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資本市場理論と検証可能性
斎 藤 進
法などが実証的に研究されている。これらの実証は じ め に
研究のほとんどが理論としては,ポートフォリオ ある現象または事象に対して統一的,体系的な 理論を基礎とする資本資産評価モデル (capital 説明を与えるものが科学であるとすれば,科学の asset pricing mode1,以降CAPMと略記する)に 成立にとって必須の要件は,現象を体系的に説明 依拠している。CAPMが真に検証可能な理論なら する手段である理論の現実説明力であろう。現在 ば,上記の実証研究はなんら問題はないが,CAP までのところ現象を完全に説明しつくす理論が科 Mが検証可能な理論からほど遠い状態にあるとす 学のいかなる分野にも存在しない。その意味で科 るならば,これら多くの実証研究は資源の不適切 学は不完全なものであるし,不断に進歩している な配分といわざるをえない。理論の限界を知るこ と考えられる。現在の理論水準がどのような現象 とは,これら不適切な資源配分の回避へと導くで をどの程度まで説明できるかを常に確認し,より あろう。
広範な現象をより体系的に説明すべく新理論を構i 本稿におけるわれわれの目的はCAPMや裁定評 築するか,または現在の理論を拡張することによ 価モデル(arbltrage pricing theory,以降APTと
り現実説明力を高めようとする努力が科学の進歩 略記)さらに確率優位(stockastic dominance)を を担保するであろう。 用いた分離定理(separation theorem)などの資本
われわれは元より科学一般に関心がある者では 市場にかかわる諸理論をその理論の検証可能性と ない。われわれの関心は,資本の評価,さらに資 いった観点より検討することであり,その結果,
本評価における情報の役割,リスクに対するプレ 各理論の説明力の限界を明らかにすることである。
ミアムの決定方法など資本市場にかかわる諸現象 次節ではCAPMを概観する。第H節ではCAPMの に向けられている。そこで資本市場に関する現在 検証可能性(testability)に関して考察し, CAPM の理論水準がわれわれの注目する諸現象をどの程 の検証が実際上不可能であることを,第皿節では 度まで説明可能なのか,といった問題に答えるこ 最近CAPMの代りに頻繁に論じられるようになっ
御虞♂
とは科学の進歩にとって決して無駄なことではな たAPTについて論じ,最後に確率優位を用いて いであろう。さらに,これらの理論水準の確認は, 分離定理とAPTの関係を明らかにすると共にAPT 以下の2つの意味で重要であると思われる。第1 の検証も不可能であることを述べる。
は,それが現在の資本市場に関する理論の限界を 1.CAPMとその問題点明示化することになるので,同時に理論の発展方
向を示すことになる点である。第2としては,実 われわれは本節において資本資産評価モデル(C 証研究における資源の不適正配分を是正すること APM)の拡張を意図するのではなく,理論の検証可 である。今日,株価と会計情報の関係,倒産リス 能性を問題とするので,第n節以降の議論に必要 クと株価の関係などのテーマのもとに資産評価に なかぎりでのCAPMの概観をしておくことにする。
おける情報の役割やリスク・プレミアムの決定方 多数の資産が取引される資本市場において,任
2 茨城大学政経学会雑誌 第49号
意の資産に対する投資収益率の期待値がどのよう オMによって一義的に決定されるゼロ・ベーター 一 ノ決定されるのかを明らかにしたものがCAPMで ポートフォリオZの期待収益率をそれぞれRM,
噌 『
?驕BCAPMの諸前提は以下のとおりである。 R、とし,任意の第ノ資産の期待収益率をR、とす
_『一
1.投資家はすべてリスク回避者であり,期待効 る。そのとき期待収益率RノはR、とRMとの加重
一 解
pを最大にするように行動する。 平均に等しくなり,RMのウエイトβ,はcov(R、
〜 押
Q.投資家は資産あるいはポートフォリオの投資 R。)/♂(R。)に等しい,とするのがBlackの結論 収益率の期待値と分散(もしくは標準偏差)に である1)ここでここでCOV(R、, RM)は資産ノと ついて同一の予想を持つ。 市場ポートフォリオMの収益率の共分散,σ2(RM)
3.すべての投資家が価格に対して影響力を持た は市場ポートフォリオMの収益率の分散である。
ないという意味で,資本市場は完全競争市場で この結論を定式化すれば次の式となる。
4勇懇たはポートフォリオの捌又益率は正RF帥一β)織β一畿皐・
規分布に従がう確率変数である。 forノ=1,…, N (1−1)
5.資本市場にお・いては,空売り(short sale)に この式におけるR、を無危険資産の収益率,すな 対する制限は存在せず,資産は完全に分割可能 わち安全利子率rノで置換すると証券市場線 である。 (security market line)が得られるので,(1−1)式 以上5つの仮定のほかにCAPMの初期の展開にお は無危険資産の存在しない場合の証券市場線と考 いては,6番目の仮定として「すべての投資家が えられる。通常の証券市場線と同様に(1−1)式の 自由に貸借できる無危険資産が存在する」ことを 意味を理解するため,(1−1)式を変形する。
前提としていた。しかし,Black〔1〕は無危険資 RゴニRz十(RM−R、)β、 for allノ (1−2)
産が存在しなくとも,CAPMが成立することを示
した。したがって,Blackの一般化されたCAPM 上記式の右辺においてR、とRMはすべての資産に に従がえば,その前提は上記の5つで十分である碧 共通の要因であり,したがって(RM−R∂はすべ これら5つの仮定に加えて各資産の投資収益率 ての資産に対して同一の定数である。それに対し について以下の2つの仮定を追加する。 て第ノ資産に固有な要因はβであり,その値が資
(A.1)投資収益率の分散共分散行列Vは非特異 産ごとに異なるであろうから,(C.1)第ノ資産の であるとする。 期待収益率とβ・との関係は線形であることになる。
