X-ray イメージングの Next Innovation
はじめに
レントゲン博士はクルックス管による陰極線の研究を 行っていたとき、クルックス管から透過性を有する放射 線が放射されていることを発見した。これは未知の放射 線であったため、未知変数を表す“X”を用いてX線と名 付けたといわれている。X線は物質を透過する能力のあ る放射線であったため、直ちに医学への応用が始まった のは周知のことである1)。 X線は可視光と同じ電磁波であるため、いわゆる二重 性といわれる波動的なふるまいと粒子的なふるまいを示 す。X線をエネルギーと運動量をもった粒子と考えると きには、特にX線光子と呼ぶ。この粒子性に関する統計 的ゆらぎはX線画像ノイズの主な因子であり、特に低コ ントラスト信号の検出能に影響を与える。さらに物質と の相互作用はX線光子エネルギーに対する依存性が大き く、この物理的特性は、X線の線質とX線画像の画質と の関係を理解するうえで重要となる。 本稿では、X線の性質、X線の線質と画質への影響な ど、X線の特徴について、特に低電圧にしたときのノイ ズ、線質の変化、CT値への影響、測定誤差について概 説する。1.基礎編
1-1.X線の特徴
阿部 慎司
茨城県立医療大学 放射線技術科学科Characteristics of X-rays
Shinji Abe, Ph.D. SummaryThree factors influence the image quality of radiographs:contrast, spatial resolution and noise. The noise level affects detection of low-contrast objects, especially those with fine structure, and therefore it is an important factor in such cases. It is considered that the dominant noise is quantum noise, which is caused by the stochastic properties of X-ray photons, Poisson noise. Therefore, it is important to investigate quantum noise in analysis of image noise and quality.
In this paper, the characteristics of X-rays and the influences of beam quality on the quality of medical images are reviewed. The beam quality mainly influences contrast and noise, which are basic concepts in achieving optimal signal-to-noise ratio (SNR) in an imaging task. In this optimization, the selection of X-ray photon energy forces a trade-off between increasing radiation dose at lower energies and decreasing contrast at higher energies. For simplicity, the optimal SNR in the toy model is evaluated by the calculation of SNR per unit dose as a function of X-ray photon energy and influences of beam quality on the image quality are discussed. Furthermore, influences of the beam quality on CT values are discussed and the quantum noise of CT images is described based on the propagation of the noise as measured in the projection to CT images. Department of Radiological
Sciences, Ibaraki Prefectural University of Health Sciences NICHIDOKU-IHO Vol.57 No.2 5-12 (2012)
X線の発生
