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児童虐待の理解と児童相談所

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日本福祉大学社会福祉論集 第 106 号 2002 年 2 月

はじめに

近年, 児童相談所における児童虐待相談件数が急増し, 児童虐待に関する報道も増加している. このように児童虐待は児童福祉上の緊急課題であるだけでなく, 社会問題として注目されている. 本稿では, 児童虐待問題を取り上げ, 児童虐待問題の理解のしかたについての検討, 児童虐待対 応と子育て家庭支援の関連についての検討, 児童虐待問題と児童相談所の関わりについての検討, 「児童虐待の防止等に関する法律」 についての検討, 児童虐待の予防と虐待死に関する考察, 児 童虐待対応におけるネットワークの意義と方法の検討, などを行い, 合わせて児童相談所のあり 方についても若干の私見を述べる (注 1. 参照). 事実関係の認識不足の部分, 考察の未熟な部 分, 仮説的にすぎる問題提起の部分などについてご批判とご教示をいただければ幸いである.

1 児童虐待の相談処理件数の急速な増大と児童虐待問題のとらえ方

1) 児童虐待の相談処理件数の増大 1990 年代を通じて, 児童相談所における児童虐待の 「相談処理件数」 が急速に増大した. 1990 年度は 1,101 件であったものが, 1999 年度は 11,631 件に増加している. また, 2000 年度の全国 児童相談所の 「相談受付件数」 は, 18,804 件であり, 「相談処理件数」 は, 17,725 件であった (詳しくは, 厚生省児童家庭局企画課, 1999 年, 厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課, 2001 年 a,b および表 1 参照). 2000 年度の 「相談処理件数」 は, 1990 年度のおよそ 16 倍になる (注 2. 参照). また, 児童相談所が関与しているにもかかわらず, 児童が死に至るような事例も少数 例であるが発生している. 厚生労働省 (注 3. 参照) は, 児童相談所が関与しているか, または, 関与していた死亡事例を発表している (厚生省児童家庭局企画課, 1999 年, 厚生労働省雇用均 等・児童家庭局総務課, 2001 年 b 参照). これによれば, 1997 年度は 15 件, 1998 年度は 8 件, 1999 年度は 5 件, 2000 年度は 11 件であった.

児童虐待の理解と児童相談所

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児童相談所は, 児童虐待問題に対し, 中心的な責任を負う機関の一つとして, 日夜この問題に 鋭意取り組んでいるが, 上記のような問題の発生とも関わって, しばしばその取り組みが不十分 であったり, 「及び腰」 であることが指摘されている. ここ数年, 児童相談所は, 厳しい批判の 大波に洗われているといってもよい実状にある. 児童相談所では, 設置数の慢性的不足や職員体制の弱さもあり, 児童虐待相談の増大に直面し, 児童福祉司をはじめ児童相談所職員は常に迫ってくる緊張とゆとりのない仕事に追われ, 過労状 態にあり, 燃え尽き状態に陥る人も少なくない. また児童相談所は, 児童虐待以外にも子どもたちに関する重要な問題に取り組んでいるが, 近 年は, 増大する児童虐待相談に追われ, 非行問題や不登校問題などは後回しにならざるを得ない 実体もある. 心身障害児の相談にも十分な対応ができていないということは多くの児童相談所職 員の悩みである. 2) 児童虐待は急増しているのか では児童虐待は各種報道でいわれるほど急増しかつ深刻化しているのであろうか. ここ約 10 年間の信頼できる全国的・年次的統計は児童相談所の相談処理件数ないしは相談受 付件数である. この統計が発表されている約 10 年間に何があったかを考えてみる必要がある. 現代日本の子育て事情は, 様々な困難さを抱えているとはいえ, 児童虐待の発生件数が 16 倍を 超えるほど悪化したとは思えない. ここには, 子育て内容についての国民の期待水準が向上し, 「児童虐待を認知する敷居」 (認知域値) が低くなっていることも考慮しなければならない. ちなみに太平洋戦争中あるいは終戦直後の国民生活の荒廃の時期に多くの子どもたちが置かれ た状況は 「社会的児童虐待」 と呼ぶにふさわしいものであり, このような状況では個別の虐待は まともに 「認知」 されなかった (「社会的 (児童) 虐待」 については, 岩田泰子, 2001 参照). その後, 高度経済成長期を通し, 日本社会が相対的に安定し, 国民生活が 「豊か」 になる中で (もちろんこの 「豊かさ」 を手放しで喜ぶことができないことは, 高度経済成長期の公害や新し い貧困の発生によって明らかである) 「社会的児童虐待」 は激減した. このような状況下で 「家 庭内児童虐待」 は突出した現象として目立つようになる. 特に少子化が進行し一般家庭における 表 1 児童相談所における児童虐待相談処理件数の推移 (注) 上段〈 〉内は, 平成 2 年度を 100 とした指数 (伸び率) である. 出所: 「(厚生労働省) 平成 12 年度 児童相談所における児童虐待相談処理件数」 平成 2 (1990) 年度 平成 3 年度 平成 4 年度 平成 5 年度 平成 6 年度 平成 7 年度 平成 8 年度 平成 9 年度 平成 10 年度 平成 11 年度 平成 12 (2000) 年度 100 1,101 106 1,171 125 1,372 146 1,611 178 1,961 247 2,722 373 4,102 486 5,352 630 6,932 1,056 11,631 1,610 17,725

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子育てが, 手をかけお金をかけたものになっていく中で, 保護の怠慢・拒否や子どもへの暴力は 一層目立つ社会現象にならざるを得ない. 近年の動きを見るならば, 「子どもの権利条約」 の批准 (1994 年) が緩慢とはいえ次第に影響 を深めているであろう. 厚生省が 1999 年に 「虐待の定義の拡大」 をしたことも影響を与えてい るであろう. さらにマスコミの過剰とも思える報道も児童虐待の通告に影響しているであろう. 2000 年度については, 「児童虐待の防止等に関する法律」 の影響も加えなければならない. これ らを踏まえるならば, 児童虐待は, 近年漸増している可能性はあるものの, 激増しているとは言 えないというのが実体であろう. ただし 「児童虐待 (児童虐待の真の発生件数) は近年激増して はいない」 と仮定しても, 児童相談所に年間 18,000 件もの相談 (2000 年度) があったことは事 実であり, この件数だけでも現在の児童相談所の処理能力の限界に近い (あるいは処理能力を超 えている) のが実情であろう. したがって 「児童虐待」 対応施策の充実は重要かつ緊急の課題で あることに変わりはない. 3) 児童虐待の事例的検討 ところで児童虐待は, 事例的に検討すると, 育児放棄の事例においても強度の身体的虐待に至 る事例においても, 親はある期間育児に努力していることが少なくないこと, あるいは 「しつけ ている」 (つまり親の意識としては, 必要な育児をしている) と考えていながら結果としては虐 待に至る場合が少なくないことが分かる. いかなる理由があったとしても児童の虐待は許容され ないが, その背景には科学的に解明すべき課題が多い. そこには, 子どもの成長・発達に関する知識の不足, 育児に関するスキルの不足, 虐待, ある いは子どもの人権に関する理解の不足があることが指摘される. このように児童虐待事例の多くには, 虐待 (暴行・傷害・人権侵害) の面とは別に, 不適切な 子育て, 子育てに関する能力・スキルの不足, などの面があるといえる. 端的に言えば, 本人は 必要に迫られて 「ある育て方」 を実行しているにもかかわらず, 育て方を間違えてしまうのであ る. つまり, 動機は 「育児」 であるが, 結果は 「虐待」 に終わるのである. その意味では 「虐待」 というよりは, 「マルトリートメント (不適切な養育)」 という表現が適切である. この点からみ るならば, 児童虐待と一般的な成人の犯罪を区別してとらえなければならない. 一般的な犯罪の 場合, 例えば, 「コンビニエンス・ストアの利用の仕方を誤って, 強盗を働いた」 という論理 (釈明) は成立しないであろう. このように考えるならば, 児童虐待への対応は, 「子育て家庭支援」 と一体のものとして取り 組まれる必要がある. しかし, 児童相談所においては, 現実には児童虐待相談以外の相談に割く 時間はしだいに少なくなっている. 子育て家庭支援に割く時間が少なくなれば, 児童虐待への予 防的活動が少なくなることを意味し, 結果として, 児童虐待相談を増やすというジレンマに陥る ことになる. ところで愛知県で 2000 年 12 月 10 日, 3 歳の幼児がネグレクトにより餓死するという事件が

