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紛争解決能力を育成する学習方法論とその意義 : "Conflict in Context"における「安全」概念を中心に

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(1)

社会系教科教育学会

『社会系教科教

育学

研究』第22

号 2010

(pp.71-80)

紛争解決能力を育成する学習方法論とその意義

“Conflict in Context

における匚

安全」概念を中心に−

A Teaching Methodology to Develop Conflict Resolution Abilities and its Significances:

Focusing on Security Concept in

“Conflict

n Conte

χt

長 

田 

健 一

(東

谷 

囗 

(東

和 也

I。はじめに

多文化共生社会を前提と

した社会においては,

多様なレベルでの個人や諸集団の紛争

(1

を解決

する具体的方策を提

示し,交渉と合意の中で意思

決定を行うことが重要な市民的資質となる

。本稿

は,このような問題に関して,匚

合意形成」とと

もに個

人や集団の厂

安全保障」による紛争解決を

目指したアメリカのプログラム

“Conflict in

Context: Understanding

Local to Global Security

(2

(以下

“Conflict in Context

つの分析を通じて,

多文化共生時代の紛争解決能力の育成方法につい

て示唆を得るものである。

合理的意思決定能力の育成や社会的論争問題を

扱ったプログラムは数多くある

。例えば,

1960

代後半のD.W.

オリバーらの

『公的論争問題シリー

ズ』

(3

から始まったハ

ーバー

ド社会科の流れは,

共有すべき価値」が崩壊しつつあった1960

年代

のアメリカで

,伝統的価値観に替わって匚

法的思

」や厂

法的手続き」を中核に

した合意形成を目

指してきた

。この種のプログラムは,対立する価

値観に基づく論争解決に

一定の有効な手段と見ら

れてきたが

,一方で現実の対立状況が内包する社

会的

・歴史的文脈を捨象し,単純化された価値の

対立に還元するという問題点があった。

また,

1980

年代

∼90

年代に盛んに提唱されたロー

ル・プレイやシミュレーション教材

9は,様々

なアク

ティビティを通して,クラス内などの身近

な人間関係における紛争解決の方法を学ばせた

しかしながら,この種の実践も,現実社会の歴史

-的

・社会的文脈を捨象している上,あくまでバー

チャルな解決であり

,現実的な政治的

・社会的プ

ロセスの方策を習得できないという問題があった。

これ

らの実践に対し,

"Conflict in Conte

χt

帽ま

現実社会の社会的

・歴史的文脈の困難さを踏まえ

「 ̄

合意形成」だけでなく,価値観の異なる個

人や集団の

安全保障」による共存という,より

現実的で実効性のある紛争解決のあり方を示して

いる

。その上で,①紛争の解決に関する概念形成

と具体的技能の育成

,②歴史的

・社会的文脈に即

した紛争の認識

,③より現実的で実効性のある政

治的意思決定の技能育成を中心に学習を構成して

いる。

本稿は

,このような特徴を持ってonflict in

Context

”の内容構成と学習方法論を明らかにし

た上で

,匚

合意形成」とともに個人や集団の匚

全保障

」によって紛争解決を目指す学習論が,多

文化共生社会においてどのような意義を持つもの

となるかを明らかにするものである。 

(谷口)

n。 ″Conflict in Context

の全体構成

“Conflict in

nt

xt

の全体構成は,

【表1】

に示したLesson2

∼5

までの四段階からなる。段

階が進むごとに

,個人

・地域レベルから国家レベ

,国際レベルへと紛争問題の解決の次元が上昇

し,様々な社会的レベルにおける紛争や

「安

? についての考察を深める構造になっている。

それとともに

,各単元の多くは,紛争問題を分析

し,解決方法を導くよう構成されている。

71−

(2)

紛 争解 決の ための基本 的概念 と技能 の習得 を 目

指 すLesson2で は, 以 後 の段 階で の基 盤 とな る基

本的 な概念 や技能 の習得 を 目指 し,紛争 の構成要

素, 紛争 がエ スカレ ート す る順 序,状 況 に合 わせ

た和 解や交 渉の方 法とい った, 紛争解 決 のため の

基本 的な概念 と技 能が学 習さ れる。

Lesson3で は, 安 全 の概念 とそ の多 様 な 側面 を

探究 し, そ れを 自身 の個人 的生 活や地 域に 関連づ

け るため の学 習活動 が設 定さ れてい る。

【表1 】"Conflict in Context″

の全体 構成

< 紛 争 解 決 の た め の 基本 的 概 念 の 探 究 > Lesson 2-1 私 た ちの 差 異 を 知 る Lesson 2-2 紛 争 を コ ント ロ ール す る Lesson 2-3 紛 争 の展 開 を 探 る Lesson 2-4 紛 争 の 5つ の側 面 Lesson 2-5 多 楡 吐と 紛 争

Lesson 2-6 Walking the Talk : 車 の相 乗 り Lesson 2-7 様 々 な 和 解 の方 法 Lesson 2-8 実 効 的 な 交 渉 の カ ギ < 個 人 的 ・ 地 域 社 会 的 視 点 >  「 安 全」 概 念 の 学 習 Lesson 3-1 安 全 と 危 険 を 思 い 描 く Lesson 3-2 安 全 と は Lesson 3-3 私 の 生 活 の 中 の 安 全 Lesson 34 異 な っ た 視 点 Lesson 3-5 私 の 住 む 地 域 の 安 全 を 地 図 で 表 す Lesson 3-6 あ な た の 住 む 地 域 は ど れ く らい 安 全 ? < 国 家 的 視 点 >  紛 争 問 題 に関 わる 外 的 諸 要因 の 考 察 Lesson 4-1 安 全 と メ デ ィ ア : プ ロ パ ガ ンダ と 優先 順 位 Lesson 4-2 メ デ ィ ア : 敵 か 見 方 か ? Lesson 4-3 国 家 安 全 保 障 : ア メ リ カ 合 衆 国 憲法 Lesson 4-4 国 家 安 全 保 障 と 世 論− ア メ リ カ の場 合 Lesson 4-5 銃 か バ タ ー か ? Lesson 4-6 貧 困 と は 何 か ? Lesson 4-7 ア メ リ カ の 子 ど もた ち は ど れ だ け安 全 か ? < 国 際 的 ・ 地 球 的 視 点 >  社 会的 ・ 歴史 的 文 脈 を 踏 ま え た 具 体 的 な 紛 争 解 決 の ケ ー ス ・ ス タ デ ィ Lesson 5-1 戦 争 や 侵 略 を 我 々 はど う 定 義 し て い る か ? Lesson 5-2 世 界 的 な 紛 争 を 地 図 に 表 す Lesson 5-3 様 々 な 国 の 安 全 度 を 評 価 す る Lesson 5-4 1999 年 の 世 界 の 状 況 Lesson 5-5 安 全 の 機 会 均 等 一 事 実 か 虚 構 か Lesson 5-6 核 兵 器 Lesson 5-7 世 界 人 権 宣 言 Lesson 5-8 戦争 ,平 和, 人 権 :子 ども たち の声 に耳 を 傾 け る Lesson 5-9 政 治 風 刺 漫 画 と 国 連 Lesson 5-10 労 働 者 の 権 利 を 守 る 国 連 の努 力 Lesson 5-11 少年 兵 Lesson 5-12 地雷 一 戦 争 の 後 Lesson 5-13 天 然 資 源 と 安 全 保 障 Lesson 5-14 多 国 間 交 渉 Lesson 5-15 自 由 貿 易 / 公 平 貿 易:WTO の勝 者 と 敗 者 Lesson 5-16 債 務 救 済 の た め の 国 際 首 脳 会 談 Lesson 5-17 経 済 制 裁 : シ ミュ レ ー ショ ン Lesson 5-18 内 戦 Lesson 5-19 グ ロ ー バ リ ゼ ー ショ ン と は何 か ? “Conflict in Context ”pp.3-4 よ り 筆 者 作 成 。

