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(1)

修士論文

子どもと教師の問題意識の 「ずれ」を生かす授業

〜小学校社会科問題解決学習 を事例 として〜

2010年 2月 12日 提 出

教科教育専攻 ・社会科教育専修 208M018   谷 本博史 三重大学大学院教育学研究科修士課程

修士論文

子 どもと教師の問題意識の 「ずれ」を生かす授業

〜小学校社会科問題解決学習 を事例 として〜

2010212日提出

三重大学大学院教育学研究科修士課程 教科教育専攻 ・社会科教育専修 208MO18 谷本博史

修士論文

子 どもと教師の問題意識の 「ずれ」を生かす授業

〜小学校社会科問題解決学習 を事例 として〜

2010212日提出

三重大学大学院教育学研究科修士課程 教科教育専攻 ・社会科教育専修 208MO18 谷本博史

(2)

目次

はじ ……….….……‥…….…..……….………….……‥….……….……..……‥…….………‥4

1 社 会科 問題解 決学 習 にお け る 「ずれ」 につ いて の理論 ‥…….………‥….………‥6 1 上 田薫 の考 え る 「ずれ….….….….…….…………..….‥…….…‥….….‥….……….6

1 ずれ」 の構 造 と意 義 につ いて‥……...….……….….…….…‥………….….…….6

2 ずれ」 の追 究 につ いて…….….……….…….………‥………….………‥…‥8

2 山 田勉 の考 え る 「ずれ」………‥.……….…….……….……‥….………..……….12 1 「目標 のUター ン」 につ いて.….…….……..…...………..…….……… 12 2 抵 抗 と して の教 材」 と 「追 究 の 中核 」 につ いて ……….….……….……….…….14

3 ず れ」 につ いて の定 義 とそ の生か し方 につ いて の仮説 ‥….…‥……‥…………18

2 実 際 の授 業 にみ る子 どもと教 師 の問題 意識 の 「ずれ 」 につ いて の比 較 ・考察 .20 1 松 本 健嗣 の 忠魂 碑 』‑15年 にわ た る戦争‑」の授 業 につ いて ‥ ‥‥…‥…20 1 単 元 目標 につ いて….……∴…‥……….…….………‥.………….….……..…‥20 2 単 元構 想 につ いて………‥…….……‥……….….……‥………‥‥…….…….….……….…22 3項 松 本 の授 業 に見 る 「抽 出児 と授 業 の流れ を予想 す る こと」….…….…. ……22 4 実 際 の授 業展 開 につ いて…………‥…‥………‥‥….….………‥.……….……….…23 5 山場 につ いて…..………….………‥…‥………‥……‥………….…‥……….…24 6 松 本 が納 得 して いな い理 由….……‥.…‥……‥‥…..…….……‥…‥.…‥………24

2 松 本 健嗣 の 「日本 の工業 一牧 野繊維 工 場‑」の授 業 につ いて ‥……‥…‥… …‥27 1 人 手不 足 と工 場 の条件」 の授 業 につ いて の考 察 … ….…….…… ……………27 2項 牧 野繊 維 工場 は どの よ うに して不況 を乗 り切 った か」 の授 業 につ いて

の考 察.…‥‥….….…………‥………….……‥……….………‥‥…‥……‥…………‥‥….…32

3 清 田健夫 の 「三保 ダムの授 業 につ いて……….…….……….….….‥……….39 1 授 業 の概 要 と 「や り直 しの授業」 の き っか け ………….……….……‥………‥‥‥‥39 2 や り直 しの授 業」 にお け る 「ずれの生 か し方 … . ………‥….…. …42

1

目次

はじ ……….….……‥…….…..……….………….……‥….……….……..……‥…….………‥4

1 社 会科 問題解 決学 習 にお け る 「ずれ」 につ いて の理論 ‥…….………‥….………‥6 1 上 田薫 の考 え る 「ずれ….….….….…….…………..….‥…….…‥….….‥….……….6

1 ずれ」 の構 造 と意 義 につ いて‥……...….……….….…….…‥………….….…….6

2 ずれ」 の追 究 につ いて…….….……….…….………‥………….………‥…‥8

2 山 田勉 の考 え る 「ずれ」………‥.……….…….……….……‥….………..……….12 1 「目標 のUター ン」 につ いて.….…….……..…...………..…….……… 12 2 抵 抗 と して の教 材」 と 「追 究 の 中核 」 につ いて ……….….……….……….…….14

