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商店街の活動に関する一考察 近畿圏を事例として

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商店街の活動に関する一考察 近畿圏を事例として

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU18703 池田 悠生 第1章 はじめに

我が国における商業形態は 1970 年以降の急速 なモータリゼーションの進展とともに、人々の消費 の中心であった商店街から、郊外の大型商業施設へ の転換が進んだ。2000 年には大店法に代わり大規 模小売店舗立地法が制定され、大型商業施設の立地 の制限が緩和されると、広い土地が安価に手に入る 郊外部への大型商業施設の進出に拍車がかかり、そ の結果、既存の商店街がシャッター通りとなるケー スが増えてきている。

このような状況に対し、政府や地方自治体は中心 市街地活性化と称し、商業機能の活性化策を次々に 講じているが、目立った改善の見られる地域は現在 のところ多くない。一方で、商店街独自のアイデア で大型商業店舗との差別化を図ることで来街者を 増やし、生き残りを図ろうとする商店街組織も存在 する。このような違いはなぜ生じるのか。本研究で は、商店街組織のあり方に着目し、商店街の抱える 問題点を明らかにすることを目的とした。そのうえ で、私人の経済的な活動に対して、政府がどこまで 介入する必要があるのか、その方向性を示すことは、

一定の意義があると考えられる。

第2章 商店街の現状

2.1 商店街組織の取組にかかるアンケート調査の 個々の商店街組織の取り組み状況に関するデー概要 タを入手することが困難であったため、実際に商 店街を訪問し、組合員にヒアリングを行うこと で、事業実施状況を把握した。以下、調査の概要 である。

表1.訪問アンケート調査の概要

 調査期間:平成 30 年 12 月 21 日~

平成 31 年 1 月 10 日

 調査対象:奈良県、大阪府における駅1km 圏内にある商店街内の組合員店舗

 調査数:173 商店街

 調査内容:

① 組織形態

② 営業店舗数、他地域展開店舗数、空き店

③ 舗数 ソフト事業の実施状況

④ ハード事業の整備状況について

⑤ スーパーマーケットの位置 2.2 調査結果

集客イベントとしては、夏祭り、ハロウィン仮装 大会、のど自慢大会、100 円商店街など各商店街と も工夫を凝らしたイベントの開催を行っていた。ソ フト事業の中では、集客イベントを行う商店街が最 も多く、今回、調査した商店街のおよそ6割が何か

しらのイベントを行っていた。

共同清掃については、アーケードの定期的な清掃 などは組合で取り組むといったところも多かった。

また、商店街組織として共同清掃を行っていない商 店街についても、汚れが目立っているなどというこ とはなく、個々店の自主的な取り組みに任している という商店街も多く見受けられた。

防災・防犯活動は地域コミュニティとの関わり合 いの指数とも言える。今回のソフト事業のカテゴリ ーでは最も実施商店街が少なかった。目に見えて売 上を上げる効果が見えにくいといった意見もあっ た。 共同セールについても、集客イベントと比べると 実施商店街は少ない。価格競争に持ち込んでも、近 隣大型店舗には対抗できず、また、来街者が増える わけでもないといった意見があった。

今回の調査においては、街路灯またはアーケード を設置している商店街を対象としたが、街路灯また はアーケードを設置していない商店街は、訪問した 中で2,3件しかなかったことからも、ほとんどの 商店街はどちらかを設置していることが伺える。休 憩ベンチ、駐輪場、駐車場といったハード整備は全 体の 10%以下が整備済みと少なく、防犯カメラの 設置は 54.9%が組織として設置済みであった。

2.3 フリーライダー問題

このような商店街組織については、商店街組織の 定める範囲に商店が立地していたとしても、当該店 舗には加入脱退の自由があるとされている。このた め、例えば、商店街組織の活動として集客イベント を開催すると、非組合員はその費用を負担すること なく、集客による便益を享受できることとなる。商 店街組織の活動はソフト事業、ハード事業を問わず、