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発生したが, その後両親が殺人罪で起訴される (12 月 28 日) という展開になっている. これに 対し, 「関係者はこうした虐待が 殺人 に当たるという捜査当局の判断を重く受け止め, 今後 の対応に生かすべきであろう」 とする論調もあった ( 朝日新聞 2000 年 12 月 29 日). このよ うな論調は, ある程度世論を反映しているとは思うが, 半面で, 子育て家庭支援施策の充実を要 請する主張がもっと強く展開されなければ物事の一面のみを強調することになるであろう. 4) 暴力肯定の文化 さらに注意しなければならないことは, 幼児期から長期にわたって, 子どもたち (あるいは親 になる人々) が暴力肯定の文化, 人権軽視の文化を体験していることである. 学校での体罰あるいは人権を軽視した扱いは, 近年数多く報道されている. 報道されていない 小さな体罰などは日常茶飯事であろう. いじめや校内暴力も後を絶たない. 児童福祉施設でも残 念ながら体罰肯定の考え方を持っている職員が少なくない. 子どもが好むテレビ番組でも, 暴力肯定と思われるドラマ, 人の弱点をあげつらって笑いを取 るお笑いなどが大量に流されている. 企業のなかでも 「根性」 がいわれ, いじめも少なくない. 一例を挙げる. あるテレビ番組で, 体罰を積極的に導入している某スポーツ教室が紹介された. 少年への体罰に関する賛否が議論されていたが, 「体罰は後で振り返ると感謝されることもある」 という発言があり, さらに担当キャスターは, 「体罰がいやならそのような教室に入らなければ よい」 と語っていた. スポーツ好きな, あるいは親の圧力で心ならずも入会している少年たちに とって, 有名指導者の権力は簡単に抵抗できるものではなかろう. 「体罰がいやならそのような 教室に入らなければよい」 という論理は, 入会した以上は体罰を堪え忍ぶしかないという論理で 少年の人権を無力化するものである. このような考え方が常識論としてしばしばテレビ番組などで語られるところをみると, 私たち の社会において, 体罰肯定の文化はかなり深刻な状態にあると思う. 同じ番組が別の日には児童 虐待を取り上げ虐待防止を呼びかけているのも矛盾した姿である. スポーツにおいても育児にお いても子どもの人権は尊重されなければならない. いずれにしても, 子どもたち (あるいは親になる人々) は, 日夜, 体罰や人権侵害を肯定ある いは黙認する文化に接しながら, 自らの行動パターン (常識) を身につけていくことになる. こ のことが, 葛藤の深い場面, 欲求不満の場面, 興奮し理性が働きにくくなった場面で, 暴力を行 使する傾向を強化することを考慮しなければならない. その意味では, 児童虐待への対応は, 体罰 (暴力) や人権侵害を肯定あるいは黙認する文化に 対する批判なくしては, 十分な成果を生みがたいであろう. この問題は, 児童虐待だけでなく, ドメスティック・バイオレンス (家庭内暴力・家族間暴力) といわれる問題や暴力を伴う非行などに共通する問題である. 私たちは, 暴力肯定 (黙認) 文化・人権侵害肯定 (黙認) 文化を批判し, これらに代わる文化 (例えば, 人権尊重, 共同子育て, 共生の文化) の形成に努めなければならない.

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5) 援助のタイミング 次に以上に検討してきたことをふまえて, 援助 (あるいは介入) のタイミングないしは局面と いう論点にふれておきたい. 事例的にみるならば, 児童虐待が発生する過程には, 援助を必要とするいくつかの局面がある ことが仮定される. 今仮説的にその局面 (人格形成上の困難, 育児の困難=マイナス要因あるい は負因の存在) を整理してみる. ①子ども時代の養育体験, 学校教育での体験, 社会生活・文化生活の体験の中に負因がある. ②子育て開始前後の周辺の事情に負因 (子育てにマイナスの影響を与える困難な環境条件) が ある. ③子育てそれ自体の困難に直面する (育て方が分からない, 適切な支援が得られない). ④親子のトラブル, 子育てのトラブルが激しくなり, 子育てに対する拒否感情, 子どもへの憎 悪感情が生じる (虐待状況へ接近, 部分的虐待の発生). ⑤児童虐待が生じ, 虐待が進行する. 傷害や死亡の危険が迫ってくる. このような過程を想定した場合, どの時点 (局面) での援助 (支援) が有効であるのかは, あ る程度予想される. ①の局面への対応は望ましいが課題が包括すぎて困難である (これは地域の, あるいは一国の子育て環境を整える局面である). おそらく②③の局面 (子育て家庭支援の局面) で適切な援助ができるならその効果が大きいことが予想される. ただし, 結果としては, 不幸に して④⑤のような危機的段階に進む事例が発生し, 緊急の虐待対応が求められることになる (児 童虐待対応の局面). しかし, 援助者側にとっても援助される当事者にとっても, ②③の局面 (遅くとも③の局面) で適切な援助が行われることが望ましい. ①を長期的課題としながら, 当面, ②③の子育て家庭 支援の局面における適切な援助を構築することが児童虐待防止の展望を切り開くために必要であ る. 先に, 児童虐待への対応は, 子育て家庭支援と一体のものとして取り組む必要があると述べ たが, 子育て家庭支援の充実・強化こそ真に望まれる施策である.

2 児童虐待をどう見るか

人生の危機の一側面としての児童虐待

1) 人生の危機としての児童虐待理解 児童虐待のとらえ方について事例的視点が必要であることを1 で論じてきた. その中で虐待を する親の立場をどう理解するかということにも触れてきたが, ここではこの論点をやや深めて, 親の人生という視点から見つめ直してみたい. 人は, 長い人生で, 多くの危機に直面することが一般であり, 社会的・経済的・文化的・家族 関係的な大小様々なストレスを抱えて生きている. 子育ては, 楽しい面もあるが多くの困難もあ る. 生活の中に多くの危機を抱えている人にとっては, 子育ては必ずしも楽しみにはなり得ず, 苦痛や悩みを増やすことになりがちである. すでに人生に多くの危機を抱えている場合, 子育て

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の困難はその危機を一層増幅することになる. そして時として抱えきれない葛藤を生み, 子育て 関係の破綻に直面することになる. この破綻の一つの姿が児童虐待であると理解できる. これが 「人生の危機の一側面としての児童虐待」 である. つまり児童虐待を人生の困難の蓄積に対する 破綻反応として理解することである. もっとも, 人生の危機が自己努力だけでなく, 家族や友人 あるいはソーシャルワーカーなどの援助で一つ一つ解決に向かうことも多い. 子育ての困難に遭 遇したときも様々な形態の子育て家庭支援が有効に働いて, 困難が破局に進むことなく防止され ることも少なくない. このような理解は, 個々の児童虐待を事例的に丁寧に見ていくならば, 多 くの事例に共通の道筋として浮かび上がるものと思う. またこのような見方が虐待をする親への 理解と援助を統一する視点でもある. 2) 児童虐待を事例的に理解する個人史モデル そこで児童虐待を事例的に理解するという視点を視覚的に表現し説明してておきたい. 図 1 は, ある 「子どもを虐待する母親」 (仮の事例) を理解するための簡略化された 「想定個人史 (個人 史モデル)」 である. この個人史には多くの事例に共通する要素を盛り込んでいる. 5 つの [分 岐点] ( ) は例示であり, 実際には無数の分岐点があり得る. 各分岐点は, 「本人の選択の チャンスでありかつ援助のチャンス」 でもある. 多くの分岐点をどちらに向けて進むかが鍵にな る. 公的援助 (子育て家庭支援・相談援助活動・施設入所など) も各分岐点で望ましい方向に向 かう力になり得る. 父親が虐待をする場合なども類似の想定個人史を描くことができる. この図 からは, 子育てが困難になるプロセスだけでなく, 適切な環境や援助により子育てが望ましい方 向に向かうプロセスも読みとれるであろう (↓は時間の流れを示す). 図 1 ある母親と児童虐待 (仮の事例の 「想定個人史モデル」 試案) 母親の乳幼児期の生育環境 (人生の出発) ↓ その後の生育環境・家族関係 (様々なレベルの被虐待体験を持つこともある) ↓ 親族の影響 ↓ 地域社会の影響 ↓ 学校教育歴・学校生活歴 (教師, 友人との出会い) [分岐点]   生育歴に困難がある場合も: (癒される) (孤立する, さらに傷つく) 社会・経済・文化的環境の影響 (暴力肯定の文化か, 否定の文化か) ↓