診断X線画像の撮影には、主にクーリッジ型と呼ばれ るX線管を用いている。クーリッジX線管には、回転陽 極型と固定陽極型があるが、回転陽極型は、固定陽極型 と比べ、X線強度が大きいなどの特徴がある2)。このた め、一般撮影やX線CTなどでは、回転陽極型が用いら れる。陰極から放出された電子を高電圧(20〜140 kV程 度)で加速し、ターゲット(陽極)に衝突させてX線を発 生させる。その発生過程により二つのタイプのX線、つ まり制動X線(連続スペクトル)と特性X線(線スペクト ル)からなる2)。 図1に示すように、制動X線の強度分布は理論的には 有名なクラマースの式で表され直線(点線)となる2、3)。 しかし実際には、固有濾過、付加フィルタなどにより、 低エネルギー領域のX線はより多く吸収されるため、X 線管から放出されるX線は実線のようなスペクトルとな る2)。 一方、特性X線は、軌道電子の遷移に伴い放出される。 電子がターゲットに入射すると、ターゲット物質との相 互作用により軌道電子の軌道が空席となり、より大きい エネルギー準位の軌道電子が空席となった軌道に遷移す る。このとき、そのエネルギー準位の差の絶対値に等し いエネルギーが特性X線として放出され、線スペクトル となる2)。図2に軌道電子のエネルギー準位と特性X線(K 系列)のスペクトルを示す。特性X線は系列ごとに、波 長の長い順に添字α、β、γ、 …をつけて表記する4)。X線と物質との相互作用
X線と物質との相互作用には、レイリー散乱、光電効 果、コンプトン散乱、電子対生成、光核反応などがある が、診断領域のX線の主な相互作用は光電効果とコンプ トン散乱である5)。ただし、マンモグラフィのように低 エネルギーX線を用いる撮影では、レイリー散乱の寄与 も考慮する必要がある。ここでは、画像形成に寄与する これら三つの相互作用について簡単にふれておく。 X線と軌道電子との相互作用において、X線の波長は 変化せずその進行方向のみが変化する現象はレイリー散 乱と呼ばれ、X線の波動性を示す現象である。 光電効果はX線光子がそのエネルギーをすべて軌道電 子に与えて消滅し、その軌道電子が光電子として放出さ れる現象である。光電効果は、X線光子エネルギーと物 質を構成する原子の原子番号に大きく依存する。 コンプトン散乱は自由電子または自由電子近似ができ る軌道電子との散乱で、電子を反跳させてX線光子のエ ネルギーの一部を電子に与え、散乱光子の波長が変化す る現象である。 水における各相互作用のX線光子エネルギー依存性を 図3に示す6)。縦軸の質量減弱係数は単位質量あたりの 相互作用する確率を表す。診断画像のイメージングに用 いられるX線光子エネルギー領域(〜140 keV)では、主 な相互作用が光電効果とコンプトン散乱であることがわ かる。また、低エネルギーなほど光電効果の割合が大き く、全質量減弱係数も大きくなる。 Kα X線光子エネルギー X線強度 ︵相対値︶ 140 120 100 80 60 40 20 0 20 40 60 80 100 120 非濾過 (keV) Kβ 図1 タングステンターゲットにおけるX線強度分布(管電圧100 kV) K殻 L殻 M殻 Kα Kβ エネルギー準位 図2 軌道電子のエネルギー準位と特性X線(K系列)の スペクトルX線の減弱
X線が媒質に入射すると、微視的には個々のX線光子 がある確率で媒質と相互作用をすることにより減弱す る。画像形成や画質を理解するうえで基本となる減弱の 物理的な性質を簡単に述べる。 厚さLの一様な媒質に、単色エネルギーのX線が入射 するとその減弱は指数関数的となる。つまり、入射X線 光子数をN0とすると媒質から射出するX線光子数Nは、 次式で与えられる。 N = N0e−μL (1) ここで、μは線減弱係数(単位長さあたりの相互作用す る確率)であり、質量減弱係数μmとは媒質の密度ρを用 いて次式で表される。 μm=μρ (2) しかし、図3からもわかるように、診断領域のX線にお いては、一般に線減弱係数はX線光子エネルギーが小さ いほど大きくなるため、減弱のふるまいはX線光子のエ ネルギーにより大きく異なる。 このため、一般撮影や造影検査のように、X線の組織 間での吸収差を画像化するX線画像においては、X線の 線質はコントラスト、SN比(signal to noise ratio:SNR) や量子検出効率(detective quantum efficiency:DQE)7、8) などに大きく影響を与える。また、X線CTでは、X線の 減弱から被写体内における線減弱係数の分布を画像化す る。しかし、X線管から発生するX線は連続スペクトル となるから、その線質はSNRなどに影響を与えるだけ でなく、減弱にともない線質が硬くなるいわゆるビーム ハードニング効果が生じ、アーチファクトなどの原因と なる9)。X線の線質と画質
