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大豆イソフラボン麹発酵物の糖質消化酵素に対する阻害作用

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大豆イソフラボン麹発酵物の糖質消化酵素に対する

阻害作用

著者

江崎 秀男, 石田 景子, 高須 萌, 林 萌美, 森 久

美子, 中村 好志

雑誌名

椙山女学園大学研究論集 自然科学篇

44

ページ

19-28

発行年

2013

URL

http://id.nii.ac.jp/1454/00001817/

(2)

* 生活科学部 管理栄養学科 江崎秀男・石田景子・高須 萌・林 萌美・森 久美子・中村好志  椙山女学園大学研究論集 第44号(自然科学篇)2013

大豆イソフラボン麹発酵物の糖質消化酵素に対する

阻害作用

江崎秀男* ・ 石田景子* ・ 高須 萌* ・ 林 萌美*

森 久美子* ・ 中村好志*

Inhibitory Effects of Fermented Soy Isoflavones on Carbohydrate Digestive Enzymes

Hideo E

SAKI

, Keiko I

SHIDA

, Moe T

AKASU

, Moemi H

AYASHI

,

Kumiko M

ORI

and Yoshiyuki N

AKAMURA

1.はじめに  我が国の糖尿病患者数は約890万人,予備軍を含め2210万人と推定され(平成19年国 民健康・栄養調査結果),その数は成人の約2割に相当し,深刻な社会問題となっている。 日本人の糖尿病の95%以上はインスリン非依存型糖尿病(II 型糖尿病)であり,耐糖能異 常が問題となる。人の耐糖能は遺伝素因のほかインスリンの分泌能や抵抗性などの影響も うけている。糖尿病患者あるいは糖尿病が懸念される人の場合,高血糖状態をいかに改善 するかが重要となる。糖尿病治療薬としての医薬品もあるが,食品素材で血糖値を正常に 維持することが望まれる。一般にでんぷんなどの糖質は,口腔内の α‒アミラーゼ(唾液 アミラーゼ)の作用により,デキストリンやマルトースなどに分解され,さらに膵アミ ラーゼによりその反応は進行する。その後,小腸において,マルトースはマルターゼの作 用により,またスクロースはスクラーゼの作用により,グルコースやフルクトースに分解 されて小腸上皮細胞から吸収される。近年,各種食品素材や食品成分が,食事として摂取 した糖質の分解を抑制(糖質消化酵素の阻害作用)し,腸管でのグルコースなどの吸収を 緩和,遅延させて血糖値の急激な上昇を抑制するという報告が多くみられる1)‒5)  大豆中には種々の生理活性物質が含まれており,イソフラボン類も多種多様な生理機能 を示し,予防医学の面からも特に注目されている6)。イソフラボン類のエストロゲン作用 は,骨粗鬆症の予防,更年期障害の改善,前立腺癌の抑制などに寄与している。他方,イ ソフラボン類はエストロゲンと拮抗的に働き,その活性レベルを低下させる場合もある。 この抗エストロゲン作用は,乳癌の予防に役立つ。また大豆イソフラボンは抗酸化作用を 示し,生体内においても脂質過酸化反応を抑制して動脈硬化を予防し7),さらには癌予防 に効果があることも知られている8)

(3)

Fig. 1 Proposed scheme for the formation of 8-OHD and 8-OHG

8-OHD and 8-OHG were formed from daidzein and genistein, respectively, by microbial hydroxylation, being respectively liberated from daidzin and genistin by β-glucosidase from koji mold during incubation.

