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鉄鋼スラグからの合金元素回収に関する基礎検討

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Academic year: 2021

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(1)

鉄鋼スラグからの合金元素回収に関する基礎検討

著者

北村 信也, 柴田 浩幸

雑誌名

東北大学多元物質科学研究所素材工学研究彙報

64

1/2

ページ

7-12

発行年

2009-03-01

URL

http://hdl.handle.net/10097/48485

(2)

鉄鋼スラグからの合金元素回収に関する基礎検討

北村信也

*1

,

柴田浩幸

*1

Basic Study on Recovery of Alloying Elements from Steelmaking

Slag

By Shin-ya Kitamura and Hiroyuki Shibata

Steelmaking slag can be considered as a domestic resource of alloying elements, e.g., Mn and Cr. The Mn and Cr containing in the steelmaking slag which generated annually in Japan, would be equal to the weights of annual import of these elements. Mn and Cr can be easily separated from slag by reduction reaction; however, the amount of Mn and Cr in slag is very low and the amount of P is very high to use as ferroalloys as alloying materials. This paper proposes a new process for the extraction of Mn and Cr from steelmaking slag as ferroalloys without contamination by P. This process consists of two important steps: (1) formation of molten sulfide (FeS-MnS) from slag in order to completely separate P from Mn and (2) enrichment of P in the water-soluble phase, i.e., solid solution of dicalcium silicate and tricalcium phosphate, in order to separate P from the Cr-containing phase by leaching. In the future, the distributions of Mn and Fe between the steelmaking slag and the sulfide phase should be determined and the effect of the composition of the solid solution on its water solubility should be examined.

(Received December 1st, 2008)

Keywords: slag ,resource of element, sulfurization, leaching

1

緒言

我が国は国内に天然の金属資源を持たないため鉄鋼添加用の合金元素はすべてを海外からの輸入に 頼っており,Ni,Cr,W,Co,Mo,Mn,Vは国家備蓄元素に指定されている.これらの元素は資源 が特定地域に偏在しているため資源枯渇に警鐘がならされている上に,それらの産出時には大きなエ ネルギーを消費し,さらに,鉱山開発や有害副産物の発生などにより環境破壊をもたらしている例も 多い. しかし,これらの元素には国内資源がある.それは製鉄プロセスで排出されるスラグである.製鉄 から発生するスラグには,セメントとして利用されている高炉スラグの他に,転炉や電気炉で発生す る製鋼スラグがある.これらの発生量は年間1400万トンと極めて多量であるものの充分に有用な用 途が無く,現在は土木材料として処理されているが,近い将来産業廃棄物になる可能性も大きい.こ の製鋼スラグには,上記国家備蓄元素のうち,MnとCrが比較的高濃度に含まれている. 本研究は,このスラグを資源と認識し,スラグに含まれるCr,Mnをそれぞれ混合させずにフェロ アロイとして分離回収する条件を明らかにすることを目的とする.

2

背景と従来知見

Mnは鋼材特性に欠かせない元素であり,厚板や鋼管に留まらず,近年は薄板でもハイテン化を指 向する中で使用量が増加している.特に,鉄鋼材料の高付加価値化の中でP濃度が低く純度の高い フェロマンガンの需要が大きい.マンガンの年間総輸入量は約440千トン(Mn純分換算)で,その 95%以上が鉄鋼添加用として消費されているが,埋蔵量は上位5カ国で90%を占めており資源の偏 在が著しい元素の一つである[1].このため国家備蓄元素にも指定されている戦略物質であるが,一 旦,鉄鋼材料に添加されるとリサイクルされる事は無く,将来の資源確保に向けた有効な戦略が全く 無いのが実態である. *1東北大学多元物質科学研究所

(3)

8 鉄鋼スラグからの合金元素回収に関する基礎検討 第 64 巻 第 1,2 号 Crはステンレス鋼の原料であり年間585千トン(Cr純分換算)輸入され,その97%以上が鉄鋼添 加用として消費されているが,これも埋蔵量は上位5カ国で70%を占めており資源の偏在が著しく国 家備蓄元素に指定されている[1].これまでCrはNi-Cr系ステンレスとしてリサイクルされる割合も 多かった(全輸入量の30%相当)が,Cr系ステンレスの製造が増加しつつあり,昨年は全ステンレ ス生産量の40%近くにも達した.Ni-Cr系はオーステナイトが安定なため非磁性であり分別リサイク ルが容易であったのに対し,Cr系はフェライトが安定なため普通鋼スクラップとの分別が困難で,将 来の資源確保に向けた戦略が無い[2]. 一方、我が国では年間10百万トンの転炉スラグと3.5百万トンの電気炉スラグが排出されている が,そこには5∼ 10%のMnOが含まれている.これは,転炉スラグには410千トンの,電気炉ス ラグには100千トンのマンガンが含まれている事になる.また,将来,Cr系ステンレスが普通鋼ス クラップに混入してリサイクルされると考えると,Crも電気炉スラグとして排出されることが予想 できる.しかし,このスラグを単純に還元すると不純物であるPも還元されるためフェロマンガン, フェロクロムとしての価値は低いものでしかない.つまり,代表的な転炉スラグを単純に還元すると, Fe:Mn:Pの比率からMnは25%程度しか含まれず,逆にPは7%も含まれるフェロアロイが製造さ れる事になる. すでにスラグを資源と認識した研究例は報告されている.特にPやMnの我が国におけるマテリ アルフローは詳細な報告があり[3, 4],製鋼スラグがこれらの資源であるという指摘はすでに言わ れている.さらに,スラグからの有価元素の回収という視点では,燐酸がスラグ中で特定の鉱物相 (2CaO· SiO2;C2Sと略す)にのみ含まれ事から,これを浮力や磁力を利用して分離する試みが報告 されている.古くは,転炉スラグを徐冷した場合に比重の軽いC2S相が上層に集まるため,それを切 断することで分離した例がある[5].またC2S相と酸化鉄含有相との磁気特性差を利用する試みもあ る[6].超伝導コイルを用いた例では燐の回収率は62%にまで達したと報告されている.一方,Mn やCrの回収についての先行研究例は無い.

