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「ジャンピングのヘディング」の指導に関する事例研究

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Academic year: 2021

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(1)Title. 「ジャンピングのヘディング」の指導に関する事例研究. Author(s). 越山, 賢一; 吉村, 雅文; 古賀, 初. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 54(2): 145-152. Issue Date. 2004-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/321. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第54巻 第2号. JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)vol.54,No.2. 平成16年2月 Febr11ary,2004. 「ジャンビングのヘディング」の指導に関する事例研究. 越山 賢一・吉村 雅文*・古賀 初** 1北海道教育大学教育学部岩見沢校保健体育科研究室 *順天堂大学 ■*東京電機大学. KenichiKOSHIY軋MA,MasafumiYOSHIMURA*andHajimeKOGA** DepartmentofHealthandPhysicalEducation,IwamizawaCampus HokknidoUniversityofEducation,IwamizawaO68−8642 *JuntendoUniversity,Inbamura270−1695 **TbkyoDenkiUniversity,Inzai270−1382. CaseStudyonJumpHeadingInstruction. Abstract. Itisimportanttoeffbctivelyinstructyoungsoccerplayersonthecorrectwaytoheadaball.However,. therearenoappropriateteachingorinstructionmethodsavailableforlearnlngthejumpheadingtech− nlqueinthecurrentcoachingprogram.Thisstudyexaminese鮎ctivewaystolearnJumpheading. Thestudywasbasedonll−year−01dboyswhohaveplayedsocceronateamasregularplayersfbranav・ erageof2.4years.Theseplayerswereonlyabletoheadabal1flomastandingposition.. Thefbllowingtwopointswereemphasizedduringthedrills: 1, Playersmustlookattheballbe払reJumPlngandheadingtheball. 2. Playersmustjumpslightlyearlyandlearnhowtoswingtheirbodywhileintheair.. Playerswhohadpreviouslyneglectedtolookattheballandrunintothebal1asaresultofjumpingtoo latewereabletoimprovetheirskillsofheadingtheballintheair.Thetbllowingresultsdemonstrate t,heefEbctivenessofthesedrills.. 1. Playerswereabletocorrectlypositionthemselvesatthespotwheretheballshouldbehit. 2. Playerswereabletojumpearlyandattherighttiming. 145.

(3) 越山 賢一・吉村 雅文・古賀 初. 3. PlayerswereabletohittheballwiththeirfbreheadcorrectlyandatthepeakoftheirJump.. 4. Playerswereabletohitthebal1intheairbyswinglngtheirbodyatthewaisttoincreasethe powerofimpact. ど改善が加えられていないことが一因であると思. Ⅰ はじめに. われる.少年プレ←ヤーたちは,ヘディングは痛 サッカーは,手を使用せずにグランド上でプ. いものであると思い込んでいる.したがって,練. レーされるものであったが,徐々に空中にある. 