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金融自由化と郵便貯金(1) : 郵貯論争の回顧と展望

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金融自由化と郵便貯金(1)

郵貯論争の回顧と展望一

有 馬 敏 則

111廼yV

 目  次 はじめに 郵貯論争の背景 民間金融機関と郵政省との主要な論点(以上本号) 金融制度改革と郵貯(以下241号) 小口預金金利自由化と郵貯 1 は じ め に  日本の金融自由化は,企業や銀行の国際化が進展し国債の大量発行が始まっ た昭和50年代初めから,その基盤が造成されてきたといえる。とくに現先取引 股賑への対抗策として昭和54年5月,金融市場の実勢をもとに発行金融機関と       ラ 投資家との交渉により,金利が自由に決定されるNCD(Negotiable Certifi− cates of Deposits,譲渡可能定期預金証書)の取扱いが開始されてから,実質 的に金融自由化が大きく前進した(これは金融制度調査会小委員会中間報告 〔71〕でも指摘されているところである)。  そしてその動きは,一連のアメリカやヨーロッパ諸国の日本への強力な圧力 (外圧)により表面化することとなった。すなわち昭和57年来日したピーター 1) 昭和54年5月の最:低発行単位は5億円,発行期間は3∼6カ月,発行限度枠は自己  資本の10%であった。その後昭和59年1月,最低発行単位が3億円に改定された。そ  して昭和60年4月,最低発行単位が1億円,発行期間1∼6カ月,自己資本の100%  となり,昭和61年4月,発行期間が1カ月∼1年とされた。昭和62年春には最低発行  単位,5000万円,1カ月未満の発行期間も認められる予定となっている。

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 2  彦根論叢 第239号 ソン元米商務長富の演説,昭和58年のスプリンケル財務次官の米連邦議会報告 そして,同年11月目レーガン米大統領訪日およびリーガン財務長官の記者会見 等々である。また昭和59年2月には,ECも金融開放要求書を日本に提出した。  これらを踏まえて昭和59年2月から発足した日米円・ドル委員会は,6回目 会議の後,昭和59年5,月30日『日米円・ドル委員会報告書』〔84〕を発表した。 また〔84〕の公表と同時に大蔵省も,『金融の自由化及び円の国際化について の現状と展望』〔85〕を併せて発表し,日本における今後の金融自由化の大ま かなスケジュールを示したが,〔84〕〔85〕の報告書は,日本の金融界に幕末の 黒船以来といわれる大きな衝撃を与え#といえる。  これらの報告書以来,日本の金融自由化は急速に進行してきたが,その背景 には,①高度成長経済から低成長経済への移行に伴う国債の大量発行による自 由金利ベースの資本調達市場の成立,②企業や個人の金利選好の増大,③銀行 の新規国債窓口販売や既発債ディーリング開始,証券会社の国債担保貸出や NCD流通取扱い等の業態間の垣根の低下,④長短金融分離主義の不明確化, ⑤専門銀行主義の不明確化,⑥金融機関の情報化と技術革新の進展,⑦邦銀の 海外進出や外銀の対日進出といった相互交流の増大および円の国際的役割拡大 に伴う外国企業の日本国内での円資金調達増大や日本企業の海外での資金調達 拡大といった金融の国際化,⑧様々な制度的制約の緩和や撤廃等々の要因を見 過すわけにはいかない。  金融自由化のなかでも金利の自由化は,本格的実施段階に入っている。例       

えば昭和60年3月,相互銀行,信用金庫が,同年4月から普通銀行がMMC

(Money Market Certificates,市場金利連動型預金,日銀が公表する前週の水 準のNCD金利よりO. 75%低い水準がMMC金利の上限)の取扱いを最低預入 単位5000万円以上で開始しているごとくである。そして昭和61年9月には最低 預入単位が3000万F]に引下げられ,今後さらに引下げられる予定である。  また昭和60年6月には,金融制度調査会報告『金融自由化の進展とその環境 2)MMCは,最:当意入単位5000万円,発行期間1∼6ヵ月で開始された。

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      金融自由化と郵便貯金(1) 3 整備』〔116〕により,自由化の下での信用秩序維持の方法が答申された。さら に60年7月には,政府により『市場アクセス改善のためのアクション・プログ ラム』 〔121〕が公表され,預金金利自由化のより詳細なスケジュールが示さ れている.  そして〔121〕で「本年秋,預入期間2年以内の定期預金のうち,預入単位 10億円以上のものについて金利規制を徹廃し,それ以降,順次段階的に預入単 位を引下げる」とされているのを受け,昭和60年10月,定期預金金利自由化の 第1段階として,10億円以上の大口定期預金金利の自由化が実施された。さら に昭和61年4.月には5億円,昭和61年9,月には3億円,昭和62年春には1億円 以上の大ロの定期預金金利が自由化される予定になっている。  これに伴って小口預金金利についても〔121〕で「具体的諸問題について早 急に検討を進め,大口に引続き自由化を推進する」とされており,その自由化 へのスケジュールが明らかにされる日も近い。小口預金金利自由化の具体的方 法については,すでに郵政省貯金局長の私的諮問機関である「郵便貯金資金に 関する研究会」が,昭和60年8,月22日に発表した『郵便貯金資金の運用の在り 方』〔122〕や,大蔵省銀行局長の私的諮問機関である金融問題研究会が,昭和 61年5,月22日に発表した『小口預金金利の自由化について』〔172〕があるもの の,両者の主張には,かなりの隔たりがある。したがって,小口預金金利自由 化の具体化にあたっては,まだかなりの紆余曲折が予想される。  ところで小口預金金利自由化の議論においては,民聞金融機関を中心として 郵便貯金の存在が大きな障害になっているという主張が,近年とくに強くなっ ている。これに対し郵政省側からは,「郵便貯金は金利自由化の障害にはなら ない」との批判がなされているものの,両者の議論はあまりかみ合っていない。  そこで本稿では,文献上は明治42年から今日まで延々と続けられている郵便 貯金論争の背景を明治8年の郵便貯金創設時まで遡って考察するとともに,現 在までの主要な論点を整理することを通じて,小口預金金利自由化と郵便貯金 問題を検討し,郵便貯金の将来についても考察したい。なお郵貯論争関連論文 は膨大な数になり,すべてを網羅することは不可能に近い。そこで郵貯論争を

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 4 彦根論叢第239号

比較的多く掲載している『金融ジャーナル」と「金融財政事情』を中心に文献 を収集した〔また参考文献中の()内に月日があるものは,それが発表された 期日を示している〕。 H 郵貯論争の背景  1. 郵便貯金制度創設の経緯  (1)世界の郵便貯金制度創設の経緯  郵便貯金制度は,1861年,世界で最初にイギリスにおいて創設された。しか しその端緒は1807年,イギリスの国会議員ホワイトブレッドが,当時貯蓄銀行 が2行しか存在しなかったため,社会政策的観点から「労働社会の工業奨励と 生活困窮者救済に関する法律案」を下院に提出するとともに,イギリス国内の       3) 郵便局で貯金制度を実施すべきであると提唱したことに始まるとされている。  この提案は議会で承認されなかったものの,その後1838年開始された郵便為 替業務は順調に発展した。1858年当時,貯蓄銀行が625行に達したにもかかわ らず,まだ山野僻地まで普及していない状況であったので,チャールズ・サイ クスは,当時の宰相グラッドストーンに働きかけ,ついに1860年5月17日に国 会の議決を経て「郵便貯蓄銀行法(Law of Post OMce Savings Banks)」の 施行となった。  イギリスで創設された郵便貯金制度は,1870年ベルギーで実施されるなど, その後世界中に普及していった。すなわち,19世紀中にはカナダ,イタリヤ, フランス,オランダ,オーストリア,スウェーデンへと拡がり,20世紀にはい ってからは,アメリカ,スペイン,そして第2次大戦中の西ドイツ,戦後のノ ルウェーへ普及していった。  (2)日本の郵便貯金制度創設の経緯  日本の郵便貯金制度は,1870年(明治3年)渡英した前島密が詳細にイギリ スの郵便制度を見聞したことによってその基礎が固められた。彼は明治4年に 3) 奥田 〔14〕 pp.16−17.

