は じ め に
──本稿の課題 本稿は中国における経済成長方式の転換の議論を紹介検討するとともに︑輸出入構造の分析を通じて中国ICT産 ﹀1︿業の競争力の分析を行うこと︑また︑中国ICT産業・企業の競争力の諸側面に関する諸論点についての紹介を行うことを課題とする︒
一 中 国 経 済 成 長 方 式 を 巡 る 議 論
㈠ 国 際 的 議 論
一九九三年に出版された世界銀行の
『
東アジアの奇跡』
﹇W orld B an k 1993
﹈は東アジアが高い成長率と良好な分配関係の同時達成をしたことを一つの奇跡として高く評価した︒中国はこの本の直接的な分析対象ではなかったが︑二〇〇〇年に出版された『
東アジアの奇跡再考』
﹇Sti glit z an d Y usu f 2001
﹈では中国経済発展の制度要因が分析されている︒しかし︑知られているように︑これに対してP・クルーグマンは︵中国を含む︶東アジアの経済発展はTFP︵全要素生産性︶の上昇を伴っておらず︑かつてのソ連と同じ要素の大量動員の結果に過ぎず︑早晩行き詰まるとの批判を行い︑国際的な大論争が展開された︒一九九七年の東アジア経済危機は東アジア経済に対する見方を変えた︒世界銀行から出されたユースフ・イバネット
『
東アジアの競争中 国 の 経 済 成 長 方 式 の 転 換 と I C T 産 業 の 競 争 力 中 川 涼 司
●●●●● 論 説 ││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││中国の産業競争力
力
』
二〇〇二年﹇Yu suf an d E ven ett 2002
﹈およびユースフ『
革新的な東アジア』
二〇〇三年﹇Yu suf 2003
﹈は東アジアは模倣︵im ita tiv e
︶段階から革新︵inn ova tiv e
︶段階へと移行しなければならないと主張し︑事実上︑『
東アジアの奇跡』
からの視点転換を行った︒中国の東アジア経済危機における打撃は大きいものではなかったが︑世界銀行その他の中国に対する見方も同様な傾向が強く見られるようになってきた︒一九九七年の『
二〇二〇年の中国』
は改革開放から一九九七年までの中国においてTFPの上昇が見られるが︑それは低生産性部門から高生産性部門へと要素が大量に移行したということの結果であり︑今後はそのようなことは見込めず︑生産性の向上が必要であるとした︒㈡ 中 国 国 内 に お け る 経 済 成 長 方 式 転 換 を 巡 る 議 論
中国国内ではすでに︑第九次五カ年計画︵一九九六〜二〇〇〇年︶において
「
粗放型から集約型への経済成長方式の転換」
が謳われていた︒第一〇次五カ年計画︵二〇〇一〜二〇〇五年︶の原案を策定する中国共産党第一五期五中全会︵二〇〇〇年︶の第一〇次五カ年計画の報告において江沢民総書記︵当時︶は同様に経済成長方式の転換を提起したが︑当時は後発優位と段階超越的発展が強調されていた︒それらは二〇〇二年の中国共産党第一六回大会における「
新型工業化路線」
︵中国語「
新型工業化道路」
︶へ結 実した︒新型工業化路線は︑従来の粗放的で非効率かつ外部不経済の大きい経済構造を︑集約的で効率的かつ外部不経済の小さい経済構造へと転換を図るというものであり︑情報化は工業発展を牽引するものとの位置づけが与えられた︒また︑発展の遅れている第三次産業を発展させ︑エネルギー効率がよく︑環境負荷が小さく︑人的資源の優位を生かす産業発展が求められた︒これは翌年の中国共産党第一六期三中全会においてさらに具体化が図られている︒しかし︑第一〇次五カ年計画以降の現実の中国の経済発展は新型工業化路線が想定したようには進まなかった︒重化学工業や不動産開発を中心とした大規模投資が経済を牽引したが︑生産性の上昇にはつながらず︑エネルギー不足や環境破壊はいっそう激しくなった︒二〇〇五年に論議が進められた第一一次五カ年計画︵二〇〇六〜二〇一〇年︶では︑改めて経済成長方式の転換が提起され︑そのために自主的な創造革新能力が必要で︑また教育の強化と人材育成が必要であることが強調された︒第一一次五カ年計画の期間において︑中国は二〇〇八年の世界金融危機の影響を受け︑輸出を大幅に減退させるという試練を経たが︑「
四兆元」
と称される景気浮揚策によって経済成長率からみればV字回復を遂げた︒そして︑二〇一〇年に名目GDPでほぼ日本と並び︑二〇一一年にはGDP世界第二位の経済大国となった︒しかし︑二〇一一年に策定された第一二次五カ年計画のキーワードはまたしても
「
経済成長方式の転換」
であった︒ただし︑第一一次五カ年計画が生産サイドのイノベーションに力点が置かれていたのに対し︑第一二次五カ年計画では︑消費︑投資︑輸出のいずれもが牽引役を果たす方式での成長が掲げられ︑過剰投資の抑制︑輸出入バランス︑消費拡大による内需拡大といったバランス重視が特徴となっている︒ただし︑同時に︑第二のポイントとして︑産業を特定したターゲティング・ポリシーが掲げられ︑①省エネ・環境保護︑②新世代情報技術︑③バイオ︑④最先端の製造業︑⑤新エネルギー︑⑥新素材︑⑦新エネルギー自動車の七業種が「
戦略的新興産業」
と位置付けられた︒サービス業のGDPに占める割合を五年間で四%ポイント拡大させる目標も掲げられた︒第三のポイントとしては都市化の推進による地域振興が掲げられた︒ 二〇一二年五月三〇日に胡錦濤総書記︵当時︶は中国共産党政治局の集団学習会の際に︑中国は農業大国から工業大国への転換は達成したが︑高投入・高消耗に依拠し︑粗放的で構造的に不合理で︑他国の核心技術の制約をうけ︑資源環境的制約が強く︑地域的不均衡な工業発展のあり方から脱しておらず︑「
工業大国」
から「
工業強国」
へ転換する努力が必要であると述べた︒ 中国政府のブレーン機関である中国社会科学院はこの「
工業大国」
から「
工業強国」
への転換の方針に沿い︑重点工業の近代化の到達点を客観的に評価し︑工業強国化の取り組みを支援する試みをしている︒すでに中川﹇2
﹀2︿
009a
﹈で紹介したように︑二〇〇九年の中国社会科学院の陳佳貴と黄群慧による『
工業化藍皮書』
︵『
工業化白書』
︶は二〇〇六年に発表になった第一回経済普査︵経済センサス︑二〇〇四年データ︶等をもとに︑体系的にデータを取り︑中国工業現代化の到達点と課題を整理したものである︒そのような評価の結果︑ハイテク部門ではなく︑むしろ中ローテク部門である船舶製造業︑鉄鋼業の現代化水準が高く︑続いてエネルギー部門の電力︑石油︑ローテク部門の繊維と続いて︑やっとハイテク部門のうちのコンピュータが入り︑通信機器と医薬に関してはさらにローテクの製紙や食品にも及ばない︑ということが明らかにされた︒ 日本の中国経済学者の中でも中国が「