X線の線質が異なると減弱のふるまいが異なるため、 当然のことながら画質に影響を与えることになる。特に ノイズ、コントラスト、量子検出効率への線質の影響は 大きい。ここでは、ノイズ、SNR、線質の変化、CT値 への影響について概説する。 1.X線量子ノイズ X線画像のノイズにはさまざまな因子がある。たとえ ば、増感紙−フィルム系では、X線光子の統計的ゆらぎ に起因する量子ノイズ、増感紙の不均一性に起因する 増感紙の構造ノイズ、フィルム乳剤の不均一性に起因す るフィルム粒状などがある。CRなどのデジタル系では、 X線量子ノイズ、光量子ノイズなどである。しかし、適 切な撮影線量ではアナログ系、デジタル系のどちらのシ ステムにおいてもX線量子ノイズが支配的であることが 知られている10-13)。 一定のX線量を一様に照射したとしても、単位面積あ たりのX線光子数が、場所ごとで、かつ照射の度ごとで 必ずしも等しくはならず、この個数ゆらぎはX線量子 ノイズと呼ばれる。議論を簡単にするため、単色X線に おけるX線量子ノイズについて考える。単位面積あたり のX線光子数の平均をnとする。ある領域(領域の大きさ s≪全領域)のX線光子数がnsとなる確率P(ns)は、ポア ソン分布に従い次式で与えられる。 P(ns)=(ns) ns ns! e −ns (3) ポアソン分布では、平均値 ns=〈ns〉と分散σns2=〈(Δns)2〉 は等しくなる。 〈ns〉=〈(Δns)2〉= ns (4) ここで、〈 〉は平均値を表し、Δns= ns−〈ns〉とおいた。 X線光子エネルギー (cm2/g) 10 10 1 0.1 0.01 0.001 100 1,000 質量減弱係数 (keV) 干渉性散乱 コンプトン散乱 光電効果 全質量減弱係数 図3 水における全質量減弱係数と各相互作用の質量減弱係数2.SNRと線質 SNRを信号レベルに対するノイズレベルで定義する と、ノイズレベルは標準偏差σで表されるため、着目す る領域として単位面積を考えると以下のようになる。 SNR =σ = n (5)n 撮影線量を増やすと画像の粒状性が改善し、低コントラ スト分解能が向上することは経験的にも自明なことでは あるが、(5)式が表しているようにX線光子数が大きく なるとともにSNRも大きくなることから理解できる。 連続X線により撮影した画像のノイズ解析において、 (5)式は単色X線の場合におけるSNRであり、連続スペ クトルのX線には適用できない。図4に示すように、 画像検出器に入射するX線光子数スペクトルの平均値を n(ε)、全X線光子数をNとすると、増感紙−フィルム系 やCR系などの積分型X線画像検出器では以下のように なる14)。 SNR = NI (6) ここで、IはSwank 因子15)と呼ばれ次式で与えられる。 I = M12 M0 M1 Mk=∫0εmaxεkn(ε)dε (7) たとえば、出力信号(増感紙であれば発光量)が吸収され たX線光子エネルギーに比例する場合、単色X線の場合 は常に同じ大きさの信号が出力される。しかし、連続 X線の場合、どのエネルギーのX線光子が吸収されるか で出力信号の大きさが異なるため、信号の大きさ変動 に起因するノイズが加わることになる。その結果、全X 線光子数が等しいときには、(6)式のようにSwank因子 に従って、単色スペクトルの場合( I =1)に比べSNRは 小さくなる。図5、図6に管電圧60 kV、80 kV、100 kV、 120 kV、140 kVのタングステンターゲットのX線スペ クトルとそのSwank 因子の1例を示す。スペクトル分 布が広がるとSwank 因子が小さくなることから、(6)式 よりSNRも小さくなることから、低電圧の方がより大 きいSNRを与えることになる。 一般に、医用画像では量子ノイズが支配的であること から、撮影線量を増やせばSNRは改善するが、逆に被 X線光子エネルギー 120 100 80 60 40 20 0 50 100 150 X線強度 ︵相対値︶ (keV) 140 kV 120 kV 100 kV 60 kV 80 kV 図5 タングステンターゲットX線管におけるX線スペクトル X線光子数 X線光子エネルギー ε εmax n(ε) 図4 X線光子数スペクトル 管電圧 1 0.9 0.8 50 100 150 Swank Factor (kV) 0 cm 10 cm 20 cm 30 cm 図6 管電圧と水ファントム透過後のX線スペクトルに関する Swank因子