3 ず れ」 につ いて の定 義 とそ の生か し方 につ いて の仮説 ‥….…‥……‥…………18

2 実 際 の授 業 にみ る子 どもと教 師 の問題 意識 の 「ずれ 」 につ いて の比 較 ・考察 .20 1 松 本 健嗣 の 忠魂 碑 』‑15年 にわ た る戦争‑」の授 業 につ いて ‥ ‥‥…‥…20 1 単 元 目標 につ いて….……∴…‥……….…….………‥.………….….……..…‥20 2 単 元構 想 につ いて………‥…….……‥……….….……‥………‥‥…….…….….……….…22 3項 松 本 の授 業 に見 る 「抽 出児 と授 業 の流れ を予想 す る こと」….…….…. ……22 4 実 際 の授 業展 開 につ いて…………‥…‥………‥‥….….………‥.……….……….…23 5 山場 につ いて…..………….………‥…‥………‥……‥………….…‥……….…24 6 松 本 が納 得 して いな い理 由….……‥.…‥……‥‥…..…….……‥…‥.…‥………24

2 松 本 健嗣 の 「日本 の工業 一牧 野繊維 工 場‑」の授 業 につ いて ‥……‥…‥… …‥27 1 人 手不 足 と工 場 の条件」 の授 業 につ いて の考 察 … ….…….…… ……………27 2項 牧 野繊 維 工場 は どの よ うに して不況 を乗 り切 った か」 の授 業 につ いて

の考 察.…‥‥….….…………‥………….……‥……….………‥‥…‥……‥…………‥‥….…32

3 清 田健夫 の 「三保 ダムの授 業 につ いて……….…….……….….….‥……….39 1 授 業 の概 要 と 「や り直 しの授業」 の き っか け ………….……….……‥………‥‥‥‥39 2 や り直 しの授 業」 にお け る 「ずれの生 か し方 … . ………‥….…. …42

1

(3)

3 拙授業 にみ る子 どもと教師の問題意識 の 「ずれ」 についての様相….…….…… …45

1 6学年 「アジア ・太平洋 に広が る戦争〜殉 国碑 と地域での聞き取 りか ら戦争 を学 〜」の授業 につ いて…….……..…‥…….…….……‥……‥………‥………..…….45

1 実践 の概要…….….……….……..………….……‥…….……….………45

2 本時の授業 につ いての概要‥…………‥…..…….….………….‥…..………‥……….….46

3 本時のお ける子 どもと教師の問題意識 の 「ずれ」……..………‥…….47

4 や り直 しの授業 につ いての評価………‥………….…………‥…….……….…‥…‥‥…50 2 4学年 2年前の台風21号〜当 日の人 々の動きをめ ぐって〜」 授業 につ いて……….…………‥….……….…….…….…….…….……….…53

1 実践の概要…‥…….……….…‥….…‥……‥……….…….……….……….…….………53

2 子 どもと教師の問題意識の 「ずれ」………..…‥‥……….….……‥…….…‥‥…56 3 本授業 における教師の介入 につ いての考察.……………….…..…… ….57

4 教師の介入のきっかけ とな った子 どもの発言 につ いての考察 . ……….58

5 単元 を通 しての 「ずれ」につ いて……….…….……‥…………‥.…………..……….59

3 4学年 「田尻 のお墓前信号 をLEDの信号 にかえた方がよいのか?」の授業 につ いて.…….…….……….….………‥…...………‥…….……‥…………..…….……….60

1 授業の概要.….………….……….……‥……‥…….…….………‥………….60

2 授業展 開に見 る子 どもとの問題意識 の 「ずれ」 の出現 と教師の対応‥‥…‥…60 3 本時 に見 る子 どもとの問題意識 の 「ずれ」の出現 と教師の対応 ………….……63

4 ずれ」 の生か し方 を意識 した授業 の実際………….………….…….…‥…‥…….………66

‑3学年社会科 「N さん と N バ ラ園〜電子技法 に こだわったバ ラ作 り〜」を通 して〜 1 本時 に至 るまでの 「ずれ」 の修正 につ いて‥……‥……..……….……‥………….66

1 授業 の中で使 う資料の具体化 を図った こと…… ….……… ………‥…….………66

2 単元 における 「ずれ」 の出現 と 「ずれ」 の修正 について……….……….……….68

2 本時 における 「ずれ」 につ いての考察….…………‥……….………‥72 1 視点児童 と授業展 開の予想‥……‥…….….………‥…………‥………‥………‥72 2 授業 にお ける教師 と子 どもの 「ずれ…………‥……‥……….………73 5 子 どもと教師の問題意識 の 「ずれ」 を生かす授業つ いての考察 .….……… ………77

