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個人請負就業者の「労働者性」と就業選択─個人請負就業への志向と教育訓練機会に着目して(PDF:470KB)

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 目 次 Ⅰ はじめに Ⅱ 個人請負就業者の「労働者性」 Ⅲ 個人請負就業者の「労働者性」と就業意識 Ⅳ 個人請負就業者の「労働者性」と教育訓練機会 Ⅴ まとめ

Ⅰ は じ め に

本稿では,特集テーマを踏まえ,「労働者性」 が問われる就業形態として個人請負の働き方に着 目する。そして,私たちが関わった個人アンケー ト調査のデータから,個人請負就業者の「労働 者性」と就業選択に関する意識との関係について 分析してみたい。ここでいう個人請負とは,個人 が,顧客である企業など法人から仕事を請け負 い,人を雇わずに仕事を遂行する働き方を指す こととする。雇用契約に基づかない「自営業者」 (self-employment)としての働き方である。ただ し,①顧客が一般の個人ではなく企業など法人で あり,かつ②従業員を雇用していない点で,通常 の自営業者とは異なる。 このような個人請負としての就業機会は,企業 の人材活用の変化やサービス経済化の進展などを 背景として,以前と比べて幅広い業種や職種で広 がってきている可能性がある。「業務委託契約」

特集●働き方の多様化と労働者概念

個人請負就業者の「労働者性」と

就業選択

佐野 嘉秀

(法政大学准教授)

佐藤 博樹

(東京大学教授)

大木 栄一

(東京大学特任研究員) 本稿では,個人アンケート調査から,個人請負就業者の労働者性(使用従属性)と,就業 選択に関する意識,教育訓練の機会に関して分析した。分析から,1)個人請負就業者の労 働者性の程度には幅があり,労働者性が高い層では,労働者性に関して雇用者と同様の働 き方をしている可能性があること,2)労働者性が高い層ほど,個人請負としての就業につ いて積極的な理由を指摘する割合が低く,働き方の現状への不満が大きく,雇用者への転 換を希望する傾向にあること,3)ただし,労働者性の高い層も含め,個人請負の働き方の 継続はキャリアの重要な選択肢となっていること,4)個人請負としての就業のなかで労働 者性の低い働き方へ移行するのに伴い,教育訓練の機会が減る可能性があることを示し, 能力開発(自己啓発)への支援等,働き方に関する志向の多様性を踏まえた就業支援の重 要性を指摘した。

─個人請負就業への志向と教育訓練機会に着目して

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や「請負契約」といった名称の契約に基づくこと が多く,一般に「インデペンデント・コントラク ター」「フリーランサー」「業務委託員」「個人業 務請負」「一人親方」などと呼称される働き方と も重なる。 こうした個人請負の働き方に関して,法的な労 働者保護の観点からはとくに,個人請負の就業者 が,労働法の適用対象となる「労働者」と見なせ るかどうかという「労働者性」のちがいに関心が あてられてきた。すなわち,「業務委託契約」等 の契約にもとづく個人請負の就業者は,あくま で「自営業者」であり,契約上は労働基準法等の 労働法の適用対象となる「労働者」ではない。し かし,働き方の実態が雇用される人と変わらない 場合にも,「業務委託契約」等の契約を結ぶこと で労働法の適用対象外となるのでは,働く人にと り不利となる。そこで,判例では,契約の名称に 関わらず労働法の適用対象となる「労働者」であ るかどうかが実態に即して判断されている(池添 2007;大内・内藤 2010)。 このように契約上の個人請負の就業者に対する 労働法の適用関係の判断が,契約ではなく働き方 の実態における「労働者性」に即して判断される のは,契約上は個人請負として就業している人の 働き方のなかに,明らかに「自営業者」とみなす ことができる働き方から,「労働者」に近い働き 方まで,「労働者性」の異なる多様な働き方が含 まれている実態を踏まえてのことと考えられる。 こうした個人請負の就業機会をどうとらえるか については,実証研究を踏まえた議論が蓄積され てきている。そして,上述のような個人請負の 働き方の多様性を背景として,そうした議論に は,個人請負の就業機会についての評価に関し て,肯定的なものから否定的なものまでが含まれ る(Smeaton 2003)。 このうち肯定的な見方としては,個人請負の働 き方を特定の組織に拘束されない自律的な働き方 として評価するものが典型的と考えられる。例 えば,個人請負の就業者は,自らの技能をもと に複数の組織からの仕事を請け,それらを組み 合わせて生計を立てる「ポートフォリオ労働者 (portfolioworker)」とみなす議論がある(Fraser andGold 2001)。こうした就業者の多くは,プロ フェッショナルであり,学歴も高い。このよう な「ポートフォリオ労働者」が出現する背景とし て,雇用の不安定さが増し,組織の階層が減少し て昇進機会が減るなかで,自営業者として働くこ との魅力が相対的に増してきたことや,仕事と生 活との両立を重視する意識が高まっていることが ある。そして,とりわけ高学歴化した若年層の中 に,組織に拘束されず,自らの運命を自らが切り 開くことを重視する価値観が広がっている可能性 がある。個人請負としての就業機会は,雇用され る働き方とは異なり,そうした働き方やキャリア を実現する選択肢として,働く人に積極的に選ば れているという見方である。 日本においても,こうした見方に対応する事実 が存在することは確かである。個人請負の就業者 の中でもとくに,高度な専門的技能をもち,自律 性の高い「インデペンデント・コントラクター」 に焦点を当てた研究によると,その多くは,学歴 が高く,年収も高い傾向にあり,自らの生活スタ イルに合わせた就業や経験・知識・資格の活用, プロフェッショナルとしての専門的能力の向上な どを動機として積極的に現在の働き方を選択して いるとされる。また,収入の安定性に不満をもつ ものの,他方で自由度の高さや主体的な能力形 成,仕事と生活の両立,やりがいなどの面でのメ リットを認識している(山田 2007)。このような 結果は,個人請負に対する肯定的な見方を支持す るものといえるだろう。 こうした見方とは対照的に,個人請負の就業者 を「周縁化された労働者(marginalizedworker)」 として位置づけ,個人請負という働き方を否定的 にとらえる見解もみられる(Mangan:2000)。こ の見方に従うと,個人請負の働き方は,組織のリ ストラが進む中で希少となった常用雇用の機会を 得られない人により,不本意に選択されたもの である(StanworthandStanworth 1997)。かれら は,必ずしも高度な資格をもつプロフェッショ ナルではない。企業の多くは,コスト削減の戦 略により動機付けられており,個人請負の就業者 の収入は低く抑えられている(Meager,Courtand Moralee 1994)。このほか,ジェンダーの観点か