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3 児童相談所機能の特徴と葛藤

児童相談所は, 1948 年 1 月 1 日, 児童福祉法の施行と同時に発足した. 福祉事務所・保健所 と並んで, 児童福祉の第 1 線機関であり, 2001 年 6 月現在全国に 175 か所が開設されている (2001 年 4 月に 1 か所が新設された). 現在一部府県で増設の動きがあるので近い将来さらに増 加することが期待される. 一時保護所数は,厚生省 (当時) の 「1998 年度児童相談所業務報告」 では, 111 か所である. ここでまず児童福祉法および 児童相談所運営指針 (改訂版) から, 「児童相談所の特徴・個 性」 を概観する (詳しくは, 拙著 現代児童相談所論 2000 年, を参照していただきたい). 児童福祉法第 15 条は, 次のように都道府県 (および政令指定都市) に児童相談所の設置を義 職業生活歴の影響 ↓ 家族形成歴 (結婚・出産・家族形成) [子育ての開始] 配偶者の条件・相互関係 生まれた子どもの気質・体質などの条件 (育てにくさなど) 子育て環境の影響 (協力者, 子育て家庭支援の有無) 育児文化の影響 (プラス, マイナス) [分岐点]   子育ての受け止め方: (子育ての受容, 楽しみ) [子育ては困難, 苦痛] ↓ 子育て困難への早期支援の有無 [分岐点]   子育てへのマイナス感情: (克服できる) (マイナス感情の増大) [親子間のトラブル, 軽度であるが部分的虐待の発生] ↓ 子育て支援・相談援助システムの有無 [分岐点]   虐待の深刻化か・復元か: (虐待関係からの脱出) [虐待の深刻化・傷害事件等の発生] ↓ 危機援助システムの働きやすさの有無 [分岐点]   虐待発生後の解決の道: (親子の分離・治療後の再統合等) (その他の援助方法の模索)

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務づけている. 「第 15 条 都道府県は, 児童相談所を設置しなければならない.」 「児童相談所の設置基準」 については, 「児童相談所運営指針の改訂について」 (厚生省児童家 庭局通知, 1998 年 3 月) が, 従来の 「児童相談所運営指針について」 を引き継いで, 「人口 50 万人に最低 1 か所程度が必要」 と定め, 2000 年の改定でも維持された. 日本の人口 (1999 年) を 1 億 2 千 670 万人と概算するならば, ざっと 253 か所の児童相談所が必要ということになるが, 残念ながら人口 50 万人に最低 1 か所とする設置基準は児童相談所史上一度も実現したことはな い. 児童相談所はこれまで最も多いときでも 175 か所であり, 慢性的欠乏状態にある. 「児童福祉司の配置」 については, 「児童福祉法施行令」 に次のように定められている. 「第 7 条の 3 (児童福祉司の担当区域) (中略) 児童福祉司 (中略) の担当区域は, 法による 保護を要する児童の数, 交通事情等を考慮して, 人口おおむね 10 万から 13 万までを標準として 定めるものとする.」 このように児童福祉司の配置は, 「人口おおむね 10 万から 13 万」 に 1 人は必要とされている. ところで厚生労働省は, 2000 年度, 2001 年度に 「地方交付税の積算基礎」 を見直し, 児童福祉 司の配置基準を改善する予算措置を行った (詳しくは, 本稿5, 6 参照). その影響もあり, 2000 年度, 2001 年度に多くの自治体で児童福祉司の増員が実現した. しかし業務実体からすると, 児童福祉司は人口 5 万人に 1 人程度は必要 (倍増) ということが多くの児童相談所職員の実感で あろう. また児童福祉法第 15 条の 2 は, 「児童相談所の業務」 を次のように定めている. 「第 15 条の 2 児童相談所は, 児童の福祉に関する事項について, 主として左の業務を行う ものとする. 1 児童に関する各般の問題につき, 家庭その他からの相談に応ずること. 2 児童及びその家庭につき, 必要な調査並びに医学的, 心理学的, 教育学的, 社会学的及び 精神保健上の判定を行うこと. 3 児童及びその保護者につき, 前号の調査又は判定に基づいて必要な指導を行うこと. 4 児童の一時保護を行うこと. ② 児童相談所は, 必要に応じ, 巡回して, 前項第 1 号から第 3 号までの業務を行うことができ る.」 このように, 児童相談所が受け付ける相談内容は, 特定の内容に限定されていない. 「児童の 福祉に関する事項」 であれば幅広く 「児童に関する各般の問題」 が児童相談所の相談援助活動の 対象となる. 相談の種類 (種別) は, 養護相談, 非行関係相談, 障害相談, 育成相談, その他の 相談, など多岐にわたっている. しかも児童相談所は, 相談・判定・指導・一時保護・巡回相談など幅広い機能をもっている. 加えて, 児童福祉法第 26 条, 第 27 条を中心とする 「措置機能 (措置権, 措置事務)」 を保持し ている (ちなみに児童福祉法第 27 条の措置事務の大半は児童福祉法第 32 条によって児童相談所

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長に委任されている). したがって, 次に示す児童福祉法第 27 条第 1 項 「都道府県のとるべき措 置」 の 1 号から 4 号までは, 第 15 条の 2 とともに児童相談所の業務の主要部分を代表する条文 である. 「第 27 条 都道府県は, 前条第 1 項第 1 号の規定による報告又は少年法第 18 条第 2 項の規定 による送致のあつた児童につき, 次の各号のいずれかの措置を採らなければならない. 1 児童又はその保護者に訓戒を加え, 又は誓約書を提出させること. 2 児童又はその保護者を児童福祉司, 知的障害者福祉司, 社会福祉主事, 児童委員若しくは 当該都道府県の設置する児童家庭支援センター若しくは当該都道府県が行う障害児相談支援事業 に係る職員に指導させ, 又は当該都道府県以外の者の設置する児童家庭支援センター若しくは当 該都道府県以外の障害児相談支援事業を行う者に指導を委託すること. 3 児童を里親 (保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる 児童を養育することを希望する者であつて, 都道府県知事が, 適当と認める者をいう. 以下同じ.) 若しくは保護受託者 (保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められ る児童で学校教育法に定める義務教育を終了したものを自己の家庭に預かり, 又は自己の下に通 わせて, 保護し, その性能に応じ, 独立自活に必要な指導をすることを希望する者であつて, 都 道府県知事が適当と認めるものをいう. 以下同じ.) に委託し, 又は乳児院, 児童養護施設, 知 的障害児施設, 知的障害児通園施設, 盲ろうあ児施設, 肢体不自由児施設, 重症心身障害児施設, 情緒障害児短期治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること. 4 家庭裁判所の審判に付することが適当であると認める児童は, これを家庭裁判所に送致す ること.」 ここには, 訓戒・誓約などというやや古い感じのする条文もあるが, 児童福祉司等による指導, 里親委託, 保護受託者委託, 児童福祉施設入所, 家庭裁判所送致などの重要な業務が盛り込まれ ている. このような児童相談所の中核的機能の基盤には 「措置制度」 がある. 要保護児童などの援助を 公的責任 (行政責任) で適正に行うためには, 行政は, 児童福祉施設などの援助手段 (社会資源・ 供給手段) を確保し, 子どもや保護者を, その援助手段に合理的に導くための相談・調査・判定 をおこない, 措置を決定する機能が必要になる. これが措置制度の概略であり, これらの 「措置 機能 (措置実務)」 を一体的に行うのが児童相談所である. このような機能を実践化するために 児童相談所には, 不十分ながら, 児童福祉司, 心理判定員, 相談員, 児童指導員, 保育士, 小児 科医, 精神科医など多様な専門職者が配置されている. こうして児童相談所は, いわゆるソーシャ ルワーク機能, クリニック機能, 一時保護機能, 行政的措置機能を合わせて保持するという独自 の機能を確保したのである. しかも, この相談・判定・措置機能を, いわゆる 「要保護児童への相談援助」 と 「措置決定」 に関する業務だけに形式的に限定せず, 「児童に関する各般の問題」 に広げているところが児童 相談所業務の特徴である. このことによって児童相談所は, 変貌する社会の中で, 姿を変えてい