(A.2)他の資産の投資期待収益率と異なる投資 っぎに仮定1および4のもとでは第」資産のリス 期待収益率を持つ資産が少なくとも1つ クは,第」資産と市場ポートフォリオMの収益率 存在する。 の共分散cov(R,,RM)によって測定される。第ブ すべての資産の数をNとすれば,行列VはN行N 資産のリスクcov(R,,RM)を市場ポートフォリ 列の行列であって,(A.1)は投資収益率が定数と オのリスクσ2(RM)で規準化したものがβである。
なる資産の存在しないことを,さらに投資収益が そこですべての資産に共通な要因♂(RM)で規準 完全相関するいかなる資産の組み合せも存在しな 化された第ブ資産のリスクβ,を新らたに第ノ資産 いことを意味している。(A.2)は単にすべての資 のリスクと定義すれば,(RM−R2>0となるこ 産の期待収益率が同一とはならないことを述べて とを利用して,(C.2)リスキーな資産ほど高い期
いる。 待収益率が得られることになる。さらに(RM一 以上からBlackの一般化されたCAPMはつぎの R2を投資1単位あたりのリスク・プレミアムと ような結論を導びく。まずN個の資産すべてから 考えれば,β(RM−R2は第ブ資産の総リスク・
構成された市場ポートフォリオMと,ポートフォリ プレミァムと考えられる。したがって(C.3)各資
斎 藤:資本市場理論と検証可能性 3 産のリスク・プレミアムの総額β(R。−R∂は当 種情報の投資収益率に与える効果の測定などにお・
該資産のリスクの大きさに比例することになる碧 いて強力な分析用具となるであろう。
われわれは,(1−2)式に関して(C.1), (C.2) そこでCAPMの検証手続が実行可能か否かを および(C.3)の3つの解釈を導出したが,これら 判断するために以下の問題を考える。すなわち,
3つの命題は独立ではない。(C.2)のより正確な CAPMの検証手続が実行可能であるためには,
かつ厳密な表現が(C.3)であるので,(C.3)が成 どのような条件を満たさなければならないかであ 立すれば(C.2)が成立する。また市場ポートフォ る。検証過程で使用されるデーターが実際に存在 リオのリスクを1とするときの第j資産のリスク しないか入手不能であるとすれば,そのままでは
〜 〜 〜
β(=COV(R、,RM)/σ2(R。))で測定するとし 理論を検証することはできない。それゆえデータ て,さらに,市場ポートフォリオのリスク・プレ ーが入手可能であるか,入手不可能であっても他
ミアムが(RM−R。)であると定義すれば,(C.1) のデーターによって必要なデーターが十分に推定 と(C.3)とは論理的に等価となる。したがって, できる,といった条件が満足されないかぎり理論
(C.1)もしくは(C.3)のいずれか一方の成立が保 は検証できない。
証されれば,残りの2つの命題は自動的に成立す CAPMの検証過程で必要となるデーターは,
ることになる。 各資産の収益率と市場ポートフォリオの収益率で ところで理論にとって重要なことは,理論構築 ある。市場ポートフォリオの収益率は,(1−1)式 の際に用いられた仮定がどの程度現実を反映して から明らかなようにすべての資産の収益率に関係 いるかではなく,これら仮定から論理的,演繹的 するので,CAPMの検証にお・いて極めて重要な情 に導き出された結論がどの程度現実を体系的に説 報であろう。市場ポートフォリオは,各種有価証 明しうるかにある,といった考え方が存在する。 券,各種不動産,金あるいは美術品などのすべて この考え方に従がえば,CAPMにとって必要なこ の資産をポートフォリオ内に含み,さらに各資産 とは,CAPMの結論である(1−1)式さらに(C.1) のポートフォリオへの組入れ比率が当該資産の市 ないし(C.3)が現実に妥当するか否か,すべての 場価値を全資産の市場価値合計で割った値にちょ 資産の期待収益率が(1−1)式もしくは(C.1)を満 うど等しくするポートフォリオである。ここで問 たしているか否かであろう。したがって各資産の 題となることは,われわれが存在するすべての資 収益率に関する入手可能な情報から市場ポートフ 産の収益率やその市場価値についての情報を入手
〜
Iリオの収益率RMを推定し,つぎに各資産の収 できないこと,それゆえ市場ポートフォリオへの
〜 一
v率とRMから各資産の期待収益率R、G=1,…,N) 各資産の組入れ比率を求めることができないし.
およびβ、(ノ謹1,…,N)を推定し,その後R」とβと さらに市場ポートフォリオの収益率のデーターも の線形性を検定しなければならない。 入手不能であることである。したがってCAPMの ではこのようなCAPMの検証手続は実行可能で 検証手続が実行可能であるためには問題は,入手 あろうか。もし実行不可能だとすれば,当然CA 可能な情報を用いて市場ポートフォリオの収益率 PMは検証不能な理論であることになり, CAPM を推定することができるか否かに帰着される。
を用いて実際にリスク・プレミアムを測定したと われわれは次節において市場ポートフォリオの しても,その測定数値は何ら合理的意味を持たな 収益率の推定問題を検討することになるが,CA いし,さらにCAPMによって各種情報の効果を測 PMが検証可能な理論であるためには,上記の推 定したとしても,その測定は正当なものとはいえ 定問題に肯定的な結論が得られ,さらに(C.1)が なくなってしまう。反対に上の検証手続が実行可 現実に妥当することを必要とする。そこで次節で 能であり,かつ各資産の収益率が(C.1)を満たす は(C.1)の成立がどのような意味を持つのかも上 ならば,CAPMはリスク・プレミアムの測定や各 の推定問題と合わせて論じることにする。
4 茨城大学政経学会雑誌 第49号
ると,次の式が得られる。
g・CAPMの検証可能i生 R。=θ+λσ・(RM) (2−2)
N 〜 _ 〜
bAPMが検証可能であり,さらに現実説明力を なぜならば,Σコじ彦=1, cov(RM, RM)=σ2(RM)
=1
持つ理論であるためには,市場ポートフォリオの であるから。(2−1)式を(2−2)式に代入してλを 収益率が推定可能であって,(C.1)が成立するこ 消去する。その結果,
削 〜
Q竈鞭鵬ゴ(C°1)の成立が意味する R一θ一嘆諭)(R・一θ)
命題(C.1)の成立は「CAPMの諸仮定」の成立を もしくは
意味しない。なぜなら「CAPMの諸仮定」は(C.1> R、一θ=β、(R。一θ) (2−3)
