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教職課程センター1 年目の成果と課題 Result and Issues of teacher-training center in the first year

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教職課程センター1 年目の成果と課題

Result and Issues of teacher-training center in the first year

教職課程センター 竹 浪 隆 良

1.はじめに

2.教職課程センター1年目の取組 3.教職課程センター1年目の成果 4.教職課程センター1年目の課題 5.おわりに

1.はじめに

戦後日本の教員養成は、「大学での教員養成」と「開放性」の原則のもとで行われて きた。しかし、近年、教員養成の「高度化」に伴い、開放性の教員養成について様々な 課題が提起されるようになってきた。そのひとつに、教員養成学部・学科を持たない開 放制の大学では、教職課程を統括する全学的な組織がないか、あってもその機能が弱い ことが指摘されてきた1

首都大学東京では、201810月に教職課程センター準備室を立ち上げ、翌年4月の 開設に向けて準備を進めた。当初は、部屋のレイアウトや必要な備品と書籍類などを選 定して、発注する業務が多かったが、教務課の複数の担当者や教育学研究室のスタッフ との打ち合わせを頻繁に行うことができたため、比較的スムーズに準備を進めることが できた。

特に、一昨年度からの文部科学省の担当局との「再課程認定」には、教務課の有能な 担当者が中心に折衝を進めていただいていたので、この点での実務的な作業はなかった ことが幸いした。もちろん、この「再課程認定」のなかで、いくつもの学科が教職課程 の設置を断念せざるを得ないことになったことは、大学としてはじめて教職課程を統括 する組織を立ち上げようとする時期に、痛手であった。

また、同時に10月は大学3年生など、翌年7月に教員採用試験を受験する学生にと っては、受験勉強を本格化するべき時期でもあり、準備室とはいえども学生の相談や指 導も、業務の中心に据える必要があった。

本稿は、本学ではじめて立ち上げた教職課程センター1 年目の成果と課題を整理し、

今後の指導に活かしていくことを目的としている。

1) 中央教育審議会答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について~学び合い、高め合う教員育成 コミュニティの構築に向けて」201512

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2.教職課程センター1年目の取組

まず、教職課程センター1 年目の取組を学生の指導を中心にみていくこととしたい。

教務課では、教員免許の取得を目指す学生は把握しているが、そのなかで教員を目指 している者が誰であるかは、明確にはつかめていない。その機会として、例年、キャリ ア支援課が主催していた「教員ガイダンス」が10月中旬に行われており、そこに参加 した大学3年生を把握することからスタートした。

教職課程センターの存在自体が、大学案内や大学のホームページに掲載されているわ けでもなく、まずは大学内(教職員と学生・院生)に教職課程センターの認知を図る必 要があった。教務課の担当者が、いち早く教職課程センターの利用案内パンフレットを 作成してくれたことが功を奏して、徐々に認知が広まっていった。

(1)教員採用試験受験者への指導

教職課程センターにいち早く来室してくれたのは、就職浪人の既卒者や科目等履 修生であった。また、私自身がこれまで講義等で指導してきた学生の来室もあり、

2月ごろには約20名弱の指導対象者が把握できた。

指導対象者には、まず、本格的な教員採用試験に向けた勉強を開始すること、具 体的には3月までに「教職教養」と「一般教養」、「教科専門」を完成させることを 課した。と同時に、3月から「論作文」の指導を開始した。

これまで本学の教員採用試験の指導は、教職実践演習を主担当とする特任教員が、

「論作文」を中心に指導していた。が、1名体制であったため、個人的な指導にな らざるを得なかった。大学としては2018 10月から1名を、翌年4月からさら 1名を増員し、特任教員3名の体制を作り上げる計画であった。特任教員は、講 義や研究の合間に、学生の相談や指導に当たることになり、また、学生・院生の側 も、授業の空き時間を利用して指導を受けることになるため、制約も多い。特に、