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く児童問題に柔軟に対応できる条件を確保したのである. その意味で, 行政が有している児童福 祉の実施責任と権限を具体化するために, 児童相談所のような広い機能を持った機関が構想され たことは大変意味深いことであると思う. 筆者は, このような条件をすべて兼ね備えた相談機関 (行政機関) は, 相談機関のあるべき姿の一つのモデルを体現した貴重な社会資源であると思う. 社会福祉相談機関には, 福祉事務所, 知的障害者厚生相談所, 身体障害者厚生相談所, 保健所 などがあるが, ある対象 (児童相談所の場合主として, 児童とその保護者) に対し, 一般的な相 談から, 専門的判定, 一時保護, 施設入所等の措置までを総合的に行える機関は, 事実上児童相 談所だけであろう. しかも, 近年の行政改革・社会福祉基礎構造改革などによって, 公的相談機関の役割は縮小傾 向にある. 並行して児童相談所の機能を縮小あるいは限定したり, その機能の重要な部分を市町 村に委譲するというような動き (論調) もある (詳しくは拙著 現代児童相談所論 第 3 章参照). このような流れの中にあって, 児童相談所は, 半世紀以上にわたって蓄積してきた機能をからく も保持し続けている. このように児童相談所は, 広範な児童問題に広範な方法論によって対応しようとしてきた. こ の児童相談所の性格が, 児童相談所の体制が弱体であったり, 方法論が成熟していなかったりす るために, まだまだ十分に発揮されておらず, しばしば批判の的にもなってきた. しかし, この ような性格が, 「住民に浸透した」 ( 児童相談所運営指針 (改訂版) ) 親しみやすい相談機関と しての児童相談所の位置を形成してきたこともまた事実である. しかし, この得難い大切な性格が, 半面では児童相談所業務の多忙さを生み出したり, 特定問 題 (たとえば児童虐待や非行問題) に対する対応の不徹底さを生み出したりもしたのである. こ うなると児童相談所の機能をある部分に限定する (他の業務を切り離す) 意見が浮上しやすくな る. このような矛盾を内部に包摂しているのが児童相談所の現実であり, このような矛盾が児童 相談所職員の悩みを生み出している. 児童相談所は, 幾多の変遷をたどりながらも 「半世紀以上にわたって蓄積してきた機能をから くも保持し続けている」 が, 以上のような諸事情に取り囲まれながら, いつまでここに踏みとど まっていられるのか, 心配は尽きない. なんとか児童相談所のこれらの基本的性格を維持し, 日 本の子どもたちとその家族の力強い支援組織として, その機能・体制を拡充していくことができ ないだろうか. これが児童相談所に対する筆者の期待である.

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「児童虐待の防止等に関する法律」 の可能性と問題点

児童相談所は期待されるほど動けるか

近年, 児童相談所における児童虐待の相談処理件数が急速に増大し, 児童が死に至るような事 例も少なからず発生したことを受けて, 「児童虐待の防止等に関する法律」 (以下児童虐待防止法) が制定され 2000 年 11 月 20 日に施行された.

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児童虐待の実体と児童虐待防止への世論の熱い思いに応えて 「児童虐待防止法」 が成立したこ とはともかくも評価すべきことであろう. しかしこの法律の制定をもって, 児童相談所の児童虐 待防止活動がめざましく進展し, 児童虐待防止の効果が上がると予想できるであろうか. その点 について筆者は明るい展望をもっていない. 以下にその理由を述べる.  「児童虐待防止法」 の内容の多くは, 児童相談所などの権限の一部強化という面を除くと, 基本的には現行児童福祉法 (一部民法などを含む) の範囲を大きく出るものではない. 「児童虐 待防止法」 の内容は, 一部を除いて現行児童福祉法などの積極的活用ないしは, 現行児童福祉法 の部分改正によって対応できる範囲であると思われる. しかしまた, 「児童虐待防止法」 には, 従来の児童相談所の相談援助活動 (職員体制を含む) との整合性をどう図るのかについて検討が熟していないにもかかわらず, 形式的な権限の付与を 急ぎすぎたといわざるを得ない部分もある (特に, 第 8 条, 第 9 条). 将来, 子どもの権利条約 などをふまえ, 法制度の充実に向けてもっと本格的な議論が必要である. ちなみに, 児童虐待防止法第 8 条では, 児童相談所が児童虐待を受けた児童について通告や福 祉事務所長からの送致を受けたときは, 児童相談所長は, 速やかに, 当該児童の安全の確認を行 うよう努めるとともに, 必要に応じ一時保護を行う, ことが規定されている. ただし, この条文は, 行政権限の強い発動を含んでおり, 「速やかに」 の規定は, 慎重な運用 が求められる. 第 9 条では, 都道府県知事は, 児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは, 児童委 員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員 (身分を証明する証票を携帯) をして, 児童の住 所又は居所に立ち入り, 必要な調査又は質問をさせることができる, ことを定めている. この条文も行政権限の強い発動を含んでいる. しかも 「おそれがあると認めるとき」 の解釈は 曖昧なものであり, 現場に実践上の悩みを生み出すであろう.  「児童虐待防止法」 は, 第 4 条 (国及び地方公共団体の責務等) 第 2 項において 「国及び地 方公共団体は, 児童虐待を受けた児童に対し専門的知識に基づく適切な保護を行うことができる よう, 児童相談所等関係機関の職員の人材の確保及び資質の向上を図るため, 研修等必要な措置 を講ずるものとする」 と定め, 附則第 3 条 (児童福祉法の一部改正) において, 「(児童福祉法) 第 45 条第 1 項に後段として次のように加える」 として, 「この場合において, その最低基準は, 児童の身体的, 精神的及び社会的な発達のために必要な生活水準を確保するものでなければなら ない」 という一文を追加した. しかしこれらは, 児童相談所の抜本的整備 (児童相談所の設置個 所の増加や関係職員の大幅な増員など) や児童福祉施設の抜本的整備 (児童福祉施設最低基準の 大幅な引き上げ) について, 具体的達成内容を明示したものではない. その意味で, 「児童虐待 防止法」 は, 盛り込まれた諸権限に対しそれらを実行する裏付けに乏しい法律であるといえる.  「児童虐待防止法」 の施行により, 児童虐待に関する広報・啓発活動が進み, 児童虐待の発 見や通告が増加することが予想される. そのことにより, 子どもの人権擁護に寄与するといえる. また児童相談所長や児童福祉司などの権限は部分的に強化される (同時に責任も強化される).

