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炎症性腸疾患患者の食事摂取状況・心理状態をふまえた看護師による食事指導実践化への課題 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 大日向 陽子 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 看護学 ) 学 位 記 番 号 医工博甲 第 345 号 学 位 授 与 年 月 日 平成27年9月25日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 ヒューマンヘルスケア学専攻 学 位 論 文 題 名 炎症性腸疾患患者の食事摂取状況・心理状態をふまえた看護師に よる食事指導実践化への課題 (The study for nursing practice of dietary counseling method based on the dietary intake and psychological condition in outpatients with inflammatory bowel disease) 論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 田辺 文憲 委 員 教 授 宮村 季浩 委 員 教 授 中込 さと子 委 員 教 授 相原 正男 委 員 教 授 久保田 健夫 委 員 非常勤講師 中村 美知子

学位論文内容の要旨

(研究の目的) 炎症性腸疾患患者の食事摂取状況・心理状態の特徴を明らかにし,特に,クローン病患者に対する 食事摂取状況・心理状態をふまえた看護師による食事指導実践化への課題について検討する。 (方法) 1.研究デザイン:量的記述研究 2.対象:A 県内の大学附属病院内科外来に通院中の 60 歳未満の IBD 患者 33 名(潰瘍性大腸炎患 者〈以下,UC 群〉17 名,クローン病患者〈以下,CD 群〉16 名) 3.調査内容:基本属性(治療内容,自覚症状〈1 日の排便回数と腹痛,腹満感,血便)を含む),食 事摂取状況(食事摂取方法,栄養素・食品群別摂取量(成分栄養剤,ED 含む),食品群別摂取割 合(調理方法),栄養状態(Alb,CRP,ESR,多価不飽和脂肪酸〈以下,PUFA〉,n-3PUFA 等 の血液生化学検査値),心理状態は心のゆとり感尺度35 項目(「心の充足・開放性」15 項目,「切 迫・疲労感のなさ」12 項目,「対他的ゆとり」8 項目)を用いた( Cronbach’sα係数は 0.955, 各 下位尺度のα係数は0.872~0.926)。評点が高いほどその状態であることを示す。 4.調査手順:調査開始時,1 か月後,2 か月後の外来受診時に以下の手順でデータ収集を実施した。 1)基本属性:調査開始時に調査者が手渡し,その場で回収した。

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2)食事摂取状態,自覚症状:各調査用紙を製本し,対象者には 5 回(隔週)/2 か月間,自宅で の記入を依頼し配布した。同意が得られた対象者に対し,食事記録と併せてカメラ撮影を依頼し た。冊子は外来受診時に持参してもらい,摂取量,味付け等を調査者が聞き取り,調査を実施し た。 3)栄養状態,心理状態:外来受診時に採血を実施し(3 回/2 か月),心理状態は診察の待ち時間 などに実施した(3 回/2 か月)。 5.分析方法 各変数の平均値±標準偏差を算出し,以下の分析を行った。 1)UC 群と CD 群の食事摂取状況の比較には t 検定,心理状態の比較には Mann-WhitneyU 検 定を用いた。 2)CD 群で ED を使用せず,経口摂取のみで食事摂取している患者を経口摂取群(以下,経口群), ED 併用患者を ED 併用群(以下,併用群)とし,食事摂取状況,心理状態の 2 群の比較にはそ れぞれt 検定,Mann-WhitneyU 検定を用いた。 6.倫理的配慮:山梨大学医学部倫理委員会の承認を得た。対象者に対し,研究目的,方法,倫理的 配慮を文書と口頭で説明し,同意と協力を得て調査を実施した。 (結果・考察) IBD 患者を UC 群(n=11),CD 群(n=11)の 2 群で比較した結果,UC 群は全員経口摂取だった のに対し,CD 群の摂取方法は経口摂取と ED 併用の 2 つに大別された。 CD 群は血清 Alb(3.7g/dl),摂取エネルギー,たんぱく質摂取量が UC 群より低値を示す傾向に あり,脂質,PUFA,n-3PUFA 摂取量等は有意に低値であった(p<0.05)。調理方法は「煮る」(野 菜類35.4%,魚介類 41.4%),「焼く」(肉類 35.6%)が多く,UC 群と同じような傾向であった。心 理状態は両群とも高値を示す項目が多かったが,CD 群の「いろいろなことが気にならない」は UC 群より有意に低値であった(p<0.05)。UC 群は血清 Alb(4.2g/dl)が CD 群より高値を示す傾向に あり,エネルギー,たんぱく質等は摂取できていが,血清CRP,ESR などの炎症反応を認めた。 摂取方法に違いがあったCD 群を経口群(n=5)と併用群(n=6)の 2 群で比較した結果,経口群は 血清Alb 低値患者の割合が多く(60%),摂取エネルギーは併用群より低値を示す傾向にあり,たんぱ く質摂取量は有意差に低値であった(p<0.05)。併用群は,エネルギー摂取量の約 1/2 に相当する 950kcal/日を ED で摂取しており栄養状態は良好であった。調理方法では経口群は「焼く」が多く(肉 類52.3%,魚介類 38.7%),併用群は「蒸す」,「煮る」等が多かった(肉類 42.7%,野菜類 48.9%)。 心理状態では,経口群は特に「不安を感じない」など3 項目が低値を示す傾向にあり,中でも「焦 りを感じない」は併用群より有意に低値(Me2.0)であった(p<0.05)。 IBD 患者が炎症をコントロールしながら栄養状態を改善するためには,n-3PUFA 等の脂質の質や 摂り方に着目した指導が必要である。特にCD 経口群は栄養状態が低下しており,エネルギー,たん ぱく質摂取量が少ないだけでなく,消化吸収に負担をかけない調理方法の選択が不十分で,焦りや不 安があったことから,食事記録などを活用し患者とともに食事摂取状況を見直し,心理状態を正確に 把握したうえで,経口摂取に依存しすぎず,ED 併用を視野に入れた食事指導が必要である。