1 仮説 の検証 .………‥………‥…….…….……‥…………‥………‥…77

1 仮説1の検 証…….….…….……‥………….……‥…….…‥………..……….………….77

2 仮説2,3,5の検 証….……….…….………….…‥…….……….……….…..………….…79

3 仮説4の検証…‥……….……‥……‥…….…….……….……….……….…81

3 拙授業 にみ る子 どもと教師の問題意識 の 「ずれ」 についての様相….…….…… …45

1 6学年 「アジア ・太平洋 に広が る戦争〜殉 国碑 と地域での聞き取 りか ら戦争 を学 〜」の授業 につ いて…….……..…‥…….…….……‥……‥………‥………..…….45

1 実践 の概要…….….……….……..………….……‥…….……….………45

2 本時の授業 につ いての概要‥…………‥…..…….….………….‥…..………‥……….….46

3 本時のお ける子 どもと教師の問題意識 の 「ずれ」……..………‥…….47

4 や り直 しの授業 につ いての評価………‥………….…………‥…….……….…‥…‥‥…50 2 4学年 2年前の台風21号〜当 日の人 々の動きをめ ぐって〜」 授業 につ いて……….…………‥….……….…….…….…….…….……….…53

1 実践の概要…‥…….……….…‥….…‥……‥……….…….……….……….…….………53

2 子 どもと教師の問題意識の 「ずれ」………..…‥‥……….….……‥…….…‥‥…56 3 本授業 における教師の介入 につ いての考察.……………….…..…… ….57

4 教師の介入のきっかけ とな った子 どもの発言 につ いての考察 . ……….58

5 単元 を通 しての 「ずれ」につ いて……….…….……‥…………‥.…………..……….59

3 4学年 「田尻 のお墓前信号 をLEDの信号 にかえた方がよいのか?」の授業 につ いて.…….…….……….….………‥…...………‥…….……‥…………..…….……….60

1 授業の概要.….………….……….……‥……‥…….…….………‥………….60

2 授業展 開に見 る子 どもとの問題意識 の 「ずれ」 の出現 と教師の対応‥‥…‥…60 3 本時 に見 る子 どもとの問題意識 の 「ずれ」の出現 と教師の対応 ………….……63

4 ずれ」 の生か し方 を意識 した授業 の実際………….………….…….…‥…‥…….………66

‑3学年社会科 「N さん と N バ ラ園〜電子技法 に こだわったバ ラ作 り〜」を通 して〜 1 本時 に至 るまでの 「ずれ」 の修正 につ いて‥……‥……..……….……‥………….66

1 授業 の中で使 う資料の具体化 を図った こと…… ….……… ………‥…….………66

2 単元 における 「ずれ」 の出現 と 「ずれ」 の修正 について……….……….……….68

2 本時 における 「ずれ」 につ いての考察….…………‥……….………‥72 1 視点児童 と授業展 開の予想‥……‥…….….………‥…………‥………‥………‥72 2 授業 にお ける教師 と子 どもの 「ずれ…………‥……‥……….………73 5 子 どもと教師の問題意識 の 「ずれ」 を生かす授業つ いての考察 .….……… ………77

1 仮説 の検証 .………‥………‥…….…….……‥…………‥………‥…77

1 仮説1の検 証…….….…….……‥………….……‥…….…‥………..……….………….77

2 仮説2,3,5の検 証….……….…….………….…‥…….……….……….…..………….…79

3 仮説4の検証…‥……….……‥……‥…….…….……….……….……….…81

(4)

2 仮説以外 にも導き出された点.….…‥……….…‥…‥………‥83 3 ま とめ….………‥……….………‥………‥………‥……….………‥….…….…….….……….…85

お わ ……‥..……‥…‥…….……….……….….……….……..……….………..…‥87

3

2 仮説以外 にも導き出された点.….…‥……….…‥…‥………‥83 3 ま とめ….………‥……….………‥………‥………‥……….………‥….…….…….….……….…85

お わ ……‥..……‥…‥…….……….……….….……….……..……….………..…‥87

3

(5)

はじめに

私は初任 の時、指導教官 に連れ られ、静岡県 の安東小学校の研究発表会に参加 した。そ こで、子 どもが主体 となって問題を追究する社会科の授業を参観することができた。「いつ か こんな授業をしてみたい。」 と思った ことを今 も思い出す。その授業が、今 も私のめざす 授業像である。