習は慎重に理にかなった階段を踏んでいかなけれ. ボールをパスやシュートするようになり,立体的. ばならない.最初の練習で痛みを感ずると,自ら. でダイナミックなゲームへと発展してきた.今で. 進んで練習することをしなくなるからである.自. はサッカーにおいてヘディングが非常に重要で欠. 信をっけさせながら練習を積み重ねていかなけれ. かすことのできない技術になった.. ば,ただただ痛いとか恐いといった体験が残り,. 現在,大陸や国といった固有の戦術がボーダレ. 以降の技術向上の妨げになる.. ス化するなか,個人技も高いレベルで均一化し チーム戦術はより緻密になった.得点を挙げるた. 少年期のヘディング指導について. めには,組織的に固められたゴール前のわずかな. ①少年期のスポーツの重要性は十分に理解されて. スペースを突いて通すパスリスクよりも,守備陣. いるが,発達段階に応じた指導の効果について. の頭を越すような高いポール(センターリング). はまだ一般化されていないようである.しかし,. を送るはうが効果的で,且つ必要性も増してきた. 宮下(1980)がこの時期の発育段階において,. といえる.フランスサッカー連盟の分析による. 脳・神経系の発達を基盤として身体調整力の発. ワールドカップアメリカ大会でのヘディングの. 達が目覚しいと報告しているように,(財)日本. シュートの確率は全シュートの14%であり,決定. サッカー協会指導委員会(1996)では神経系の. 率を見ると11.8%と最も高いことが報告されてい. 発達が完成に近づき,形態的にも安定した時期. る(大橋,1997).ヘディングシュー. にあたる9歳から12歳をゴールデンエイジ. トはワンタッ. チ(ダイレクト)シュートであるため,キックに 比べシュートコースが予測しにくいことがその理 由である.そしてその傾向は2002年ワールドカッ. (GoldenAge)と呼んでサッカー指導の重要な 時期と位置づけている. 身体調整力の発達とは動作がスムーズになり,. プにおいても変わらなかった.また,コンパクト. さらに正確性が高まるといった運動スキルの向. な戟術を打ち破る長いクロスバスが多用されるよ. 上を指している.キックやヘディングについて. うになり,ヘディングによるパスや確実なクリア. みると,ボールの動きの速さと位置を的確に把. リングが求められるようになったことから長身選. 握し,自分のからだを予測されたボールの位置. 手や特定のポジションの選手だけの技術にとどま. まで動かすことをいう.ジャンプでのヘディン. らなくなってきた.しかしながら,日本サッカー. グとなると空中感覚やタイミングの感覚,加え. 協会技術委員会では,ユース年代の選手に対し. て,これまで経験していない運動感覚を協応さ. 「判断」などの基本的要素は飛躍的に向上したが,. せるという意味でさらに難しい.したがって,. 練習量の低下により,ヘディングの進歩は見られ. この時期にはトレーナビリティ(trainability). ず逆に昔に比べ劣っている,と報告している(強. の観点からも正確な身体調整能力を身につけさ. 化指導指針2000年版,2000).これはヘディング. せることが大切となる.しかし,一般的な指導. が一般的原則からは若干例外的な技術であるにも. 順序に従った指導だけではヘディングの心理的. 拘らず,ヘディングの指導内容についてははとん. 阻害要因となる恐怖心を排除することは困難で. 146.

(4) 「ジャンビングのヘディング」の指導に関する事例研究. あると思われる.我々は頭に物が当たるという. 坂(1978)も子供のほうが成人より眼球運動が. ことは危険であり,ボールを頭に当てようとす. 早いと考えられる例として,「◇のパターン」に. る行動そのものを生活経験の中で否定してきた. 対して眼球運動の乱れと,追跡眼球運動が出来. からである.その点で中屋敷(2002)の報告は. ないという報告をしている.このように,生理. 興味深い.被験者数は少ないものの大学サッ. 学的にみても子供にとって落下してくるボール. カー選手のうちヘディングの不得意な者は,得. に対しジャンプしてのヘディングは難しい側面. 意な者よりもサッカー開始年齢が早いことを指. を持っていることは間違いないであろう.しか. 摘しているのである.つまり,少年期の指導で. し,筆者はサッカー指導の中で,ジャンビング. 受けるJL、理的マイナス面はその後のヘディング. のヘディングでは幾っかの要素を改善すること. のスキルに影響を及ぼしている可能性を示唆し. で少年プレーヤーに獲得可能なスキルになるこ. ているのである.. とを経験してきた.そこで本研究はジャンビン グでのヘディングスキルを改善するためのドリ. ②一般的な少年プレーヤーのヘディングフォーム. は,ボールとの衝突による恐怖心を抱くことか. ルを作成し,その有効性について質的特性から 検討することを目的とした.. ら,ボールを早くから見失い頭頂部に当ててし まったり,ボールが当たる前にお辞儀をしてし. Ⅲ 方 法. まうのがほとんどである.ハンス・オフト (1994)は子供のヘディングについて「個人差. はあるものの,8∼10歳ぐらいまでの子供は空. 