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<活動記録><教育事業>2012年度先端社会研究所リサーチコンペ

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Academic year: 2021

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<活動記録><教育事業>2012年度先端社会研究所リサ

ーチコンペ

著者

李 建志, 藤井 和子, 三阪 夕芽子, 福田 雄, 中野

歩美, 松村 淳, 矢崎 千華

雑誌名

関西学院大学先端社会研究所紀要 = Annual review

of the institute for advanced social research

8

ページ

122-126

発行年

2012-10-31

(2)

活動記録 ◆ 教育事業 ◆

2012 年度先端社会研究所リサーチコンペ

【募集期間】:2012 年 4 月 25 日から 2012 年 6 月 1 日 【リサーチコンペウィーク】:2012 年 6 月 18 日から 2012 年 6 月 23 日 【公開プレゼンテーション】:2012 年 6 月 23 日 関西学院大学上ヶ原キャンパス先端社会研究所セミナールーム ◆開催の趣旨/リサーチコンペを振り返って 李 建志(関西学院大学先端社会研究所副所長) 1.企画の概要 先端社会研究所は、文部科学省 21 世紀 COE プログラム助成事業を引き継ぐかたちで設立され た研究所である。その成立過程からも明らかなように、若手の研究者を育成することを主な研究活 動のひとつにしている。そして、昨年度からは研究所の規定が修正され、若手研究者養成に加えて 大学院生の教育支援プロジェクトを研究所の正規活動のひとつに位置づけ、広い意味での教育活動 を行っている。 この大学院生を対象とした教育支援プログラムも、海外での学術発表の支援や、論文投稿のため の研究資金援助など多岐に及んでいるが、本リサーチコンペは、全学的な規模で募集がかけられる ものとして一昨年度からはじめられた事業である。その趣旨を説明すれば、本研究所が掲げている 「他者問題」や、それと関連する研究テーマとしての「排除と包摂」の問題に積極的に取り組む 「優れた先端的な研究」を本学の全研究科大学院生・研究員から公募し、採択者には一定額の研究 助成を行う。そしてこの研究助成を通じて、当該研究のより一層の発展を支援するとともに、研究 を企画・遂行する能力を育成するというものである。 応募状況は、一昨年度の 4 名からはじまり、昨年度は 10 名という多くの大学院生、研究員が申 請し、それぞれの研究に 20 万円を上限として助成を行った。今年度は、社会学研究科を含むふた つの研究科から 7 名の申請があった(後述)。そのうち 2 名は昨年度もリサーチコンペに参加した 大学院生であり、いよいよコンペを通じて研究を続けるなどの広がりがみられるようになったこと は、リサーチコンペの若手研究者を養成するという趣旨がいっそう広がっているという証拠であ り、非常にいい兆候としてあげられるだろう。 募集期間は 4 月末から 6 月初日までのほぼ一か月で、すでに述べたように昨年度よりは少ないも のであったが、これは落選者が出た昨年度の状況をふまえて、審査が厳しいものになるのではない

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だろう。 また、6 月 18 日から 23 日までを「リサーチコンペウィーク」とし、この期間には申請者全員の 「研究計画申請書」を先端社会研究所のホームページにて周知徹底した。そしてその最終日にあた る 23 日には、申請者全員に公開の場でのプレゼンテーションをしてもらい、厳正な審査をした。 このリサーチコンペウィークは、初年度から続けて行われているものだが、情報公開によって審査 の公正性を確保するとともに、次年度以降に応募する可能性がある学生、研究員にこの制度を周知 するなど、全学における制度の浸透と申請者の掘りおこしを目的としたものである。 最終的な採択は、2012 年度先端社会研究所リサーチコンペ審査委員会(先端社会研究所所長、 副所長および運営委員会のメンバーである 2 名の教員から構成された組織。文学部と社会学部にま たがる人員である)によって多角的に、そして厳正に審査された。 2.審査の結果 審査結果は下表のとおりである。研究計画書およびプレゼンテーションの双方から評価し、また 資金の使途や必要性などを考慮し、最終的には 6 名(6 件)が採択された。結果として、昨年度同 様に社会学研究科の申請者ばかりとなったことは残念である。本制度の趣旨を理解したうえで、意 欲的で先端的な研究計画が、いっそう多く申請されることを望む。また、共同研究は本年度もなか った。これも来年度以降の反省材料となるだろう。 以下は、採択者の「研究計画申請書」である。参考としていただきたい。 名前 所属 地位 学年 研究計画題目 藤井 和子 社会学研究科 博士課程後期課程 1年 引揚者をめぐる排除と包摂−戦後日本における 「もう一つの『他者』問題」− 三坂 夕芽子 社会学研究科 博士課程前期課程 1年 貧困地域で興隆するペンテコステ派キリスト教− サブサハラ・アフリカ地域を例に− 福田 雄 社会学研究科 博士課程後期課程 3年 災害の慰霊・追悼にみられる記憶の持続と変容に ついての社会学的研究 中野 歩美 社会学研究科 博士課程後期課程 1年 インド・タール沙漠の移動/定住をめぐる言説空 間とジョーギーの自己認識に関する研究 松村 淳 社会学研究科 博士課程後期課程 2年 地方建築界における他者問題の研究−「グローバ ル/ナショナル/ローカル」という視座から− 矢崎 千華 社会学研究科 博士課程後期課程 1年 紙上「身の上相談」における相談の回答技法に関 する研究

