社会系教科教育学会
『社会系教科教
育学
研究』第22
号 2010
(pp.71-80)
紛争解決能力を育成する学習方法論とその意義
−
“Conflict in Context
”
における匚
安全」概念を中心に−
A Teaching Methodology to Develop Conflict Resolution Abilities and its Significances:
Focusing on Security Concept in
“Conflict
i
n Conte
χt
”
長
田
健 一
(東
北
大
学
大
学
院
)
谷
囗
(東
和 也
北
大
学
)
I。はじめに
多文化共生社会を前提と
した社会においては,
多様なレベルでの個人や諸集団の紛争
(1
)
を解決
する具体的方策を提
示し,交渉と合意の中で意思
決定を行うことが重要な市民的資質となる
。本稿
は,このような問題に関して,匚
合意形成」とと
もに個
人や集団の厂
安全保障」による紛争解決を
目指したアメリカのプログラム
“Conflict in
Context: Understanding
Local to Global Security
(2
。
)
(以下
,
“Conflict in Context
つの分析を通じて,
多文化共生時代の紛争解決能力の育成方法につい
て示唆を得るものである。
合理的意思決定能力の育成や社会的論争問題を
扱ったプログラムは数多くある
。例えば,
1960
年
代後半のD.W.
オリバーらの
『公的論争問題シリー
ズ』
(3
)
から始まったハ
ーバー
ド社会科の流れは,
厂
共有すべき価値」が崩壊しつつあった1960
年代
のアメリカで
,伝統的価値観に替わって匚
法的思
考
」や厂
法的手続き」を中核に
した合意形成を目
指してきた
。この種のプログラムは,対立する価
値観に基づく論争解決に
一定の有効な手段と見ら
れてきたが
,一方で現実の対立状況が内包する社
会的
・歴史的文脈を捨象し,単純化された価値の
対立に還元するという問題点があった。
また,
1980
年代
∼90
年代に盛んに提唱されたロー
ル・プレイやシミュレーション教材
9は,様々
なアク
ティビティを通して,クラス内などの身近
な人間関係における紛争解決の方法を学ばせた
o
しかしながら,この種の実践も,現実社会の歴史
-的
・社会的文脈を捨象している上,あくまでバー
チャルな解決であり
,現実的な政治的
・社会的プ
ロセスの方策を習得できないという問題があった。
これ
らの実践に対し,
"Conflict in Conte
χt
’
帽ま
,
現実社会の社会的
・歴史的文脈の困難さを踏まえ
て
,
「 ̄
合意形成」だけでなく,価値観の異なる個
人や集団の
匚
安全保障」による共存という,より
現実的で実効性のある紛争解決のあり方を示して
いる
。その上で,①紛争の解決に関する概念形成
と具体的技能の育成
,②歴史的
・社会的文脈に即
した紛争の認識
,③より現実的で実効性のある政
治的意思決定の技能育成を中心に学習を構成して
いる。
本稿は
,このような特徴を持ってonflict in
Context
”の内容構成と学習方法論を明らかにし
た上で
,匚
合意形成」とともに個人や集団の匚
安
全保障
」によって紛争解決を目指す学習論が,多
文化共生社会においてどのような意義を持つもの
となるかを明らかにするものである。
(谷口)
n。 ″Conflict in Context
″
の全体構成
“Conflict in
C
o
nt
e
xt
”
の全体構成は,
【表1】
に示したLesson2
∼5
までの四段階からなる。段
階が進むごとに
,個人
・地域レベルから国家レベ
ル
,国際レベルへと紛争問題の解決の次元が上昇
し,様々な社会的レベルにおける紛争や
「安
全
? についての考察を深める構造になっている。
それとともに
,各単元の多くは,紛争問題を分析
し,解決方法を導くよう構成されている。
71−
紛 争解 決の ための基本 的概念 と技能 の習得 を 目
指 すLesson2で は, 以 後 の段 階で の基 盤 とな る基
本的 な概念 や技能 の習得 を 目指 し,紛争 の構成要