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      金融自由化と郵便貯金{1) 5 帰国すると駅逓頭に就任し,まずイギリスと同様な郵便為替制度創設から着手 した。かくて明治7年9月,太政官布告第90号で郵便為替規則が公布され,明 治8年1月2日から全国110の郵便局で内国為替業務取扱いが開始された。  そして明治8年(1875年)4月置内務省達」により「貯金預り規則」が公布 され,5月2日から,貯蓄思想を普及し,庶民の生活の安定を図るとともに, 殖産興業のための国家資金を集積する目的で,東京.市内18局と横浜郵便局で郵 便貯金業務が開始された。したがって1875年(明治8年)に日本の郵便貯金制 度が創設されたことになり,1861年イギリスで開始されたばかりの制度を,日        の 本は当時の先進国に先駆けて導入したといえるだろう。  2. 日本の郵便貯金残高の推移  (1)草創期から第2次大戦まで  明治8年当時,貯蓄銀行はまだ設立されておらず,このような状況下で郵便 貯金制度を国民に理解させ,利用勧奨を図るのは容易でなく,第1年の実績は,        ヨ  預入人員2,148入,預金高20,559円にすぎなかった(これには,最低預入額5 銭が高すぎたことや利子が低かったことも原因している)。  ところで明治5年11月「国立銀行条例」が公布されたものの,この条例によ る国立銀行への規制が適正でなかったことや,民間金融機関に「銀行」の名称 使用を禁止したため,明治8年末の銀行数は4行,支店数10,預金総額も147 万円に止まっていた。  しかし明治9年の「国立銀行条例」改正により,国立銀行への規制緩和と民 間金融機関に「銀行」の名称使用を認めたため,明治12年には国立銀行は151 行となった。また民間金融機関設立も盛んとなり,預金業務取扱機関も増加し たため,郵便貯金を民間預金と区別する意味から,明治13年「駅逓局貯金」と 命名され,明治14年「駅逓局」は内務省から農商務省に移管された。  駅逓局は明治ユ8年6月,全国の郵便局に貯金事務を取扱わせ,明治18年末に 4)郵政省貯金局『為替貯金事業百年史』〔21〕鶴岡〔7〕参照。 5)郵便貯金経営問題研究会〔87〕P.55.

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6 彦根論叢第239号

         第1表貯蓄性預金残高  (単位千円,%)

痢鞭貯金酬全国銀行酬期限・)1・/・

明治15年 1,058 2,346 3,404 31.1 16 2,298 3,748 6,046 38.3 17 5,260 4,553 9,813 53.6 18 9,050 5,069 14,119 64.1 19 15,462 7,739 23,201 66.6 20 18,213 8,831 27,044 67.3 21 19,758 9,580 29,338 67.3 22 20,441 10,847 31,288 65.3 23 19,514 9,474 28,988 67.3 〈出所〉郵便貯金は『郵政百年史』,全国銀行預金は貯蓄預金と定期預金の合    計で『明治財政史』第13巻。 は独立して逓信省を創設した。そして明治20年「駅逓局貯金」も「郵便貯金」 と改称され,現在に至っている。  第1表は日本銀行が創設された明治15年(1882年)から9年間の貯蓄性預金 残高である。全国の銀行預金は明治15年234万円から,明治22年には,1,084万 円と4.6倍強に増加している。これに対し郵便貯金は,明治15年105万円から明 治22年には2,044万円と19.4倍強の増加となっている。  また貯蓄性預金残高に翻る郵便貯金のシェアは,明治15年に31.1%であった のが,貯金事務を全国の郵便局に拡大した明治18年には,64.1%へ上昇してい る。その後も約67%台で推移し,日本における貯蓄思想の普及に郵便貯金がい かに寄与したかを示しているといえるだろう。  そして明治8年から大正3年(1914年)までの40年間に郵便貯金残高は2億 円余までに拡大した。さらに第1次大戦が勃発した大正3年から大正9年まで の6年間で,過去40年間の3倍強の6億8,000万円が増加し,大正9年(1920 年)度末には8億8,498万円に達した。  その後,第2次大戦勃発とインフレーション等により,郵便貯金残高も急膨 張していった。  ② 第2次大戦後の郵便貯金残高

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兆円 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10       金融自由化と郵便貯金(1)  7

第1図郵便貯金残高の推移

 5,383 0  1,007,234億円 940,421 862,932 780,978 619,498 245,627 77,439 025 231

年度

昭和30354045505557585960年12月

く出所〉『図説・財政投融資』昭和61年版,P.174・  第1図は昭和30年(1955年)度末から昭和60年(1985年)12月末までの郵便 貯金残高の推移を示したものである。昭和40年代後半は残高の伸びが25%を超 えるペースで増加してきたものの,昭和50年代になると昭和55年度を除き伸び 率は徐々に低下してきている。しかし昭和60年は再び増加し,60年12月末で100 兆7,234億円と100兆円を突破し61年3月末現在で101兆7,484億円になっている。  他方,民間金融機関の預金残高伸び率は,総じて郵便貯金の伸び率より低め に推移した。そこで個人預貯金に占める郵便貯金のシェアは,昭和41年3月末 の15.9%から昭和48年度末には20.4%と20%台になり,昭和51年度末24.7%,

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8  彦根論叢 第239号 第2表 金融機関別個入貯蓄残高及び個人預貯金残高の構成比の推移  (単位:%)

金融機翻154鞭55年劇56年度ノ・7鞭158鞭159鞭

個人貯蓄

個人預貯金 郵便貯金 銀  行 相互銀行 信用金庫 信用組合 農漁協組 労働金庫 信 託 保 険 証 券 100. 0 67. 6 18. 9 22. 3 5. 6 8.4 2. 2 9. 3 0. 9 5.7 15. 5 11. 2 100. 0 28. 0 33. 1 8. 2 12. 4 3. 3 13. 6 1.4 100. 0 67. 5100. 0 20. 1 21. 7 5. 4 8. 2 2. 2 9. O O. 9 5.5 15. 9 IL 1 29. 8 32. 1 8. 0 12. 1 3. 2 13.3

L4

100. 0 6Z 3 20. 2 21. 6 5.4 8.1 2. 2 8. 8 1. 0 5. 4 16. 4 10. 9 100. 0 30. 1 32. 1 8. 0 12. 1 3. 2 13. 1 1.4 100. 0 66. 3FIOO. O 20. 5 21. 0 5.2 7. 9 2. 1 8. 6 1. 0 5. 5 17. 0 11, 1 30. 9 3L 7 7.9 11. 9 3.2 13. 0 1. 4 100. 0 64. 8 20. 5 20. 3 5. 0 7. 6 2. 1 8. 3 1. 0 5.6 17. 6 12. 0 100. 0 31. 7 31. 4 7. 8 11. 8 3. 2 12. 7 1.5 100. 0 63. 81100. 0 20. 20. 2 4. 7. 2. 8. o. 41 32. 0  31. 7 71 7.4 51 11.8 01 3.1 11 12.6 91 1.5 5. 4 18. 3 12. 4 〈出所〉日本銀行『個人貯蓄実績』 昭和52年度末26.4%,昭和53年度末27.4%となり,第2表に示されているよう に昭和54年度末28.O%,昭和55年度末29.8%,そして昭和56年度末には30.1% と30%台となり,昭和60年3月末で32.0%となっている。  このような個人金融分野における郵便貯金残高のシェアの伸びが,後述する ように民間金融機関側から「官業の民業への圧迫」として批判される背景とな っている。ただ郵便貯金は,ここ数年個人預貯金分野において微増しているも のの,個人貯蓄全体でみれば約20%と横ばいの傾向にあり,郵政省側は「近年, 利用者・国民の金融資産選択は,金利選好が高まり預貯金以外の金融資産にも 広がっており,シェアについては個入貯蓄全体の中で論議されるべきである」 と主張している。 3. 郵便貯金の資金運用 (1>草創期から第2次大戦までの資金運用 明治8.年創設当時の郵便貯金の資金運用は,第3表に示ざれているように,

