昭和63年度山梨県肺癌検診状況
飯富病院 外科 長田忠孝 高畑内科小児科医院 高畑賢司 志村内科医院 志村政文 山梨県立中央病院 外科 千葉成宏 山梨医科大学 第一病理 須田耕一 石和保健所 清水卓造 《要約》平成元年3月に山梨県の各市町村から山梨県成人病検診管理 指導協議会肺癌部会に報告された昭和63年度の肺癌検診の実施状況に検討を加えた。実施市町村数は59で61年の20、62年の53
より著しく増加した。レ線検診受診者数は99,231人、前年比で
25,819人増加、喀疾検診受診者数では3,890人、前年より
356人の増加した。発見肺癌数はレ線検診で32人、10万:33、
喀疾検診で2人、10万:53と、62年度と変化はなかったが、精
密検診受診率はレ線検診で20%.喀疾検診で12%低下した。厚生 省のマニュアルにそった検診を実施し、受診率の低い喀疾検診の意味、 目的の衆知徹底が必要と思われた。 〈はじめに〉 老健法下での肺癌検診も今年で3年日を迎え、県下59の市町村が実施 するにいたった。将来この検診がいかなるスタイルになるのか、このあた りが分岐点と考え、今回は平成元年3月に各市町村から山梨県成人病検診 管理指導協議会肺癌部会(以下肺癌部会)に報告された、昭和63年度の 肺検診実施状況の資料に若干の検討を加え、昭和62年度と比較し実施3 年目の問題点を指摘したい。 〈対象と方法〉 老健法では肺癌検診の実施主体を市町村とし、各年度末に検診結果を肺 癌部会に報告する事になっている1eそこで肺癌部会の資料をレ線検診、 喀疾検診、発見肺癌に分け検討する。 一レ線検診一 表一1 甲府、日下部保健所管内の成績を示す。検診対象者とは40才 以上の男女で、事業所での検診者や医療機関受診者以外の全員だが、都市 部ではこの数がはっきりしないことが多く2、また市町村で捉え方が若干 異なっているといわれている。検診実施数はほぼ62年度と同じ成績の所が多かったが、甲府市では実施率17%、7,615人の検診を行ったが、
低い実施率は都市部での検診の難しさを示していると思われる。別の検診システム等3考えていかなければならないかもしれない。要精検率は甲府 で9.4%と高っかたが、精検受診率は85%と高率だった。敷島町では 結核検診で精検者を出したため、精検率がO%となっている。 表一2 石和、身延管内では高い検診実施率の町村が多く、県内でも検 診が最もうまく実施されている地域といえる。増穂町、南部町では検診形 態を結核検診を利用した、厚生省のマニュアル4にそった形に変更したた め、62年に比べ実施数が著しく増加した. 表一1 昭N63年度山梨県肺癌検診実施状況一レ線検診一1 市 町 村1検診対象者’i 診実施数fS.62 )験診実施率 %1要精 率 %1精工診率 %
甲 府 … 44, 765 i7, 615 ( 99,‘ 17.O i 9.4 1 85.O
上九一 ・ 750 ! 546 ( 504)! 72.8 . 3.7 1 93.3 王 町 5, 400 !2, 518 (2, 606)1 46、,6 1 3.’0 ’ 100
島 町 3. 900 i2, 718 (2, 781)’ 69.7 ’i O.(, i 55.8
玉 “ 町 2, 000 11, 262 (1p284 1 63.1 ! 3.4 :. 50.0 昭 町 3, 156 12, 510 2. 458)1 79.5 1 1.1 100 田 町 3. 200 ; 915 930)’ 28.6 i 2.4 ・ 71.4 塩 山 7, 300 84, 698 {5, 252》| 64.4 i 2.5 ! 84.8 山 梨 市 10, 255 4, 304 (4, 325)i 42.O ! 3.8 ↓ 63.6 日居 町 2, 21.7 1, 499 f O,! 67.6 1 5.1 1 80.O 女 丘 町 3,’269 11, 080 (1, 189); 33.O l 1.4 ; 100 三 富 ・ 650 ! 300 ( 328)! 46.2 1 5.0 : 100 勝 沼 町 2, 814 11, 977 (2, 013), 70.3 ; 6.6 ; 100 大 和 び 696 i 643 ↓ 700)! 92.4 1 1.4 ・ 81.5 表一2昭和63年度山梨県肺癌検診実施状況一レ線検診一2 市 町村 検診対象者1検診実施数(S.62 )1検診実 率 %!要精検率 %1精検受診竃% 石 和 町 7, 891 ’・ 2, 834 (2, 906) { 35.9 1 1.O