その後、子 どもの疑問や願いを主体 にした授業を展開できるようにと願い、 自分な りに そのような授業構成を心がけ子 どもと共 に授業を行ってきた。

しか し 4年前か ら、教師の考えさせたいと思っている問題 と子 どもが授業の中で問題 と す ることにずれがあると気づ くようにな り、その度に私は子 どもの討論の過程を追 うこと と板書をすることで手一杯 となった。そ して45分の授業の中で何 ら効果的な発間や資料提 示ができずに、子 どもの討論をただ見守るだけということが何度かあった。

授業後の検 討会では 「どうして教師は何 も発間 しないのか。」あの子の発言の後で、教 師は出るべきだ。」 というような ことを何度 も言われたが、私は教師の発間や資料提示によ って子 どもが主体 的に追究 している流れ を断ち切って しまうのではないかという危倶 を抱 き、そ う問題は簡単ではないという思いを強 くもつようになった。

そ して、子 どもと教師の間にある 「ずれ」を教師の側か らの発間や資料提示によって一 方的に埋めていって もよいものか という問題が、 自ら授業を行 った り、他者の授業を見た

りする中で、常 に頭か ら離れないようになった。

そ こで、子 どもが主体 となって問題を追究す る授業を実現 していくために、子 どもと教 師の問題意識の 「ずれ」は、授業 を展開する中で大きな意味を持っていて、それを授業の 中で生か して こそ、私がめざす授業に近づいていくのではないか と考え、 この研究をスタ ー トすることにした。

そのために、以下のような ことを考え、研究を進めていった。

まず、は じめに、子 どもと教師の問題意識の 「ずれ」 について、「ずれ」はどのよう認識 されているのか、 また、その 「ずれ」をどのように授業の中で生か していこうとしている のかを、各種の文献か ら明 らかにする。

次 に、子 どもが主体 となって問題を追究する授業の実現 という点か ら、子 どもが中心 と なって進める教育の創造 をめざしている 「社会科の初志 をつ らぬく会」の著名な実践 をも とに、その実践の中に子 どもと教師の問題意識の 「ずれ」は存在するのか、存在するとす れば、その 「ずれ」は どのように生かされたのかを検証 していく。

三点 目として、私が子 どもとの 「ずれ」を感 じ始めた4年前以降の実践を取 り上げ、「 れ」が どこに存在するか、なぜ 「ずれ」が生まれたのか、その 「ずれ」は生かされたのか を検証 していく。

四点 目として、上記のことか ら見えてきた子 どもと教師の問題意識の 「ずれ」の生か し

はじめに

私は初任 の時、指導教官 に連れ られ、静岡県 の安東小学校の研究発表会に参加 した。そ こで、子 どもが主体 となって問題を追究する社会科の授業を参観することができた。「いつ か こんな授業をしてみたい。」 と思った ことを今 も思い出す。その授業が、今 も私のめざす 授業像である。

その後、子 どもの疑問や願いを主体 にした授業を展開できるようにと願い、 自分な りに そのような授業構成を心がけ子 どもと共 に授業を行ってきた。

しか し 4年前か ら、教師の考えさせたいと思っている問題 と子 どもが授業の中で問題 と す ることにずれがあると気づ くようにな り、その度に私は子 どもの討論の過程を追 うこと と板書をすることで手一杯 となった。そ して45分の授業の中で何 ら効果的な発間や資料提 示ができずに、子 どもの討論をただ見守るだけということが何度かあった。

授業後の検 討会では 「どうして教師は何 も発間 しないのか。」あの子の発言の後で、教 師は出るべきだ。」 というような ことを何度 も言われたが、私は教師の発間や資料提示によ って子 どもが主体 的に追究 している流れ を断ち切って しまうのではないかという危倶 を抱 き、そ う問題は簡単ではないという思いを強 くもつようになった。

そ して、子 どもと教師の間にある 「ずれ」を教師の側か らの発間や資料提示によって一 方的に埋めていって もよいものか という問題が、 自ら授業を行 った り、他者の授業を見た

りする中で、常 に頭か ら離れないようになった。

そ こで、子 どもが主体 となって問題を追究す る授業を実現 していくために、子 どもと教 師の問題意識の 「ずれ」は、授業 を展開する中で大きな意味を持っていて、それを授業の 中で生か して こそ、私がめざす授業に近づいていくのではないか と考え、 この研究をスタ ー トすることにした。