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       金融自由化と郵便貯金(1)  9 第3表 郵便貯金資金運用の変遷 年 月 賦  用  先 根 拠 法 規 等 明治8年

〃9年5月

〃11年5月 〃17年6,月 〃18年5月 大正14年3月 東京為替会社 第一国立銀行 第一国立銀行及び大蔵省 大蔵省国債局 大蔵省預金局 大蔵省預金部 「貯金預リ高ヲ国債局へ相預クル三二 付約定書」上記約定書改定(第1条) 預金規則第1条 預金部預金法第2条 〈出所〉郵便貯金経営問題研究会『郵貯と経営』P.55より作成。 明治政府によって設立された会社組織の東京為替会社で行われていた。しかし 同社の経営が不安定視されたため,明治9年には第一国立銀行に運用先が変更 された。  その後,前述したように郵便貯金の資金量増大に伴い,リスク分散を図るた め,明治11年5月運用先に大蔵省国債局が加えられた。このように郵便貯金の 運用先は,明治17年6,月までは第一国立銀行と大蔵省の二か所となり,郵政省 が事業の一切を統一管理していた。しかし明治17年になって,当時の不況や信 用不安等により,さらに安全な資金運用を図るため,運用先を大蔵省のみに限 定することになった。その後も多額な資金のより安全な運用先がなかった事等       6) のため,明治18年5,月「預金規則」が,大正14年3月「預金部預金法」が制定 されるなど,第二次大戦終結まで運用先は大蔵省のみに限られる状態が続いた。  (2)第2次大戦後の資金運用  昭和25年,GH:Qドッジ財政顧問の覚書により,①戦後混乱期の国民の貯蓄 等について「絶対的安全」な資金運用を図る心要がある,②日本経済再建のた め長期性資金確保の要請を満たす必要があるとの見地から,「国の資金はすべ て大蔵省に預託して運用するべきである」との指示があり,昭和26年(1951 年)「資金運用部資金法」が制定され,郵便貯金は他の国の資金とともに資金 6)明治18年5月「太政官布告」第13号により「預金規則」を制定して,現在の大蔵省  資金運用部(当時の大蔵省預金局)に駅逓局貯金資金の管理を移す際には,貯蓄思想  普及に努力した農商務省駅逓局が激しく反対した。

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9 彦根論叢 第2391号 10 。餐趙9柘8州.q 、墨秘肝お降聾﹃細躍懸繕譲・纒区﹄︿嶺韻﹀  。ゆ総P圓右撫薩霜騒甚簑侵︹一口一ス想︶

﹁一1−Il−1ーーIl−1−1−1﹂

群手縄迷連督 一 鋒圏隷“煙習

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虚愈映翼無軽蝋遡 沸山褻膣粁田遇︽覇蝋争喜遡︽鐙硝挿坦   灘遇“ 群翻照沸藝纒迷

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R馨黙譲 姻叶駆鴫・鰹迷曝蓮 画圃 帥翻廿嵐圃命針釧幽 脚鋤壷口誕 帥囹︽諸姻暑□細富山圃粁田一乗︽・紀︽ 圃   布甑白鞘督葺 沸婁山迷 画囲 帥布藝映葉椙唖聾冬羅肇檸圃  布姻高糞 縮駆 醐蜘隔︸罵 命無鴇旺製翻慰l  l  一  ﹁  一  量 命 蛍

 1−1111ーーllIl

箪    圖 ヨ枢褄療 む堅ゆ胆画 慕 駕 Q 姻嵐 瓶躍 軽 轡 叢 区N謡

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      金融自由化と郵便貯金(1) 11       7) 運用部で統合管理されることとなった。  その後,大幅な制度改正もなく現在に至っているが,郵便貯金,資金運用部, 財政投融資資金の流れを総合的に図示したのが,第2図である。すなわち郵便 貯金として預けられた資金は,厚生年金,国民年金,簡易保険,郵便年金等の 資金とともに,日常の払戻しおよび預金担保貸付必要額の他はすべて資金運用 部に預託することが義務づけられ,資金運用部を通じて財政投融資の原資とな り,国の重要施策である住宅建設,生活環境整備,中小企業の近代化など,国 民の福祉の増進や社会資本の充実などに大きく寄与している。  しかし第5章で議論されるように,現在,資金運用部資金の使われ方には, 一般会計の肩代わりや,短期運用の巨額化,長期運用化など数多くの問題点が 指摘されており,各方面からその見直しが提起され,これも郵貯論争に拍車を かける背景となっている。         皿 民間金融機関と郵政省との主要な論点  !, 郵便貯金の肥大化  (1)昭和40年代後半からの郵貯の急増  今日においても激しく行われている郵貯論争の高まりをもたらした最大の要 因は,第1図に示されているように,昭和40年代後半から目立ちはじめた郵便 貯金残高の急増であろう。第4表は各種金融機関の預貯金残高の増加倍率を表 しているが,昭和45年3月末から昭和55年3,月末の10年間に,郵便貯金が信託      第4表金融機関別預貯金・信託残高の伸び    (単位:倍) 期 間

綱馴信訓相釧信金麟陣貯

昭和35年3月末∼45年3月末 昭和45年3月末∼55年3月末 昭和55年3月末∼61年3月末 4.6 3.7 1. 63 4. 5 1. 65 4.4 15.6 6. 1 L 68 4. 6 1. 39 8.0 4. 8 L 59 7. 5 4.9 1. 58 6.9 8.2 1.97 〈出所〉日本銀行『経済統計月報』郵政省『郵政経営統計』より作成。 7)郵便貯金経営問題研究会〔87〕pp.56−57.

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 12 彦根論叢 第239号 とともに急拡大していることがわかる。  しかし銀行預金は都市銀行,地方銀行,相互銀行,信用金庫のいずれも,同 期聞の増加倍率がそれ以前の10年間よりも低下し,伸び率が鈍化している。し たがって銀行預金の全般的伸び悩みの中で,郵便貯金が急拡大を続けているの は何故かという疑問が出てきたのも当然といえるだろう。  昭和40年代後半から昭和50年代前半の郵便貯金をめぐる論議は,大体このよ うな疑問から生じたものが多かった。例えば昭和48年の『金融ジャーナル」秋 季増刊号では,郵便貯金急伸の秘密を特集し,「郵便貯金も…その大部分が大衆 の預金である現実に,金融界が真剣に取組まねばならない大衆化の方向がある。 国内マーケットを見直し,庶民性に基づいた大衆化を前進するためには,地域 に密着し,大衆のニーズを反映して急成長をとげている郵貯…にその範を見い        ヨ  出すことが大切である。そこにi郵貯…急伸の秘密にメスを入れる意義がある」 と郵貯の拡大に大きな関心を示している。  また三和銀行調査部「都市銀行からみた郵便貯金急伸の要因」〔12〕では, 郵便貯金が「簡易で確実な少額貯蓄の手段としてその経済生活の安定と福祉の 増進のために,あまねく国民大衆の利用に供される制度であることに留意し, ……一ハの金融機関の預金の利率についても配意し(郵便貯金三二12条2項) ながらも,なぜこのような高い伸びを示しているか」を検討している。そして 「郵便貯金の好調な原因は,他の金融機関と比較して店舗の増設テンポが急速 であること,制度面での優遇措置,なみなみならぬ業務推進意欲,そして郵便 局自体としても,顧客のニーズをつかむべく努力している」ことなどを指摘し ている。  しかしながら,他方では「郵便貯金には,財政投融資資金の供給という重要 な役割がある(…)ことは事実であろう。しかし郵便貯金本来の使命は,あく まで,.民間金融機関の及ばない分野に貯蓄手段を提供し,民業を補完すること にあったと考えられる。それだけに最近のように郵便貯金が世界最大の金融機 8) 『金融ジャーナル』昭和48年秋季増刊号, 「主張」欄,p.3.

