• 検索結果がありません。

滅びゆく琉球弧の野生生物 W.W.F.J 第一回シンポジウムに参加して: 沖縄地域学リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "滅びゆく琉球弧の野生生物 W.W.F.J 第一回シンポジウムに参加して: 沖縄地域学リポジトリ"

Copied!
31
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Title

滅びゆく琉球弧の野生生物 W.W.F.J 第一回シンポジウ

ムに参加して

Author(s)

大嶺, 哲雄

Citation

沖縄大学紀要 = OKINAWA DAIGAKU KIYO(4): 21-50

Issue Date

1985-03-31

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/5708

(2)

滅びゆく琉球弧の野生生物

W・WFJ第一回シンポジウムに参加して

大嶺哲雄 次 1JjjA 1231| ’|’’1 111Ⅱ はじめに W、W・FJ.とは 第一回シンポジウム、テーマ「南西諸島とその自然保護」より 南西諸島の野生生物に関する調査報告(中間)概要 奄美大島及び徳之島のアマミ/クロウサギに関する生態行動及 び密度分布調査 西表島のイリオモテヤマネコの密度と住民意識調査 本研究計画と今後の課題 琉球列島の自然保護の現状と問題点 琉球列島の生物群(主として陸棲動物) 南西諸島における動物分布型の特徴 沖縄県の開発計画と自然保護 結び 写真 l-B Il-2) lII III-1) 111-2) III-3) W V 参考及び引用文献 1-1.はじめに 昭和六十年度、沖縄県の振興開発事業に必要な予算が昨年十二月閣議で 決まった。 -21-

(3)

復帰後十年余、道路、湾港、農地基盤及び林道等の整備などで生活は便 利になった面もあるが、半面、昔なつかしい沖縄の風景はもうみられなく なった。 目下、第2次振計の後半に入り、相変らず経済開発型優先のプロジェク トを並べた振興開発型の予算である。 琉球列島の自然は開発等によって、近年著しく変容され、人間環境と自 然とのつながりが次第に遠のいて行く感が強くなって来た。 最近のニュースでは、貴重なヤンバルクイナやヤンバルテナガコガネの 生息する与那覇岳保護地域の拡張に対し、住民側から林業経営に支障があ るとして反対の声が聞かれる。住民の自然保護に対する理解と生活の問題 は島的環境にある地域住民の大きな悩みとなっている。 近き将来には、バイオテク/ロジーを中心とする産業が盛んになること が予測されるが、こうなれば、一層ミクロの世界まで人工化が進み、完全 に人工環境依存の社会に変ってしまう曰が来るのは時間の問題であろう。 このように急速に自然が変容し、破壊されて行く過程で、真先に人間と のかユわりで強い影響があらわれてくるのは生態系である。 このような観点からWWF.』は数年前から南西諸島の自然、をテーマ に調査計画を立て、その手はじめに、世界野生動物の指定をうけているイ リオモテヤマネコとアマミ/クロウサギの調査と同地域の自然保護に必要 と思われる資料の集収を行ってきた。 本稿はW・WF.』の第一回シンポジウム(東京、1984,10月)の概要を紹 介し、その他琉球列島の野生動物の現状とその問題点を併せて考えてみた い。 本稿を草するに当り、シンポジウムの参加を呼びかけて下さった日本科 学委員会議長小原秀雄教授、安間繁樹博士をはじめ、事務局及び関係者各 位には大変お世話になりました。皆様の御好意に対し心から厚く御礼申し 上げます。また、沖縄地元から報告されました琉球大学名誉教授高良鉄夫 博士、池原貞雄博士、沖国大学宮城邦治氏、西表から山守隆吾氏の各位か ら大きな教示を戴いたことに対し感謝の意を表します。 -22-

(4)

I-ZWWF.』とは worldwildlifeFUNDjapan=世界野生生物基金、日本科学委員会 の略である。 野生生物の保護、そして自然保護のために資金を集めることを基本的な 事業を目的とした国際的民間団体。このもとで日本科学委員会(会長大来 佐武郎)は自然保護に関する研究調査の活動を行っている。 日本 オランダ 西ドイツ イギリス フランス イタリア アズリカ ゾ連 タイ '28.0 374.4 152.1 108.1 45.1 97.4 19.5 256.0 459.3 275.1 178.2 91.8 別.4 36.5 10.6 406.2 691.4 374.6 216.5 217.8 82.1 82.1 31.4 11.4 イン ビル γ 加川Ⅲ本の人Ⅱ別 1 世界の人Ⅱ旧飢 × 60 40 20 20 10 表1戦前と戦後の生産且その他の比較 0,)5007(〕0(X〕011001300150017(pl900 0 図1日本および世界の人ロ増加 -23- 1970年1935年との比 人口千人 コメ作lldijglF化 収穫千【 ゴムギ収髄高〃 ウシ飼育頭数千頭 ウマ〃〃 プ夕〃〃 ニワトリ’’「羽 漁槽高Tl 、Z木伐採高「、' 建発電力千kw 原曲輸人mTk2 石炭産出高TI 銑鉄生癩島一「I 粗鋼′’” 電気飼〃〃 鉛′'〃 アルミニウム′’” 硫酸’′〃 砿安’’〃 セゴン卜〃′' b11雌雄高「I 織物〃IIli)j、, タンカー「libトン 乗Ⅱ1蝋1台 ハス〃 加 叩醜川 瓢収噸剛川畑 醜噸迦川迦噸畑剛蝉川伽 80 324 7 ⑱ 22 ?9 31639砧 ●??PG● 2 2 側鴎測閲則 り99もり ザh〕nJ』P『J 午〃0P■J へP。句〃0内咀Pの〃0 期研旧 80 245 W肥刈別別旧 2 5 -5 8 7 973 9 07896 (Ⅲu式uJn-qF 午・0宍凸U b0j n■》 ■Sc ●●●□●● ● ●■の●● ●●■ ●● ● ● 0-0 20612- 17-・399105J0 1- 746 -4 31 27 - 1 J1 - 2 7』

(5)