素, 紛争 がエ スカレ ート す る順 序,状 況 に合 わせ
た和 解や交 渉の方 法とい った, 紛争解 決 のため の
基本 的な概念 と技 能が学 習さ れる。
Lesson3で は, 安 全 の概念 とそ の多 様 な 側面 を
探究 し, そ れを 自身 の個人 的生 活や地 域に 関連づ
け るため の学 習活動 が設 定さ れてい る。
【表1 】"Conflict in Context″
の全体 構成
< 紛 争 解 決 の た め の 基本 的 概 念 の 探 究 > Lesson 2-1 私 た ちの 差 異 を 知 る Lesson 2-2 紛 争 を コ ント ロ ール す る Lesson 2-3 紛 争 の展 開 を 探 る Lesson 2-4 紛 争 の 5つ の側 面 Lesson 2-5 多 楡 吐と 紛 争Lesson 2-6 Walking the Talk : 車 の相 乗 り Lesson 2-7 様 々 な 和 解 の方 法 Lesson 2-8 実 効 的 な 交 渉 の カ ギ < 個 人 的 ・ 地 域 社 会 的 視 点 > 「 安 全」 概 念 の 学 習 Lesson 3-1 安 全 と 危 険 を 思 い 描 く Lesson 3-2 安 全 と は Lesson 3-3 私 の 生 活 の 中 の 安 全 Lesson 34 異 な っ た 視 点 Lesson 3-5 私 の 住 む 地 域 の 安 全 を 地 図 で 表 す Lesson 3-6 あ な た の 住 む 地 域 は ど れ く らい 安 全 ? < 国 家 的 視 点 > 紛 争 問 題 に関 わる 外 的 諸 要因 の 考 察 Lesson 4-1 安 全 と メ デ ィ ア : プ ロ パ ガ ンダ と 優先 順 位 Lesson 4-2 メ デ ィ ア : 敵 か 見 方 か ? Lesson 4-3 国 家 安 全 保 障 : ア メ リ カ 合 衆 国 憲法 Lesson 4-4 国 家 安 全 保 障 と 世 論− ア メ リ カ の場 合 Lesson 4-5 銃 か バ タ ー か ? Lesson 4-6 貧 困 と は 何 か ? Lesson 4-7 ア メ リ カ の 子 ど もた ち は ど れ だ け安 全 か ? < 国 際 的 ・ 地 球 的 視 点 > 社 会的 ・ 歴史 的 文 脈 を 踏 ま え た 具 体 的 な 紛 争 解 決 の ケ ー ス ・ ス タ デ ィ Lesson 5-1 戦 争 や 侵 略 を 我 々 はど う 定 義 し て い る か ? Lesson 5-2 世 界 的 な 紛 争 を 地 図 に 表 す Lesson 5-3 様 々 な 国 の 安 全 度 を 評 価 す る Lesson 5-4 1999 年 の 世 界 の 状 況 Lesson 5-5 安 全 の 機 会 均 等 一 事 実 か 虚 構 か Lesson 5-6 核 兵 器 Lesson 5-7 世 界 人 権 宣 言 Lesson 5-8 戦争 ,平 和, 人 権 :子 ども たち の声 に耳 を 傾 け る Lesson 5-9 政 治 風 刺 漫 画 と 国 連 Lesson 5-10 労 働 者 の 権 利 を 守 る 国 連 の努 力 Lesson 5-11 少年 兵 Lesson 5-12 地雷 一 戦 争 の 後 Lesson 5-13 天 然 資 源 と 安 全 保 障 Lesson 5-14 多 国 間 交 渉 Lesson 5-15 自 由 貿 易 / 公 平 貿 易:WTO の勝 者 と 敗 者 Lesson 5-16 債 務 救 済 の た め の 国 際 首 脳 会 談 Lesson 5-17 経 済 制 裁 : シ ミュ レ ー ショ ン Lesson 5-18 内 戦 Lesson 5-19 グ ロ ー バ リ ゼ ー ショ ン と は何 か ? “Conflict in Context ”pp.3-4 よ り 筆 者 作 成 。
-Lesson4で は, 国 家 レベ ル, す な わち ア メリ カ
国内 の安 全 に焦点 が当て られ, 周 りを取 り巻 くメ