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      金融自由化と郵便貯金(1) 13 .関にまで巨大化し,いまや内容的にも民業と競争する場面が多くなりつつある ことは,本来の主旨からはずれるものであろう。しかも,その背景に,民間金 融機関に比した制度的有利さがあるとすれば,自由市場経済を前提とするわが 国経済の建前からみて問題といわざるをえない。金融機構全体のなかにおける 郵便貯金制度の位置づけを改めて検討し直す時期にあるといえるのではなかろ     うか」と郵便貯金の急増に行きすぎはないのかといった懸念を示している。  (2)昭和50年当時の民間金融機関から見た郵貯急増要因  昭和50年当時,郵便貯金急増の要因として民間金融機関側から挙げられたも のは,およそ次のようなものであった。  まず第1に店舗数の絶対的優位である。昭和49年度末で郵便局は2万1000店 に対し全国銀行は約3分の1の7500店しかなく,相互,信金,信組を含めても 1万7000余割と民間金融機関の方がはるかに少ない。また増加ベースでも昭和 50年末までの10年間で郵便局は3705店増加しているのに対し,全国銀行は約4 分の1の1083店しか増加しておらず,店舗網の差が郵貯の急伸を支えた。  第2に税制上の差である。銀行にもマル優制度はあるが,郵貯ははじめから 非課税扱いで限度管理も厳しくなく,税務調査もされないので,相当大口の預 金まで預けられ,税制の隠れミノとして郵貯が使われてきた。  第3に商品内容の差である。昭和50年3月当時郵貯残高の約77%が定額貯金 で占められていた。この貯金は6カ月の据置期間後は,いつでも,どこでも払 戻し可能となり,利子は半年複利で,預入期間が長くなればなるほど有利にな り,付利される金利も預入日にさかのぼって全期問について高くなるもので, 最長預入期間は10年である。定額貯金は流動性と高利回りを兼ね備えた民間金 融機関では考えられないような預金である。したがって銀行には最長2年もの 定期預金しかない(昭和56年6,月から「期日指定定期」が開始され最長3年と なった)が,定額貯金は郵便局だけにある有利な商品で,郵便局にとっても貯 金勧誘の最大のセールス・ポイントとなった。 9)三和銀行調査部〔12〕p.20.

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14 彦根論叢第239号  第4に定額貯金は半年ごとに利息が元加されていくため,毎年の利息元広聴 だけでも,貯金残高を約5%ほど底上げする要因となっている。  第5に郵便局は郵便貯金業務の他に郵便事業,簡易保険郵便年金事業を兼営 しており,銀行に入ったことがない人はいても,郵便局へ行ったことのない人 はいないほど親しまれており,また矢島〔13〕のアンケート結果にみられるよ うに,郵便局には「気安さ」があるのが強みである。  第6に郵便局長をはじめ職員の多くは,地域出身者で構成されており,地縁 性が強いことも,貯金の募集力を高めている。  第7に全国に約1万人いるといわれる外務員の存在が大きく,昭和49年度の 定額貯金新規預入額のうち,外務員の募集割合は約20%に達している。  第8に外務員には,セールス活動の促進を図るため,国家公務員としての通 常の給与体系に基づく給与以外に「募集手当」が支給されている。また貯金団 体にも「団体貯金とりまとめ集金費」という謝礼金を出しており,まさに官民 一体の貯蓄推進奨励策がとられている。  第9に郵便貯金法第3条に「国は,郵便貯金として預入れされた貯金の払い もどし及びその貯金の利子の支払いを保証する」とあるように,郵便貯金は国 家信用という絶大なバックアップがある。  第10に郵便貯金利用率の高い中低所得層に有利な所得分配の変化があったこ とと,郵便貯金の一人当たり貯金総額制限が昭和47年に100万円から150万円に, 昭和48年に300万円に引き上げられたため,高額所得者の利用率が高まったこ とが挙げられている。  (3)昭和50年代初頭からの郵貯をめぐる変化  昭和30年代の郵便貯金の平均伸び率は,都市銀行をはじめとした民間金融機 関の伸び率より下回っていたが,昭和40年忌に入って急速にその伸び率を高め てきた。したがって前述のように昭和40年代後半からの郵貯をめぐる論議は, なぜ郵貯だけが急増するのかといった分析的興味から発したものが多かった。  高度成長経済下では,郵貯も民間金融機関も順調に量的拡大をとげていたた め,郵貯の急増を問題適する必要は少なかった。ところが第1次,第2次石油

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      金融自由化と郵便貯金(1} 15 ショック発生とともに,低成長経済へ日本が移行するにつれて,預貯金総額の 伸びも鈍化してきた。  このような状況下での郵貯の拡大は,民間金融機関にとって自らの経営基盤 にかかわる重大な問題とみなされるようになってきた。なぜなら昭和40年代か ら現先市場の急速な発達により,法入預金獲得競争が一段と厳しくなり,さら に昭和54年からは自由金利のNCD発売と,大口預金獲得競争が激しくなった 民間金融機関にとって,個人預金のシェア縮小は民間金融機関経営上の大問題 であったからである。        第3図 郵便貯金の増加額の推移      兆円       10.0      10 8 6 4 2 0

 52. 53 54 55 56 57 58 59 60

 年度

  注:□元加利子額

    翅純増力噸願纈一払戻額)

 〈出所〉郵政省資料より作成。 8.99 8.54 8.20 7.61 7.75 7.20 7.27 6.92 6.16 5.00 4.80 4ユ6 3.48 3.17 2.74 2.88 1.94

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 16  彦根論叢 第239号  したがって昭和50年前初頭からの郵便貯金にかかわる議論も,以前とはその 性格が急変し,郵便貯金を敵視したり,民間金融機関の立場を代弁するような 激しい論争が,数多く見られるようになった。  ただ第3図に示されているように,郵便貯金の増加状況は,昭和54年度増加 額6兆9156億円(対前年比95,1%)と前年実績を下回り,これは昭和33年度以 来21年ぶりのこととなった。また郵便貯金増加額から元加利子額を差し引いた 純増加額(預入額一払戻額)も,金利天井感やグリーンカード問題で預金が郵 便貯金にシフトした昭和55年度を除き,昭和53年度以降伸び悩み傾向にある。 これは低成長経済移行に伴う家計可処分所得の伸び悩みや,個人の金利選好の 高まり,民間金融機関による高利回り商品開発等々,郵便貯金をとりまく環境 の厳しさを反映しているといえるだろう。  (4) 「金融の分野における官業の在り方に関する懇談会報告」  郵便貯金の急増を契機として,官業への資金集中の見直しや金利政策の一元 化問題等,自由主義経済体制下での金融の分野における官業の在り方に対し, 種々の問題提起が行われた。そこで,これらを検討するため,昭和56年1月 「金融の分野における官業の在り方に関する懇談会」(有沢広巳会長)一銀 行側はこれを郵貯懇,郵貯側は金融懇とそれぞれ略称している  が設置され, 7ヵ月にわたって郵政省,大蔵省,日銀,経済企画庁,民間金融機関,経団連 その他各界からの意見が戦わされ,昭和56年8月に懇談会報告が提出された。  報告を提出するまでに議論された多方面に及ぶ内容については,「金融の分 野における官業の在り方一懇談会報告並びに関連全資料』〔57〕に収録され ている。しかし報告書提出後残ったことは,①報告書で臨時行政調査会の検討 に委ねることとされている個別の政府関係機関の在り方等は臨時行政調査会で 一層検討を深めてもらう,②報告書意見の具体化については,大蔵大臣,郵政 大臣及び官房長官の三者で引き続き協議する,③預金金利の決定や変更に際し ては,郵政,大蔵両省が意思疎通を図り,機動的に対処する,④その他の問題 については上記三者で引き続き検討するが,郵貯資金の自主運用問題について は当分の間棚上げすることが合意されただけで,郵貯論争を終結させるような