-Lesson4で は, 国 家 レベ ル, す な わち ア メリ カ

国内 の安 全 に焦点 が当て られ, 周 りを取 り巻 くメ

ディ アや世論, 公共政 策形 成の ため の諸 要素 から

も紛争問 題 の発 生及 び解決 につい て考察 さ れる。

最後 のLesson5で は, こ こま で に習得 し た問題

解決 の方 策を 統合し, 戦争 の脅威 や経済 格差な ど

「 世 界の人 々の安 全 に重 大な 影響 を 及ぼ す 幅広 い

問題言 の解決 を考え る学習 が用 意さ れて い る。

( 長田 ・谷 口)

Ⅲ。 紛争 解決 の概念形 成と技 能育成 の段 階

Lesson2は, 紛 争 解決 に必 要 な概 念 や技 能 の習

得を 目指 す, 以下 の四つ の学習 に分 類で きる。

①紛争 解決のための基本的考え方

L2-1「私 たち の差異を知 る」

L2-2「紛争を コント ロールする」

②紛争を 理解・分析するための視点

L2-3「紛争 の展 開を探 るL2-4 「紛争 の5つ の側面」

L2-5「多様性 と紛争」

③対立 の解消と合意形成のためのプロセ ス

L2-6「車 の相乗 りJ L2-7「様 々な和 解の方 法」

④交渉を成 功さ せるためのカギ

L2-8「実効的な交渉 のカギ」

1。 紛 争 解 決 の た め の 基 本 的 考 え 方

① は,「 紛 争 解 決 の た め の 基 本 的 考 え 方 」 を 学

ぶ も の で, Lesson2-l 「 私 た ち の 差 異 を 知 る 」 と

Lesson2-2 「 紛 争 を コ ン ト ロ ー ル す る 」 の 二 つ が

こ れ に あ た る 。 こ れ ら は , 紛 争 が 互 い の 差 異 か ら

生 じ る と い う こ と と, 紛 争 解 決 の た め に は, 出 問

題 を 特 定 す る, (2)他 者 の 視 点 を 持 つ, (3)お 互 い に

利 か あ る よ う な 解 決 策 を 模 索 す る, (4)お 互 い に有

効 に 働 く よ う な 解 決 方 法 を 見 つ け る, (5)紛 争 解 決

の た め の 実 施 計 画 を 作 る , と い う 過 程 が 必 要 で あ

る こ とを 学 ぶ 。 し か しな が ら, こ れ ら は , あ く ま

で 理 念 的 な も の で あ っ て , 従 来 の シ ミ ュ レ ー シ ョ

ン グ ー ム 等 の 紛 争 解 決 プ ロ グ ラ ム と 大 差 な いo

“Conflict

n Context" が こ れ ま で の 類 似 の プ ロ グ

ラ ム と異 な る点 は, Lesson2 を 構 成 す る 他 の三 点 ,

す な わ ち ② ∼ ④ に あ る と い え る 。

2。 紛争を 理解・ 分析 する ための視点

Lessson2-3

∼2-5で は,以 下 に示 し たよう な諸概

念を 中心 に, 紛争 の段 階や諸 側面,及 び それら の

背景 要因 として の多 楡 歐につ いて学習 さ せる。

Lesson2-3 匚

紛 争 の展 開を 探 る」 で は, 紛争 が

72 −

(3)

生じ, 最終 的に は身 体的 攻撃 にまでエ スカレ ート

す る一 般的 な過程 を,物語 や歴 史教 材, 実 際の紛

争事 件 の事 例分析 に よって考察 させ てい る。

L. 2-3 「 紛 争 の 展 開 を 探 る 」( 紛 争 が エ ス カ レ ー ト する 順 序 ) 1. 自覚 ・ 意 識 や 明 快 さ, 情 報 の 欠 如 2. 情 報 の誤 り 3. 意 見 の相 違 4. 意 見 の不 一 致 5. 言 い 争 い 6. 論 争 ・ 口論 7. 言 葉 に よ る脅 し ・ 威 嚇 8. 威 嚇 的な 態 度 や 表 情 9. 言 語 的 ・ 心 理 的 な 攻 撃 ・ 悪 口 10. 身 体 的行 為 に よ る 攻 撃 ・ 虐 待 L。2-4 厂紛 争 の 5 つ の 側 面」( 紛 争 の社 会 的 ・ 歴 史 的 文 脈) 1. 誰 が / ど れ だ け の 集 団 か 関 わ っ て い る か ? 2. 紛 争 の原 因 は 何 か ? 何 を めぐ っ て 争 っ て い る のか ? 3. 争 って い る 集 団 間 の 関 係 性 4. 紛 争 の歴 史 は ど う な っ て い る か ? 5. プ・ セ ス : 紛争 に ど う 対 処 す る か ? L. 2-5  厂多 様 性 と 紛 争」 (紛 争 を エ ス カレ ー トさ せ る 要 因 と し て の 多 様 性) ・ 多 様性 ( 差 異) は, し ば し ば 紛 争 のエ スカ レ ート を 招 く。 ・ 匚誤 解」 や 「 偏 見 」,「 言 葉 に よ る 攻 撃 」 が あ る 時, 多 楡│生 は紛 争 へ とエ ス カ レ ー ト す る 要 因 と な る 。