ディ アや世論, 公共政 策形 成の ため の諸 要素 から
も紛争問 題 の発 生及 び解決 につい て考察 さ れる。
最後 のLesson5で は, こ こま で に習得 し た問題
解決 の方 策を 統合し, 戦争 の脅威 や経済 格差な ど
「 世 界の人 々の安 全 に重 大な 影響 を 及ぼ す 幅広 い
問題言 の解決 を考え る学習 が用 意さ れて い る。
( 長田 ・谷 口)
Ⅲ。 紛争 解決 の概念形 成と技 能育成 の段 階
Lesson2は, 紛 争 解決 に必 要 な概 念 や技 能 の習
得を 目指 す, 以下 の四つ の学習 に分 類で きる。
①紛争 解決のための基本的考え方
L2-1「私 たち の差異を知 る」
L2-2「紛争を コント ロールする」
②紛争を 理解・分析するための視点
L2-3「紛争 の展 開を探 るL2-4 「紛争 の5つ の側面」
L2-5「多様性 と紛争」
③対立 の解消と合意形成のためのプロセ ス
L2-6「車 の相乗 りJ L2-7「様 々な和 解の方 法」
④交渉を成 功さ せるためのカギ
L2-8「実効的な交渉 のカギ」
1。 紛 争 解 決 の た め の 基 本 的 考 え 方
① は,「 紛 争 解 決 の た め の 基 本 的 考 え 方 」 を 学
ぶ も の で, Lesson2-l 「 私 た ち の 差 異 を 知 る 」 と
Lesson2-2 「 紛 争 を コ ン ト ロ ー ル す る 」 の 二 つ が
こ れ に あ た る 。 こ れ ら は , 紛 争 が 互 い の 差 異 か ら
生 じ る と い う こ と と, 紛 争 解 決 の た め に は, 出 問
題 を 特 定 す る, (2)他 者 の 視 点 を 持 つ, (3)お 互 い に
利 か あ る よ う な 解 決 策 を 模 索 す る, (4)お 互 い に有
効 に 働 く よ う な 解 決 方 法 を 見 つ け る, (5)紛 争 解 決
の た め の 実 施 計 画 を 作 る , と い う 過 程 が 必 要 で あ
る こ とを 学 ぶ 。 し か しな が ら, こ れ ら は , あ く ま
で 理 念 的 な も の で あ っ て , 従 来 の シ ミ ュ レ ー シ ョ
ン グ ー ム 等 の 紛 争 解 決 プ ロ グ ラ ム と 大 差 な いo
“Conflict
i
n Context" が こ れ ま で の 類 似 の プ ロ グ
ラ ム と異 な る点 は, Lesson2 を 構 成 す る 他 の三 点 ,
す な わ ち ② ∼ ④ に あ る と い え る 。
2。 紛争を 理解・ 分析 する ための視点
Lessson2-3
∼2-5で は,以 下 に示 し たよう な諸概
念を 中心 に, 紛争 の段 階や諸 側面,及 び それら の
背景 要因 として の多 楡 歐につ いて学習 さ せる。
Lesson2-3 匚
紛 争 の展 開を 探 る」 で は, 紛争 が
72 −生じ, 最終 的に は身 体的 攻撃 にまでエ スカレ ート
す る一 般的 な過程 を,物語 や歴 史教 材, 実 際の紛
争事 件 の事 例分析 に よって考察 させ てい る。
L. 2-3 「 紛 争 の 展 開 を 探 る 」( 紛 争 が エ ス カ レ ー ト する 順 序 ) 1. 自覚 ・ 意 識 や 明 快 さ, 情 報 の 欠 如 2. 情 報 の誤 り 3. 意 見 の相 違 4. 意 見 の不 一 致 5. 言 い 争 い 6. 論 争 ・ 口論 7. 言 葉 に よ る脅 し ・ 威 嚇 8. 威 嚇 的な 態 度 や 表 情 9. 言 語 的 ・ 心 理 的 な 攻 撃 ・ 悪 口 10. 身 体 的行 為 に よ る 攻 撃 ・ 虐 待 L。2-4 厂紛 争 の 5 つ の 側 面」( 紛 争 の社 会 的 ・ 歴 史 的 文 脈) 1. 誰 が / ど れ だ け の 集 団 か 関 わ っ て い る か ? 2. 紛 争 の原 因 は 何 か ? 何 を めぐ っ て 争 っ て い る のか ? 3. 争 って い る 集 団 間 の 関 係 性 4. 紛 争 の歴 史 は ど う な っ て い る か ? 5. プ・ セ ス : 紛争 に ど う 対 処 す る か ? L. 2-5 厂多 様 性 と 紛 争」 (紛 争 を エ ス カレ ー トさ せ る 要 因 と し て の 多 様 性) ・ 多 様性 ( 差 異) は, し ば し ば 紛 争 のエ スカ レ ート を 招 く。 ・ 匚誤 解」 や 「 偏 見 」,「 言 葉 に よ る 攻 撃 」 が あ る 時, 多 楡│生 は紛 争 へ とエ ス カ レ ー ト す る 要 因 と な る 。つ づ くLesson2-4