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らは,女性が個人請負の働き方を選ぶ背景とし て,企業において女性の昇進機会が制限されて いることが指摘されている。また,女性は,家事 や育児の責任を負うために,時間的拘束の少ない 個人請負の働き方を選択せざるをえないとされる (GreenandCohen 1995)1) 日本においても,企業が個人請負を利用する主 な動機が,コストの削減と生産変動への対応に あるとする分析がみられる(周 2006a)。これは, 個人業務請負の活用の進展が,必ずしも,自律的 な働き方のなかで専門的な技能を発揮しようとす る就業者の志向に対応したものではないことを示 唆する。また,失業経験者は,正社員よりも個人 請負としての就業を選択する傾向にあるとされる (周 2006b)。これも,就業機会が限られるなか不 本意に個人請負を選択する人が少なくない可能性 を示すと考えられる。日本でも,個人請負の就業 者に対する「周縁化された労働者」としての位置 づけを支持する実態があると考えられる。 このように個人請負という働き方に対しては, 「ポートフォリオ労働者」と見るか,「周縁化され た労働者」と見るかに関して見解のちがいがみら れる。その背景として,個人請負の働き方は多様 であり,個人請負の就業者の中に,これら 2 つの 就業者像に近い働き方の両者が含まれることがあ る。そして,個人請負の就業者のうちどのような 層に着目するかによって,個人請負という働き方 に対する評価は異なっていると解釈できる。 以上のように,既存研究においては,主とし て,1)個人請負の働き方の自律性など雇用され る働き方との相違や,2)収入の高低,さらに 3) 個人請負の就業者が積極的に現在の働き方を選択 しているかという就業選択の積極性をどう見るか により,個人請負に対する評価が分かれる傾向に あると考えることができる。 本稿では,日本における個人請負の働き方を評 価し,政策的な含意を検討するうえで,とくにこ のうち 1)および 3)の側面に着目することとし たい。 このうち 1)に関して,既存研究においては, 雇用される働き方との相違として着目する特性 として,組織からの自律性の高さ(拘束性の低さ) が重視されている。本稿では,これを踏まえ,さ らに政策的な議論への貢献可能性を重視して,既 に述べた「労働者性」の判断基準を用いて,雇用 される働き方との異同を測ることとする。とく に,「労働者性」の判定において重視される「使 用従属性」に関する判断基準を指標化し,契約 上,個人請負として働く就業者の「労働者性」を 測定することに利用したい。「事業又は事務所 (以下「事業」という。)に使用される者」(労働基 準法第 1 章(総則)9 条)であるかどうかという 「使用従属性」の判定においては,依頼された仕 事の許諾の自由の有無や,時間的・場所的拘束性, 業務遂行に対する具体的指揮監督の有無などが中 心的な要素とされてきた(池添 2007;大内・内藤 2010)。こうした「使用従属性」の基準は,既存 研究が重視してきた,組織からの自律性/拘束性 に関わる要素と重なり合う部分が大きいと考えら れる。 本稿では,もう一つの側面として,上記 3)の 個人請負就業者の就業選択の積極性についても検 討を加えたい。個人請負の就業者に対するセーフ ティネットなどの保護やキャリア形成への支援の 在り方について検討するうえで,個人請負の就業 者本人が,現在の働き方をどうとらえているか が,重要な情報の一つとなりうると考えるためで ある。 先行研究において,このような個人請負の働き 方を選ぶことに関する積極性の高さは,組織から の自律性の高さ(拘束性の低さ)など,雇用され る働き方とは異なる就業者にとって働き方のメ リットと結び付けて議論されている。すなわち, 「ポートフォリオ労働者」の類型に見られるよう に,組織からの拘束性が少ない自律的な働き方と して個人請負としての就業を積極的に選ぶ就業者 像もしくは,「周縁化された労働者」の類型に見 られるように,それらのメリットを得られないに も関わらず非自発的に個人請負の働き方に従事し ている就業者像のいずれかとして,個人請負の働 き方が議論される傾向にあったと考えられる。そ して,働き方の自律性と就業選択の積極性との関 係自体について,十分な検討が行われたわけでは ないと言える。

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しかし,実態がこうした想定どおりかどうか は,必ずしも定かではない。本稿において,「労 働者性(使用従属性)」に着目した場合にも,「労 働者性」の低い就業者のなかに,雇用者への転換 を希望する人がいるかもしれない。反対に「労働 者性」の高い就業者のなかに,個人請負の働き方 の継続を望む層があってもおかしくない。「労働 者性」以外の側面において,就業選択の自発性を 左右する要因がある可能性があるためである。ま た,本人の就業選択においては,望ましい就業条 件を得るうえで,雇用者への転換だけでなく,個 人請負としての就業を継続するなかでそれを実現 していくことも重要な選択肢となりえよう。 法的な枠組みに関する議論において,「労働者 性」の高い個人請負の就業者については,「労働 者性」の実態に即して,契約上も雇用される労働 者に移行させ,労働者保護の適用対象とするとい うのがひとつの考え方であろう。しかし,上記の ように,そうした層においても,個人請負の働き 方を望む就業者が少なくない可能性もある。もし そうだとすれば,政策上は,個人請負就業者の能 力開発に対する支援等を通じて,雇用者への転換 を促すだけではなく,個人請負としての就業継続 のなかで,期待する就業条件の実現を可能にする ことが重要となるはずである。合わせて,法的 な保護の範囲に関する議論においても,「労働者」 と「自営業者」の間に中間的な働き方のカテゴ リーを設け,それに該当する働き方に即した新し い保護のあり方を検討すべきとの議論や,「労働 者」か「自営業者」かという区分に関わらず,働 く人がそのニーズやリスクなどに応じて法的な保 護を受けられるようにすべきという議論の重要性 が高まる可能性もあろう(鎌田 2003;島田 2003; 佐藤 2007)。 このうち就業における支援に関して,既存調査 によると,自営業者では,雇用者と比べ,研修等 の教育訓練を受ける機会が限定される傾向にあ る2)。個人請負就業者についても,自律性が高 く,したがって「労働者性」の低い層では,同様 の実態があるかもしれない。もしそうだとすれ ば,個人請負就業者がより自律性の高い働き方へ の移行をすすめる際に,能力開発の機会が制約さ れてしまう可能性がある。働き方との関係で,個 人請負就業者の能力開発の現状を把握し,政策的 な支援について検討することが重要と考える。 本稿では,以上のような問題関心から,個人請 負の就業者を対象とする個人アンケート調査の データを用い,①個人請負就業者の「労働者性」 の程度の多様性について確認したうえで,②個人 請負就業者の「労働者性」と就業形態の選択(個 人請負としての就業継続か雇用者への転換か)に関 する意識との関係について分析することとした い。さらに②の分析を踏まえ,③働き方に関する 希望に応じたキャリア形成を可能にする条件の一 つとして,個人請負就業者における教育訓練の機 会について合わせて明らかにしてみたい。 本稿で用いるデータは,厚生労働省の委託研究 (株式会社インテージ:2012)のために実施された, 個人請負就業者等を対象とする個人アンケート調 査(インターネットモニター調査)の個票データで ある3)。調査は「営業・販売」「理容・美容」「軽 貨物運送」の職種を対象としている。本稿では, このうち,個人請負の就業がみられる典型的な職 種として「営業・販売」職の個人請負就業者に焦 点を当て,同職種に限定して分析を行うこととす る。 自営業者の中でも個人請負就業者についてはマ クロ統計がないため正確な職種の構成を把握でき ない。ただし,求人情報誌および求人サイトの調 査では,営業・販売職は,最も個人請負就業の求 人件数が多い職種であることから,個人請負の就 業者の多い典型的な職種のひとつと考えることが できる(厚生労働省政策統括官 2010)4)。もちろん 個人請負就業者の中でも,職種により「労働者 性」の実態や就業意識は多様である可能性もあ る。この点は,今後,他の職種についての調査・ 分析を通じて検討していく必要があろう。 営業・販売職の自営業者には,個人請負の就業 者以外に,従業員を雇用して店舗を営む自営業者 や,フランチャイズ店のオーナー,代理店の経営 者等が含まれる。これらの自営業者のなかにも, 「労働者性」の高い就業者が含まれる可能性があ る。しかし,本稿においては,これらの自営業者 は対象とせず,あくまで個人請負就業者として,