つ づ くLesson2-4

匚紛 争 の 5 つ の 側 面」 で は,

紛 争 の(1)関 係主 体, (2)原 因, (3)主 体 間 の 関 係 性 ,

(4)歴 史 的 経 緯 と い っ た 様 々 な 側 面 に よ っ て , 紛 争

の 特 質 や(5)解 決 の見 通 し が 大 き く 異 な っ て く る こ

と を 理 解 さ せ る 。 具 体 的 に は , 紛 争 の 各 側 面 を 説

明 す る た め の ス キ ッ ト づ く り を 通 し て, 諸 集 団 の

持 つ 社 会 的 ・ 歴史 的 文 脈 によ る紛 争 の多 様 な 特 質 。

【 表 2】 紛 争 解 決 過 程 の タ イ プ と そ の 特 徴

対 処 法 の多 槍 院を 理 解 す るo

さ ら にLesson2-5 匚多 様 性 と 紛 争 」 で は , 先 の

Lesson2-l や2-3 を 踏 ま え , 多 様 性 は , 匚誤 解 」 や

匚偏 見 」, 厂言 葉 に よ る 攻 撃 」 に よ っ て , 紛 争 を エ

ス カ レ ー ト さ せ る 要 因 と な る こ とを 理 解 す る 。

3。 対 立 の 解 消 と 合 意 形 成 の た め の プ ロ セ ス

Lesson2-6 ∼2-7 で は , 先 のLesson2-3 ∼2-5 で 学

ん だ 視 点 を 用 い な が ら, 異 な る立 場 の 人 々 の 間 で

の 交 渉 や 合 意 に つ い て 考 察 さ せ て い る 。

Lesson2-6 匚車 の 相 乗 り ] は , 大 気 汚 染 削 減 の

目 的 で 車 の 相 乗 り を 市 民 に 強 制 す る状 況 を 通 し て,

強 制 力 を 持 っ た 交 渉 や 譲 歩 の 過 程 で の 妥 協 点 を ,

ロ ー ル ・ プ レ イ を し な が ら 模 索 さ せ て い る。

ま た, Lesson2-7

匚様 々 な 和 解 の 方 法 」 で は ,

紛 争 解 決 の コ ン ト ロ ー ル 主 体 は誰 か, 解 決 の 過 程

は 自 発 的 か 強 制 的 か な ど の視 点 に よ り , 紛 争 解 決

過 程 は, 【 表 2】 に示 し た よ う な 9つ の タ イ プ に

分 け ら れ る こ と, 紛 争 の レ ベ ル や 社 会 的 ・ 歴 史 的

文 脈 の違 い に よ っ て 最 適 な 解 決 の方 法 が あ る こ と

を 学 習 す る 。 さ ら に宿 題 で は, 個 人 間 , 地 域 , 国

際 の 各 レ ベ ル に お け る 仮 想 の 紛 争 シ ナ リ オ を 分 析

し , ど の よ う な 紛 争 解 決 策 が 最 も効 果 を 発 揮 す る

かを 判 断 ・ 説 明 す る よう な学 習 活 動 を 行 って い る。

紛 争 解決 過 程 意 思 決 定 主 体 紛 争 解 決 過 程 の コ ン ト ロ ー ル主 体 自 発 的 か 強 制 的 か 注目 する 点 (関 係 性 か問 題 か) 当 事 者 の 行 動 喚 起 によ る 紛 争 解 決(initiate) 当 事 者 当 事 者 自 発 的 関係 性 当 事 者 同 士 の 意 思 疎 通 によ る 紛 争 解 決(communicate) 当 事 者 当 事 者 自 発 的 関 係 性 第 三 者 の 仲 介 に よ る 紛 争 解 決(conciliate) 当 事 者 第 三 者 自 発 的 関 係 性 第 三 者 の 援 助 に よ る 当 事 者 同 士 の紛 争 解決(facilitate) (当 事者) (第 三 者) ( 自 発 的) (関 係 性) 当 事 者 同 士 の 公 的 交 渉 によ る 紛 争 解 決(negotiate − formal) (当 事者) ( 当 事 者) ( 自 発 的) (関 係 性) 第三 者主 導 の 公 的 交 渉 によ る 紛 争 解 決(mediate) (当 事 者) ( 第 三 者) ( 自 発 的) (関 係 性) 当 事 者が 第 三 者 の 判 断 を 仰 ぐ 形 の紛 争 解 決(arbitrate) (第 三 者) ( 第 三 者) ( 自 発 的) (関 係 性) 第 三 者 の 公 的 裁 定 に よ る 紛 争 解 決(adjudicate) (第 三 者) ( 第 三 者) (強 制 的) ( 両 者) 政 府 や国 際 機 関 に よ る 新 ル ー ル 制 定 を 通 じ た紛 争 解 決(legislate) (第 三 者) ( 第 三 者) (強 制 的) ( 問 題)

“Conflict in Context" プ リ ン ト2-7a よ り 筆 者 作 成。 な お, facilitate以 降 は記 載 が な い た め, 0   は 筆 者 が 推 測 。

(4)

4。 交 渉 を 成 功 さ せ る た め の カ ギ

最 後 のLesson2-8 厂実 効 的 な 交 渉 の カ ギ 」 は ,

最 適 な 紛 争 解 決 の 方 法 を よ り 有 効 な も の に す る た

め の カ ギ ( 下 記 A∼K) につ い て の 学 習 で あ る。

学 習 者 は , 紛 争 解 決 の当 事 者 た ち が , 実 際 の交 渉

に お い て ど の よ う な 技 能 や 姿 勢 を 使 用 し た の か,

そ れ らが どの よ う に交 渉 を 有 効 に 進 め るカ ギ と な っ

た の か を 分 析 す る 。        ( 長 田 ・ 谷 口 )

A.交 渉に同意する。

B. 解決法の選択 肢を探すのをいと わない。

C.立場 と利 益を 見極める。

D.目標を確 認して明らかにする。

E. 価値 の相違を 尊重 する。

F. 積極的・ 建設 的な雰囲気を作り出す。

G.立場を逆 にして考えて みる。

H.明解にす るた めの質 問をす る。

I. 両者の重要な要求を含 む形 で質問を 構成 し, 提示する。

J. 同意でき る範囲 とできない 範囲を 明らかにする。

K.“ はい” が

いいえ ”で答え る必 要のある具体的な 提案を

する。

Ⅳ。 紛 争 解 決 と 「 安 全 」 概 念 の 学 習 の 段 階

以 上 の よ う な 紛 争 解 決 の た め の 基 本 的 概 念 や 技

能 の 学 習 に 続 い て, Lesson3 で は, 【 表 3】 に 示

し た よ う な 「 ̄

安 全 」 の 概 念 が 学 習 さ れ る。 こ こ で

言 う 厂

安 全 」 と は , い わ ゆ る 厂国 家 安 全 保 障 」 の

意 味 で の 厂安 全 」 に 限定 さ れ る も の で は な く, 個

人 が 生 き て い く 上 で 必 要 と考 え ら れ る 匚人 間 の安

全 保 障 」 概 念 に 基 づ く も ので あ る 。 本 プ ロ グ ラ ム

で は, 人 々 の 持 つ 差 異 ・ 多 様 性 が 紛 争 の 発 生 ・ 激

化 の 要 因 に な る と い う 考 え 方 を 示 し て い た。 し か

し な が ら, Lesson3 以 降 で 展 開 さ れ る, 様 々 な 地

理 的 レ ベ ル で の 紛 争 の 解 決 を 考 え る 学 習 にあ た っ

て は, 紛 争 の原 因 を よ り 具 体 的 な形 で 分 析 す る こ

と が 重 要 と な る。 そ の た め, 個 人 の多 様 な 具 体 的

ニ ー ズを 安 全 の 概 念 に よ って 示 し , 紛 争 の 原 因 を

分 析 す る た め の 視 点 と し て 学 習 さ せ て い る と 考 え

ら れ る 。

Lesson3 は, 個 人 ・ 地 域 レ ベ ル で の 紛 争 解 決 を

学 習 す る 中 で , 自 分 自 身 の 視 点 か ら(Lesson3-l

∼3-3), 他 者 の 視 点 か ら(Lesson3-4),

地 域 の 視

点 か ら(Lesson3-5 ∼3-6) 安 全 保 障 を 考 え る 三 段

構 成 と な って い る。

Lesson3-2 で 【 表 3 】 に示 し た よ う な 個 人 の 安

全 ( 保 障) の 様 々 な 側 面 を 学 ん だ上 で , そ れ ら の

重 要 性 は, 地 理 的 ・ 社 会 的 背 景 や 文 化 な ど の 違 い

に よ り , 個 人 に よ っ て 異 な る こ と がLesson3-4 で

【 表 3 】 個 人 の 安 全 の 類 型

安 全 の類 型 安 全 の 具 体 例 健 康 上 の安 全 栄 養 。 風 雨 か ら身 を 守 る 住 まい や 衣 服。 伝染 病 予 防。 病 気 の 治 療 。 身 体 的 安 全 傷 害 や 虐 待 , 暴 力 , テ ロ か ら 恒 常 的 に身 を 守 る 法 制 度 や 規 律。 精神 的安 全 所 属 感 覚。 愛 し 愛 さ れて い る 感 覚o 他 者 か ら の 承 認。 家 族 や 友 だ ち, 大 人 , 同 級 生 , 仕 事 仲 間 と の 健全 な人 間 関 係。 教 育 開 発上 の 安 全 教 育 の 機 会。 学 ん で 目 標 を 達 成 し, 社 会 に貢 献 す る 機 会 と 自由 。 文 化 的 安 全 文 化 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ や 価 値 , 伝 統 に 対 す る 承 認。 民 族 的 , 人 種 的 , 宗 教 的 , ジ ェ ン ダ ー 的 ア イ デ ンテ ィ テ ィ に 対 す る 尊 重 と法 的 な 保 護。 文 化 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ に 関 わ ら ず, 社 会 参 加 で き る 自 由。 政 治 的 安 全 政 府 か 国 民 に与 え る 保 護 や 安 全 の 度 合 い , 国 境 を 越え る 脅 威 か ら の保 護。 意 思 決 定 に お け る市 民 の権 利 や 参 加 の質 や 度 合 い 。 経 済上 の安 全 職 業 訓 練 や 職 能 開 発 の機 会 。 適正 な 生 活 水 準 を 保 て る賃 金 や 就 労 の 機 会 。 高 齢者 や 病 人 , 障 か い 者 , 子 ど も に対 す る 援助 。 環 境 上 の安 全 環 境 危 機 や環 境 有 害 物 質 か ら の保 護。 安 全 で き れ い な 空 気 , 水 , 食 料 の提 供 。 安 全 で 衛生 的 な 居 住 環 境 の 提 供 。

