• 検索結果がありません。

中学校教師のバーンアウトの要因と予防に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中学校教師のバーンアウトの要因と予防に関する研究"

Copied!
49
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)平成24年度  学位論文. 中学校教師のバーンアウトの要因と予防に関する研究.    兵庫教育大学 大学院      学校教育研究科 人間発達教育専攻 臨床心理学コース. M11090C 吉田純一.

(2) 【目次】. Q. 1.問題と目的. e・’. 2.方法. …   6. 3.結果. …   8.  (1)各尺度の因子構造. .・・.  (2)各尺度ごとの属性による比較. …   14.  (3)各下位尺度間の相関係数. …   23.  (4)バーンアウトの3因子を従属変数とする重回帰分析. .・・.  (5)自由記述からのストレス解消法. …   24. W. Q4. 4.考察                           。・・25  (1)各尺度の因子分析結果から                …  25  (2)下野度ごとの属性による比較から              …  27  (3)各下位尺度間の相関係数から                …  31.  (4)バーンアウトの3因子を従属変数とする重回帰分析の結果から…  32  (5)教師のメタルヘルス向上のために             …  33. 5。本研究の限界と今後の課題. ・・.36. 6.引用文献・参考文献. …   39. 1.

(3) 1.問題と目的  学校現場では,校内暴力・いじめ・不登校・学業不振・学級崩壊等の問題が後 を絶たず,教育観の多様化から,保護者・地域からの要求や要望も様々で,それ らの対応にも苦慮している。また,教育課程・学習指導要領の変遷に伴い,教育 内容は量的・質的にも変化し,時代のニーズを反映した新しい学習課題が,次々 と提示されてきた。真面目で熱意のある教師程,研鎖や対応に余念がなく,結果 際限のない多忙感に苛まれていく。教育現場に課せられた多くの教育課題を,共 に担うべき仲間は,それぞれに与えられた職務に精一杯で,協働的な体制を築く ことが難しい状況にある。時には,最もサポーティングな関係であるべき教員間 にストレスが発生し,先の見えない暗渠におかれているような場合もある。.  以上のようなことからも,教師の職務上のストレスフルな状況は深刻化かつ継 続化している(藤原他,2009)。そして,教師を取り巻くストレスフルな状況は,. 教師のメンタルヘルスに影響を与え,深刻の度合いを強めている。中でももっと も多いのは抑うつ状態に陥る燃え尽き症候群(バーンアウト)であると指摘され ている(中島,2004)。.  バーンアウトは,長期間にわたり人を援助する過程で,心的エネルギーがたえ ず過度に要求された結果,極度の心身疲労と感情の枯渇を主とする症候群であり,. 卑下,仕事嫌悪,思いやりを喪失した状態であると定義される(Maslach,1982) そして,久保(2004)は看護士や教師などいわゆるヒューマン・サービス職の現 場において,今まで精力的に仕事をしていた人が,あたかも「燃え尽きた」よう に急に意欲をなくし職をはなれてしまう現象であり,「情緒的消耗感」(仕事を通 して,情緒的に力を出し尽くし,消耗してしまった状態),「達成感(ヒューマン・. サービスの職務に関わる有能感,達成感)の後退」,「脱人格化」(サービスの受け. 手に対する無情で非人間的な対応)の3つの下位概念から構成されると説明して いる。.  ヒューマン・サービス業の中でも教師のバーンアウトについて新井(2002)は,. 教師が理想を抱き真面目に仕事に専念する中で,学校での様々なストレスにさら された結果,自分でも気づかぬうちに消耗し極度に疲弊をきたすにいたった状態                   2.

(4) であり,近年増加の一途をたどってきたと報告している。文科省調査(2011)によ. ると,教師の病気休職者数に占める精神疾患の割合及び人数が5200人(全病気教. 職者の62%)を超え,2年連続の減少となったものの,調査を始めた1979年の約 8倍で,依然として深刻な状況が続いている(神戸新聞 2012.12,25)。.  さて,教師の職務上のストレスについては,教師がバーンアウトに陥る原因は 生徒との問題や職場における周囲との葛藤にあることがわかった(平岡,2003), といった指摘や,日本の学校では官僚制化が高度にすすんでいることなどにより,. 学校の変革は困難な問題である(今津,1991)といった学校組織文化に関するこ と,生徒管理や休日の部活指導などにより仕事の時間が膨大になること (宮下,. 2009),職場の人間関係そのものが教師にとってストレッサーとなり,バーンアウ. トを促進する大きな要因となる(新井,2007)といった指摘も見られるなど,多 岐に亘っている。.  また,新井(2007)は,教職の特徴は「再帰性」(=仕事の評価がすぐに保護者・ 生徒から返される),「不確実性」(=同じ養育方法でも成果が確定しない),「無境 界性」(=仕事の内容に境界がなく際限なく広がっていく)にあると,佐藤(1997). の言葉から指摘している。また,教員組織の疎結合的システムの教師集団(淵上, 1995)にあって,同僚性の欠如した教師集団(佐藤,1997)という指摘さえある。. また,教師には,保護者や社会から「他者配慮的,自己抑制的」(児玉,1994)な. 態度が当然のように求められる暗黙のプレッシャーが存在する職業でもあり,バ ーンアウトに繋がるストレッサーの特定は容易でない。  そういった中,高木・田中(2003)は,Cooper, et. al(1988)を始めとする先行. 研究の成果から,教師をとりまく様々な職業ストレッサーを整理し,バーンアウ トに関係づけた質問項目を設定した。そして,教師の職業ストレッサーを測る「職. 務自体のストレッサー」と「職場環境のストレッサー」の2つの質問項目群を構 成した。前者からは「役割の曖昧な職務のストレッサー一」「実施困難な職務のスト. レッサー」の2因子が抽出され,後者からは「役割葛藤」「同僚との関係」「組織 風土」「評価懸念」の4因子が抽出され,その信頼性・妥当性も確認されている。  さて,本研究は,教師を取り巻く様々なストレッサ■一一・・しとバーンアウトの関係を.                  3.

(5) ふまえ,バーンアウト傾向を低減させるための要因について検討する。  そこで,バーンアウト傾向を低減させる要因として,「教師の自己効力感」や「認. 知統制」を取り上げた。藤原ら(2009)は,「ストレッサー→ストレス反応→バー ンアウト」の影響過程を基本として,これらの要因に情緒的支援,自己効力感,. コーピングが影響を与えるといった仮説を設定した。そして,ストレス反応へは 自己効力感,バーンアウトへは,情緒的支援と自己効力感から直接的な有意な影 響が示されたことを述べている。また,教師バーンアウトモデルを考察した平岡 (2003)は,低下した教師効力感の向上について検討することが,教師バーンア ウトの軽減・消失につながるであろうと述べている。.  一方,認知的統制とは,認知行動療法の技法をもとにした適応的な認知スキル のことである。杉浦(2007)によると,認知行動療法の基本的仮説は,個人の認 知(思考パターン)が心理的障害と密接に関連しており,歪んだ認知の修正こそ が介入に必要であるとする考え方である。認知行動療法の技法には行動的なもの もあるが,認知的統制においては,適応的なスキルの中でも認知的なものに着目 する。その根拠としては,認知行動療法の理論的背景の一つである社会的認知理 論(Bandura,1986)に由来する。杉浦(2007)は, Banduraの主張の背景には,. こういう行動をすれば,こういう結果が得られるといった認知の形成が学習にと って鍵となっているという明確な認知主義が見られると主張した。このように社 会的認知理論の基では,認知的解釈を適切に調整iし,修正する事が適応的な行動 につながると考えられる。このように,考え方を調整することによって行動を制 御することは,認知的統制と呼ばれる(杉浦,2007)。.  認知的統制スキルは,問題状況や自分の認知を客観的に検討しようとする「論. 理的分析」と,否定的な思考が発展することを防ぐ「破局的思考の緩和」の2つ から構成されており,「論理的分析」が「破局的思考の緩和」を促進することで, 抑うつ得点が低減されることが確認されている(若山,2010)。認知的統制が,バ. ーンアウトを低減させるという研究は見あたらないが,情緒的消耗感と抑うつと の類似的な要因を考慮し,認知的統制がバーンアウトの低減に影響を及ぼすと予 測した。.                   4.