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業務委託・請負契約等の契約にもとづき企業から 仕事を請け負い,自らは人を雇わずに自営業者と して就業する者に限定して分析と検討を行うこと としたい5)

Ⅱ 個人請負就業者の「労働者性」

本稿では,個人請負就業者の「労働者性」と就 業意識との関係を分析するうえで,労働者性に関 する指標を作成し,個人請負就業者の労働者性を 把握する。労働者性の指標を作成する基準として は,先行する学説や裁判例等を踏まえて整理さ れた,昭和 60 年の労働省労働基準法研究会報告 「労働基準法の『労働者』の判断基準について」 の基準を参考とした。そして,選択した基準に対 応する個人アンケート調査の項目から労働者性 (使用従属性)の高低を示す指標を作成する。この ような試みを行った先行研究として,三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(2008)がある。本 稿で用いる個人アンケート調査の調査票は,この 先行調査を改訂したものである6)。表 1 は,上記 報告を踏まえた労働者性(使用従属性)の判定基 準とそれぞれに対応する両調査のアンケート項目 との関係を一覧にしたものである。 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(2008) においては,本稿の分析に用いる調査と異なり, 「営業・販売」「情報処理技術者」「デザイナー・ カメラマン」「出版・マスコミ職」の 4 職種につ いて,個人請負就業者(調査では「業務委託契約 者」7)だけでなく同じ職種に従事する雇用者(調 査では「社員」)に対しても基本的に同じ内容の設 問で調査を実施しており,同様の職種で働く雇用 者との比較から,個人請負就業者の労働者性の特 徴を把握することが可能となっている。 図 1 は,個人請負就業者と雇用者とのあいだ で,労働者性(使用従属性)の指標の得点を比較 した結果を引用したものである。指標の作成方法 から,得点が高いほど労働者性が高い。 図 1 からは,同じ職種に従事する個人請負就業 者と雇用者とのあいだで,労働者性(使用従属性) の指標の得点分布に重なりがあることが確認でき る。全体の傾向としては,個人請負の就業者のほ うが,労働者性は低い。しかし,個人請負就業者 の中にも,雇用者より労働者性が高い人がいる一 方で,雇用者の中にも個人請負の就業者より労働 者性が低い人がいる。個人請負就業者と雇用者と のあいだで,労働者性の程度が重なる層があるこ とが分かる。 表 1 労働基準法の『労働者』の判断基準における「使用従属性」の基準とアンケート調査項目との関係 労働基準法の『労働者』の判断基準 「使用従属性」 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(2008) 本研究 ①仕事の諾否の自由の有無 発注される仕事を「断れない」 自分のスケジュール等の都合で取引先からの 業務依頼を断ることが「まったくない」ない し「ほとんどない」(該当:60.3%) ②時間的・場所的拘束性 (時間的拘束)毎日決まった場所に出社する 必要が「ある」 (時間的拘束)「指定された曜日・時間に出社」「曜日のみ指定」「時間のみ指定」のいずれか (該当 :40.3%) (場所的拘束)仕事場所が「取引先の事業所, 取引先等が指定する事業所,営業や顧客回り」 (社員調査では「会社,会社が指定する事業所, 営業や顧客回り」) (場所的拘束)仕事場所が「事業場内」ない し「事業場以外で,会社の指定する場所」(該 当:45.1%) ③業務遂行に対する具体的指揮監督 の有無 仕事の進め方について,「取引先からすべて細かく指示がある」(社員調査では「上司か らすべて細かく指示がある」) 仕事の進め方について「常に会社の指示を受 けることが必要」「会社の指示を適宜受ける 必要があり」「会社への定期的な報告は必要」 のいずれか(該当:34.5%) ④通常予定されている以外の業務へ の従事 (除外) 取引先から予定されていた業務(契約内容)以外の業務を依頼されることが「よくある」 ないし「たまにある」(該当:55.6%) ⑤労務提供の代替性の有無 (除外) 取引先から引き受けた業務の全部または一部 を「他者に行わせることはできない」(該当: 48.4%) ⑥報酬の支払方法 報酬の算定に用いられる主な要素が「業務に 要した時間に応じて」 報酬において「業務に要した時間に応じて」決まる部分がある(該当:18.9%) 資料出所:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(2008) 注:1)「該当」の比率は,本研究の集計対象における比率である。   2)いずれの研究も,それぞれ図表に示した選択肢を選んだ場合に 1 点,選ばない場合に 0 点を与え,その合計点で労働者性(使用従属性)の 程度を測定している。三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(2008)の指標は 0 ~ 5 点,本研究の指標では 0 ~ 7 点の値をとる。いずれも, 得点が高いほど労働者性(使用従属性)は高い。

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もちろん労働者性の指標の選択や各指標の配点 の仕方により,分布は異なりうる。とはいえ,集 計結果からは,個人請負就業者のなかに,労働者 性(使用従属性)の程度に関して雇用者と同様の 働き方に従事する層があることが分かる。 本研究においても,労働者性を測定するうえ で,表 1 で示したかたちで労働者性(使用従属性) に関する指標を作成する8)。今回の調査における 営業・販売職の個人請負就業者について,労働者 性の得点の分布は図 2 のようである。営業・販売 職の個人請負就業者の中に,労働者性において多 様な働き方に従事する層が含まれることが確認で きる。図 1 で確認したように,個人請負就業者と 雇用者とのあいだで労働者性の得点の分布が重 なっていることを踏まえると,本研究の対象とし た労働者性の高い層の個人請負就業者の中にも, 労働者性(使用従属性)に関して雇用者と同様の 働き方に従事する者が含まれると考えられる。 以下の分析において,労働者性と就業意識等と の関係を見るうえでは,この労働者性(使用従属 性)の得点にもとづき,個人請負の就業者を「労 働者性低」(0 ~ 2 点)「労働者性中」(3 点)「労働 者性高」(4 ~ 7 点)の 3 グループに分けて集計を 行うこととしたい。

Ⅲ 個人請負就業者の「労働者性」と就

業意識

 1 個人請負としての就業を選択する理由 個人請負の就業者は,現在の働き方をどうのよ うに選択しているのか。既にみた「ポートフォリ オ労働者」としての就業者像に見られるように, 個人請負という働き方を,雇われて働く働き方よ 38. 2 34. 6 16. 7 8. 3 2. 1 0. 1 0. 8 1. 8 14. 1 61. 6 19. 2 2. 6 0 10 20 30 40 50 60 70 % 0点 1点 2点 3点 4点 5点 業務委託契約者 社員 2. 1 11. 1 23. 2 29. 0 19. 3 10. 9 3. 6 0. 7 0 5 10 15 20 25 30 35 % 0点 1点 2点 3点 4点 5点 6点 7点 図 1 「業務委託契約者」と「社員」の労働者性(使用従属性)の得点分布 図 2 個人請負就業者の労働者性(使用従属性)の得点分布 N=944 名 注:業務委託契約者 N=1069 名,社員 N=625 名 資料出所:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(2008) 注:「労働者性(使用従属性)」の指標の作成方法は,表 1 を参照。