“Conflict in Context” プ リ ン ト3-2a よ り 筆 者 作 成 。

は 学 ば れ る 。 そ し て , 自 分 た ち の 地 域 に と っ て の 安 全 を 考 え , 安 全 上 の 問 題 の 解 決 を 図 る 学 習 が , Lesson3-6 で は 行 わ れ る 。 こ こ で 学 習 者 た ち は , ま ず , 人 々 の 安 全 に 影 響 を 及 ぼ す 地 域 の 様 々 な 状 況 に つ い て 明 ら か に す る た め , 数 量 的 デ ー タ を 収 集 す る 。 次 に , デ ー タ か ら 明 ら か に な っ た 状 況 を 分 析 し , 安 全 の 観 点 か ら 問 題 が あ る と 考 え ら れ る 部 分 に つ い て , 解 決 ・ 改 善 の た め の 提 案 を 考 え る 。 最 後 に , そ の 提 案 を 地 域 の 行 政 当 局 や 民 間 セ ク タ ー な ど に 伝 え る 。 こ れ に よ りLesson3 で は , 人 々 が 求 め る 多 様 な 安 全 や , 地 域 社 会 の 安 全 に 関 わ る 状 況 を 分 析 す る 能 力 を 育 成 し て い る 。   ( 長 田 )

V 。国家・ 国際レ ベル の紛争 解決へ の応用

1.安全保 障の対象 ・類型 と単元 構成

ここ までに学習 し てき た紛争 観 や, 紛争 解決 に

必 要な 概念や技 能を, 国内政 治や国 際社会 の多 様

な安 全を めぐる紛争 に適 用し てい く のが, Lesson

4と5で あ る。 ここ で は, よ り典型 的なLesson5 に

お ける安全( 保障) と紛 争解決 の ための学習方 法

論 につ いて検討 して い く。

すで に確認 し た通 り, 本 プロ グラ ムは, Lesson

3にお い て個人 の安 全及 び地 域 レベ ル での安 全 に

― 74 ―

(5)

つ い て 学 習 す る。 一 方, Lesson4 で は , 国 家 レ ベ

ル の 安 全 に つ い て 学 習 す る。 例 え ば, Lesson4-5

で は, 合 衆 国 憲 法 前 文 に 記 さ れ た 「 ̄

共 同 の 防 衛 」

と 「 ̄

一 般 の 福 祉 」 の理 念 を 対 比 さ せ る 形 で , 国 家

の 安 全 と 国 民 の 安 全 につ い て 考 え さ せ て い る。 そ

れ に 対 し てLesson5 で 学 習 す る 安 全 と は, 国 家 の

枠 にと ら わ れな い特 定 の 個 人 や 集 団 の安 全 で あ り,

国 家 の 安 全 で は な い 。 【 表 4 】 中 の 安 全 保 障 の

匚対 象 者 」 が 示 す 通 り , 国 際 レ ベ ル の 安 全 に 関 す

る 問 題 も, 結 局 は ど こ か の 具 体 的 な 個人 や 集 団 に

表 出 す る と 捉 え て い る。 つ ま り, 旧 来 の 国 家 安 全

保 障 で は, 個 人 を 国 民 と し て 抽 象 的 に 捉 え る こ と

に よ り , 国 家 と 個 人 を 二 重 写 し にし た 形 で 国 家 間

の 安 全 保 障 を 図 っ て き た の に 対 し , こ こで は , そ

れ ぞ れ 固 有 で 多 層 的 な 文 脈 を 持 つ 国 家 や 地 域 の 中

に 生 き る 個 別 具 体 的 な 個 人 や 集 団 の 安 全 に 焦 点 を

当 て , 国 家 以 外 も安 全 提 供 の 主 体 と し て 関 わ り な

が ら, 各 個 人 ・ 集 団 の 安 全 の 実 現 を 図 る, い わ ゆ

る 匚人 間 の 安 全 保 障 」

(7) の 立 場 を と っ て い る

( 【 図 1 】 参 照 )

o そ れ ゆ え, Lesson5 の 単 元 は。

【 表 4】 の 通 り , 経 済 上 や 教 育 開 発 上 の 安 全 保 障

な ど, Lesson3-2 の 個 人 の 安 全 の類 型 ( 【 表 3 】 )