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しかし, 多数の通告を受けても, 相談援助の体制あるいは法的権限を行使する体制が十分確保 されていないため, 結果として児童相談所は, 過剰な業務に丁寧に対応できないことが予想され る. 適切な対応ができない場合, この 「法律」 を根拠にした責任追及の声が大きくなることが懸 念される. 精神保健の専門家や弁護士の導入を含む相談援助・指導体制の強化が課題となる. ま た, 子どもおよび保護者に対する有効な援助プログラムの開発も緊急の課題である. また, 「児童虐待防止法」 による対応と親の人権 (立場) が対立する場合の解決策をどのよう に考えるのか. 「児童虐待防止法」 には, 具体的な調停方針や調停機関が考えられていない. ソー シャルワーカーの重要な任務として 「人権擁護を推進する援助者」 の役割が位置づくとするなら ば, その役割は子どもにも保護者にも向けられる. 両者の人権をどう調整するのか. 今後実践過 程で複雑な問題を引き起こすことも予想される.  「児童虐待防止法」 から, 児童虐待 (をする保護者) を早期発見し, 強制力を含む対応が進 むことは予想される (その意味で児童虐待を抑止する効果は予想できる). しかし, この 「児童 虐待防止法」 を読んで, 育児に自信と楽しみを回復する親がいるであろうか. 残念ながら, 子育 てに不安と困難を持つ母親などを, 暖かく理解し励まし援助する姿勢は 「児童虐待防止法」 から は読みとれない. 虐待してしまいそうな親に寄り添い, 苦しみを共感し, 丁寧に援助する姿勢を もったソーシャルワーク的取り組みを充実する姿勢が読みとれないのである. 近い将来このよう なソーシャルワークの視点を十分考慮した法整備が望まれる. その意味からも筆者は, 児童虐待 防止法の見直しにおいて, 強制的介入権限の強化を過度に追求する意見には, 危惧を持っている (この点については, 注 5. のような見解もていねいに検討すべきであろう).  筆者は, 将来の課題として, 児童虐待にも有効に対応し得るように 「現行児童福祉法の抜 本的改正」 をすることが必要であると考えている. もっとも, 現実的には, 児童福祉法の抜本的改正は長期的課題となるであろうから, 筆者は, 「児童虐待防止法」 の 「施行後 3 年を目途」 とする見直しにおいては, 「児童虐待防止及び子育て 支援法」 というような趣旨の法律を構想することも一つの解決法であると考えてきた. しかし, その後の検討により, 「児童虐待防止法施行 3 年後を目途」 とする見直しは, 「児童虐待防止法の 見直し」 と 「児童福祉法等関係法の見直し」 の両方を追求することがより適切であろうと思うよ うになった. その理由は, ①子どもの権利条約などを踏まえた児童福祉法の改正は, 長期的基本 課題として引き続き追求する必要があること, ②児童虐待対応を広く考えると 「児童虐待防止法」 の見直しで解決できることは限られており, 児童福祉法など関係法の改正を検討せざるを得ない こと, である. このような見直しの課題の整理については本稿10 で部分的に触れる. なお 「児童虐待防止法」 の施行に伴い, 2000 年 11 月に 児童相談所運営指針 (改訂版) と 子ども虐待対応の手引き が一部改訂されている (文献欄参照. 改定内容を詳しく知るために は, 「全国児童福祉主管課長・児童相談所長合同会議 (資料)」 2000 年 11 月 15 日, を参照され たい). また, 柏女霊峰他編 「子ども虐待へのとりくみ」 (2001 年) には, 「児童虐待防止法」 関 連の資料が多数収録されている.

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5 なぜ児童相談所は十分機能できないのか

これからどうしたらよいのか

一部は, すでにふれてきたことの再確認になるが, ここで, 「なぜ児童相談所は十分機能でき ないのか, 児童相談所はどうあったらよいのか」 について私見をまとめる.  児童相談所の偏在と全般的欠乏状態 児童相談所が十分機能できない事情の一つに児童相談所の全般的不足状態がある. 児童相談所 は, 1989 年 (5 月) に全国に 170 か所が設置されており, 2001 年 4 月は, 175 か所が設置されて いる (2001 年 4 月に香川県で 1 か所が新設された). 12 年間に 5 か所しか増設されていない. 全 国 175 か所の児童相談所で, 地域に浸透した相談援助活動を求めることは不可能である. ちなみ に 1998 年度 「児童相談所業務報告」 をみると, 秋田県, 徳島県, 香川県, 佐賀県では, 児童相 談所は県に 1 か所しか開設されていない (ただし, 上述のように香川県では, 2001 年 4 月に 1 か所増設した). 政令指定都市では児童相談所が 1 か所のみの市が多いが, 名古屋市, 大阪市な どの大都市に 1 か所というのは, あまりに少なすぎるといえよう. 厚生労働省が定める 「人口 50 万人に最低 1 か所が必要」 という基準を年次計画的に全国で早急に実現することが求められる. なお一時保護所も, 111 か所 (1998 年度) であり, 十分な活動ができない府県も多い.  児童相談所職員の慢性的不足状態 厚生省児童家庭局企画課 児童虐待対策に関する資料集 (2000 年 3 月) の 「児童相談所職種 別職員数」 (各年 5 月 1 日現在) によれば, 1989 年度の 「職員総数」 は, 4,892 人 (内, 兼任・ 嘱託職員 1,388 人), 1999 年度の職員総数は, 5,574 人 (内, 兼任・嘱託職員 2,246 人) である. 兼任・嘱託職員を除いたいわゆる 「専任職員数」 を比較すると, 3,504 人から 3,328 人に減少し ている. 約 10 年間に専任職員数は, 176 人減少している. 同じ約 10 年の間で, 児童福祉司 (かっこ内は, 兼任・嘱託職員. 以下同じ) は, 1,062 人 (51 人) から 1,223 人 (121 人) に増加したに過ぎず, 専任職員については, 1,011 人から 1,102 人と わずか 98 人増えているにすぎない. さて, 上記の約 10 年間の心理判定員の推移は, 729 人 (224 人) から 816 人 (322 人) であり, 専任職員は, 505 人から 494 人へと, 11 人減少している. 医師については, 486 人 (474 人) から 497 人 (482 人) であり, 専任職員は, 12 人から 15 人 と, わずか 3 人増えているにすぎない. もっとも医師については, 多少の増減よりは, 高度の専 門性が必要であるとされる児童相談所に 1999 年 5 月現在では, (全国で) わずか 15 人の医師し か専任配置されていないことに注目しておきたい. ところで先にふれたように 2000 年度, 2001 年度に, 児童虐待対応のために児童福祉司の増員 が進められた. また 2001 年度予算では, 児童相談所一時保護所に心理職員 (一時保護児童の行動観察及び心 のケアを行う) を配置するとしている. この心理職員については, 各県に 1 人ずつ配置する予定

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と報道されている ( 朝日新聞 2000 年 12 月 21 日). いずれにしても本格的対応としては, 今 後, 児童相談所の心理判定員や医師の専任化率の向上と大幅な増員が実現することを期待したい. 以上にみてきたように, 大方の期待に反して, これまで (少なくとも 1999 年度まで) の児童 相談所の職員体制は, まさに弱体の一語につきる. 児童虐待の相談処理件数の増加のみをみても, 児童相談所職員の伸び率の低さは歴然としている. 施設入所後の事後対応などを充実することも 考えるならば, 現在の陣容ではとても満足な仕事ができないというのが児童相談所職員の実感で あろう. 児童相談所職員を今日の児童虐待問題およびそのほかの多様で複雑な相談に対応して抜 本的に増員する必要がある. 児童相談所増設には時間がかかるとしても, 職員の増員はすぐに着 手すべき課題である. もっとも児童相談所の職員体制はここ 2, 3 年かなり強化され始めている. この点については本稿6 でも触れる.  専門性を維持できない人事政策 多くの自治体では, 児童相談所長を含む児童相談所職員の専門職配置をしていない. しかも, 児童福祉司を 3 年程度で異動させる自治体も少なくない. 実力のあるソーシャルワーカーを養成 するということは, 10 年はかかる仕事である. 児童相談所勤務を希望する児童福祉司には, 10 年程度は働き続けることを保障し, その中からスーパーバイザーを確保し, 実務に即した職員研 修を充実することが必要である.  児童相談援助活動の特質からくる苦悩 児童相談所の役割に関する市民的合意 子育てをする市民を支援しつつ, その半面では, 不適切な子育てには法的介入をする機関とし ての児童相談所に市民の理解は得られているかということも現場の悩みである. どうしたらこの 理解を得ることができるか. この課題は児童相談所の努力だけでは限界がある. 福祉・保健・医 療・民間団体・市民の相互理解と協力が欠かせない.  司法機関 (司法判断) との効果的連携 今回の 「児童虐待防止法」 は, 司法判断については何ら新しい展開を持たない法律であった. 緊急・急迫した現場では, 事実上児童相談所だけで, 家庭に立ち入るなど, 人権上複雑・高度な 判断をしなければならない. 今後, 児童相談所と司法判断の関係を整理し, 効果的な連携ができ るようシステムを整える必要がある. なお法務大臣の諮問機関である人権擁護推進審議会の動き についても注意する必要がある (注 4. 参照).  児童福祉施設の整備充実 児童虐待への対応は, 児童相談所だけでできることではない. 子どもを保護した後の対応とし て, 児童福祉施設の役割が大きい. ところが, 中心的役割を担う児童養護施設は, 都市部では満 員状態である. また児童福祉施設最低基準によれば, 児童養護施設の職員の配置は, 少年の場合, 子ども 6 人に対して直接処遇職員は 1 名以上である. 全国児童養護問題研究会は, 1997 年の児 童福祉法改正において現場の研究団体として 2 対 1 の配置を要求した. また児童養護施設の居室 は, 1 室に 15 名以下という定員になっている. これではとても個別援助などできる条件ではな い (もっとも厚生労働省は, 2000 年度から個室化を推進するという方針を明らかにしている).