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      金融自由化と郵便貯金(1) 17 役割を果たすことは,できなかった.  (5>郵便貯金肥大化に関する最:近の論争  郵貯肥大化に関する最近の民間金融機関の批判は,次のようなものである。  ①郵貯が野放しに増加し,これが民業を圧迫し,市場機能を阻害する結果を もたらしていることは,自由主義経済体制を建前とするわが国経済体制にとっ て由々しき事態である。  ②郵貯への資金集中に伴う民間金融機関の資金不足は,金融市場の資金量を 縮小させ,金利を下がりにくくするなど,金融政策の有効性をも制約している。  ③郵貯への資金の集中は,一国の資金配分を歪め,民間金融機関の低利かっ 安定的な資金の供給を妨げ,その企業活力を奪うことになる。  ④自由主義経済体制を根幹とする日本においては,経済活動は民業中心とす べきであり,官業は民業の及ばない分野の補完に徹するのが,基本理念である。  ⑤このような状況が続けば,預金金利自由化の阻害要因となることが懸念さ れる。  これに対し郵政省は次のように反論している。  ①各金融機関が経営努力を重ね,切磋琢磨しながら,利用者・国民の=一ズ に合った金融商品を提供することが大切で,シェアは利用者・国民の金融資産 選択の結果である。  ②近年,利用者・国民の金融資産選択は,金利選好が高まり,預貯金以外の 金融資産も対象とされ,シェアについては,個入貯蓄全体の中で議論すべきで ある。  ③個人金融資産増加率でみれば,郵貯の占める割合は,ここ数年,低下傾向 にある。  ④近年,市中金融は慢性的な緩和状態で,民間金融機関は貸付先に苦慮して おり,余剰資金でディーリング等,融資以外の運用手段で収益確保を図ってい るともいわれている。このような状況下では,企業への民間金融機関の円滑な 資金供給を,郵貯が妨げているとはいえない。  ⑤官業と民業の関係については,各金融機関が切磋琢磨しながら,国民に公

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 18 彦根論叢 第239号 平に個人金融サービスを提供していく必要があり,郵便局は,110余年間,貯 蓄・送金決済等国民生活に密着した幅広い個人金融サービスを,国民のニーズ に応じながら,効率的に提供し,利用者・国民の支持を得てきた。  ⑥今後,金融自由化が急速に進展していく中で,国営の為替貯金事業の必要 性は高まるものと考えられ,国民経済的観点から,国民本位のサービス向上に 努めるべきである。  ⑦金融政策の効果が低下してきているのは,日本のみではなく,郵便貯金制 度が存在しない先進国においても,同様な状況がみられる。  このように両者の意見は並行線のままであるが,民間金融機関の議論は官業 は基本的に民業の「補完的役割」を担うべきであるとする「臨調最終答申〔69〕」 あるいは「行政改革〔120〕〔162〕」の主張を依りどころとしている。  臨調は官業に対し,官業「非効率」論の下に「分割・民営化」を主張しなが ら,他方高い効率をあげている官業に対しては「民業圧迫」と批判し,「民業 への補完的役割」に徹すべきであるとして,効率化・合理化よりも規模の抑制 に力点をおいている。その意味で臨調答申は,公共性と企業性の調和をどのよ うに図り,「独立採算の経営」をいかにして維持していくかという認識が欠け ているように思われる。  したがって「官業」か「民業」かといった二者択一的発想ではなく,今日の 混合経済の中では,官業と民業が適正に競争する状況が積極的に確保されるべ きで,両者が政策的に相互に競争し,切磋琢磨する一種の緊張関係こそ望まし いといえるだろう。  2. 郵便貯金事業の効率性  (1}郵便貯金特別会計の仕組み 民間金融機関は,郵便貯金肥大化の最大の要因は採算無視の金利提供と,そ れを可能にしている郵便貯金特別会計の仕組みにあり,郵便貯金は非効率的で あると批判する。  郵便貯金特別会計の仕組みは,第4図に示されている。既述したように郵便

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預 金融自由化とi郵便貯金(1)  19 入 預 金 兀 ︵ 第4図 郵便貯金特別会計の仕組み        預託金利子預 託      資金運用部  払戻し 金 者 墾戻し1 (元金・利子)1         i 郵便貯金資金 郵便貯金特別会計        t        1 歳 入 預託金利子収入 事 業 収 入 借  入  金 前年度剰余金

︵利子︶ 歳 出 支 払  利 子 L一 借入金利子等 業務取扱費 諸支出金 郵政事業特別会計へ繰入国債整理基金nSil会計へ繰入 一J       郵政事業特別会計     国債整理基金特別会計    注:1預     託一廻入元金・利子分      2貸付金利子収入一預金者貸付による利子収入      3借  入  fe−t財源不足のための借入れ      4雑  収  入一預金者の権利消滅金等      5業務取扱費一郵便貯金事業運営に要する…切の経費      6諸支出金一割増金付定額貯金の割増金等      7借入金利子等一借入金償還金、同利子、一旧寺借入金利子      8本表は、郵貯会計のあらましについて図示したものであり、        ・部簡略化してある。 〈出所〉『金融の分野における官業の在り方』p. 46. 貯金事業は,郵便貯金資金を資金運用部に全額預託し,その預託金利収入によ り,預金者に対する支払利子と業務の取扱いに必要な経費を賄う独立採算の経 営を行っている。黒字の場合は積立金を保有し,赤字の場合は借入金によって 措置し,長期的には収支相償するよう事業経営を行っている。したがって世上 言われるように,一般会計から補填を受けることはなく,国民の税金は現在一       le) 切使っていないといえる。 10)ただし昭和26年度から昭和35年度までの赤字:は,将来黒字となった場合に返済する  ことを条件に,一般会計及び資金運用部特別会計から繰り入れられていたが,昭和35  年度にこの繰入れ制度を廃止して,それまでの累積赤字494億円の返還業務を免除す  るとともに,それ以降の赤字は資金運用部からの借入れで賄うこととなった。

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20  彦根論叢 第239号  ② 郵便貯金特別会計の収支状況  第5表に示されているように,単年度収支では,昭和37年度から昭和48年度 までは黒字で,それ以降は赤字になっていたが,支払金利が大幅に下がった昭 和60年度は,単年度で5,857億円の黒字となり,それまでの累積赤字も一掃さ れている。  郵政省の説明によれば,これまで郵便貯金特別会計に赤字が生じていた原因 は,基本的には資金運用部預託利率の決められ方にあるとする。  すなわち郵便貯金のコスト(支払利子率+経費率)は,第6表に示されてい るように,民間金融機関に比べ低くなっている。例えば昭和52年度から昭和59 年度の8年聞平均で,郵便貯金7.22%,都市銀行7.86%,長期信用銀行8.04% と,郵便貯金が最も低い水準になっている。       第5表 郵便貯金特別会計の収支状況    (単位:億円)  45  46  47  48  49  50  51  52  53  54  55  56  57  58  59  60 61(予算) 収 入 4, 534 5,607 7, 070 8, 892 11, 359 15, 096 19, 438 24, 352 28, 696 33, 137 40, 282 47,617 53,194 59, 090 64, 689 71, 229 76, 276 支 出 4, 359 5,385 6, 821 8, 748 11, 980 16, 042 21,335 25, 448 28, 723 32, 220 37, 704 48, 733 53, 922 61,412 64, 736 65, 372 71, 437 収  支  差  額       

当年度分1累

計 75 Q2 S9 S4 Q1 S6 X7 X6 Q7 P7

12216980 9

      LL

    △△△△△

78 P6 Q8 Q2 S7 T7 R9

5ほ7β ββ

ワのユ        り 

 △△△△

 1, 120  1, 342  1, 591  1, 735  1, 114

 168

Al, 729 A2, 825 A2, 852 Al, 935

 643

A 473 Al, 201 A3, 523 A3, 570  2, 287  7, 126 〈出所〉郵政省資料より作成。

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       金融自由化と郵便貯金(1) 21 第6表 金融機関別の運用利回り・コストの比較   (単位:%) 年度

2345678955555555

運用利回り コ ス ト 長信銀 8. 64 7. 92 8. 06 8. 68 8. 96 8. 51 8. 07 8. 02 都銀 6. 87 5. 90 6, 98 9. 21 8. 97 8. 13 7. 48 7e 41 郵貯