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りも魅力的な選択肢として,積極的に選んでいる のか(FraserandGold 2001)。あるいは,「周縁化 された労働者」としての就業者像のように,雇用 者としての就業機会が少ないなか,現在の働き方 を不本意に選択しているのだろうか(Stanworth andStanworth 1997)。 これに関して,表 2 は,労働者性の異なる層ご とに,個人請負としての就業理由(「現在の働き方 を選んだ理由」)について集計したものである。ま ず,全体についての集計結果を見ると,「自分の 能力・スキルを活かせるから」「仕事の時間帯を 自分で決められるから」「自宅など自分が望む場 所で仕事ができるから」などが主な理由として指 摘されている。そして,「正社員になれないから」 という消極的な理由をあげる回答者は 1 割未満と ごく少ない。 こうした結果は,個人請負就業者の多くが,不 本意に現在の働き方を選択しているというより は,自らの技能の活用や,就業時間や就業場所の 選択に関する裁量の大きさ等を重視して,現在の 働き方を積極的に選択していることを示すと解釈 できよう。本人の就業形態の選択に関する意識に 着目するかぎり,「ポートフォリオ労働者」の就 業者像が妥当しそうである。 ただし,労働者性と就業選択の理由との関係を 見ると,労働者性が高い層ほど,とくに「仕事の 時間帯を自分で決められるから」「自宅など自分 が望む場所で仕事ができるから」といった積極的 な就業理由をあげる割合は低く,「正社員になれ ないから」という不本意就業を示唆する理由を指 摘する割合が高い傾向にある。 個人請負就業者のなかでも,労働者性が高い層 は,就業時間や就業場所の選択に関して裁量が小 さい。そのため,集計結果のように,労働者性の 高い層では,これらの裁量の大きさを就業理由と して選択する割合が低くなっているのだと考えら れる。上で見たように,就業時間や就業場所に関 する裁量の大きさは,個人請負の就業を選択する ことの主な理由となっている。したがって,その 裁量が小さいことは,就業者にとって,個人請負 の働き方を選ぶことの利点を小さくしているはず である。これに対応して,労働者性の高い個人請 負就業者では,比率自体は 11. 3%とそれほど高く ないものの,正社員の就業機会がないからという 不本意な就業理由をあげる割合がより高くなって いると解釈できる。  2 個人請負の働き方に関する満足度 もちろん,こうした就業選択時の評価は,実際 に個人請負の就業を行うなかでの働き方に対する 評価と異なる可能性もある。労働時間や就業場所 の選択に関する裁量以外の側面も含め,個人請負 就業者は,現在の働き方をどのように評価してい るだろうか。 表 3 は,労働者性の程度別に,現在の働き方の 各側面に関する評価および働き方全体についての 評価を得点化し集計したものである。満足度が高 いほど,得点の平均値は高くなる。分散分析から 統計的に有意な関係が見られた項目としては,ま ず「収入・報酬の安定度合い」について,とくに 労働者性が低い層で満足度が低い。これに対し, 「仕事のやりがい」「仕事の裁量度合い」「労働時 表 2 労働者性の程度別,個人請負就業の選択理由(複数回答) N=944 名 (単位:%) 自分の能 力・スキ ルを活か せるから 仕事の時 間帯を自 分で決め られるか ら 少ない労 働時間で も仕事が できるか ら 仕事以外 の自分の やりたい ことに時 間を割け るから 自宅など 自分が望 む場所で 仕事がで きるから お金を多 く稼ぐこ とができ るから 正社員に なれない から 職場の上 下 関 係・ 人間関係 に煩わさ れたくな いから 育児との 両立をし たいから 介護との 両立が必 要だから その他 度数 労働者性低 (0 ~ 2 点) 55. 5 51. 2 18. 9 18. 3 41. 3 18. 3 5. 2 14. 2 3. 8 2. 9 2. 0 344 労働者性中 (3 点) 58. 0 43. 4 20. 8 20. 1 32. 1 19. 7 8. 0 13. 9 2. 9 1. 8 1. 1 274 労働者性高 (4 ~ 7 点) 51. 8 32. 8 19. 9 15. 6 24. 8 23. 6 11. 3 16. 0 4. 3 2. 5 3. 7 326 全体 55. 0 42. 6 19. 8 17. 9 32. 9 20. 6 8. 2 14. 7 3. 7 2. 4 2. 3 944 注:設問は,「あなたが,現在の働き方を選んだ理由として当てはまるものをお選びください」

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間」「自由に使える時間,休日」「仕事に関わる能 力や知識を高める機会」については,労働者性が 低いほど,満足度が高い傾向にある。そして,分 散分析からは統計的に有意な関係は見られないも のの,「労働者性低」や「労働者性中」と比べ, 「労働者性高」では「全体として」の満足度は低 い傾向にある9) 個人請負就業者の中でも,労働者性の高い層 は,就業時間に対応した報酬が得られる分,報酬 の安定性に対する満足度が高い傾向にあると考え られる。他方で,労働者性の低い層ほど,就業時 間の決定や仕事の進め方に関して裁量が大きいた め,これらの項目に関して満足度が高く,また仕 事からの内在的報酬(「やりがい」)も高まる傾向 にあることが読みとれる。能力開発に関しては, 後節で分析するように,労働者性の低い層で,取 引先等から教育訓練を受ける機会が大きいわけで はない。しかし,その分,自ら能力開発に取り組 む傾向にある10)。その効果のほか,自ら能力開 発に取り組むことに伴う充実感から,能力開発 の機会に関する満足度が高まっている可能性があ る11) このように,労働者性が低い層ほど,報酬の安 定性に不満を持つ傾向にあるものの,就業時間や 仕事上の裁量等に関して満足度が高い傾向にあ る。その結果として,働き方全体に対する総合的 な満足度は,労働者性が高い層で最も低くなって いる。こうした現状からは,労働者性(使用従属 性)に関わる要素である,就業時間の決定や仕事 の進め方に関する裁量の大きさが,個人請負の働 き方に対する評価を左右する要因となっているこ とが読みとれる。  3 今後の就業形態についての希望 以上のように,個人請負就業者の多くは,不本 意に現在の働き方を選択しているというよりは, 自らの技能の活用や,就業時間や就業場所の選択 に関する裁量の大きさなどを重視して,現在の働 き方を積極的に選んでいると考えられる。ただ し,労働者性の高い層ほど,就業時間や就業場所 の選択に関する利点を得ることは難しくなる。ま た,現状の評価においても,労働者性が高い層ほ ど,就業時間の選択や仕事上の裁量に関する満足 度は低い。そのため労働者性が高い層では,働き 方の現状に対して満足度が低い傾向にある。 このような現状に対する評価は,個人請負就業 者の今後の就業選択に関する志向に,どのように 反映されているだろうか。労働者性の高い個人請 負就業者は,先行研究が示唆するように,やは り不本意に現在の働き方に従事しており,機会さ えあれば雇用者への転換を望んでいるのだろうか (StanworthandStanworth1997)。 これに関して,表 4 は,労働者性の程度別に, 今後(「これから 5 ~ 6 年先」)の就業形態に関す る希望について集計したものである。労働者性の 低い層ほど「できるだけ長く,雇用されない立場 での仕事を続けたい」とする割合が高く,他方で 労働者性が高い層ほど「機会があれば雇用される 表 3 労働者の程度別,就業満足度得点 N=944 名 (単位:点) 収 入・ 報 酬 額 の 多 さ 収 入・ 報 酬 の 安 定 度合い ** 仕 事 上 の 責任 仕 事 の やりがい *** 仕 事 の 裁 量 度 合 い  *** 労 働 時 間 ** 自 由 に 使 え る 時 間,休日 *** 仕 事 に 関 わ る 能 力 や 知 識 を 高 め る 機 会 *** 一 緒 に 働 く 人 と の 人間関係 全 体 と し て 度数 労働者性低 (0 ~ 2 点) -0. 468 -0. 660 0. 346 0. 596 0. 468 0. 375 0. 581 0. 413 0. 302 0. 253 344 労働者性中 (3 点) -0. 350 -0. 438 0. 332 0. 580 0. 365 0. 296 0. 489 0. 350 0. 343 0. 329 274 労働者性高 (4 ~ 7 点) -0. 488 -0. 586 0. 282 0. 377 0. 212 0. 178 0. 350 0. 178 0. 239 0. 221 326 全体 -0. 441 -0. 570 0. 320 0. 516 0. 350 0. 284 0. 475 0. 314 0. 292 0. 264 944 注:1)値は,「大いに満足している」× 2 点+「やや満足している」× 1 点+「どちらともいえない」× 0 点+「やや不満である」×(-1)点+ 大いに不満である×(-2)点として算出した得点の平均値。   2)***は 1 %水準有意,**は 5 %水準有意,*は 10 %水準有意(分散分析にもとづく)。   3)設問は,「現在の働き方に関し以下の点についてあなたはどの程度満足していますか」。