人類はこれまでその生存と繁栄を獲得するために森林を伐採し、平野を

開墾して生活圏を拡張して来た。さらに、高度な科学技術を駆使し、より 豊かになるため、あらゆる資源を求め、今後も開発の手を緩めることなく 地球を喰い減して行くことだろう。その結果、21世紀の人類は僅かながら の寿命を延ばし、少しばかりの生活が楽になる筈である。しかし、人口は 急増し、すでにアフリカやインドでは食糧危機に陥ち入り、老人や子供達 が飢餓に苦しんでいるのが現実である。21世紀の爆発的な人口増加に対し、 地球の資源は無尽蔵ではない。人工資源やエネルギー消費は逆に残された 森林や海洋を荒廃させ、すでに地球の一部では砂漠化が起ってをり、これ は単なる天災ではなく、むしろ人災である。表-1,表-2,図-1参照 1972年6月、国連人間環境会議は「かけがえのない地球」をスローガン に114ケ国、1200人の代表のもとで「人間環境宣言」を採択している。ま た、国際自然保護連合(ICUN)は1980年3月、新しい国際的経済秩序と 新しい環境倫理の確立が必要であることを主張し、次のような行動計画を 発表した。すなわち、

①開発と保全を対立関係でとらえるのではなく、統括的な視点から政策を

考える。 ②環境影響評価を十分行い、住民参加の充実をはかること。

③熱帯雨林の伐採、砂漠化現象の拡大、土壌侵食、河川、海洋汚染、野生

生物などの絶滅や自然破壊を防止する。

④海洋、大気、南極など地球的共有物の保全のための国際協力をする。

となっている。

日本では、環境庁、日本学術会議、国立公園協会、日本自然保護協会、

日本動物園、水族館協会、日本野鳥の会など六団体が加入している。

1-3.第一回シンポジウムテーマ「南西諸島とその自然保護」

より テーマ「南西諸島とその自然保護」について、第一回シンポジウムのプ ロフィールを紹介しよう。 -24-

(6)

W・WF・総裁エジンバラ公フィリップ殿下.の開会宣言に続いて、「南西 諸島の保護とその研究」目的、経過に関し、WWF.』・の科学委員会議長、 小原秀雄教授(女子栄養大学教授)から報告があり、さらに今回の「報告書 ならびに今後の計画について」安間繁樹W・WF研究員より説明があった。 次にWWF理事、日本自然協会長の沼田真博士による講演「屋久島の 自然」があり、特別講演ではDr・PeterKramer(WWEInternational 保護部長)の「ガラパゴス諸島の保護について」の講演がそれぞれあった。 今回のテーマ設定の主な理由は南西諸島が第二次大戦の悲惨な戦禍を受 け、さらに戦後は復興が著しく遅れた地域であるため、国及び県は産業基 盤の充実をはかり、自立経済を目指して地域の開発を重点政策として振興 をはかってきた。 このような社会的背景から年々開発が急ピッチで進められ、その結果、 自然環境破壊が著しい。またヨナグニサンや./ハチョウのような貴重な 天然記念物指定の動物たちが、心ない業者によって乱獲されている。 この地域の自然は日本列島においても、地史や気候的にも生物相及び生 態系についても特性があり、世界的に高く評価されている。しかし、その 反面、自然の実態が十分明らかにされていない点が多く、今後の産業基盤 を確立する上からも、学術的にも生態系の実態を十分に研究把握するため にその必要性と緊急性が求められている。 今回シンポジウムへの参加者には、西独の元マックスプランクの研究所 のライハウンゼン博士、WW.Fインターナショナル保護部長ピーターク レイマー博士、UlrikeThiede博士等が出席されたほか、国内からも多数 の生態学者や社会学者、その他の分野の研究者をはじめ環境行政や環境保 護団体関係者などの参加があり、終始熱心な討議がなされた。 沖縄県からは海洋博水族館のキャサリン・ミュジック博士や琉球大学名 誉教授の高良鉄夫博士、同名誉教授池原貞雄博士、沖国大の宮城邦治助教 授、西表から住民代表として山守隆吾氏と沖縄大学から筆者が加わり、五 名がそれぞれの立場から現地の状況報告を行った。 -25-

(7)

1-1.南西諸島の野生生物に関する調査報告(中間報告)概要 1-A奄美大島及び徳之島のアマミノクロウサギに関する生態行動及び 密度分布 WW、FJは1983年から3ケ年間、すでに調査済みの資料も加えて予備調 査を実施している。 ゜アマミ/クロウサギは一般にシイ林を主体とする天然広葉樹林中に生息 分布することがわかっている。したがってシイ林が保護される森林と乱 獲がなければ、十分その生存は維持される可能性は残されている。 しかし近年はリュウキュウマツ造林が増加の傾向にあり、人工林が増え っ■あるなかでは、つまり「経済的理由で人間との競争が起こるとき、 ウサギの生存は危くなる恐れがある。」との報告があった。 。アマミノクロウサギに対する住民の関心、一般に関心が薄い傾向にある。 その理由の1つに、資源的価値が少いという点が挙げられる。たとえば、 年々現地を訪れる観光客は減少し、それにウサギを見るために現地を訪 れる客は稀れである。したがって観光資源としての価値が低い。また、 食用にする程の量もないので地元ではほとんど利用価値がない。 ’83年、安間の報告では、kii当り14巣を確認している。l巣に数頭のウ サギが生息するようであるが現在、個体密度について詳しいことはわかっ ていない。 徳之島では条件はもっと悪いようである。

つまり、森林面積は本島の今程の面積で山地が島の中央部にある農耕地

に二分されているため、ウサギの生`皀地は人為に大きな制約を受けている。 要するに奄美の自然はハブやウサギと人間が住み分けできる程に面積は 広くなく、観光上、経済のメリットがなければ、野生生物の生息をゆるす 程の自然環境ではない。 このような国土面積の狭少な島喚では極めて短期間に種の絶滅が進行す るので十分な保護対策が必要である。 1-B西表島のイリオモテヤマネコの密度と住民の意識 学名:Mayailurusiriomotesislmaijumi,1967. -26-

(8)