(6)  以上のような問題意識から,本研究では、先行研究では見あたらなかったバー ンアウトと認知的統制との関連に注目して、「認知的統制や自己効力感には,バー. ンアウト傾向の低減効果が予測できる」との仮説の検証を目的とし,併せてバー ンアウト傾向の予防に関する提言を行いたい。. 5.

(7) 2.方法. (1)調査時期 2012年2月∼3,月. (2)調査手続き 調査対象として,A県B市内の82校の中学校を対象とした。 学校規模等に応じて質問紙の配布数に幅を持たせ,教師850名に,郵送法にて無 記名自記式質問紙を配布した。.  回収に当たっては,封筒に密封した個票(匿名性担保のため)を学校で一括し て,郵送にて返送頂いた。そして,中学校教師636名(男性395名,女性241名) から回答を得た。回収率は74%であった。 (3)質問紙の構成 ①バーーンアウト尺度.  Maslash&Jckson(1981) のMaslash Burnout Inventory(以下MBI)の日 本語版バーンアウト尺度(田尾・久保,1996)の17項目を伊藤(2000)が修正し たものを使用した。その内,児童生徒を生徒に置き換えて使用した。本尺度は「脱. 人格化」「達成感の後退」「情緒的消耗感」の3つの下位尺度からなる。各項目に ついては,いつもある(5)∼まったくない(1)の5件法とした。「脱人格化」とは,. 関心や配慮の低下を主とした,児童生徒や業務に対するネガティブな態度,「達成 感の後退」とは,仕事を成し遂げたとの達成感や充実感が得られないこと,「情緒. 的消耗感」とは,心理的な疲労感で,バーンアウトの中心的な症状とした。 ②職務自体のストレッサー  中学教師にとって動機付けが曖昧であると感じる職務に従事する負担を尋ねる. 9項目と,教師自身が現実に実施困難におかれていると感じる7項目の質問から 成り立つ(高木・田中,2003)。「役割の曖昧な職務」「実施困難な職務」の2っの 下位因子からなる。各項目は,とてもそうである(4)∼全くそうではない(1)の4 件法であった。. ③職場環境のストレッサー  ここでは,職場環境や人間関係,組織風土等について取り上げた。職場での人 間関係や組織構造の外部要因(周囲からの過剰な期待や要求など)を問う項目,                   6.

(8) 同僚や上司との人間関係やコミュニケーションに関する項目,組織風土に関する 項目,自身への評価や他者との比較に関する項目など,28項目から成り立つ(高 木・田中,2003)。「役割葛藤i」「同僚との関係」「職場風土」「評価懸念」の4つの. 下位因子からなる。各項目は,とてもそうである(4)∼全くそうではない(Dの4 件法であった。. ④認知的統制  Freeman(1989)の認知行動療法の技法(20個)の内,認知的技法(12個)を選択し,. 杉浦(2007)が作成したものを使用した。問題状況や自分の認知を客観的に検討し. ようとするスキル「論理的分析」を問う7項目と,否定的な思考に圧倒されよう になったときに,それと距離をおくことを可能にして,否定的な思考が暴走する. ことを防ぐスキル「破局的思考の緩和」を問う5項目の,2つの下位因子からな る。各項目は,それぞれ,「不安なことがおきたときの考え方について」確実にで きる(4)∼全くできない(1)の4件法であった。. ⑤教師の自己効力感  Wolfolk&Hoy(1990)の作成した教師自己効力感尺度を前原(1994)が,翻訳し た20項目からなる。先行研究では,「個人的教授効力感」「一般的教育効力感」の 2因子から成り立つものがみられる。各項目は,当てはまる(5)∼当てはまらない (1)の5件法であった。. ⑥基本的属性  性別,年齢,経験年数,職務分掌について回答を求めた。 ⑦その他(自由記述).  あなたのストレス対処法で,具体的に取り組んでおられることがあれば,教え てください。現在,仕事関係以外で,ご病気やご家族のこと,生活上のこと等, 個人的な強いストレスが有りますか?を尋ねた。. 7.

(9) 3.結果. (1) 各尺度の因子構造. ①職務自体のストレッサーにおいて,主因子法,バリマックス回転を行った結果,. 2因子を抽出した。高木・田中(2003)の研究と同様の因子構造を示し「役割の曖 昧な職務のストレッサー」(α=.85),「実施困難な職務のストレッサー」(α=. 83)と名付けられた(Table 1)。尚,信頼性の指標であるα係数は,それぞれ (α =.85),(α=.83) で,内的整合性が確認されたと判断した。(以下,α係数に. ついては,各Tableに記載している。). 8.

(10) Table 1「職務自体のストレッサー」の因子行列       (主因子法バリマックス回転). 1役割の暖国な職務のストレッサーα係数=.85 2教師や学校の側からすれば、一方的と感じるような二二者や地域 からの要求・苦情に対応することの負担が大きい 5教宵委員会などの行政上の都合に細かく応じることの負担が大き. 因子1因子2 O.73. o.os. O.67. O.07. O.67. O.12. O.59. 027. 7例えば予算会計など様々な事務作桑や自らの専門外の仕事など で細かな役割に応じることのA担が大きい. O.58. O.13. 8必要性を感じにくい研修や研修指定を受けることなどで忙しさが増 すことの負担が大きい. o.ss. O.10. O.51. O.39. O.50. 028. O.46. O.34. O.09. OB2. O.09. O.74. O.15. O.73. 14生徒が、小学校から進学してきたり、学年があがったり、上の学 校に進学する際に必要な指導を二二に行うことが困難である. O.17. O.61. 13家廃や地域と接触する機会をもうけて、協力しあえるような関係 や環境づくりを行なうことが困難である. 021. o.oo. 16生徒の最低隈の学習レベルを確保することが困難である. O.13. O.49. 15学校現場の様々な期待や課題に対応できるように自主的に研修 や能力向上の機会に取り組むことが困難である. O.27. O.36. い. 1生徒が学校外で起した問題に対応することの負担が大きい. 3不登校や問題の多い生徒やその傑護者との関係の維持に努力す ることの負担が大きい. 4授業言書をする、教室にじっとしていられない、といった学習意欲. がひどく欠ける生徒に授業などで対応することの負担が大きい. 9地域巡回や通学区の交通指導に時間を取られていることの負担 が大きい 6”しつけ”や”藁履””生活習慣”など本来家庭でなされるべきものを. 細かく指導することの負担が大きい. 皿 実施困難な職務のストレッサー a係数=.83 11生徒の愚智指導でコミュニケーションや細かな指導を充実させる ことが困難である 10学級や生徒会などの経営を通して生徒にとってのまとまりのある (居心地のよい)集団作りを行うことが困難である。. 12学習指導以外の日常的な生徒のコミュニケーションを確傑するこ とが困難である. 因子寄与率(%). 21.13 20.75. ②職場環境のストレッサーにおいて,高木・田中(2003)の研究と同様に4因子を 抽出し,それぞれ「役割葛藤」(α=.89)「同僚との関係」(α=.88)「組織風土」 (α=. 76)「評価懸念」(α=.76)と名付けられた(Table 2)。. 9.