そのために、以下のような ことを考え、研究を進めていった。

まず、は じめに、子 どもと教師の問題意識の 「ずれ」 について、「ずれ」はどのよう認識 されているのか、 また、その 「ずれ」をどのように授業の中で生か していこうとしている のかを、各種の文献か ら明 らかにする。

次 に、子 どもが主体 となって問題を追究する授業の実現 という点か ら、子 どもが中心 と なって進める教育の創造 をめざしている 「社会科の初志 をつ らぬく会」の著名な実践 をも とに、その実践の中に子 どもと教師の問題意識の 「ずれ」は存在するのか、存在するとす れば、その 「ずれ」は どのように生かされたのかを検証 していく。

三点 目として、私が子 どもとの 「ずれ」を感 じ始めた4年前以降の実践を取 り上げ、「 れ」が どこに存在するか、なぜ 「ずれ」が生まれたのか、その 「ずれ」は生かされたのか を検証 していく。

四点 目として、上記のことか ら見えてきた子 どもと教師の問題意識の 「ずれ」の生か し

(6)

方 を前提 として、教材研究の段階か ら 「ずれ」 を意識 して授業を構成 し、実際に授業化 を 図る。授業記録や授業化の過程を明 らかにし、「ずれ」の生かし方を分析 していく。

最後 に、すべて を考え合わせ、子 どもと教師の問題意識の 「ずれ」 の生か し方を提言 し ていく。

第一の点は第1章で、第二の点は第2章で、第三の点は第3章、第四の点は第4章、第 五の点は第5章で検証する。

5

方 を前提 として、教材研究の段階か ら 「ずれ」 を意識 して授業を構成 し、実際に授業化 を 図る。授業記録や授業化の過程を明 らかにし、「ずれ」の生かし方を分析 していく。

最後 に、すべて を考え合わせ、子 どもと教師の問題意識の 「ずれ」 の生か し方を提言 し ていく。

第一の点は第1章で、第二の点は第2章で、第三の点は第3章、第四の点は第4章、第 五の点は第5章で検証する。

5

(7)

第 1章 社会科問題解決学習における 「ずれ」についての理論 第 1節 上田薫の考える 「ずれ」

第 1項 ずれ」の構造 と意義について

上田は 「生きた授業を成立させるための観点」 として以下のことを挙げている。1

三原則 1 計画は必ず破 られ修正されな くてはな らない 2 正解はつねに複数である

3 空白を生か してこそ理解は充実する 三方策 1 迷わせ、わか らな くしてやること

2 教えないこと、す くな くしか教えないこと

3 教科のわ くにとらわれぬこと、授業時間にこだわ らぬ こと 六つの具体策

1 立ち往生せよ 2 山をつくれ 3 括抗を生かせ 4 ひっくり返 しをせよ 5 あとをひ く終末にせよ 6 ひとりひ とりにむかえ 六つの問いかけ

1 自分のコンディションをととのえることに忠実であるか 2 子 どもが教師の意図に合わせようとしているのがみえるか 3 タイミングに心をくぼるゆとりをもっているか

4 忘却 と思いお こしを生かそ うとしているか

5 ひとりを通 じて多 くの子をとらえる姿勢をもっているか 6 不都合 と思 うことに身を寄せていこうとしているか

上田は三原則の1計画は必ず破 られ修正されな くてはな らない」で 「ずれ」について 以下のように言及 している。「はた して 目標は達成されたのであるか どうか。はじめ立てた

目標 と、実践の過程をへたあとでの目標 とでは、その内容がずれているのではないか。 こ のずれが気にな らないということは、要するに神経のはた らきがにぶ く粗雑だということ をものがたるにすぎぬ。2

では、上田の言 う 「ずれ」 とはどのような ものなのか。上田の考える 「ずれの構造」に 関する記述を順 に抜き出してみる。

(a)「はたして 目標は実現 されたか。それを問うことが哲学の第一歩である。事実の把握 と その表現伝達、計画 とその実践 という中で、コミュニケーションの完全な成立、計画の完