ばく線量は増加する。このため、最適な撮影線量の解析 において、吸収線量とSNRの関係を明らかにすること は重要となる。 ここでは、トイモデルを用いて、低コントラスト信号 におけるSNRとX線光子エネルギーの関係について求め る。単色X線を仮定し、図7に示すような空気層(1 cm厚) を有する厚さx cmの水ファントムにおけるSNRについ て考える16)。X線がファントムに入射すると、たとえば、 光電効果では光電子による制動放射、コンプトン効果で はコンプトン散乱線やコンプトン電子による制動放射な どにより散乱線が生じ、画質低下の要因となる。しかし、 ここでは議論を簡単にするため散乱線の影響はないもの とする。入射X線光子フルエンスをΦ0、水のみの領域を 通過した後のX線光子フルエンスをΦ1、空気層を通過し た後のX線光子フルエンスをΦ2とすると、(1)式からΦ1 とΦ2は次のようになる。 Φ1=Φ0e−μx (8) Φ2=Φ0e−μ(x−1) (9) また、信号はΦ2−Φ1、ノイズは(3)式よりバックグラン ドのゆらぎ Φ1で与えられる。低コントラスト信号Φ2〜 Φ1の場合にはSNRは次式のように表すことができる。 SNR = C Φ1 (10) ここで、Cは被写体コントラストと呼ばれ次式で定義さ れる。 C =Φ2−Φ1 Φ1 (11) コントラストには、X線写真上での写真濃度の差で定義 される写真コントラスト、フィルムコントラスト、被写 体コントラストなどが代表的なものである。これらの詳 細については文献17、18を参照されたい。 吸収線量は減弱されたX線光子の全エネルギーで近似 できると仮定する。このとき、吸収線量はX線光子エネ ルギーをεとおくと次式で与えられる。 Dose =(Φ0−Φ1)ε xρ (12) 水ファントム厚 x =10 cm、20 cm、30 cmについて、入 射X線光子数を一定とした場合のX線光子エネルギーと SNR(相対値)の関係を図8に示す。SNRはX線光子エネ ルギーが小さい領域では、X線光子エネルギーとともに 大きくなるが、各ファントム厚に応じて30〜60 keV付近 を超えると、変化は緩やかになるが、ふるまいは多少異 なる。同様に、入射X線光子数を一定とした場合のX線 光子エネルギーと水ファントムにおける吸収線量(相対 Φ0 Φ0 Φ1 Φ1 Φ2 Φ2−Φ1 1 cm xcm 水ファントム 空気層 透過X線量 図7 1 cm厚の空気層を有する厚さx cmの水ファントム(上)と水ファントムに対する透過X線量の空間分布(下)
値)の関係を図9に示す。SNRの場合とは異なり、吸収 線量はX線光子エネルギーとともに増加する。そこで、 吸収線量を考慮したX線光子エネルギーの最適化の方法 として、位吸収線量あたりのSNR(SNR/吸収線量)を 指標とした解析がある16)。式(10)と(12)から求めた各水 ファントム厚におけるX線光子エネルギーとSNR/吸収 線量(相対値)の関係を図10に示す。ファントム厚に応 じて極大値を与えるX線光子エネルギーが存在し、ファ ントムが厚くなるとともにその値が大きくなる。 SNRに直接関係するDQEは医用画像の物理的評価法 として、特にデジタル画像系の普及とともに広く行わ れるようになってきた。入力と出力のSNRの比の二乗 で定義されるDQEは、検出器のSNRの伝達特性を表す ものであるが、画像システムのノイズ、解像力、階調度 のほかにX線スペクトルを考慮した総合画像評価法であ る。詳細については文献7、8を参照されたい。 3.線質とCT値 トイモデルでみたように、SNRを考慮すると低管電圧 X線の方が有利である。また造影画像検査の場合、図11 に示すようにヨード系造影剤であればヨードのK光電吸 収端が33.2 keVであり、低管電圧X線の方がより多くの 減弱を受けることになる。よって、低管電圧の方がより 大きい造影効果により信号レベルが高くなることから SNRが大きくなる。 先の議論からも推測できるように、X線CTにおいて も低電圧での撮影の方がSNRを大きくすることができ る。しかし、低管電圧のX線では減弱が大きくなるため X線光子エネルギー 1,000 100 10 1 10 100 1,000 SNR (相対値) (keV) 10 cm 20 cm 30 cm 図8 水ファントムにおけるX線光子エネルギーとSNR(相対値) X線光子エネルギー 1,000 100 10 1 10 100 1,000 (keV) 10 cm 20 cm 30 cm 吸収線量 ︵相対値︶ 図9 X線光子エネルギーと水ファントムにおける吸収線量(相対値) X線光子エネルギー 8 7 6 5 4 2 1 3 0 10 100 1,000 (keV) 10 cm 20 cm 30 cm SNR / 吸収線量 (相対値) 図10 水ファントムにおけるX線光子エネルギーと SNR/吸収線量(相対値) X線光子エネルギー (cm2/g) 10 1,000 10 100 1 0.1 0.01 100 質量減弱係数 K吸収端(33.2 keV) 1,000 (keV) 図11 ヨウ素における全質量減弱係数
