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新商品造出にかかわる要因の分析

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(1)

資 料

新商品造出にかかわる要因の分析

 An Analysis of Factors making New Goods

 新商品の造出は、企業の発展・成長にとって不可欠であるが、今日の低成長期のなかでは、 特に研究開発の効果をあげることが強く要請される。  そこで、商品開発の効果を高める問題は、一つは当該研究課題でもって、果して開発に踏み 切るべきかどうかを何らかの形で評価し、効果を高めることがまず考えられる。  具体的には、ミッションとの適合度をどのようにうまく扱うか。すなわち、目標達成のため に価値あるテーマを最もよい方法で順位づけし,評価すること。また、人、物、金の資源配分 を有効に活用し、効率化すること。さらに、当該研究テーマ遂行にあたっての企業側のメリッ トなどが評価上の問題点として取り上げられる。  既に研究開発評価の重要性については、1982年刊行の日本能率協会編「戦略的研究開発の評 価と意思決定」において、以下の問題点が指摘されている。 ① 意思決定の根拠に対するニーズの再認識。 ② 研究開発効率の低下傾向。 ③研究開発資源制約の深刻化。  これら①∼③を通じて言えることは、研究開発期間の大型化、長期化が進行するなかで、商 品の寿命は逆に短命化の傾向にあり、開発の効果が予想以上に伸びないこと。また、大型化、 長期化にともない費用が増大傾向になり、逆に、開発費抑制の考え方が生まれてくること。さ らに、開発課題そのものが目標、市場ニーズ、企業側のメリットにあって確かなる意思決定の もとで進められているかの確認を要することが低成長期における評価の背景になっている。  もちろん、上述の評価や背景についてはこの種の研究を進めるにあたり、十分踏まえる必要 がある。特に、評価に関しては、実行すべきかの着手前の問題をおさえた上に、開発途中で何 らかの有効な評価を行うことにより妨げとなっている要因を取りのぞき、より効果を高めるこ とが、次に考慮しなければならない重要な課題である。  小論では、現実的な問題として開発設計過程をも含めたものを要因に組み入れ、先行してい る上述の評価によるこれまでの研究とは異なった観点から新商品開発効果の問題を検討する。  要するに、本研究の目的は、研究開発テーマそのものを中心とした着手前の経済論的課題だ 109

(2)

新商品造出にかかわる要因の分析       けでなく、開発過程の中で考えら       れる心理、社会学的問題を含めた       ものである。しかも、それは開発       過程のしかるべき時期に評価、チ       ェックをかけることによりそこか       ら問題点をおさえ、それを排除       し、効率化を通し成功に導かせる       ことをねらいとするものである。        方法:質問紙による方法として       商品開発において考えられる内的       ・外的な事柄(開発テーマそのも       の、部内間や関連部署との意志疎       通、仕事の流れ、担当者や監督者       のリーダーシップなどの人的資質       他)を51項目用意した。        回答は、当該テーマについての       Fig.1,問題分析の流れ       判断を7件法にて求めた。また、 個々のテーマの達成レベルは ①中断から ②完了のみ ③引渡しのみ ④一部商品化 ⑤商 品化 ⑥ヒット商品までの6つの選択肢から達成の程度を尋ねた。  次に、具体的な研究の進め方は、まずテーマにかかわる調査を行い、因子分析法により開発 過程を含む要因の抽出を基礎に、Fig.1に示すような手順を考えた。  調査期日は、1983年11月で調査件数150件(78年∼83年)、分析対象件数109件である。なお,        註1) 調査票の記入は、当該テーマのテーマ責任者を対象とした。また、今回、研究の対象となった 企業はA社(従業員数14,000人の製造販売部門を有する企業)総合研究所である。  結果と考察:1.因子分析による要因の抽出  51項目の変数を用いて、商品化にかかわる要因を主因子法一バリマックス回転(累積寄与率 は8因子 78%)による因子分析にて求めた。  その結果、第1因子リーダーの指導性と担当者の因子、第H因子市場調査の因子、第皿因子 関係部署との連携の因子 eg IV因子テーマにかかわる因子、第V因子スキルアップの因子 第 VI因子技術蓄積の因子 agV[1因子商品化の困難さの因子、第田因子開発戦術の因子の計8ケ年 が抽出できた。Table 1に新商品造出に関する尺度の因子負荷量を示す。 テーマににかかわる調査 ’ 因子分析 、’ ’ 因子得点の計算 達成レベル 1    1← ﹁ ← 因子得点と達成 激xルの相関分析 因子得点と達成 激xルの重回帰分析 、 ダ  Ψ 、r テーマ達成、未達 ャの主要因 因子得点と達成 「達成の判別分析

進捗度評価式 註1)研究は、A社総合研究所研究プロジェクト・チームに筆者が加わり、まとめられたものである。調査   の実施及びデーター処理一UNIVAC−1100使用一は全てプロジェクト・チームメンバーにより進められ   た。ここに感謝の意を表す次第である。尚、まとめにあたって会社名の公表を控える申し合わせを行っ   たためA社として文中表した。 110