経済大国」
から「
経済強国」
への転換が図られているという見方も出されている︒その代表的なものとしては︑佐々木信彰編『
構造転換期の中国経済』
﹇佐々木2010
﹈がある︒そこでは二〇〇八年九月のリーマン・ショックが構造転換の起点として捉えられ︑そこから「
経済大国」
から「
経済強国」
への転換が図られたとされ︑その趣旨に沿って︑農業と農産物貿易︑繊維産業︑家電・IT産業︑自動車産業︑商業・流通︑金融︵銀行︑証券︑保険︶︑住宅・不動産︑環境産業が分析されている︒とくに本稿に関連する第三章
「
家電・IT産業」
﹇貴田2010
﹈では︑典型的な製品のデータと事象を根拠に︑家電・IT産業にとって消費市場大国︑生産大国︑輸出大国としての発展が進んでいることが示されている︒ 中国のICT産業はこのように経済成長方式の転換および「
経済強国」
化の路線の中で高い位置づけを与えられてきた︒実際︑中川﹇2007
﹈や上記の貴田﹇2010
﹈において明らかにされたように︑中国経済に占めるポジションを高めてきた︒しかし︑上記の中国社会科学院の報告書でも明らかにされたように︑コンピュータ産業や通信機器産業の一人当たり付加価値および技術水準は世界水準に遠く及ばず︑総合指標としてローテクの製紙や食品にも及ばない︒貴田﹇2010
﹈も①環境保護と省エネ︑②自主技術開発力の向上と中国独自規格︑③重要技術の産業化︵基幹部品の国産化︶︑④国産ブランドの強化が課題であるとしている︒これは中川﹇2007
﹈が明らかにしたように︑中国のICT産業が︑国際分業と多国籍ICT企業の中国投資に基づくキャッチアップ型モデル︵ガーシェンクロン型モデル︶から抜け出せず︑イノベーション型モデル︵シュムペーター型モデル︶に移行できない︵あるいは︑しない︶ことの反映である︒ ではこのような中で中国ICT産業の競争力はどのように評価されるべきなのか? 本稿で検討する点は︑第一に国際競争力を見る上でのポイントとなる輸出入額および貿易特化係数︵︵輸出う︒ 器と電子デバイス・電子部品を総合的に考察することで補 る︒③は国内生産と販売のデータを一部補う︒④は電子機 子機器・部品全体︶に占める比率の変化を追うことで補え しまう︒①②は絶対額の変化および財貿易全体︵ないし電 あった場合に低く︑違う産業分類であれば高く係数が出て の高く︑かつ輸入依存度が高い投入財が︑同じ産業分類で いため係数に反映されない︑④キーパーツなど原価構成比 内生産・国内消費が行われている場合︑輸出入に関係しな 比率で変化すると係数の変化としてとらえられない︑③国 る︒①輸出入の規模を反映しない︑②輸出入が同方向に同 指標である︒ただし︑貿易特化係数は︑以下の欠点があ 性もあり︑産業の国際競争力を評価する際に広く使われる 年までデータを延長した︒貿易特化係数はその計算の簡便 輸出入に関してのみ︑基本的な方法を変えずに︑二〇一一 出入の構造
」
︵データとしては二〇〇五年まで︶のうち︑2006
﹇﹈の第五章「
中国IT産業の労働︑資本︑技術︑輸 /︵輸出+輸入︶︶の評価である︒評価の方法としては中川 −輸入︶ 第二に︑中国のICT産業の競争力評価にとって必要な他の諸論点とそれに関する研究を簡単に紹介することである︒二 中 国 電 子 機 器 ・ 部 品 産 業 の 輸 出 入 構 造
(一九九二~二〇一一年)か ら 見 る 中 国 I C T 産 業 の 競 争 力
㈠ デ ー タ の 確 認
データのとり方次第でかなり異なった計算結果が出てくるので︑まずはデータについて確認しておく︒ まず︑ICT企業のうちの製造業である電子機器・部品産業の範囲であるが︑中国の公式的な産業分類である「
国民経済行業分類」
︵G B/T 4754 -2002
︶ ﹀3︿の大分類
IS IC /R ev. 3
国連の国際標準産業分類第三版︵︶ 4﹀ 基本とする︒この産業分類は一九九〇年にリリースされた 器︑コンピュータおよびその他電子機器製造業」
の範囲を40 「
通信機︿に基づいて作成された︒二〇〇八年八月に国連の国際標準産業分類第四版︵
IS IC /R ev. 4
︶がリリースされ︑それに合わせて︑中国でも二〇一一年四月二九日に新しい「
国民経済行業分類」
︵G B/T 4754 -2011
︶ ﹀5︿が発表され︑同年一一月一日から実施された︒ただし︑新たな
「
国民経済行業分類」
︵G B/ T 4754 -2011
︶によって電子機器・部品産業の大分類の番号が一番繰り上がりく︑また︑この分類に基づく産業統計の作成はこれからと の変化があったものの︑大分類としてのくくりは変化な
39
となったほかは︑中分類︑小分類等U N C
国連の 6﹀H S92
連続性を担保するためにを使った︒データソースは するためにHSによった︒HSの各版のうちでは歴史的な2007 『
中国海関統計』
を使った中川﹇﹈との連続性を担保 SITCでもよかったが︑より詳しい分析を行うために 七桁目以降は各国独自となっている︒本稿だけを考えれば り︑また︑HSは六桁までは国際的に統一されているが︑ 基本データである『
中国海関統計』
はHSに準拠してお れるが︑さらにそれぞれ多くの版がある︒中国の輸出入の テムに関する国際条約︵HS条約︶」
に基づくHSに分か ︵SITC︶と「
商品の名称及び分類についての統一シス く言えば︑国連の分類である標準国際貿易分類 ない︒また︑貿易データであるが︑世界の貿易統計は大き かなり広く︑また︑詳細も不明で︑本稿の範囲とは一致し のデータは「
国民経済行業分類」
による区分とは一致せず 息化部︵工業情報省︶が速報で発表する「
電子情報産業」
なるため︑本稿にこの変化は反映させていない︒工業・信︿
om tra de
である︒U N C om tra de
は︑国際的に統一された六桁目までのデータとなり︑『中国海関統計』
と同レベルのデータはとれない︒中川﹇2007
﹈では四桁分類による分析を基本とし︑84 71
のコンピュータについては別途八桁分類までデータをとったが︑本稿では四桁分類を基本とし︑84 71
も六桁で見る︒ HSと中国の「
国民経済行業分類」
とは対応していない︒表1 本稿での
GB/T4754-2002
とHS92
との対応関係GB/T4754-2002 HS92
通信機器 401, 403 8517と8525と8527と8529
レーダー 402 8526
コンピュータおよび周辺機器 404 8471
電子デバイス 405 8540と8541と8542 電子部品 406 8532と8533と8534
家庭用オーディオビジュアル機器 407 8518と8519と8520と8521と8522と8528 出所:中川[2007: 136]。