直接的な指導を行う場合、「論作文」では1 1で添削を行う必要があり、1人の 指導者に対して56人の学生が限度であった。

一方、「面接」指導では、学生同士でグループを組ませ、お互いに学び合うことに よって効果が発揮されると考え、5つのグループを編成した。

こうして、一次試験対策としての「論作文」指導と、二次試験対策としての「面 接」指導を同時並行的に行うこととした。具体的には、1人の学生に対して「論作 文」指導を週2回、「面接」指導を週2回、行うことした。これは、これまでの本 学の学生が一次試験には合格するものの、二次試験で結果を出せない場合が多いこ との反省であった。多くの自治体では、一次試験の結果から二次試験までは10 程度しかなく、二次試験対策が間に合わないことがあった。そこで、教職課程セン ターとしては、当初から二次試験に焦点を当てて、様々な「面接」指導を実施した。

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(2)「論作文」指導

まず、「論作文」指導から取組を説明する。初回に学生にとってなじみのない「論 作文」とは何か、その基本を指導した。「論作文」とは、「論文」と「作文」の折衷 的なものという意味での造語であるが、「序論・本論・結論」や「論・例・策」など 一定の作法があり、自分なりのスタイルを確立するためには、何度も書き直す必要 がある。また、「論作文」は書く「面接」ともいわれ、教育課題の様々な知識を必 要とする。さらに、自治体によって字数や時間、出題形式が様々であるため、学生 がどこの自治体の志望なのかを確認して、その自治体の出題傾向を知るために、過 去問題に取り組ませることから始めた。試験当日は、手書きで制限時間内に書くこ とが求められるが、自分のスタイルを作るまでは、ワープロ作成も可とした。

指導に当たって強調したことは、問題に正対することは当然だが、自分にしか書 けない内容を盛り込み、教員になりきって実現可能性のある具体策を提示すること である。もちろん、手書きの字が読みやすく丁寧であり、太さや濃さについても助 言した。が、何よりも書き出しの1文で読み手(採点者)の気持ちを引き付けるこ とと、力強い締めの決意を書くこと、どこかの答案例にあるような文章ではなく、

オリジナルな教育論文を書く力量を付けるように指導した。

指導期間中の56月に、多くの学生が3週間の教育実習を行うため、その期間 の前後をいかに活用するか、また、教育実習が終了した段階で速やかに「論作文」

のモードに戻す点が焦点だった。1 回の指導時間を当初は90 分とり、慣れてくれ 45分程度で、前回の書き直しと新たな「論作文」の2本の添削を行うことが多 く、事前に提出してもらったものを添削しておくことを心掛けた。

(3)「面接」指導

一方、「面接」指導は、4月中旬からグループごとに週2回(各90分間)のペー スではじめた。

「論作文」と同様に、「面接」でも最初の時間に「面接」試験の基本を指導して から、具体的な指導に入った。まず、4月から6月中旬まで40 ほどのテーマに各 23問を例示して、事前にワークシートを渡して準備させて、5つのグループごと に学生同士で練習する形と、指導者が入る形をとった。6月下旬には、自己PR 各自治体の志望理由、教育実習を終えてなどの設問を実施した。

また、同時に6月下旬からは、「模擬授業」と「集団討論」を、一次試験を挟ん 7 月末まで 5 回程度、実施した。「模擬授業」の指導のなかには、当然、「指導 案」や「単元指導計画」などの作成指導も含まれている。ここで意識したことは、