〜 帽
h撚欝疏綴懲繍馨を得る・ここでβ一c°蠕の・さらに市場
あろうか。その必要十分条件は,以下の〔命題1〕 ポートフォリオの収益率と共分散がゼロとなる で与えられる曾 収益率を持つポートフォリオをZとする。ボー トフォリオZの期待収益率R。についても(2−3)
〜 哩 〜
k命題1〕任意の資産ノの期待収益率R」がβと 式を満たす。ただしβ。=cov(R。,RM)/σ2(RM)
線形であるための必要十分条件は市場ポートフ =0であるから,
オリオが「平均一分散優位」 (mean−variance R。=θ (2−4)
dominance)の条件を満たすことである。 となる。したがって,以下を得る。
一 一
q、ニR.+β」(RM−Rz) (2−5)
_一 一
アの命題における「平均一分散優位」の条件とは, R、はRMにより決定されR、とは無関係であるの 一
qoss〔9〕において「平均・分散効率性」(mean一 で, R・とβ、とは線形である。
一 魔≠窒奄≠獅モ?@efficient)とよばれ, Roll〔6〕によって本 つぎに必要条件の証明。つまり任意のR,とβ、と 稿で用いたと同様の名が使用されたもので,分散 が(2−5)式を満たすならば,市場ポートフォリ
が一定ならば期待値の最大となるポートフォリオ オMはMV−Dを満足することを証明する。ここ を選好し,また期待値が一定ならば分散の最小と では必要条件の対偶命題を証明しよう。市場ポ なるポートフォリオを選好する,という条件であ 一トフォリオがMV−Dを満たさないとすれば,
る(以降この条件をMV−Dと記す)。 すべての資産およびポートフォリオの期待収益 率は(2−1)式を満足しない。そこで(2−1)式が任
〔証明〕任意の資産ノの期待収益率R」とβ・と 意の資産およびポートフォリオに対して成立し が線形であるための十分条件を証明する。十分 ないにもかかわらず, (2−3)式が成立すると仮 条件の証明のために市場ポートフォリオは,M 定して矛盾を導びく。βの定義に注意すれば V−Dを満たし,各資産への投資比率がコc登,…, (2−3)式は以下の(2−6)式となる。
コじ鵠であると仮定する。市場ポートフォリオが R、一θ RM一θ (2.6)
〜 〜 一 酎
lV−Dを満足しているならば,任意の資産」の cov(R」,RM) σ2(RM)
期待収益率R、について以下の式が成立する碧 この(2−6)式の値をλとお・けば,(2−6)式の成立 R,=θ十λcov(R,,R.)forj=1,…,N(2−1) は(2−1)式および(2−2)式の成立を意味する。
〜 押
アこでθとλはラグランジェ乗数R、(=Σコじ聖 これは矛盾である。したがって(2−1)式が成立 R、)は市場ポートフォリオの収益率である。 しない場合にはR・とβの線形関係を示す(2−3)ノ=1
(2−1)式はすべての資産について成立するので, 式も成立しない(証明終り)。
(2−1)式の両辺にコじラを乗じて」について合計
斎 藤:市本市場理論と検証可能性 5 さて〔命題1〕はR、と尾との線形駐と市場ポ オ収益率のデーター数が増大すればb、(=bゴ(。・))
一トフォリオのMV−D条件の満足とが同等である がβ、に限りなく近ずくような推定を可能にするポ ことを保証している。したがって(C.1)の成立は, 一トフォリオを,市場ポートフォリオに対する代 ポートフォリオ選択に際してMV−Dルールが資本 理ポートフォリオとする。
市場を支配していることを意味しており,逆に市 この属性を持つ代理ポートフォリオが構成可能 場ポートフォリオMがMV−Dを満たすことが検証 であれば,各資産の期待収益率Rゴ(ノ=1,…,N)と
されれば,(C.1)が検証されたことになる。 代理ポートフォリオによる推定値b、(T)(ノ=1,…,
ところで市場ポートフォリオの収益率を知るに N)との間の線形性を検定することにより,(C.1)
は,すべての資産の収益率と各資産の市場ポート を間接的に検定することができよう。ただし,こ フォリオへの組み入れ比率,もしくは投資比率に の方法によって線形性が支持されたとしても,そ 関しての情報を入手しなければならない。しかし, れはR、とβとの線形性に関する必要条件の成立
これらの情報を完全に収集することは不可能であ を意味するので,(C.1)が検証されたことにはなら る。したがって,われわれは市場ポートフォリオ ない。ただわれわれが主張しうることは,その線 がMV−Dを満たすか否かの検証において決定的に 形性が成立するならば,(C.1)の資本市場における に重要な情報である各資産への投資比率に関して 不成立を示す証拠が存在しないといったことであ まったく無知に等しい状態にあると思われる。そ る。市場ポートフォリオを直接推定できないので 一Dに合致するか否か確定的な判断を下せる位置に, 度の検証で満足せざろうえない。では上記属性を
われわれは立っていない。さらに,市場ポートフ 満たす代理ポートフォリオは存在するのであろう オリオについての情報不足は,われわれが市場ポ か。この間題に対する答は,以下の命題によって 一トフォリオの収益率の確率分布に関してもほと 与えられる曽
んど知識を持たないことを意味している。東証上
場の株式各銘柄に対する投資収益率などの入手可 〔命題2〕 情報の入手可能な資産に対するβ 能なデーターによって市場ポートフォリオの収益 を漸近的に推定できる代理ポートフォリオは,
率を推定しようとしても,その確率分布の不知性 一般に存在しない。
が推定を著じるしく困難なものにしている。
そこで入手可能なデーターで市場ポートフォリ 以下では第1番目の資産から第L番目(L<N)
オの直接的な推定を断念し,以下のような属性を の資産までの収益率に関する情報が入手可能であ 満足するポートフォリオを市場ポートフォリオの って,このL個の資産を組み合せたポートフォリ 代理(proxy)と考え,この代理ポートフォリオに オを代理ポートフォリオWとする。 L個の資産そ よって市場ポートフォリオを推定したことにする。 れそれについてのT期間の収益率データーRノ,(ノ われわれが検証を意図したのは(C.1)であった。 訟1,…,L,F1,…,T)と代理ポートフォリオのT期
(C.1)の検証にあって必要な情報は,R、(」謹1,…, 問の収益率データーRw,(」=1,…,T)との直線回帰 N)とβ、(ノ=1,…,N)であり,市場ポートフォリオ によってb、(T)が推定されるので,