(11) Tablo 2「職場環境のストレッサー」の因子行列(主因子法. バリマックス回転). 因子1 因子2 因子3 因子4. 1 役割葛藤 α係数=.89 18上司(校長・教頭・主任・主事の先生方)から過剰に期待や要求さ. 0.78. 022. 0.04. 0.08. 077. 023. α07. 0.11. 「. 0.70. 0.17. α12. 026. 19生徒から過剰に期待や転入されることが多い. 0.68. 0.12. 0.00. 0.12. 0β4. 022. α07. 0.26. 黷驍アとが多い 17同僚から過剰に期待や要求されることが多い 21自分の能力以上の仕事をすることが求められると感じることが多. 20自分の苦手な役割を求められることが多い 22煙感者から過剰に期待や要求されることが多い. 0.59. 0.19. 011. 一〇.02. 23職務を果たすのに適切な援助がない場合が多い. 0.50. 036. 0.32. 一〇.01. 047. 046. α31. oρ9. 0.41. 023. 0.26. 一〇.04. 30同僚や上司と対立することが多い. 0.21. 0.79. 0.09. 一〇.02. 29固僚や上司から責められることが多い 32問僚から自分の仕事について干渉されることが多い。. 025. O.72. 0ρ8. 0.24. 0.23. 0.68. 0.04. 0.20. 28同僚や上司に簾解を受けることが多い. 024. 0β6. α14. 0.17. 31同僚や上司が無罪任な行動をすることが多い. 0.18. 0β1. 028. 一α09. 0.20. 0.60. 0.06. 0.32. 0.16. 051. 0.17. 0.38. 029. 0.46. 034. O.01. OO8. 0ρ2. 0.70. α02. 0.10. 0.13. 0.62. O.12. O.20. α14. α61. 0.08. 004. 0.19. 0.59. 一〇.05. 一〇〇2. 0.05. 0.47. 0.32. 42周りと比べて自分の能力不足を感じることが多い. 0ρ9. 0.03. α07. 0.76. 41同僚に対して劣等感を抱くことが多い. 0.19. 0.15. 0.02. 0.73. 0ρ8. 0.21. Oj 1. 0.58. 16.12. 1592. 9.52. 8.57. 24生徒や他の教師とのやりとりの中で矛盾して要求を受けることが. スい 27十分な設備や情報なしで仕事をしなければならないことが多い. 五 同僚との関係α係数=.88. 33職場の中で、上下関係についてとても気にしなければならないこ. ニが多い 44同僚との関係でうまくコミュニケーションを取れないことが多い. 26学校や学年の教育方針について自らの信念や考えとの矛盾を感 カることが多い. 皿組織風土 α係数=.76 36自分の学校や学年では、目標や方針といった「今やるべきこと」 ェはっきりとしている* 37他の先生と仕事上の調整や分担がうまくいっている* 35日分の学校や学年では、計回したことが能率よくこなすことがで. ォ働きやすい* 39職場では、色々な意見が出て納得のいく決定がなされている* 38自分のやっていることがどういつだことに役立っているのかはっき りしている* 1. W評価懸念 α係数=.76. 43同僚や上司が自分のことをどう思っているのが気になることが多 1. 「. 因子寄与率(%) 1.      注:*は、逆転項目を衰す.  尚,「生徒の立場を優先させるべきか,教師や学校の立場を優先させるべきか迷 うことが多い」「同僚の愚痴や不満を聞いたり,慰めあったりしなければならない ことが多い」「自分の仕事や役割・校務分掌の処理をするのに十分な人手がある」. の3項目については,いずれも因子負荷量が低かったため除外した。. 10.

(12) ③バーンアウト尺度において,官下ら(2011)の研究と同様に,3因子を抽出し, それぞれ「脱人格化」(α=.87),「達成感の後退」(α=,79),「情緒的消耗感」. (α=.74)と名付けられた(Table 3)。           Tabl●3バーンアウトの因子行列主因子法バリマックス回転 1. 1 脱人格化 α係数=.87 1  10同僚や生捷と、何も話したくないと思うことがある. 075. 0.09. 0.22. 2  6自分の仕事がつまらなく思えて仕方のないことがある. 0β7. 0.27. 0.23. 3  5岡僚や生佳の顔を見るのもいやになることがある. 0β6. α10. 0.31. 4   14今日の仕事は、私にとってあまり意味がないと思うことがある. 0.18. α16. 5  11仕事の結果はどうでもよいと思うことがある. 065 054. 0.13. 0.22. 6   8出勤前、職場に出るのが嫌になって家にいたいと思うことがある. 0.53. 0.13. 0.50. α51. 022. 0.44. 8  15仕事が楽しくて、知らないうちに時聞が過ぎることがある*:. 0.10. 0.69. 0.20. 9  13今の仕事に、心から喜びを感じることがある*. 034. 0.68. 0.04. 10  9仕事を終えて、今日は気持ちのよい日だったと思うことがある*. α18. 0.60. 0.03. 11  4この仕事は私の性分にあっていると思うことがある*. 0.19. α59. 0.11. 12  17我ながら、仕事をうまくやり終えたと思うことがある*. 0ρ5. 0.55. 一〇.01. α49. 一〇.07. 7  1「こんな仕事、もうやめたい」と思うことがある. 13  2我を忘れるほど仕事に熱中することがある*. 卜. π 達成感の後退  α係数=.79. 一〇ρ1. 皿情緒歯止直感 α係数=.74 14  16身体も気梼ちも疲れ果てたと思うことがある. O.26−0.03. 0.75. 15  12仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある. 0.22. 0.05. 0.65. 16  7一日の仕事がおわると「やっと終わった」と感じることがある. O.19. 0.00. 0.55. 17  3こまごまと氣論りをすることが面倒に感じることがある. 0.40. 010. 0.42. 18.79. 14.18. 13.12. 因子寄与率(%). 注:*は、逆転項目を表す. 11.

(13) ④認知的統制尺度において,杉浦(2007)の研究と同様に,2因子を抽出し,それ ぞれ「論理的分析」(α=.85),「破局的思考の緩和」(α==.81)と名付られた (Table4)..      ’rabl●4謬知的二丁パターン行列 (主因子法バリマックス回転). 1 論理的分析α係数=.85. 因子1因子2 O.74. O.18. 0.73. 021. 0.69. 0.12. 0.60. 027. 7問題を解決するような想像をする. 0.59. 021. 2そのような状態になる根拠を冷静に考え、ずっとこの状態が続くわ けではないと思える. 0.52. 0.39. 6自分の状況の捉え方、ものの見方のくせについて考える. 0.51. 022. 11その状況から悪い遣想を発展させない. 0. 3. O.77. 10そのような状況でも明るい嚇銀を掩ち.逆境を自分の利益に変え. 029. 0.66. 9そのような状態から引き起こされると考える悪い結県が頭に思い 浮かんでもそれは自分の想像によるものだと思う. 023. 0.62. 12その状況を深刻に考えてしまうとき、いったん考えるのをやめら れる. 5﹂▼ ﹂ ハ2 UO. 4どうしたらよいか、思考や行動の選択肢をいくつか考えられる. 5その状況の良い面と悪い面を考え、行動の可能性を探ることがで きると思う. 3そうなった理由をいくつか考えられる る. 1そのことが自分にとって何を意味しているのか落ち着いて考えられ. ll確局的思考の緩和α係数=.81. られると思う. 8良い気分はしないけど、磯局的には考えない 因子寄与率(%). 。1. 0.62 0.54. 25 21. ⑤教師の自己効力感尺度おいて,最尤法,プロロマックス回転を行った結果,先. 行研究では2因子構造であったが,本研究においては,4因子構造を示した。そ れぞれ,「教師力量の評価」(α=.85)「教え方」(α=.79)の「対応力」(α=.. 79)「情熱」(α=.76)と名付けられた(Table5)。尚,「これまでの教職経験や自. 主的に参加した研修等は自分の教師としての資質や教授技術に役立っていると思 う」と「考え方がどんなに優れた教師であってもその指導が,クラスの大部分の 生徒に行き届くとは限らない」は共に,因子負荷量が低かったために除外した。. 12.