そこで︑中川﹇
2007
﹈は完全な一致はできないものの︑以下の分類を行った︒本稿もこれを踏襲する︒ これらの合計値はSIT C /R ev. 2
の第七五章「
事務機器および自動データ処理設備」
︑第七六章「
電気通信・音声記録・放送装置設備」
の合計値とほぼ近くなる︒ ICT産業のうちの電気通信サービス︑情報処理サービス︑ネットビジネスなどはサービス業に分類され︑産業分類も貿易分類も全く異なる︒中川﹇2007
﹈では別途考察を行っているが︑紙幅から第二節の輸出入の分析から は除外し︑第三節で触れるにとどめる︒㈡ 各 指 標 か ら 見 る 考 察
⑴ 輸出額 図
1
は財輸出総額と電子機器・部品の輸出合計の推移である︒どちらも︑大きな伸びを示しているが︑興味深いのは︑一九九二〜二〇〇四年と二〇〇五年以降との差異である︒一九九二年に電子機器・部品の輸出は財輸出総額の五・六九%を占めるに過ぎなかったが︑その後︑中国の輸出拡大を先導し︑二〇〇六年には二六・四三%を占めるに至った︒しかし︑その後は比率としては一進一退状態で︑二〇一一年には二四・〇二%に下げている︒これはなぜだろうか︒二〇〇一年末に中国はWTOに加盟し︑それは輸出拡大のための貿易障壁を減らしただけでなく︑いったんは停滞していた受入直接投資額の急増を招いた︒中国の財輸出の過半は外資系企業によるものであり︑直接投資受入の拡大は輸出拡大にもつながる︒その意味でWTO加盟は二重の意味で中国の輸出拡大を促した︒その結果︑中国の輸出は急拡大し︑ついに二〇〇九年には世界最大の輸出国となった︒電子機器・部品の輸出はその中で同じように急拡大しているのであるが︑財輸出総額の伸びがあまりに急であるため︑比率としては一進一退状態となったのである︒電子機器・部品産業は他産業と比べて生産および輸出
,, ,, ,, ,, ,, ,, , , , ,
(100万ドル) (%)
財輸出合計
電子機器・部品 輸出合計 比率
図1 財輸出合計と電子機器・部品輸出合計の推移 出所:UN Comtradeデータをもとに筆者作成。
に占める外資の比率が高く︑それゆえ︑輸出拡大で先行したが︑WTO加盟後は他産業がその状況に追いついてきた︑ということもできる︒⑵ 貿易収支 輸出でみた様相は貿易収支でみると一変する︵図
2
︶︒のちに詳細にみるように︑電子機器・部品は輸出も拡大させていたがとくに電子デバイス等が自給できないために︑輸入も拡大し︑二〇〇二年ごろまでは︑収支としては黒字・赤字の境目あたりを上下していた︒しかし︑中国のWTO加盟以降︑その様相は変化し︑輸出を拡大させただけでなく︑黒字幅を拡大した︒これは︑輸出が拡大しただけでなく︑中国国内企業および外資系企業の現地子会社が輸入依存度の高かった電子デバイス等の中国国内生産を拡大したこと等による︒電子機器・部品産業の黒字額が財貿易全体の黒字額に占める比率は二〇〇四年にいったん八二・七一%に達した後は︑財貿易全体の大きな黒字の伸びの中で比率としてはいったん急降下する︒しかし︑二〇〇八年の世界金融危機の影響で︑中国の財輸出総額が激減し︑その後輸出額としては回復するものの黒字額としては縮小した︒それに対し︑世界のモバイル化の波とその生産拠点としての確立の中で電子機器・部品は堅調に推移し︑黒字額も拡大させてきたため︑二〇一一年には上記比率はついに九九・三二%に達した︒つまり︑財貿易全体の黒字とほぼ, , , , , , ,
−,
(100万ドル) (%)
−
−
− 財貿易黒字
電子機器・部品 貿易黒字 比率
図2 財貿易黒字と電子機器・部品貿易黒字の推移 出所:UN Comtradeデータをもとに筆者作成。
同じ額を電子機器・部品産業が黒字として稼ぎだしているということである︒⑶ 品目︵種︶別に見た輸出構造 電子機器・部品輸出を品目︵種︶別に見てみよう︒ まず通信機器であるが︑一九九二年段階では四九・〇九%と五〇%近い比率を持っていたものが︑いったんは低下し︑二〇〇三年以降拡大をしている︒なぜこのような動きになったのかはさらに︑品目別にみる必要がある︒実は一九九二年段階において︑中国の通信機器輸出の多くを支えていたのは︑
85 27
分類の無線受信器つまりラジオ等である︒それが徐々に低下をしたのは︑ラジオ自身の需要の低下とさらなる途上国への移転があったからである︒これを補ってあまりあったのが85 25
分類︑とくに携帯電話端末を中心とする85 25 20
分類である︒85 25 20
分類は︑二〇〇〇年以降輸出が急増し︑二〇一一年にはその小分類のみで電子機器・部品輸出全体の一三・八六%を占めるまでに至った︵図4
︶︒これはモトローラ等が世界への製造・輸出拠点としただけでなく︑さらに台湾の大手EMS企業ホンハイ︵中国の子会社フォックスコン︶によってiP ho ne
の生産拠点となるなど︑世界に向けた携帯端末製造・輸出拠点としての位置を不動のものにしたことによる︒ ついで目を引くのが︑コンピュータおよび周辺機器の急速な拡大である︒しかもその構成にも注意を向けておく必(%)
通信機器合計 レーダー
コンピュータおよび周辺機器 電子デバイス合計 電子部品合計 家庭用音響映像機器合計
図3 電子機器・部品輸出の品目種別構成比 出所:UN Comtradeデータをもとに筆者作成。
(100万ドル) (%)
, , , , ,
,
,
携帯端末等輸出 に占める比率 通信機器合計に 占める比率 電子機器・部品輸出 合計部品に占める比率
図4 携帯電話端末等(
852820
)の輸出額推移と各比率 出所:UN Comtradeデータをもとに筆者作成。要がある︒一九九二年段階では中国のコンピュータおよび周辺機器の輸出の大半はキーボード︑マウスなどのより技術集約性の低いものであった︒それが二〇〇三年以降︑コンピュータ本体の比率が高まっていく︒ただし︑コンピュータといっても汎用のメインフレーム等は多くは輸入に頼っており︑輸出されているのはもっぱらPCである︒残念ながら︑
C om tra de
のH S92
では六桁分類までしかとることができず︑『
中国海関統計』
によってでしかコンピュータのなかの大型︑中型︑小型のデータが取れないので中川﹇2007
﹈などを参照してもらいたい︒すでに中川﹇2007
﹈で明らかにしているように︑中国のコンピュータ生産にかかわる産業政策は一九八五年の第八次五カ年計画︵一九九一〜九五年︶により︑メインフレーム等は輸入に頼りその利用を中心に進め︑生産はPCにシフトしていくこととされた︒これをアジアICT産業研究者として知られるカリフォルニア大学のクレーマーとデトリックは「
ナショナリズムからプラグマティズムへの転換」