 著者らは,これまで種々の大豆発酵食品についてその機能性,特に抗酸化性について研

究を行ってきた9)‒12)。この一連の研究のなかで,豆味噌や醤油などはその醸造過程におい

て,原料大豆中のイソフラボン配糖体 (Daidzin や Genistin) が麹菌の産生する β-Glucosidase および水酸化酵素の作用により,強い抗酸化性を示す8-Hydroxydaidzein(8-OHD)や 8-Hydroxygenistein(8-OHG)などの ortho-Dihydroxyisoflavone(ODI)に変換される13) とを見出した(Fig. 1)。また,8-OHD はラットを用いた動物実験においても,生体内抗 酸化作用を示すことを報告した12)  本研究においては,8-OHD および8-OHG を高濃度に含むイソフラボン麹発酵物を入手 し,この麹発酵物の糖質消化酵素に対する阻害作用を調べるとともに,活性因子の解明を 行うことにした。 2.実験方法 2.1 大豆イソフラボン麹発酵物の調製  本実験に使用した大豆イソフラボン麹発酵物は,株式会社東洋発酵(愛知県大府市)に おいて調製されたものである。ジャーファーメンター(5L 容)に原料素材である大豆イ ソフラボン(I-3),スクロース,イーストエキスおよび消泡剤(KM-72F)を溶解した培 地を加え,オートクレーブ殺菌後,泡盛製造に用いられてきた黒麹菌(A. saitoi IAM 2210)の胞子けん濁液を接種し,30℃で3日間培養を行った(2.5L 仕込み)。遠心分離に よって回収した沈殿物に70%エタノールを加え,室温で3時間攪拌抽出を行った。抽出 液はエバポレーターを用いてエタノールを留去した後,凍結乾燥法により粉末(大豆イソ フラボン麹発酵物:IK-3)とした。その後,培養法をさらに検討し,同じ I-3を原料とし て新たな麹発酵物(NIK-3)を調製した。 2.2 大豆イソフラボン原料および麹発酵物中の各イソフラボン類の定量  I-3,IK-3および NIK-3の14.0mg ずつを精秤し,ここに70%エタノール7.0mL を加え, 振とう抽出(20℃,18時間)を行った。遠心分離(3500rpm,20分間)によって得られた

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大豆イソフラボン麹発酵物の糖質消化酵素に対する阻害作用

上清20μL ずつを,フォトダイオードアレイ検出器(Shimadzu SPD-M10A)を装備した三次 元 HPLC(ポンプ;LC-10AT,カラムオーブン;CTO-10AC)に注入し,イソフラボン配糖 体(Daidzin,Genistin),アグリコン(Daidzein,Genistein)および ODI(8-OHD,8-OHG)

の各ピーク物質の UV スペクトルおよびピーク面積値(PA 値)を得た10)。HPLC の分析条

件は,カラム;Develosil ODS-UG-5(4.6 i.d.×250mm, NOMURA CHEMICAL CO., LTD.), カラム温度;35℃,溶離液;0.1%トリフルオロ酢酸/40% MeOH,流速;0.7mL/min,測 定波長;200nm‒380nm,検出波長;262nm とした。各イソフラボン類の検量線よりそれぞ れの含有量を求め,アグリコン量として算出した。 2.3 試料溶液の調製  I-3,IK-3および NIK-3の200mg ずつを精秤し,ここに70%エタノール5.0mL を加え, 40℃の湯浴中で5分間加温した後,10分間超音波(超音波洗浄機:SHARP UC-6200)処 理した。微量の不溶物を遠心分離(16000rpm,10分間)によって除去した上清を,糖質 分解酵素の阻害活性(マルターゼ阻害,スクラーゼ阻害,α‒アミラーゼ阻害)測定の試 料溶液とした。 2.4 マルターゼ阻害活性の測定  2.3で得られた I-3,IK-3および NIK-3の各試料溶液10μL ずつを,2mL 容エッペンチュー ブに分注し,ここにラット腸管アセトン粉末(Intestinal acetone powder from rat:SIGMA I 1630)より調製した酵素液(マルターゼ)15μL を加え,37℃で5分間プレインキュベー トした14)。基質溶液として28mM マルトース溶液25μL を加え,37℃で30分間インキュ ベートした後,2.0M トリス塩酸緩衝液(pH 7.0)50μL を加えて反応を停止させた。この 反応終了液100μL を蒸留水900μL で希釈した後,この希釈液中のグルコース含量をグル コース CII テストワコー(和光純薬工業株式会社 439‒90901)を用いて測定した(試料 ABS490nm)。本実験では,各試料溶液1種類につき3検体(n=3)で酵素反応を行った。 同時に試料盲検として,酵素液の代わりに酵素液調製時に使用した0.1M リン酸カリウム 緩衝液(pH 6.3)15μL を加えたものも行った(試料盲検 ABS490nm)。また,対照試験とし て 各 試 料 溶 液 の 代 わ り に 試 料 を 溶 解 し た70 % エ タ ノ ー ル を 用 い た 3 検 体( 対 照 ABS490nm),さらには酵素液を加えないものも行った(対照盲検 ABS490nm)。各試料溶液の 阻害活性は次式を用いて算出し,阻害率(%)として表した。   阻害率(%)=