商店街全体の魅力を向上させる目的の活動が多く、

公共財の性質である非排除性を持つため、このよう な非組合員を排除することはできず、先の法的な制 度設計によりその費用を徴収することもできない。

2.4 空き店舗問題

一般的に、多くの郊外型の大型商業施設と比して、

商店街は権利関係が複雑化している点が大きな違 いとして存在する。大型商業施設の多くは、一企業 が商業施設全体を所有しており、その中の一定の 個々のスペースに魅力ある店舗を誘致し、業種の偏 りや顧客の利便性等を考慮した配置・施設運営を行 う。対して、商店街はあくまで個々の商店の集積で あり、一般的に土地・建物の所有権者が異なるため、

こうした全体の店舗構成を考慮した配置にはなり にくい。このことは店舗構成の問題だけでなく、商 店街全体としての魅力向上のための施策を行って いくためには、全員とはいわずとも一定の店舗の合 意がなければ成立しない問題を抱えていることを も示唆している。また、権利関係が複雑であること

(2)

2 は空き店舗の問題とも密接に関係している。基本的 に大型商業施設は、空き店舗がでたとしても、商業 施設を所有する企業が新たなテナントを用意し、商 業施設全体の価値を損なわないよう行動する。一方 で、商店街は空き店舗となった店舗所有者が賃貸す る意志がなければ、どうすることもできず、その結 果、空き店舗が増えていくといった負のスパイラル が起こり得る。

中小企業庁による商店街実態調査によれば、全国 的に空き店舗は増加傾向にある。

第3章 フリーライドおよび空き店舗が商店街に与 える影響に関する仮説

3.1 商店街組織の活動が商店街にもたらす効果 商店街組織は個々の商店が集積してできた組織 であり、その存在意義は個々の商店が儲かるように 商店街全体の魅力を向上させることにある。商店街 組織がそのような原理に基づいて行動しているの であれば、商店街組織の活動によって全体の年間商 品販売額は増加していると考えられる。また、商店 街組織の活動により賑わいがもたらされることに よって、空き店舗率も減少することが予想される。

3.2 フリーライダーが商店街組織の活動にもたら フリーライダーが発生すると、事業を行うためのす効果 事業資金および人的負担が集まりづらくなること、

また、理論的には組合員および非組合員に同等の便 益をもたらすために不公平感が生まれることから 事業実施が困難となる。事業が実施できたとしても、

事業資金は被益者全員が同様に費用を負担した場 合の事業資金に比べて少額になり、商店街組織の活 動は停滞するか、過小なものとなる。

3.3 空き店舗が商店街にもたらす効果

空き店舗は、商業集積の減少という直接的な効果 のほかに、「寂しい商店街」、「シャッター通り」と いう印象をもたせ、景観の悪化をもたらす。商業集 積の減少は景観悪化による負の外部効果や商業集 積の減少による消費者のサーチコストの増加によ る正の外部効果の喪失といった技術的外部性の問 題があると考えられる。

消費者は買い物をする際に店までの移動時間と いうサーチコストを支払っており、空き店舗が増え れば商店街全体にとっては品ぞろえの減少を意味 し、消費者のサーチコストは増加すると考えられる。

また、空き店舗が多くなると、寂れた雰囲気・景観 が需要を減少させる可能性もあり、このような効果 があるとすれば、商店街で買い物をする効用は低下 する。つまり、消費者の効用がサーチコストの増加 および景観の悪化という形で効用を減じる方向に 作用し、消費者に技術的外部性をもたらす。また、

生産者側にとっては、閉店した店舗の消費者の一部 が商店街を訪れなくなることで、取引費用の一種で ある財を見つけてもらう、集客するといった広告宣 伝費は上がると考えられる。これは、価格に直接影 響をもたらすものではないので、技術的外部性とな る。

第4章 実証分析

4.1 商店街組織の活動および空き店舗が年間商 品販売額に及ぼす影響の分析

[推計式1-1]