(14) Table 5教師の効力感尺度の因子パターン行列   (主因子法バリマックス回転). 1. 1. 1教師力量の評価α係数=.85. 因子1 因子2 因子3 因子4. 110生徒の学業は大部分家庭環境に左右されるので教師にできる二 0.75. 002. 004. α07. 0.68. 0.11. 002. 一〇.02. 0.65. 一〇ρ7. 0.09. 0.03. 060. 0.00. 一〇.05. α03. 060. 一〇P5. 一〇,08. 0.11. 0.37. 一〇ρ7. 一〇.09. α08. 0.32. 一〇26. αoo. 一〇23. 12生徒の成績が良くなったとき、それは教師の教え方が功を奏し スからだと思う. 一〇〇4. 0.83. 0.07. ao9. 1生徒が普段よりいい点を取ったとき、それは教師の教え方が良 ゥったからだと思う. 一〇〇5. 067. o.03. 0」2. 0.02. 0β2. α10. 0.10. 一〇ρ3. 052. 0.22. 0.10. 7学習課題が生徒にとって難しいと思われたとき、常に自分はかれ 轤フレベルに合った課題に切り替えている. 一〇〇1. 0.09. 0.67. 一〇.03. 16生徒が学習課題を解くことができないとき、自分はその課題のレ xルがかれらに合っているかどうか的確に両断できる. 一〇〇8. 005. α60. α13. 0ρ4. 0.09. 0.49. 0.26. 一〇,10. 0.16. 0.47. 0.33. 17自分が一生懸命やれば、非常に難しい生写でも、あるいは「やる C」のない餐でも指導できると思う. α13. 0.14. 0.20. 0.82. 9自分が本気になってあたれば、非常に難しいと思われる生徒でも w導できると思う. 0.21. α19. 020. α59. 割前の授業で教えたことを生徒が覚えていないとき、次からはちゃ と覚えられるように自分は指導できると思う. 005. 026. 0.35. 0.40. 13.84. 11.31. 8.68. 834. とはかなり限られている*. 11生徒の学業に影響を及ぼしている要素はすべてを考えた場合、 ウ師のカはそれほど大きなものではない* 18生徒の「やる気」と学業成績は、家庭環境に左右されるものだか ら、そのような問題に触れざるを得なくなったとき、教師はほとんど. r打つ手」がない*. 3学級や授業等で生餌に与える影響は家庭における影響に比べる ニ微々たるものである* 5家庭で「しつけ」られていない生徒は、学校での「しつけ」もほとん. ヌ効き目がない* 4生徒が授業で身につける学力は、各々の家庵環境によって異なる. ニ思う* 14生徒の競がもっと熟心であれば.教師ももっと熱心になれると思 、*. 幽. 1. 脚. E 教え方 α係数豊.79 1. 13生徒が新しい概念を容易に理解できたとき、それは教師がその T念を教えるのに必要な手立てを施したからだと思う 8生徒が普段より良い状態になっているとき、教師がそれなりに努力 オているからだ. ト. ■. 皿 対応力 α係数寓.79 1. 2授業中に、生徒が騒いだり、掻乗の妨盲をしたりしたとき、自分は f早く効果的に対応ができる 6自分は、生徒の学業に関するいかなる問題にも対姐できるような 、修、訓練、経験等を積んでいる. 皿情熱α係致=.76. 因子寄与率(%). 注:*は、逆転項目を表す. 13.

(15) (2) 各尺度ごとの属性による比較.  各尺度の平均点が,性別によって違いがあるかを検討するため,独立サンプル. のt検定を行った。また,年齢層,経験年数層,職務分掌によっても違いがある かを検討するため,1要因の分散分析を行った。以下に尺度ごとの結果を示す。 〈性別による違い〉. ①職務自体のストレッサーの総得点においては,男性の方が有意に高かった  (t(623)=3.62ρく.05,Figure1)。また,「役割の曖昧な職務のストレッサー」  においても男性の方が有意に高かった(t(630)=4.07pく. Ol, Figure2)。「実.  施困難な職務のストレッサー」においては,有意な差はなかった。. 6 322 25 ︷∠4 22. 2    0    84    4    3. ii騒i…灘… ・粥li露   血     L                     1男性    女性.      男性    女性 Figure 2.曖昧な職務のストレッサー. Figure l.職務自体ストレッサー. ②職場環境のストレッサーの総得点及び4つの下位尺度においても,男女による 有意な差はなかった。 ③バ・・一・一ンアウト尺度の総得点において,男女による有意な差はなかった(Figure3)。 「達成感の後退」においては,女性が有意に高かった(t(630)ニ2.19ρ<.05Figure4)。. 8 47 46 45 4. 18.5. 18 17.S. 17. 男性. 男性. 女性. Figure 3.バー・・一・・ンアウト(有意差無し). 14. 女性. Figure 4,達成感の後退.

(16) ④認知的統制尺度においては,総得点及び下位尺度共に男女に有意な差はみられ なかった。. ⑤教師の自己効力感尺度の総得点は,男女に有意な差はなかったが,「教え方」 (t(635)=2.28pく.05. Figure5),「対応力」(t(636)=2.86ρ〈.・Ol. Figure6)の下. 位尺度においては,男性が有意に高かった。. 0 5 9 19 。  &5. 13 12.5 /f”「  麟1. 12 1i.S. 男性. 男性. 女性. Figure 5.教え方. 女性. Figure 6.対応力. 〈年齢層による違い〉. ①職務自体のストレッサーの総得点において,年齢層により,有意な差が認めら れた(F(3,618)=12.26,p<.Ol. Figure7)。 TukeyのHSDによる多重比較を行っ. たところ,20代,30代が,40代以上に比べて有意に低かった。下位尺度の「役 割の曖昧な職務ストレッサー」においてもほぼ同様の結果であった. 45. S0.             }              一  ミ  I   l            l            l            l20代  30代  40代 50代以上. R5・. 02 52 0 3. (F(3, 625)=20. 49, p〈.Ol. Figure8).. 20代. Figure 7 職務自体のストレッサー  Figure 8. 30代  40代 50代以上. 曖昧な職務のストレッサー. ②職場環境のストレッサーの総得点において,年齢層による有意な差は認められ なかったが,下位尺度の「評価懸念」において,有意な差が見られた (F(3,630)=24.24,p<.01. Figure9)。 TukeyのHSDによる多重比較を行ったと. ころ,20代が,各年代に比べて有意に高かった。.                  15.