   {1−(試料 ABS490nm値−試料盲検 ABS490nm値)/(対照 ABS490nm値−対照盲検 ABS490nm

値)}×100 2.5 スクラーゼ阻害活性の測定  スクラーゼ阻害活性についても,2.4の方法に準じて行った14)。I-3,IK-3および NIK-3 の各試料溶液10μL ずつにラット腸管アセトン粉末より調製した酵素液(スクラーゼ) 15μLを加え,同様にプレインキュベートした。基質溶液として28mM スクロース溶液 25μLを加え,37℃で30分間インキュベートした後,トリス塩酸緩衝液50μL を加えて反 応を停止させた。この反応終了液中のグルコース含量を,グルコース CII テストワコーを用

(5)

いて測定することにより,スクラーゼ阻害率を求めた。

2.6 α‒アミラーゼ阻害活性の測定

 I-3,IK-3および NIK-3の各試料溶液10μL ずつを,2mL 容エッペンチューブに分注し, ここに豚膵臓より精製された α‒アミラーゼ(α-Amylase Type VI-B from Porcine pancreas:

SIGMA A 3176)14)15μLを加え,37℃で5分間プレインキュベートした。基質溶液として%でんぷん水溶液25μL を加え,37℃で30分間インキュベートした後,2.0M トリス塩 酸緩衝液(pH 7.0)50μL を加えて反応を停止させた。この反応終了液中のグルコース含 量を,グルコース CII テストワコーを用いて測定した(試料 ABS490nm)。本実験においても, 各試料溶液1種類につき3検体(n=3)で酵素反応を行った。同時に試料盲検として,酵 素液の代わりに酵素液調製時に使用した0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)15μL を加 えたものも行った(試料盲検 ABS490nm)。また,対照試験として各試料溶液の代わりに試 料を溶解した70%エタノールを用いた3検体(対照 ABS490nm),さらには酵素液を加えな いものも行った(対照盲検 ABS490nm)。各試料溶液の α‒アミラーゼ阻害活性も,2.4に示 した式を用いて算出した。 2.7 分取 HPLC による8-OHD および8-OHG の分離・精製  NIK-3の1.5g に70%エタノール15mL を加え,抽出(20℃,16時間)を行った。抽出液 は,Sep-Pak C18カートリッジを通過させ,得られた通過液を用いて分取 HPLC を行った。 HPLC用のカラムには Develosil ODS 15/30(50i.d.×500mm, NOMURA CHEMICAL CO., LTD.)を,溶離液には0.1%トリフルオロ酢酸/40% MeOH を使用した。溶離液の流速は 78mL/minとし,検出波長は262nm で行った。分取 HPLC によって分離された8-OHD およ び8-OHG ピーク部分を回収した後,エバポレーターにて減圧濃縮した。得られた粗 8-OHDおよび粗8-OHG は少量のエタノールに溶解し,再度,リサイクル法を用いた分取 HPLCを行った。精製した8-OHD および8-OHG は,三次元 HPLC を用いて同定を行うと ともに純度検定を行った。 3.結果および考察 3.1 大豆イソフラボン原料および麹発酵物中のイソフラボン類組成  大豆イソフラボン原料(I-3)および麹発酵物(IK-3および NIK-3)の70%エタノール 抽出液の HPLC 溶出パターンを Fig. 2に示した。各ピーク物質については,同時に HPLC 分析した各イソフラボン標準溶液のそれぞれの溶出時間および UV スペクトルより, aを Daidzin,b を Genistin,c を8-OHD,d を8-OHGlycitein(8-OHGly),e を8-OHG,f を Daidzein,g を Genistein と同定した。この Fig. 2から明らかなように,発酵前の I-3中には, イソフラボン配糖体である Daidzin および Genistin が主要成分として含まれていた。また, A. saitoi を用いて培養した麹発酵物 IK-3中には,イソフラボン配糖体は多少残存していた