に即 し た 内 容 と な っ て い る。

本Lesson5 で は, そ の よ う な 特 定 の 個 人 や 集 団

の多 様 な 安 全 が 脅 か さ れ る こ と で , 様 々 な 形 の紛

争 へ 展 開 し て い く こ と が, Lesson5-2 で 学 習 さ れ

る。 こ れ は , 紛 争 が, 安 全 保 障 に 関 す る 他 者 と の

対 立 や, 安 全 保 障 上 必 要 な 要 素 の 欠 如 ・ 不 足 か ら

生 じ る とす る捉 え 方 で あ り , そ れを 解 決 す る に は,

侵 害 さ れて い る安 全 の 保 障 を し な け れ ば な ら な い 。

【 表4 】Lesson5 各 単 元 に お ける 安 全 保 障 の類 型 と対 象

単元 名 お よ び 内 容 安 全 保 障 の 類 型 安 全 保 障 の 対 象 対 象 範 囲 対 象 者 L5-1 : 戦 争 や 侵 略 を 私 た ち は ど う 定 義 し て い る か ? ( 戦 争 の 専 門 的 定 義) 全 て の 安 全 保 障 国 際 社 会 全 て の 人 々 L5-2 二世 界 の 紛争 を 地 図 に 表 す (安 全 と の 関 わ り で 生 ず る紛 争 の 世 界 的 な 傾 向) 全 て の 安 全 保 障 国 際 社 会 全 て の 人 々 L5-3 : 国 の安 全 度 を 評 価 す る ( 世 界 各 国 の安 全 の度 合 い) 全 て の 安 全 保 障 世 界 各 国 全 て の 人 々 L5-4 : 1999年 の 世 界 の 状 況 ( 各 国 の 安 全 の相 対 的 評 価 及 び人 権 と の関 係) 全 て の 安 全 保 障 世 界 各 国 全 て の 人 々 L5-5 : 安 全 の 機 会均 等 ( 女 性 の 平 等 ・ 不 平 等 と, 安 全 に 影 響 を 与 え る 要 素) 全 て の 安 全 保 障 国 際 社 会 女 性 L5-6 : 核 兵 器 (核 兵 器 と各 安 全保 障 と の 関 係, 日常 生 活 へ の影 響) 身 体 的 安 全 保 障 国 際 社 会 全 て の 人 々 L5-7 : 世 界 人 権 宣 言 (世 界人 権 宣言 か 掲 げ る 人 権 , 人 権 意 識 の 相対 性) 全て の 安 全 保 障 国 際 社 会 全 て の 人 々 L5-8 : 戦 争 , 平 和, 人 権 : 子 ど も た ち の 声 に耳 を 傾 け る ( 大 量 破 壊 兵 器 の 脅 威 と , 子 ど も た ち の 安 全 保 障 , 人 権 を 守 る国 際 法 や 国 際 法 廷) 身 体 的 安 全 保 障 国 際 社 会 子 ど も L5-9 : 政 治 風 刺 漫 画 と 国 連 ( 国 連 の基 本 的 な 機 能 と, 政 治 風 刺 漫 画 の働 き ・ 手 法) 全 て の 安 全 保 障 国 際 社 会 全て の 人 々 L5-10 : 労 働 者 の 権 利 を 守 る 国 連 の努 力 (労 働 者 の権 利 と, そ れを 守 る 各 国 際 機 関 の機 能) 経 済 上 の 安 全 保 障 国 際 社 会 労 働 者 L5-11 : 少 年 兵 (少 年 兵 問 題 と, そ れを 解 決 す る た め の 政治 的 行 動) 身 体的 , 教 育 開 発上 の 安 全 保 障 紛 争 地 域 子 ど も L5-12 : 地 雷 = 戦 争 の後 も! (地 雷 を め ぐ る 問 題 と, そ の 国 際 レ ベ ル で の 解 決 法) 身 体 的 安 全 保 障 紛争 地域 全 て の 人 々 L5-13 : 天 然 資 源 と安 全 保 障 ( 天 然 資 源 の 世 界 的 分 布 と人 々 の 安 全 保 障 と の 関 係) 経 済 上 , 環 境 上 の 安 全 保 障 世 界 各 国 全 て の 人 々 L5-14 : 多 国 間交 渉 ( 環 境 問 題 を めぐ る多 国 間交 渉 と 合 意 形 成) 環 境 上 の 安 全 保 障 世 界 各 国 全て の 人 々 L5-15 : 自 由貿 易 / 公 平 貿 易 :WT O の 勝 者 と 敗 者 (世 界 経 済 と国 際 機 関 の 働 き, 世 界 へ の影 響) 経 済 上 の 安 全 保 障 国 際 社 会 全 て の 人 々 L5-16 : 債 務 救 済 の た め の 国 際 サ ミ ット (発 展 途 上 国 の 経 済 発 展 や 教育 開 発 を 促 進 す る方 策) 経 済上 , 教 育 開 発 上 の安 全 保 障 発 展 途 上 国 全 て の 人 々 L5-17 : 経 済 制 裁 : シミュレーション (人 権 侵 害 国 家 に 経 済 制 裁 を 課 す に あ だ っ て の 判 断) 経 済上 の安 全 保 障 と 他 の安 全 保 障 ( の 対 立) 圧 制 国家 全 て の 人 々 L5-18 : 内戦 ( 内 戦 の 発 生 , 複 雑 化 の 背 景 要 因 と, そ の 解 決 の 方 途) 全 て の 安 全 保 障 紛 争 地 域 全 て の 人 々 L5-19 : グロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン と は 何 か ? ( グ ロ ー バ リ ゼ ー ショ ン が も た ら す 変 化 や 影 響) 全 て の 安 全 保 障 国 際 社 会 全 て の 人 々 “Conflict in Context” pp.1 1 1-206よ り 筆 者 作 成 。 そ の た め に は , ま ず , 匚誰 」 の 匚何 」 を 安 全 に す る の か を 特 定 す る 必 要 が あ る 。 そ れ が 【 表 4 】 中 の 厂安 全 保 障 の 対 象 」 と 匚安 全 保 障 の 類 型 」 で あ り , こ の 二 点 が 具 体 的 に 明 ら か と な る 内 容 で な け れ ば , 単 元 と し て 成 り 立 ち 得 な い 。 さ ら に は , 各 単 元 の 中 で , 安 全 を 脅 か し て い る 要 素 の 分 析 ・ 評 価 や , 安 全 の 提 供 主 体 と 方 法 の 選 択 等 が 為 さ れ な

― 75 ―

(6)

け れば, 安全を めぐる紛争 の解決 を考え る学習 と

はな らない。 し たがって, 安全保 障に 関す るこれ

ら のいわ ゆ る 匚5W1H」 的な 視点 は, 各単 元 の内

容を構 成す るにあ たって必 要不可 欠で ある。

こ のよ う にLesson5で は, 国 際社 会 の中 で安 全

が脅 かさ れるの は国家 で はな く, 個人 や特定集 団

であ ると捉え, 具体 的な安 全保 障の対象 と類型 に

即して, 紛争 解決 の方法 を考え るよう 構成さ れて

い る。

2 。紛 争 解 決 の 学 習 と 単 元 構 成

次 に 各 単 元 に お け る紛 争 解 決 の 学 習 過 程 につ い

て 検 討 す る 。 例 え ばLesson5-8 は, ① 大 量 破 壊 兵

器 や 厂子 ど も の 権 利 条 約 」 の 理 解 , ②大 量 破 壊 兵

器 が 子 ど も の 安 全 に 及 ぼ し て い る影 響 や , 厂子 ど

も の 権 利 条 約 」 を め ぐ る 状 況 の 評 価 , ③ 国 際法 廷

を 利 用 し て, ど う 子 ど も の安 全 を 守 れ る か の分 析 ,

④ 陳 情 書 の 執 筆 と そ の 内 容 を 評 価 す る 会 議 の開 催 ,

と い っ た 構 成 に な って い る。

こ の よ う なLesson5-8 を は じ め と す るLesson5 各

単 元 の 授 業 は , 大 き く分 け て 【 表 5】 に示 し た よ

う な 四 段 階 の 学 習 過 程 ( 表 中 右 4列 ) で 構 成 さ れ

て い る と 考 え ら れ る。

< 国 家 安 全 保 障 >

印 彡sj ・

安全保障関係

一  闊 氷 上5 −

政府A

X d

政府 B

'9

胴 盟,勢力均衡)

0・

丈冫

国民

国民

【表5 】Lesson5各 単元 の学習過 程

Lesson2 と のつ な が り L2-1 ∼2 L2-3 ∼5 L2-6 ∼8

こノ こ

概 念 ・ 用語 の 理 解 状 況 の 分 析 ・ 評 価 紛 争 解 決 の 方 法 紛 争 解 決 の 実 行 L5-1 : 戦 争 や 侵 略 を 私 た ち は ど う定 義 して い る か ? ○ L5-2 : 世 界 の紛 争 を 地 図 に 表 す ○ L5-3: 様 々な 国 の安 全 度を 評 価 す る ○ L5-4 : 1999年 の世 界 の状 況 ○ L5-5 : 安 全 の機 会均 等一 事 実 か 虚 構 か ○ ○ L5-6: 核 兵 器 ○ ○ L5-7 : 世 界 人 権 宣 言 ○ ○ L5-8 : 戦 争 , 平 和, 人 権 : 子 ど も た ち の 声 に 耳 を 傾 け る ○ ○ ○ ○ L5-9 : 政 治 風 刺 漫画 と国 連 ○ ○ L5-10 : 労 働 者 の 権 利 を 守 る 国 連 の 努力 ○ ○ ○ ( ○) L5-11 : 少 年 兵 ○ ○ ○ L5-12 : 地 雷 =戦 争 の 後 も ! ○ ○ ○ L5-13 : 天 然 資 源 と安 全 保 障 ○ L5-14 : 多 国 間交 渉 ○ ○ ○ ○ L5-15 : 自 由貿 易/ 公 平貿 易: WTO の 勝 者 と敗 者 ○ ○ ○ ( ○) L5-16 : 債 務 救 済 の た め の 国 際 サ ミ ット ○ ○ ○ ○ L5-17 : 経済 制 裁 : シ ミュレ ー シ ョ ン ○ ○ ○ ○ L5-18 : 内戦 ○ ○ ○ L5-19 : グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ンと は 何 か ? ○ ○ (○) “Conflict in Context ” pp.1 1 1-206よ り 筆 者 作 成 。 な お , ( ○ ) は 発 展 課 題 も 含 め た 場 合 。