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児童相談所で子どもを保護してもその後の生活の場がこのような状態では, 児童相談所としても 保護にためらいが生じることは自然ななりゆきであろう. 児童福祉施設の整備充実も緊急の課題 であることを指摘しておきたい. もっとも児童相談所の一時保護所の設備及び運営は, 児童養護 施設の最低基準が準用されている (児童福祉法施行規則第 35 条). 一時保護所の整備充実も緊急 の課題である.

6 2001 年度国家予算と児童虐待対応関連施策 (補足・2002 年度概算要求)

1) 児童虐待防止対策の概要 2001 年度国家予算 (2001 年 3 月 26 日成立) の 「児童虐待防止対策の推進」 の 「 虐待の早 期発見, 早期対応に向けた施策の充実」 では, 児童虐待防止市町村ネットワークの拡大, 1 歳 6 か月児及び 3 歳児健康診査時の相談体制の充実 (乳幼児健診の際に, 新たに心理相談員と保育士 を配置), 児童家庭支援センターの拡大 (40 か所から 50 か所へ), 児童相談所一時保護所への心 理職員 (一時保護児童の行動観察及び心のケアを行う) の配置 (この心理職員については, 各県 に 1 人ずつ配置する予定と報道されている 朝日新聞 2000 年 12 月 21 日), 児童相談所に おける保護者へのカウンセリングの充実 (精神科医の助言・指導を得て, 効果的なカウンセリン グを実施する), さらに 「虐待・思春期問題情報研修センター」 (仮称) の設置 (横浜市に開設す る. 専門家への情報提供や研修に加え, 虐待してしまう親へのケアなども臨床研究する. 2001 年度は一部事業の実施, 2002 年度以降は本格実施) も予定されている. 「 児童の保護と保護者等への指導体制の充実」 では, 児童養護施設 (定員 50 人以上) への 被虐待児個別対応職員の配置, 心理療法担当職員の配置施設 (心理療法を必要とする被虐待児等 が一定以上在籍している施設) の拡大 (児童養護施設から, 乳児院, 母子生活支援施設へ), 地 域小規模児童養護施設の拡大 (10 か所から 20 か所へ), などの新規施策 (あるいは従来の施策 の規模の拡大) が盛り込まれている ( 朝日新聞 2000 年 12 月 21 日, 全養協協議員情報 2000 年 12 月 21 日, 「全国厚生労働関係部局長会議 (厚生分科会) 資料」 2001 年 1 月 19 日, 福祉新 聞 2001 年 1 月 29 日, 等参照). これらの施策が, 相互に有機的に結びつけられること, 新規事業にありがちな非常勤・嘱託職 員対応だけでなく, 専任職員を確保する方向で実施されること, 児童相談所等の個別の 「事業」 数をいたずらに増やすのではなく児童相談所や保健所の基本スタッフとしての専任職員の増員あ るいは児童福祉施設の職員配置の最低基準そのものの改善をすることなどが望まれる. 以上の児童虐待防止施策について, 2001 年 3 月 13 日の 「全国児童福祉主管課長会議資料」 か らいくつかの点を補足する. 児童福祉施設等の心理療法担当職員については, 「大学で心理学を 修め心理療法の技術を有する者を, 児童養護施設など (児童養護施設 298 か所, 乳児院 40 か所, 母子生活支援施設 86 か所) に週 5 日間程度勤務する非常勤職員として配置し, 児童及びその保 護者の心のケアを行うこととした」 とある. また, 情緒障害児短期治療施設の整備については,

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「平成 13 年度においては, 全国で 20 か所 (建設中を含む.) となる予定であるが, 全県に少なく とも 1 か所は整備する必要がある.」 とある. また児童相談所における保護者へのカウンセリン グの充実については, 「カウンセリング強化事業 (仮称)」 として整理され, 「本事業は, 児童虐 待問題に関して知見を有する精神科医等と嘱託等の契約関係を締結し実施するものである」 とし, 実施か所は, 114 か所 (中央児童相談所及び児童虐待相談件数が多い児童相談所を予定) とされ ている. なお同 「資料」 には児童福祉司の地方交付税措置も掲げられているので後にふれる. ところで, 2001 年 1 月 19 日の 「全国厚生労働関係部局長会議 (厚生分科会) 資料」 の 「オ 児童虐待への適切な対応の徹底について」 では, 「近年, 保護者からの虐待による児童の死亡等 の事件が相次いで発生しており, その際の児童相談所等関係機関における対応が必ずしも適切と は言えないケースも見られる. このため, 貴管下の児童相談所等における対応体制について, 下 記に基づき再点検を行い再発防止に努めていただきたい」 として次のような指摘をしている. ( ) 内は説明の抜粋.  迅速な対応 (児童相談所の職員は日常業務に追われ多忙を常としていると思われるが, 虐 待の発見や通告がなされたときは他の業務に先んじて対応を行うことを原則としなければな らない.)  子どもの安全確保の優先 (保護者との関係に配慮が行き過ぎることによって介入や保護の 判断が鈍り, 結果として子どもが犠牲になってしまうことがあってはならない.)  組織的な対応 (発見や通告があれば, 即刻受理会議を開いて調査やアプローチの方法, あ るいは一定の評価を機関として行わなければならない.)  機関連携による援助 (問題に対する対応機能をもった機関との連携が援助にあたっての必 須の条件になる. 機関の合同会議に当たっては事前に機関内で十分詰めをすることや, 必要 に応じ機関としての決定権をもつ人の参加が重要になる.)  家族の構造的問題としての把握 (児童虐待が生じる家族は, 保護者の性格, 経済, 就労, 夫婦関係, 住居, 近隣関係, 医療的課題, 子どもの特性等々, 実に多様な問題が複合, 連鎖 的に作用し, 構造的背景を伴っているという理解が大切である. したがって, 単なる一時的 な助言や注意, あるいは経過観察だけでは改善が望みにくいということを常に意識しておか なければならない. 放置すれば循環的に事態が悪化・膠着化するのが通常であり, 積極的介 入型の援助を展開していくことが重要との認識が必要である. また, 家族全体としての問題 やメカニズムの把握の視点と, トータルな家族に対する援助が必要不可欠である.) カ  専門性の向上, 体制の整備 (厚生労働省としても, 平成 13 年度予算案において, 児童相 談所, 児童福祉施設等の体制整備に必要な予算を確保したところであり, また, 地方財政当 局へ児童福祉司の増員等を要望しているところであるので, 人材の確保, 資質の向上等一層 の努力をお願いする.) 以上を個別に見るともっともな指摘であるが, 迅速に, 保護者との関係に配慮が行き過ぎない ように留意し, 安全確保をするという の指摘と, 家族の構造的問題としての把握が必要で