(売場面積あたり年間商品販売額)=定数項+β₁

(集客イベント年間開催数)+β₂(清掃活動年間 開催数)+β₃(防災防犯活動年間開催数)+β₄(共 同セール年間開催数)+β₅(アーケード設置ダミ ー)+β₆(カラー舗装整備ダミー)+β₇(防犯カ メラ設置ダミー)+β₈(商店街周辺1km人口)+

β₉(商店街周辺1km65 歳以上人口比率)+β₁₀

(売場面積あたり従業員数)+β₁₁(最寄り駅の乗 降客数)+β₁₂(空き店舗率)+β₁₃(スーパーマ ーケット 0~50m未満ダミー)+β₁₄(スーパーマ ーケット 50~100m未満ダミー)+β₁₅(スーパー マーケット 100~200m未満ダミー)+ε

※εは誤差項である。

[推計式1-2]

[推計式 1 1]の「β₁₂(空き店舗率)」を「β₁₂(他 地域展開店舗率)」に置き換えたもの

4.2 推計式1の結果と考察 表2.推計式1の推計結果

※***、**、* はそれぞれ 1%、5%、10%の水準で統計的に有意であることを示す

【商店街組織の活動が与える影響】

イベントは、賑やかさの演出に寄与しており、商 店街の宣伝機会にもなっていることから、通常時の 販売へも影響していると考えられる。また純粋なイ ベント効果だけでなく、イベントの回数が多い商店 街ほど、SNSの活用やテナント誘致活動などその 他の取組を行っているケースが多く、商店街組織の 活動の活発さの指標となっていると考えられる。一 方で、年間商品販売額が多いほどイベント回数を増 やすといった同時性の問題が作用している可能性 がある。また、今回は時系列データを入手すること はできず、クロスセクション分析となっていること から、今回の結果をもってイベントの効果と即断す ることはできない。しかしながら、基本的には売上 向上を意図して集客イベントを実施しており、一定 程度の効果があると示唆するものであると考えら れる。

被説明変数:売場面積あたり年間商品販売額

推計式1 1 推計式1 2

説明変数 係数 標準誤差 係数 標準誤差

集客イベント年間開催数 0.0815849 ** 0.033627 0.0942798*** 0.0342007 清掃活動年間開催数 -0.0001165 0.0160267 -0.0005942 0.0161378 防災防犯活動年間開催数 -0.084245 0.0650543 -0.0853554 0.0653635 共同セール年間開催数 -0.0287077 0.0191528 -0.0298753 0.0193344 アーケード設置ダミー 0.0441972 0.1196818 0.0493059 0.1211071 カラー舗装整備ダミー -0.0831073 0.1292787 -0.070271 0.12948 防犯カメラ設置ダミー -0.1494582 0.1361115 -0.1390452 0.1364655 商店街周辺 1km人口 -0.00000796 0.0000102 -0.00000748 0.0000103 商店街周辺 1km65 歳以上人口比率 2.086097 1.581889 1.972166 1.585642 売場面積あたり従業者数 7.863257 *** 1.313639 8.16754*** 1.31025 最寄り駅の乗降客数 0.00000671 * 0.0000035 0.00000638* 0.00000362 空き店舗率 -1.006337 * 0.54369

他地域展開店舗率 0.7293194 0.4493661

スーパー0~50m未満ダミー -0.0770278 0.1354109 -0.0954206 0.138937 スーパー50~100m未満ダミー -0.0449375 0.1533195 -0.0410406 0.1539965 スーパー100~200m未満ダミー -0.1735145 0.1876414 -0.1655079 0.1882998 定数項 0.0590842 0.2964749 -0.1808735 0.2779991

(3)

3

【空き店舗率が与える影響】(推計式1 1)

空き店舗率は有意水準10%でマイナスに影響 した。仮説どおり、空き店舗は、集積の経済の減少、

商店街内の商業集積としての景観悪化の外部効果 により、販売額が減少したと考えられる。

【他地域展開店舗率が与える影響】(推計式1 2)