(17) 西山. 甜卜重雷一.    1           1           ,           1. Q0代  30代  40代 50代以上. Figure 9 評価懸念. ③バーンアウトについては,下位尺度の「情緒的消耗」において,年齢層により, 有意な差が認められた(F(3,631)=6.69,p<.Ol. FigurelO)。 TukeyのHSDによ. る多重比較を行ったところ,20代が,各年代に比べて有意に高かった。. 6420. 1凸11凸4←. 20代  30代  40代 50代以上. Figure 10 情緒的消耗感. ④認知的統制尺度においては,総得点において,有意な差が見られた (F(3,629)=6. 24,p<.Ol。 Figure11)。 TukeyのHSDによる多重比較を行ったと. ころ,20代が,各年代に比べて有意に低かった。下位尺度においても,それぞれ 有意な差がみられた。「論理的分析」(F(3,631)=5.28,p<.Ol. Figure12), 「破局的思考の緩和」(F(3,629)=5.16,p<.01. Figure13)。 TukeyのHSDによ. る多重比較を行ったところ,「論理的分析」においては,20代が,各年代に比べ て有意に低かった。「破局的思考の緩和」においては,20代が50代に比べて有意 に低かった。. Pi灘2. ドll. 鋸瑚. 36. l            l            ,            l            l. @20代  30代  40代 50代以上. Figure ll認知的統制 16.

(18) 15. 21. 馨†黙. 20 19. 一 20代. 圏 30代. 1 40代. P4. 13一 12. 一 20代. Figure l2 論理的分析. 薯. 一40代 50代以上. l             l. 「SO代以上. 30代. 「             1. Figure 13 破局的思考の緩和. ⑤教師の自己効力感尺度おいては,総得点において,有意な差がみられなかった。. しかし,3つの下位尺度においては,それぞれ「教師力量の評価」(F(3,627)= 3.40,P<.05. Figure14),「教え方」(F(3, 634)=2.06, P<.05 Figure15.),. 「対応力j(F(3,6347)=21.33,p<.Ol. Figure16)というように,有意な差が. みられた。TukeyのHSDによる多重比較を行ったところ,「教師力量の評価」にお いては,20代が50代に比べて,有意に高かった。「教え方」においては,20代が 他の各年代に比べて有意に低かった。「対応力」については,20代が他の各年代 に比べて有意に低かった。. また30代も40代50代に比べて有意に低かった。「情熱」については,年代によ る有意な差はなかった。. 2  0  81占  ¶凸. 2 10◎り 内∠う﹂︻41凸. 田l11ミ 嗣一  1            「            1       ・●    1. ク ず ず ず. 20代  30代  40代 50代以上. Figure l4 教師力量の評価. 0 00 21. Figure l5教え方. 20代  30代  40代 50代以上. Figure l6 対応力. 17.

(19) 〈職務分掌(職責)による違い〉 ①職務自体ストレッサーの総得点において,職責により,有意な差が認められた (F(5,622)=2.56,p<.05. Figure17)。 TukeyのHSDによる多重比較を行ったと. ころ(以下同じ),主任が,顧問に比べて有意に高かった。下位尺度の「役割の曖. 昧な職務ストレッサー」においても主任が,担任・顧問・無しに比べて有意に高 かった。{F(5,629)=5.ll, p<.Ol. Figure18)。.  尚,職責は,回答欄に印の無かったものを「無し」,2つ以上に印が入ったもの を「重複」として分類して,集計を行った。. ■ _ 一   魏 l       l       I       I. 36一. 一■ 撃戟C. 1:il:垂. S43603. 必 . 囎 署一■■ 舘   張 田 ■ ■.  1       1       1       翻       巳       1. ゼ三三メ癖夢. Figure l7職務自体のストレッサー. _娩鏡劇画礎 Figure l8 曖昧な職務. ②職場環境のストレッサーの下位尺度の「評価懸念」において,有意な差が見ら れた(F(5,634)=6,44,p<.Ol. Figure19)。主任が,担任・主顧問・無しに比べ. て有意に低かった。. 0δ210. *v即下二藍礎.    Figure 19 評価懸念 ③バーンアウトについては,総得点において,有意差があった{F(5,632)=3. 66,. p<.Ol. Figure20)。担任が主任に比べて有意に高かった。下位尺度においては, 「脱人格化」で,有意な差が認められた(F(5,634)=3.06,p<.05. Figure21)。.                  18.

(20) TukeyのHSDによる多重比較を行ったところ,担任が,主任に比べて有意に高か った。「情緒的消耗感」においても,有意な差が認められた(F(5,635)=2.34,p<.Ol.. Figure22)。 TukeyのHSDによる多重比較を行ったところ,担任が,養護や主任に. 4石228 22 . U5 0 5∩4 4. 比べて有意に高かった。. 1. ダ平町メ二期. ボ菱野芝遭参. Figure 20 バv・・ンアウト総得点. 一. R−. 嚢. 35−. Figure 21脱人格化. Q.5−. Q・.         1.   I          I          I          圏. ウし 主任. S任主顧問養護  重複. Figure 22 情緒的消耗感. ④認知的統制尺度においては,有意な差が見られなかった。. ⑤教師の自己効力感尺度おいては,総得点において,有意な差がみられた (F(5, 623)=3. 96,p<.01. Figure23)。担任が主任に比べて有意に低かった。下. 位尺度では,「対応力」においては,担任・主顧問が主任・重複に比べ有意に低か. ■. 1:■1雲.==: l       l       l       l       I晶晶鏡面痴夢. P」   謝     一 @  一. P   齪 1        膠        1        1        「        1. _拶競証跡騨. Figure 23 自己効力感総得点. Figure 24 対応力 19. 一,. 42086nりハ0みりPOμ0. 1:0・. った(F(5,630)=7.94,p<.Ol. Figure24)。.

(21) 〈経験年数による違い〉. ①職務自体ストレッサーの総得点において,経験年数ににより,有意な差が認め られた(F(3,614)=11,・46,p<.Ol, Figure25)。 TukeyのHSDによる多重比較を行. ったところ(以下同じ),5年未満が,15年∼24年の中堅者に比べて有意に低か った。.  下位尺度の職務の曖昧なストレッサーにおいては,経験年数により,有意な差 が認められた(F(3,621)=19. 18,p<.01. Figure26)。 TukeyのHSDによる多重比. 較を行ったところ(以下同じ),5年未満及び15年未満が,15年以上の中堅・ベ テランに比べて有意に低かった。.  4S. 30.  40. Q5.  35. Q0.     1 2 3 4.                          一 ケ心ll圏                             1                         4.     I            l            I. P    2    3. Figure 25 職務自体のストレッサー Figure 26 曖昧な職務のストレッサー.  (下中:1=5年未満 2=5年∼14年 3=15年∼24年 4・=25年以上). ②職場環境ストレッサーにおいては,下位尺度の職場風土において,有意差があ った。(F(3,627)ニ6.38,p<.Ol. Figure27)。同じく評価懸念においても有意差が. あった(F(3,626)=28.54,p<.Ol. Figure28)。いずれも5年未満がベテランに比. べて,有意に高かった。. 1. 2. 3. 1. 4. 2. 3. 4. Figure 26 評価懸念. Figure 27職場風土 (門中=1=5年未満. 50. 内∠¶幽∩︾ 1 11轟.                    10. 2=5年∼14年. 20. 3・=15年∼24年 4=25年以上).

