇 に あ り 、 審 乎 無 假 、 而 不 与 利 遷 、 極 物 之 真 、 能 守 其 本 (假 無 き を 審 ら か に し て 、 利 と 遷 ら ず 、 物 の 真 を 極 め て 能 く 其 の 本 を 守 る ) 物 と 利 に 左 右 さ れ ず 、 物 の 真 実 を 極 め て そ の 根 源 、 始 め を 守 る 。 説 文 に 、 帳 、 非 真 也 ・ と し た 解 が こ の 假 に 当 る 。 ま た 文 中 に 假 を た だ と 読 む 場 合 は 、 奨 假 魯 国 (な ん ぞ た だ に 魯 国 の み な ら ん や ) 。 こ こ で は 直 ・ と 並 ん で 俣 、 但 也 、 郭 注 ) の 用 法 で あ る 。 さ ら に 択 日 而 登 假 ・ の 假 は 還 遠 に 通 用 し て い る 。 こ の 文 に は 假 の 三 態 が 並 ん で 見 え る 。
補 注 第 三 段 の 文 中 に 次 の よ う な 句 が 並 ん で い る 。 与 接 為 構 、 日 以 心 闘 、 鰻 者 、 轡 者 、 密 者 、 小 恐 喘 喘 、 大 恐 縷 縷 、 右 の 文 で 構 と 闘 ( 段 氏 古 韻 四 部 ) 、 ま た 喘 と 綬 ( 段 氏 古 韻 十 四 部 ) は そ れ ぞ れ } 句 四 字 の 押 韻 文 で 、 中 に は さ ま れ る 六 字 は う ま く こ れ に な じ ま な い 。 ま た 六 字 が 心 闘 に か か る と し て も 意 味 が つ け に く い 。 案 ず る に こ れ ら は 前 段 の 大 樹 の 文 の 錯 簡 で は な い か と 思 う 。 つ ま り 、 大 樹 を ゆ さ ぶ っ た 烈 風 が 止 ん だ あ と の 、 属 風 済 則 衆 籔 為 虚 ( 属 烈 風 や め ば 則 ち 衆 霰 穴 は 虚 と な る ) に つ づ く べ き 句 が 、 こ の 段 中 に 錯 入 し た も の で は な か ろ う か 。 烈 風 の 形 容 に 者 字 を 用 い て 副 詞 句 に し た の が 前 段 に 十 個 所 を 数 え る 。 ま た こ の 六 字 は 風 が 静 ま る の に も よ く 釣 り 合 う か ら で あ る 。 広 韻 に よ る と 、 綬 ( 緩 縷 ) 、 容 ( 倉 轡 、 あ な ぐ ら ) 、 密 ( 静 也 ) で あ る 。 烈 風 の た め に い ま ま で 吼 え た て て い た 大 樹 の 、 大 小 さ ま ざ ま な ほ ら 穴 が 、 漸 く 静 ま っ て ゆ く さ ま を 形 容 し た 。 ゆ る や か に 、 奥 深 く 、 静 か に 、 や が て 風 も お さ ま り 、 あ と は 大 樹 の 枝 が た だ さ わ さ わ さ や さ や と 揺 れ て い る だ け で あ る と い う 。 荘 子 ・寓 の 系 譜