が,その多くはこの黒麹菌が産生する β-Glucosidase13)の作用によりアグリコン(Aglycone)

である Daidzein や Genistein に,さらには水酸化酵素13)により8-OHD や8-OHG などの

(6)

Relative intensity (ABS at  nm)          I- IK-      NIK- Time (min)

Fig. 2 HPLC profiles of I-3, IK-3 and NIK-3

a, Daidzin; b, Genistin; c, 8-OHD; d, 8-OHGly; e, 8-OHG; f, Daidzein; g, Genistein I- Aglycone Glucoside ODI Relative proportion IK- NIK-      

Fig. 3 Relative proportions of each isoflavone analogue in I-3,

IK-3 and NIK-3

Glucoside, Daidzin and Genistin; Aglycone, Daidzein and Genistein; ODI, 8-OHD and 8-OHG

大豆イソフラボン麹発酵物の糖質消化酵素に対する阻害作用

変換されていた。

 各イソフラボン類の検量線を用いて,I-3,IK-3および NIK-3の各ピーク面積値より, それぞれのイソフラボン類の含有量を求めた。イソフラボン配糖体である Daidzin および Genistin,また8-OHD および8-OHG の値は,それぞれ Daidzein および Genistein のアグリ コン量として換算し,これらの試料中に含まれる各イソフラボン類の相対的な割合を

Fig. 3に示した。I-3中には,イソフラボン配糖体(Glucoside)が99%含有されていた。一

方 IK-3中には,配糖体が11%,アグリコン(Aglycone)が31%,また ODI が58%含有さ れていた。培養法を改良して調製した NIK-3中には,アグリコンが32%含有されており, また ODI の占める割合は特に高く,その値は68%であった。

(7)

3.2 I-3,IK-3および NIK-3のマルターゼ阻害作用

 I-3,IK-3および NIK-3の70%エタノール抽出液のマルターゼ阻害活性を Fig. 4に示した。 大豆イソフラボン原料 I-3の阻害率は10%を示したのに対して,麹発酵物である IK-3およ び NIK-3は有意に(P<0.01)より高い阻害率を示し,それぞれの値は30%および37%で あった。I-3中には,Daidzin および Genistin の配糖体が主成分として存在する(Fig. 3)。 一方,IK-3および NIK-3中には配糖体のアグリコンである Daidzein および Genistein,ま たその水酸化物である8-OHD や8-OHG などの ODI が主成分として含まれている。これら のイソフラボン組成を考慮すると,IK-3および NIK-3が I-3より高い阻害率を示す理由と して,IK-3および NIK-3中の Daidzein,Genistein,8-OHD および8-OHG が関与している と推察される。

 また,この Fig. 4において,IK-3と NIK-3の阻害活性を比較すると,NIK-3の阻害率は IK-3より有意に(P<0.05)高い。IK-3および NIK-3中の ODI の占める割合は,それぞれ 58%および68%であり,NIK-3中の ODI 含量は IK-3より10%多い。これらの結果より,

IK-3および NIK-3のマルターゼ阻害作用には,特に8-OHD や8-OHG が大きく寄与してい

ると考察される。        

I- IK- NIK-

In hi bi tio n ra te ( % ) ** ** *

Fig. 4 Inhibitory effects of I-3, IK-3 and NIK-3 on maltase activity

This figure shows representative data from three times experiments. Each value in this figure is the mean ± SD (n=3). (*P<0.05, **P<0.01, Turkey)