被験者. 岩見沢市内のサッカークラブに所属する小学校. 中を動いているものに対し,目線を動かしてそ. 6年生5名に依頼した.5名はチームのレギュ. の動きをとらえる能力が発達していない.さら. ラーで平均サッカー経験年数は2.4年であった.. に視野も狭いため,上下しているボールが視野. 指導者からの評価は,あまりヘディングが得意で. から飛び出してしまう.つまり,3次元的な視. ない,ということであったが,スタンディングの. 野が発達していないため,ヘディングをしよう. ヘディングに関してはスキルを十分に獲得してい. としても,ボールの動きを的確にとらえられな. た.5人の中で一番オーソドックスなフォームの. いのである」と述べている.この点は次の理由. Aを被験者とした.. により説得力を持つ.ひとつは認知的な問題で ある.認知とは自己を中心に構成されたもので. 実験方法. あり,環境条件や内的条件によって変化し,子. ヘディングの一般的指導順序は1 スタンディ. どもの頃の個人差は大きいとされている.つま. ング,2 動きながら,3 ジャンビング,4 動き. り,実際空間と視空間の不一致が体位変化を伴. ながらジャンビング,5 相手と競り合いながら. う運動の支障となるのである.自分が静止状態. ジャンビングである.本ドリルは,3 ジャンビ. であってもボールの接近スピードは感覚的に異. ングのヘディングのトレーニングをより細分化し. なるだろうし,運動の速さの知覚でも垂直方向. 組み立てたものである.. の運動の方が水平方向よりも早く感じられると. まず指導に当たってはボールそのものへの恐怖. いうこともある.また正化(1997)は垂直方向. 心を取り除くことが必要となる.恐怖心の軽減に. の動体視力が水平方向よりも生理的に劣ってい. はR.Wクリスチナ,D.M.コーコス(1996)とM.. ることから,目を垂直方向に動かすことの多い. グロッサー,A.ノイマイアー(2001)に従い,. スポーツにおいては,この弱点を克服すること. 1 論理にかなったトレーニングの進行,2 レ. が競技力アップの近道であると述べている.苧. ディネスが整っていることを知らせる,3 危険 147.

(5) 越山 賢一・吉村 雅文・古賀 初. かもしれないという思い込みを排除し練習状況を. ⑦ 相手の投げたボールをジャンプしてヘディン. やさしくする,など繁った条件下で行うことに配. グする. 慮した.さらに,しっかりとボールを注視する,. 実験は8メートル離れた場所から投げられた. ジャンプのタイミングをこれまでより早くし,空 中では腰を中心にしたスウィングを行う,という ポイントを強調した.もちろん,ジャンビングの. ボールをヘディングするものであった.. 撮影は2003年6月,北海道教育大学岩見沢校体 育館で行った.. ヘディングに移る前にはスタンディングのヘディ ングの基礎的運動を十分に獲得していることが前. 皿 結果と考察. 提になることば言うまでもない.空中ではなんら. −ドリルの実際例一. 身体的支持が無いことから,しっかりとした動き. 図1はドリル実施前のジャンビングのヘディン. とリズムが唯一の支えになるからである.. グである.相手の投げたボールに対して頭から ボールに衝突する初歩的なヘディングである.1. ドリルについて. ドリルの構成はひとっの部分を教え,そして次. −1でボールを見てタイミングを計っているが,. 1−3ではボール目掛けて頭から飛び込んでいる.. の部分に移る.その2つの部分が習得された後,. 1,4,1−5,1−6では何とか腹筋を使って. 2つの部分を結びつけて習得させるという漸進的. ボールに勢いを加えようとする動きが見られる.. 分習法をとっている.本実験中の被験者のトレー. しかし,ジャンプから着地まで上体がほぼ一直線. ニング回数は,それぞれの方法を理解した後20回. になったままで,ボールに勢いを加えることばで. 以内であった.. きない.さらに前屈みの姿勢で着地しているので. ドリル. ボールの行方を確かめることは難しい.. (D 自分でボールを投げ上げヘディングで突き上 げて手でキャッチする. ② 自分でボールを投げ上げヘディングで相手に パスする. ③ 相手の投げたボールをスタンディングのヘ ディングで相手にパスする. 図2はドリル④である.自分でボールを投げ上. げ額でトラップするトレーニングである.自分で 投げ上げたことで足場がしっかりし,ボールを注 視できることからボールに対する恐怖感は少なく 集中力は維持できる.投げ上げたポールの溶下点. ④ 自分で投げ上げたポールを額でトラップする. では2−3のように自ら体を伸ばしボールに向っ. ⑤ 相手の投げたボールをジャンプの落下に合わ. ていくことでボールとのトラップのタイ ミングを. せ額でトラップする. ⑥ 相手の投げたボールをジャンプの落下に合わ せ低い姿勢からジャンプしてヘディングする. 計ることができる.2−4,2−5,2−6では体 を沈めながらポールの落下スピードと合わせるこ とで作り出された僅かな時間に,ボールを「待っ」,.