に関する情報はβを求めるときに必要となった。 b、(T)=cov(Rゴ,Rw)/σ2(R w) (2−7)
そこで(C.1)が成立すると仮定したとき,あるポ ここで
一トフォリオ収益率のT期間のデ+を用いて ・・v(R、,Rゆ一÷自(R・・−R・・)(RパR睨)
要緒鶴そ騰誓灘皇磐了1 σ・(R・)一十象(RバR・・)・
、
6 茨城大学政経学会雑誌 第49号
である。つぎに〔命題2〕の証明をしよう。 (C.1)の間接的検証も不可能であることが判明し た。したがって,われわれはCAPMがそのままで
〔証明〕 (C.1)もしくは下の(2−8)式が成立 は検証不可能な理論であると結論づけざろうえな すると仮定できるので,(2−8)式を第1資産か い。CAPMの大きな魅力であったいくつかの結論,
ら第L資産まで加重平均した代理ポートフォリ たとえばすべての資産のリスク1単位あたりのリ オWについても以下の(2−9)が成立する。 スク・プレミアムは等しいとか,ある資産に個有
〜 〜
q、,=θ+β、(R蹴一θ)+ラ、,forノ=1,…,L(2−8) の情報によって当該資産の価格変動の規則性を言
〜 卍
qw,=θ+βw(R蹴一θ)+ラw, (2−9) い当てることはできないなどは,理論上の結論で ここでE(ラ」∂=E(ラw診)=0,さらにすべての あって,現実の資本市場に対する言及とは言いが
解 瑠
匇ヤにおいてすべての資産につきE(ηπ,RM∂= たいこと,ましてCAPMにもとずくリスク・プレ 0である。またR翫はt期の市場ポートフォリ ミアムの測定や情報の資産価格に対する効果の測 オの収益率である。回帰係数bゴ(T)の極限値b, 定などに対しては,それらがCAPM理論が理論と は,(2−8)式お・よび(2−9)式を用いると, して持っていた結論と別個の意味を有する可能性
摩甑(T)一嘩(藷)一β 難繧る の解釈にあたって1糎であるべ
岬 〜
タwσ2(R餌)+cov(ラ賄R配) C・V(ラ,,ラゆ 1∬.収益発生プロセスとAPT 十 σ2(Rゆ σ2(R。)
〜 〜
@ CAPMの一つの大きな特徴は,各資産の収益発 C・V(ηJ,7w) γ2(R酌R。)=β、 十 for σ2(Rゆ βw 生プロセス(return generating process)に関し
ノ=1,…,L (2−10) て収益率の分散共分散行列Vが非特異であるとし
〜 〜 〜 〜
アこでγ(R賄RM)はRwとR醒の相関係数である。 た仮定,すなわち各資産の収益率の分散,共分散 b、がβと等しくなるためには,まず(2−10)式右 が有界でその相関係数が±1になることはないと 辺の第2項cov(ラ」,励がゼロにならなければな する仮定以外に特別これと言った仮定も存在しな
らない。さらに (a)代理ポートフォリオWと市 いことである。そこで各資産の収益発生プロセス 場ポートフォリオMとの収益率の相関係数γ を特定化することによって,市場ポートフォリオ
(Rw, R湿)が完全相関すること,それに加えて(b) Mを知ることなしに真のAについての情報を得る β耐が1となること,等がすべて同時に満足され ことができるだろうか。この問題に対する答は否 なければならない。(a)の場合,収益率の分散共 定的なものである。つまり各資産の収益発生プロ 分散に関する仮定(A。1),すなわち行列yは非 セスを特定化することによっても,CAPMの検証 特異であることに反する。また(a)と(b)が同時に 可能性に関して前節以上の前進を見ることができ
〜 舟
ャり立つ場合には,R聡=R罵を除いて仮定 ない。以下この点を若干論じ,その後裁定評価理
(A.1)と両立しない。Rw,=f亀 ,は代理ポート 論(arbitrage pricing theory, APT)について述べ フォリオが市場ポートフォリオ自身であること る。
を意味しており,すなわち市場ポートフォリオ 各資産の収益発生プロセスとして以下を考える。
以外の代理ポートフォリオによって正しいβの すべての資産の収益率変動を共通に説明する要因
〜 〜 卍 〜
推定は不可能となる。したがって仮定(A.1)の をFとし,F(=(F、,…,Fκ) )はK次元列ベクトル 酎
烽ニでは,市場ポートフォリオ以外に代理ボー であるとする。またE(F)≡0であるとする。b、、
僧
gフォリオは存在しない(証明終り)。 をF、の1単位あたりの変動に対する第ノ資産の収 〜v率R、の変動程度を示す係数であるとすれば,
この命題によって代理ポートフォリオを用いた 行ベクトルbノ≡(bノ、,…b」。)によって第ノ資産
斎 藤:資本市場理論と検証可能性 7 の収益発生プロセスは以下で表わされる。 が完全相関する場合であるが,(3−2)式と(3−3)
岬 一 〜 〜 〜 〜
q、=R、十b,F十ε、 forj=1,…,N (3−1) 式とからR とRwが一般に完全相関しないことが ここでRノは第」資産の期待収益率,ξノはE(ε j)= 知れる1)したがって収益発生プロセスを特定化し E(εゴ,εi)≡0である第j資産に固有の収益変動を てもCAPMのリスク尺度β、を推定することができ 〜
ヲす項である。さらに共通変動の説明要因Fの任 ず,それゆえ第ノ資産のリスク・プレミアムも測 意の2つの要素i,jは独立であるとする(E(F、 定できない。
Fゴ)…0)。また各資産の収益率の分散が有界であ ここに至ってわれわれは,各資産の収益率をリ 〜
驍フで,各共通要素の分散σ2(F∫)(j=1,…,K)お・ スク・プレミアムに明示的に結び付けて説明する よび固有要因の分散σ2(ξ、)(」=1,…,K)がすべて ことを断念しよう。代りにもっと弱い結果が成立 有界である8) するか否を問題としよう。すなわち各資産の収益
収益発生プロセス(3−1)式を使ってβ、の推定の 発生プロセスとして(3−1)式が成立するとすれば,
問題を次のように考えよう。N個ある資産のうち 各資産の収益率が共通な要因爵によって影響され 第1資産から第L資産までのL個の資産の収益率 ることになるので,資本市場で均衡する期待収益 帽
ノついて情報が入手可能であって(L〈N),こ 率はこの共通要因Fならびにその反応係数bゴ(ノ=