(22) ③バーンアウト尺度では,下位尺度の情緒的消耗感において,5年未満は25年以 上のベテランに比べて有意に高かった(F(3,627)=4,70,ρ<.Ol. Figure29)。達. 成感の後退においては,15年∼25年が,5年∼14年に比べて有意に高かった ( f7(3, 625) =4. 15, p 〈 . Ol. Fi gure30) .. 4 3 1轟 142 乙. 懸. 19. ■  [      ■. P8. P6. 1   2   3   4. 麟■ ■ 咀. P7. L【幽【一. 1… 1. 1■.     I           l           l. P   2   3   4. Figure 29情緒的消耗感       Figure 30達成感の後退 (図中:1==5年未満 2=5年∼14年 3=15年∼24年 4・=25年以上). ④認知的統制の総得点において,経験年数により,有意な差が認められた (F(3,625=5.90,p<.01. Figure31)。TukeyのHSDによる多重比較を行ったとこ. ろ,5年未満が,25年以上のベテランに比べて有意に低かった。 35 と餌. 34 33 32 31.   一. ■. 一. ■. 一團. Q ■_.. ■    伽. P.    ■. Q. 黶。. 黶D一.    巳.    1. S. R.    Figure31認知的統制 (図中:1=5年未満 2=5年∼14年 3=15年∼24年 4=・25年以上).  下位尺度の論理的分析(F(3,627)=7.52,p<.01. Figure32),破局的思考の緩 和(F(3, 625)=4.31,p〈.Ol.Figure33)において,いずれも有意な差がみられた。. 前者は,5年未満が,5∼14年,25年以上のベテランに比べて有意に低かった。 後者は,15年未満が,25年以上のベテランに比べて有意に低かった。. 21.

(23) Q0 P9. 15 ■1 1. 21. 一慧=  l         l         I2   3   4. P:一,  甑、2 1,国, 1叢      1   2   3   4. P8.   Figure 32論理的分析       Figure 33 破局的思考の緩和. (図中:1=5年未満 2=5年∼14年 3=15年∼24年 4=25年以上). ⑤教師の自己効力感の総得点において,経験年数により,有意な差が認められな かったが,下位尺度の教え方(F(3, 623)=15.22,ρ<,Ol, Figure34),対応力 (F(3, 627)=30. 62,ρ<.Ol. Figure35)と,有意な差がみられた。前者は,15年. 未満が,15年以上に比べ有意に低く,後者は,5年未満がその他に比べて有意に 低いという結果であった。. ﹁乙¶凸. 000. 11・. X8. 10. 一 川ll[   1         ,         ■         1. 1. P   2   3   4. 2. 3. 4.    Figure 35 対応力. Figure 34教え方 (図引:1=5年未満. 弐. 2=5年∼14年. 22. 3=15年∼24年 4=25年以上).

(24) (3)各下位尺度間の相関係数.  今回の調査で用いた5つの尺度のそれぞれの下位尺度である合計15の因子に ついて,Pearsonの積率相関係数を求めた。各変数(下位尺度)間の相関係数を Table6に示す。バーンアウトの各下位尺度とストレッサーの間には高い相関が見 られるが,「脱人格化」においては,「同僚との関係」(.49)が,「情緒的消耗感」 では,「役割葛藤」(.44),「達成感の後退」では,「実施困難な職務」(.26)が,. それぞれ最も高い相関の値を示している。  一方,「脱人格化」においては,「教師力量の評価」(一.39)が,「情緒的消耗感」 では,「教師力量の評価」(一.29)と「破局的思考の緩和」(一.29)がほぼ同等に,. 「達成感の後退1では,「情熱」(一.37)が,高い負の相関を示している。. Table 6  各下位尺度間の相関係数     自体スト     羅籠スト. 。 e e o e e o o o o e e. ①屍人格化.311Pt 436躰 .46尋樽 .㈱ 350,・k 3榊 一273pt一,303Pt一,390pt −e.055 一,lm r19ge ②情緒的消耗,36tW 365緋  ,伽  341牌  259紳 292紳 「219林 、293料 ・・,292**  Oρ04・一.15Slt* 一.170Pt ③達成慮の後.093零 256林  』71縛  」伽  221#  200噂 一・248# 「222料 一200牌 一n6** 凹235s* 一’365**. ④暖味な職務    1.450** ,483縛  nM    Oρ77  0011  0.GO7 −0072−286料・ 蜘  」12纏   刷0ρ41 ⑤実竃困難        155M  3伽  213紳  275紳 一.208Pt 「211料 一252**  “.021 一.16rltS* 一,190)B. ⑥彼翻葛藤             1β12鉢  326*s ⑳欝  一.216# 一210** 。2η勅   0側  ・0ρ73 ・OD71 ⑦同僚との関               1365鉾 363韓 一・177# 一・188Pt −225紳  一〇・OO7 一1C2*  口0加7. ⑧組下風土                    1209牌  一.190** 一.245料 一㎜  r152料 一2梱 一221牌 ⑨評価懸念                        1「伽 「301** 一ρ98零 一〇85ホ 一.422** 一,152**. ⑪諭理的分折                              1,511Pt O9躰  」48緋  .WW  ,2斜紳. ⑪破局的緩和                                1,10M  ,163** .nv  237# ⑫教師力量評                                      1−OS6t   印OD64 ,13se. ⑬数え方                         1tW*346** ⑭対応力                           1,伽. o. @   @. ①脱人格化. 1 .615** .382**. ②情緒的消耗感 ③達成感の後退.    1 .162** 1. 23. *. ’1・’lt ρく. Ol. p 〈. 05.

(25)  (4)バーンアウトの3因子を従属変数とする重回帰分析  バーンアウトの3因子である「脱人格化」「情緒的消耗感」「達成感の後退」(逆. 転項目)の総得点をそれぞれ従属変数とし,職務自体のストレッサー,職場環境 のストレッサー,認知的統制尺度,教師の自己効力感尺度の総得点を独立変数と して,強制投入法で重回帰分析を行った。その際,バーンアウト総得点において 男女に有意差が認められなかったため,分析では,男女別での実施は行わなかっ. た。結果をTable7に示す。尚,多重共線性に問題がないかを調べるためVIFを 検討したが,いずれもVIF値が2以下であったので,問題がないと考える。  尚、結果の分析は後段の考察(p.32.33)で示した。 Table 7. バーンアウトの3因子を従属 数とする■回帰分析結 脱人格化  情緒的消耗感 遣成感の後退 O.153 ““ e.236 ““ O.063. 独立変数 職務自体ストレッ サー 職場環境ストレッ サー. 認知的統制 教師の自己効力感. 0.406 ** O.283 ** O.057 −O.102 ** 一〇.125 ** 一〇.127 ** 一〇.202 *“ 一〇.127 *“ 一一〇.332 “*. R2.42. R2.32. R2.20. みR2 R2.41. R2.3 1. R2.1 9. VIF 〈2 (5) 自由記述からのストレス解消法.  本調査での自由記述で記されたストレス解消法(対処法)からは,各教師が自 身のメンタルヘルス向上に意欲を示す姿が窺え,自己管理の大切さを教えられた。 集計の結果は以下の通りである(Table 8)。自由記述であるため,分類は本研究 者が行った(複数回答)。. Table 8 ストレス解消法 運動 趣味 睡眠 外出 友人 家族 風呂 食事 飲酒 忘れる その但 合計 12 261 15 17 15 22 21 13 18 45 24 59 男性 0 10 16 13 8 147 17 10 10 23 16 24 女性 31 28 408 22 22 30 33 23 28 75 68 48 合計4 96 119 108 76 49 47 44 3.6 44 3.5 3.5 5.2 その他には、ハイキング、芸術、買い物、別のこと、習い事等.               24.