模擬授業や指導案のなかに「主体的・対話的で深い学び」の視点を必ず入れること や、次期学習指導要領に合わせて、指導案の書式の評価基準をこれまでの4観点か

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3観点に変更することなどであった。

そして、前期試験が終了した8月からは、グループを統合して週4日ペースとし て、「場面指導」を10回程度、練習した。このなかには、一次試験の結果を受けて、

自治体から事前にテーマが与えられるものもあり、これらを問題にした回も加えた。

学生同士の連帯感が強く、自分の自治体にはない問題形式や、関係の薄いテーマで も積極的に参加してくれる者がほとんどであった。

7月下旬からは各自治体から一次試験の結果が通知され、二次試験の日程が見え てきたことから、さらに週1日、本番の面接試験を模した練習を4回実施した。こ れには特任教員だけでなく、試験官として副学長や教職課程センター長、副センタ ー長、教員と教育行政に経験のある教務課の係長などの協力を得た。本番面接指導 に向けては、事前に「面接票」の作成指導も行った。

二次試験の日程は、自治体によって時期が異なるため、長期にわたる指導となっ た。その間、学生には新『学習指導要領解説編』や中央教育審議会などの答申はも とより、受験する自治体の「教育振興基本計画」や「教育ビジョン」、「教員に求め られる資質能力」や「人材育成指針」などのポイントを押さえるように指導した。

が、これらを鵜呑みにするのではなく、常に批判的な視点を持って、自分の頭で考 えることを求めてきた。

以上の指導は、卑近な言い方をすれば「受験対策」ではあるが、受験のテクニッ クを学ぶことではなく、採用後に教員を続けることができる「核」になるものを見 つけ出す過程であると考えている。

このほか、直接、教員採用試験を受験する学生だけではなく、教員を目指すべき かどうかを悩んでいる学生や、私学の教員を目指す学生、これから教職課程を履修 する学生など、様々な学生や院生が日常的に相談に来室するので、その対応も行っ た。

(4)各種ガイダンス・教育実習等事前事後指導・教職実践演習の取組

1年生から3年生を対象とする4月の教職履修ガイダンスでは、開設された教職 課程センターの紹介を行った。また、7月には教職課程センターの利用ガイダンス を実施した。さらに、昨年度までキャリア支援課が開催していた「教員ガイダンス」

を、教職課程センターが主催した。今回の教員ガイダンスには、採用側の教育委員 会人事部と私学協会の方の他、久しぶりに卒業生の若手教員の方に話をしていただ くことができた。

また、教育実習予備申請及び本申請に関わる事前・事後指導(合同指導)などに、

教育学教室のスタッフと共に教職課程センターの特任教員も講座を担当した。

教育実習を終えた学生が、教職課程の総仕上げとして4年生の後期に履修する科 目が「教職実践演習」である。今年度は、教職課程センターの特任教員がこの教職

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実践演習のなかの「学外実習」と、教職経験者科目を担当した。

学外実習は、「文系」と「理系」とで時間数や実習先が異なっており、これまで

「理系」の教授が担っていた2講座(生物・化学と数学・物理)を、教職課程セン ターの特任教員が実習先との調整を担当し、当日の引率指導を「理系」の教授とと もに行った。

また、教職経験者科目は、主として「主体的・対話的で深い学び」の視点に立っ た授業づくりについて演習した。

(5)学校インターンシップの取組

今年度から新たに開始した事業に「学校インターンシップ」がある。これは、文 部科学省が、より実践的な指導力をもった教員を育成する観点から推奨する事業の ひとつであり、現状では各大学が独自科目として設置することになっているが、将 来的には教育実習との合体も視野に入れているものである。本学では、1学年の後 期から履修可能な科目として設置し、八王子市教育委員会と協定を結び、希望する 学生を近隣の中学校に学校体験として派遣することとした。体験時間20時間まで 1単位、体験時間40時間を2単位とする2科目を設置した。この授業のねらい は、教職課程を履修する学生に、早い段階から実際の学校や生徒に触れ、生徒理解 を深めるとともに、教員の仕事や学校の現状を理解することにより、大学での学び をより豊かなものにすることである。

希望する学生が何人くらいあるか、希望は中学校だけでよいか、体験先の指導と 大学側の指導をどのように有機的に結び付けるか、まったく分からない所からの出 発であったため、八王子市教育委員会との協定の他、八王子市立小学校1校・都立 高校2校・私立高校1校に、受け入れの可能性を事前に打診した。どの学校も受け 入れに前向きな返事をいただいたが、実際には学生の派遣には至らなかった。