のL個の資産を投資比率x(=コσ1, ,XL))で組み合 1,…,N)とどのように関係しているのか,といっ せたポートフォリオをWとする。ただしLは,各 た問題である。換言すれば,収益発生プロセス 資産の固有変動項に対して大数の法則が適用可 (3−1)式を仮定することの市場均衡に対する意味
能なほど十分に大きな数であるとする。そのとき を明らかにしようとすることである。 削 κ 〜ポートフォリオWの収益率Rw(二Σ∬、 RDは,大 この問題に対する答がAPTである。 APTにお κ数の法則からΣ」C、ε、・=0であるので以下で表わさ いてはCAPMで用いた仮定のうち仮定1,3お・よ
れる。 び5と仮定2を若干変えた「投資家は各資産の収 qw=Rw十b認 (3−2) 益率について同一の予想を持つ」,等を前提とし
上の式のRwは収益率Rwの期待値, bwの第ノ素要 ている2)CAPMにおいては投資家は収益率の確率 κ煽、σ驚1,…,K)はΣb、、コc、=bw、である。そこで第 分布の2次のモーメントまで合意している必要が
」=1
1資産から第L資産までのL個の(3−1)式とボー あったが,APTにおいては投資家は確率分布の トフォリオWについての(3−2)式については情報 すべてのモーメントについて合意している必要が が入手可能であるので,R、とb,(ノ=1,…,L)お・よ ある。これらの諸仮定と市場均衡の必要条件であ びRwとbwはすべてその値が知られていると考え る裁定による均衡条件を用いて〔命題3〕を導び
られる。これら既知の数値を用いてβ(j=1,…,L) く。市場が均衡していれば取引が停止した状態に が推定できるか。 あるので,「投資額ゼロで確実に利得を得る機会は 各資産の収益率が(3−1)式で与えられたときの 存在しない」とする条件を満たさなければならな 〜
s場ポートフォリオMの収益率R躍は(3−3)式とな い。この条件が裁定による均衡条件である。
る。ただし各資産の市場ポートフォリオへの組み
込れ比率が不明であるため煽は不明である。 〔命題3〕資産の収益発生プロセス(3−1)式を
〜 一 〜
RM=R湿十bMF (3−3) 前提とすれば,裁定による均衡によって第j資 さらにβ,の定義から 産の期待収益率R、は,1とb、、,…,b、。の一次
〜
c響瞬…訓岡 欝黛惣1謄したがって・ある刷び
〜 卍
ナあった。β、が推定可能となるのはR朗がRwによっ R、=α。+δ、b、、+…+δ。b、、
〜 〜
ト完全に記述できる場合,もしくはRMとRwとが for ノ=1,…,N (3−5)
8 茨城大学政経学会雑誌 第49号
となる。 数をゼ函こずる『ポートフォリオである。ポートフ 解
Iリオゴは収益率R が
卍 削 卍
アの命題はRoss〔7〕によって初めて証明され, R ≡・κ R;α・+(F、+δ、)for
その後多数の論文にその証明が見られるので本稿 ♂=1,…,K (3−9)
では証明を割愛する30)ただし,以下の議論や 第♂共通要因F、と完全相関するものであり,(3−9)
(3−5)式のα。およびδ、、G;1,…,K)の解釈に必要 式の期待値をとることによりδ、はポートフォリオ となる諸点だけを述べることにする。以下の議論 ∫の期待収益率からα。を差し引いた値に等しくな における式の表現を簡略化するため行列およびべ る。
クトルを使用する。その行列お・よびベクトルを次 δ、=R 一α。for =1,…,K (3−10)
のように定義する。R(=(R1,…,R.))は収益率の 結局ポートフォリオ は収益率の不確実性要因 〜
m次元列ベクトル,R(=(R1,…RN))は各資産の としてF、のみを含むように構成されたポートフォ 期待収益率のN次元列ベクトル,ε(一(9、,…馬)) リオであったから,このポートフォリオ構成と同 は各資産の固有変動要因を示すN次元列ベクトル, じ手続によって収益率の不確実性要因としてF、
〜
ツ(=(δ、,…,δ。))はK次元列ベクトル,行列 のみを含むポートフォリオ1や,またFκのみを収 B(=[b、,…,bN] )はN行K列の行列であるとする。 益率の不確実性要因とするポートフォリオKを逐 最後にeは要素がすべて1であるN次元列ベクトル 次構成することができる。これらのポートフォリ であるとする。これらのベクトルと行列によって オ1からKまでのK個のポートフォリオと 赴 収益発生プロセスの(3−1)式,さらに〔命題3〕の フォリオ0とによってα。,δ、,…,δ。に対する経済
(3−5)式は下のように表わされる。 学的な意味が(3−10)式同様に明らかとなる。
直二R+B孟+ζ (3−6) 以上で(3−5)式の係数の解釈を終えることにし R;α。e+Bδ (3−7) て,つぎに以降の議論に関連する問題を論じよう。
最初に十分に分散化されたポートフォリオで, 市場ポートフォリオMは市場に存在するすべての 投資比率泥゜=(コじ10,…,XNO)が以下の条件を満足す 資産から構成されるポートフォリオで,各資産の るポートフォリオを考える。 収益発生プロセスが(3−1)式に従がうとき,市場ポ
〜
?泣テ=0,ヱ゜B=0,x°e=1 一トフォリオの収益率RMは(3−3)式で与えられ 一 キなわち大数の法則によって固有変動要因がゼロ た。この市場ポートフォリオの期待収益率RMに
となるほど十分に分散化され,共通変動要因につ 関しても〔命題3〕より,
いてもその係数をすべてゼロにし,さらに投資比 RM=α。+δ、b。、+…+δ。bM。 (3−11)
〜 ヲの合計が1となるポートフォリオである。この を満たしている。したがってRMは
ポートフォリオ0とよぶことにする。ポートフォ RM=α。十b岨(F1十δ1)+…+b照¢κ+δκ)
リオ0の収益率R°は(3−5)式より, (3−12)
R°・=κ゜亜=α。 (3−8) となる。この(3−12)式において,α。はポートフォ 〜
ニなる。したがってα。はリスク要因をすべて消去 リオ0の収益率,(F、+δ、)はポートフォリわ 〜
オたポートフォリオ0の収益率である。 の収益率R からα。を控除したものにそれぞれ等 つぎに上のポートフォリオと同様に十分に分散 しい。それゆえポートフォリオ0からポートフォ 化されたポートフォリオで投資比率エ が下の条 リオKまでのK+1個のポートフォリオの収益率 件を満たすポートフォリオfを考える。 の一次結合によって市場ポートフォリオの収益率 ガε=0,κ B=(0,…,1…,0)}1)κ e=1 RMを表わすことができ,したがって市場ポートフ このポートフォリオは,第∫共通変動要因F、の オリオの投資比率もK+1個のポートフォリオの 係数を1とするが,それ以外の共通変動要因の係 投資比率の一次結合で表わせることになる乙2)