3

プロセスの考え方

Table 1 Typical steelmaking slag.

製鋼スラグ 転炉系スラグ 酸化スラグ電気炉系スラグ還元スラグ 発生量 10736千ton 3664千ton CaO 45.8 22.8 55.1 SiO2 11 12.1 18.8 T-Fe 17.4 29.5 0.3 MgO 6.5 4.8 7.3 Al2O3 1.9 6.8 16.5 S 0.06 0.2 0.4 P2O5 1.7 0.3 0.1 M nO 5.3 7.9 1 製鋼スラグの代表的な組成をTable1に 示す[7].プロセスを考える場合,酸化物で あるスラグからPとMn,Crを完全分離 する方法と,Feを可能な限り低濃度にして Mn/Fe,Cr/Feを増加させる必要がある. そこで,以下に示す2つの要素技術に着目 し,Fig.1のようなプロセスを立案した. 1. スラグの硫化処理によるFeS-MnS 系マット生成 2. 残渣スラグの水溶液処理によるPの 溶解分離

3.1

スラグの硫化処理

FeやMnは硫化物を形成するがPは形成しない点に着目し,溶融硫化物相(マット)を生成させ ることでPをMnから完全に分離し,かつMn/Feの品位を高めることができる.各酸化物の酸化還 元反応平衡を1723Kで比較したものがFig.2である.ここで,FeO,MnO,SiO2,Cr2O3の活量は

(4)

Fig.1 Schematic outline of the process. 0.3, 0.3, 0.15, 0.5とし,P2O5は 水渡らの測定値から10−15 と仮 定した[8].横軸は各元素の活量 であるが線が下にあるほど平衡酸 素分圧が低い,つまり酸化され易 く還元され難い事を示す.これよ り,MnやCrを還元するにはFe やPも同時に還元されてしまう 事がわかる.一方,Fig.3は各硫 化物の硫化反応平衡を比較したも のである.ここで,FeO,MnO, SiO2の活量は0.5と仮定したが, 硫化はMnの方がFeより低い分 圧で起こりうる事がわかる.尚, PについてはPS(g)を生成する 反応があるが分圧を10−7atm以 下にしない限り反応は進まないの で無視できる.またCrの硫化物 は生成されない.

Fig.2 Comparison of the equilibrium oxygen pressure for oxidation reaction of each element.

Fig.3 Comparison of the equilibrium sulfur pressure for the sulfide of each element.

マットとスラグ間の平衡は(1)式で表される.

(FeO) +{MnS} = (MnO) + {FeS} (1)

この平衡関係を計算するとFig.4のようにMnOとFeOの活量比が1であっても平衡するマット中の

MnS/FeSの活量比は2になることがわかる.これは,マットを形成することでMn/Feをスラグより

も2倍に増加できる可能性がある事を意味しており,フェロマンガン合金とした場合のマンガン品位 を上げられる可能性がある.しかし,これらは活量を仮定した上での計算値であり,さらに,製鋼ス ラグはCaO− SiO2系のためCaSが生成する可能性がある.またFeOとFeSは溶解度を持つため純

粋な酸化物相と硫化物相が生成するかも確認が必要である.これらの点を実験的に検証し最適条件を 明らかにする必要がある.