Z20

7. 00 6. 90 7e 16 7. 35 7. 31 7. 28 7. 28 郵貯

Z52

Z OI 6. 71 6. 70 Z 52 7. 41 7. 57 7. 28 支 払 利子率 6. 33 5.92 5. 76 5. 82 6. 77− 6. 71 6. 90 6.62 経費率 都銀 1.19 1. 09 0. 95 0. 88 0. ’一rs O. 70 0. 67 0. 66 6. 84 6. 06 7. 06 8. 92 9. 87 8. 58 Z 57 Z 97 支 払 利子率 一長信銀 4. 74 4. 13 5. 30 7. 26 8. 40 7. 24 経費率 2. 10 1. 93 L76 1. 66 1. 47 1. 34 6. 30 i 1. 27   i 6. 86 i 1. 11 7. 69 7. 16 7. 61 8. 48 8. 92 8. 31 支 払    経費率 利子率

zgi1

8. 27 1 7. 57   16. 91 i O. 78 6. 47 1 O. 69 6. 95 L O. 66 Z・EllgEgZ 8. 24 i O. 68 7. 67 1 O. 64 乳34b.57   ! O. 52 平均1・・・…21…9/・221・35h86圃・281・581・・41・・37/・・651 注1:民間金融機関の経費率は,税金率を除いたものである。  2:民間金融機関の運用利回りは,貸出金の利回りである。    なお,都市銀行の52∼58年度平均の総資金運用具回りは8.15%,総資   金コストは8.05%である。 〈出所〉全国銀行協会『全国銀行財務諸表分析』,郵政省資料より作成。  また経費率も年々低下しており,昭和52年度から昭和59年度平均で,郵便貯 金0.86%,都市銀行1. 58%,長期信用銀行0.65%となっており,都市銀行より も低い。郵便貯金事:業は,民間金融機関が採算面から進出していないような山 聞僻地まで公平に個人金融サービスを提供しているが,ほとんどの民間金融機 関よりも低い経費率で効率的な経営を行ってきている。これは真剣な経営努力 を行うとともに,郵便局の全国ネットワークを基盤とした郵便・郵便貯金・簡 易保険郵便年金の三事業一体的運営により,人的・物的資源を有効に活用する ことによって,経費率の低減を図ってきたことによるものであり,郵便貯金の コスト面には,特に問題はないと郵政省は主張する。  そして第6表に示されているように,郵便貯金の運用利回りは民問金融機関 よりも大幅に低くなっている(例えば昭和52年度より59年度までの平均で長期 信用銀行8,34%,都市銀行7.62%に対し郵便貯金は7, 19%である)。

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 22 彦根論叢 第239号  既述のように郵便貯金は,現在,資金運用部への全額預託が義務づけられて おり,その預託利率は財政投融資の長期・低利の要請を優先して,資金の借手 である大蔵省が決定している。しかし預託利率は,国債や政府保証債等の市場 金利よりも低いばかりか,場合によっては郵便貯金の低いコストさえ賄えない ほど低水準に決定されてきた。第6表によれば,昭和52年度から昭和59年度ま での8年間で,運用利回りがコストと同じか高かったのは,昭和54年度と昭和 59年度の2年だけである。  このように郵便貯金特別会計で発生してきた赤字の原因は,預託利率が低位 に決定されてきたためであり,これまで生じてきた郵便貯金の赤字は,いわば 「政策的赤字」と考えるべきものであると,郵政省は主張している。  (3)民間金融機関からみた郵便貯金特別会計の問題点  以上のような郵政省側の主張に対し,民間金融機関の側から中村〔36〕や全 国銀行協会連合会制度問題研究会〔75〕〔88〕,金田〔144〕や中立的な立場から 貝塚〔56〕等が,郵便貯金特別会計の問題点を次のように指摘している。  (i}現金主義の経理  郵便貯金特別会計は「現金主義」で損益計算されている。ただし預託金利子 収入は決算日(3,月13日)に経過期間に対する利子が支払われるため「発生主 義」と同じ結果になっている。これに対し支払利子の大部分を占めている定額 貯金の利子は6カ月ごとに元加されるが,経過利子に関する規定がないため, 決算日には常に未払利子が蓄積される仕組みとなっているといえる。残高が一 定ならば当期に計上されない未払利子は当期に計上された前期の未払利子と等 しいので問題は生じない。しかし現実には,残高は毎年増加しており,増加額 に応じた利子は未計上になっているといえる。これは増加する利子の支払負担 を次々に次期に繰越していることを意味する。したがってこの未払利子分を含 めて考えると,郵便貯金特別会計の収支は公表されている数字よりも悪化する。  ㈹ 経費の事業別号計  郵便貯金事業は,郵便貯金特別会計で経理されているが,郵便,簡易保険郵 便年金事業と一体で運営されているので,その経費は郵政事業特別会計へ繰り

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      金融自由化と郵便貯金(1) 23 入れられ,そこから一括して支払われる。具体的な分計比率も一部示されてい るものの,その比率が実態にあった適正なものか,あるいは実際にその比率で 分計されているのかどうか,資料が公表されていない以上,判断のしょうがな く,郵便貯金事業の経費が,他会計ヘシワ寄せされている可能性が大きい。こ のような疑問を解明するために,郵便貯金特別会計のディスクローズを行う必 要がある。  ㈹ 経 費 率  経費率の比較は,民間金融機関が預金業務とともに貸出業務を行っているの に対し,郵便貯金の方は貯金業務のみなので,正確な比較にはならない。また 経費率が低下しているのは,分母である郵便貯金残高の増大によるもので,経 営努力によるものとはいえない。また経費も民間金融機関より増えており,郵 便貯金事業が効率的とは必ずしもいえない。  さらに郵便貯金は官業なるがゆえに,さまざまな公的負担を免れており,こ れらを,民間金融機関と同様の次元で比較すると,郵便貯金の非効率さが明白 となると民間金融機関は主張する。  〔4)郵政省等の反論  このような批判に対し,郵政省は,①郵便貯金特別会計は法律に基づき収入, 支出とも「現金主義」を採用している。支払利子の計上もれがあるというが, 「現金主義」と「発生主義」では,計上方法が異なるのは当然で,これをもっ て不適当とする考え方には合意できない。 ②事業別に明確に区分できない経費は,各事業の要員数,使用面積等の割合で, きめ細かく計上している。  ③郵便貯金事業について,税金や預金保険料を支払う必要がないことや準備 預金が不要であることを「官業の小根」とし,民間金融機関よりも有利な競争条 件下にあると主張する人がいる。しかしこれらは,郵便貯金事業が不採算地域 を含め,全国に公平に個人金融サービスを提供する使命を果たしていくための 必要な基盤・仕組みであり,トータルバランスとして損益を考える必要がある。  郵便貯金が効率的であるか否かについては比較する数字が全く同じ条件下で

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 24 彦根論叢第239号 計算されたわけではないので,いずれとも判定をつけることができない。しか し金融自由化が進展する中では,各金融機関とも預金者保護の立場からディス クn一ジャーを積極的に推進する必要がある。また郵便貯金事業を一層企業的 に経営するため,郵便貯金特別会計への「発生主義」会計の採用についても, 積極的に検討する必要があるといえる。  3.定額貯金の商品性  (1)定額貯金への民間金融機関の批判  既述のように現在でも,昭和16年8月に創設され,同年10月に施行された定 額貯金が,郵便貯金の大部分を占めている。民間金融機関からみた,この定額 貯金への問題点は次のようなものである。  ①定額貯金は預入後6カ月経過すれば,いつでも支払可能で,しかも半年複 利で高金利を付している。民間金融機関としては,いつ引き出されるかわから ない不安定な資金に,変動しない高金利を付すことは,経営を不安定にする。  ②調達面の固定金利に対して,民間金融機関の運用の大部分は変動金利であ るので,リスクが大きいといえる。  ③金利が引上げられるたびに預け替え(一定期間内に手続きをすれば,あら ためて10年間高金利を保証する制度)が生じ,それ以降固定金利であるため, 定額貯金残高への高金利適用シェアが高くなり,収益を圧迫する危険がある。 なぜなら,過去の低金利時代の定額貯金は,預け替えにより高い新レートが適 用されるが,この分に見合う運用資金は既に資金運用部に預託済みなので低い 旧レートのままで,逆鞘になりやすいからである。  ④定額貯金には利息の元加規定がある(郵便貯金規則第5条)ものの,発生 する利息は払戻時まで確定しないとされているので,当初預入額が300万円以 下ならば,全額非課税扱いとされる。その結果,実質上郵便貯金預入限度額は, 郵便貯金法規定額300万円の2倍強となっている。 しかし民間金融機関の預貯 金の元加利子は預入額に算定されており,それがマル優枠を超過すると,根っ 子から課税扱いとなってしまう。