八王子市教育委員会との協定は、4 月に学長と教育長との間で取り交わされた。

もともと1年生は、必修科目が多く、時間割が厳しい状況にあり、さらに教職課程 の科目が56限目にあるため、大学の近隣の中学校への派遣が現実的であった。

初年度であり、今年度の入学生で前期に「教職入門」を修得した学生だけを対象 としたためか、履修希望者は2名だけであった。この2名に対して、事前指導を行 10月から近隣の2つの中学校に派遣した。体験活動が始まってからも、中間指 導・事後指導を行い、教職課程センターの教員が、体験中の学生の活動を見学する ために中学校を訪問した。

また、年2回行われる八王子市教育委員会との連絡会に参加し、同じく学校イン ターンシップに参加している他大学と情報交換を行った。

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3.教職課程センター1年目の成果

(1)教員採用試験の結果

本学は、課程認定としては中高の教員免許状を出せることとなっているが、他大 学で教員免許を取って本学の大学院に進学してきた者もいるので、実際には小学校 教諭の教員採用試験を受験する場合もある。また、荒川キャンパスの看護学生で養 護教諭を目指す者もいる。

それ以外は、中高の国語科・地歴公民科・数学科・理科・英語科・情報科などで ある。受験した自治体は、東京都の他、神奈川県・横浜市・川崎市、埼玉県・新潟 県・仙台市などであった。今年度の教職課程センターを利用して受験した者は、理 工学系数理科学コースの8 名を最多として、他の学系・コースは数名ずつであり、

全体で21名であった。

各自治体別に結果をまとめると以下のようになる。まず、東京都は15 名が受験 し、12名が合格した。内訳は、国語科1名・地歴科1名・数学科6名・理科3名・

養護教諭1名である。横浜市は2名が受験し、2名とも合格した。内訳は、小学校 1名・中高数学科1名である。仙台市は2名が受験し、小学校1名が合格した。川 崎市は1名が受験したが、二次試験で不合格となった。神奈川県は2名が受験し、

2名とも一次試験で不合格となった。新潟県は1名が養護教諭に合格した。埼玉県 1名が受験したが、一次試験で不合格となった。

一次試験で不合格になった学生・院生の場合、その原因は研究や授業、アルバイ トなどで忙しく、受験準備が充分でなかったことが想定される。教職教養と一般教 養、教科専門は各自の努力にかかる部分が大きく、教職課程センターでの支援にも 限界がある。二次試験で不合格になった学生のなかには、体調不良などで教職課程 センターでの指導への参加がままならなかったケースがあった。

教職課程センターができる以前は、本学での教員採用情報の集約はキャリア支援 課が行っていた。キャリア支援課は、民間企業などの就職指導が中心であり、必ず しも教員採用に絞った指導が行われていたわけではなく、教職に就いた卒業生をす べて把握しきれてはいなかった。

東京都の教員採用試験の結果について、教職課程センターができる以前(2018 採用)と今年(2020年採用)を比べてみると、既卒者を含めた受験者総数は40 前後と変わらないものの、期限付き名簿登載者を含む最終合格者数は 4 名から20 名に増加した。正規合格者の大半が教職課程センターを利用した学生・院生であっ た。また、今年の結果を詳細に分析してみると、教職課程センターを利用した者と 利用しなかった者とで大きな差が生じていることが分かる。具体的には、教職課程 センターを利用しないで合格した者は、地歴科1名・数学科1名・理科4名・英語 1名(期限付き名簿登載者 3名を含む)であるが、残りの14名は不合格になって いる。特に、一次試験を通過しているにもかかわらず、二次試験で不合格になった

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者が4名おり、この者たちが教職課程センターを利用していたら、結果は変わって いたのではないかと思う。