1965年、ヤマネコが発見されて以来、生きた化石として国の特別天然記 念物指定を受けているが個体数が年々減少の傾向にあり、早急にその保護 対策強化が望まれている。 このイリオモテヤマネコに関する調査報告は、これまで内外から注目さ れ、数多い研究がなされているが、まだその生態や生息密度など把握され てない部々が多いと云われる。 生息個体数について環境庁の調べでは、1974年頃約150頭と推定された が、その半年後の調べでは30~40頭と減少、最終報告では15頭台となって いる。しかし、その後、極端な環境悪化もなく、病気などの異状もない状 態で自然繁殖などを加味して綜合すれば、1984年では約50~80頭の生息が 推定されている。(小野紀之、安間繁樹、1984) 特に本シンポジウムで議論が集中したのは1)餌付の問題と2)環境庁 の保護政策の在り方をめぐって住民側から不満の声が強いという点に絞ら れた。 (1)の人工給餌の問題については、環境庁はヤマネコの生息数が激減して いる原因は餌が絶対的に不足していることにあるとして、1979年、秋から 人工給餌を行った。しかし安間氏が行った食性調査からは餌が絶対的に不 足していることを裏付けるような事実はなかった、と報告している。(小 野紀之1984.西表島の現状より) 小野氏は、現在行っている給餌体制には数多くの問題点があるとして、 給餌員の指導教育や給餌場の衛生管理、採食状況のチェックなどを指摘し ている。 人工給餌にはニワトリを使用しているが、餌場にネズミ、ハエの発生、 増加やそれらによる自然株の衰退、農耕物への被害や餌に馴れて民間の家 諾をおそう可能性もあるという。そのほか、ニワトリの病気がヤマネコを はじめ、野鳥などの伝染病を伝播させる可能性もあり、西表島の生態系の 撹乱にもつながる大問題として人工給餌のあり方について活発な議論があ った。 (2)保護政策と住民のヤマネコに対する意識 -27-

(9)

「開発かヤマネコか?」という「イリオモテヤマネコの保護と西表島の 開発をめぐる住民意識に関する調査(川崎嘉之、1983)によれば、(表-3 参照)積極的に保護すべきであるとするのは39.5%、ヤマネコも大切だが 経済開発も大切だと考える意見が「その他」21%に含まれるのをみると、 ほぼ半数は何んらかの型で保護に賛成、反対に「貴重な野生動物と思えな い」とする派といささか有難迷惑とする派を合計すると33.5%で、ほぼ賛 否が半々に分かれる。 また職業別にみると、農家世帯では5人に1人の保護派に対し、非農家 では49.6%およそ2人に1人の割合が保護に理解を示している。 実数 表3ヤマネコに対する率直な気持 (構成比)(%) (居住部落別) 大原祖納上原住吉 (職業別) 農業その他 1360 (20.3)(49.6) 2124 (32.8)(19.8) 89 (12.5)(7.5) 1524 (23.5)(19.8) 23 (3.1)(2.5) 51 (788)(0.8) 64121 (100.0)(100.0) ①誇りに思う。今後とも 大切に保護するべき ②いささか有難迷惑だ ③貴重な野生動物とも思 えない Q)その他 28 (43.1) 13 (20.0) 3 (4.6) 19 (29.3) 0 (-) 2 (3.0) 22 (37.3) 18 (30.5) 7 (11.9) 10 (16.9) l (1.7) l (1.7) 17 (44.7) 7 (18.4) 3 (7.9) 7 (18.4) 3 (7.9) l (2.7) 6 (26.2) 7 (30.4) 4 (17.4) 3 (13.1) l (4.3) 2 (8.6) 73 (39.5) 45 (24.3) 17 (9.2) 39 (21.1) 5 (2.7) 6 (3.2) ⑤DK ⑥NA 65593823 (100.0)(100.0)(100.0)(100.0) 合 計 (W、W・FJ1984報告書より) また「ヤマネコ」の被害状況についてみると、「有り」とするのが7件、 「無い」と答えたのは170件となっている。数字でみる限りでは頻繁に被 害が起っているのではないが、しかし集落が山手に接している地域や場所 によっては被害を蒙り、困っている所も考えられるので一概に被害が無い とは云えない状況にある。 ゜観光資源として価値についてのアンケートでは、「大なり、小なり役立 -28-

(10)

っている」が数字では、(29.7+36.2)=65.9%、「まったく役立って いない」が7.6%、「何んとも云えない」が6.5%、「ほとんど役立っ ていない」11.4%で合計25.5%が資源とはならないと考えている。 実数 表4「イリオモテヤマネコ」と島の開発との関係 (構成比)(%) (騒業別) 圏案その他 (膳住部藩別) 大原in網」二原住吉 (年齢別) 20代30代40代50代60代70代 Ⅲ201116130 (45.8)(47.6)(39.3)(30.3)(41.9)(().Ⅱ) 12161427116 (50.0)(38.1)(50.0)(50.9)(‘15.2)(85.7) 50dlZO (4.2)(11.9)(0.0)(7.5)(6.5)(0.0) 00240 (0.0)(0.0)(2.1)(7.5)(3.2)(0.(1) 021 (0.0)(2.4)(3.6)(3.8)(3.2)(l`1.3) 24422853317 (10().U)(10().O)(100.0)(100.0)(I()0.0)(100.0) 合計 (1)ヤマネコの発見に よって開発が後れた (2)凪の開発の後れと ヤマネコは1W係なし

JjjLjljJllj

(3)その他 ,ODK SNA ’L ’1I UD 実数 表5「ヤマネコ」は島の観光の発展に役立っているか (構成比)(%)

k:'WlIh`,鵬州噸Ⅳ編ww'感1W:

▲ 【】

iillil

l:1

tIlkいにiunj..’てい る (2ゆしは微,7.’てい る 12247 65.9)(72.3 37 2.7 ,ハ(5Jji,|(ハ(5Jii1胸(鍋(76H1,({。)

M1ⅡMMM",$

14 6)(6.8 ((1)Jh;人とり,し えr 趣いて|(Ii 111と人と いない 35 9.0 1213 8.5)(22.1 ,3[,j|(19%),27111),Ni)(2側(31)(201`) 3 7.9 鬮壌に<徽鮖に|,リネいない 3 1.6 5 2.7 8 .1.3 15 1O ソ】I C I.

l;W11i

4.5 0 0.0 2 9.1 2.4 0 0.0 2.4 00 (0.0)(8.3)(0.0) 02 (0.0)(16.7)(20.0) 200 (3.2)(0.0)(0.0) 6,÷U)他 DK NA ※2. 12 ※※ W・WF.J1984.報告書より 29

(11)