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      金融自由化と郵便貯ft(1) 25  ⑤前述のように金利ピーク時に,大量の預け替えが発生し,定額貯金の支払 利子率の高位固定化がもたらされる。この高位固定化は,郵便貯金を原資とし ている財投諸機関への,一般会計からの補助金増加の原因にもなっている。こ のような定額貯金の採算無視のツヶは,国民の負担増としてはね返ってくる可 能性が強い。  ⑥国家信用を背景にした定額貯金金利は,民業より低位にあるのが正常であ る。戦時下の巨額な軍事費調達の必要性から創設された,特殊で一時的な貯金 である定額貯金が,戦後も見直されないで,逆に民間金融機関に対し有利性が 強まる状況で存在するのは問題である、  ⑦郵便貯金,とくに定額貯金の高額所得者層の利用が高まって,民間金融機 関と郵便貯金の預金者の同質化が生じている現状では,郵便貯金のみに優遇措 置を与える理由は,まったくないと考えられる。  ⑧定額貯金の利上げに際して,利上げ後一定期間に預け替えをすると,利上 げ日に遡って「払い出し,預け入れ」があったとする「預け替え制度」は,事 後的に起算日扱いの高金利適用で,会計上も不健全なものであり,廃止すべき である。  このような諸理由から,民間金融機関は定額貯金について,預入期間短縮や 据置期間の延長など,商品性の見直しを強く主張している。  (2)定額貯金への郵政省等の弁護  これに対し郵政省は次のように反論している。  ①定額貯金は,流動性と収益性を兼ね備えた貯蓄手段として,国民に選好さ れており,国民にとり魅力的な商品である。  ②最近の郵便貯金特別会計の累積赤字は,預託利率が上がるべき時に.上がら なかったという特殊な事情によるもので,適正な運用利回りが確保されるなら, 健全経営を維持することが可能で,定額貯金がその理由ではない。  ③年間の全預貯金利子の支払額を全預貯金の平均残高で除した,いわゆる 「預金利回り」を第6表で比較すると,昭和52年度から59年度までの8年の預 金利回り平均は,郵便貯金6.35%,都市銀行6.28%とほとんど変わらない。ま

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 26 彦根論叢第239号 た定額貯金を含めた郵便貯金のコスト(支払利子率+経費率)は,過去8年間 の平均で7.22%となっており,長期商品を主体とする長期信用銀行の8.04%は もちろんのこと,短期商品を主体とする都市銀行の7.86%と比べても,低いと いえる。  したがって預金商品の設計が預金者のニーズによく適合し,かつ現場での貯 金募集努力が勝っているのが定額貯金であり,当面その商品内容を変更する必 要はない。しかし金利自由化の急速な進展,多様な金融商品の登場,業務のエ レクトロニクス化など金融自由化が進行しており,金融情勢も大きく変化して きている。また高齢化社会を迎え,国民の健全な資産形成促進の必要性が高ま っている。  このように定額貯金は金利自由化が進んだ段階でも,利用者・国民のニーズ が強いと考えられるが,今後このような時代の要請を踏まえた商品性の在るべ き姿を,総合的に検討する必要がある。  定額貯金の商品性に関しては,民間金融機関の他に,金融の分野における官 業の在り方に関する懇談会報告〔57〕や臨調答申〔69〕,行革審小委員会報告 〔162〕等において,見直しの必要性を指摘している。定額貯金の将来につい ては,さらに第5章で検討することにしたい。  4.個人金融分野における官業と民業  (1)郵便貯金の業務拡大の推移  郵便貯金は第7表にみられるように,昭和48年の「預金者貸付制度」(いわゆ る「ゆうゆうローン」)を開始して以来,年々,業務範囲の拡大を図っている。 これに対し民間金融機関は,郵便貯金:本来の性格から大きく逸脱した行為であ ると批判してきた。  郵便貯金の業務拡大についての論争は,昭和56年8月の「金融の分野におけ る官業の在り方に関する懇談会報告」〔57〕の「現状凍結」により終結したか にみえた。ところが昭和57年3月上旬から「郵貯自動払込み」についての論議 が再燃しはじめ,全銀協制度問題研究会〔58〕や坂田〔59〕の意見が表明され

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金融自由化と郵便貯金①  27 第7表 郵便貯金の業務拡大の推移 月 日 事 項

7125611467862336446073703

  1

78 0 123   4544 5 555   55

     1      1 ρ0  7     00Qゾ   0 じ0  ど0     ﹃0冒0   ρ0 「住宅積立郵便貯金」創設 「ゆうゆうローン(貯金者貸付制度)」創設 「特別定期郵便貯金」取扱実施 「CD(オフ)」取扱開始 「福祉定期郵便貯金」取扱実施 「財形定額貯金」創設 「給与振込」業務開始 「6カ月物定期貯金」創設 「ゆうゆうローン」枠拡大(30万円→50万円) 「進学積立郵便貯金」創設 郵便オンライン開始 rゆうゆうローン」枠拡大(50万円→70万円) オンラインCD設置開始 「ゆうゆうu一ン」貸付期間延長(6カ月→1年) ATM設置開始 「総合通帳」創設 「愛育貯金」創設 「ゆうゆうローン」枠拡大(70万円→100万円) 「自動払込み」業務開始 「財形年金定額貯金」創設 「自動受取り」業務開始 全国オンライン網完成 「郵貯共用カード」制度導入 「自動積立定額貯金」創設 企業取引の自動振替サービス開始 〈出所〉『金融』,郵政省資料その他より作成。 たものの,「郵貯自動払込み」は予定通り6月から取扱いが開始された。  その後,昭和57年6月に提出された「個人金融分野に郵便貯金が積極的に参 入すべきである」という郵政審議会の「郵便貯金の今後果たすべき役割に関す る答申」〔60〕に対し,同年S月,全国銀行協会をはじめとする些些金融機関 その他の連名で「郵便貯金に関する私どもの考え方」〔61〕「郵政審議会答申に 対する私どもの考え方」〔62〕や荒木〔63〕,皆藤〔67〕の反対意見が表明され

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 28  彦根論叢 第239号 た。  また昭和58年9月には,個人金融充実の観点から郵便貯金の対応策を明らか にした「郵便貯金に関する調査委員会報告」〔74〕が公表されると,それに対 し全銀協制度問題研究会〔75〕の批判が出されるなど,今日まで郵便貯金の業 務拡大に対する論争が続いている。  (2)郵政省等の主張  郵政省等の個人金融参入についての意見は次のようなものである。  ①貯蓄・貸付・送金決済など個人金融分野の充実は,国政の重大課題となっ ている。しかし,わが国の個入金融の現状は,国民大衆のニーズに応えていず, 欧米主要国に比べても遅れている。  ②「民業でやれる分野は民業に任せるべきだ」という主張は,民業としての 活力が充分発揮され,効率がよく,サービスが充実し,民業相互間で健全な自 由競争が行われている場合に妥当する。民間金融機関の現状は,このような状 態にはほど遠い。  ③民間金融機関は産業金融中心のため,個人金融の分野では,その機能を充 分果たしてきたとはいえない。これは民間金融機関が過保護な金融行政下で, 適正な競争によりサービス向上の努力をしなかったことも一因であり,その改 善を強く期待する。  ④個人金融の分野は,取扱金額が小口で繁雑であり,コストが高いため,利 潤追求を目的とする民間金融機関に期待することは限界がある。したがって非 営利の個人専門機関が個人金融分野の発展のため,先導的役割を果たす必要が ある。その場合,郵便貯金は適正な金利を実現する役割を果たすべきである。  ⑤欧米主要国では非営利で,個人専門の貯蓄銀行が存在し,個人の貯蓄性預 金の優遇,個人への貸付等々手入金融分野を充実させる政策がとられている。 日本においては,専業の貯蓄銀行は昭和24年,すべてなくなり,現在では郵便 貯金のみが貯蓄銀行的理念を持った機関であるといえる。  ⑥したがって郵便貯金は,貯蓄・貸付・送金決済面にわたって,その制度を 充実させることによって,サービスの改善に努め,国民大衆の要望に応えるべ