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あるというの指摘あるいは児童相談所の相談援助活動において従来重視されてきたソーシャル ワークの考え方の間には矛盾がないとはいえない. これらの指摘が実務に葛藤をもたらす可能性 が高いことは十分留意されるべきであろう. この点について, 厚生労働省は, 2001 年 3 月 13 日の全国児童福祉主管課長会議においても上 記の内容 (ア∼オを 1∼5 として) をあらためて 「児童虐待への適切な対応の徹底について」 と いう標題の文書にまとめ配布している. なお児童虐待と児童相談所の関係について, 筆者は拙著 現代児童相談所論 で検討した. ま た岡田隆介編 児童虐待と児童相談所 (2001 年) では, この問題が多面的に考察されている. 2) 児童福祉司の増員などをめぐって 近年, 児童相談所の充実の一環として児童相談所の児童福祉司の増員についても動きが出てき た. まず, 「全国児童福祉主管課長会議 (資料)」 (2000 年 3 月 9 日) の 「児童相談体制の充実に ついて」 によれば, 「近年, 急増している児童虐待相談に対し適切に対応できるよう相談体制の 整備についてもお願いする」 として 「標準団体当たりの児童福祉司の人数が 16 人から 17 人に見 直される予定である」 としている. これは人口 10 万人当たりに 1 人を基準とするということで ある. 具体的には, 1999 年 5 月の配置現員 1,223 人に対し, 2000 年度の配置基準 (交付税積算 基礎) を 1,258 人とし, 35 人の増員を図るとするものであった (1 県当たり 1 人にも満たない). 続いて 2001 年になって児童福祉司のやや規模の大きな増員が計画された. 「全国児童福祉主管 課長会議資料」 (2001 年 3 月 13 日) の 「児童相談所の充実について」 では, 「平成 13 年度の地 方交付税法改正法案においては, 児童虐待への対応の中心となる児童福祉司に関して, 地方交付 税の積算基礎人員が増員される (後略)」 として, 標準団体 (人口 170 万人) 当たり, 17 人を 19 人に増員する措置をとったとした. このように, 児童虐待対応をめぐって児童相談所も体制強化 の方向にある. 「平成 13 年度全国児童相談所長会議資料」 (2001 年 6 月 21, 22 日) によれば, 児童福祉司配 置数 (各年とも 5 月現在) は, 1997 年 1,128 人, 1998 年 1,141 人, 1999 年 1,230 人, 2000 年 1,313 人, 2001 年 1,480 人である. 2001 年は前年より, 167 人の増員がなされたことになる. た だし増員の多い順に見ると, 青森県 (23 人), 大阪府 (19 人), 宮城県 (13 人), 北海道・埼玉 県・神奈川県・福岡県 (各 8 人) である. 以上で 87 人を占めているので, 人口を考慮しても自 治体間格差が大きいと言える. また 2001 年 4 月には, 「香川県西部子ども相談センター」 が開設 されている. 久々の児童相談所増設であり, 児童相談所は 175 か所になった. もちろん全国的に は 「人口 50 万人に最低 1 か所程度」 の設置基準に遠く及ばない. なお, 児童相談所・児童福祉施設のあり方については, これまでも関係各団体から改善の要望 が出されてきた. 「全国児童相談所長会総会」 名でまとめられた 「児童虐待防止対策の充実に向 けての要請」 (2001 年 6 月 22 日) は, 最近の事例である. この要請は, 国に向けて, 「1 児童 相談所の体制整備, 2 児童福祉施設の体制整備, 3 虐待を受けた子どもや親への支援強化, 4

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虐待防止ネットワークの整備」 などを要望している. 1 では, 現行の 「児童福祉司の配置基準 人口 10∼13 万人に 1 人を人口 5 万人に 1 人に改善すること」 など, 2 では, 児童福祉施設の居 室について 「個室や 2 人室の拡充整備を図ること」, 職員配置について 「6:1 を 2:1 に充実す ること」 などを盛り込んでいる. また心理職員については, 「全施設への常勤の心理職員の配置」 を図ることを要望している. いずれも児童相談所・児童養護施設の現状からすると (必ずしも児 童虐待対応のためだけではなく) 当然の要望であり, 早急な実現が求められる. 3) 自治体の児童相談所等拡充の動き 以上に児童相談所の全国的現状等についてふれてきたが, 特に 2000 年度以後, 自治体によっ ては, 児童相談所などを拡充する動きが見えてきた. 児童福祉司を数名単位で増員する自治体, 児童相談所の支所・分室を開設する自治体もある. 児童虐待に対応するチームを結成する動きも ある. ちなみに愛知県では, 2001 年 11 月に一部開所する 「あいち小児保健医療総合センター」 に, 児童精神科医, 小児科医, 臨床心理士による合同チームを設け, 虐待を受けた子どもなどの 治療に当たる計画であることが報道されている. また, 2001 年度には医師や警察官などと連携 して 「危機児童・サポートチーム」 を編成することとあわせて専門家による検討委員会を立ち上 げ児童相談所の活動を支援する予定であることも報道されている. なお児童相談所については, 前述したように 2001 年 4 月に香川県において 1 か所の増設があ り, その他にも一部自治体で増設の機運がある. それにしても児童相談所の増設はあまりに遅い. 今後の動きが注目される. 4) 2002 年度厚生労働省関係予算概算要求 2001 年 8 月 28 日に2002 年度厚生労働省関係予算概算要求が明らかになった ( 福祉新聞 2001 年 9 月 10 日, 月刊・保育情報 2001 年 9 月参照). 雇用均等・児童家庭局分の児童福祉関 係の主な要求には, 仕事と家庭の両立支援対策の推進, 新エンゼルプランの着実な推進, 保育サー ビスの充実, 児童虐待防止対策の充実, 子育て家庭への支援などがある. その他, 配偶者からの 暴力 (ドメスティック・バイオレンス) への対策の充実などが注目される. 児童虐待防止対策の充実には, ○つどいの広場事業の創設 (育児に不安や悩みを抱える親など が気楽に集い交流できる場の提供とボランティアによる相談), ○家庭訪問等身近な地域での支 援事業の実施 (子ども家庭支援員制度の創設. 児童家庭支援センターの設置要件を緩和し, 市町 村事業としてモデル的に実施), ○児童委員の虐待防止活動への取り組みの促進 (研修会の開催), ○一定規模以上の一時保護所 (児童相談所) への主任児童指導員の配置, 児童虐待関連機関の連 携対応のためのマニュアルの作成, ○専門里親 (仮称) 制度の創設 (一定期間 2 年以内 子どもの養育を委託し, 早期の家庭復帰を目指す), 里親に対する養育相談や一時的な休息のた めの援助 (レスパイト・ケア) を行う里親支援事業の実施, ○被虐待児への個別対応職員の配置 の拡充 (親等へ育児指導・相談を専門的に行う職員を乳児院に配置), などが盛り込まれている

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(詳細は, 月刊・保育情報 2001 年 10 月および上記 福祉新聞 参照). 以上に紹介した事業 内容は要旨である. また事業の検討や評価は, 以上の内容が概算要求の段階のものであり, 事業 の詳細が明らかにされていないので別の機会に譲る.