他地域展開店舗率は有意ではなかった。しかしなが ら、p値が 0.108 であったこと、係数値が正の値で あったことからも、少なからず売場面積あたりの年 間商品販売額に寄与している可能性がある。ただし、

売場面積あたり年間商品販売額が高いために他地 域展開店舗が進出する傾向があるといった同時性 の問題は存在する。

4.3 イベント実施可能性に与える影響の分析 [推計式2]

イベント実施ダミー(y=1|X)=G{定数項+

β₁(商店街周辺1km人口)+β₂(営業店舗数)

+β₃(他地域展開店舗 10~20%未満ダミー)+β

₄(他地域展開店舗 20~30%未満ダミー)+β₅(他 地域展開店舗 30%以上ダミー)+β₆(空き店舗率 10~20%未満ダミー)+β₇(空き店舗率 20~30%

未満ダミー)+β₈(空き店舗率 30%以上ダミー)

+β₉(アーケード設置ダミー)+β₁₀(カラー舗装 整備ダミー)+β₁₁(最寄り駅の乗降客数)+β₁₂

(事業協同組合ダミー)+β₁₃(商店街振興組合ダ ミー)+ε}

※εは誤差項である。

4.4 推計式2の結果と考察 表3.推計式2の推計結果

他地域展開店舗率は、30%以上ダミーが有意水準 5%で有意にマイナスに影響するという結果であ った。他地域展開店舗率が 30%未満であれば、商 店街組織の活動の実施に影響はないが、30%以上に なると有意にマイナスの影響を示したことから、商 店街組織の活動に非協力的な店舗が多い商店街で は、比較的商店街組織の活動の実施に影響があるこ とが示された。なお、他地域展開店舗率が 10~20%

では、有意ではなかったが係数値は正の値であった。

これは、他地域展開店舗率 10~20%程度であれば商 店街組織の活動の実施に影響がないことに加え、他 地域展開店舗が進出していることから、来街者がそ もそも相対的に多い商店街であったためだと考え られる。

空き店舗率についても、30%以上ダミーが有意水準 1%で有意にマイナスに影響するという結果であ った。空き店舗率の上昇は、商店街組合員の単純な 減少と捉えられるので、30%以上になると商店街組 織の活動も停滞することを示すと考えられる。

ハード事業については、アーケードの設置および カラー舗装の整備ダミーが、それぞれ 10%、1%で 有意にプラスに影響するという結果であった。この ようにハードを整備している商店街は、そもそも商 店街組織としての活動が活発であると予想される ため、このような結果になったと考えられる。

4.5 空き店舗発生の要因に関する分析 [推計式3]

(空き店舗率)=定数項+β₁(他地域展開店舗 率)+β₂(集客イベント年間開催数)+β₃(清掃 活動年間開催数)+β₄(防災防犯活動年間開催数)

+β₅(共同セール年間開催数)+β₆(アーケード 設置ダミー)+β₇(カラー舗装整備ダミー)+β₈

(防犯カメラ設置ダミー)+β₉(商店街周辺1k m人口)+β₁₀(商店街周辺1km65 歳以上人口比 率)+β₁₁(最寄り駅の乗降客数)+β₁₂(スーパ ーマーケット 0~50m未満ダミー)+β₁₃(スーパ ーマーケット 50~100m未満ダミー)+β₁₄(スー パーマーケット 100~200m未満ダミー)+ε

※εは誤差項である。

4.6 推計式3の結果と考察 表4.推計式3の推計結果

集客イベントの年間開催数は有意水準5%で有 意にマイナスに影響するという結果であった。実 証分析1の結果と同様、イベント実施による賑わ いの演出やその他商店街組織の活動も含め、空き 店舗率の減少に影響を及ぼしていると考えられる。