(26) 4.考察. (1) 各尺度の因子分析結果から. ①職務自体のストレッサー  授業,生徒指導,学級経営,部活動,進路指導,研修や会議といった教師の職 業に伴う日常的な活動からのストッレサーを問うている。際限のない多忙感の原 因であることが読み取れる。それをどのように改善していくかが,教師のストレ スを軽減のための課題となるだろう(田上他,2004)。. ②職場環境ストレッサー  教師としての職務を実施する上での職場環境についての質問項目である。主に は生徒や保護者,同僚,上司からの要望や期待,時には要求や対立といったスト レッサーを問うている。際限のない多忙感の中にあっても,バーンアウトしてし まう人とそうでない人がいる。その原因の一つの要素が,この職場環境のストレ ッサーの認知にみられることが読み取れる。. ③バーンアウト尺度  第1因子は,「同僚や生徒と,何も話したくないと思うことがある」「自分の仕. 事がつまらなく思えて仕方のないことがある」などの項目を含む7項目から構成 され「脱人格化」と名付けられた。第2因子は,「仕事が楽しくて,知らないうち に時間が過ぎることがある」「今の仕事に,心から喜びを感じることがある」(逆. 転項目)などを含む6項目から構成され「達成感の後退」と名付けられた。第3因 子は,「身体も気持ちも疲れ果てたと思うことがある」「仕事のために心にゆとり. がなくなったと感じることがある」の項目を含む4項目で構成され「情緒的消耗 感」と名付けられた。.  先行研究ではバーンアウトの因子構造には,「脱人格化」と「情緒的消耗感」を. 一つの因子とした2因子構造もみられるが(高木・田中,2003),マスラックは, バーンアウトの本質は情緒的消耗感であることを認めた上で,バーンアウトの特 異性を,脱人格化と個人的達成感の低下という,他の因子に求めようとしている (久保,2004)という視点は重要と考え,本研究では上記の3因子構造とした。.                  25.

(27) 尚,各因子に含まれる項目については,先行研究でも様々であるが,上述した項 目(各負荷量の大きい項目)においては,ほぼ共通している。. ④認知的統制尺度  第1因子は,「どうしたらよいか,思考や行動の選択肢をいくつか考えられる」 や「その状況の良い面と悪い面を考え,行動の可能性を探ることができると思う」. を含む7項目で,「論理的分析」と名付けられた。第2因子は,「その状況から悪 い連想を発展させない」や「そのような状況でも明るい希望を持ち,逆境を自分 の利益に変えられると思う」を含む5項目で,「破局的思考の緩和」と名付けられ た。2因子構造であること,各因子の項目も先行研究(杉浦,2007)と同じであっ た。.  認知的統制は,ストレスに晒されたときに,それをどのように受け止め,考え るかというストレスコーピングの在り方と深く関わっているものと考えられる。. ⑤教師の自己効力感尺度  第1因子は,「生徒の学業は大部分家庭環境に左右されるので教師にできること はかなり限られている」や「生徒の学業に影響を及ぼしている要素はすべてを考 えた場合,教師の力はそれほど大きなものではない」を含む7項目(逆転項目). で「教師力量の評価」と名付けられた。第2因子は「生徒の成績が良くなったと き,それは教師の教え方が功を奏したからだと思う」や「生徒が普段よりいい点 を取ったとき,それは教師の教え方が良かったからだと思う」を含む4項目で「教 え方」と名付けられた。第3因子は,「学習課題が生徒にとって難しいと思われた とき,常に自分はかれらのレベルに合った課題に切り替えている」や「生徒が学 習課題を解くことができないとき,自分はその課題のレベルがかれらに合ってい るかどうか的確に判断できる」を含む4項目で,「対応力」と名付けられた。第4 因子は,「自分が一生懸命やれば,非常に難しい生徒でも,あるいは「やる気」の. ない者でも指導できると思う」や「自分が本気になってあたれば,非常に難しい と思われる生徒でも指導できると思う」を含む3項目で,「情熱」と名付けられた。. 先行研究では,「教師力量の評価」を一般的教育効力感とし,その他の3っの因子 を合わせて個人的教授効力感とする等の2因子構造もみられた(西松,2005)。.                  26.

(28)  しかし本研究においては,第4因子(情熱)の項目内容が,教師の情熱が生徒 に与える効力を強く評価している点で,バーンアウトが「報われない努力」の過 程を経て起こる(久保,2004)という指摘との関連で,独立して残したいと考え た。その為,本研究では教師の自己効力感については,4因子構造を採用した。. (2) 各尺度ごとの属性による比較から. く性別による違いから〉  先行研究においては,教師のストレスは,男性に比べて女性が高いと唱われて いる(竹田他,2011)(西坂,2003)。本研究では,職務自体のストレッサーの総. 得点と役割の曖昧な職務のストレッサーにおいて,男性が女性より有意に高いと の結果であった。.  今回の調査では,一般的に女性教師のストレッサーとなっている,育児や家事,. 家庭からの個人ストレッサーの質問項目を設定しなかったことも要因の一つであ ろうと考える。.  一方,バーンアウト傾向については,下位尺度の「達成感の後退」において女 性が男性に比べて有意に高かった。この達成感の後退とは,バーンアウト過程の 中で,これまでに高いレベルのサービスを提供してきた人が,質の低下とそれに 伴う自己評価の低下の現れである(久保,2004)とされるものである。ストレッ サーが,バーーンアウトへの直接的要因と考える中,この逆転現象の結果について は更なる考察が必要であると考える。.  また,教師の自己効力感において,教師一般を対象とする教師力量:の評価につ. いては男女による有意な差はみられなかった。しかし,各個人の自己評価に関連 すると思われる「教え方」「対応力」においては,男性が女性に比べ,有意に高い という結果であった。.  これは,学習指導や生徒指導において,困難な状況の中でも,やり遂げること ができるという自信や決意の表れであるとも捉えられる。.  中学校現場においては,仕事の内容や責任において男女の区別はない。役割分 担にも,特別の配慮がなされることも多くはないが,社会生活や家庭生活での性.                  27.

(29) 差はまだ多く存在し。同町社会の中での中学校教師であることを十分に踏まえ, 女性教師が置かれている状況をとらえなくてはならないと考える。. 〈年齢層による比較から〉.  年齢層による比較では顕著な違いが確認された。職務自体のストレッサーの総 得点や,その下位尺度の役割の曖昧な職務のストレッサーにおいて,40代の教師. が,20代の教師に比べて有意に高かった。そして,40代に続いて50代以上が高 く,20代に続いて30代が低かったという結果であった。  特に,40代以降の教師のストレッサーの高さには,授業や生徒指導・部活動以 上に,校内での分掌やPTAや地域活動,教育委員会や他校・他校種との接触など, 担うべき役割の量的・質的拡大が予測される。.  一方,職場環境のストレッサーにおいて,20代の「評価懸念」が高かったとい う結果に注目したい。この下位尺度に含まれる項目からは,他者と比べての自分 の能力への自信の無さや,そのような自分への他者からの評価を心配する姿が覗 える。バリバリと仕事をこなしている先輩教師に比しての自分の無力さを感じた り,経験不足からの失敗や要領の悪さへの指摘も,厳しい評価の一端と受けとめ ているのかも知れないと考える。.  バーンアウト尺度の下位尺度である「情緒的消耗感」において,20代が各年代 に比べて有意に高かった。貝川ら(2006)は,先行研究での,若い教師ほどバー ンアウトがしゃすいとの報告があると伝えているが,反対の結果を示す報告もあ る。久保(2004)は,年齢とバーンアウトの表面上の関連(若い人程高いという 点)は,未経験な人ほど,達成への期待,職務それ自体の期待が高いといった要 因が介在するというような様々な要素を考慮しなくてはならないことを述べてい る。また,同じ対人援助職である看護師においても若い人程バーンアウト傾向が 高いという報告(久保・田尾,1994)と低いという報告(板山・田中,2011)が 混在していることから,細かな実態への把握を要する課題が示唆された。  ともかく, 精神疾患による休職者や定年退職者以外の離職率が45.7%に及ぶ. (文科省,2011)等,教職員を巡るメンタルヘルスの悪化は疑う余地がないと思.                  28.