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◆採択された研究計画要旨

◎引揚者をめぐる排除と包摂

−戦後日本における「もう一つの『他者』問題」− 藤井 和子(社会学研究科博士課程後期課程 1 年) これまで、戦後日本の「他者」問題に関しては、在日外国人の問題が多く取り上げられてきた が、引揚者(1945 年の日本敗戦により植民地等から帰還した日本人)もまた、地域社会において 「他者」化され、排除と包摂の対象とされた人々であった。本研究は、この「もう一つの『他者』 問題」というべき引揚者問題をとりあげ、戦後日本の地域社会において、引揚者に対する排除と包 摂がいかに行なわれてきたか、そのダイナミズムを解明しようとするものである。 敗戦直後、日本本土には 600 万人の引揚者の流入があった。彼らの上陸後の行き先は、縁故の 地、大都市や各地方都市、新たに開拓される戦後入植地などさまざまであったが、いずれの地で も、引揚者は、地域社会における排除と包摂の対象とされてきた。 本研究では、敗戦直後から今日までに、各地域社会において、①引揚者に対する排除はどのよう な形でなぜ行なわれたのか、②引揚者が地域社会に包摂される場合、どのような契機でいかに行な われたのか、③排除と包摂の相互関係はいかなるものであったか、という問題を設定し、福岡、佐 賀、長崎、茨城の国内 4 地域をフィールドに、現地調査を実施し分析を行なうものである。

◎貧困地域で興隆するペンテコステ派キリスト教

−サブサハラ・アフリカ地域を例に− 三坂 夕芽子(社会学研究科博士課程前期課程 1 年) 近代化が進むにつれて、人々や社会にとって宗教の役割が衰退していくとされてきた。しかし、 現代において宗教が人々の「生」を保障するための存在として、重要な役割を担っていることがあ る。その事例として、世界中で信者数を急激に増やしている宗教の一つ「ペンテコステ派キリスト 教」があり、現在サブサハラ・アフリカ地域で顕著な興隆がみられる。この地域では、脱植民地化 以降の急速な近代化によって、伝統社会的紐帯が崩壊し社会の不安が増大しているからこそ、人々 がこの宗教を受け入れているのではないだろうか。これまで、信者がどのようにペンテコステ派を 受け入れているかという先行研究は多いものの、布教する側である伝道師の実態、生成のプロセス などはあまり議論されてこなかった。ペンテコステ派の伝道師は、飲酒や喫煙の禁止をはじめ厳格 な「禁欲」主義を説く一方で、家や車の購入、富の獲得など「消費」を強く促す存在であり、両義 性をもつ「他者」だといえる。本研究では、ペンテコステ派の伝道師に密着した現地調査を通じ て、ペンテコステ派が興隆する要因や今後の拡がりを考察・分析していきたいと考える。

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◎災害の慰霊・追悼にみられる記憶の持続と変容についての社会学的研究

福田 雄(社会学研究科博士課程後期課程 3 年) 本研究は、東日本大震災をめぐる慰霊祭や追悼式への調査を通じて、現代日本における「災禍の 儀礼」という現象を考察する。近代社会で最も重要な意味をもつ出来事は「偶発的事故」、「犯罪」、 「災害」などによる「非業の死」である(ボードリヤール『象徴交換と死』)。現代日本においてそ うした「非業の死」は、慰霊祭や追悼式などの儀礼的現象として顕在化するが、こうした現象の社 会学的意義は、これまでほとんど検討されてこなかった。本研究計画は、災害をめぐり繰り返され る象徴的実践を通して、いかに災禍が想起され、そのリアリティが共有され、継承されていくのか を明らかにする。 こうした関心にもとづき、申請者は 2011 年度リサーチコンペの助成を受け主に宮城県石巻市お よび女川町における調査を行ってきた(詳細は、福田雄「慰霊・追悼の社会学:災禍の儀礼論に向 けて」『先端社会研究所紀要』第 8 号)。ただ震災からの月日が経つとともに、震災の直接的・個人 的な体験が、非体験者である「他者」にも共有可能な集合的経験としてさらに抽象化していくこと が予想される。本研究は 3.11 をめぐる慰霊・追悼実践の継続調査を通して、災禍の社会的経験が いかに編成されていくのかという過程を明らかにするものである。