第 1章 社会科問題解決学習における 「ずれ」についての理論 第 1節 上田薫の考える 「ずれ」

第 1項 ずれ」の構造 と意義について

上田は 「生きた授業を成立させるための観点」 として以下のことを挙げている。1

三原則 1 計画は必ず破 られ修正されな くてはな らない 2 正解はつねに複数である

3 空白を生か してこそ理解は充実する 三方策 1 迷わせ、わか らな くしてやること

2 教えないこと、す くな くしか教えないこと

3 教科のわ くにとらわれぬこと、授業時間にこだわ らぬ こと 六つの具体策

1 立ち往生せよ 2 山をつくれ 3 括抗を生かせ 4 ひっくり返 しをせよ 5 あとをひ く終末にせよ 6 ひとりひ とりにむかえ 六つの問いかけ

1 自分のコンディションをととのえることに忠実であるか 2 子 どもが教師の意図に合わせようとしているのがみえるか 3 タイミングに心をくぼるゆとりをもっているか

4 忘却 と思いお こしを生かそ うとしているか

5 ひとりを通 じて多 くの子をとらえる姿勢をもっているか 6 不都合 と思 うことに身を寄せていこうとしているか

上田は三原則の1計画は必ず破 られ修正されな くてはな らない」で 「ずれ」について 以下のように言及 している。「はた して 目標は達成されたのであるか どうか。はじめ立てた

目標 と、実践の過程をへたあとでの目標 とでは、その内容がずれているのではないか。 こ のずれが気にな らないということは、要するに神経のはた らきがにぶ く粗雑だということ をものがたるにすぎぬ。2

では、上田の言 う 「ずれ」 とはどのような ものなのか。上田の考える 「ずれの構造」に 関する記述を順 に抜き出してみる。

(a)「はたして 目標は実現 されたか。それを問うことが哲学の第一歩である。事実の把握 と その表現伝達、計画 とその実践 という中で、コミュニケーションの完全な成立、計画の完

(8)

全実施 という完全さにこだわって しっように追究することによってのみ、ずれはその存在 理由を確保す ることができる3

(b)「子 どもたちはたえず動いていく。いかに周到な教師の目もそれを的確 にとらえること はできない。そ こにずれは生まれる。」4

(C)「教師の子 どもへの評価は、動 くものが動 くものをとらえようとすることであ り、それ はずれの克服への努力にはかな らない5

(d)「ずれはあまりではない。不足でもない。ずれ において こそ真実があらわにされる。」6

(e)「目標へのぎ りぎ りの接近 と、そ こにわずかに残るずれの介在が新 しい発展をよぶ。つ ま りずれか らずれへ ということになる7

(f)ずれは小さく、 しかも深きことをよ しとする8

上田の考える 「ずれ」の構造の中で一番の中核は、e)の記述 「目標へのぎ りぎ りの接近 とそ こにわずかに残るずれの介在が新 しい発展 をよぶ。つまりずれか らずれへ ということ になる。」 と考え られる。つま り、授業においては目標への到達 という 「あるべき姿」は存 在 しな く、 「あるべき姿」を限 りな く求めつつも 「ずれ」が連続 していくと考え られる。

また 「ずれは小さく、 しかも深き ことをよ しとする。」 とあるが、 「小さく深い」 とは ど ういうことであろう。「深い」に関 しては 「ずれ」の意義で 「ずれが深いとは両者 (子 ども と教師 子 どもと子 ども)の間に対立あるを意味する。けれ ども、かかる対立があれ ば こ そ、両者はずれ を媒介 として深 くつなが りうる。」9とあるので、子 どもと教師の間、子 ども と子 どもの間にある一つのことをめぐっての深 い対立 ととらえることができる。 しか し、

対立だけではあるまい。子 どもと教師の間の考え方の相違、教室内の誰 もが考えなかった ような考えの出現 も入るはずである。

では 「ずれが小さい」 とはどういうことであろうか。上田の考え方か らすると、たえず 動 く子 どもを教師が周到な手立てをもとにとらえようとして もとらえきれなかった姿10 いうことになる。最小限の認識の違いということになる。

すると、実際の授業の場において、ずれが連続する過程や、「ずれは小さく、 しか も深き ことをよ しとする。」 に関 して、 どのような子 どもの姿や授業場面があるのだろうか。それ は具体的には触れ られていない。

次 に 「ずれの意義」 についてであるが、以下のような上田の記述 を順に見出す ことがで きる。

(a)「ずれがずれ としての意義をもつのは、そ こに問題解決的な体制すなわち主体性の確立 ということがあるかぎ りにおいてである。ずれ こそはまさに実践の中核の問題なのである。

ll

(b)教師はずれ を正 しく生かす ことによって、子 どものあいだに望 ましい連続を獲得する。

ずれは教師の主体性をも子 どもの主体性をも保持することによ り、未来の形成を具体的 に成 り立たせ る。教師 と子 どもがずれ によってつなが るとは、両者の個性 とそれ をもと