<人間の安全保障>

【 図 1 】 「 国 家 安 全 保 障 」 と 「 人 間 の 安 全 保 障 」 の 違 い ( 筆 者 作 成 )

― 76 ―

(7)

一段階では,概念や用語の理解

。第二段階で

,状況や

その背景の

分析

・評価

。第

三段階では,

紛争解決方法の分析

・評価

・提案

。第四段階では,

紛争解決

案の実行

を行う

。また

,これ

ら四つの段

階は

,先立って学習するLesson2

の学習内容と対

応関係に

あると考

えられる

。すなわち

,第

一段階

,紛争の基本概念を示

したLesson2-l

∼2-2,

二段階は,紛争を分析するための視点を示した

Lesson2-3

∼2-5,

第三

・四段階は

,紛争解決の方

法や実効的な交渉のカギ

を示

したLesson2-6

∼2.8

対応

している

(【表5】)

このようにLesson5

では

,学習者は,

Lesson2

学んだ紛争解決のための概念や技能と,

Lesson3

で学んだ様々な安全の類型についての理解

を活用

しなが

,具体的な安全の類型と対象が置かれ

いる状況

(社会的

・歴史的文脈)に即

して,その

安全

を保障するための紛争解決の

方法について考

していくこととなる。     

(長田)

VI.

紛争解決能

力育成のための具体的授

業展開

1.

元厂

内戦

」の

目的

と授

業構成

それでは,

"Conflict in Context

では

,紛争の

社会的

・歴史的文脈

を踏ま

えた紛争解決能

力を具

的にどう育成

しようと

しているのか

。その実際

を単

「 ̄

内戦」に即

して検討する。

Lesson5-18

内戦」では,紛争解決のために,

紛争の要因や展開

,影響など紛争の

力学

を分析す

る能

力の

育成

を主な

目的

としている

。紛争の最終

的段階である内戦に焦点を当てた本単元は

,アフ

ガニスタン内戦の社会的

・歴史的文脈

を分析

し,

それに基づいて紛争解決の

あり方

を考

えていく

業では

,まず

,内戦

一般の

定義づけを

した後,

プリン

トでの学習や調査活動を通

して

,アフガニ

タン内戦の社会的

・歴史的文脈

を理解

させ

る。

引き続き

,民族

・集団同士の関係性

を中心と

した

内戦の

力学を分析

させる

。次に,アフガニス

タン

の内戦に関わる実際の個

人の経験

を教材

として

内戦が個人にもたらす影響や

,個

人が果た

し得る

役割

を考察させる

。最後に

,それ

までに学習

した

ことを踏まえ

,ア

フガニス

タンの内戦を解決する

にはどう

したらいいか

を考

えさせ

。このような

業構成

を表にすると,

【表

6】の

ようになる。

2。

紛争解決能

力育成の方略

(1

内戦

一般の定義づけと要

因の考察

本単元では

,紛争の一形態である内戦に焦点を

当て

,国家間の戦争とは異

なる背景

を持つ内戦の

力学について学習させていく

。そのためにまず

学習者は

,既

知の

内戦の例か

ら内戦一般の定義づ

けを行う

。また

,なぜ同

じ国の

中で人々が争

うの

,その理由

(内戦の要因)についても考

える。

ここでは

,内戦の概念や特徴

をよ

り明確にす

るこ

とを通

して

,国家間の戦争と内戦

との

違いを確認

させようと

していると考えられ

(2

内戦の社会

・歴史的文脈の学習

内戦

一般に

ついての理解

を導入

して,次に

フガニス

タン

を例に

,実際の

内戦の社会的

・歴

史的文脈

を理解

させ

てい

。その最初の段階と

,配布

プリン

トを用いてア

フガニス

タン内戦の

社会的

・歴史的文脈の理解に必要

な最低限の

用語

を獲得させていく

。用語の確認に

引き続

き,学習

者たちは

,アフガニスタンの地理的情報など国家

の概要や

,内戦史の概略に

ついて学ぶ

。あわせ

て,

配布

プリン

トに登場

した国々や

,ア

フガニス

タン

主要な地点を世界地図とア

フガニス

タンの

地図

に位置づけていく

。さらに

,民族や歴史上重要な

人物

を確認す

。これ

らの学習活動

を通

して

,学

習者は

,各自が

以前か

ら持っている知識

・理解に

,ア

フガニス

タンの地理や民族

,宗教

,内戦

の歴史に関す

る共通の基礎

的理解

を得る

次に

,アフガニス

タンの

人口構成

(各民族が

める割合

)を調べさせた上で

,各学習者は

,七つ

民族

(パシュ

トゥン

,タジク

,ハザラ,ウズベ

トルクメン,アイマク

,ペルシャ)とイス

ム教の

二つの

宗派

(スンニ

,シーア

)の

うち

,い

ずれか

を選び

,専門的に調査

して

いく。その際

教師が

あらか

じめ

示す

問い

(【表

6】中の①

∼④

ついて考

えなけれ

ばならない。

このように

,ここではアフガニス

タンの内戦史

(歴史的文脈

会的文脈

)を特に理解

)における各民族

させようと

・集団の働

している。

(社

77

(8)