(3)

岩H Table 1

新商品造出に関する尺度の因子負荷凶

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(6)

新商品造出にかかわる要因の分析  2.テーマ達成レベルと各因子の相関分析       註2)     註3)  次に、テーマの達成レベルと各因子が果して関係があるかをみるために両者間の相関値を算 出した。Table 2及び3に結果を示す。  テーマにより多少の違いはあるが、全般には表から研究所とテーマに関連する関係部署との 連携の第皿因子、技術蓄積に関する第VI因子、開発にかかわる戦術の第田因子が比較的相関が 高く認められた。  また、個々のテーマの特徴を取り上げると、サイズの比較的小さいCとEは、関係部署との Table 2 因子得点とテーマ達成レベルの相関係数 **p<.01*p<.05 全 テ 一 マ  N=109.   リーダー 1   と担当者 ll市場調査 皿 関係部署 IV テーマ .126 .154 一.525** 一 .026

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1/ M:大規模テーマ S:総合テーマ C:小規模テーマ

E

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   アップ 一.260 .053 一.163 一.315 11 市場調査 .161 .280* 一.004 一.083 VI技術蓄積 一.043 一.038 一.548* 一.503* 皿 関係部署 一.507* 一.390** 一.719** 一,725** ・・當慰の .254 一.119 .557* .081 IV テ  マ .204 一.038 .262 一.177 田 開発戦術 .374 .285* .300 一.438 テーマ別分析では109件の全テーマのうち、1件は特殊テーマのため割愛した。 註2)テーマは、大きくは4つに分類できる。    Cテーマ:材料配分、合成等による化学的砥究テーマ。    Eテーマ:電気関連の研究開発テーマ。   Mテーマ:機械関連の大型研究開発テーマ。    Sテーマ:C,E,Mを全てあわせた機能面を中心とした総合開発テーマ。 註3)達成レベルは1∼6の段階で、内訳及び件数は、①中断が5件、②完了11件、③引渡しのみ19件、④   一部商品化15件、⑤商品化56件、⑥ヒット商品3件の計109件である。        114

(7)

新商品造出にかかわる要因の分析 ト商品から中断までの達成度を示 す達成レベルを用いた。従って、 ここでは商品造出にかかわる項目 (因子)に重みづけをおこなって、 達成レベルをもっともよく表す合 成変量を作り出そうとした。  データー処理は109件のうちの 90件でランダム抽出とした。内 訳は、達成レベル、①中断が2 件、②完了6件、③引渡しのみ18 件、④一部商品化15件、⑤商品化 49件である。従って、基準変量 の値は、1.00∼5.00の範囲にあ る。 連携の因子、開発戦術、技術蓄積の各因子など因子得点とテーマ達成レベルの相関係数は同じ 傾向を示すのに対して、大型開発テーマであるSとMは、技術蓄積の因子がいずれもマイナス の負荷で、技術蓄積が不十分であれば達成レベルが低いという結果が示された。  商品化の困難さの第W因子をみても、Mテーマのみ.557(p<.05)で有意に相関が高く認 められている。これについては、商品化の困難さも小さければ達成レベルが高いという結果で ある。つまり、大型テーマは設備がらみのため強く出ているものと考えられる。  さらに、開発戦術の第田因子は、Sテーマが一.438(P<.10)に対して、小規模テーマで あるCとEは、.374、.285で逆のプラスの値である。この解釈については、サイズが小さいテ ーマは、新技術を使えば達成度が高いのに対して、総合テーマであるSは、人員の確保が鍵を にぎっており、確保が出来れば達成度が高くあらわれるとみられる。  3.テーマ達成レベルと各因子の重回帰分析  そこで、今度は各因子のテーマ達成レベルに対する寄与率を求めるため重回帰分析を行っ た。分析を進めるにあたって、予測変:量として、新商品造出にかかわる具体的項目を取り上げ 基準変量である外部基準は、ヒッ        1.0 テーマ達成レベル;y 相 対0.5 値 。 関係部署との連携︵画引因子︶ 鎌鑛購盤技術蓄積︵第w因子︶ 懇闇調査マーケティング︵第且因子︶

  開発戦術︵第盟因子︶   スキルアップ︵第V因子︶ Fig.2.各因子の寄与率 y=4.06+ .086・F,+ .246・F2一 .676・F3一一 .076・F4     (.077) (.218) (・一.610) (一.063)  一 .107・F,・一 .580・F6十 .043・F7十 .148・Fs  (一.087) (一.474) (.035) (.121) R=.852 115 . の 蓄 商品化の困難さ︵第W因子︶ テーマの位置付け︵第W因子︶ リーダーの指導性と担当者の因子 ︵第−因子︶ ():標準準回帰係数 F1∼F8:因子得点  R :重相関係数

(8)