3.3 I-3,IK-3および NIK-3のスクラーゼ阻害作用

 I-3,IK-3および NIK-3の70%エタノール抽出液のスクラーゼ阻害活性を Fig. 5に示した。 イソフラボン原料 I-3の阻害率は7%であったが,麹発酵物である IK-3の阻害率は47%と なり,I-3より有意に(P<0.01)強い阻害活性を示した。また,IK-3より8-OHD や8-OHG を多く含有する NIK-3の阻害率は55%となり,IK-3より有意に(P<0.05)強い阻害活性 を示した。これらの結果より,IK-3および NIK-3のスクラーゼ阻害作用には,マルターゼ 阻害作用と同様に,特に8-OHD や8-OHG が寄与していると考察される。 3.4 I-3,IK-3および NIK-3のα‒アミラーゼ阻害作用

 I-3,IK-3および NIK-3の70%エタノール抽出液の α‒アミラーゼ阻害活性を Fig. 6に示 した。I-3の阻害率は24%であったが,麹発酵物である IK-3の阻害率は55%となり,I-3よ り有意に(P<0.01)強い阻害活性を示した。また,NIK-3の阻害率は56%となり,I-3よ

(8)

       

I- IK- NIK-

Inhibition rate

(%) **

** *

Fig. 5 Inhibitory effects of I-3, IK-3 and NIK-3 on sucrase activity

This figure shows representative data from three times experiments. Each value in this figure is the mean ± SD (n=3). (*P<0.05, **P<0.01, Turkey)

       

I- IK- NIK-

** ** In hi bi tio n ra te ( % )

Fig. 6 Inhibitory effects of I-3, IK-3 and NIK-3 on α-amylase activity

This figure shows representative data from three times experiments. Each value in this figure is the mean ± SD (n=3). (**P<0.01, Turkey)

大豆イソフラボン麹発酵物の糖質消化酵素に対する阻害作用

り有意に(P<0.01)強い阻害活性を示したが,IK-3の阻害率との間にほとんど差は認め られなかった。これらの結果より,IK-3および NIK-3の α‒アミラーゼ阻害作用には,マ ルターゼ阻害作用やスクラーゼ阻害作用と異なり,8-OHD や8-OHG と同等に,Daidzein や Genistein も寄与していると考察される。 3.5 8-OHD および8-OHG の分離・精製  NIK-3の1.5g より70%エタノール抽出物を調製し,これを逆相系のカラムを用いて分取 HPLCを 行 い, 粗8-OHD 画 分 と し て80mg, 粗8-OHG 画 分 と し て125mg を 得 た。 粗 8-OHD画分はリサイクル法を用いた分取 HPLC を行い,精製した8-OHD 26mg を得た。 また,8-OHG 画分についても同様にリサイクル分取 HPLC を行い,精製した8-OHG 31mg を得た。これらの8-OHD および8-OHG は三次元 HPLC 分析により,それぞれの純度がと もに95%以上であることを確認した。 3.6 Daidzein,Genistein,8-OHD および8-OHG のマルターゼ阻害作用  市販の Daidzein および Genistein(ナカライテスク株式会社),また3.5で分離・精製した 8-OHDおよび8-OHG の一定量を精秤し,エタノールを用いて10mM 濃度の標準溶液を調

(9)

       

Daidzein Genistein -OHD -OHG

In hi bi tio n ra te ( % )

Fig. 7 Inhibitory effects of daidzein, genistein, 8-OHD and 8-OHG

on maltase activity

This figure shows representative data from two separate experiments.

        In hi bi tio n ra te ( % )

Daidzein Genistein -OHD -OHG

Fig. 8 Inhibitory effects of daidzein, genistein, 8-OHD and 8-OHG

on α-amylase activity

This figure shows representative data from two separate experiments.

