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小学生の学習動機

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

小学生の学習動機

著者 杉村 健

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 4

ページ 29‑34

発行年 1968‑03‑25

URL http://hdl.handle.net/10105/6140

(2)

小学生の学一習動機

杉   村      健    (心理学教室)

 本研究の目的は、小学生の学習動機が発達的にいかに変化するか、それが男女でどう違う狐そして、

学業成績のよい老と悪い者とでいかに異なるかを、統計的資料にもとづいて検討することである。先の 研究(杉村、1967)において4年生と6年生の学習動機を比較したとき、その因子構造をはじめと して、性、学業成績などの点に関して興味ある相違が示された。しかし、被験老の数があまり多くなく、

発達的傾向をみるのには不十分であったので、本研究においては2年生も含め、各字隼10学級前後の 被験者が用いられた。

方法

被験者  被験者は表1に示したように、男女合計1134名であった。段らは、奈良市、大和高田 市、枚岡市から各1校ずつ抽出されね

表 1 被  験  者

男 女 合計

2年生  4年生  6年生 合計

222    171    204    59ア 194     177     166    537

416     348     370 1134

 調査項目  先の研究て用いられた14項目に、新たに『先生にいわれるから勉強する』を加えた 15項目が弔いられた。表2には項目番号としての内容が示されている。

 手続き  調査はそれぞれの教室て授業時間中に行なわ机た。調査用紙には、学校、学年、粗、氏名 および性別を記入するところと、その下に1番から15番までの番号が、1〜5,6〜10,l1〜15 の3段に並べて書いてある。調査用紙が配布されたあとで、次のような教示が与えられた。

 『これからすることはテストではありません。また、成績にも関係ありませんから、気軽にやってく ださい。こ机から、皆さんがどういうわけで勉強するの狐どんな気持で勉強しているのかということ を調べたいと思います。やり方は非常に簡単です。私が質問を読みますから、もし答えがrはい」のと き、または自分の気持と同じときには、番号を○でかこんでください。もし答えが「いいえ」のとき、

または自分の考えとちがうときには、番号にXをつけてください。正直に思ったとおりに答えてくださ い。』

       表2調査項、目

番 号 内    容

貌こほめられたいから勉強する

一29』

(3)

2 3 4 5 6

8 9

10 11 12 13 14 15

えらい人になりたいから勉強する 堺レいことを知りたいから勉強する。

先生に叱られるから勉強する 友だちに負けたくないから勉強する 好きだから勉強する

親にいわれるから勉強する 大人になって役に立つから勉強する 宿題があるから勉強する

先生にほめられたいから勉強する おもしろくて楽しいから勉強する テストがあるから勉強する 親に叱られるから勉強する 成績をよくするために勉強する 先生にいわれるから勉強する

 教示に続いて、番号と項目が2度ずつ読みあげられた。最初の3項目までは全員が回答したことを確 かめてから次に進んだ。2年生に対しては、質問の内容と回答の仕方についてよく理解させるように留 意した。『はい』か『いいえ』のいずれにも決めがたいときには、△または?をつけるようにしたが、

できるだけ○かXで答えるように指示した。ほとんどの学級において項目の内容に対する質問がたかっ たが、2,3の者から、『好きだから勉強する』について、科目によって異なるという質問があった。

それに対しては、好きな科目と嫌いな科目の数によって判断させた。

 調査をしている間に、担任教師からその学級で成績のよい男女3名ずつと、 悪い者男女3名ずつの氏 名を書いてもらった。

 結果と考察

 各項目の承認率(『はい』の%)が学年別、学年ごとの性別、および学年ごとの成績別について、表 3から表5にわたり示されている。表3と4は全員の資料による狐表5は各学級から成績のよい者6 名と悪い者6名を抽出して作ったものである。したがって各字隼には男女同数ずつの老狐成績上と成 績下の群にはいっている。表6は各項目ごとに学年と世および学年と成績の.それそれ2要因からなる 分散分析を行なった結果である。この分析には色変換による方法(岩原、1964,P90)が用いられ

 まず表3において、3学年をつうじて高い承認率を示しているのは、2,3,8,14の4項目であ る。すなわち、えらい人になりたい、新しいことを知りたい、大入になって役にたつ、成績をよくする というが、小学生に共通した支配的な動機であるといえる。これは好ましい現象ではあるが、社会内望 ましさの要因が現実の叢り方を好ましい方向に歪めた結果であるとも考えら机る。各項目ごとの発達的 変化は表6からもわかるようにサベて有意であった。表3によると、3と8の2項目は学年とともに増 加していくが、その他はすべて減少している。その減少の仕方は大まかにいって2つの型に分類するこ