(6) 「ジャンビングのヘディング」の指導に関する事例研究. 岡4aと4bはドリル(診の成功例と失敗例であ. 「引きつける」というタイミングを身につけるこ とを覚える.この「待っ」,「引きつける」という. る.床に両手をつけた状態からジャンプするト. スキルはヘディングにおいてボールに勢いを加え. レーニングはボールの注視に加え,早いタイミン. ることや,空中での効率的な体の使い方を身に付. グでジャンプすることと,上体の反りを学習する,. けるという意味で非常に重要なスキルである.同. つまり,不慣れな開始体勢からスタートすること. 時に,これらの動きは眼瞼反射による閉眼時間を. でこれまでの運動感覚を崩すことを目的としてい. 短縮することを可能にできる.. る.また,図4aのように低い姿勢でボールを見 つめることで首がその角度に固定され,頸反射に. 図3はドリル(診である.相手から投げられた. よる上体の反りから鋭いインパクトのスイングを. ボールを額でトラップする運動はボールの軌道を. 導くことができる.この写真からはまさにアルパ. 見極めることを学ぶ.試合中,真下に落下する. ド・チャナディ(1984)の『ジャンプしたときに. ボールははとんどないので,ドリル④から発展し,. 空中でしばらく止まっているように見える.もち. 放物線を描くボールの軌道と額のポイントを修正. ろんそんな離れ業が出来るはずはないが,これら. することが電要になる(3−5).真下に落下する. の選手は非常にタイミングよくジャンプして最高. 体と放物線との交点を見っけ出すことは,少年プ. 点でヘディングしているのでそのような錯覚を起. レーヤーにとって初めての運動経験となる.また,. こさせるのである』 という記述内容を表してい. ドリル④と同様に額でボールをトラップするとい. る.2枚の写真の4a4と4b−4の比較にはパ. う課題に加え,早めにジャンプしボールと一緒に. フォーマンスの差異が顕著に現れている.ボール. 落下することば,いっそうボールを注視し続けな. の位置で比較すると4a4は早いジャンプを行. ければならない.. うことで既に反りながらボールを注視している.. しかし,4b−4はまだ上昇途中である.結果的. 2−1. 2−2 2−3. 24. 2−6. 2−5. 2−7. 2−8. 2▼9. 図2 ドリル④ 自分でボールを投げ上げ額でトラップ. 3−1 3−2. 3−3. 34. 3−5. 3−6. 3−7. 3−8. 3−9. 図3 ドリル⑤ 相手の投げたボールをジャンプの落下に合わせ額でトラップ 149.

(7) 越山 賢一・吉村 雅文・古賀 初. に図4b−6のように落下するボールに対し向っ. 図5はドリル(∋である.ドリル⑥で獲得したタ. ていくために額面にボールを当ててしまった.こ. イミングとフォームをうまく協応させながら早く. れはジャンプのタイミングが改善されていないこ. 踏みきったヘディングである.5−3では上体は. とによるもので,地上からヘディングのヒットポ. 後方に反りながらボールに向いジャンプしている.. イントまでの距離が測れず,これまでの高い姿勢. すでにこの時点でボールを注視しボールを引きつ. と同じタイミングで跳んでしまったことに起因し. ける準備が整っている.次に空中では反りを利用. ている.しかしながら,上体の反りを身につける. し標を中心にしたスイングでボールを打っている. ことを目的としていることから,図1の1−6の. ことが分かる.5−7,5【8,5−9ではボー. 頭を突き出すフォームと比べると明らかに改善さ. ルヒット後のボールを追視できる余裕がバランス. れていることが分かる。. の良さからうかがわれる.. 4a−1 4a−2 4a−3. 4a−4. 4a5. 4a6. 4a汀7. 4a−8. 4a−9. 図4a ドリル⑥成功例 相手の投げたボールを低い姿勢からジャンプしてヘディング. 4b−1 4b2 4b−3. 4bT4. 4b−5. 4b−6. 4b7. 4b8. 4bA9. 図4b ドリル⑥失敗例 相手の投げたボールを低い姿勢からジャンプしてヘディング. 5−1. 52 5−3. 5−4. 55. 5−6. 5−7. 図5 ドリル⑦ 相手の投げたポールをジャンビングでヘディング 150. 5−8. 5−9.