と称し ﹀7︿た︒その後︑国内のPC生産は徐々に拡大していった︒しかし︑輸出の拡大は台湾のEMS大手︵クアンタ︑コンパル︑インベンテック︑ウィストロンなど︶が二〇〇〇年頃から中国生産を拡大したことの要因の方が大きい︒台湾企業のPC生産の世界シェアは台湾MIC︵財団法人資訊工業策進会︶等各種統計によっても九〇%を超える︒しか し︑台湾企業によるPC生産のほとんどは中国でなされている︒PCの生産地別にみたシェアでは中国のシェアは九〇%を超える︵電子情報技術産業協会JEITA等の推計によると二〇〇九年は九七・六%︶︒これは世界のPC生産をブランドではなく生産者と生産地で見た場合︑そのほとんどを台湾企業が中国で生産していることを意味する︒ それらに対し︑かつて電子機器・部品輸出の三〇・六四%を占めた家庭用のマイク︑テープ・レコーダ︑ビデオ︑テレビなどの家庭用音響映像機器は徐々に比率を低め︑二〇一一年には九・八八%と一〇%を切るまでになった︒絶対額が縮小しているわけではなく︑相対的ポジションを下げているに過ぎないが︑家電輸出のイメージが強い中国が︑意外にも家電の比重を下げているということが重要である︵もっともここで家電といっているのは音響映像系のみ︶︒ラジオもAV家電に入れてしまえば︑中国電子機器・部品輸出は家電からIT機器︵といっても多くは端末機器︶・部品へのシフトが起こっているといえる︒その背後にあるのは︑中国のWTO加盟や台湾企業の中国生産シフトなどである︒⑷ 品目︵種︶別に見た輸入構造 図
5
を一見して明らかなのは︑通信機器と家庭用音響映像機器の相対的比率の低下と電子デバイスの著しい比率上昇である︒ただし︑これらは相対的な比率であり︑通信機(%)
通信機器合計 レーダー
コンピュータおよび周辺機器 電子デバイス合計 電子部品合計 家庭用音響映像機器合計
図5 電子機器・部品輸入の品目種別構成比 出所:UN Comtradeデータをもとに筆者作成。
器輸入については二〇一一年は一九九二年の一八・一倍︑家庭用音響映像機器についても同じく六・〇倍の額の輸入を行っている︒それでも比重が下がるのはコンピュータおよび周辺機器が六三・四倍︑電子デバイスが一一三・一倍︵集積回路だけに絞れば一九八・七倍︶︑電子部品が四六・六倍と驚異的なスピードで輸入を拡大したからである︒⑸ 品目︵種︶別に見た貿易特化係数 ここでは品目︵種︶別に貿易特化係数について検討しよう︒ まず︑電子機器・部品の合計で見てみよう︒これも一九九二年から二〇〇一年までと二〇〇二年以降が大きく異なることがわかる︒二〇〇一年までは︑貿易特化係数はプラスマイナスの境で上下していた︒ところが︑二〇〇二年以降上昇し︑以降マイナスになることはなく︑二〇一一年には〇・二〇三まで上昇した︒貿易特化係数は他産業との相対関係は反映されないため︑輸出額および貿易黒字額のところでみた︑他産業の急速な成長による相対的停滞はここでは出てこない︒このような貿易特化係数の上昇は︑中国の経済大国から経済強国への変化にとって
「
望ましい」
︵世界的経済総体にとってはどこかの黒字はどこかの赤字であり︑一方的な経常黒字の拡大は他国の貿易赤字を生むことにもなるので︑世界経済全体にとっての意味はここでは留保する︶ことである︒電子機器・部品産業はその意味表2 電子機器・部品の品目別貿易特化係数
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
財合計 0.026 ▲0.062 0.023 0.059 0.042 0.124 0.134 0.081 0.051 0.044 0.049 0.030 0.028 0.072 0.101 0.121 0.116 0.089 0.061 0.043 電子機器・部品合計 ▲0.119 ▲0.207 ▲0.110 ▲0.019 0.087 0.115 0.051 ▲0.036 ▲0.045 ▲0.020 0.006 0.047 0.097 0.124 0.141 0.161 0.198 0.195 0.201 0.203 通信機器合計 ▲0.027 ▲0.201 ▲0.096 ▲0.058 0.128 0.199 0.038 ▲0.001 0.093 0.136 0.248 0.249 0.348 0.426 0.473 0.552 0.584 0.582 0.590 0.562 8517 有線通信機器 ▲0.495 ▲0.627 ▲0.506 ▲0.447 ▲0.023 0.101 ▲0.071 ▲0.092 ▲0.126 ▲0.199 0.118 0.254 0.368 0.486 0.529 0.432 0.499 0.459 0.468 0.407 8525 無線送信機器 ▲0.648 ▲0.739 ▲0.664 ▲0.571 ▲0.407 ▲0.280 ▲0.521 ▲0.341 0.238 0.470 0.304 0.317 0.698 0.802 0.798 0.807 0.813 0.815 0.825 0.809 8527 無線受信機器 0.844 0.778 0.848 0.869 0.906 0.969 0.966 0.961 0.967 0.955 0.971 0.947 0.938 0.917 0.761 0.855 0.892 0.889 0.870 0.896 8529 無線通信用部分品 ▲0.333 ▲0.322 ▲0.286 ▲0.235 ▲0.166 ▲0.212 ▲0.204 ▲0.268 ▲0.211 ▲0.069 0.029 0.027 ▲0.017 0.046 0.122 0.148 0.188 0.211 0.260 0.231
8526 レーダー ▲0.293 ▲0.203 ▲0.179 ▲0.281 0.127 ▲0.000 0.021 ▲0.050 ▲0.421 ▲0.034 ▲0.278 ▲0.150 ▲0.369 0.430 0.593 0.657 0.565 0.456 0.484 0.460
8471 コンピュータおよび周辺機器 ▲0.218 ▲0.110 0.086 0.373 0.586 0.651 0.590 0.418 0.418 0.449 0.499 0.565 0.611 0.618 0.647 0.682 0.672 0.662 0.687 0.687 847110アナログないしハイブリッド式 ▲0.568 ▲0.970 ▲0.904 ▲0.977 ▲0.930 ▲0.905 ▲0.968 ▲0.951 ▲0.985 ▲0.962 ▲0.958 ▲0.876 ▲0.910 ▲0.849 ▲0.464 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a.