7

全実施 という完全さにこだわって しっように追究することによってのみ、ずれはその存在 理由を確保す ることができる3

(b)「子 どもたちはたえず動いていく。いかに周到な教師の目もそれを的確 にとらえること はできない。そ こにずれは生まれる。」4

(C)「教師の子 どもへの評価は、動 くものが動 くものをとらえようとすることであ り、それ はずれの克服への努力にはかな らない5

(d)「ずれはあまりではない。不足でもない。ずれ において こそ真実があらわにされる。」6

(e)「目標へのぎ りぎ りの接近 と、そ こにわずかに残るずれの介在が新 しい発展をよぶ。つ ま りずれか らずれへ ということになる7

(f)ずれは小さく、 しかも深きことをよ しとする8

上田の考える 「ずれ」の構造の中で一番の中核は、e)の記述 「目標へのぎ りぎ りの接近 とそ こにわずかに残るずれの介在が新 しい発展 をよぶ。つまりずれか らずれへ ということ になる。」 と考え られる。つま り、授業においては目標への到達 という 「あるべき姿」は存 在 しな く、 「あるべき姿」を限 りな く求めつつも 「ずれ」が連続 していくと考え られる。

また 「ずれは小さく、 しかも深き ことをよ しとする。」 とあるが、 「小さく深い」 とは ど ういうことであろう。「深い」に関 しては 「ずれ」の意義で 「ずれが深いとは両者 (子 ども と教師 子 どもと子 ども)の間に対立あるを意味する。けれ ども、かかる対立があれ ば こ そ、両者はずれ を媒介 として深 くつなが りうる。」9とあるので、子 どもと教師の間、子 ども と子 どもの間にある一つのことをめぐっての深 い対立 ととらえることができる。 しか し、

対立だけではあるまい。子 どもと教師の間の考え方の相違、教室内の誰 もが考えなかった ような考えの出現 も入るはずである。

では 「ずれが小さい」 とはどういうことであろうか。上田の考え方か らすると、たえず 動 く子 どもを教師が周到な手立てをもとにとらえようとして もとらえきれなかった姿10 いうことになる。最小限の認識の違いということになる。

すると、実際の授業の場において、ずれが連続する過程や、「ずれは小さく、 しか も深き ことをよ しとする。」 に関 して、 どのような子 どもの姿や授業場面があるのだろうか。それ は具体的には触れ られていない。

次 に 「ずれの意義」 についてであるが、以下のような上田の記述 を順に見出す ことがで きる。

(a)「ずれがずれ としての意義をもつのは、そ こに問題解決的な体制すなわち主体性の確立 ということがあるかぎ りにおいてである。ずれ こそはまさに実践の中核の問題なのである。

ll

(b)教師はずれ を正 しく生かす ことによって、子 どものあいだに望 ましい連続を獲得する。

ずれは教師の主体性をも子 どもの主体性をも保持することによ り、未来の形成を具体的 に成 り立たせ る。教師 と子 どもがずれ によってつなが るとは、両者の個性 とそれ をもと

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にした 自己統一がそれぞれ生きていることである。12

(C)「やがてそ こには子 どもが教師を乗 り越える可能性が用意されている。」13

上田は、「ずれの意義」 として、(a)で 「そ こに問題解決的な体制すなわち主体性の確立 ということがあるかぎ りにおいて」 と指摘 している。 しかも 「ずれ こそはまさに実践の中 核の問題」 と言っている。

すると、筆者が研究 していこうとしている 「ずれの生か し方」は社会科の問題解決学習 をみていかねばなるまい。しか も、(b)(C)においては、「ずれは教師の主体性 をも子 どもの 主体性 をも保持することによ り、未来の形成を具体的に成 り立たせ る。」や 「やがてそ こに は子 どもが教師を乗 り越える可能性が用意されている。」 という記述がある。

このような授業を可能 にすることができるのは、教師の教材研究やそれか ら得 られた知 識や考えのみを正 しいものとして子 どもに強いる授業でな く、教師 も子 どもと共に考え合

っている授業ではないのだろうか。

よって、そのような社会科問題解決学習の中に、「ずれ」は存在 し、その 「生か し方」の 手立て となるものがあると考え られる。

第 2項 ずれ」の追究について

前項で述べたように、実際の授業の場において 「ずれ」とはどのような形で もって表れ、

教師は どのように 「ずれ」 を生か していけばいいのであろうか。上田が考えている具体 的 な 「ずれ」の姿 と 「ずれ」の生か し方をそれぞれに分類 して抜き出 してみる。