初期の段階で住民側にかなり誤解を与えるような発言があり、住民は保 護に対し非協力であるかのように-部報道されたことがあったが、ヤマネ コ保護政策に対してはかなりの関心を持っているが、やはり住民不在の保 護政策では協力を得られるわけがない。 やはり生活や福祉の向上を目指し、離島振興の面を配慮しながら保護策 を考えるべきであるとの強い意見が出されている。 これに関してUlrikeThied博士は次のような提案をされている。 「①一番大切なことは自然と島と島の人達の全生活領域を包括したよう な計画を立てること。 ②もっと広範囲に特別保護地域を指定する必要がある。 ③住民の適正な生活条件、たとえば、a)西表島に適切な農業、b)自 然保護に関する援助、c)観光事業、d)工芸品工業の進行などを振 興させながら保護政策を推進すべきである。 ④これ以上新しい開発と耕地拡大や森林営業目的に利用することは直 ちに中止すべきである。」 この点、山守隆吾氏は「厳しい自然の中で自然保護を進めないと生きて いけない。」と身に謬みてわかっているのはむしろ住民の方である。環境庁 の政策が頭ごなしであるため、自然保護の理念が混沌しており、誤解・不 信感が強い。」同氏は提案として、経済、社会、福祉など多方面にわたる学 者、行政、住民みんなが考えていかなければ解決はできない問題であるこ とを強調している。 1-2.W、WF.Jの本研究と今後の課題 今後の予定としては野生の哺乳類のみでなく、南西諸島には貴重な昆虫 類やサンゴやその他社会的にも学術的にも価値の高い貴重な生物が豊富に 生息しているので、全般的に調査研究の必要がある。 ①南西諸島の自然の特色を自然史及び自然科学的に明らかにする。また人 間の文化との対応においてその自然と人間の在り方を総合的にとらえる。 ②シンポジウムを開き、広く意見を集約し、住民代表、内外の研究者、保 -30-

(12)

護関係者Conservationistなどから述べる意見から保護対策を成案し て提示する。」中略……となっている。そして、これらのまとめと報告は 次年度以降に予定されている。 Ⅲ琉球弧の自然保護の現状と問題点 Ⅲ-1・琉球列島の生物群の多様性 南西諸島は九州南西に位置し、鹿児島県と沖縄県にまたがる約,000kmに および、無人、有人の島喚が'00個以上からなる弧状の列島である。独特 の自然と文化圏を形成し、-名琉球弧と呼ばれる。 生態環境は亜熱帯性気候に属し、その地史や地層などから植物分布、動 物分布が多様性に富み、特殊な景観を呈している。 表6南西諸島の植物(固有種)(初島、1971を改変) 植物の種類は シダ植物以上で 1600種の記録が ある。曰本列島 の総数373,770 種に対し、僅か 0.42%に過ぎな いが、面積比で みると約45倍も の種類を占める ことから、如何 中庁球Ⅱ、南5F球Ⅱ 喜界島1白鳥1 奄美大島17(6)石垣島1 9(4) 徳之島2西表島14(1) 沖縄島17(4)与那国島1 魚釣島3(1) 55(15) 総計 初島の集計と数値が異なるのは、新たに固有とされたものを加え たことによるが、さらに検討を要する。 I:各島に固有。Ⅱ、Ⅲ:複数の島の固有。()内の数値は 変種の数。 ※「沖縄の生物L」より転載 に植物相が豊富であるかがわかる。 固有種だけをみると表6でわかるように104種、固有変種が26種、合計 130種が含まれている。 次に野生動物群(陸棲)についてみると、南西諸島には南西北両系種の混 棲群がみられ、あとに述べる1)遺存種型、2)移動型種、3)偶然侵入型、等。 -31- 中琉球 I Ⅱ Ⅲ 南琉球 I Ⅱ 喜界島 1 宮古島 1 奄美大島 徳之島 沖縄島 17(6) 2 17(4) 13(2) 5(3) 石垣島 西表島 与那国島 1 14(1) 1 9(4) 小計 55(15) 魚釣島 小計 3(1) 29(6) 中、南琉球に共通 20(5) 総計 104(26)

(13)

典型的な島喚型動物相を呈し、まさに貴重な自然の「進化の実験場」と も云うべき自然条件を備えている地域である。 DrPeterKramerは今回の特別講演の中で「ガラパゴス諸島と比較し て彼地に劣らぬすばらしい進化の島である。」ことを高く評価されたほどであ る。 表7.主な出土化石一覧(◎印:現在琉球列島に生息の陸性動物) 註)「沖縄の生物」の中から[沖縄の生物相の成立」大城逸朗p、15~22. 哺乳類71種、(その内25種は海獣及び鯨類)鳥類約320種、両生類約20種、 爬虫類45種以上。昆虫類4000種以上、魚類1300種以上が記録されている。 その中、国の指定を受けている種類は動物で20件、植物16件、地賀鉱物 1件、天然保護区域3件が含まれている。また県指定の天然記念物として は動物6件、植物27件、地質鉱物6件、天然保護区域1件(昭和59年3月 31日現在)。なほ学術上重要な動・植物が多数生息し、その大半が未だ研 -32- 八重111鮪島 宮古諸島 沖鬮賭風 新附代 111 ノキミ 代 ilj 生 第四紀 充新世 0.01 更新生 1.8 新第二紀 餅新生 5 中新Mt 22.5 古第二紀 jWi新世 40 始新世 55 暁新世 65 nlli紀 141 ジュラ紀 195 二畳紀 230 二塁紀 ↓ 280

一〆一一一一一

一》》例乘ミw{一一》錨一一一一二

一一》悟帝》弗曄杼》一一》密訴一一

i『刺11-刺41-11111TII でonし◎・」(|いい《』一 一ジキ}》『一一

{鯛”拒起『一一一三曰戸

←キマイ藝三一一一リロ

ー》鏑》塾一一一一一』》

ILLウキュウジカ ◎リュウキュウイ ◎ヤエヤマオオコウモリ ◎ミナミイシガ ---.]シプトガラス 、】 1オームロ ◎ケナガネ オオヤマリクガ〆 シガメ ゴンホテリウムゾウ ホホジロザ武属 .'ルLウキ.Lウジカ 。リルLウキュウムカシキョン 。キシャバムカシキョン ◎リュウキユウイノシシ 。真象類 ◎ケナガネズミ ◎トゲオ、ズミ “オオヤマリクガ〆 ◎リ▲ウキヱウヤマガメ ◎ハブ =jJwJ、〆 ̄ソ〆門 ・アオザメ属 ---- ̄  ̄畠■や  ̄ ̄-- )ヌンムIjテス アンモナイト “ハロビア :,フズリナ

(14)