なお、合格後の指導として科目別に学生を引率して、都の指導教諭の授業を参観 させていただいた。これは、教員志望者が少数に留まる教職実践演習の学外実習で は得られない、高度で実践的な内容を直接学ぶことができた。授業後に、指導教諭 と質疑応答が行われ、指導教諭がどのような意図で授業をデザインしているか、研 究的な視点と教材開発の考え方から得られたものは大きかったと考える。また、研 究会へのお誘いを受けたケースもあり、非常に有意義であった。

(2)各種ガイダンス・教育実習等事前事後指導・教職実践演習の成果

まず、教職課程センターの特任教員がこれらの指導に関わることによって、教職 課程センターが教職課程を履修する学生を把握することができた。もちろん、教員 を目指す学生はその一部ではあるが、早めの段階から指導対象者を把握することが できたことは大きい。

また、教職課程全体の流れや課題を把握することができたことも成果のひとつだ と言える。もちろん、本学にはすでに教職課程カリキュラム委員会が、全学的な組 織としてあり、教職課程全体を統括していたわけであるが、実務的な学生指導のた めの組織として教職課程センターが開設され、教職課程全体を俯瞰できる意義は大 きいと考える。

さらに、これまで教育学教室のスタッフと教務課が担ってきた各種ガイダンスに、

教職課程センターの特任教員が関わることで、教育現場を視野に入れた指導が可能 になった。具体的には、教職課程を履修する学生に対して、教員としての心構えや 教員免許を取ることの意味を、学校現場の意識から語ることができる。これは、例 えば、介護等体験や教育実習をめぐっておこるトラブルや苦情に対して、受け入れ 側の立場に寄り添って考えることができるようになることでもある。また、事前指 導の段階で想定される課題を学生たちに考えさせることもできるようになった。

教職実践演習の学外実習を担当することによって、これまで「理系」の教授が中 心となって創りあげてきた内容を引き継ぎ、実習先の理解を得ながら、学科による実 習内容の違いを調整することができた。また、教職経験者科目を担当することによっ て、学外実習との関連を図ることや教職実践演習全体の構成を考える機会となった。

(3)学校インターンシップの成果

2名の受講者のうち1名は順調に体験活動を終えたが、残念ながらもう1名は途 中で辞退する結果となったことは大いに反省すべき点である。辞退にいたった学生 は、教職課程そのものの履修をやめてしまう結果となってしまったが、この授業が 早期に学校の現実に触れることを目的としている以上、このような事態も想定され

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ることではある。

残る1名については、中間で体験先を訪問し、活動の様子を把握するとともに、

中間指導を行い、本人からも活動内容の聞き取りをした。本学がこの授業で期待し たことは、多くの授業を参観し、生徒の様子を観察することによって、生徒理解を 深めることなどであったが、実際に体験先で行っていたことは、理科実験の準備と 片付けの他は、印刷や書類の整理など、教員の事務作業の補助業務がほとんどであ り、実際に生徒と触れ合う機会はごくわずかであった。

中間指導のなかで、本人には理科以外の科目の授業もできるだけ多く観ること、

生徒の見方を学ぶこと、生徒と話をして生徒理解を深めることを指導した。同時に、

体験先の副校長先生には、できるだけ多くの授業を観させていただけるように依頼 した。後半は、理科以外にも数学・英語・社会などの授業を参観することができ、

同じクラスや生徒でも教科によって生徒の動きや反応が異なることを発見したよ うである。

また、教室に入りづらい生徒などのために設置されている「心の教室」での生徒 の観察では、休み時間に友達の生徒が訪ねてくるなど、生徒の多様な側面を知るこ とができたようである。現実的には、個人情報や深刻で微妙な問題が多い生徒指導 については、直接ケースに触れることは難しいが、担当の職員との会話から、生徒 対応の仕方や課題を感じて、生徒理解の幅を広げてくれたことと思う。