斎 藤:資本市場理論と検証可能性 g さて〔命題3〕の検証可能性を論じよう。(3−5) を述べる前に諸前提を確認しておく。
式は検証可能な命題として何を意味しているのだ 前節のAPTに用いたと同様の仮定,すなわち ろうか。またそれは検証可能性であろうか。これ 仮定1,3および5,さらに投資家の予想の同一 らの問題にっいてRoss〔9〕による確率優位とそれ 性(homogeneons expectation)と各資産の収益発 から導き出される分離定理を拠り所として,節を 生プロセス(3−1)式を前提とする。また収益発生プ 改め論ずることにする。 ロセスについて前節で設けた前提がそのまま成立
す6とする ) hV. APTの検証可能性
各資産の収益発生プロセスとして(3−1)式を仮 〔命題4〕 APTの(3−5)式が成立することと 定したもとで第3命題の(3−5)式が成立するとす K+1資産分離が成立することと同値である。
れば,そのことは現実の資本市場に対してどのよ
うな新たな知識をわれわれが獲得したことを意味 〔証明〕 (a)まずK+1資産分離が成り立てば,
するのであろうか。この問題を解明するためたい (3−5)式が成立することを証明する。K+1個の へん有用となる確率優位(stochastic dominance) ポートフォリオとして前節と同じ次のものを考 の定理から述べよう。 える。ポートフォリオ0の投資比率x°は以下を
満たす。
一 k定理〕 uを実数上で単調増加,上に凸な関 x°B=0,κ゜e=1,κ゜ε=0,エ゜R=α。
数の集合Uに属する任意の効用関数であるとす すなわちポートフォリオ0は確実に収益α。をも
〜 配
驕B確率変数RとFに対して期待効用がE{u もたらす投資である。つぎにポートフォリオ∫
〜 〜
iF)}≧E{u(R)1となることと,以下の条件を (ゴ1,…,K)の投資比率x は
満たす確率変数竃と多とが存在することとは同 κ B=(0,…,1,…0),x e=1, x εニ0,
値である。ここで条件とは, for =1,…,K
〜 卍
q〜茸+多+ζ を満たし,その収益率R (ニx R)が
〜 〜 一 〜
㌦ は分布の形が同一であることを意味し,蕾 R ≡κ R=x R+F、
〜
?Oは非正な確率変数でζはE(91F+シ)=0と for∫=1,…,K (4−1)
なる確率変数である。 となり,第∫共通要因によってのみ収益が変動 する投資である。このようなK+1個のポート この定理の証明は他書に譲る馨)本節にお・いても フォリオの一次結合によって効用最大化が可能 危険回避的な投資家を前提としたので,投資家の であるので,定理の条件を満たす効用係数U,
効用関数は定理の集合Uに属することになる。 上記K+1個の一次結合ポートフォリオκ,一 さてすべての投資家が2つのポートフォリオの 次結合ポートフォリオではない任意のポートフ みから構成されたポートフォリオによって期待効 オリオ0に対して,
〜 卍
pを最大化できるとき,市場では2資産分離(tow E{u(κR)1≧E{u(oR)} κ κfund separation)が成立するといわれる。 CAPM ここでx=Σλ、ゴ,Σλ、=1である。 uが微分
=o 冨o
にお』いて無危険資産あるいはゼロ・ベーター・ポ 可能であるとすれば,E{u(xR)}は最大化の必 一トフォリオと市場ポートフォリオとの2つの資 要条件として,各資産の投資比率鱗について 産による分離が成立することがよく知られている。 (4−2)式,各λ、について(4−3)式を満たさなけれ
われわれは以下の命題でK+1個のポートフォリ ばならないき5)
陶 〜 〜
Iを組み合せることにより投資家が期待効用を最 E{u (xR)(R、−R、)}=Ofor
大化できるK+1資産分離にっいて述べる。命題 ∫,ノ=1,…N (4−2)
10 茨城大学政経学会雑誌 第49号
E{u (xR)(》R一κ゜R)1=Ofor 果を得る。他の資産についても同様なK+1個 F1,…,K (4−3) のポートフォリオによる新たなポートフォリオ 第ブ資産を第1資産であるとし,(4−2)式に収益 を構成することにより,確率的に優位な収益率 発生プロセス(3−1)式を代入して整理する。 を作り出すことができる。つぎにK+1個以上 その結果, ポートフォリオに投資することによって,投資
R・一ト茎(b・ −b・ )・E銭七¥1) 案繕鴛窒灘崩亡齢雲姦講
for F1,…,N (4−4) がDのポートフォリオVを考える。その投資比 を得る。(4−4)式のE(F、u )/E(u )は(4−3)式 率uは
にベクトル表現された収益発生プロセス(3−6) o=λ。x°+λ、エ1+…+λκ♂+η
式を代入整理すれば, つまりポートフォリオ0からポートフォリオK
R・一一E
投縺@ 黎藩倉1蟹鵡rリオとよばれ
for∫=1,…,K (4−5) 裁定ポートフォリオηは として得られる。(4−5)式を(4−4)式に代入する。 ηe=0,η∈=0,ηB=0
q、=(R、一Σb、、δ、)+Σb、、δ, の条件を満たすポートフォリオである。ηRに
」=1 =1
for F1,…,K (4−6) ついて次が知れる。
酎 卍
i4−6)式の右辺第1項カッコ内がα。となること E{ηR}(λ。κ゜+…+λ。κκ)R}=0
_ κ κ 〜 〜
ヘ容易に確かめることができる。A=(R、一Σ したがって(Σλ、κ」)RはoRよりも確率優位に
ノ=1 ゴ罵0
b、、δ、)とおき(4−6)式をベクトル表示し,さら あることになる。また裁定ポートフォリオηで に炉を乗ずる。 以下の条件を満足するものは効用関数がUに属
x°R=x°eA十x°Bδ;A (4−7) する限り不可能である。つまり 一
ネ゜の条件より(4−7)式の右辺がAとなり,エ゜R ηe=0,ηε=0,ηB=(0,…,1,…,0),
=α。であるので,したがって(3−5)式が成立する。 ηR;0
(b)っぎに(3−5)式が成立すればK+1資産分離 共通要因ε番目だけを残すものである。このポ が成り立つことを証明する。(a)の部分で議論し 一トフォリオの収益率は