究の余地を残している種群が含まれているのが現状である。参考までにす でに絶滅し、現在では化石か記録のみしか残っていない絶滅種群と生息し ていた年代表を掲げる。 。絶滅種: l)オキナワオオコウモリ(マリアナオオコウモリの近縁で亜種と考えられ ている。 2)リュウキュウカラスバト(八重山石垣島に現存する種類とは異なる種 で、沖縄島、伊平屋、伊是名、屋我地、座間味、大東に生息したと云わ れる。) 3)ダイトウハシナガウグイス(1938年3月以降観察されてない。) 4)ミソサザイの1種(ダイトウミソサザイ) 5)ミヤコショウビン(1887年2月5日宮古島で田代安定氏によって捕獲 される。) 以上「沖縄の生物」、池原貞雄による。1984 (W、W・FJl984調査より) -部転載 表8南西諸島哺乳類(綱)<陸性>一覧表 -33- 区分(月) 風1m名 区分(ロ) 属側名 I ⅢW I I 食虫目 瓦手F1 ([F1定) 極長’三l ウサギ目([I]特) |①②④④⑤⑥m L234I ワタセオ.ズミ ヤクジマオ.ズミ タネオ.ズミ オリイオ、ズミ リーLウキ.Lウジャコウオ.ズミ ヤクジマモグラ .①エラブオオコウモリ ②オリイオオコウモリ 小計6樋 u)ターイトウオオコウモリ (4)ヤエヤマオオコウモリ 2.オキナワコウモリ 3.カグラコウモリ 4.①オリイコキクガシラコウモリ lr2) (3) (い オキナワコキクガシラコウモリ ミヤココキクガシラコウモリ ヤエヤマコキクガシラコウモリ 5.イリオモテコキクガシラコウモリ 6.ニホンキクガシラコウモI) 7.アブラコウモリ 8.(1)リュウキュウユピナガコウモリ (2)ヤエヤマユピナガコウモリ 9,ニホンコテングコウモリ ヤクソマサル 1.(1)アマミノクロウサギ (2)カイウサギ ノ|、lll6極 小;}l櫛 小3}2剛 V 1.1 Ⅶ lm IX 鰯歯、 ([r]定) 食110m (、特) 偶蹄ロ ({F1定) 海獣目([F1定) 鯨「I 1.セグロアカオ、ズミ 2.ヤクジマヒメオ、ズミ 3.タオ、ヒメネズミ 4.セスジオ.ズミ 5.タオ、ハツカネズミ 6.ヨナグニハッカネズミ 7.オキナワハッカオ、ズミ 8.アマミトゲネズミ 9.オキナワトゲオ、ズミ 10.クマネズミ 11.ドプネズミ 12.ケナガオ、ズミ 1.。イタチ 2.ホンドウイタチ 3.イント'マングース- 4.イリオモテヤマネコ 5.イエオ.。 小計12楓 /1,計5樋 I.リー、ウキュウイノシシ 2.ヤクシカ 3.ケラマジカ 4.ヤギ その他 ソjゴン 小計4樋 合計461m (イルカ・ザトウクジラ) l楓 別楓 合計71図

(15)

近年は森林や農耕地に農薬散布が著しく、その消費は地域や、その規模 によっても異なるが、殺虫剤(有機燐系、くん蒸剤、その他)殺菌、殺そ 剤、除草など年平均、約390万k,が販売され、松喰虫やヤシ類につく甲虫 類の駆除に空中散布が実施され、無差別殺虫や天然記念物指定のコノハチ ョウやフタオチョウなど、業者による多量乱獲が問題となっている。 Ⅲ-2.南西諸島における動物分布(多様性)の秘密 現在、南西諸島の動物相が世界的にみても極めて多様性に富み、特殊な 生物相を織なしている秘密は何んだろうか。 この謎解きの鍵は複雑でなかなか解決するのは難しいが、この要因には 少なくとも、①地史的要因、②気候的要因、③植物的要因、④地理的要因 (隔離)、⑤遺伝子的要因、その他、⑥人間とのかhわりなどで、さまざま な作用・反作用が長い時間かかってできた綜合的結果である。 先づ生物地理学的にみて三つの系統に分けることができる。 1)遺存種型(RelictPattern)Darlingtonl957・ 大陸から分離した特定の島に古種が保存され、あるいは特殊化したも のが種形成をした種群。たとえば、 イリオモテヤマネコ、アマミ/クロウサギ、タカチオヘビ、サキシマス ジオ、セマルハコガメ、ケナガネズミ、ヤンバルクイナ、ヤンパルテナ ガコガネ、などが考えられる。

2)移住種型(適応放散進行中のもの)ImmigrantPattern、

大陸あるいは分派源からの距離に比例した種類が減少し、飛び石伝い に移住し、分布を広めた種族が、先住者との間で遺伝子の交換があり、 やがて亜種型の種形成をする型と考えられる。これらの仲間には移動力 や気候に対し、適応力の強いものが多い。 たとえば、ハブ分布(北限はトカラ列島の小宝島一トカラハブ)、昆虫 の亜種、蝶の分布について(木元新作、1979)、シンプソン指数でみると、 「南西諸島型」の蝶相があり、西日本型と区別されるが、トカラ列島に は南西諸島型と西曰本型の移行型がみられるという。 -34-

(16)

南西諸島(琉球列島) 図2 大騨民国 。  ̄の .;〃〔~

(二つ

〈二つ

…,,鬮七.、

%、 汐● α》 ch 47q; 50 巳

華人民共和国 ●O ●● 。. C 21 40 Pの ()

魁瞳

30 Di 24Qj 1I農 訳 、i 50$ 20 10 ch 40も h$n$.Ⅲ c9胆、、川]P2 PT g3北琉球

灘IJI鵲繩

釦も、 E

(該

鹿之囲 琉球 の 9 鷹 島 ‐・I 00 今 ●

南琉球 fig 尖閣鮒囲 グテーー、 クク06,.、0 シ グググ 0 シ ハ電,1,諸島l IKlHd風、0 宮古群島 ,△ ● ● j耶旧島 ● 、。 園'四M固数l8C 曲 Elの平均気振 P:北方区系 T:南方区系 E:固有種 23℃ L=、、□、 ch:ムカデ 、i:ヤスデ

BZZ図各地における固有種の占める割合%(多足類)

-35-

(17)

座阪

/、

トカラ喜界島 西諸島jlj小笠尺 図3南西諸島のチョウ類による地理的分布の地域性 (木元、1971.-部変えて転写) 3)偶然型(AccidentalPattern) 大陸や近隣からの距離に関係なく、特定の弧島に特殊な種類が発見さ れる例。 昆虫ではオオムラサキ(迷蝶)、ミヤコショウビン(鳥類)、多足類(ク インジムカデ、この種はオーストラリアや沖縄:北海道から知られ分布 が飛び飛びに発見される。)図2 Ⅲ-3.沖縄県の開発計画と自然保護