特別支援の視点についても学んでほしいと考え、1年生を中心に教室を巡回して いる支援員の方から生徒を観察する視点を教えてもらうように指導したが、実施に は機会がなかったようである。

4.教職課程センター1年目の課題 (1)教員採用試験指導の総括

教職課程センターとしては1期生の指導であり、暗中模索の日々であった。最も 意識したことは、予備校のように教員採用試験のノウハウを教えるのではなく、

様々な社会問題や教育に関わる事象を自分はどう考えるか、教員になってから「ぶ れない」自分をどうやって作るのか、自分の頭で考え研究する力をつけることであ った。そして、教職課程センターの特任教員の役割は条件整備に徹して、院生・学 生同士で学び合うことを大切にしてきた。

学生・院生が提出してくれた「受験報告書」から学生・院生の意見を紹介しよう。

教職課程センターに集まった仲間は大変志が高く、時には励まし合い、時に は自分の不甲斐なさ情けなさに何度もめげそうになりました。それでも、仲 間と先生がいるのは大きいです。そして、答えがひとつではないから面白い のだと思いました。いろいろな意見が聞けるのでとても勉強になります。た くさんの人の意見を聞きながら、自分の考えを深めていくことが大切だと思

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いました(院生)。

私立の学校の選考に落ちた時や、試験の直前には、「私は本当に教員に向いて いるのか」と気持ちが折れそうになることもありました。そのような時頑張 れた理由は様々ありますが、教職課程センターで共に頑張る仲間や先生方が いてくださったこともとても大きいです。面接の練習が終わった後も、試験 前の不安な気持ちを共有したり、教育の話や研究の話や全く関係ない雑談を したりして、とても心強かったです。心から感謝しています(院生)。

かなりの長期戦でモチベーションを保つのが大変でした。結果が出るのもか なり遅いので精神的な辛さが大きかったです。一緒に頑張る仲間を作ること が大切だと思います。やっぱり1人だと心細いし、モチベーションも保ちに くいです。でも教職課程センターの受験生と仲良くなって、何気ない会話を していられると日々の対策に楽しんで臨むことができます。また、教職課程 センターの先生方や教務課の職員さんなど頼れる人は全力で頼ったほうが いいです。不安なことや気になることを相談するととても親身になって協力 してくれます。多くの人に支えられているという感覚が最後の最後まで頑張 るための大きな力になりました(学部生)

本学の教職課程では、数理科学コースを除いて、多くの学部・学科で自分の周囲 に教員志望者はいないのがあたり前である。受験生が受験勉強をしている時期は、

周囲の学部生や院生の就職先が内定していく時期に重なり、孤立感は並大抵ではな い。しかし、教職課程センターに来れば、志を同じくする仲間がいる。情報交換が できるだけでなく、多くの意見に触れることで自分の考えが固まってくることが大 きいと考える。

面接や集団討論は特に、院生・学生が自分たちで主体的に取り組んでいた。教職 課程センターの特任教員は教材と場所を提供するだけであった。もちろん練習の成 果が採用試験の本番に活きるに越したことはない。が、むしろ自信をもつことが大 きいのではないかと思う。再び、院生・学生の意見を紹介する。

1 次試験の論文、2 次試験の集団面接と個人面接に関して、教職課程センタ ーでの練習の成果を遺憾なく発揮できた。教職課程センターの半年にも及ぶ 手厚いサポートのおかげで、自分自身の実力を飛躍的に成長させることがで きたと実感している。

1 次試験の論文に関しては、本番でも日頃の練習通りに書いた結果、合格で きた。2次試験の集団面接は直前に全テーマを練習させていただいたため、

話の引き出しを多角的に増やすことができ、本番でも積極的にアイデアを出 すことができた。個人面接に関しても、本番で聞かれた質問の多くが、練習 で聞かれた質問と重なっていたため、スムーズに回答できた(科目等履修生)。