とができる。その1つは、2年から6年にかけて漸次減少・してい一くもので、一1,2,5,6,10,14、

      一30一

(4)

の6項目がこれに属する。もう1つは、2年から4年にかけて減少し、4年と6年ではあまり変化しな いもので、4,7,9,11,12,13,15、のア項目がこれに属する。4年、6年ともに承認率が低い 項目は、1,4、ア、10,13,15、の6項目であり、これらはいずれも親と教師が関係する外的動機 づけとみなせる。この結果については次のように考えられる。①小学6年生にもなって親や教師から 叱られたりほめられたりすることによって勉強すると考えるのは、たとえ現実にはそうであっても、望

ましいことでないという気持が作用してくる。② 勉強はそのような外的動機づけによってするもので はなく、自ら進んでしなくてはならないという教師の教育が作用している。いずれにしても、本研究に

用いた項目に関する限りは、そのほとんどの項目において学年とともに承認率が減少していく。ちなみ に、1人あたりの平均得点(『はい』の数で0点から15点に分布する)を算出してみると、2年生で は8.4とかなり高いが、4年、6年に進むにつ派て6.3,5.6と減少している。このことは、教師が用 いることのできる動機づけの手段孤高学年にたるほど少なくたることを示唆している。

 表4においては、性に関して有意差がえられたのは2,3,6,11,15の5項目であった(表6 参照)たとえば、えらい人になりたいが6年生男子に多いこと、新しいことを知りたいと好きだからが

2和生女子に多いこと、おもしろくて楽しいが全体として女子に多いことなどが主な結果であった。

 表5においては、15項目中10項目について成績の主効果が有意であった。すなわち、成績の悪い 者は1,4,7,9,10,12,13,14,15の9項目において承認率が高く、3だけが低い。前の9 項目のうち、1,4,7,10,13,15の6項目は親と教師に関連する動機づけであり、9,12,14、

の3項目は宿題、テスト、成績に関するものである。これに対して成績のよい者は、新しいことを知り たいからという項目だけで高い値を示している。学年と成績の交互作用は3,4,9,13の4項目に おいて有意であちた。いずれも学年が進むにつれて成績差が減少していくことを示している。たお、交 互作用は有意ではなかったが、1、ア、10,15の4項目についても 上と同様な傾向が認められる。こ のように成績のよい者と悪い者との学習動機のちがいは学年とともに減少していくが、それにもかかわ らず、親に叱られる、親にいわれる、先生にいわカるというような項目は、6年生になってもその差が 大きく、これができない子どものあり方今特徴づけているといえよう。学業成績にもとづくこのような ちがいは、子どもの方にも原因があるかもしれないが、教師や親の扱い方にも問題があると思える。何 故ならば、子どもの学習動機は学習場面において学習されたものであると考えられるからである。

 表ラは教師からみた子どもの学習動機を示したものである。これは認定講習の受講者60名について 調査したもので、1番から14番までの項目のうち、小学生の学習動機中よくあらわしていると考えら れるもの5項目を選択させた。児童のところには、2,4,6年生全員についての承認率が示さ机てい る。教師と児童とでは調査方法が異なるので厳密な比較はできないが、参考資料としては興味ある傾向 がみられる。この表において、教師の方が高い項目は1,4、ア、13の4項目であり、いずれも親や 教師に関連するものである。これに対して児童の方が高いものは、 2,3,6,8,11の5項目であ り、えらい人になりたい、新しいことを矢口りたい、好き、大人になって役にたつ、招もしろくて楽しい たど、いわば内的動機づけに関連した項目である。以上の結果は、望ましい学習動機に対する児童の承 認率が高いことを示している。教師と児童がくいちがう原因としては、①望ましいとされている学習 動機と児童の現実の行動とのずれ、②児童の意識と教師の見方のずれ、⑥教師が想定した小学生の 学年または年令などが考えられる。

一るj一

(5)

 要 約

 小学校2,4,6年生合計τ134名が、学習動機をあらわす15項目について、『はい』か『いい え』で反応した。資料を統計的に分析したところ、主な結果は次のとおりであっれ