製した。これらの溶液の10μL ずつを試料溶液として,2.4の方法でマルターゼ阻害活性を 測定し,その結果を Fig. 7に示した。Daidzein は12%の阻害率,Genistein は18%の阻害率 を示した。また8-OHD の阻害率も Daidzein や Genistein と大差はなく,その値は14%で あった。一方,Genistein の8位に水酸基が付加された8-OHG の阻害活性は非常に強く, その阻害率は53%を示した。これらの結果より,Fig. 4における麹発酵物(IK-3および NIK-3)のマルターゼ阻害活性には,特に8-OHG が大きく寄与していると結論付けられる。 3.7 Daidzein,Genistein,8-OHD および8-OHG のα‒アミラーゼ阻害作用  Daidzein,Genistein,8-OHD および8-OHG の10mM 濃度の標準溶液10μL ずつを試料溶 液として,2.6の方法で α‒アミラーゼ阻害活性を測定し,その結果を Fig. 8に示した。こ の阻害活性においては,Daidzein,Genistein,8-OHD および8-OHG の阻害率に大差はな く,それぞれの値は35%,41%,41%および35%であった。これらの結果より,Fig. 6に おける IK-3および NIK-3の α‒アミラーゼ阻害活性には,マルターゼ阻害の場合と異なり, Daidzein,Genistein,8-OHD および8-OHG がほぼ同程度に寄与していると結論付けられ る。

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大豆イソフラボン麹発酵物の糖質消化酵素に対する阻害作用

4.ま と め

 本研究では,大豆イソフラボン原料 (I-3) を黒麹菌 A. saitoi で発酵させた麹発酵物(IK-3 および NIK-3)を試料として,イソフラボン組成を HPLC 分析するとともに,これらの麹 発酵物の血糖値上昇抑制に寄与する糖質分解酵素阻害作用について検討した。Daidzein, Genistein,8-OHD および8-OHG を多く含む IK-3および NIK-3は,これらの原料である I-3より,強いマルターゼ阻害作用,スクラーゼ阻害作用および α‒アミラーゼ阻害作用を 示した。マルターゼ阻害作用および α‒アミラーゼ阻害作用については,NIK-3より分離・ 精製した8-OHD および8-OHG,また市販の Daidzein および Genistein を用いて阻害活性を 測定することにより,麹発酵物中の活性成分を調べた。麹発酵物のマルターゼ阻害作用に は,イソフラボン原料(I-3)中の Genistin が微生物(A. saitoi)変換をうけて生成した

8-OHGが大きく寄与していることが明らかとなった。また,麹発酵物の α‒アミラーゼ阻 害作用には,Daidzein,Genistein,8-OHD および8-OHG がほぼ同程度に寄与していると 考察された。 謝辞  本研究において,大豆イソフラボン麹発酵物(IK-3,NIK-3)およびその原料である大豆イソ フラボン(I-3)を提供いただきました株式会社東洋発酵に感謝の意を表します。また,本研究 は同株式会社からの委託を受けて「受託研究」として行われたものであることを付記するととも に,改めて厚くお礼申し上げます。 文  献 1) 出口ヨリ子,内田和美,木村広子,芳川雅樹,工藤辰幸,保井久子,綿貫雅章,グアバ葉熱 水抽出物の db/db マウスにおける抗糖尿病効果およびヒト飲用試験による食後血糖値上昇抑制 効果,農化,72,923‒931(1998). 2) 立石絵美,韓立坤,奥田拓道,ラットにおける食後の血糖値に及ぼすコーヒー豆の熱水抽出 物の影響,栄養学雑誌,62,321‒327(2004). 3) 小川智史,木村英人,新見愛,地阪光生,勝部拓矢,横田一成,トチノキ種皮ポリフェノー ル成分の糖質消化酵素に対する阻害作用,食科工,56,95‒102(2009).

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Fig. 1  Proposed scheme for the formation of 8-OHD and 8-OHG
Fig. 2  HPLC profiles of I-3, IK-3 and NIK-3 a, Daidzin; b, Genistin; c, 8-OHD; d, 8-OHGly; e, 8-OHG;
Fig. 4  Inhibitory effects of I-3, IK-3 and NIK-3 on maltase activity This figure shows representative data from three times experiments
Fig. 5  Inhibitory effects of I-3, IK-3 and NIK-3 on sucrase activity This  figure  shows  representative  data  from  three  times  experiments
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