2 次試験では、面接で聞かれるであろうことについて常にディスカッション

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をしていたため、一つの質問に対し論理的かつ多面的に考え、応答すること ができた。数十回と手厚くサポートしてくださった教職課程センターの方々、

一緒に努力してきた学生たちに心から感謝したい(院生)。

教育実習が終わってから1次試験まであっという間でした。私は文章を書く ことが苦手なので、3 月から小論文の指導をしていただき、1 次の小論文対 策にはちょうど良かったと思います。書けば書くほど慣れていき、本番は自 信をもって臨めました。

私は面接の経験があまりなかったため不安でしたが、4 月から対策をして下 さったおかげで慣れることができました。また、なぜ自分が教員になりたい のかなどについてしっかり考え直す機会にもなり、気持ちが引き締まりまし た(学部生)。

こうして読んでいくと、教職課程センターの特任教員が手厚く指導したかのよう にみえるが、実際には論作文の指導をしながら、様々な話をして、学生の考えを確 認しているに過ぎない。面接の練習は、学生同士の自主的な取組に負うところが多 かった。ともに教員を目指す仲間たちの連帯感が徐々に形成され、予想以上の効果 を発揮した。特に、学部生にとって院生や社会人経験のある科目等履修生の存在は 大きな影響を与えたようである。

それでは本学の教職課程センターは、どのような教員を育てようとしているのか、

また、そのためにどのような指導に心がけてきたか、それを端的に示す学生・院生 の声を紹介しよう。

私が抱いていた教師像と教育大学での学部時代で理想とされていた教師像 とがかけ離れていたため、自分は教師に向いていないと思っていたが、教職 課程センターの先生方、一緒に受験する学生たちと話しているうちに、画一 的ではない多様な教師観に気づくことができ、自分の考えに自信が持てるよ うになった(院生)

先生方のご指導は、正解を教えるのではなく、私たち自身に考えさせること がほとんどで、簡単ではありませんでしたが、大変力になったと思います。

一緒に教職を目指す仲間の存在もとても大きかったと思います(院生) 本学が育てたい教員像は、型にはめたような教員ではなく、創意工夫が活かされ

る多様な価値観をもった教員である。教職課程センターの特任教員は、教員採用試 験のテクニックを教える存在ではなく、ともに考える伴走者であると考えている。

20201月から教職課程センターを利用して、来年度から教員になる学生たち が自主ゼミを開いている。単元を分担して、授業の展開や教材をどのように工夫す るか、模擬授業の形式をとって検討し合っている。こうした自主的な取組こそ理想 であり、支えていきたい。また、4月以降には、教員になった人たちに呼び掛けて、

定期的に交流の場を行いたいと考えている。

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(2)各種ガイダンス・教育実習等事前事後指導・教職実践演習取組の課題

各種ガイダンスや事前事後指導などは、教育学教室のスタッフと教務課などがこ れまで行ってきたことであり、教職課程センターの特任教員として特に課題意識を 持っているわけではない。

教職実践演習の学外実習については、体験内容や受入れ先との調整など、いくつ かの課題がある。「文系」と「理系」のカリキュラムのずれや、授業担当者との連携 など、各学科に任されているところもあり、正直なところ全体がみえにくい印象を 感じている。

これまで教育学教室が主に担っていたこれらの指導を、教職課程センターの発足 に伴って、教職課程センターの特任教員も担うようになった。「文系」学科と「理 系」学科とでは、担当者の位置づけや経緯が異なる点もあり、一部には教職課程セ ンターの発足によって、すべてが移管されるという「期待」ないしは「誤解」もあ ったが、徐々に解消されてきたようである。

一方で、全学組織として教職課程センターができた以上、教職課程の実務的な学 生指導の中核として教職課程全般を把握しておく必要も感じている。特に、教職課 程を置いている各学科の意識に差があることは課題であり、結果として本学が育成 するべき教員志望の学生の具体的なイメージをつかみづらくしているのではない かと危惧している。