沖縄県は第二次大戦末期(1944年)、東支那海域における本土決戦の防

波堤として、唯一の地上戦が転開された地域である。 森林は焼かれ、山河は枯れ、その上、二千万余人の生命を奪った。そし て、その後遺症は終戦四十年後の今日でも生々しく残っている。 戦後の沖縄は文字通り、焦土の中から立ち上った。生き残った僅かな自 然と裸同然の県民は平和な新しい島づくりを目指したが、疎開や海外からの 引揚者や復員者などで人口は急増し、その上農耕地の多くは軍用基地に接 収され、米軍政府の配給でその曰の糧をつなぐのがやっとの生活であった。 沖縄県で最初に経済復興計画が立てられたのは1953(昭和28年)頃から である。 やがて1960(昭和35年)には「適正な経済成長に伴ない、生活水準の向 上、物価の安定、生産構造の改善、そして基地経済に対する依存の低減」 -36-

(18)

図4沖縄本島における埋立状況ならびに米軍基地分布 -- ダニ、、、 ' ’ ’ ’ ' 沖繩海洋樽会場, 夕

雫銅

 ̄シ

〆 ------ ● =、

囑髄部

{if鯛

その他天然訂 の生息地 夕

驫鐵iil

け加胎

診八〃

ガ物 、ネ --

鰯〃

旧海上公園 ■埋立地(完成,工事中) ■埋立認可済(未着工) 皿埋立申請中 一△△海上道路 ---国定公園 函米11【基地 曇霧2曇

塗錘

那覇市 鰯一℃ 中城湾 & '〆 噂鐡

>Y`テン

〆 --- ̄ 註)地域開発'73より転載 -37-

(19)

を主旨とする十年長期計画が策定された。

しかし計画は十分に果されず、軍用地は県士の11%(在曰米軍基地の総

面積の53%を占める)を占有し、異民族支配下における基地経済は県民の

基盤となる経済力にはなり得ず、教育、文化その他あらゆる社会構造及び

精神構造にも大きな影響を及ぼした。図4

戦後、沖縄では豊かな森林は国頭地域に集中し、戦禍から少しまぬがれ

たが、材木不足の折り無計画伐採時代に乱伐された。

1962年の統計によれば、13万5千m3の生長量の2倍強に当る9万m’が伐

採されている。しかも、その全面積の17%に当る2万haが造林未済面積

となっている。

つまり、貧困な政府財源のもとでは、造林と伐採の均衡を保つメドもな

く、まして自然保護に目を向ける余裕は全くなかった。そしてその間にも

貴重な野生生物は衰退の一途をたどったのである。

1972年5月、曰本復帰が決定され、同年12月には第一時沖縄振興開発計

画が閣議で決定された。

全国総会開発計画の中に「沖縄開発の基本構想が加えられていたわけで

ある。」 つまり、復帰後、沖縄の振興開発は昭和47年度(1972年)にスタートし

た一次振計と昭和57年度(1982年)に引継がれた二次振計に基いて進め

られてきた。

この構想の主旨は「本土との格差を早急に是正し、地理的特性を十分に

活すことによって自立的発展の基礎条件を整備し、基地経済から平和経済

への積極的移行をはかる。」ことにあった。 しかし、過去十年間における実積に対する評価は、第一次振興計画は

「沖縄の心」が十分に活されていないばかりか、各面に見直しを必要とさ

れているが、その総括及び広く各分野から県民の意見を汲み入れ、これを 反映すべきであるとの批判の声がきかれる。 この点、琉球大学教授の松田賀孝氏は「開発と自治」の中で、「……あ らゆる開発に優先してこれらの自然と文化を積極的に保全するとともに、 -38-

(20)

戦争によって喪失された緑の回復と国士保全などを推進して、県民のため のより豊かな環境を創り出さなければならない。」としてその虚構性を見 抜いる。 「沖縄県自然環境保全条例」に基く「自然環境保全基本方針」の第一条、 自然環境の保全に関する基本構想(昭和50年12月)に次の条文がある。 「自然は人間にとって生存の基盤であり、生活のための資源であり、豊 かな人間生活の源泉である。 沖縄県は亜熱帯性気候のもとに広大な海に囲まれた多くの島々からなる。 ……中略……島における森林は、水源をかん養する天然の貯水槽となっ ており、……中略……安易な転用や乱伐をしてはならない。」とし、さら に「石灰岩からなっている地域では地下水が地域住民にとって重要な水源 となるので石灰岩の採堀は地下水の枯渇を招き、水質を低下させ、海の汚 染をも惹起すると思われるので乱採堀はさけなければならない。」と明記 してある。さらに県は「乱開発」による自然環境の破壊が県民の生活に及 ぼす多面的な保護に努める。さらに自然を損傷したり、破壊した場合は、 すべてすみやかに復元に努めるものとする。」とある。 しかし、現実には八重山の石垣島の白保海岸における新空港問題や那覇 市の野鳥の飛来地として知られる漫湖を横断する架橋をめぐる問題など、 軍用地及び軍事演習による森林破壊や水源地破壊など年々、自然環境事情 は悪化の一途を辿るばかりである。 第二次振計がスタートして、今年は4年目に入る。昨年(昭和59年)12 月には第二次振計関係予算の大枠が確定し、昭和60年3月には、沖縄中部 ・南部地域の工業地開発審議が開催される運びとなっている。 昭和57年度から昭和66年度の10ケ年計画を策定している第二次振計は 「平和で明るい、活力のある県づくり」を理念として①「地域特性を生か した産業の振興で雇用の安定。」②「豊かな人間形成と人材育成」など8 項目からなる県の方針が策定されているが、目下進行している事業は、農 業、水産及び製造業をはじめ各産業にかわる基盤整備や水資源開発、交通 関係の開発整備に重点が置かれている反面、自然保全に関する計画費や目 -39-

(21)