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      金融自由化と郵便貯金(1) 29 きである。  (3)民間金融機関の反論  郵政省等の主張に対し,民間金融機関は,次のように反論している。  ①利潤動機による競争と市場メカニズム機能こそ,個人金融資産選択の機会 を増やし,顧客への利益還元を促進することができる。しかし肥大化した郵便 貯金の存在は,このような機能を大幅に低下させることになる。  ②金融自由化により,競争は一層促進されるけれども,市場メカニズムにな じまない政策的金利を設定する郵便貯金が,歯止めのないまま参入すると,郵 便貯金がプライスリーダーとなり,金融自由化のネックになる。また市場メカ ニズムを無視した政策的措置は,個人金融分野の健全な発展を阻害することに なり,国民経済的観点からも大きな損失となる。  ③郵便貯金が個人金融分野に参入することによる事務コストの増大や,債権 管理・保全への対応等々,多くの問題が存在する。  ④金融全体に占める個人金融のシェアは,かなり大きなものとなっており, この分野が景気変動と関係なく,金融政策の外にあるということになれば,金 融政策の効果は大幅に減殺され,国民経済にとって大きなマイナスとなる。  ⑤日本では,あらゆる民間金融機関が貯蓄銀行的機能を兼ね備え,個人金融 分野に積極的に対応しており,官業である郵便貯金が業務を拡大して参入する 必要はない。  ⑥また郵政省が目指している金融サービス機能は,すでに民間金融機関が国 民に普及させたものや,今後充分に提供可能なものばかりであり,郵政省の論 理は,民間では充分できない,あるいは今後もできないといった誤った前提か ら構築されている。  (4)郵便貯金の業務拡大の是非  民間金融機関の主張にも,もっともな部分はあるが,全般的には郵便貯金を 封じ込めることによって,自己の領域を守ろうとする姿勢が強い。縄張り意識 にとらわれ,お互いに意見をぶつけ合うだけではなく,①国民のニーズに適合 したサービスを公平に提供するにはどうしたらよいか,②サービス水準の維持

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 30 彦根論叢 第239号 向上等,個人金融分野を充実するにはどうしたらよいかの観点から,民間金融 機関,郵政省の実りある議論が必要である。  また個人金融分野で経営形態の異なる金融機関が,有効な競争を維持・促進 していることが,個人金融サービス全体の向上にもつながるといえるだろう。 実際に両者の競争が国民のニーズに合った数々の商品を産み出してきているこ とは周知のとおりである。  金融自由化が進展すると,欧米の例に見られるように,民間金融機関は不採 算地域から店舗を撤退させたり,小ロ利用者に対するサービス手数料の引上げ や手数料の新設など,小口利用者に対するサービス低下を行うことが予想され るので,公平に個入金融サービスを提供することを使命とする郵便貯金事業の 存在意義は高まるといえるだろう。  5.金利の一元化  (1)民間金融機関の主張  金利一元化は,主張する人によってその内容が異なっているが,従来の議論 の大宗を占めるものと考えられるのは,「金融政策の機動的運営のために,預 貯金金利を弾力的に変更すべきである」という点であろう。しかし現行の金融 制度下では,預貯金金利とくに小口預貯金金利は統制されており,このような 制度下の金利一元化は,まさにあいまいな基準で金利の一元化決定を行うこと に他ならない。  民間金融機関の主張する金利の一元化は,次のようにまとめることができる であろう。  ①従来,預貯金金利の決定が,二元化されているため,金融政策の機動性, 弾力性が阻害されたケースが数多くある。これは金利変更のタイミングを失し たケース,郵便貯金金利と民間預金金利の変更時期に大幅なズレが生じたケー ス,金利変更幅が適切な幅よりも縮小されたケース等があり,その度に金融政 策の効果が減殺されてきた。  ②金利変更時の大蔵省・日本銀行対郵政省の調整過程で,郵政省は種々のバ

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      金融自由化と郵便貯金(1) 31 一ター案を提出することにより,民謡金融機関が充分サービスを提供している 分野や,これから提供しようとしていた分野へ,業務を拡大することに成功し てきた。  ③金利決定の一元化は,金融政策主体の一元化であり,金利の弾力的・機動 的変更を通して金融政策の効果を高めることを目的としている。したがって金 利決定が一元化されるといっても,国内の色々な金利の市場実勢や海外金利と の整合性を考えながら,金利決定をせざるを得ないため,金融当局が金利を思 いのまま変更できるものではないといえる。  ④金利の自由化は将来,必然的に進められなければならないが,急激な変革 による信用秩序の無用な混乱を避けるため,規制金利体制の継続はやむを得な い。規謝金利下で金融政策の機能的・弾力的な運営のためには,金利決定の一 元化が必要である。  (2>郵政省等の主張  このような,民間金融機関側の主張に対し,郵政省等は,次のように主張して いる。  ①金利一元化の主張は,営業性預金と貯蓄性預金の性格を無視している。公 定歩合政策に,国債発行条件や住宅ローンなど貸付金利が充分追随しないのが 実情であり,例えば消費者物価指数の上昇率が高い場合,預金金利のみを先行 的に人為的に引き下げると,個入預金者が不利益をこうむることになる。  ②金利の二元的決定の下では,個人の貯蓄性預金が大部分を占めている郵便 貯金の金利決定方式が,不十分ながらも預金者の利益を保護するものとなって いる。  ③もし金利を一元化すると,金利決定権を保有する者が,意のままに金利を 上下させることも可能となるだけでなく,特定商品の金利をも上下可能となる。  ④このような金融当局による統制は,金融商品から競争原理を排除すること となり,金利水準が人為的に低位に押えられたり,商品内容が統制されること によって,預金者サービスの改善が行われなくなり,民間金融機関は新商品開 発に消極的になる。また経営の効率化も阻害される可能性が強い。さらに定額

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  32 彦根論叢第239号 罫貯金は改悪されて,郵便貯金の減少を招き,財政投融資のための資金が枯渇す  る可能性がでてくる。   ⑤金利の自由化が実現すると,各金融機関が市場の実勢を勘案して,自主的  に合理的金利を決めるのが筋である。したがって,郵便貯金金利を民間金融機  関金利に追随させることを目的とした「金利一元化」は,真の金利自由化に反  するものである。   ⑥郵便貯金金利の決定においては,利率の決定原則を規定している郵便貯金  法第12条のほか,「郵政,大蔵両省は充分な意思疎通を図り,整合性を重んじ  て機動的に対拠するものとする」という「三大臣合意」が確立されており,昭  和61年2月及び3月の金利改定時も,内外の金融経済情勢及び預金者利益の確  保の両面に配慮しながら,機動的かつ的確に対思したところであり,何ら問題  は生じていないといえる。   (3)金利一元化論への評価   金利一元化論には,次のような諸点が看過されているといえるだろう。   ①規制金利水準は,自由金利水準よりも低位である。したがって人為的低金  利政策下の金利一元化は,金利の低位安定化をもたらし,預金者の損失となる。   ②貯蓄性預金と営業性預金を同一次元で取扱い,人為的,一元的に金利を決  定するのは適正ではない。   ③金利の二元的決定は,チェック機能を働かせる方式として有益である。す  なわちチェック・アンド・バランスの過程を経て,バランスのとれた利害調整  を行うことが必要であるといえるだろう。   ④日銀がコントロール可能なのは,銀行の貸付を通じて創出された営業性預  金であり,個人預金は,民間預金と郵貯のいずれの形態をとっていても日銀に  よるコントm一ルは困難である。したがって,郵貯の相対的に急速な増加は,       11)  なんら金融政策に新たな困難を持ち込むものではないといえるだろう。 11)千田〔170〕pp.19−20.

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