その他のソフト事業は有意ではなかった。

他地域展開店舗率は有意水準1%で有意にマイ ナスに影響するという結果であった。他地域展開 店舗はそもそも賑わいのある地域に立地する傾向 があることと、他地域展開店舗が進出することで 商店街全体の魅力が増しているという二つの解釈 が可能である。

第5章 まとめ 5.1 考察

一つの企業が商業施設を運営する方式(ショッ ピングセンターやアウトレットモールなど)では、

あらかじめテナントとして営業する店舗を選別す

被説明変数:イベント実施ダミー

説明変数 係数 標準誤差

商店街周辺1km人口 0.00000357 0.0000119

営業店舗数 0.0308094 *** 0.009742

他地域展開店舗率 10~20%未満ダミー 0.4161005 0.3615605 他地域展開店舗率 20~30%未満ダミー -0.648011 0.5438707 他地域展開店舗率 30%以上ダミー -1.296971 ** 0.5095629 空き店舗率 10~20%未満ダミー -0.0921471 0.3200099 空き店舗率 20~30%未満ダミー -0.0307434 0.4391576 空き店舗率 30%以上ダミー -1.573647 *** 0.5890069

アーケード設置ダミー 0.5310707 * 0.3208029

カラー舗装整備ダミー 0.8532045 *** 0.2996439

最寄り駅の乗降客数 0.00000788 0.0000093

事業協同組合ダミー 0.9518057 0.5908545

商店街振興組合ダミー 0.1446752 0.3148079

定数項 -1.850812 ** 0.7250113

被説明変数:空き店舗率

説明変数 係数 標準誤差

他地域展開店舗率 -0.2719131 *** 0.0811256

集客イベント年間開催数 -0.0109894 ** 0.005088

清掃活動年間開催数 -0.0038924 0.0032397

防災防犯活動年間開催数 -0.0042952 0.0135554

共同セール年間開催数 0.0006655 0.0029051

アーケード設置ダミー 0.0851067 *** 0.0221375

カラー舗装整備ダミー -0.0557617 ** 0.0239024

防犯カメラ設置ダミー -0.0210003 0.0250901

商店街周辺1km人口 0.00000214 0.00000195

商店街周辺 1km65 歳以上人口比率 -0.3521753 0.3129923

最寄り駅の乗降客数 -0.00000141 ** 0.000000693

スーパー0~50m未満ダミー -0.0285903 0.0276356

スーパー50~100m未満ダミー -0.0066094 0.0297225 スーパー100~200m未満ダミー -0.0635749 * 0.0359982

定数項 0.2591053 *** 0.0491365

(4)

4 る過程があるので、フリーライダー問題は発生し にくく、空き店舗についてもテナントを誘致する ような営業部隊が揃っているため、放置されるこ とはない。そのことを整理したのが右の表5であ る。このように、商業エリア全体の魅力を向上さ せ、管理する組織があるかどうかが、商店街との大 きな違いと言える。商店街は、土地・建物の所有権 者がバラバラであるために、まとまった動きを行 うために合意形成コストが大きく、また、昨今は昔 ながらの個人経営店舗は徐々に減少しており、テ ナント化していることからも、ますます商店街に 関わる権利者が複雑化している。商業エリアの活 性化を行うためには、このような合意形成コスト、

すなわち取引費用を減少させるような政策であれ ば、政府の介入する余地があると考えられる。

実際にこのような商店街全体をマネジメントす る取り組みを行った商店街として、以下二つの事 例をあげる。

① 高松丸亀町商店街(香川県高松市)

丸亀町商店街では、地権者の全員合意のもと、土地 の所有権は変えずに商業エリアの土地全体に定期 借地権を設定し、主に当該商店街振興組合が設立 したまちづくり会社が定期借地権を取得すること で、テナントミックスや商店街内の施設管理をま ちづくり会社が担うといった取組を行ったまた、

商店街主催ではイベントは行わず、開発時に建設 した商店街内の広場を市民がイベントを行えるス ペースとし、利用してもらうというやり方を行っ ている。

② 油津商店街(宮崎県日南市)