◎インド・タール沙漠の移動/定住をめぐる言説空間とジョーギーの

自己認識に関する研究

中野 歩美(社会学研究科博士課程後期課程 1 年) 本研究は、インド・タール沙漠における移動/定住の言説空間を微視的に描写しながら、ジョー ギーという人びとの自己認識について考察していくものである。 現地で移動民の代表とされるジョーギーは、その生活様式の特徴から、時にカーナバードシュと いう範疇で語られる。この言葉は、直訳すると house on shoulder を意味し、家を持たずに移動を 続ける人びとを揶揄したものである。彼らが周囲から「移動民」や「最下層民」として語られる状 況は、行政の支援政策によってジョーギーの大半が住居を持つようになった現在でも変わらない。 このことは、彼らが定住者や定住社会というヘゲモニー集団から「他者」として切り取られ、客体 化された存在であることを示している。しかし重要なのは、彼らが定住社会から「他者(移動 民)」として排他的な扱いを受けながらも、そこから完全には排除されず、状況に依拠したヘゲモ ニー集団からの包摂と排除という両方の態度が見出される点である。 上記の問題意識を踏まえ、本研究では、第一に、現地における移動/定住に関する言説空間を描 き出し、ジョーギーが「他者化」される過程を明らかにすること、第二に、ヘゲモニー集団による 排除と包摂を、ジョーギー自身がどのように解釈し自己認識へと反映させているのかについての考 察を試みる。

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◎地方建築界における他者問題の研究

−「グローバル/ナショナル/ローカル」という視座から− 松村 淳(社会学研究科博士課程後期課程 2 年) 建築家/建築士という職能はいかなるものなのか。それが昨年度からの問いである。一部の建築 家はグローバル志向な職能倫理を体現している。しかし、理想と現実(ローカルな実践)は大きく 乖離していた。彼らが「建築家」足らんとするためには、下請けや施工業務などとの兼業をするこ とで生計を立てる建築家たち、つまりローカルな実践の世界にのみ生きる者たちや、住宅のブラン ディングを高め、客に対する訴求効果の高いワードとして人口に膾炙し始めた意味での「建築家」 という名称を都合よく使う者たちから自らを卓越化/差別化することに「駆られ」てしまわざるを 得ない。それは、同業者への斥力として作用し、彼らを簡単に他者化する傾向へと向かわせる。時 にそれは、「仲間」を、繋留する引力として反転する。「グローバル/ローカル」という乖離は斥力 /引力が作用した磁場を発生させ「地方」の建築業界を再編し続ける。今年度はさらに「ナショナ ル」という視座を盛り込む。これは「建築士」という(法)制度をめぐる問題である。「グローバ ル/ナショナル/ローカル」といった視座を導入することで、より立体的に地方の専門職の世界を 記述分析していくことを目指す。

◎紙上「身の上相談」における相談の回答技法に関する研究

矢崎 千華(社会学研究科博士課程後期課程 1 年) 人びとの日常生活の悩み解決のための取り組みのひとつに紙上「身の上相談」がある。本研究で は、『読売新聞』「人生案内」を対象として、相談においてどのように解決が提示されているのか、 その言語編成に注目して考察を行う。これまでの「身の上相談」研究で注目されてきたのは、人び とが何に悩んでいるのかという、相談者側の言説についてであり、量的な調査により投稿者の属性 や悩みの類型化を行うというものであった。そこで本研究では、先行研究においては焦点化されて いなかった、相談者の問題として語られるものに対して行われる助言・提案に焦点をあて、それら の助言・提案がどのようにして可能になっているのかという仕組みについて明らかにする。本研究 により得られる知見は、紙上「身の上相談」に限られたものではなく、各種のセラピーやカウンセ リングなどの相談技巧にも応用可能なものである。相談者の悩みは、夫婦、親子、社会、家族、愛 と性、仕事と多岐にわたる。これらは他者との関係における問題と呼ぶことができるだろう。これ らの問題に対する回答あるいは解決方法の様式を明らかにすることで、他者との相克を乗り越えて いくひとつの道が示される。

参照

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