7 児童虐待は予防できるか

これまでに行ってきた現状分析を踏まえていくつかの論点に触れてみたい. まず7 では 「児童 虐待の予防」 について考えてみる. 「児童虐待の予防」 は魅力的なテーマであるが, 決してたやすいことではない. 児童虐待は, 多くの場合, 子育ての短期的あるいは長期的な失敗であり, それ自体本質的には特別なことでは ない. 虐待する親も多くは特別な問題を持った人ではなく, 要するに普通の親たちである. 普通 の親が様々な悪条件が複合する状況で虐待に走ることになる. このような問題を極力予防することは当然必要なことであるが, 根本的に予防することは至難 なことである. 現代は戦後の国民生活の破壊・疲弊の時期に比べるならば, むしろ子育ての条件 が格段に向上している. 子どもの数も減少し, 子育ては手厚くなっている. このような中でも, 様々な社会的・文化的・経済的・家族関係的諸条件 (複雑な条件の組み合わせ したがって諸 条件の組み合わせをあらかじめ的確に判断することが難しい) の中で, 子育ての悩みは生まれ, 児童虐待は発生する. しかも児童虐待は, 時間的・空間的に予想できる状況下で起きるとは限ら ない. 親子関係・家族関係の葛藤がある限界を超したときに突発的に, 密室的条件下で起きるこ ともある. その意味からも 「相談機関が通告を受けながら虐待を見過ごした」 というよくある批 判はしばしば結果論による責任追及であり, 問題の全体像からすると正確でない場合が多い. しかし児童虐待の予防・防止は難しいと言って座視することはできない. あえて必要な対策を 示すならば次のようになる. ①子育てについて困難を感じる養育者が, 「非難された」 と思うことなく安心して悩みをうち 明けられる子育て家庭支援を担う相談者・相談機関が身近に存在すること. ②子育ての困難を分かち合える仲間との出会いの場が地域に存在すること. このような場は, 親と子が中心メンバーであるが, 親同士が緊張関係を生み出したときに緊張をほぐす役割を担う 専門家が必要である. ③乳幼児健診などが, 育児競争的雰囲気を持たないよう, また他者の面前で育児の問題点を指 摘されたと思わせるような場にならないよう, 場所の設定, 相談姿勢のあり方を改善すること. ④保育所・児童厚生施設など, 子どもの福祉だけでなく子育てをする親を支援するためにも有 益な社会資源を充実させること. また, 親がゆとりを持って子育てにあたることができるための 労働条件の改善も必要である. ⑤児童相談所, 児童福祉施設などを抜本的に拡充し, 地域に根ざした相談・保護・援助体制を 確立すること. また家庭裁判所の体制の充実も欠かせない課題である.

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⑥児童虐待防止法により行政権限による介入が強化されたが, この法律は親を援助するよりは, 非難し罰する法律と受け取られがちであり, 改善が必要である. また虐待は犯罪であるとして過 剰報道する一部マスコミの姿勢なども (自主規制的視点から) 是正される必要がある. さらに母 親のみに過剰に負担がかかる育児条件の是正という課題もある. しかし上記のような児童虐待を予防する条件がある程度整っていても, 時として不幸な条件が 重なって重い虐待事件や最悪の場合虐待死事件が発生する. そのような場合のことをどう考える かが8 の課題である.

8 児童虐待死事件と児童相談所

マニュアルかソーシャルワークか

1) 原因論と責任論の検討 児童虐待を予防する条件がある程度整っていても, 時として不幸な条件が重なって, 児童相談 所が関与していても重い虐待事件や最悪の場合虐待死事件が発生する. あるいはまた, 児童相談 所が採った指導や措置に関して後日保護者との争いが起き, 行政不服審査請求や訴訟が提起され ることもある. 従来児童相談所ではこのような場合にどう対応してきたのか, 公開されたデータ やルールが乏しいので明示的でない. しかし最近の状況はこの種の問題にも十分な考察と対応が 必要であることを示している. ここでは虐待死に焦点を絞って論じてみたい. 虐待死と児童相談所の関係をどう考えたらよいのであろうか. 率直に言って, 筆者はまだこの 問題について整理された見解を持っていない. とはいってもこの問題を避けては通れない現状が ある (ここ 2, 3 年のマスコミ報道をふり返ってみていただきたい). 最近 (2001 年 7 月) にも, A 市で母親と同居の男性の両者による幼児虐待死事件が発生した. 報道によれば, 関係者から児童相談所への通報があったが児童相談所は直接本人 (幼児) には会 わず, 関係者・関係機関と連絡を取り合い, また家族 (祖母) の話を聞いて状況判断をしていた とされている. 結果として幼児は死亡した. その後, ある新聞は 「死なせてからでは遅い」 とい う記事を掲げ, 「虐待を防ぐ任務を負った公的機関が関わりながら, 子どもを死なせてしまうケー スが相次いでいる」 と指摘し, A 市の事件に関しては, 厚生労働省が 「児童相談所の判断の甘 さや学校との連携の不十分さを指摘, 改善と虐待防止に向けた努力を要請した」 とも報じている ( 朝日新聞 2001 年 7 月 29 日). さらにこの事件では, A 市市長自ら 「洞察力のなさに腹立た しさを覚える. 会議も必要だが, 最も必要なのは職員の自覚と愛情だ」 と発言し, 人員配置など 体制が不備なのでは, という質問には 「そうは思わない. 言い訳をしていては解決できない」 と 答えたと報道されている ( 朝日新聞 2001 年 8 月 6 日). その後 (2001 年 8 月), B 県では, 虐待があるとの判断で児童養護施設に入所していた小学校 1 年の男子が, 両親 (実母・義父) の元に外泊している間に運河で遺体となって発見されるとい う事件が発生した. この場合児童養護施設が 「両親の求めに応じ施設が独自に判断できる期間を 超えた 10 日間の一時帰宅を決めてしまった」 (筆者は, この 「10 日間」 が正確には何を意味す

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るのかをまだ確認していない) こと, さらに児童相談所も本児の 「安否・所在確認すらしないま ま外泊許可を追認した」 と報道されている ( 朝日新聞 2001 年 8 月 16 日). このような問題をどう考えたらよいのであろうか. 敢えて多少の考察をしてみたい. ただし, 以下に述べることは, あくまでも討論の素材としての問題提起であり, 仮説的・暫定的な私見に 過ぎない. 上記のような事件の場合, 「公的機関の対応が甘い」 といっても誰がどのような基準で甘いと 判断したのかを突き詰めるとそこにあいまいさ (あるいは恣意性) が残る. しかし現状では, 結 果として事件が起きると 「児童相談所の判断が甘い」 という批判攻勢が始まる. 敢えて言えば 「結果が悪ければ, とりくみそのものが悪かった」 というような空気が醸し出される. それでよ いのであろうか. ところでこの種の事件に接すると, われわれは例えば 「医療事故 (過誤)」 事件を想起する. しかし多くは家庭内 (しばしば密室状態) の家族関係の中で起きる上記のような 「虐待死」 事件 は, 通常, 病院や医療機関の内部で, 医療者と患者が直接接する状況下で, 何らかの医療的関与 によって起きる 「医療事故」 とは様相を異にする. ちなみに山内桂子・山内隆久 医療事故 (2000 年) では 「医療事故」 と 「医療過誤」 を含めて, その原因を 「A 不可抗力によるもの」 「B 過失によるもの」 「C 故意によるもの」 に分けている. では児童相談所が何らかの形で関与している状況下で起きる親・保護者による 「虐待死」 (容 疑) 事件の場合はどうであろうか. 子どもに対して責任を問われている当事者は 2 通りある. 大 まかに言えば対応・援助に当たった 「児童福祉関係者」 と 「親・保護者」 である. ただし, 虐待 死の容疑の場合, 「親・保護者」 の責任問題は事件となり, 警察の捜査や裁判 (司法判断) に関 わる問題になるのでここでは論じない. 「児童福祉関係者」 については, どのような責任が問われるのであろうか. 原因の面では, 「C 故意によるもの」 は論理的にあり得ない (そもそも児童福祉関係者は現場に居合わせてい ない). そこで, 単純化したとらえ方であろうが仮に次の 5 つの場合 (原因) を掲げる. 「1 不可抗力によるもの」 「2 対応・援助資源の不備, 人材の不足によるもの」 「3 対応・ 援助手順 (マニュアル) の不備によるもの」 「4 対応・援助手順の (履行する組織的・人的条件 がありながら) 不履行によるもの」 「5 その他によるもの」 立場によっては, さらに異なる視点からの原因が挙げられるかも知れない. 「判断が甘い」 「洞 察力がない」 「自覚と愛情が不十分だ」 などの批判もなされるが, これらの言葉は科学的な概念 規定が難しい言葉 (精神論) であり, 不毛の議論になりやすいと思う. そこで暫定的に, 「判断 が甘い」 等の批判 (この指摘もそれなりに原因に言及したものと言えよう) は 「5 その他によ るもの」 に該当するとしておく. 2) マニュアルの不備と 「適正対応の基準」 上記の 「3 対応・援助手順 (マニュアル) の不備によるもの」 は, 「マニュアルの不備」 ある

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