 ω えらい人になりたい、新しいことを知りたい、大人になって役にたつ、成績をよくするの4項目   が、小学生に共通する支配的な学習動機である。

 12)新しいことを知りたいと、秋になって役にたつの2項目は学年とともに増加していくが、他の   項目はすべて減少している。

 (3) 4年と6年では、教師や親が加える外的動機づけに関する項目の承認率はきわめて低い。

 (4)学年が進むにつれて、動機づけの手段が減少する。

 (5)成績のよい者は、新しいことを知りたいから勉強するという気持が強い。

 (6)成績の悪い老は、教師や親、テストや宿題など、外からの強制によって動機づけら机ている。

 (7)成績のよい老と悪い者の動機におけるちがいは、学年とともに減少する。

 (8)教師からみた児童の学習動機と児童自身のそれとの間には、かなりの相違がある。

 以上の結果について、社会内望ましさ、教師の指導、学習されたものとしての学習動機などの点から 考察した。

引用文献

岩原信九郎  1964 ノンづラメトリック法  日本文化科学杜   東京

杉村 健   196ア 小学校4年生と6年生の学習動機  奈良教育大学教育研究所紀要

   第3号、45−52

(附記〕 本研究にあたり、資料の蒐集にさいしては、枚岡酬・学校、高田小学校、大柳生小学校    の校長先生はじめ諸先生のお世話になった。また、資料の分析にさいしては、奈良教育大    学滝野千春助教授、および岸本郁子、高田由紀、吉村富美手さんのご協力をえた。厚く感    謝します。

      表3 学年別の承認率(%)

学 年 1 2 3 4 5 6

8 9 10 11 12 13 14 15

246

37 89

@ ・ P2 75

@5 63 80 W5 W7

23 7口

@863

@ア 48

57 S4 Q3

36 P8 P6

8フ

X2 X5

49 Q6 Q8

48 Q0

@6 42 R4 R2

61 S1 R8

32 P6 P4

88 W2 V8

36 P4 P5

・傾向 ↓ ↓

↓ ↓

〔註) ↓ は学年とともに減少することを示す。

    ↑ は学年とともに増加することを示す。

一32一

(6)

表4学年ごとの性別承認率 (%)

番 号

学年 1 2 3 4  5 6  7 8  9

10 11 12 13 14 15

男 37 89 74 21 73 50 34 87 45 47 37 61 32 91 31

2 女 36 90 85 24 67 66 37 86 54 50 48 61 33 86 3ア 差 1 ・1−11 一3 4−16 一3 1 −g ・3−11 0 一1 5 ・6 男 12 72 88 10 64 43 19 92 28 20 29 39 17 79 18

4 女 11 79 82 6 62 45 15 93 25 20 38 42 15 84 11 差 1 一7 6 4  2 一2  4 一1 3 0 −9 一3 2 一5 7

5 67 84 6 48 23 18 9ア 26 7 31 34 15

7−

W 14 女 5 58 90 7 49 23 15 93 31 5 33 40 13 78 16

6

0 9 6 一1 −1 0  3 4 −5 2 −2 ・6 2 0 一2

表 5 学年ごとの成績別承認率 (%)

成 人 項

学年

績 数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

上 66 21 94 9て 12 71 58 17 91 30 30 47 48 17 89 18

2 下 66 52 91 66 37 68 60 49 82 78 62 42 フ2 49 92 与ア

一3

P・

3 25−25 3 ■2・32 9−48−32 5−24−32 一3−39

上 54 6 78 94 0 57 46 6 93 26 11 41 31一 7 70 9

下 54 24 70 78 15 ア2 41 30 96 37 35 28 48 80 83 19

4

差 一18 8 16・15・15 5−24 ・3−11−24 13−17・73−13−10

上 60 3 62 88 7 53 27・ 5 95 28 2 40 43 5 73 10

下 60 5 53 88 10 56 24 22 92 25 7 32 42 25 88 20

6

差 一2 9 0 一3 ・3 3・17 3 3 一5 8 1・20・15−10

一63一

(7)

表  6   分  散 分  析

番 号

変動因 d−f

1 2  3  4  5  6  7 8910111213 14 15

学年(1』 2 *****************************

性 (2) 1

1 x 2 2 ***

学年(1) 2 **** ** **** **** **** **

成績(2〕 1 ** ***米 ** **** ** **

1 x 2 2 *** ** **

(註) * 5%水準 *半 1%水準

表  7 教師からみた児童の学習動機 (%)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011 12 13 14 15

教児 師童

41 29  32  25 49  10 59 29 P9  79  84  13  61 42  24  91

3934 R626

14 R6

39 S7

32 Q1

68 W3

差 22−50−52 12−12−32 35−62 3 8−22i8 11−15一

(註) 児童の承認率は2,4・6年生全員のもの

一34一

表  6   分  散 分  析 項 目 番 号 変動因 d−f 1 2  3  4  5  6  7 8910111213 14 15 学年(1』 2 ***************************** 性 (2) 1 * 1 x 2 2 *** * * 学年(1) 2 **** ** **** **** **** * ** 成績(2〕 1 ** ***米 ** **** * ** * ** 1 x 2 2 *** ** ** (註) * 5%水準 *半 1%水準 表  7 教師からみた児童の学習

参照

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