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立場で働きたい」とする割合が高い。労働者性 の低い層ほど,個人請負としての就業継続を希望 し,労働者性の高い層ほど,雇用者へ転換したい と考える傾向にあることが確認できる。この限り では,上記の先行研究の想定があてはまると言え る。 しかし重要な点は,労働者性の高い層におい ても,「雇用されない立場」での就業継続を希望 する割合が最も高く約 5 割(47. 5%)を占め,他 方で,雇用者への転換を希望する割合は 2 割程度 (22. 4%)に留まることである。また,労働者性の 高い層ほど,「起業したい」とする割合も高く, 「労働者性高」では 2 割弱(18. 1%)を占める。「起 業」を通じ,より自律性の高い自営業者としての 働き方を目指しているものと考えられる12) このように,労働者性の高い層においても,雇 用者への転換ではなく,個人請負を含めて自営業 者としての就業継続を希望している割合が高い。 もちろん,こうした比率は,調査対象とするサン プルの取り方により変わってくる可能性も否定で きない。とはいえ,集計結果から,労働者性の高 い個人請負就業者のなかにも,雇用者への転換だ けでなく,自営業者としての就業継続を希望する 層が少なからず含まれることは確かと考えられ る。この点は,先行研究の想定と異なると考える ことができる。 その理由について解釈するため,表 5 は,労働 者性の高い就業者について,自営業者としての就 業継続を希望する層(「自立志向」)と,雇用者へ の転換を希望する層(「雇用志向」)とに分け,個 人請負の働き方の選択理由について集計したもの である13) 集計から,労働者性の高い個人請負就業者の中 でも,自営業者としての就業継続を希望する層で は,雇用者への転換を希望する層と比べて,就業 時間や就業場所の選択に関する裁量の高さといっ た労働者性の低さに関わる利点のほか,労働者性 に直接かかわらない,自らの技能の活用可能性 や,収入の高さ,職場の人間関係による制約の低 さに関する利点を指摘する割合が高い。これらの 利点は,労働者性の高い個人請負就業者が,現在 の働き方の継続を志向する要因となっていると解 釈できる。 このうち,時間帯や場所の決定に関する裁量 表 4 労働者性の程度別,今後の就業形態に関する志向 N=944 名 (単位:%) できるだけ長 く,雇用され ない立場での 仕事を続けた い 機会があれば 雇用される立 場で働くよう になりたい 起業したい 働くこと自体 をやめたい その他 合計 度数 労働者性低(0 ~ 2 点) 63. 1 13. 1 13. 1 9. 0 1. 7 100. 0 344 労働者性中(3 点) 57. 7 15. 3 14. 6 9. 5 2. 9 100. 0 274 労働者性高(4 ~ 7 点) 47. 5 22. 4 18. 1 10. 7 1. 2 100. 0 326 全体 56. 1 16. 9 15. 3 9. 7 1. 9 100. 0 944 注:設問は,「あなたは,これから 5 ~ 6 年先,今の仕事や働き方を続けていこうと考えていますか」 表 5 労働者性の高い就業者における,今後の就業形態に関する志向別,就業選択理由(複数回答) N=326 名 (単位:%) 自分の能 力・スキ ルを活か せるから 仕事の時 間帯を自 分で決め られるか ら 少ない労 働時間で も仕事が できるか ら 仕事以外 の自分の やりたい ことに時 間を割け るから 自宅など 自分が望 む場所で 仕事がで きるから お金を多 く稼ぐこ とができ るから 正社員に なれない から 職場の上 下関係・ 人間関係 に煩わさ れたくな いから 育児との 両立をし たいから 介護との 両立が必 要だから その他 度数 自立志向 55. 6 37. 4 21. 0 15. 4 28. 0 25. 2 7. 5 19. 6 5. 1 2. 3 2. 3 214 雇用志向 39. 7 23. 3 21. 9 17. 8 19. 2 17. 8 26. 0 5. 5 4. 1 4. 1 2. 7 73 「労働者性高」 全体 51. 8 32. 8 19. 9 15. 6 24. 8 23. 6 11. 3 16. 0 4. 3 2. 5 3. 7 326 注:1)「労働者性高」の回答者についてのみ集計している。   2)「自立志向」は今後の就業形態に関する希望として「できるだけ,長く今の雇用されない立場での仕事を続けていきたい」ないし「起業したい」 とした回答者,「雇用志向」は「機会があれば雇用される立場で働きたい」とした回答者である。   3)「労働者性高」全体には,今後の就業選択に関する希望について「働くこと自体をやめたい」「その他」とした回答者も含む。

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は,個人請負としての就業継続のなかでも,より 労働者性の低い働き方へと移行することで高める ことができる。そのようにして期待する就業条件 を実現していくことは,労働者性の高い個人請負 就業者にとり,今後のキャリアにおける重要な選 択肢となっていると考えられる。このことは,現 時点で労働者性がより低い個人請負就業者につい てもあてはまろう。 もちろん他方で,同じ表 5 から,労働者性が高 く,雇用者への転換を希望する層では,個人請負 としての現在の働き方を選択した理由として「正 社員になれないから」という理由をあげる割合が 高い(26. 0%)ことへの留意も必要である14)。こ うした層は,本人の希望としても,自営業者では なく雇用者として処遇されることで,労働者とし ての法的保護の適用を期待していると考えること ができる。