まず 「ずれ」の姿についてである。

上 田は 「創造」 という言葉 に関 して 「創造は 自分にとって新 しいものを生む ことである 以上、ある意味では自分を賭 ける真剣勝負であるといえよう14とし、「多 くの場合におい て、教師の都合のよくないことなのである。教師の予期 を破 り期待 に反するところにこそ 創造がある。危険視さえされかねないところに創造がある15としている。

この 「創造」 とは、ある子 どもが、他の子 どもとの間で、 もしくは教師 との間で、生み だ し対立関係 に至る可能性があるものである。 とすれ ば 「ずれ」が生まれる前提条件 とし て とらえることができる。

次 に授業中における 「ずれ」を定義づけるものとして、 「ずれ とは価値 と価値、方向と方 向の深刻なつばぜ りあいにおいて生まれた ものなのである。ずれのなかにこそ、生きた世 界がある16としている。 ここで言 う 「ずれ」は子 どもと教師間、子 どもと子 どもの間に 生まれ る 「ずれ」であると認識することができる。

さらに 「もちろんずれは教材研究の面 にも出て くるで しょう。 しか しそれは、かな らず 指導 という実践の過程のなかに生まれるのです。子 どもたちに対する予測のずれ としてク ローズアップされるのです。だか ら子 どもをよく見ること、子 どもを読んで読んで読みぬ くことが、第一に必要なのです。」17との記述 もある。 ここでは、教師の子 どもに対する予

にした 自己統一がそれぞれ生きていることである。12

(C)「やがてそ こには子 どもが教師を乗 り越える可能性が用意されている。」13

上田は、「ずれの意義」 として、(a)で 「そ こに問題解決的な体制すなわち主体性の確立 ということがあるかぎ りにおいて」 と指摘 している。 しかも 「ずれ こそはまさに実践の中 核の問題」 と言っている。

すると、筆者が研究 していこうとしている 「ずれの生か し方」は社会科の問題解決学習 をみていかねばなるまい。しか も、(b)(C)においては、「ずれは教師の主体性 をも子 どもの 主体性 をも保持することによ り、未来の形成を具体的に成 り立たせ る。」や 「やがてそ こに は子 どもが教師を乗 り越える可能性が用意されている。」 という記述がある。

このような授業を可能 にすることができるのは、教師の教材研究やそれか ら得 られた知 識や考えのみを正 しいものとして子 どもに強いる授業でな く、教師 も子 どもと共に考え合

っている授業ではないのだろうか。

よって、そのような社会科問題解決学習の中に、「ずれ」は存在 し、その 「生か し方」の 手立て となるものがあると考え られる。

第 2項 ずれ」の追究について

前項で述べたように、実際の授業の場において 「ずれ」とはどのような形で もって表れ、

教師は どのように 「ずれ」 を生か していけばいいのであろうか。上田が考えている具体 的 な 「ずれ」の姿 と 「ずれ」の生か し方をそれぞれに分類 して抜き出 してみる。

まず 「ずれ」の姿についてである。

上 田は 「創造」 という言葉 に関 して 「創造は 自分にとって新 しいものを生む ことである 以上、ある意味では自分を賭 ける真剣勝負であるといえよう14とし、「多 くの場合におい て、教師の都合のよくないことなのである。教師の予期 を破 り期待 に反するところにこそ 創造がある。危険視さえされかねないところに創造がある15としている。

この 「創造」 とは、ある子 どもが、他の子 どもとの間で、 もしくは教師 との間で、生み だ し対立関係 に至る可能性があるものである。 とすれ ば 「ずれ」が生まれる前提条件 とし て とらえることができる。

次 に授業中における 「ずれ」を定義づけるものとして、 「ずれ とは価値 と価値、方向と方 向の深刻なつばぜ りあいにおいて生まれた ものなのである。ずれのなかにこそ、生きた世 界がある16としている。 ここで言 う 「ずれ」は子 どもと教師間、子 どもと子 どもの間に 生まれ る 「ずれ」であると認識することができる。

さらに 「もちろんずれは教材研究の面 にも出て くるで しょう。 しか しそれは、かな らず 指導 という実践の過程のなかに生まれるのです。子 どもたちに対する予測のずれ としてク ローズアップされるのです。だか ら子 どもをよく見ること、子 どもを読んで読んで読みぬ くことが、第一に必要なのです。」17との記述 もある。 ここでは、教師の子 どもに対する予

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