847120コンピュータ ▲0.848 ▲0.826 ▲0.775 ▲0.400 ▲0.279 0.064 ▲0.171 ▲0.530 0.164 0.263 0.685 0.870 0.902 0.936 0.958 0.976 0.979 0.982 0.983 0.981
847191コンピュータ部分装置 ▲0.760 ▲0.665 ▲0.162 0.312 0.082 0.009 ▲0.510 ▲0.534 ▲0.338 0.079 0.150 0.295 0.315 0.485 0.552 0.729 0.744 0.752 0.786 0.765
847192入出力装置 0.352 0.498 0.604 0.712 0.848 0.837 0.801 0.746 0.740 0.721 0.729 0.799 0.828 0.838 0.850 0.837 0.817 0.766 0.749 0.727
847193記憶装置 ▲0.290 ▲0.177 0.483 0.703 0.721 0.779 0.749 0.431 0.191 0.270 0.144 ▲0.039 ▲0.053 ▲0.108 ▲0.055 ▲0.124 ▲0.195 ▲0.221 ▲0.220 ▲0.167
847199上記以外自動データ処理装置 ▲0.891 ▲0.524 ▲0.259 ▲0.484 0.264 0.454 0.461 0.705 0.725 0.635 0.542 0.481 0.495 0.494 0.526 0.391 0.490 0.480 0.576 0.571 電子デバイス合計 ▲0.696 ▲0.711 ▲0.652 ▲0.499 ▲0.521 ▲0.525 ▲0.555 ▲0.566 ▲0.596 ▲0.654 ▲0.657 ▲0.669 ▲0.643 ▲0.647 ▲0.613 ▲0.606 ▲0.546 ▲0.545 ▲0.484 ▲0.476 8540 電子管 ▲0.734 ▲0.685 ▲0.673 ▲0.444 ▲0.428 ▲0.544 ▲0.571 ▲0.704 ▲0.627 ▲0.513 ▲0.441 ▲0.384 ▲0.271 ▲0.089 0.037 0.168 0.264 0.251 0.207 0.216 8541 ディスクリート ▲0.274 ▲0.318 ▲0.235 ▲0.112 ▲0.329 ▲0.370 ▲0.395 ▲0.372 ▲0.397 ▲0.461 ▲0.525 ▲0.516 ▲0.500 ▲0.452 ▲0.364 ▲0.221 0.008 ▲0.004 0.178 0.185 8542 集積回路 ▲0.842 ▲0.879 ▲0.824 ▲0.690 ▲0.642 ▲0.593 ▲0.618 ▲0.588 ▲0.649 ▲0.732 ▲0.719 ▲0.728 ▲0.692 ▲0.698 ▲0.665 ▲0.680 ▲0.674 ▲0.665 ▲0.678 ▲0.671 電子部品合計 ▲0.227 ▲0.208 ▲0.027 0.018 ▲0.129 ▲0.121 ▲0.132 ▲0.154 ▲0.215 ▲0.261 ▲0.312 ▲0.342 ▲0.287 ▲0.248 ▲0.214 ▲0.205 ▲0.174 ▲0.188 ▲0.176 ▲0.172 8532 コンデンサ ▲0.271 ▲0.285 ▲0.027 ▲0.075 ▲0.284 ▲0.305 ▲0.319 ▲0.270 ▲0.349 ▲0.422 ▲0.476 ▲0.505 ▲0.492 ▲0.491 ▲0.495 ▲0.520 ▲0.480 ▲0.468 ▲0.443 ▲0.400 8533 抵抗 ▲0.339 ▲0.336 ▲0.077 0.161 ▲0.315 ▲0.368 ▲0.365 ▲0.308 ▲0.413 ▲0.414 ▲0.427 ▲0.433 ▲0.437 ▲0.407 ▲0.376 ▲0.208 ▲0.225 ▲0.289 ▲0.254 ▲0.253 8534 プリント基板 ▲0.138 ▲0.091 ▲0.000 0.021 0.069 0.125 0.048 ▲0.027 ▲0.057 ▲0.120 ▲0.158 ▲0.210 ▲0.141 ▲0.104 ▲0.064 ▲0.061 ▲0.036 ▲0.047 ▲0.038 ▲0.054 家庭用音響映像機器合計 0.275 0.157 0.185 0.275 0.371 0.388 0.454 0.468 0.488 0.576 0.611 0.629 0.686 0.711 0.721 0.774 0.770 0.780 0.798 0.798
8518 拡声器 0.183 0.188 0.411 0.457 0.518 0.569 0.607 0.584 0.537 0.556 0.582 0.558 0.532 0.509 0.514 0.544 0.562 0.549 0.593 0.603
8519 音声再生機 0.938 0.834 0.864 0.912 0.889 0.971 0.992 0.982 0.976 0.973 0.952 0.917 0.970 0.946 0.954 0.915 0.897 0.926 0.917 0.908
8520 録音機 0.878 0.871 0.927 0.932 0.974 0.975 0.983 0.956 0.953 0.953 0.938 0.923 0.918 0.958 0.731 0.877 0.978 0.989 0.983 0.870
8521 録画機(再生・記録) ▲0.812 ▲0.794 ▲0.380 0.048 0.723 0.887 0.920 0.894 0.925 0.939 0.942 0.846 0.832 0.811 0.755 0.974 0.968 0.964 0.952 0.958 8522 音響映像機器部分品・付属品 ▲0.269 ▲0.268 ▲0.174 ▲0.121 ▲0.064 ▲0.027 0.030 0.060 0.027 0.095 0.128 0.116 0.166 0.165 0.154 0.282 0.223 0.178 0.243 0.277 8528 テレビ受像機 0.850 0.618 0.365 0.413 0.526 0.586 0.678 0.696 0.912 0.951 0.970 0.952 0.947 0.971 0.972 0.961 0.966 0.973 0.983 0.976
で二〇〇三年以降︑この経済強国化の先導役に立ったという評価もできよう︒ 品目︵種︶別に見ていこう︒通信機器は︵とくに二〇〇二年以降︶劇的な上昇を遂げている︒通信機器その中でもとくに携帯電話などの無線通信機器が単に量的な拡大を遂げただけでなく貿易特化係数を急上昇させるという質的な意味での大転換を遂げたことがわかる︒ただし︑留保する必要があるのは︑中国の携帯電話の生産および輸出の拡大は︑そのキーデバイスであるベースバンドチップやCPUなどおよびモバイル化に必要な超小型電子部品などの輸入拡大を招いていることである︒したがって︑通信機器だけの貿易特化係数をとって通信機器の競争力強化と単純に結論づけることはできない︒