〜 〜 〜 〜
たポートフォリオ0からポートフォリオKまで ηR=δ、十F、=(R 一α。)十F、 (4−10)
のK+1個のポートフォリオは,N個の資産に となる。(4−10)式の期待値をとると左辺は仮定 対して確率的に優位な状態にあることを示そう。 によりゼロとなるが,δ、がゼロになるには効用
(3−5)式が成立する下で第k資産の収益率Rκ 関数が危険中立者の場合に限られる((4−5)式 は の分子E(F、u )=0となる条件)。
卿 κ κ 〜
q。=α。+Σb。、δ、+Σb、、F、+ε。
」=! 」累1
for k=1,…,N (4−8) この命題によってわれわれは, APTの(3−5)式 κとなる。これはポートフォリオ0を1一Σb元ゴ の成立がK+1資産分離の資本市場での成立を意
」=1
単位,ポートフォリオ1をbκ、単位,…さらに 味していること,またK+1資産分離が資本市場 ポートフォリオKをbκκ単位で構成したポート で成り立つことが保証されれば,APTの(3−5)式 即
tォリオ収益率R が成り立つことを知った。そこでAPTの検証可能 〜 κ K 卍
@ Rニα。+Σb陀,δ」十Σbκ,F, (4−9) な命題はK+1資産分離が成立することである。
ゴ犀1 ゴ=1
によって確率的にドミネートされる。なぜなら 市場ポートフォリオはK+1個のポートフォリオ
〜 〜
qκ=R+㍉となるので定理を適用して先の結 の一次結合によって構成されていることが知れれ
斎 藤:市本市場理論と検証可能性 11 ばよいことになる。 ったが,市場ポートフォリオの構成に関して無知
しかし第H節でCAPMの検証可能性を問題にし に近い状態にあるのでこの命題を検証することが たときと同じ批判がこの場合にも妥当する。市場 できないと6)また市場ポートフォリオを知ることな ポートフォリオの構成を問題にする以上すべての しに各資産の収益率のベーター係数β、を漸近的に 資産の市場価値と収益率が知られなければならな 不偏に推定できる代理ポートフォリオも存在しな い。しかしこれらの情報をわれわれは入手するこ いことから,R,とβ、との線形性も検証できない。
とができない。したがって市場ポートフォリオが これらの理由でCAPMは検証不能な理論であると いくつのポートフォリオの一次結合になっている 結論づけることができる。
か知ることができない。それゆえわれわれはAPT APTに関してAPTの均衡条件式とK+1資産分 に関しても検証可能な理論とはいえないと判断せ 離とが同等であったから,市場ポートフォリオが ざろうえない。 K+1個のポートフォリオの一次結合で表わされ
最後にこのわれわれの結論に対して次のような ることを実証すればよい。しかし市場ポートフォ 反論が行われることが予想される。すなわち(3−5) リオに関するこの属性も,われわれが市場ポート 式が成立していることは,帰無仮説として(3−5)式 フォリオの構成についてほとんど無知であること の から検証することができない。さらに通常,APT
δ、=δ。=…ニδ。=0 の検証であるとして用いられている因子分析によ を棄却することに等しい。そこで因子分析によっ る方法は,投資家の間で収益発生プロセスについ てδ、α=1,…K)を推定し,その推定値が帰無仮説 て合意が形成されうるほど十分に,収益発生プロ を棄却するか否かでAPTの検証は可能であるとい セスに関する情報が存在しないことを前提としな う反論である。この反論に対してわれわれは,因 ければならず,したがって裁定による均衡が達成 子分析によるAPTの検証はAPTの検証ではないと できない状況を対象とする検証方法である。それ 答よう。なぜならAPTにおいてはすべての投資家 ゆえわれわれはAPTに関しても適切な検証方法を が収益発生プロセスについて同じ予想を持つこと 持っておらず,APTは検証不能な理論といわざろ を前提としていた。したがって各資産の収益率が うえない。以上の諸点をわれわれは本稿において どのような要因によってどのような影響を受ける 明らかにした。
のか,すべての投資家が知っていることになる。 本稿の結論はすべて否定的なものであった。そ しかし因子分析はこの前提を完全に否定している。 れは資本市場に関する理論が現在置かれた状況そ 各投資家が収益発生プロセスについて無知に等し のものである。われわれは資本市場理論のなかで い状態であるから因子分析をする必要があるので 説明力の高い理論を持っておらず,リスク・プレ あって,このような無知を前提としては裁定によ ミアムや資産価格と情報の効果などの現象を十分 る均衡条件(3−5)式が成立しなくなる。したがって に説明する理論を持っていない。寄る辺ない状態 因子分析によるAPTの検証はAPTの検証ではなく, に暗澹として懐疑論者になるか,理論をすて現実
まったく別の何かを行なっていると考えなければ の描写でよしとする現実主義者なるかいずれかな ならない。 のであろうか。
これらいずれの流派に堕する必要はまったくな結びにかえて いとわれわれは考えている。資本市場の理論が不
われわれは資本市場に関する諸理論の現実説明 十分な状況にあることは,理論的に進歩する可能 可能性を検証可能性の立場から議論してきた。 性が高いこと,その進歩にわれわれも荷担するこ CAPMについては,検証可能な命題は市場ポート とができることなどを意味している。したがって,
フォリオが平均一分散優位にあるとするものであ 新らしい理論構築の努力を開始すべきであろう。
12 茨城大学政経学会雑誌 第49号
われわれはまず,現実に入手可能なデーターを十 を構成する。そのための第1歩を踏み出すべきで 分に分析し,その分析結果を十分に踏えて新理論 あろう。
参考文献
注1)Fama〔3〕において本論文と同様のCAPMの前 が得られる。
提を用いている。 6)以下の命題はMiller and Scholes〔5〕からビン 2)このBlackの結論が成立することの証明は, トを得ている。
Black〔1〕, Roll〔6〕参照せよ。 7)σ2(ε、)G=1,…,N)が有界とする条件は,大数の 3)Fama and MacBeth〔4〕は本論文と同様に 法則が成立するための十分条件である。
〜 〜
bAPMのimplicationとして(C.1),(C.2),さら 8)R とRwが完全相関しないことは,次のように