81.o
御 坂 町 4, 294 ! 3, 642 (3, 436) 1 84.8 」 O.6 178.3
… 宮 町 4, 525 ; 2, 735 (2. 984) ‘ 60.4 ・ L 7 .78.3
境 川 」 1, 969 1 1, 537 (1, 61 7) ・ 78.1 8.O ’84.6
中 道 町 1. 953 ’ 1, 627 ( 941) . 83.3 1 O ・ 芋㌻了il・ 411 1 291 ( 323) 1 70.8 2.7 ;100
8 三 殊 町 1, 420 s 1, 359 (1,445) : 95.7 0.4 ’66.7
帝而大門町 4, 090 ! 3, 368 (3, 384) 1 82.3 ! 1.9 ’ ‘2.3 | 六 郷 町 2, 164 ! 1, 521 (1, 987) i 70.3 ‘ 2.2 ⑪79.4
下 部 町 4, 223 1 2. 758 (2, 790) 65.3 i 1。2 ’93.8
籟。町
4, 624 ; 3. 959 ( 584) 85.6 2.8100
鯨 沢 町 2, 809 ∼ 1, 371 (1, 420)48.8
(, 富 町 2, 240 1, 506 (1, 479)67.2
0.883.3
早 川 町 1, 786 1, 426 (1. 293) ・ 79.8 、 2.146.7
身 延 町 3, 106 : 2, 835 {2, 700) ・9L 3
1.690.9
南 部 町 2, 266 2, 075 ( 58ノ ‘ 84.1 2.7 ‘86.0
1 富 沢 町 1. 831 ・ 1, 674 ( 0) 91.4 1.3 ・31.8
表一3 小笠原、韮崎管内の成績を示すe白根町、須玉町、小淵沢町で は独自の基準を設け検診を行っているため実施率が低い。大泉村、小淵沢 町、武川村、の精検率は10%を超えている。受診者の多い肺癌検診では 精検率はせいぜい5%までといわれておりs、今後の推移を見守りたい。 表一4 吉田、大月管内では実施率の低い市町村が多い。検診体制に問 題があると思われる。表一3昭和63年度山梨県肺癌検診実施状況一レ線検診一3 市 町 ・ 検診対象者 1検診実施数(S.62 )1検診実施率 % 1要精検率 % 1精検受診率 % 八 田 ・
1,621
‘1, 046 (1, 089) 1 64.5 ! 7.5 74.4 町3,200
, 1 54 { 30 1 4.8 7.1 i 芦 安 ・273
! 152 ( 160) 55.7 1 2.O l 66.7 ⊇.町3,274
2, 118 (2, 245) ; 64.7 i 0.6 !100
形 町5,870
4, 674 ( 274) 1 79.6 1 1.5 ’ 90.0 甲 西 町7,300
13, 127 (3, 089 1 42.8 i 2.0 : 50.89,200
!4, 829 ( 0) 52.5 ! O.−8 89.7 明 野 ・1,749
1, 204 (1, 278) 1 68.8 ! 5.5 1 83.3 須 玉 町2,861
・ 99 (3, 263) : 3.5 1 4.O l 75.O 高 町4,274
:2, 734 (2, 326) 8 64.O l 2.9 1 51.9 大 泉 ・11,363
769( 827)1 56.4 ‘ 11.1 1 76.5 小淵沢 町L500
i 286 ( 30) . 19.1 ! 14.8 9100
白 州 町 ’ 1,652 !1, 532 (1. 558) 1 92.7 ’ O.8 ‘ 84.6 1川 ・1,386
1 945 975} ’ 68.2 … 11.7 ‘ 68.5 表一4昭和63年度山梨県肺癌検診実施状況一レ腺検診一4 市 町 村 検診対象者 1検診実施数 (S.62 )1検診・’施率 % …精検率 % 1精検受診衷 % 士吉田12,940
2. 806 (2, 489)i 21.7 O.2 ;100
1旦 ’i墜 ’
630
20
O l 3.3 ‘ 20.O i 25.O西 町
1,110
108
170)1 9.7 , 1 O ・ 忍 野 ・2,226
819(
770)1 36.8 i O 山 ・1.0891
90( 134)1 8.3 ! O l 河口’ 町4.2001
158
499.1 3.8 ’ 1.9 1100
山 コ 526!177(
167)i 33.7 i 0.6 1100
足和田 ・5911
445(
403)i 75.3 1 O l . 沢 ・650