Ⅳ 個人請負就業者の「労働者性」と教

育訓練機会

前節で確認したように,個人請負就業者にとっ て,個人請負としての就業継続は,今後のキャリ アにおける重要な選択肢となっている。そのなか で,就業時間や就業場所の決定,仕事の進め方等 に関する裁量を高めるなど,労働者性のより低い 働き方に移行することは,就業者にとり,働き方 の魅力を高めることにつながると考えられる。 しかし,Ⅰで指摘したように,個人請負就業者 が,そのようにして自営業者としての性格を強め ることは,Off-JT15)としての教育訓練の機会を 減少させる可能性がある。すなわち,個人請負就 業者の中でも労働者性が高い層に対しては,取引 先が,自社の雇用者と同様に研修に参加させるな どして,教育訓練の機会を提供することが十分に 考えられる。これに対し,労働者性の低い個人請 負就業者に対しては,そうした教育訓練の機会が 限定されがちとなろう。そして,このような関係 が実際にあるとすれば,個人請負就業者が,自律 的な働き方を目指して,労働者性を低くする方向 でキャリア形成をはかるのに伴い Off-JT として 教育訓練を受ける機会が減少する可能性がある。 実際に,労働者性と Off-JT の機会とのあいだ には,こうした関係が見られるだろうか。この点 を確かめるため,表 6 は,労働者性の程度別に, 請負元である取引先からの教育訓練機会の提供状 況について,集計したものである。労働者性が高 い層ほど,取引先から,商品・サービス等の説明 のほか,自社社員向けの講習会や勉強会等に参加 する機会の提供を受けるかたちで,Off-JT の機会 を得ていることが分かる。 もちろん,このように取引先から教育訓練の提 供を受ける機会は,個人請負就業者の労働者性の 程度だけでなく,年齢や経験,年収など,技能の 水準に関わる個人属性のほか,就業時間の長短 や,取引先との関係や取引先の規模によっても左 右されよう。 年齢が高いほど,個人請負就業の経験が長いほ ど,年収が高いほど,本人の技能水準は既に高 く,Off-JT を受ける必要性が小さいかもしれな い。また,就業時間が短い場合には,教育訓練投 資の回収に時間がかかるため,取引先が Off-JT を提供しない可能性がある。取引先との関係に関 しては,取引期間が短い場合や,取引先に個人請 表 6 労働者性の程度別,取引先から提供された教育訓練の内容(複数回答) N=944 名 (単位:%) 業務委託を結 ぶ際に商品や サービス等に ついて説明 社内外の講習 会等への参加 の機会 社員向け勉強 会への参加の 機会 公的資格等取 得のための講 座受講や通信 講座への援助 自己啓発への 時間的もしく は金銭的援助 その他 特にない 度数 労働者性低 (0 ~ 2 点) 16. 9 6. 7 6. 7 1. 5 2. 9 0. 3 76. 7 344 労働者性中 (3 点) 17. 9 10. 9 6. 9 2. 9 4. 0 0. 0 68. 2 274 労働者性高 (4 ~ 7 点) 22. 1 18. 4 13. 8 3. 1 5. 5 0. 3 61. 3 326 全体 19. 0 12. 0 9. 2 2. 4 4. 1 0. 2 69. 0 944 注:設問は,「あなたは『取引先』からどのような教育訓練の機会等を提供してもらっていますか」

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負就業者が専属していない(取引先が 1 社でない) 場合に,Off-JT が控えられることが考えられる。 このほか,従業員規模が小さい取引先では,研修 の体系等が整備されておらず,そのために Off-JT による教育訓練の実施が難しいかもしれない。そ して,これらの条件のいくつかは,労働者性が低 い就業者ほど,あてはまる可能性もある。すなわ ち,労働者性が低い個人請負就業者ほど,自律的 な働き方が可能な背景として技能水準が高く,ま た,取引先からの自律性が高いため,特定の取引 先との取引期間は短く,専属性の程度が低い可能 性があろう16) そこで,これらの条件をコントロールすること で,取引先からの Off-JT の提供の有無に対する, 働き方の面での労働者性のより直接的な影響につ いて検証することとした。表 7 は,ロジスティッ ク回帰分析により,取引先からの Off-JT の有無 に関する変数を作成し,これに対して労働者性の 高さが影響を与えるかどうかについて推計したも のである17)。上記の検討にもとづき,コントロー ル変数として,基本的な個人属性のほか,個人請 負としての就業期間,週の就業時間,取引先の 数,取引先との取引期間,取引先の従業員規模を 選択した。 推計結果から,取引先による Off-JT の実施に 影響を与えると考えられる諸条件の影響をコント ロールしても,労働者性が高い個人請負就業者ほ ど,統計的に有意に,取引先から教育訓練の提供 を受ける傾向にあることが確認できた(有意水準 1%)。 このほか,年収が 600 万円以上の個人請負就業 者では,年収 300 万円未満の就業者と比べて,統 計的に有意に教育訓練を受ける傾向にある(有意 水準 5%)。年収の高い販売・営業職の就業者では, 取引先からOff-JTを受けることが多いと言える。 Off-JT の効果が年収の高さに反映されている可能 性もあろう。 また,有意水準は 10%と高いものの,個人請 負としての就業期間が長いほど,Off-JT を受ける ことが少ない傾向にある。上で検討したように, 個人請負の就業期間が長いほど,技能の水準が高 く,あらためて Off-JT を行う必要性が低いため と解釈できる。 さらに,取引先が 1 社の個人請負就業者では, 統計的に有意に Off-JT を受ける傾向にある(有 意水準 1%)。取引先としては,自社とのみ取引関 係にある就業者に対しては,教育訓練投資の回収 の機会が多くなるため,Off-JT を実施する傾向に 表 7 取引先から Off-JT を受けることの規定要因(ロジスティック回帰分析) N=856 名 取引先から Off-JT を受けている B Wald 労働者性(使用従属性)  0. 186 11. 296 *** 女性  0. 354 2. 302 (中卒・高卒) 短大・高専卒 - 0. 564 2. 429 専門学校卒  0. 241 1. 047 大学・大学院卒  0. 009 0. 002 20 代・30 代 - 0. 053 0. 057 (40 代) 50 代・60 代  0. 063 0. 127 年収 600 万円以上  0. 482 5. 055 ** 年収 300 万円以上 600 万円未満  0. 054 0. 080 (年収 300 万円未満) 1 週間の就業時間 60 時間以上 - 0. 009 0. 002 1 週間の就業時間 40 時間以上 60 時間未満  0. 042 0. 057 (1 週間の就業時間 40 時間未満) 個人請負としての就業期間 - 0. 001 3. 330 * 取引先数 1 社のみ  0. 668 16. 842 *** 主な取引先からの仕事を得ている期間 1 年以内 - 0. 230 1. 272 主な取引先従業員数 30 名未満 - 0. 608 15. 885 *** 定数 - 1. 225 14. 382 *** NagelkerkeR2 乗 =0.099χ 2=63.157*** 注:***は 1 %水準有意,**は 5 %水準有意,*は 10 %水準有意。

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あるものと解釈できる。 以上のように,個人請負就業者の中でも,労働 者性が高いほど,取引先から Off-JT を受ける傾 向にあることが分かる。したがって,個人請負就 業者が,より自律的な働き方を目指して,労働 者性を低くする方向でキャリア形成をはかること は,取引先から Off-JT を受ける機会を小さくす ることになる。このほか,そうしたキャリア形成 の過程で,複数の取引先と取引を結ぶようになる ことも,Off-JTの機会を小さくすると考えられる。 もちろん,取引先による Off-JT の機会が小さ くても,それに代えて,他の手段で能力開発を 行う機会が増えるとすれば,能力開発の機会は 確保されることになる。そこで,表 8 は,取引先 からの教育訓練の提供の有無と,技能習得の方 法(「今の仕事に必要なスキル」をどこで得たか)と の関係について見たものである。集計からは,取 引先から教育訓練を受けていない層では,「『取引 先』での研修」だけでなく,「今の仕事を通じて」 や「同業者との情報交換で」能力開発を行ってい る割合もむしろ低い。 これと表 6 および表 7 の結果と合わせて考える と,労働者性の低い層では,取引先からの Off-JT を受ける機会が小さく,しかも,仕事経験や同業 者との交流等をつうじた能力開発の機会が,それ を補完しているとは言えない。労働者性の低い個 人請負就業者では,取引先の雇用者や個人請負就 業者等との協働関係のなかで OJT を受ける機会 も少ない可能性があろう18) 表 8 を見ると,取引先から Off-JT を受けてい ない個人請負就業者では,「自分で勉強して」能 力開発を行う割合が高い。労働者性の低い層の個 人請負就業者では,Off-JT の機会が小さい分,自 己啓発のかたちで能力開発の機会が確保される傾 向にあることが分かる19) 自営業者の自己啓発に関する先行研究を踏まえ ると,その内容としては,自主学習のほか,各種 の講習や勉強会・交流会等への参加,通信教育の 受講などが含まれると考えられる(労働政策研究・ 研修機構 2006)。個人請負就業者の就業希望に即 したキャリア形成を促すうえでは,このような自 己啓発に対する支援が重要となろう。例えば,個 人請負就業者を含め自営業者が受講できる公的な 教育訓練の充実化や,公的ないし社会的資格の整 備,教育訓練の機会に関する情報提供,自己啓発 に伴う費用負担軽減のための仕組みの整備などが 考えられる。