表2 電子機器・部品の品目別貿易特化係数
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
財合計 0.026 ▲0.062 0.023 0.059 0.042 0.124 0.134 0.081 0.051 0.044 0.049 0.030 0.028 0.072 0.101 0.121 0.116 0.089 0.061 0.043 電子機器・部品合計 ▲0.119 ▲0.207 ▲0.110 ▲0.019 0.087 0.115 0.051 ▲0.036 ▲0.045 ▲0.020 0.006 0.047 0.097 0.124 0.141 0.161 0.198 0.195 0.201 0.203 通信機器合計 ▲0.027 ▲0.201 ▲0.096 ▲0.058 0.128 0.199 0.038 ▲0.001 0.093 0.136 0.248 0.249 0.348 0.426 0.473 0.552 0.584 0.582 0.590 0.562 8517 有線通信機器 ▲0.495 ▲0.627 ▲0.506 ▲0.447 ▲0.023 0.101 ▲0.071 ▲0.092 ▲0.126 ▲0.199 0.118 0.254 0.368 0.486 0.529 0.432 0.499 0.459 0.468 0.407 8525 無線送信機器 ▲0.648 ▲0.739 ▲0.664 ▲0.571 ▲0.407 ▲0.280 ▲0.521 ▲0.341 0.238 0.470 0.304 0.317 0.698 0.802 0.798 0.807 0.813 0.815 0.825 0.809 8527 無線受信機器 0.844 0.778 0.848 0.869 0.906 0.969 0.966 0.961 0.967 0.955 0.971 0.947 0.938 0.917 0.761 0.855 0.892 0.889 0.870 0.896 8529 無線通信用部分品 ▲0.333 ▲0.322 ▲0.286 ▲0.235 ▲0.166 ▲0.212 ▲0.204 ▲0.268 ▲0.211 ▲0.069 0.029 0.027 ▲0.017 0.046 0.122 0.148 0.188 0.211 0.260 0.231 8526 レーダー ▲0.293 ▲0.203 ▲0.179 ▲0.281 0.127 ▲0.000 0.021 ▲0.050 ▲0.421 ▲0.034 ▲0.278 ▲0.150 ▲0.369 0.430 0.593 0.657 0.565 0.456 0.484 0.460 8471 コンピュータおよび周辺機器 ▲0.218 ▲0.110 0.086 0.373 0.586 0.651 0.590 0.418 0.418 0.449 0.499 0.565 0.611 0.618 0.647 0.682 0.672 0.662 0.687 0.687 847110アナログないしハイブリッド式 ▲0.568 ▲0.970 ▲0.904 ▲0.977 ▲0.930 ▲0.905 ▲0.968 ▲0.951 ▲0.985 ▲0.962 ▲0.958 ▲0.876 ▲0.910 ▲0.849 ▲0.464 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a.
847120コンピュータ ▲0.848 ▲0.826 ▲0.775 ▲0.400 ▲0.279 0.064 ▲0.171 ▲0.530 0.164 0.263 0.685 0.870 0.902 0.936 0.958 0.976 0.979 0.982 0.983 0.981
847191コンピュータ部分装置 ▲0.760 ▲0.665 ▲0.162 0.312 0.082 0.009 ▲0.510 ▲0.534 ▲0.338 0.079 0.150 0.295 0.315 0.485 0.552 0.729 0.744 0.752 0.786 0.765
847192入出力装置 0.352 0.498 0.604 0.712 0.848 0.837 0.801 0.746 0.740 0.721 0.729 0.799 0.828 0.838 0.850 0.837 0.817 0.766 0.749 0.727
847193記憶装置 ▲0.290 ▲0.177 0.483 0.703 0.721 0.779 0.749 0.431 0.191 0.270 0.144 ▲0.039 ▲0.053 ▲0.108 ▲0.055 ▲0.124 ▲0.195 ▲0.221 ▲0.220 ▲0.167 847199上記以外自動データ処理装置 ▲0.891 ▲0.524 ▲0.259 ▲0.484 0.264 0.454 0.461 0.705 0.725 0.635 0.542 0.481 0.495 0.494 0.526 0.391 0.490 0.480 0.576 0.571 電子デバイス合計 ▲0.696 ▲0.711 ▲0.652 ▲0.499 ▲0.521 ▲0.525 ▲0.555 ▲0.566 ▲0.596 ▲0.654 ▲0.657 ▲0.669 ▲0.643 ▲0.647 ▲0.613 ▲0.606 ▲0.546 ▲0.545 ▲0.484 ▲0.476 8540 電子管 ▲0.734 ▲0.685 ▲0.673 ▲0.444 ▲0.428 ▲0.544 ▲0.571 ▲0.704 ▲0.627 ▲0.513 ▲0.441 ▲0.384 ▲0.271 ▲0.089 0.037 0.168 0.264 0.251 0.207 0.216 8541 ディスクリート ▲0.274 ▲0.318 ▲0.235 ▲0.112 ▲0.329 ▲0.370 ▲0.395 ▲0.372 ▲0.397 ▲0.461 ▲0.525 ▲0.516 ▲0.500 ▲0.452 ▲0.364 ▲0.221 0.008 ▲0.004 0.178 0.185 8542 集積回路 ▲0.842 ▲0.879 ▲0.824 ▲0.690 ▲0.642 ▲0.593 ▲0.618 ▲0.588 ▲0.649 ▲0.732 ▲0.719 ▲0.728 ▲0.692 ▲0.698 ▲0.665 ▲0.680 ▲0.674 ▲0.665 ▲0.678 ▲0.671 電子部品合計 ▲0.227 ▲0.208 ▲0.027 0.018 ▲0.129 ▲0.121 ▲0.132 ▲0.154 ▲0.215 ▲0.261 ▲0.312 ▲0.342 ▲0.287 ▲0.248 ▲0.214 ▲0.205 ▲0.174 ▲0.188 ▲0.176 ▲0.172 