(3)学校インターンシップの課題

今年度の実施例は 2 2 名だけであったため、検証するにはケースが不足して いるが、垣間見えたことを課題として残しておきたい。

まず、辞退に至ってしまったケースについて考えてみたい。学校インターンシッ プの実施は後期からであったが、八王子市教育委員会との手続きの必要から、登録 5月に行わせた。しかし、1年生にとっては入学直後のことであり、新しい環境 に慣れることで精一杯の学生にとって、教職課程を履修するかどうかの判断、さら に学校インターンシップを希望するかどうかの見極めは、とても大変なことだろう と想像できる。結果的に、辞退に至った学生は、後期には教職課程そのものの履修 を取り止めており、そのきっかけが学校インターンシップでの「体験」であったと すれば、教職課程センターとして真摯に受け止めなければならないと考える。

次に、予定通り体験が完了したケースについて課題を整理しておきたい。この学 生は、出身の中学校で体験ができると聞いて希望してきた者であった。教育実習の 多くが出身校で行われることを考えれば、学校インターンシップは出身校を避ける べきという考え方もあると思う。が、実際に実施の報告を受けてみると、学校の事 情が良く分かっていることや、地域の方々とも顔見知りであることが有効であった

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と判断している。が、受け入れ側の中学校の事情を考慮すれば、中学校側の意向を 確認する必要があったかも知れない。

また、中学校側からは、何曜日の何時に来て、何時までいるのかが早めに分かっ た方が良いだろうが、学生が後期の授業の履修登録をするのは直前であるため、こ れに応えることは難しい。年度初めに後期分の授業も計画し、曜日と時間帯を決め てそこには授業を取らないと決めておけば可能ではあるが、あまり現実的ではない かも知れない。

2回行われる八王子市教育委員会との連絡会でも、他大学の担当者が指摘して いたことだが、特に中学校は学校インターンシップの受入れに慣れていない場合も あり、学生が希望している体験内容と中学校側から提示された仕事が異なることが あるようである。今回のケースでも、大学側は多くの授業を参観して、生徒理解を 深めることや学校の現状を知ることを目的としていたが、体験の時間帯が午前中で あったこともあり、実際には印刷や書類整理など職員室の教務補助をすることが多 く、ほとんど生徒と触れ合う機会がなかったとの報告を中間指導の段階で受けた。

中学校側からは、授業実践を中心とする教育実習とは異なり、教員の様々な仕事 を体験してほしいという意図があったようである。教職課程センターの反省として は、事前に体験先の中学校に対して、本学が学校インターンシップで体験させたい ことの説明が不充分であったことがあげられる。

5.おわりに

中央教育審議会は、「今後の教員養成・免許制度の在り方について」の答申において 教員養成の課題として「実践的指導力の育成」を求めている2。教職課程をもつ大学の 多くが、退職教員など「実務家教員」を指導者に迎え、「実践的な指導力」を培う仕組 みをつくってきた。しかし、「実務家教員」の一部には、自分の経験を絶対視して、自 分が正しいと考える教員の在り方を教えようとする者もいる。こうした指導は、教員を 型にはめることになり、即戦力として有効かもしれないが、子どもが置かれている現実 や状況の変化に、柔軟かつ多様性をもって対応することに弱い面があるのではないだろ うか。これは、教育現場にありがちな一律の指導を求める風潮や、「スタンダード」化 の傾向とも相俟って、多様な教育観を否定する危険性をはらんでいないだろうか。

そもそも教師教育学は優れて専門性の高い分野であり、決して「経験」で教員が養成 できるわけではない。教職課程センターの特任教員として、この点を肝に銘じて学生を 指導していきたい。

なお本稿は、教職課程センターのすべての教職員の取組をまとめたものであり、事 前に関係の方々にはお目通ししていただいた。しかし、最終的には、特任教員の一人 である竹浪個人の責任で執筆したものであることを、お断りしておきたい。

2 中央教育審議会答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」20067

参照

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