新商品造出にかかわる要因の分析  Fig.2は、各因子の寄与率を最も寄与の大きい第皿因子を1とする相対値で表したものであ る。これら8因子のなかには寄与が小さいものがあるため変数増減法により変数選択を行うと 第皿、第W、等ll因子が選択された。  従ってこれら3因子だけの重相関係数を求あると0.834となり3因子で十分説明できること が明らかになった。 y=4.05十 .241・F,・一一 .701・F3一 .584・F6      (.213) (一.632) (・一.478) F3 関係部署との連携の因子 2 部署からの依頼の強さはどの程度でしたか 3 技術の引渡しを充分に行いましたか 4 引渡し技術に対する部署の評価はどうでしたか ・1受入二二の方針は一Rしていましたか 8 部署とのスリ合せば充分行いましたか 24 テーマはスケジュールどうり進行しましたか F6 技術蓄積の因子 5︸19 開発において他専門部署の協力は得られましたか 当社の技術蓄積が活かされましたか 45 調査は充分できてましたか ④技術的可能性 F2 マーケッティング調査の因子 38 テーマの企画に当って 部署、営業所etc広く意見を集めましたか 41企画段階で販売ルートについての考慮はされましたか 42睡は充分できてましたか

①市場規模

43 ② ニ 一 ズ 44

③他社動向

 4 判別分析によるテーマ進捗度評価式の検討  3.において重回帰方程式が求められたが、商品開発においては、成功・不成功の2者択一が 問題をとらえる場合、特に重要である。そこで、判別分析によりうまく表すことができるかを 検討した。具体的には、①∼③の達成レベルにある商品化来達成テーマ(30件)と⑤∼⑥の達        116

(9)

新商品造出にかかわる要因の分析 成テーマ(48件)について、両親がどれほど識別できるか、3因子を用いた判別関数を求めた ところ、以下の式が得られた。  評価値;Z Z=一 .0213・F,+ .0377・F,十 .0340・F, D2=6.81   D:マハラノビス汎距離       テーマ数 平均 標準偏差  未達成テーマ 30  .0506 .0411

 達成テーマ48 一.0389 .0294

 これを既存テーマに ついて確認してみると Fig.3の通りになっ た。この結果、晶群の 重なり部分は小さく識 別が可能であることが 確認できた。 ま と め 100 A 80 B 60 蕪40  20

 0

マ ー チ 成 馴 化 品、 商\ 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 \、 、 、 、 、 、、 、 、 、 、 、r陰h隔 商品化未達成テーマ 一〇no 一〇.os−o.06 一〇.04 一〇.02 o o.02 o.e4 o.06 e.os o.lo          評 価 値      Fig.3.既存テーマの評価分布  以上、既存テーマにもとつく進捗度評価式を求めたが、評価式はテーマの位置づけの明確 化、中間での商晶化の程度を測定するのに有効であり、また、来達成テーマ改善の方向性を知 ることにもなる。本研究において用いた手法は、当初試行錯誤ではあったが最終的には判別分 析により評価式を求めることができ、これからのこの分野の研究に一つの可能性を残したと言 えよう。これを踏まえた上で、今後の課題として、現在進行中のテーマでうまくあてはめるこ とができる客観的な項目作成に取組む必要がある。例えば、関係部署との連携では、①人の派 遣があるか ②開発仕様は書面化され、関係部署との間で合意されているか ③関係部署との 間に技術開発の分担は書面化されているかなど。特に出来る限り客観的な項目を作ることによ り、各因子得点から評価値を求めるとそれがフォローにつながるものと考えられる。  また、本研究でみられたように、テーマ別達成レベルと因子得点の相関値がテーマにより特 徴を異にしたのも今後の検討すべき研究課題の1つである。  さらに、重回帰分析で用いられた外部基準の達成レベルの問題について、有効な指標が他に もないかどうか検討する必要がある。  最後に、研究のねらいでも触れたように、小論は開発過程で生じる問題点、改善点を何らか の形で見い出そうとした。もちろん、着手前の研究テーマそのものの問題をおさえた上で、こ       117

(10)

       新商品造出にかかわる要因の分析 の種の研究に取り組まねばならない。 文 献 コムリーA. L.芝裕順訳1979因子分析入門サイエンス社(CQmrey,へし1973 A First Course   in Factor Analysis. Academic Press.) 畠山芳雄 1983戦略経営ケーススタディ 日本能率協会 浜本 泰 1984 研究開発評価と費用・成果一経済論的評価法の基準として一 大阪経大論集 第158号大   阪経大学会 森下高治 1984新商品造出にかかわる要因の分析 日本応用心理学会第51回大会論文集 中谷和夫 1983 社会科学・行動科学のための数学入門6 多変量解析 新曜社 日本能率協会編 ユ982戦略的研究開発の評価と意思決定 日本能率協会 野村総合研究所 1981 日立製作所の研究 東洋経済新報社 大崎紘一・菊池 進・緒方正名 1982 コンピュータ・プログラムによる統計技術 同文書院 奥野忠一・久米 均・若賀敏郎・吉澤 正 1973 多変量解析法 日科技連出版社 芝裕順1972因子分析法東京大学出版会 高根芳雄 柳井晴夫 1977 多変量解析法 朝倉書店 118

参照

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