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(結論) IBD 患者 22 名を対象に食事摂取状況・心理状態の特徴を分析し,特に CD 患者に対する食事摂取 状況・心理状態をふまえた看護師による食事指導実践化への課題について検討した。CD 群は栄養状 態が低下しn-3PUFA 摂取量が UC 群より有意に低値であり,UC 群は栄養状態は良好だったが炎症 反応を認めたことから,両群とも特にn-3PUFA 等の脂質の質や摂り方に着目した指導が必要である。 IBD 患者の食事摂取状況を正確に把握,栄養査定するためには,継続した学習会を実施し看護師の 関心を深めると同時に,患者自らが食事・栄養管理を実践化していくための指導方法の体系化が課題 である。また,特に栄養状態が低下しているCD 経口摂取患者に対しては,食事に関する問題点を医 師・管理栄養士と共有し,食事摂取量だけでなく,食事形態の工夫や摂取方法の変更など,患者の心 身の状態に適った食事指導の実践を促進するための,連絡・連携体制の構築が課題である。

論文審査結果の要旨

1. 学位論文の研究テーマの学術的意義 論文題目は「炎症性腸疾患患者の食事摂取状況・心理状態をふまえた看護師による食事指導実践化 への課題」である。 本研究は,炎症性腸疾患であるクローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)の 60 歳未満の外来通院患 者33 名を対象に,基本属性,自覚症状,食事摂取状況,食品群別摂取割合,栄養状態,心理状態を 調査した量的記述研究である。特にCD に対する食事摂取状況と心理状態を分析し,看護師による食 事指導に向けた課題を検討することを目的としている。 調査の結果,CD 群では摂取エネルギー,タンパク質摂取量が UC 群より低く,n-3 多価不飽和脂 肪酸(PUFA)は有意に低い結果であった。心理状態では,CD 群は「いろいろなことが気にならない」 がUC 群より有意に低値であった。CD 群では,経口摂取のみを行っている経口群と成分栄養(ED) を併用している併用群に分かれ,経口群では併用群よりタンパク質摂取量が有意に低値であった。心 理状態では,経口群は「焦りを感じない」が併用群より有意に低値であった。一方,UC 群では栄養 状態は良好であったが,CRP や ESR などの検査項目で炎症所見がみられた。 本論文は,炎症性腸疾患の患者の食事摂取状況や心理状態の特徴を分析し,n-3PUFA 摂取量増加 の必要性,n-6/n-3PUFA の摂取割合の改善,ED 併用の有効性などが示唆されており,看護師が炎 症性腸疾患患者への食事指導を実践していくための貴重なデータが得られている。よって,本論文は 博士論文として価値のある研究と判断する。 2. 学位論文および研究の問題点 炎症性腸疾患の栄養摂取状況や血液検査による栄養状態の把握,心理状態など実態調査にとどまっ ている感があり,看護師として医療現場の中でどのように食事指導を実践すべきかの具体的提言が誘 導できることが望ましい。ED 併用については経管挿入などによる患者の心理的な負担も考慮する必 要があり,今後の検討課題である。 3. データの信頼性 対象者より得られた貴重なデータが適切な手法で分析されており,データは信頼性があると判断す る。

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4. 今後の課題

本研究成果を医師,管理栄養士などに伝達し,炎症性腸疾患への食事指導の実施と効果の分析を継 続していくことが重要と思われる。患者の心理的側面をふまえながら,看護師として効果的な食事指 導が実践できるような研究に発展させることが期待される。

参照

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