8532 コンデンサ ▲0.271 ▲0.285 ▲0.027 ▲0.075 ▲0.284 ▲0.305 ▲0.319 ▲0.270 ▲0.349 ▲0.422 ▲0.476 ▲0.505 ▲0.492 ▲0.491 ▲0.495 ▲0.520 ▲0.480 ▲0.468 ▲0.443 ▲0.400 8533 抵抗 ▲0.339 ▲0.336 ▲0.077 0.161 ▲0.315 ▲0.368 ▲0.365 ▲0.308 ▲0.413 ▲0.414 ▲0.427 ▲0.433 ▲0.437 ▲0.407 ▲0.376 ▲0.208 ▲0.225 ▲0.289 ▲0.254 ▲0.253 8534 プリント基板 ▲0.138 ▲0.091 ▲0.000 0.021 0.069 0.125 0.048 ▲0.027 ▲0.057 ▲0.120 ▲0.158 ▲0.210 ▲0.141 ▲0.104 ▲0.064 ▲0.061 ▲0.036 ▲0.047 ▲0.038 ▲0.054 家庭用音響映像機器合計 0.275 0.157 0.185 0.275 0.371 0.388 0.454 0.468 0.488 0.576 0.611 0.629 0.686 0.711 0.721 0.774 0.770 0.780 0.798 0.798
8518 拡声器 0.183 0.188 0.411 0.457 0.518 0.569 0.607 0.584 0.537 0.556 0.582 0.558 0.532 0.509 0.514 0.544 0.562 0.549 0.593 0.603
8519 音声再生機 0.938 0.834 0.864 0.912 0.889 0.971 0.992 0.982 0.976 0.973 0.952 0.917 0.970 0.946 0.954 0.915 0.897 0.926 0.917 0.908
8520 録音機 0.878 0.871 0.927 0.932 0.974 0.975 0.983 0.956 0.953 0.953 0.938 0.923 0.918 0.958 0.731 0.877 0.978 0.989 0.983 0.870
8521 録画機(再生・記録) ▲0.812 ▲0.794 ▲0.380 0.048 0.723 0.887 0.920 0.894 0.925 0.939 0.942 0.846 0.832 0.811 0.755 0.974 0.968 0.964 0.952 0.958 8522 音響映像機器部分品・付属品 ▲0.269 ▲0.268 ▲0.174 ▲0.121 ▲0.064 ▲0.027 0.030 0.060 0.027 0.095 0.128 0.116 0.166 0.165 0.154 0.282 0.223 0.178 0.243 0.277 8528 テレビ受像機 0.850 0.618 0.365 0.413 0.526 0.586 0.678 0.696 0.912 0.951 0.970 0.952 0.947 0.971 0.972 0.961 0.966 0.973 0.983 0.976
コンピュータは通信機器と比べて︑貿易特化係数の上昇が早期に起こっている︒これは︑入出力機器︑記憶装置といった周辺機器で早くから輸出拡大がされていたところへ︑PC製造拠点の中国大陸への移転が進んでいったことによる︒ただし︑注意しておく必要があるのは︑入出力機器は貿易特化係数としては高い数値を維持しているが︑それは輸出入とも停滞し︑近年に至っては縮小傾向にすらあるということである︒入出力装置は一九九二年には電子機器・部品輸出の五・二二%であり︑二〇〇〇年には一六・四九%を占めるに至ったが︑その後は徐々に比率を低め︑二〇一一年には二・七四%を占めるに過ぎなくなっている︒これはPCのノート化︑タブレット化等によって入出力装置がそもそも不要の機
電子機器・部品合計 通信機器合計 レーダー
コンピュータおよび周辺機器 電子デバイス合計 電子部品合計 家庭用音響映像機器合計
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−.
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図6 電子機器・部品品目種別貿易特化係数 出所:UN Comtradeデータをもとに筆者作成。
種が増えてきていることを反映している︒輸出も減るが︑キーデバイスでもないため︑輸入も減り︑したがって︑貿易特化係数としては高止まった︒記憶装置の貿易特化係数は一九九九年以降急激に悪化し︑二〇〇三年にはマイナスに転じた︒これは記憶装置においてハードディスク・ドライブが主流となり︑かつ︑ハードディスク・ドライブ主要メーカーが 中国よりも東南アジアを主要生産拠点とし ﹀8
︿たため︑PC生産の拡大とともに輸入が急増してしまったことによる︒ 電子デバイスは一貫して圧倒的入超ではある︒ただし︑二〇〇三年にマイナス〇・六六九という最低の値となったのちは︑徐々に改善し︑二〇一一年にはマイナス〇・四七六となった︒しかし︑これはトランジスタ︑ダイオードなど比較的技術水準の低いディスクリートが入超から出超に転じたことが大きく作用しているものである︒それ自体は前進ではあるが︑集積回路に関しては二〇〇一年のマイナス〇・七三二から二〇一一年にはマイナス〇・六七一にまで下がってはいるが︑依然高水準の入超である︒なお︑ブラウン管などを主とする電子管も入超から出超への変化があるが︑輸出入とも金額としては小さく︑電子デバイス合計に対する作用は小さい︒ 電子部品も一九九五年に一度だけプラスになっているが︑一貫してマイナスである︒そもそもこの電子部品という区分であるが︑かつては電子デバイスは能動部品と称され︑それ以外は受動部品︑機構部品と呼ばれていた︒能動部品が電子デバイスとして独立的に扱われるようになったため︑残った受動部品︑機構部品が電子部品の区分に残ったものである︒かつては電子デバイスに比べて低技術とみなされていたが︑小型化・モバイル化等に対応するためにチップ化させつつ大容量化と高機能化を達成することが求
コンピュータおよび周辺機器 コンピュータ
コンピュータ部分装置 入出力装置 記憶装置
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図7 コンピュータおよび周辺機器貿易特化係数 出所:UN Comtradeデータをもとに筆者作成。
められるようになったことから高技術を必要とする分野が拡張している︒積層セラミックチップコンデンサなどは日本企業が優位を持つ分野である︒IT機器生産大国となった中国は小型化・モバイル化の進行の中でこれらの需要を拡大させ︑かつ輸入に依存しているため貿易特化係数としてはマイナスが続くことになっている︒ 家庭用音響映 像機器は︑貿易特化係数が上昇を続けている︒しかし︑これは必ずしも競争力の向上を意味しない︒輸出の項でみたとおり︑家庭用音響映像機器の輸出自体は伸び悩み近年はマイナス成長も見られる︒しかし︑輸入も国内生産による輸入代替等が進み︑輸出にまして成長が鈍化していることから貿易特化係数としては上昇したものである︒
