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M&Aで前向きの雇用制度改革を(PDF:131KB)

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Academic year: 2021

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バブル崩壊前までは, 創業者は会社を売るなん て従業員に言える訳がないと思っていたし, 大企 業の経営者は子会社や事業部の売却はありえない と考えていた。 しかし, バブル崩壊後, 取引や資 金繰りの関係で, 「やらざるを得ない M&A」 が 急速に増え, 売却に対する抵抗が薄れ, 日本の企 業同士の M&A が急速に増えてきた。 しかし日 本は 「やらざるを得ない M&A」 は増えてきたが, まだいわゆる 「やった方がいい M&A」 は充分に 起こっていない。 これは米国や英国の M&A 市 場が GDP の 10%を超えているのに対し, 日本は まだ 3%程度であることからも理解できる。 米国 の M&A 市場の成熟度を 100 とすると, 日本の M&A 市場はまだ 30 程度であり, まだまだ今後 M&A が活発になると考える。 買収により被買収企業の雇用環境は大きく変化 する。 大株主が代わることにより経営陣や経営方 針が大きく変化するからである。 M&A が被買収 企業の雇用に与える影響は, 買収企業にとってど の程度被買収企業が必要か, 被買収企業がいかに 独立的に価値があるかによって異なる。 買収企業 が被買収企業の経営陣および幹部, 従業員に価値 があると考える場合は, 雇用条件が悪くなる懸念 は少ない。 しかし, 救済的な色彩の濃い買収の場 合は, 経営陣の刷新と雇用環境の激変は覚悟せね ばならない。 一般に買収契約書には, 被買収企業 の雇用条件についての条項があり, 現状の雇用を 維持し, 雇用条件も変更しない旨の記載がされる。 もちろん, 契約書に記載されているからといって 買収後の雇用条件が長期間保証されるものではな い。 しかし, M&A 後の従業員のことを考え買収 契約書には, 雇用継続の条項を盛り込むべきであ る。 一方, 被買収企業の雇用が実質保証されるの は, 新しい株主から従業員が必要とされる場合で あることを忘れてはならない。 スティール・パートナーズのようなアクティビ スト系のファンドが社会的脅威とされているが, そのようなファンドはむしろ少数で, 多くの投資 ファンドは, 過半数の株式を買収し実際に経営権 を取得するいわゆる 「バイアウト・ファンド」 で ある。 彼らは, 経営権を取得し 「企業価値を向上」 させるのが仕事であり, 右から左に転売したり会 社をバラバラにして利益を得ようとするものでは ない。 彼らは企業価値を実際に向上させようとす る集団である。 しかしその性格はファンドによっ て様々で, 投資対象を親身になって考えてくれる ハートのある投資ファンドと付き合うべきである。 また, アパレルのワールドは, メザニンと呼ばれ る優先株・劣後債を活用し, 社員 31 人だけが株 主の 「純粋の MBO (Management Buy Out)」 による非公開化で業績を急速に伸ばしている。 非 公開化する際には, まず, メザニンを利用し, 社 員が過半数の株式取得が可能か検討し, それが難 しいときにバイアウト・ファンドを活用すること を検討するのが賢明である。 持株会社制がなかったときの合併では, 複数の 会社がひとつになる必要があり, 合併後長期にわ たり合併当事者同士で軋轢を生じることが多かっ た。 しかし, 持株会社制における経営統合では, 持株会社の傘下にその統合する会社がそのまま属 することになることが多く, 統合直後はあたかも 統合がなかったかのように個々の企業の独立性は 維持される。 また, 持株会社制の企業集団では, その傘下の会社の流動性は高まり, M&A はます ま す 活 発 に 行 わ れ る で あ ろ う し , も は や 誰 も M&A から無関係ではいられなくなる。 M&A 後 経営権を取得するものは, いい会社, 強い会社は 従業員がいきいきと働ける会社であることをよく 認識し, 従業員が活性化する雇用システムに変革 するよう努めるべきである。 一方, 被買収側の従 業員は, M&A をむしろ変革のチャンスととらえ, 前向きに雇用改革に取り組むべきである。 M&A が活発になり, 日本の雇用環境もそれを利用して 改善されることを期待したい。 (さやま・のぶお 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。 GCA ホールディングス株式会社代表取締役) 日本労働研究雑誌 1

M&A で前向きの雇用制度改革を

佐山 展生

参照

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