(8) 「ジャンビングのヘディング」の指専に関する事例研究 −ドリルの検討−. ドリル①はボールの中心をしっかり見ることで. なスキルである.. このスキルは放物線を描くボールの軌道をぎり. ポールは痛くないと感ずることが目的であった,. ぎりまで注視することができるようになり,ボー. ドリル(卦とドリル③は一般的に行われているボー. ルの軌道に対しヒットポイントの修正能力を高め. ルを打つ,あるいははね返すというトレーニング. ることができる.さらに重要な点はヘディングす. である.ボールのヒットポイントの確認と首の固. る際,ボールに対し最も力を加えることのできる. 定,足を柔軟に使いボールに勢いを加えることを. ポイントを目の前の空間に作り出し,そしてそこ. 獲得することが目的である.被験者は既にドリル. にボールを引き込むことができるようになること. (勤までのスキルを獲得していたことから,本ドリ. である.ヘディングスキルの高いプレーヤーとそ. ルの①,(乱 ③が少年プレーヤーにどの程度有効. うでないプレーヤーの違いはこの点にあるといっ. であるかについては分析できない.しかし,今日. ても過言ではない.その空間を作り出すためには. 的問題は,大半の指導者がこの段階でヘディング. 上体の反りが必要であるし,腰を中JL、としたスイ. スキルの指導を終了してしまうことである.ボー. ングが連動すると,ヘディングフォームはより流. ルを打って飛ばすことができればいい,というの. 動的になるからである.この年代に「待つ」,「引. ては問題がある.(財)日本サッカー協会が指摘す. きっける」というスキルを身につけることは,自. るのはまさにこの点である.正確な技術を身につ. 分の頭が安全に動くスペースを確保できることか. けずに痛みや恐怖を感じつつ試合に出場し続ける. ら,相手と衝突するという恐怖心を作り出すこと. 少年プレーヤーにとって,次のレベルにおけるス. も少なくなる.その点で,図1のようなヘディン. キルの向上を難しくしていることば容易に推察で. グでは,お互いの頭が無防備にぶつかる最も悪い. きる.. フォームといえる.しかし,この年代の選手で. そこで,本研究ではこれらの指導に加えドリル. あっても試合では必ずヘディングを使用するので,. ④,ドリル⑤など運動の一部を取り除いて単純化. このスキルを持たずに競り合うことば恐怖ノ亡.、をよ. したトレーニングの中でフィードバック情報を活. り増幅する結果となる.したがって,少年プレー. 用しながら注視することと,ヒットポイントを見. ヤーにとって,試合中の結果ではなく,実際の試. つけ出すことに加え,痛みや恐怖心を持たせない. 合で安全に使えるスキルの獲得が重要であるとい. ことを狙った.被験者Aのドリル④のトレーニン. えよう.. グ当初は,落下するボールの軌道下に入ることは. さらに,ドリル⑥の両手を床につけた低い状態. 出来たが,ボールが額ではずみボールの勢いを消. からジャンプするトレーニングは,これまでに獲. しながらトラップすることは出来なかった.その. 得したスキルを全て含む質の高いヘディングを行. ボールはいろいろな方向に飛んで行き額のポイン. うために必要不可欠なトレーニングである.少年. トを見つけるのに苦労していた.また,同様な課. 期は背筋や腹筋が弱いことから,空中での反りは. 題でほあるが放物線を描くボールをトラップする. 不可能であると考えられているが,頭部を後屈さ. ドリル⑤では額には当てるが後方にボールを逸ら. せる姿勢からの運動開始は頚反射による四肢の伸. してしまうことが多かった.これらの失敗理由と. 展と上体の反り,そしてそのエネルギーを瞬間的. しては目を閉じるのが早いことと,額のヒットポ. にボールに加える感覚を学習させるには非常に適. イントが定まっていないことが上げられる.さら. している.背筋の強弱ではなく反射を利用すると. に重要なポイントはボールを「待つ」,「引きつけ. いう意味で,無理なく反りを学習することが可能. る」というスキルを身につけていないことであっ. になるという点においてトレーニングの価値は高. た.このボールを「待つ」,「引きつける」という. いといえる.今後,加齢とともに飛距離を伸ばす. 主観的で僅かな時間であるが非常に重要な感覚的. ための腹筋トレーニングを徐々に開始することが 151.