㈢ 輸 出 入 構 造 か ら 見 る 中 国 I C T 産 業 の 競 争 力
以上︑電子機器・部品の輸出入構造から多くのものを見出すことができる︒ 第一に︑電子機器・部品産業の産業全体に占めるポジションである︒二〇〇六年までは成長する中国の輸出のなかで比重も高めてきた︒その意味では輸出の量的拡大を主導したといえる︒ただし︑その後は︑輸出の比重としては一進一退であるが︑貿易黒字額では着実な拡大を続け︑二〇〇九年以降の財貿易収支の悪化のなかで二〇一一年にはついに︑財貿易黒字のほとんどを電子機器・部品産業が稼ぎ出す構造にまで至った︒その意味では︑輸出の量的拡大の先導者から︑収支改善の先導者に役割が変わったともいえる︒言い換えると︑経済大国から経済強国への先導的な役割を果たすようになってきたということもできる︒中川﹇2007
﹈は中国のICT産業は中国の経済成長方式の転換の先導的役割を果たすことが期待されているが︑量的な拡大ではその役割を果たしているものの︑キーデバイス等を輸入や外資系に頼り︑質的な意味ではその役割が十分ではないことを主張した︒その状況はこの限りでは変化しつつあるということもできる︒ 第二に輸出構成の変化である︒通信機器が携帯電話端末の製造拠点化で再拡大し︑コンピュータおよび周辺機器︵とくにコンピュータ本体︶の拡大が続く中で︑家庭用音響映像機器は比重としては低下の一途をたどった︒ここから︑中国電子機器・部品産業の脱家電化を見ることができる︒ 第三に︑電子デバイス︵およびそれにはやや劣るが電子部品︶の輸入拡大および貿易特化係数の大幅マイナスである︒これは︑中川﹇
2007
﹈が明らかにしたキーデバイスの輸入依存構造が解決できていないことを示す︒中川﹇2000
﹈はキーデバイス︵とくに集積回路︶の輸入により︑コンピュータの輸出がほとんど帳消しになってしまう一九九〇年代の状況を説明した︒その状況は二〇〇〇年代に入っても続く︒しかし︑二〇〇三年以降は電子機器・部品全体として貿易黒字構造になり︑また︑二〇一〇年︑二〇一一年にはコンピュータ・周辺機器の黒字額だけで電子デバイスの赤字額を上回るに至っている︒キーデバイス依存構造は続いているが︑それを上回る輸出力を持ち始めたということができる︒㈣ 考 察 の 留 保 点
以上︑輸出入構造を分析することで中国ICT産業のポジション構造についてかなりのことがわかる︒しかし︑その分析には留保が必要である︒ 第一に︑これは中国企業や中国産業の競争力の分析と言えるのか︑という問題である︒電子機器・部品産業は国内における生産においても外資系企業の比重が高いが輸出はさらに比重が高くなり︑八〇%以上が外資系であ ﹀9
︿る︒その状況のもとで輸出入の分析をしたところで︑それは中国産業の分析ではなく︑多国籍企業の在中現地子会社の競争力の評価にしかならないのではないか︑という疑問は当然ながら湧いてくる︒ 第二に輸出入とは無関係の国内生産︑国内販売の評価ができていないという点である︒中国はICT生産大国であるが︑同時に消費大国でもある︒携帯電話契約者数でみると︑国際電気通信連合︵ITU︶が二〇一二年に発表した数字によると︑全世界の携帯電話契約数は六〇億件であるが︑そのうち一〇億件は中国である︒この下では中国国内市場は一つの世界市場でもある︒しかし︑輸出入統計ではそこでの競争優位は把握できない︒ 第三に中国企業の多国籍企業化も進展しているが︑輸出入統計では把握できな ﹀10
︿い︒
三 中 国 I C T 産 業 ・ 企 業 の 競 争 力 に 関 す る 諸 論 点
企業の競争優位を巡っては大きく言えば︑M・E・ポーター﹇
Po rte r 1980
など﹈らによる業界におけるポジショニングとストラテジーを強調する理論動向と︑R・P・ルメルト﹇R um elt 1984
など﹈らによる企業が特殊に蓄積した経営資源における優位を強調する理論動向とがある︒中国のICT産業・企業の競争力を巡っては両方の視点が必要であろう︒ 前者についての論点としてはまず︑ワタナベ﹇W ata nab e 1972
﹈などが提唱し︑関下稔﹇関下1980
﹈などが世界のエレクトロニクス生産の分析に応用した「
国際下請生産」
を巡る論点がある︒中国はICT生産大国であり消費大国ではあるが︑多国籍企業の生産拠点であったり︑あるいはそうでなくても︑大半は低付加価値製品や低付加価値工程の担い手ではあっても業界の先導者ではなかった︒その状況は徐々に変化しつつあるが今後中国企業がどのようなポジションとビジネスモデルを採りうるのかが検討課題である︒ ついで︑その変型でもあるが︑新しい論点としてビジネス・エコシステムを巡る議論がある︒とくに情報通信機器 とサービスをまたがった業界分析の概念としてはこのビジネス・エコシステムの概念が有効である︒中国企業がどのようにして自らがキーストーンとなるビジネス・エコシステムを構築していけるのか︑あるはそうでなくとも︑ビジネス・エコシステムの中でいかに優位なポジションを取りうるのかが検討課題である︒これについては中川﹇2012 b
﹈などを参照してもらいたい︒ 前者と後者にまたがる問題としては「
アーキテクチャ」
にかかわる論点がある︒藤本隆宏・新宅純二郎﹇藤本・新宅2005
など﹈は中国製造業の特徴として「
疑似オープンアーキテクチャ」
論を展開し︑また︑それをうけて丸川知雄は︑自動車産業︑カラーテレビ産業︑携帯電話端末産業における「
垂直分裂」
の構造を析出した﹇丸川2007
﹈︒とくに本稿にかかわる点としては中国携帯端末産業の多くが︑台湾のMTK社のプラットフォームに基づいて似たり寄ったりの端末を作り出していた︒しかし︑スマートフォンに関してはMTKは出遅れ︑クアルコムが「
フォン
」
を先導するようになってい 11﹀100
ドルスマート︿る︒これを
「
アーキテクチャ」
論からどのようにとらえるのかが大きな論点となる︒これについては中川﹇2012 c
﹈も参照してもらいたい︒後者にかかわるものとしては︑まず
「
ヒト」
にかかわるものとして中国ICT産業における︵イノベーションの担い手としての︶企業家分析がある︒これについては中川﹇
2008 ; 2009 b; 2010 a ‒ d
﹈があるが︑戴﹇2012
﹈がまとまった書物として刊行されている︒「
モノ」
にかかわるものとしてはR&Dの問題がある︒とくに中国発の標準を作り出せるかどうか大きな論点となってきた︒これについては中川﹇2007
﹈も多く触れているが︑青木﹇2009
﹈などもこの問題を扱っている︒「
カネ」
に関して言えば︑自分も含めてあまり研究がなされていない︒今後の研究が待たれるところである︒ 競争力というのは何か一つの要素に還元できるようなものではなく︑さまざまな要素の総合的な結果として現れる︒したがって︑今後も多側面にわたる研究が進められていく必要がある︒注