Ⅴ ま と め

本稿では,個人請負就業者への個人アンケート 調査の個票データを用いて,個人請負就業者の労 働者性(使用従属性)と,就業形態の選択に関す る意識,能力開発の機会に関して分析した。分析 結果をまとめると,以下の(1)~(3)のようにな る。 (1)昭和 60 年の労働省労働基準法研究会報告 「労働基準法の『労働者』の判断基準について」 の基準を踏まえて労働者性(使用従属性)に関す る指標を作成し,個人請負就業者の労働者性の程 度を測定した。その結果,営業・販売職の個人請 負就業者のなかに,労働者性において多様な働き 方に従事する層が含まれることが確認された。こ のうち労働者性が高い層の個人請負就業者は,労 働者性の点で,雇用者と同様の働き方をしている 可能性がある。 表 8 取引先からの Off-JT の有無別,技能習得の方法(複数回答) N=944 名 (単位:%) 過去の社会 人経験で 今の仕事を通じて 同業者との情報交換で 自分で勉強して 専門学校や職業訓練校 に通って 「 取 引 先 」 での研修で その他 度数 取引先から Off-JT を 受けている 60. 8 56. 0 19. 5 43. 7 8. 2 12. 3 0. 0 293 取引先から Off-JT を 受けていない 59. 3 42. 5 15. 4 49. 3 7. 5 2. 2 0. 6 651 全体 59. 7 46. 7 16. 6 47. 6 7. 7 5. 3 0. 4 944 注:設問は,「今の仕事に必要なスキルはどこで身につけましたか」

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(2)このように作成した労働者性の指標にもと づき,個人請負就業者を労働者性と就業意識との 関係について分析した。 (i)個人請負の働き方を選択した理由に関する 分析からは,個人請負就業者の多くが,技能の活 用や,就業時間や就業場所の選択に関する裁量を 重視して,現在の働き方を積極的に選択している と考えられる。ただし,労働者性が高い個人請負 就業者では,就業時間や就業場所の選択に関する 裁量が小さく,それらを就業選択の理由とする割 合は低い。その分,個人請負として就業すること の利点は小さいと考えられる。 (ii)就業満足度に関する分析によると,労働 者性が低い個人請負就業者ほど,報酬の安定性に ついては満足度が低い反面,就業時間の選択や仕 事上の裁量等に関して満足度が高い。結果とし て,労働者性の高い就業者で働き方全体に対する 総合的な満足度は最も低い傾向にある。労働者性 の高い個人請負就業者では,就業時間の決定や仕 事の進め方に関する裁量は小さく,そのことが働 き方全体に対する満足度を低くしている可能性が ある。 (iii)こうした現状評価を反映して,労働者性 の低い個人請負就業者ほど,個人請負としての就 業継続を希望し,労働者性の高い個人請負就業者 ほど,雇用者への転換を希望する傾向にある。と はいえ,労働者性の高い個人請負就業者でも,比 率としては,雇用者への転換ではなく,個人請負 としての就業継続を希望する割合が高い。個人請 負就業者にとって,個人請負としての就業継続 は,今後のキャリアにおける重要な選択肢となっ ていると言える。上記(i)(ii)の分析結果も踏 まえると,個人請負としての就業を継続するなか で,より労働者性の低い働き方に移行すること は,就業者にとり,働き方の魅力を高めることに つながると考えられる。 (3)しかし,個人請負就業者の能力開発機会に ついて見ると,労働者性が低いほど,取引先から Off-JT を受ける機会は小さい傾向にある。そのた め,個人請負就業者が,期待する就業条件の実現 を目指して,より労働者性の低い働き方へと移行 するのに伴い,Off-JT の機会が減少する可能性 がある。こうしたなか,労働者性の低い個人請負 就業者は,自己啓発への取り組みをつうじて,能 力開発の機会を確保している。このような自己啓 発に対する政策的な支援は,個人請負就業者にと り,能力開発の機会確保を容易にし,個人請負就 業をつうじて期待される就業条件を実現すること に貢献すると考えられる。 上記(2)で確認したように,個人請負就業者 の多くは,就業の時間や場所,仕事の進め方の裁 量の大きさ等の点で,現在の働き方を肯定的に 評価している。そして,労働者性の高い層も含 め,個人請負の働き方を続けるなかで自律的な働 き方を実現していくことは,キャリアの重要な選 択肢となっている。個人請負の働き方が広がるな か,自己啓発への支援等をつうじ,そうした個人 請負就業者としてのキャリア形成を支援すること は,重要な政策的課題となりえよう。また,合わ せて,労働者性の低い層も含めた個人請負就業者 に対する法的な保護についても検討の余地があろ う。もちろん,他方で,労働者性の高い個人請負 就業者を中心に,雇用者への転換を希望する人が 少なくないことも事実である。こうした層に対し ては,雇用者への転換を促す措置も重要となる。 本稿の分析から,個人請負就業者において,労働 者性(使用従属性)だけでは説明しきれない,就 業選択に関する志向の多様性が確認できた。そう した就業志向の多様性に対応できるような施策の 検討が求められる。  1) ただし,この点は,個人請負の働き方が,ワークライフバ ランスの実現を容易にする働き方であることに着目して,肯 定的に評価することもできよう。個人請負就業者のみを対象 としたものではないが,新規開業後の自営業者を対象とした 調査によれば,新規開業に伴い,雇用されていたときと比べ て,就業時間に関する裁量が高まったり,仕事の充実感が高 まったりしており,自営業者としての働き方が,ワークライ フバランスの実現に貢献する可能性がある(日本政策金融公 庫総合研究所 2010)。  2) たとえば,データは示さないが東京大学社会科学研究所の 社研パネル調査(「働き方とライフスタイルの変化に関する 全国調査」2007 年から 2011 年,毎年調査)を利用して,「教 育訓練を受ける機会がある」と「仕事を通じて職業能力を高 める機会がある」に関する回答者の評価(「かなりあてはま る」「ある程度あてはまる」「あまりあてはまらない」「あて はまらない」の 4 つの選択肢)を「正社員」と「自営業主・ 自由業者」とで比較すると,「職業能力を高める機会がある」 については「自営業主・自由業者」の方が高いものの,「教 育訓練を受ける機会がある」については「正社員」の方が高