【 表 6】 単 元 「 内 戦 」 の 授 業 構 成

学習 の 段 階 学習 の 過 程 学 習 方 法 具 体 的 学 習 目 標 分 析 ・ 考 察 の 視 点 ( 教 師 の発 問 ) 基 礎的認 識 ・ 理 解 の 形 成 (1 〉内 戦 一 般 の 定 義 づ け と 要 因 の 考 察 内戦 の 例を 通 し た話 し 合 い ・ 内 戦 一 般 の 定 義 ( 内 戦 を ど う 定 義 す る か ?) ・ 内 戦 の 要 因 ( な ぜ 同 じ 国 の 市 民 同 士 が 争 う のか ?) (2)内 戦 の社 会 的 ・ 歴史 的 文 脈 の 学習 配 布 プ リ ン ト に よ る学 習 と話 し 合 い ・ 文 章 か ら 情 報 を 読 み取 る。 ・ 他 国 の地 理 や 文 化 を 理 解 す る。 ・ 内 戦 を 招 い た 状 況 の力 学 を 分 析 す る 上 で 基 本 と な る 考え や 言 葉 , 歴 史 を 知 る 。 ・ アフ ガ ニ ス タ ン の 地 理 ( 内 戦 に 関 わ る国 々 は , そ れ ぞ れ地 図 上 の ど こ か ? ア フ ガ ニ ス タ ン の主 要 な 地 点 は ど こ か ?) ・ アフ ガ ニ ス タ ン の 民 族 と 歴 史 ( 各民 族 は 何 と い う 名 前 か ?歴 史 上 重 要 な 人 物 は誰 か ?) 調 査 に よ る 認 識 ・ 理 解 の 発 展 と 分 析 インターネッ ト や 文 献 に よ る調 査 ・ 文 章 か ら 情 報 を 読 み取 る。 ・ 調 査 を 行 っ て デ ー タ を 分 析 し , 情 報 を 整 理 す る。 ・ 同 じ 環 境 を 共 有 し て 住 む 人 々 の 生 活 に与 え る 政 治 的 ・ 文 化 的 影 響 を 分 析 す る 。 ①民 族 ・ 集 団 の 特 徴 ・ ア イ デ ン テ ィテ ィ ( そ の民 族 ・ 集 団 の メ ン バ ー た ちを ど の よ う に 特 定 す る か ? そ の 民 族 ・ 集 団 の メ ン バ ー た ち は, ア フ ガ ニ ス タ ン に 住 む 他 の人 々 と ど の よ う な 点 にお い て 異 な る の か ?) ②民 族 ・ 集 団 の ア フ ガ ニ スタ ン 社 会 にお ける 位 置づ け ( そ の民 族 ・ 集 団 は , ど の く ら い 昔 か ら ア フ ガ ニ ス タ ン に住 ん で い る の か ? ど こ か ら来 た の か ? 構 成 メ ン バ ー の 人 数 の 規 模 は ど れ く ら い か ? ア フ ガ ニ ス タ ン の ど の あ た り に 住 ん で い る の か ?) ③民 族 ・ 集 団 の 内 戦 にお け る 働 き ( そ の民 族 ・ 集 団 は , 他 の ど の民 族 ・ 集 団 と 最 も 激 し く衝 突 し た か ? そ の衝 突 は , 何 に 起 因 し て い た か ? そ の民 族 ・ 集 団 は , 内 戦 に ど う 関 与 し た か ? あ る い は, ど う 内 戦 か ら身 を 守 っ た か ?そ の 民 族 ・ 集 団 は, 暴 力 を 止 め る 過 程 に ど う 貢 献 し た か ?) ④ 内 戦 の 影 響 ・ 結 果 ( 内 戦 は 一 般 市 民 に どう 影 響 を 与 え た か ?) 学 習 し た 社 会 的 ・ 歴 史 的 文 脈 に 基 づ く 分 析 ・ 考 察 (3)社 会 的 ・ 歴 史 的 文 脈を 通 じ た 内 戦 の力 学 の 考 察 調 査 結 果 の 発 表 と 話し 合 い ・ デ ー タ の 分 析 に よ っ て 新 た に 得 ら れ た 情 報 を 共 有 す る。 ・ 各民 族 ・ 集 団 の 内 戦 へ の 関 与 や 影 響 ( 各 民 族 ・ 集 団 は, 過 去10 年 の 内戦 に ど う 関与 し , ま た , 影 響 を受 け た か ?) (4内 戦の分析・ 考 察 と 解 決 方 法 の 提 案 調 査 結 果 や 配 布 プ リ ン ト に基 づ く 話 し 合 い と 発表 ・ 文 章 か ら情 報 を 読 み取 る。 ・ 同 世 代 の 青 年 の 経 験 を 理 解 し, 同 様 の 状 況 に対 し て 自 分 だ っ た ら ど う対 処 す るか を 考 え る。 ・ 内 戦 が そ の 国 の 一 般 市 民 や イ ン フ ラ に与 え た 影 響 を 分 析 す る。 ⑤ ア フ ガ ニ ス タ ン の 内 戦 の原 因 分 析 ( 自 分 が 調 べ た 内 戦 の主 な 原 因 は 何か ?) ⑥ 紛 争 解 決 の た め に 暴 力 的 手 段 を 用 い る こ と に よ る 効 果 ・ 影 響 の 考 察 ( 武力 衝 突 は, い ず れ か の民 族 ・ 集 団 の 計 画 を 推 し 進 め た か ? そ れ は ど の よ う に し て か ? 暴 力 の 行 使 や 人 権 の 侵 害 は , 正 当 化 さ れ て い る か ? そ れ は な ぜ か ? ど う す れ ば人 権 侵 害 を 避 け ら れ た か ?) ⑦ ア フ ガ ニ スタ ン の 内 戦 が 人 々 に与 え た 影 響 の 考 察 ( 内 戦 は 一 般 市 民 に どう 影 響 を 与 え た か ?) ⑧ 内 戦 の 解 決 に個 人 が 果 た す役 割 につ い て の 考 察 ( グ リ ス ・ ジ ョ ー ン ズ が 担 っ て い る の と 同 じ よ う な 仕 事 を や ろ う と 考え た こ と は あ る か ?そ れ はな ぜ か ? グリ ス ・ シ ョ ー ン ズ は 紛 争 を 終 わ らせ る の に実 際 に貢 献 で き る と 思 う か ?) ⑨ 内 戦 の 概 念 ・ 定 義 の再 考 ( こ の 内 戦 は, 自 分 が よ く知 っ て い る他 の 内 戦 と 比 べ て , ど う 似 て い る か ? あ る い は 異 な っ て い る か ?内 戦 は 国 家 間 の 戦 争 と 比 べ て , ど う 似 て い る か ? あ る い は 異 な っ て い る か ?) ⑩ ア フ ガ ニ スタ ン の 内戦 を 解決 す る方 法 の 提 案 ( ア フ ガ ニ ス タ ン の内 戦 を 終 わ ら せ る た め , 和 平 の 調 停 者 と し て , 自 分 だ っ た ら何 を 提案 す る か ?)

(3)社 会的・歴 史的文 脈を 通じ た内戦 の力 学 の考察

続いて学 習者 は, 調 べた民族 ・集 団につ いて グ

ル ープで報 告を行 う。 そして, 各民族 ・集 団が,

過 去10年 の内 戦(8)に どう 関与 し , 影 響 を受 けて

き た かにつ いて 話 し合 う。 この話 し合 い は, 匚内

戦 の始 まり, 拡 大, 継 続の要 因とな った立場 や問

題 の多 楡 陛と 複雑性 に関して, 学習者 たちが理 解

“Conflict in Context" pp.193-198よ り 筆 者 作 成。 を 深 め る 尹 こ と を 目 的 と す る 。 す な わ ち , こ こ で は ア フ ガ ニ ス タ ン の 社 会 的 ・ 歴 史 的 文 脈 を 通 し て , 内 戦 の 力 学 を 考 察 さ せ よ う と し て い る 。 (4) 内 戦 の 分 析 ・ 考 察 と 解 決 方 法 の 提 案 次 に , 学 習 者 た ち は ,「 運 命 に 捕 ら わ れ て」 と 題 す る 配 布 プ リ ン ト を 授 業 内 で , あ る い は 宿 題 と し て 読 み , そ の 内 容 に つ い て 他 の 学 習 者 た ち と 話 −78 −

(9)

し合

。この

プリン

トに書かれ

ているのは

,仕事

してアフガニス

タンで現地市民の

援助に携わ

あるアメ

リカ人青年の経験

を綴ったエッセイ風の

文章である

oこれは

,内戦に関わる個

人の経験

して

,内戦の

り現実的

・具体

的な状況に触れ

内戦が個人の安全に

いか

なる影響

を及ぼすのか

また

,内戦の解決のために個人がどの

ような役割

を果たすことができるのかについて考察

させる

とを目的と

しているもの

と考えられ

最後に再び話

し合いの場が設

けられ

,学習者は,

この授

業で学んだ

ことに

ついて発表をする

。ここ

では

【表

6】中の⑤

∼⑨の

ような問いが

,内戦

を分析

・考察す

るための視点と

して示される

。内

戦の社会的

・歴史的文脈に関する前出の①

∼④の

問いも踏まえた考察に

より

,内戦を解決する方法

の提案

(【表6】⑩

)が行われ

ることとなる

この

ように

,本単元では,内戦の社会的

・歴史

的文脈の理解と,

Lesson2

で学ぶ概念や技能とを

結び

つけた分析

・考察によって

,紛争解決の能

育成

を図っている。      

(長田)