然博物館設置費などの大巾削減など、また、沖縄島では「最後に残された 自然」と云われる、ヤンバルクイナやヤンバルテナガコガネなどが生息す る与那覇岳の国設特別鳥獣保護格上げと保護地域の拡大に対して「林業経営 に支障あり」として区民の反対がある。 これらの「かけがえのない」自然環境を守るために県は自然環境保全の 基本方針にのっとってどのような対処をなすべきか、また住民の生活面と どのように調和させて行くべきか、最重要課題と考える。 沖縄タイムス社々説('85.3.14朝刊)は「島の生態系に配慮を」という見 出て「沖縄の文化と自然破壊は沖縄喪失である。」とする文化と自然を守 る十人委員会(豊平良顕座長)の「山原の森林、那覇の漫湖、白保のサンゴ 礁を守れ」とする強い要請を取り上げている。 沖縄の自然はこのように戦後40年余で著しく変容し、急速に崩壊しっ出 ある。 「復帰十年目の開発課題」(1981.3月)の中で沖縄大学教授高良有政氏 は1970年~1980年代にかけて第一次振計の不可欠条件として次の四点を強 調している。すなわち、 ①自然環境保全優先の原則 ②生活関連社会資本重点の原則 ③地域、地場産業振興の原則 ④自力開発の原則 を挙げ、大前として自然環境保全の優先を強調されている。 昭和58年9月、県民意識調査の中で「経済開発と環境保護」との関係に ついて、「あなたの考えはしいて云えば、次のどちらに近いでしょうか。」 の質問に対し、 ①経済活動が盛んになり、生活水準が上がり、生活が便利になれば多少 の公害が出ても仕方がない。 ②多少経済活動が停滞し、生活水準が上らなくても公害をなくし、自然 環境を守るようにした方がよい。 ③その他 -40-

(22)

④無回答 (圏域別振興開発基本計画策定調査報告書より、昭和59年3月) 図5標本特性(性別・年齢別)一間’- 0 100%0 100% 戸川 、2

県計 3.4

6.`I 中南部圏 、5

[ …

北部圏 、8 同lOi圏 |刀. 八iliIII圏 ~一千一一一一一一一一---- 甥虞20代30代イ01t50代60代HHI~鰯回答 足‘ 図6経済発展と環境保護との関係について一間14-0 100% 552人 4.7 265人 4.5 県31

中南部圏

154人 3.9 北部圏

11

62人 4.8 宮古圏

71人 八重山圏

可一一X-Hn了

"|騨騨論馳鯏蝋鮒繍騨鮒鯛

-41- 0 3.1へ /  ̄ 4 ノ ノ4 2.0斗ir U、 I 、 、 、 、 2.6 _ノ(、~O bO 、曰、■ 0.6J100 、 ’ ’ 1.6-;'1 グ グ グ グ' 、 91.3% 8.7-〆 87.9% 12.ルニワ 兜.2% 7.8-P 1611 98.4% 1.6Z 95.7% 4.3‐ 43.7 46.5 2.8--■ 7.0 6.0 9.1 29.3% 30.4% 17.9% 6 ● 1 lb OI O、 LI h 1.9 1 1 、 5.4 9.1 32.8 30.9 15.5 9 UU I D/ P ’' 10JhO"」 ク グ ヴ 4.5,Ⅱ( 8.4 9.0 24.0 30.5 18.8 ↓ ロ 1.2,’,'、、、、、〈 1.6< ワ ノ、 'クヘ1 9 8.1 37.1 27.`I 17.7 SF 0戸 ダ デ グ ヂ グ 1.41′,' グ グ グ リ グ , 』 ノ 9.9 21.1 30.9 25.4 5.6 5.6 〆 41.7 51.6 ●( 弧.7 58.1 《 47.4 48.1 《 51.8 38.7 《

(23)

図7圏域全体の発展のための整備優先度一間4-0100% l ̄ 6 人 4.97.1| _」

県 ①港湾 ②漁港 ③空港 ④道路 ⑤治山、治水 (ダム、河川な どの整備) ⑥土地改良事業 ⑦その他 ③無回答 凡例

…■

lLi

中 人

鯏州

北 人 宮 人

『・口

八 人 ③の⑤⑥⑥ 図8地域開発を進めるに当っての用地の確保について一間22-黙1 答 、6% 竃1 県計(552人) 中南部圏(265人) 北部圏(154人) の他 、6% そ 無回答 3.2% ア 22.6% ウ 30.6% 凡例

'1

畑を転用するのもやむを得ない 原野や森林を開発する 海岸を埋立てる イ 41.9% 宮古圏(62人) 八重山圏(71人) -42-

(24)

標本数800に対する回収率69%で調査結果をみると次の通りである。(沖 縄開発総合事務局昭和59年3月)図7.8 環境保護を要望する数51.6%で過半数を占め、経済発展派は41.7%で半 数以下。地域別でも若干の差はあるが、①②の両意見はほぼ半数に近いと みて、沖縄の島喚的環境と経済的立ち遅れと、未だ自立できない産業基盤 の弱さや環境に対す認識のあまさがうかがえる。 V・結ひ 昭和50年に制定された県の自然環境保全の基本方針第一条に明示されて いるように、あらゆる人間生活と自然との調和が保てるように①保全②管 理③維持が十分できる体制の確立を最優先させるべきである。特に今後、 新しい産業として注目を浴びているバイオテク/ロジーの導入に伴なうミ クロ的環境に対しても対処できる体制づくりを早期に固めて置く必要があ る。 このような意味で現在の琉球列島の生態系を環境科学的視点からみるな らば、われわれの地域における環境要素の中で資源的要素とのか出わりが 重要なウェイトを占める。この場合資源とは、①物質的要素や、②エネル ギー的要素の他に、③空間的要素(公有海の埋立や空港の上空など)、④時 間的要素(歴史的、地史的観点から島の成り立ちなどが考えられる。)、⑤生 物の種の多様性、つまり豊かな遺伝子群の保存性なども含め、これら の保全に対し十分配慮しなければならない。もしも無理すれば環境は崩壊 し、人間生存さえ危ぶまれることを認識すべきである。つまり、 ①県士が比較的狭い割に人口密度の傾向にあり、その上、森林伐採と植 栽、埋立、土地改良事業、道路整備その他あらゆる工業型開発が極めて 短期間に、しかも集中的実施されるため、自然環境の基盤が脆い島喚で は、一度破壊されれば再現不可能か、あるいは回復するにしても回復力 及び自浄力を失い易い立地にあること。 ②現在県は経済主導型の開発に偏重しているか、人類が活用し得るあら -43-

(25)