521
385 i 80.2 1 0 ’ 留 r 8, 220 ! 2, 627 O)i 32.0 1 4.3 ; 98.2 大 月 1 10, 128 1 1, 529 ( 0)1 15.1 1 0 1 .,、山 ・ 1,065}176(
0 16.5 … 9.7 i 小 ・ 715!395《
411)1 55.2 1 O.3 ・100
丹波山 ・7361
532
558)・ 72.3 1 1.5 1100
表一5 以上の結果をまとめると昭和63年度に県内で99,231人
のレ線検診を行ったことになる。これは62年度に比し25,819人の
増加となる。要精検率は2.6%とほとんど変化ないが、精検受診率は60.1%と20%も減少した。予後不良の癌が多い肺癌検診は100%
の精検受診率を目指すべきであり6、どの点が問題か検討が必要である。発見された肺癌は32人だが10万:33と発見率ではあまり変化が無
かった。 表一5 昭和63年度山梨県肺癌検診実施状za−一レ線検診一5 受診者数 !検診実施率1要精検者数1要精検, 精検受診率1発見肺癌 63年度 ;X9,231 44.4%12,903
2.6%i6。.、%132
10万:33
62年度73,4、216。.8%1、,7、91
2.2%18。.3%12、
10万:30
十25,819−24.496
一20.2% 十11一喀疾検診一 表一6 肺門部早期肺癌の発見を日的とした喀疾検診受診者は、レ線検
診に比べ少なく、山梨県全体で3,890人だった。62年比、356人
の増加に留まっている。要精検はクラスDとEで7、21人、0.5%だ
ったが、精検受診率はレ線検診と同様に12%も減少した。発見肺癌は2人100万:53だった。
表一6昭和63年度山梨県肺鰍診難状況一喀疾検診一 受診者数 !要精検者数(D+E)1 精検工診率1 見肺癌 63年度 l l l3, 890 ! 21 0. 5% 7、.4%i 10万: Q 53 62年度 1R,534「 310.9%・
83.9%1
10万:Q 57 十356 −12.5% 一発見肺癌一表一7 21市町村で34人の肺癌が発見された。このうち臨床病期の
判明しているものは、わずか12人である。肺癌治療に欠かせない組織型 や治療方法、予後等は報告がない。市町村や検診実施機関での自主性にま かされることになる。もと表_7 より、ここで発見された肺 ’昭和63年度肺がん検診原発性肺がん発見状況 癌の大部分は通常の診断、 治療ルートに乗り、治癒を 圏指した努力がなされてい ると思われるが、山梨県内 の肺癌検診の公式な最終結 論がこのような不完全なも のでは、まことに残念と言 わざるを得ない。患者のプ ライバシーの問題、フォロ ーアップ自体が経済的に不 採算部門であることなど、 困難な問題は多いが、わずか人口80万の山梨県の肺
癌検診結果を集約する方法、 機関の創設を考えていかな ければならないと思われる。 〈考 察〉 老人保険法では成人病検 診管理指導協議会を各都道 府県に設け、この中に肺癌 部会を設置することになっ 』旬郎X尊の功要 励セ「覧 1一 上九一色18 2 戟 晶 町 , ’輿 由 巾 o ll8銅 111 ‘ 19 旧 副 2 6 Il,目1 1 即 坂 即 3 ・一@方 町 1貝川.{, 21 日i川大『川 ハ 六 卿 町 2 r 郎 町 9 カ ,き 日1 3 一 ↓,1郎 町 1 1日 彫 w, 8 叩 西 町 o 一一一一 鵡 的。η輌 1 一一’一 一一 明 ,∫1∫ 8 小繍.町 8 r1川町 8 丁τ 一’; 一一’ 一一 馴 02 不明 2 j 2 1 3 j ハ 0 1 1 0 1=
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謝1何で桔腹検的臼名発兄て、肺癌部会の仕事を次の4点としている9。① 市町村で実施した検診 にっいて、性別、年齢別に受診率、要精検率、精検受診率、癌発見率等に っき検討し評価し、今後の検診の実施方法等にっき検討する。② 癌と診 断された症例にっき、検討会を設ける等の方法で病期、治療の状況等を検 討し、検診の効果、効率を評価する。③ 検診実施機関の精度管理を行う、 このため必要に応じて検診機関の実地調査を行う。④ その他検診の精度 の維持、向上のために必要な事項を検討する。 また一h一方、市町村の役割一っとして、検診受診者の氏名、生年月日、年 齢、住所、過去の検診受診状況、検診結果、要精検者の精密検査受診の有 無及び結果を把握し成人病検診管理指導協議会の各部会に報告する事が挙 げられている。 このため、肺癌部会の資料を検討すれば、年度内の報告のため、精検者 やその結果にっいては、やや正確さに欠けるが、県内の肺癌検診の実施状 況や市町村、検診実施機関の肺癌検診への取組み方や姿勢を判断すること が可能となると考えられる。今回我々もそのようのな観点から、昨年にひ き続き肺癌部会の資料を検討してみた。 まず、第三にいえる事は厚生省のマニュアルに沿った検診が実施されて いない市町村が多数ある事である。 表一8 に肺癌学会の肺癌検診標準方式と呼ばれている、厚生省のマニ