匚紛 争 の 5 つ の 側 面」 で は,
紛 争 の(1)関 係主 体, (2)原 因, (3)主 体 間 の 関 係 性 ,
(4)歴 史 的 経 緯 と い っ た 様 々 な 側 面 に よ っ て , 紛 争
の 特 質 や(5)解 決 の見 通 し が 大 き く 異 な っ て く る こ
と を 理 解 さ せ る 。 具 体 的 に は , 紛 争 の 各 側 面 を 説
明 す る た め の ス キ ッ ト づ く り を 通 し て, 諸 集 団 の
持 つ 社 会 的 ・ 歴史 的 文 脈 によ る紛 争 の多 様 な 特 質 。
【 表 2】 紛 争 解 決 過 程 の タ イ プ と そ の 特 徴
対 処 法 の多 槍 院を 理 解 す るo
さ ら にLesson2-5 匚多 様 性 と 紛 争 」 で は , 先 の
Lesson2-l や2-3 を 踏 ま え , 多 様 性 は , 匚誤 解 」 や
匚偏 見 」, 厂言 葉 に よ る 攻 撃 」 に よ っ て , 紛 争 を エ
ス カ レ ー ト さ せ る 要 因 と な る こ とを 理 解 す る 。
3。 対 立 の 解 消 と 合 意 形 成 の た め の プ ロ セ ス
Lesson2-6 ∼2-7 で は , 先 のLesson2-3 ∼2-5 で 学
ん だ 視 点 を 用 い な が ら, 異 な る立 場 の 人 々 の 間 で
の 交 渉 や 合 意 に つ い て 考 察 さ せ て い る 。
Lesson2-6 匚車 の 相 乗 り ] は , 大 気 汚 染 削 減 の
目 的 で 車 の 相 乗 り を 市 民 に 強 制 す る状 況 を 通 し て,
強 制 力 を 持 っ た 交 渉 や 譲 歩 の 過 程 で の 妥 協 点 を ,
ロ ー ル ・ プ レ イ を し な が ら 模 索 さ せ て い る。
ま た, Lesson2-7
匚様 々 な 和 解 の 方 法 」 で は ,
紛 争 解 決 の コ ン ト ロ ー ル 主 体 は誰 か, 解 決 の 過 程
は 自 発 的 か 強 制 的 か な ど の視 点 に よ り , 紛 争 解 決
過 程 は, 【 表 2】 に示 し た よ う な 9つ の タ イ プ に
分 け ら れ る こ と, 紛 争 の レ ベ ル や 社 会 的 ・ 歴 史 的
文 脈 の違 い に よ っ て 最 適 な 解 決 の方 法 が あ る こ と
を 学 習 す る 。 さ ら に宿 題 で は, 個 人 間 , 地 域 , 国
際 の 各 レ ベ ル に お け る 仮 想 の 紛 争 シ ナ リ オ を 分 析
し , ど の よ う な 紛 争 解 決 策 が 最 も効 果 を 発 揮 す る
かを 判 断 ・ 説 明 す る よう な学 習 活 動 を 行 って い る。
紛 争 解決 過 程 意 思 決 定 主 体 紛 争 解 決 過 程 の コ ン ト ロ ー ル主 体 自 発 的 か 強 制 的 か 注目 する 点 (関 係 性 か問 題 か) 当 事 者 の 行 動 喚 起 によ る 紛 争 解 決(initiate) 当 事 者 当 事 者 自 発 的 関係 性 当 事 者 同 士 の 意 思 疎 通 によ る 紛 争 解 決(communicate) 当 事 者 当 事 者 自 発 的 関 係 性 第 三 者 の 仲 介 に よ る 紛 争 解 決(conciliate) 当 事 者 第 三 者 自 発 的 関 係 性 第 三 者 の 援 助 に よ る 当 事 者 