透過するX線が少なくなり量子ノイズが大きくなるた め、高出力のX線管でなければならない。しかし、通常 のX線管では十分な強度のX線を発生させることが難し いため、X線CTは透過力の大きいX線が得られる管電 圧120 kV付近で撮影を行うのが一般的であった。最近、 十分な強度のX線を発生させることが可能なX線管を備 えた医療用X線CT装置が開発され、低電圧X線を用い た撮影が行われるようになってきている。 ここで、線質とCT値の関係について注意する必要が ある。X線CTは線減弱係数の分布を画像化したもので あるが、CT値として、水を0、空気を1,000とする臨床 目的の単位ハンスフィールドユニット(HU)が用いられ ることが多い。 CT値 =μtμ−μw w × 1,000 (13) 線減弱係数は質量減弱係数と同様にX線光子エネルギー 依存性が顕著であるため、水以外の組織では線質、つま り管電圧が変わるとCT値も変化する19)。また、同一物 質からなる被写体においても、被写体の厚さが変化する と、ビームハードニングが影響を受けることによりCT 値が一定とはならず、一般的に被写体が小さいほどCT 値が高くなる20)。被写体が大きくなるとビームハードニ ング効果のため、実効エネルギーの大きい線質へと変 化してゆく。よって、ビームハードニング効果の小さい 被写体の方が大きい線減弱係数となりCT値が高くなる。 CT値は線質によって変化するものであり、その意味で 絶対的なものでないことを留意しておく必要がある。
X線量子ノイズによるCT値の誤差
一般撮影などのX線画像での量子ノイズと同様に、 CT画像においても量子ノイズと呼ばれる誤差が存在す る。X線CTは投影データからCT画像を再構成するため、 投影データからCT画像上へのノイズ伝播を解析するこ とによりCT値の誤差を評価することができる21-24)。 このノイズ伝播を簡単に説明するため、単色X線の場 合について考える。線減弱係数の投影データは入射X線 光子数Ninと射出X線光子数Noutの対数値で与えられる。 ∫0 L μ(x, y)dY = −log(
e Nout Nin)
(14) 先に指摘したように、NinとNoutはそれぞれポアソン分布 に従うため、線減弱係数分布の投影データも統計的にゆ らぐことになる。一般に、ある関数 f が独立な二つの確 率変数{ X }、{ Y }の関数となっているとする。 f = f( X, Y ) (15) このとき、Δf は Δf =∂X Δ∂f X+∂f ∂Y ΔY (16) となるから、Δf の分散σf2は以下のようになる。 σf2=(
∂f ∂X)
2 σX2+(
∂f∂Y)
2 σY2 (17) これを一様な被写体としたときのX線CTに適用し、分 散をσp2とおくと、式(14)より次式のようになる。 σp2= 1 Nin + 1 Nout (18) X線CTの場合、通常、Nin≫ Noutであるから、以下のよ うに近似できる21)。 σp2 1 Nout (19) このように、投影データの分散は、Noutに反比例するこ とになる。X線CTの再構成法には様々な手法25)が知ら れているが、ここでは、一般的な再構成法であるフィル タ補正逆投影法(filtered back projection method:FBP) により求めたX線CT画像のノイズについて求めてみる。 各投影データは互いに独立であるから、FBPにより求め たX線CT画像のノイズは次式で与えられる22)。 σr2 π 2 12ma2 N1out (20) ただし、a = 1/(2 fN)( fNはナイキスト周波数)、mは投 影数を表す。よって、X線CT画像の量子ノイズはX線 画像の場合26)と同様にNoutに反比例することになる。こ の結果は、使用する再構成フィルタに依存するだけでな く、再構成法にも依存することは興味深い27)。最後に
X線の性質、X線の線質と画質への影響など、X線の 特徴について、特に低電圧にしたときの線質の違いによ るノイズ、SNR、CT値への影響、さらには撮影データ のノイズの再構成画像上へのノイズ伝搬について概説 した。線質と画質の関係において、画像検出器の物理的 特性は重要な因子ではあるが、この点については、文献 28を参照されたい。近年、X線CTの再構成として、逐 次近似再構成法が臨床現場においても使用されるように なってきた。このことは、コンピュータの計算速度が飛 躍的に向上したことによる。この手法の特徴は、FBPに 比べアーチファクトやノイズを低減できるなどの特徴が ある29)。今後、逐次近似法による低電圧撮影でのCT画 像の画像評価に関する研究がさらに進むものと思われ る。 【参考文献】 1)清水 榮:物理学者としてのレントゲンと人間としての レントゲン(アイソトープ・放射線利用100年記念講演 会),日本アイソトープ協会,19952)Johns HE, Cunningham JR:The Physics of Radiology. 4rd ed. Charles C Thomas Publisher, Springfield, Springfield, 48-66, 1983
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