(5)

10 鉄鋼スラグからの合金元素回収に関する基礎検討 第 64 巻 第 1,2 号

3.2

スラグの水溶液処理

FeとMnを硫化物として分離した残りの酸化物相にはPとCrが含まれるが,製鋼スラグにおい てPは2CaO· SiO2(以下C2Sと称する)と3CaO· P2O5(以下C3Pと称する)とで構成される C2S− C3P固溶体相に含まれ,この相が低pHでは水溶液に選択的に溶解するという点に着目し,P をFe,Crから分離しようとするものである.製鋼スラグの組織例をFig.5に示す. ここで重要な点は,⃝P1 をC2S相に高濃度に濃縮し固溶体相以外のマトリックス相のP濃度を可能 な限り低くすることと,⃝P2 を含む固溶体相とマトリックス相の水に対する溶解特性に大きな差を持 たせ,Pを含んだ相のみを選択的に水に溶解させることの2点である. 製鋼スラグはC2S飽和の固液共存組成でありC2SはC3Pと固溶体を形成していることは知られ

Fig.4 The equilibrium relation of equation(1) Fig.5 Typical structure of steelmaking slag

Fig.6 Slag composition for the experiments to observe the enrichment of P2O5 in solid

solution.

Fig.7 Composition of solid solution for various slag. compositon.

(6)

ている.著者らはスラグ組成と平衡する固溶体組成の関係を調査し,スラグのCaO, SiO2, Fe2O3濃

度やP2O5濃度によって固溶体中のC3P濃度は10∼ 100%まで大きく変わることをすでに明らか

にした[9].結果の一例をFig.7に示す.ここで,A,B,CはFig.6に図示した基本スラグ組成を示し,

P2O5濃度はスラグに配合した濃度を示す.つまり,CaO/SiO2をCaO− SiO2− Fe2O3系状態図で

のC2S飽和領域に見られるノーズ付近の値(Fig.6におけるA組成)とし,Fe2O3とP2O5濃度を増

加させれば(A18%P2O5),ほぼ100%C3Pの固相が得られている.この固相を凝固条件の制御や熱処

理により粗大化させた後でスラグを粉砕し,それを水溶液へ浸漬すればPを含む相を選択的に溶解で きる可能性がある.

一方,C2SとC3Pの水溶液への溶解反応は次式で表される.

2CaO· SiO2+ 4H+= 2Ca2++ H2SiO3+ H2O (2)

又は 2CaO· SiO2+ 3H+= 2Ca2++ HSiO3 + H2O

3CaO· P2O5+ 4H+= 3Ca2++ 2H2PO4 (3)

又は3CaO· P2O5+ 2H+= 3Ca2++ 2HPO24

これらの式の298Kにおける平衡関係を海水条件(Ca2+ 濃度一定)で計算した結果が報告されてい る[10]が,C2Sは中性環境でも1mol/l以上の溶解度を持つのに対して,C3Pは10−10mol/l程度し か溶解度が無い.つまり,固溶体中へC3Pを濃化させるとマトリックス相のP濃度は低下するもの の,固溶体の水への溶解性が低下し水処理で分離しにくくなることが想定される.従って,Pの濃化 と水溶液への溶解を考えたときの適正なスラグ組成を検討する必要がある.

4

結論

MnやCrは鋼材特性に不可欠な元素であり国家備蓄元素でもある.本研究は,製鋼スラグに含まれ るMnやCrをフェロアロイとして再利用する事を目的としたプロセスの検討を行った.今回提案す るプロセスの特徴はスラグを単純に還元するのではなく,一旦,FeS-MnS相を生成する点にある.つ まり、FeやMnは硫化物を形成するがPは形成しない点に着目し,溶融硫化物相(マット)を生成さ せる事でPをMnから完全に分離し,かつMn/Feの品位を高めるものである.また,FeとMnを硫 化物として分離した残りの酸化物相にはPとCrが含まれる.製鋼スラグにおいてPは2CaO· SiO2 (以下C2Sと称する)と3CaO· P2O5(以下C3Pと称する)とで構成されるC2S-C3P固溶体相に含 まれ,この相が低pHでは水溶液に選択的に溶解するという点に着目し,PをFe,Crから分離しよう とするものである.今後は,製鋼スラグ系における酸化物と硫化物の分配,固溶体中のC3P濃度と水 への溶解性などに関する実験が必要である.

文 献

[1] 世界鉱物資源データブック第2版,資源素材学会資源経済部門委員会、東京大学生産技術研究所 共編,オーム社,東京,(2006) [2] 北村信也:金属,77 (2007),p.1212 [3] 横山一代,久保裕也,森一広,岡田秀彦,竹内秀次,長坂徹也;鉄と鋼, 92 (2006), p.683 [4] 中島謙一,横山一代,長坂徹也,林誠一;材料とプロセス,20 (2007),p.919 [5] 尾野均,稲垣彰,桝井為則,成田裕,満尾利晴,野坂詔二,合田進;鉄と鋼,66 (1980),p.1317 [6] K.Yokoyama, H.Kubo, K.Mori, H.Okada, S.Takeuchi, T.Nagasakaet : ISIJ International,47

(2007),p.1541

(7)

12 鉄鋼スラグからの合金元素回収に関する基礎検討 第 64 巻 第 1,2 号

[8] 水渡英昭,井上亮,高田稔;鉄と鋼,67 (1981),p.2645 [9] 島内謙一,北村信也,柴田浩幸;鉄と鋼,掲載予定

Table 1 Typical steelmaking slag.

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