市が外部からコーディネーターを商店街内の空き 店舗を 4 年で 20 店舗誘致することをノルマとし た公募した。このような外部人材を中心として、空 き店舗を活用して地域住民の対話の場を設け、商 店街の方向性を議論した。「商店街を“⾧い広場”と 見立てる」発想で様々なイベントを実施。次々に店 舗の出店、企業の誘致による働く場の創出が生ま れ、シャッター商店街を再生させた 。

上記2例は、中心となる強力なリーダー的存在 が商店街全体の方向性を決定づけ、統一された意 思決定を行っている点で、先の一企業による商業 施設運営のモデルに近づいたものと言える。

フリーライダー問題の対処法として、一定の商 業エリアに属する店舗は強制的に費用負担を行う ような制度が考えられるが、集客イベント等は私 人の経済活動の一種であり、財産権、結社の自由の 侵害となる可能性がある。また、各店舗に及ぼす効 果についても、例えば業種によって効果が異なる ことが考えられるし、そもそも効果自体を正確に 測ることは困難である。その場合の費用負担など、

解決すべき課題は本研究においては提示すること は叶わなかった。

5.2 提言

① 単純補助から取引費用低減のための補助への 転換 イベント等に補助金を単純に交付するような従来 型の政策ではなく、交渉にノウハウのある外部人 材を採用できるよう商店街とのマッチングや人件

表5.商店街と一企業による商業施設運営の比較

費の補助を行うことで、交渉にかかる取引費用を 削減するような政策への転換が指向されるべきで あろう。

② フリーライダー問題についての対処

フリーライダー問題については、丸亀町商店街の 事例にもあったように、地域の何かをしたいと考 えている市民団体(学校、カルチャースクール、音 楽教室など)にイベント行うような場を提供する 方法がある。賑やかさを創るという面ではむしろ 市民参加を促した方が効果は高い可能性がある。

どちらにもニーズがあるのに、商店街組織の合意 形成コストが原因で取引が進まない場合には、自 治体が介入して、商店街内の空き店舗や空き地を 活用し、そのような場を提供することも正当化さ れる。 ③ 空き店舗問題についての対処

空き店舗対策としては、他地域展開を行っている 店舗を誘致することに一定の効果があるが、それ が 30%以上になると商店街組織の活動の実施に支 障がでるため、その効果と誘致効果を比較する必 要がある。

5.3 今後の課題

① データの不足

イベント実施による効果など、より精緻な分析 を行うためにはどの商店街ごとの時系列データが 必要となるが、今回は入手できなかった。

② 商店街の範囲

商店街の定義については、ハード設備である街 路灯またはアーケードを目印として商店街の範囲 としたが、実際には主街路から外れた裏通り等に も店舗が散在するケースも多く、こうした店舗が 商店街組織に加入しているかどうかまでは確認で きなかった。

③ 商店街組織の活動の効果について

小売店舗、飲食店、診療所、介護施設、保育園な ど商店街には多様な業種の店舗がある。そのため、

商店街組織の活動による便益は業種によっても異 なる可能性がある。こうした効果の違いを分析し、

そのことに考慮した費用負担を提案することで、

商店街組織に協力的な店舗を増やすことができる と考えられる。

商店街(所有権が分散) 一企業による商業施設運営

(ショッピングセンターなど)

テナントの配置・補充 コントロールは困難。また、空き 店舗は個人の裁量によっては活用 がなされない。

顧客の効用が高くなるよう、コントロ ールが可能。また、空き店舗がでれば、

新たなテナント店舗の補充を行う。

イベントなどの ソフト事業の費用負担

フリーライドが可能。 事業の参加については入居時の契約

条件などで取り決めが可能。また、金銭 的な費用はテナント料に転嫁すること ができる。

統一したコンセプトの 商空間・街並みの形成

地区計画制度や建築協定による ある程度のコントロールは可能。

ただし、合意形成のコストは高い。

顧客の効用が高くなるよう、コントロ ールが可能。

参照

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