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い傾向にある。このような結果は,自営業者において,雇用 者よりも,取引先の企業等から研修等を「受ける」機会が少 なく,仕事経験や個人的な勉強・情報収集をつうじて能力開 発の機会を確保する傾向にある実態を反映していると考えら れる。ただし,自営業者の中でも,例えば,フランチャイズ オーナー等の場合は,この限りではない可能性がある。  3) 筆者 3 名は,この調査に委員として参加した。本研究のた めに調査データの再分析は厚生労働省の担当課に許可を得て 実施した。記して感謝したい。  4) 厚生労働省政策統括官(2010)の求人情報誌(2009 年 6 月~ 12 月)・求人情報サイト(2008 年 11 月~ 12 月)の 調査において,募集職種における「営業・販売(電話勧 誘,キャッチセールスを含む)」の割合は 33. 9%で最も比 率が高く,これに「美容・理容」(23. 7%),「軽貨物運送」 (9. 1%)が次ぐ割合となっている。先行する調査として,村 田(2004)による求人情報誌の募集広告にもとづく「業務委 託」の募集件数の集計(1998 年 9 月~ 99 年 8 月)では,「営 業・販売」(13. 3%)が「生産工程・労務作業者(大工など)」 (23. 3%)に次いで比率が高かった。  5) 本稿の分析では,個人請負就業者として,①現在加入して いる健康保険(医療保険)の種類が「国民健康保険」もしく は「国民健康保険組合」,②雇用保険に「入っていない」,③ 現在の形態として「業務委託として企業やお店から仕事をも らって働く」もしくは「業務請負として企業やお店から仕事 をもらって働く」(それ以外の形態で仕事をしていない),④ 家族以外の「人を雇っていない」という 4 つの条件を満たす 人を分析の対象としている。ただし,職種を「営業・販売」 に限定した。これらの条件は本稿の問題関心に即して設定し たものであり,株式会社インテージ(2012)の集計の条件と は異なっている。  6) 筆者 3 名は,両調査に委員として参加している。三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(2008)は,厚生労働省の委託 調査として実施されたものであり,委員会メンバーは,筆者 3 名のほか,橋本陽子(学習院大学)と神林龍(一橋大学) であった。本稿で分析に利用している労働者性(「使用従属 性」)の指標化に関するアイデアは,この委員会での議論検 討におうところが大きい。  7) 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(2008)では,① 仕事を主にしている,②企業に雇われていない,③病院等で 利用する保険証の種類が国民健康保険,④仕事上の取引先・ 販売先が 5 件以内,⑥自分で社員やパート・アルバイト・家 族等を雇っていない,という 6 条件をすべて満たす人を「業 務委託契約者」とし,分析の対象としている。本稿で焦点を 当てる個人請負就業者と大きく重なる対象と考えることがで きる。  8) 本分析に用いる労働者性(使用従属性)の指標のうち, 「業務遂行に対する具体的監督の有無」に関しては,回答の 分布を踏まえて,「常に会社の指示を受けることが必要で, 自身が決められる」「会社の指示を受ける必要があり,自身 で決められる範囲が限られている」「会社への定期的な報告 は必要であるが,基本的に自身で決めることができる」のい ずれかを選んだ場合に,「使用従属性」が高いとみなし 1 点 を与えている。株式会社インテージ(2012)における労働者 性の指標では,このうち 3 つ目の選択肢の回答を 0 点として おり,本稿の指標とは異なることに留意されたい。  9) 満足度について表 3 の集計のように得点化せず,労働者性 (「低」「中」「高」)と「全体として」の満足度(「大いに満足 している」~「大いに不満である」)との関係(クロス分析) についてχ二乗検定を行うと,1 %の有意水準で統計的に有 意な関係が見られる。 10) 労働政策研究・研修機構(2006)は,雇用者(正社員およ び非正社員)と比べ,自営業者が,自己啓発(本人の費用負 担による能力開発)に多くの費用と時間を費やす傾向にある ことを明らかにしている。労働者性の低い層の個人請負就業 者では,同様の傾向があるものと考えられる。 11) 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(2008)によれば, 営業職の個人請負就業者(「業務委託契約者」)の「仕事に関 わる能力や知識を高める機会」についての満足度は,同職種 の雇用者(「社員」)よりも高い傾向にある。こうした結果も 合わせて考えると,能力開発全般への満足度は,雇用者と比 べて,個人請負就業者で高く,かつ個人請負就業者の中で も,労働者性が低い層ほど,同満足度が高くなる傾向にある と考えることができる。こうした結果は,雇用者と比べて自 営業者のほうが「仕事と通じて職業能力を高める機会があ る」が高い傾向にあるという,2)で紹介した結果とも整合 的である。 12) 雇用者の起業や独立開業に関しては,日本政策金融公庫総 合研究所が継続的に実施している「新規開業調査」が有益な 情報を提供している。詳しくは日本政策金融公庫総合研究所 編(2009)を参照されたい。 13) 今後の就業希望に関して,「機会があれば雇用される立場 で働きたい」を選んだ回答者を「雇用志向」,「できるだけ, 長く今の雇用されない立場での仕事を続けていきたい」およ び「起業したい」を選んだ回答者を「自立志向」に分類した。 14) 表としては示さないが,雇用者への転換を希望する個人請 負就業者の中で,個人請負としての働き方を選択した理由 として「正社員になれないから」と回答した割合は,「労働 者性低」では 11. 9%なのに対し,「労働者性中」では 13. 3%, 「労働者性高」で 26. 0%であり,労働者性の高い層において, 「正社員になれないから」という不本意な就業を指摘する割 合がとくに高いと言える。 15) 本稿において,Off-JT とは,取引先の費用負担で実施され る教育訓練(就業先での OJT を除く)をさすこととする。 したがって,表 6 の選択肢において,「公的資格等取得のた めの講座受講や通信講座への援助」「自己啓発への時間的も しくは金銭的援助」についても,取引先の費用負担があると 見なし,Off-JT と考えることとした。他方で,取引先の費用 負担がなく,個人請負就業者の費用負担で行うものは,自己 啓発に分類することする。 16) 実際,技能水準に関連する指標に関して,①年収が 600 万円以上の割合は,「労働者性高」で 23. 0%,「労働者性中」 で 29. 2%,「労働者性低」では 27. 9%,②個人請負としての 就業期間の平均値は「労働者性高」で 133. 0 カ月,「労働者 性中」で 131. 8 カ月,「労働者性低」では 138. 6 カ月,③ 20 ~ 30 歳代の割合は,「労働者性高」で 20. 6%,「労働者性中」 で 21. 2%,「労働者性低」では 13. 7%であり,労働者性が低 いほど,技能水準が高い傾向にあると考えられる。また,取 引先が 1 社である割合は,「労働者性高」で 37. 4%,「労働 者性中」で 38. 7%,「労働者性低」では 26. 7%であり,労働 者性が低い層で,特定の取引先への依存度は低い傾向にあ る。ただし,主な取引先との取引期間が 1 年以内の割合は, 「労働者性高」で 19. 3%,「労働者性中」で 21. 2%,「労働者 性低」では 18. 3%であり,労働者性による大きな相違は見 られない。以上を踏まえると,個人請負就業者にとり,技能 を高め,また,複数の取引先と取引関係を結ぶことで特定の 取引先への依存度を低くすることは,労働者性を低くするこ とにつながると考えられる。 17) 被説明変数とした「取引先から Off-JT を受けている」こ とに関する変数は,「業務委託を結ぶ際に商品やサービス等 について説明」「社内外の講習等への参加の機会」「社員向け

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