ゆるエネルギーとこれに伴なって同時に発生する非活動部分エネルギー を押えることはできないから自然から膨大なエネルギーを資源として得 ることは可能だとしてもロスエネルギーを排除できない限り(エントロ ピー増大)汚染と破壊は避けられない。 この大原理を踏えるなかで、自然と開発の調和を考えなければならな い。この原理を無視すれば島の荒廃、地球の砂漠化を招く破目になるこ とを世界自然資源保全戦略(WCS)は警告している。 ③そのためにも自然環境及び生活環境の変異を早期に予知できる地域に 適した生態指標の確立と徹底した独自の環境アセスメント早期実現と、 これに加えて教育の問題として、 ④将来に備えて若い世代に対し、人類生存の問題として深い理解と、こ れに対処できる実践力を養う意味から環境科学教育の普及とその充実と はかり、徹底指導の必要性を痛感するものである。 今回のW・WFJによる第一回シンポジウムは南西諸島の生態系の実態 と開発との関係を綜合的に、より客観的にとらえようとする試みでもあり、 たんなる動物保護のみで終るのではなく、人間生活の向上の立場から「ど うあるべきか」を現地の意見も反映させながら、今後生態系と人間生活の か公わり方を追求することが再確認されたことは有意義であった。 以上、稿を終るに当り、第一回シンポジウムの概要と南西諸島の大自然 に棲む生物たちが開発という文明によって滅ぼされつつあることを訴え、この 「かけがえのない琉球弧の自然」がいつまでも萱い空と海のもとで緑深い 森林の中で共存できるように祈って稿を閉じたい。 -44-

(26)

鎌 ヤンバルテナガコガネ(国特定)昭和59年2月 沖縄本島の国頭に生息。(昭58年9月発見) 体長65mm、雄は前脳1100mm内外の日本で最大の甲虫。 腹部にほとんど毛がなく、原始的な形態をしている。近縁種 が東南アジア、中風台湾に生息するが、本種は同属の北限 種となっている。 イリオモテヤマネコ(国定.特別指定)昭和52年3月15日 昭和40年に発見(西表島のみに生息)、新属新種で、地史の解 明や進化を究明する上で貴重。 -45-

(27)

トゲネズミ(国指定)昭和47年5月 奄美大島や沖縄本島の山林に生息する野生ネズミ。 体に鋭い針状の毛がある。夜行性。食性はイタジイ等の木の 実を食べる。 ヤンバルクイナ(国指定)昭和57年12月 昭和56年5月に沖縄本島国頭村で発見。 世界で珍らしい飛べない原始的野鳥として知られる。 -46-

(28)

…獺蕊鱗聯瀞懸轤

議鍵! `蕊Jil:蕊

llil1iiliil1i11il1鰯;lii1Ii11i鱗1鱗鍵

i;:;($;!{蕊;I ・辮・課

Ljlhhi1lJilhillilihlhHJiihliUTl

::塗:蕊獄。蕊、懸一唾、器・弓混、鈴,識。

ij蕊塞

銑;蕊:蕊欝

イポイモリ(昭和53年11月.県指定)

日本産イモリ科の中で、最も原始的形態をしている。 分布:奄美大島、徳之島、沖縄本島、渡嘉敷島 マダラトカゲモドキ(県指定.昭和53年11月) 分布:伊平屋島、伊江島、渡嘉敷島、久米島、阿嘉島、渡名 喜島に生息する。 -47-

(29)

コノハチョウ県指定(昭和43年8月)

沖縄本島と石垣、西表島だけに分布。

幼虫はセイタカスズムシソウやオキナワスズムシソウ を食す。学術的に貴重な昆虫。

(30)

参考及び引用文献 小原秀雄一南西諸島とその自然保護その1W・WFJ報告書1984. 安間繁樹一p・p51~53. 林良博一ppl69~176. 島崎稔-pPl94~243. 小野紀之・安間繁樹一pp229~243. 川崎嘉元、その他一pp313~341. 安座間喜勝一沖縄の生物、日本生物教育研究会、沖縄大会記念誌1984. 池原貞雄(動物)-pp33~37. 当山昌直(琉球の両生類及び爬虫類)-pp281~311. 与那城義春・日越国昭一沖縄県の天然記念物pp385~407. 島袋敬一一植物pp29・ 安座間喜勝一沖縄の生物(生態写真集)沖縄生物教育研究会 新星図書pP156・ 加藤陸奥雄編著一日本の天然記念物I(動物)U(動物)講談社1984. 木元新作一南の島の生きものたちppll9~124.共立科学ブック38. 松田賀孝、ほか八名一開発と自治ppl7~29.沖縄県教職員組合。 経済研究委員会。 高良有政一復帰10年目の開発課題と展望pp266~290. 財団法人沖縄労働経済研究所。1981.3.31. 安間繁樹琉球列島pp50~74.pp84~108.東海大出版部。 木崎甲子郎編著一琉球の自然史ppl~37.pp99~112. 築地書館1980.10. 沖縄開発庁、沖縄総合事務局総務部調査企画課一 圏域別振興開発基本計画策定調査報告書1984.3. p・p48.pp49.p・p50.p・p53・pp67~68. pp77~78. 沖縄開発庁総務課一昭和59年沖縄の振興開発。 1. 2. 3. ● ● ● 亘幻扣]△F●尻囮)〈』叩) 7. ●● (一x、)〈叩〕●〉 10. ● 。U■■ユ ロⅡOL -49-

(31)

公害対策謀一昭和58年沖縄県環境図書pp403~411. 沖縄県企画開発統計課一第27回沖縄県統計年鑑 企画調整室一昭和56年県勢のあらまし 半谷高久・大竹千代子-日本環境図譜及び、続日本環境図譜・ 宇井純一1985現代用語の基礎知識p・pl24p.p128. ●●●●● (叩〃〈〕(和『叩》△刎」△(』羽)(畠叩) ■ⅡⅡ(G●00▲・00-aⅡOL勺ⅡI( -50-

参照

関連したドキュメント

② 現地業務期間中は安全管理に十分留意してください。現地の治安状況に ついては、

平成 14 年 6月 北区役所地球温暖化対策実行計画(第1次) 策定 平成 17 年 6月 第2次北区役所地球温暖化対策実行計画 策定 平成 20 年 3月 北区地球温暖化対策地域推進計画

前回ご報告した際、これは昨年度の下半期ですけれども、このときは第1計画期間の

※各事業所が提出した地球温暖化対策計画書の平成28年度の排出実績が第二計画

今年度第3期最終年である合志市地域福祉計画・活動計画の方針に基づき、地域共生社会の実現、及び

平成 28(2016)年 5 ⽉には「地球温暖化対策計画」が閣議決定され、中期⽬標として「2030 年度に おいて、2013

自動車環境管理計画書及び地球温暖化対策計 画書の対象事業者に対し、自動車の使用又は

本資料の貿易額は、宮城県に所在する税関官署の管轄区域に蔵置された輸出入貨物の通関額を集計したものです。したがって、宮城県で生産・消費