〜 帽 酎 〜
ノ(C.3)を取り出すが,彼らはこれら3つの命 して知られる。γ(R。,RのをR醒とRwの相関係 題間に存在する論理的関係を十分に認識してい 数であるとする。
岬 μ
S)館お命題の証明は,㎞〔8〕,恥ll〔6〕1, γ(蜘一繋誤Rの一
依拠している。 Σb町b。、σ・(FD
5)共分散cov(R ,Rj)をσ、、と書くことにする。な [Σb2・、σ2(F、)][Σb・、 σ2(F、)]
おσ、、=♂(R )である。MV−Dが成立してい 上の式の右辺の分母・分子は等しくならないの
〜 〜
驍フで,ポートフォリオの投資比率コじ、(ノ=・1,…, で,R廻とRwは完全相関しない。
N)は, 9)ここではすべての資産について投資家が晴報を 卍
高≠?q・=ΣπノR・,3,言,♂(Rp)=ΣΣ銑−、 有しているとする。この点注意すべきである。
σ、、,1=Σコc、 10)たとえば若杉〔12〕を見よ。またRoss〔7〕の証 なる問題の解でなければならない。したがって, 明とことなる新らしい証明が斉藤〔11〕にある。
ω,θをラグランジュ乗数とするとき, 11)(0,…,1…,0)は第ゴ番の要素が1で,それ以外 〜
k=Σン、R、+ω[♂(R,)一ΣΣ11、記、σ、,]+θ の要素がすべてゼロであることを示している。
(1一Σコじ、) つまりxは κの最大化の一階条件が満たされなければならな Σエ,b油;Of・rんキallん
」=1
N
「。それゆえ, Σコσ、 b、、=1
1V ;1
∂L/∂苫ノ=R、−2ωΣ}、σ、、一θ=0, の解である。変数がN個,式の数がΣ」C、=1を 冨1
@for alU (1) 含めてK+1本である。 NはKより十分大きい
∂L/∂ω=σ2(Rp)一ΣΣ}、π、σ、、=0 (2) と仮定したので,投資ベクトルx、は一義的に決
∂L/∂θ=1一Σち=0 (3) 定されない。 κ
アの3条件を満足する投資比率を鍔G=1,…,N) 12)ポートフォリオ0に1一Σb均単位,ポートフ
ノ=1 岬 〜
ナあらわすことにする。そのときR餌=Σ跨R、 オリオ1をb岨単位,…さらにポートフォリオK と定義すれば, にb照単位それぞれ投資することにより,市場
N 〜 〜j1σ、ノ=cov(R,, R.) (4) ポートフォリオR酬を構成することができる。5罵1となる関係が成立する。したがってλニ2ωとし, 13)たとえばStrassen〔10〕を見よ。
(4)式を(1)式に代入して整理すれば 14)命題4にお・けるK+1資産分離が成立する必要
〜 〜
q、=θ+λcov(R」,R醒) 十分条件は,命題4のそれよりも,もっと広い
斎 藤:資本市場理論と検証可能性 13 条件でよい。RQss〔9〕を見よ。 〔5〕Miller, M.H. and M.Scholes,1972, Rates of 15)消費をcとし,効用係数をu(c)とする。期待 return in relation to risk:Are−examination of
効用最大化をするためには,以下を解けばよい。 some recent findings,in:M.C. Jensen, ed., κ
@ max E{u(C)15・ちκθ=属λ・コσ e・Σλ・=1 S如伽5∫ηZんeまんeoγ」0!cαμα1飢α7んe置5,
〜 〜
メ¢ R praegar, New York.
この問題についての解は 〔6〕Roll, R.,1977, A critique of the asset pricihg
〜
d{・ (・)R }一θ・f・・all/ th…y ・t・・t・・P・。t I,0。 p。、t and p。tenti。1 θ1,θ2はラグラジュ乗数。λ」については testability of the theory, Jo駕辮α o〆Fぬαπc如1
〜
d{u (c)κ㍉R}=θ2 for all Ecoπo励ゴc54,129−176.
したがって,(4−2),(4−3)が成り立つ。 一
16)市場ポートフォリオの収益率分布は,総消費の 〔7〕Ross, S.A.,1976, The arbitrage theory of 成長率の分布と同一となるとする議論が存在す capital asset prici㎎, Jo鵬f細 o/Ecoπo鎚ごc
る。この議論にしたがえば,市場ポートフォリ Tゐeo瑠3,343−362.
オの確率分布を知ることができることになる。 〔8〕Ross, SA,1977, The capital asset pricing この点についての議論は他稿にゆずる。 mode1(CAPM), short。sale, restriction and Breeden〔2〕参照。 related issues, 」側71脇Z ol Fご鶉α傭cθ32,177−183.
〔9〕Ross, S.A.,1976, MutuaHund separation in
〔参考文献〕 fi隠ncial the・ry:∀・酢㎜ ° 濡船魏c弼Ec°π゜鎚ゴe5・
〔10) Strassen, V.,19b5, The existence of probability
〔1〕Black, F.,1972, Capital market equilibrium masures with glven marginals, !1π側α!
with restricted borrowing, Joπγπα10ブ Mαgゐgηα8ゴcα4 S重α置ゴ52εc3,36,423−439.
Bπ5s∫πe∬45,444−454・ 〔11〕斎藤進,1984,「裁定取引と資産評価」,諸井若杉
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Eoπo加c5,7,265−296・ について一S.A. Rossのモデルとわが国の実証
〔3〕Fama・E・F・・1976, To%帽α彦∫oη501伽απce・〜 研究_」r計測室テクニカル・ペーパ』No.59,49 Basic Books, New York. −68.
〔4〕Fama, E.R and J.D. MacBeth,1973, Risk,
return and equ{}ibrium: Empirical tests,
Jo駕γηα o!Po1πごcαJ Ecoη07死㌢81,607−639.