同 士 の紛 争 解決(facilitate) (当 事者) (第 三 者) ( 自 発 的) (関 係 性) 当 事 者 同 士 の 公 的 交 渉 によ る 紛 争 解 決(negotiate − formal) (当 事者) ( 当 事 者) ( 自 発 的) (関 係 性) 第三 者主 導 の 公 的 交 渉 によ る 紛 争 解 決(mediate) (当 事 者) ( 第 三 者) ( 自 発 的) (関 係 性) 当 事 者が 第 三 者 の 判 断 を 仰 ぐ 形 の紛 争 解 決(arbitrate) (第 三 者) ( 第 三 者) ( 自 発 的) (関 係 性) 第 三 者 の 公 的 裁 定 に よ る 紛 争 解 決(adjudicate) (第 三 者) ( 第 三 者) (強 制 的) ( 両 者) 政 府 や国 際 機 関 に よ る 新 ル ー ル 制 定 を 通 じ た紛 争 解 決(legislate) (第 三 者) ( 第 三 者) (強 制 的) ( 問 題)“Conflict in Context" プ リ ン ト2-7a よ り 筆 者 作 成。 な お, facilitate以 降 は記 載 が な い た め, 0 は 筆 者 が 推 測 。
4。 交 渉 を 成 功 さ せ る た め の カ ギ
最 後 のLesson2-8 厂実 効 的 な 交 渉 の カ ギ 」 は ,
最 適 な 紛 争 解 決 の 方 法 を よ り 有 効 な も の に す る た
め の カ ギ ( 下 記 A∼K) につ い て の 学 習 で あ る。
学 習 者 は , 紛 争 解 決 の当 事 者 た ち が , 実 際 の交 渉
に お い て ど の よ う な 技 能 や 姿 勢 を 使 用 し た の か,
そ れ らが どの よ う に交 渉 を 有 効 に 進 め るカ ギ と な っ
た の か を 分 析 す る 。 ( 長 田 ・ 谷 口 )
A.交 渉に同意する。
B. 解決法の選択 肢を探すのをいと わない。
C.立場 と利 益を 見極める。
D.目標を確 認して明らかにする。
E. 価値 の相違を 尊重 する。
F. 積極的・ 建設 的な雰囲気を作り出す。
G.立場を逆 にして考えて みる。
H.明解にす るた めの質 問をす る。
I. 両者の重要な要求を含 む形 で質問を 構成 し, 提示する。
J. 同意でき る範囲 とできない 範囲を 明らかにする。
K.“ はい” が
いいえ ”で答え る必 要のある具体的な 提案を
する。
Ⅳ。 紛 争 解 決 と 「 安 全 」 概 念 の 学 習 の 段 階
以 上 の よ う な 紛 争 解 決 の た め の 基 本 的 概 念 や 技
能 の 学 習 に 続 い て, Lesson3 で は, 【 表 3】 に 示
し た よ う な 「 ̄
安 全 」 の 概 念 が 学 習 さ れ る。 こ こ で
言 う 厂
安 全 」 と は , い わ ゆ る 厂国 家 安 全 保 障 」 の
意 味 で の 厂安 全 」 に 限定 さ れ る も の で は な く, 個
人 が 生 き て い く 上 で 必 要 と考 え ら れ る 匚人 間 の安
全 保 障 」 概 念 に 基 づ く も ので あ る 。 本 プ ロ グ ラ ム
で は, 人 々 の 持 つ 差 異 ・ 多 様 性 が 紛 争 の 発 生 ・ 激
化 の 要 因 に な る と い う 考 え 方 を 示 し て い た。 し か
し な が ら, Lesson3 以 降 で 展 開 さ れ る, 様 々 な 地
理 的 レ ベ ル で の 紛 争 の 解 決 を 考 え る 学 習 にあ た っ
て は, 紛 争 の原 因 を よ り 具 体 的 な形 で 分 析 す る こ
と が 重 要 と な る。 そ の た め, 個 人 の多 様 な 具 体 的
ニ ー ズを 安 全 の 概 念 に よ って 示 し , 紛 争 の 原 因 を
分 析 す る た め の 視 点 と し て 学 習 さ せ て い る と 考 え
ら れ る 。
Lesson3 は, 個 人 ・ 地 域 レ ベ ル で の 紛 争 解 決 を