(9) 越山 賢一・吉村 雅文・古賀 初. 重要になってくることば間違いない(越山,1996). また,ドリル(むで注意しなければならないことは, 成長期にある少年プレーヤーの膝への負担である.. あくまでもタイミングとフォーム獲得のためだけ に行うべきで下腿のトレーニングとして行うべき ではないだろう.. 本研究のトレーニングを行ったことで,ドリル ⑦のジャンビングのヘディングと,図1に示す,. 飛び込むというヘディングと比較すると,ポール の落下点に正確に入り,さらにしっかりとボール を注視するフォームに変化したことは明らかであ る.今後は徐々に試合に近づけたシチュエーショ ンでトレーニングを行うことが大切になるであろ. こング.朝岡正雄・佐野 敦・渡辺良夫訳,大修賭事店:東京, pplO4−128. 中屋敷眞(2002)サッカーのヘディング技術と開眼運動の関係に ついて.サッカー医科学研免 第22巻:pp219−222. 苧坂良二・三端武次・杉本助夫・木田光郎・谷口正子・鈴木初君 (1978)角膜反射法による眼球運動の発達的側面.名古屋大学 環境医学研究所年報XXIX:pp54−59. 大橋二郎・田嶋幸三・掛水 隆(1997)シュートの科学的分析.サッ カー ゴールへの科学.東京取機大学出版社:東京,pp36−38. R.Wクリスナナ・D.M.コーコス(1996)高度なスキルに挑戦する 選手を補佐する.スポーツ技術の指導.豊田 博・渡植理保監 訳.大修館書店:東京,pp63−66. 正化圭介(1997)SPORTSVISION.スポーツビジョン研究会鼠 有限会社ナップ:東京,pp154, (財)日本サッカー協会(1996)JRAnews増刊号.発育発達に応 じた指導:東京,pp32−37. (財)日本サッカー協会(2000)強化指導指針2DOO年度版. .. JFAnews.(財)日本サッカー協会技術委艮会:東京,pP50.. 以上,本ドリルのトレーニングによって, 1,ボールの正確な落下点に入ることができるよ うになった 2,タイミングの早いジャンプが行えるように なった 3,ジャンプの頂点でボールを注視し正確に額に ボールを当てることができるようになった 4,ポールに勢いを加えるために腰を中心とした スイングができるようになった. という4点が明らかになった.少年プレーヤー にとって基本構造が未確立で粗協調あったジャン. ビングのヘディングが,硬直した動きから洗練さ れた流動的なフォームへと質的に改善されたこと. から,本ドリルの有効性は十分に確かめられたと 考えることができる.. 文 献 アルパトチャナディ(】984)チャナディのサッカー.長沼 健監修, 宮川毅訳.ベースボール・マガジン杜:東京,pp87−122. ハンス.オフト(1994)COACHING.大原裕意訳.小学館:東京, pp26−27.. 越山賢一・中島武文・黒沢秀樹(1996)ヘディングボールの飛距 離を測度とした腹筋トレーニングの評価,北海適教育大学紀要 (第2部C)第47巻1号:pp67−73. 宮下充正(1980)科学的な体力づくり.乗京大学出版:東京,pp159 −164.. M.グロッサー・A.ノイマイアー(2001)スポーツ技補のトレー. 152.

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