紛争解決能

力を育成する学習方法論の意義と

課題

以上に明らかに

してきたように

“Conflict in

Context

”は

,紛争の解決に必要な概念や技能を

学習

した上で

,個人

・地域か

ら国際

レベルに至る

々な種

類の紛争

,安全の視

点を軸に

,社会的

歴史的文脈か

ら分析

,具体的な政治的手続きに

よる解決のお

り方を考えさせる

プログラム

である

では

,本

プログラムが

示す

ような,紛争解決能

を育成する学習方法論の意義は何

であ

ろうか

。そ

れは主に

三点考

えられ

一に

,個

人や特定集団の安全を考察すること

,国家間対立や南北問題のよ

うなマク

ロな社会

構造と

,個人や諸集団の安全

を脅かす具体的な紛

(社会的論争問題)を関連付けることができる

ようになった

。さらに

,匚

安全」概念の導入は,

和解

・合意形成」以外の紛争解決の道を開き,

より現実的な政治的

・社会的選

択を含めた紛争解

決能

力の育成が可能となった

。このよ

うに安全保

を紛争解決の方法と

して含めた場合

,個人や諸

団は自らの価値観を維持

しつつ,様

々な

レベル

-の

集団と関係性

を保つことが

できる

oその意味

「安全

」概念を紛争解決の手段と

して取

り入れ

市民的資質形成の方法論の意義は大きい

第二に

,多様

な紛争の解決

を図る過程は,学習

者に経済や環境

,教育開発など多面的に安全につ

いて考えさせ

ることで

,それ

らの

共通要素

を抽

,分野横断的に安全の問題

を整理

して理解す

ことを可能にする气また

「 ̄

分野横断的に

『安

全』の

問題を探究する

ことで

,安全概

念の本質が

明らかに

され

,安全の問題に対

して,どのよ

うな

処方箋が考えられ

るかも

,より明確になる」

第三に

,紛争

をその社会的

・歴史的文脈か

ら理

・考察

させる

ことで

,学習者の社会認識

を可能

している

。過去の紛争解決の教

育は,その

多く

が紛争解決のための概念や技能の学習のみ

を目的

していたため

,ロー

・プレイ

などのアクテ

ビティが中心で

,社会認識教育と

しての側面が弱

かった

。それに対

し,紛争の社会的

・歴史的文脈

の学習

を通

して紛争解決能

力の

育成

を図る教育は

社会認識教

育と

しての役割も果たす

ことができる

ため

,社会科の

中に位置

づける

ことが可能

となる

では

,逆に課題は何か

。主要な課題

しては

個人

,地域

,国家,国際の各

レベルの

安全保障が

互いに

どう関係

し合っているのか

,総合的な理解

を形成することが難

しい点が挙

げられる

本プログラムは,

Lesson3

∼5

において

,個人

地域

レベル

,国家

レベル

,国際

レベルへと,いわ

ば同心円的に安全保障と紛争解決の範囲

を拡大

せる構成

をとっているが

,個人や地域

レベルでの

安全保障や紛争解決と

,国家

レベルや国際

レベル

でのそれ

とは

,同心円的

・調和的に重なるものと

して

,同様の視

点で捉

えられ

るのだ

ろうか

。また

国家と個人の安全は厂

補完的であると同時に拮抗

してお

,状況次第で背景にある錯綜

した問題群

が噴出するJo

との指摘が

ある通

,個人や地域

安全保障

,国家や国際社会の安全保障は時に

は対立的に存在する

ことも起

りうる

oこのよ

な場合

,子

どもたちは,どの

ように安全保障に関

する紛争問題

を取

り扱

うのか

。これは

,身近な社

会的問題を通

して子どもたちに

ある種の社会的論

争問題解決の知識や技能

を育成

しようとする

,同

種の授

業が抱

える課題でもある。   

(長田)

79−

(10)

Ⅲ。おわ

りに

本稿では

“Conflict in Context

の分析

を通

て,どのような形で紛争解決能力の育成が可能か

を考察

してきた

。"Conflict in Conte

χt

は,これ

までの同種の

プログ

ラム

とは異なり

,紛争

を社会

・歴史的文脈

を踏ま

えて分析

し,実際的な政治

的意思決定過程

を用い

,その上で,紛争解決のた

めの具体的で実効性の高い解決法

を提示するもの

となって

いた

。また,Ⅵで考察

した単元

「 ̄

内戦

のよ

うに

,紛争の背景にある諸集団間の政治的

宗教的

・文化的背景など,紛争が発生

・展開

した

社会的

・歴史的文脈

を踏まえた分析

を行っている

点で

,社会認識教育と

しても優れた

プログラムで

あるといえよう。

さらに

,本

プフグ

ラム

で示唆され

る社会認識形

成や厂 ̄

安全保障]概念を視点とした紛争解決の

力育成は

,多文化共生社会における公教育

を考

える上で

,匚

包括性」

を補

完す

る新たな意義

を持

くる

。すなわち,多文化共生社会において,諸

集団間の相違が問題

化され

ていない段階では

,相

互の匚

尊重

,または手続き的価値

を共有

した上

での合意形成が有効

となろう

。しか

しなが

ら,一

,その相違が問題

化され

,紛争が顕在化

した場

合は

,歴史的

・社会

的文脈

を踏まえた実効的な交

渉が不可欠となる

。その時に必要

となるのは,よ

り上位の匚

包括的

」集団か

らの垂直の視点

(同

民だか

らとか

,法的手続

きに則ったとか

)より,

身体的

,経済

的,文化的など

【表

3】にあるよう

な個人や諸集団の匚

安全保障

」が第

一となろう。

これ

らは

,相互の匚

重」という精神論では

なく,

具体的で実行

可能な紛争解決手段を通

して保障さ

なければならない。

この

安全保障」概念やそれ

を軸

とした紛争解

決能

力育成は

,多文化共生社会における公教育に

おける国

民形成

と補

完する形で

,相互尊重

という

モラル

を超

えた市民的資質形成の

一つの重要な要

として注目され

るべきもの

となろう。

(谷口)

(1)

“conflict

”の訳

「対立」や

「葛藤」

「論争」

「戦争」等の幅広い意味をもつが

,本稿では訳

語を

「紛争」で統一した。

(2)Gayle Mertz &

Carol

M. Lieber,

Conflict

in

Contex:

だUnderstanding

£ocal

to

Global

旅心喧y

Educators for Social Responsibility, 2001.

(3)M.

Levin,

F.

M.

Newmann

& D.W.

Oliver,

A

α秤皿d

Social

Science

Curt・iculum

based

on

the

Analysis

of

?ublic

Issi

心:

Final

Repo

だ,

Office

of Education, 1969.

や,

D.W

。Oliver

& F.

M.

Newmann,

晶靜厶

w旋ries/

Harvard

Social

旅訪心丹可ect,

American Education Publication,

1968-1974.

など。

(4)

例えば,ウィリアム

・J

・クライドラー他著,

プヨジェク

トア

ドペンチャ

ージャパン訳

『対立

がちからに

ーグループづくりに生かせる体験学

習のすすめ

ー』み

くに出版,

2001

年(原書出版

年は1995

年)は

,紛争や対立をクラス内の人間

関係に限定し

,個人の感情をコン

トロールする

ことによって対立の解消を目指した実践の代表

例である。

(5)

“security"

の訳

。本稿では,文脈によって,日

本語訳を「 ̄

安全」と「安全保障」に使い分けた。

(6)ibid

p.lll.

(7)

従前は

,いかに

して他国による軍事攻撃(戦争)

の危険から自国と自国民を護るか(

=国家安全

保障)に焦点が置かれていたのに対し

,冷戦終

結以後は

,主要国間での戦争の危険が低下した

ため

,国家安全保障の下で二次的

・三次的なも

のとされてきた各個人が求める様々な種の安全

(

=人間の安全保障)が表出するようになった。

また

,世界経済の相互依存や地球環境問題の拡

大もその要因となった。

(8)

本プログラムが発刊された2001

年時点で考えれ

,ソ連軍撤退後のタリバンとムジャヒディン,

北部同盟を中心とする支配権争い

(9)ibid.,

p。196.

皿赤根谷達雄匚

『新しい安全保障』の総体的分析」

赤根谷達雄

・落合浩太郎編著阡新しい安全保

障」論の視座』亜紀書房,

2001

年.

p.93

(11

)ibid.

茴納家政嗣匚

国家,国際体系−]

拡大する安全保障論の構図

,納家政嗣

・竹田いさみ編

一個人,

『新安全保障論の構図』勁草書房,

1999

年'

pp-4-50

−80−

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