(30) われる。.  さて,認知的統制尺度においては,杉浦(2007)によっても男女間の差異は認め. られなかったが,大学生を対象にした研究であったため年代学については言及さ れていない。他の,先行研究にも年代別の比較は見あたらず,本研究において,. 認知的統制の総得点及び,下位尺度のいずれにおいても20代が,他の年代と比べ て有意な差がみられた結果が示されたことは,特筆すべきである。若い教師への 介入の手がかりが示唆された。.  教師自己効力感については,先行研究では,ベテラン群が若手群より平均点が 高くなるのは,当然であろう(貝川・鈴木,2006)との記述がみられる。本研究 においても,「教え方」や「対応力」においては,ベテラン群に比べて20代が有 意に低くなる結果が示された。しかし,「教師力量」については,逆転していた。.  若手の教師には,自分自身ができるかどうかには関係なく,教師という仕事は 子どもの学習や生活に強い影響力を与えうるものであるという考えを強く持って いることが覗える。. 〈職務分掌による比較から〉  職務分掌の分類については,本研究では担任,主任,主顧問,養護,(役職の). 重複,無しの5つとした。先行研究では,管理職と教諭・養護教諭などの分類が 多く,直接対象できる研究は見あたらなかった。しかし,小柳(2005)は,主任 等の校内におけるミドルリーダーは,授業や生徒指導に加えて,苦情への対応, 他の教育機関への出向き,研修等児童生徒と直接接しない職務が増えたとの報告 を示し,主任クラスのストレッサーの増加を指摘した。また,教師のストレッサ ーとして,清掃指導や不登校の生徒に対する指導を要因として示した先行研究(田. 中ら,2003)等からは,担任の仕事に関わるストレッサーが報告されている。  本研究では,主任が,職務自体のストレッサーの総得点や下位尺度の役割の曖 昧な職務において,有意に高かったことは,上記の理由からも容易に理解される。. 主任は,多忙な中,沢山の職務を精力的にこなしている(藤原,2006)姿が彷彿 とされる。.                  29.

(31)  職場環境のストレッサーの下位尺度である「評価懸念」において,主任が低い 値を示していることは,彼らが,主任の役割が他者にも十分に評価され得ると自 覚している現れであると考えられる。.  このように多忙な状況に置かれている主任が,バーンアウト尺度においては, 総得点,「脱人格化」「情緒的消耗感」共に,担任に比べて有意に低いという結果. であった。このことは,どのような心理的影響が作用しているのか,詳細に吟味 されるべき結果であると考える。.  一方,担任は「評価懸念」は高いものの,職務自体のストレッサーや職場環境 のストレッサーも比較的低く,曖昧な職務のストレッサーにおいては,有意に低 くなっている。しかし,バーンアウトについては,総得点及び下位尺度において も,主任とは反対に有意に高いという結果であった。このことについても,先の 主任の結果と比較しながら十分に吟味されるべきであると考える。.  さて,教師の自己効力感においては,総得点において担任が主任に比べて有意 に低くなっている。また,対応力においても,担任は養護と並んで低く,主任及 び重複の教師が高いという結果であった。.  ミドルリーダーとして,学校を支えている主任は,当然自己効力感が高く,対 応力などにも自信が伺われる。一方,担任は,生徒や保護者からの要求や時には 苦情を直接聞く立場であり(中塚,2010),学級経営や生徒指導において,全力を 尽くしても時には効を奏することのない結果に終えることも少なくない。その為, 自信を喪失したり,効力感を低下させることになったことが十分に予想される。. 〈経験年数による比較から〉  経験年数による比較は,年代による比較とその結果はほぼ重なっているように 見える。経験年数と年齢には高い相関がある為,それぞれの値が年齢によるもの か,経験年数によるものかは,今回の調査結果からは読み取ることができなかっ た。. 30.

(32) (3) 各下位尺度間の相関係数から.  バーンアウトの下位尺度である「脱入格化」が,人間的な反応をすることがで きないまで燃え尽きた状態(西村他,2009)とするならば,同僚や上司との人間 関係にも齪酷をきたし,それが更なる関係悪化に結びつくことが想像される。そ のため,脱人格化が,職場環境のストレッサーの下位尺度である「同僚との関係」 との相関が高い(.49)という結果は理解できる。.  また,肉体的疲労だけではなく心理的な要素が中心になって起こる疲労感,虚 脱感,感情の枯渇の現れである「情緒的消耗感」(宮下,2008)が,際限なく広範 囲に亘る「役割の曖昧な職務」と高い相関(.44)を示したことも当然であろう。.  「達成感の後退」は,正しく実施困難な職務を前にして効を奏するかしないか 分からない努力の中で涌き起こる感情であり,「実施困難な職務」との相関が高か った(.26)ことも理解される。  一方,負の影響を示したものとしては,「脱人格化」においては,「教師力量」 (一.39)が,「情緒的消耗感」では,「教師力量」(一.29)と「破局的思考の緩和」 (一.29)でほぼ同等に,「達成感の後退」では,「情熱」(一. 37)が,高い負の相関. を示している。.  「教師力量の評価(逆転項目)」は,教師一般の力量を高く評価する項目である。. 厳しい職務や職場環境の中にあって,疲弊し人間的な関わりが失なわれようとす る「脱人格化」や「情緒消耗感」に対して,負の相関がみられたことは,バーン アウト傾向の低減への介入の在り方について示唆された。  また,「情熱」は,自身がやる気を持って取り組めば難しい生徒へも指導できる といった信念を伴うものであり,「達成感の後退」への負の相関も理解できる。.  他には,認知的統制の2つの下位尺度が,バーンアウトの各下位尺度及び各ス トレッサーの内,曖昧な職務のストレッサーを除く全ての下位尺度と負の相関が 見られたことは注視したい。  一方,教師の自己効力感の下位尺度である,「教え方」や「対応力」においては,. 「達成感の後退」を除く,バーンアウト及び各ストレッサーの下位尺度との相関 が現れなかったという結果にも留意したい。.                  31.

Table 5教師の効力感尺度の因子パターン行列   (主因子法バリマックス回転) 1 1 1教師力量の評価α係数=.85 因子1 因子2 因子3 因子4 110生徒の学業は大部分家庭環境に左右されるので教師にできる二 0.75 002 004 α07 とはかなり限られている* 11生徒の学業に影響を及ぼしている要素はすべてを考えた場合、 ウ師のカはそれほど大きなものではない* 0.68 0.11 002 一〇.02 18生徒の「やる気」と学業成績は、家庭環境に左右されるものだか ら、そのような問題に触れざ

参照

関連したドキュメント

BPSD 評価尺度は、 BPSD を客観的に得点化す る。多くは重症度で得点化するが、一部の BPSD 評価尺度では症状の出現頻度で得点化する。負担

欧米におけるヒンドゥー教の密教(タントリズム)の近代的な研究のほうは、 1950 年代 以前にすでに Sir John

最も偏相関が高い要因は年齢である。生活の 中で健康を大切とする意識は、 3 0 歳代までは強 くないが、 40 歳代になると強まり始め、

2014 年度に策定した「関西学院大学

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

特に(1)又は(3)の要件で応募する研究代表者は、応募時に必ず e-Rad に「博士の学位取得

   縮尺は100分の1から3,000分の1とする。この場合において、ダム事業等であって起業地

2030 プラン 2030 年までに SEEDS Asia は アジア共通の課題あるいは、各国の取り組みの効果や教訓に関 連する研究論文を最低 10 本は発表し、SEEDS Asia の学術的貢献を図ります。.