学 習 す る 中 で , 自 分 自 身 の 視 点 か ら(Lesson3-l
∼3-3), 他 者 の 視 点 か ら(Lesson3-4),
地 域 の 視
点 か ら(Lesson3-5 ∼3-6) 安 全 保 障 を 考 え る 三 段
構 成 と な って い る。
Lesson3-2 で 【 表 3 】 に示 し た よ う な 個 人 の 安
全 ( 保 障) の 様 々 な 側 面 を 学 ん だ上 で , そ れ ら の
重 要 性 は, 地 理 的 ・ 社 会 的 背 景 や 文 化 な ど の 違 い
に よ り , 個 人 に よ っ て 異 な る こ と がLesson3-4 で
【 表 3 】 個 人 の 安 全 の 類 型
安 全 の類 型 安 全 の 具 体 例 健 康 上 の安 全 栄 養 。 風 雨 か ら身 を 守 る 住 まい や 衣 服。 伝染 病 予 防。 病 気 の 治 療 。 身 体 的 安 全 傷 害 や 虐 待 , 暴 力 , テ ロ か ら 恒 常 的 に身 を 守 る 法 制 度 や 規 律。 精神 的安 全 所 属 感 覚。 愛 し 愛 さ れて い る 感 覚o 他 者 か ら の 承 認。 家 族 や 友 だ ち, 大 人 , 同 級 生 , 仕 事 仲 間 と の 健全 な人 間 関 係。 教 育 開 発上 の 安 全 教 育 の 機 会。 学 ん で 目 標 を 達 成 し, 社 会 に貢 献 す る 機 会 と 自由 。 文 化 的 安 全 文 化 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ や 価 値 , 伝 統 に 対 す る 承 認。 民 族 的 , 人 種 的 , 宗 教 的 , ジ ェ ン ダ ー 的 ア イ デ ンテ ィ テ ィ に 対 す る 尊 重 と法 的 な 保 護。 文 化 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ に 関 わ ら ず, 社 会 参 加 で き る 自 由。 政 治 的 安 全 政 府 か 国 民 に与 え る 保 護 や 安 全 の 度 合 い , 国 境 を 越え る 脅 威 か ら の保 護。 意 思 決 定 に お け る市 民 の権 利 や 参 加 の質 や 度 合 い 。 経 済上 の安 全 職 業 訓 練 や 職 能 開 発 の機 会 。 適正 な 生 活 水 準 を 保 て る賃 金 や 就 労 の 機 会 。 高 齢者 や 病 人 , 障 か い 者 , 子 ど も に対 す る 援助 。 環 境 上 の安 全 環 境 危 機 や環 境 有 害 物 質 か ら の保 護。 安 全 で き れ い な 空 気 , 水 , 食 料 の提 供 。 安 全 で 衛生 的 な 居 住 環 境 の 提 供 。“Conflict in Context” プ リ ン ト3-2a よ り 筆 者 作 成 。
は 学 ば れ る 。 そ し て , 自 分 た ち の 地 域 に と っ て の 安 全 を 考 え , 安 全 上 の 問 題 の 解 決 を 図 る 学 習 が , Lesson3-6 で は 行 わ れ る 。 こ こ で 学 習 者 た ち は , ま ず , 人 々 の 安 全 に 影 響 を 及 ぼ す 地 域 の 様 々 な 状 況 に つ い て 明 ら か に す る た め , 数 量 的 デ ー タ を 収 集 す る 。 次 に , デ ー タ か ら 明 ら か に な っ た 状 況 を 分 析 し , 安 全 の 観 点 か ら 問 題 が あ る と 考 え ら れ る 部 分 に つ い て , 解 決 ・ 改 善 の た め の 提 案 を 考 え る 。 最 後 に , そ の 提 案 を 地 域 の 行 政 当 局 や 民 間 セ ク タ ー な ど に 伝 え る 。 こ れ に よ りLesson3 で は , 人 々 が 求 め る 多 様 な 安 全 や , 地 域 社 会 の 安 全 に 関 わ る 状 況 を 分 析 す る 能 力 を 育 成 し て い る 。 ( 長 田 )