ユアルによ表一一 8肺癌検診の項目
る、肺癌検 診の項目を 示す9。 レ線検診 では、検診 対象者の受 診率の著し く低い町村 に問合せて みると、喀 疾検診にお‡簑響≧竺纏1竃霧…毒1熱竃馨量髭
1.問診 *40歳以上の男女全員 2.胸部エックス線写真読影 *二重読影 (ダブルチェック) 3・d量籠瓢1譜纏璽2艦泓上の者
*6ヵ月以内に血疲のあった者 けるハイリスクグループと受診希望者にのみ肺癌検診を実施している所が 結構あった。町村や検診実施機関の勘違いか、力不足かは判らないが、早 急にマニュアルに沿った形式に改めるべきだと考える。 そのような検診でダブルチェック、比較読影が行われているかどうかは 不明だが、予後の不良な癌を多数含む肺癌検診では、まず、フォーマルな 形式の検診体制をとる事がトラブルを未然に防ぐ、第一’一・s歩と考えるからで ある。 比較読影陽性例1°と呼ばれる、前年の写真に陰影を指摘できる症例や、 検診と検診との問に発生し、予後不良な小細胞癌に代表される、発育速度の極めて早い癌、レ線陰性の肺門部癌等々、ちょっと間違えば重大な紛争 になりかねない要素を多数抱えているのが肺癌検診といえるからである。
一方・喀疲検診でも混乱が見られる。 表一9
表一9、は肺癌部会の喀疾検診の資料 の一一一部をそのまば掲載したものだが、レ 線検診が最もうまく行っている、石和、 身延保健所管内の数字である。左より市 町村名、喀疾検診対象者数、実施率、喀 疾容器の回収数、回収率、である。 L 喀疾検診対象者数のみをみると、石和では10人、増穂では3,959人とな
る。対象者数の記載のない町村もある。 表一8、に示したように喀疾検診の対 象者は肺癌のハイリスクグループであり なんらかの問診による、喫煙者の選定が 必要である。結核検診と同時に喀疾検診 を行えば、受診者の約10%が対象者に なるといわれている11。別の機会、たと えば一般健康審査時の問診によれば当然 この数字より多い数が予想される。石和のレ線検診実施数は2,834人
で、増穂は3,959人である。揚げ足
を取っている訳ではないが、肺癌の一A次予防にもっながる喀疾検診の意味 と日的を、より衆知徹底する必要があると思わずにはいられない。 前述したが、表一一・6、で示したように喀疾検診では受診者がレ線検診に 比し少数なうえに、年次増加数もわずかである。マスコミ等を通じたPR も必要と考えるし、喀疾検診の100%実施を推進する、勇気ある、先取 性に富んだ町村が現れないかと思ったりもする。3年自を迎え59の市町村で肺癌検診が実施された。県下64市町村全
部でこの検診が行われるのももうすぐである。 ) しかしながら、都市部における低受診率、年をおって低下する精密検診 受診率、そして精検受診者や発見された肺癌患者のフォロー.一アップ等、解 決すべきはどれを取っても困難な、やりがいのある事柄である。 肺癌検診の歴史の浅い山梨県ゆえに様々な問題や到達日標が生じてくる のかもしれない。長年やって来たことによって生ずる弊害はかえって少な いのかもしれない。いずれにしても道は遠し、と感じざるをえない。 今年度より県内で最大のシェアーを持っ山梨県健康管理事業団で検診の 細胞診業務を開始した。また、事業所検診としての山梨県職員の肺癌検診 もスタートした。県内の検診は県民の手で、市町村、地域の検診はその地 の医療、保健衛生に責任を持っ者の手で行うのが本来だろう。我々、肺癌 研[= 16 一一’●} @0.4 7曼10 一一 @100 88 98 3.6 37 一●一一R了.8 39 16.4 23810 15・亙, O.6 .5 ll 50 si蒲 撒≡ 髪画一△興L 胴L 一一 P32 9.7 20 23 34 2.2 34 965 35 158ァ
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