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平尾朋仁 論文内容の要旨 主論文

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Academic year: 2021

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平尾朋仁 論文内容の要旨

主論文

Dehydroepiandrosterone augments sensitivity to γ-ray irradiation in human H4 neuroglioma cells through down-regulation of Akt signaling

(性ホルモン

DHEA

はヒト神経膠腫

H4

細胞で

Akt

シグナルを介して 放射線感受性を増加させる)

平尾朋仁、浦田芳重、陰山寛、池﨑みどり、川勝美穂、松瀬美智子、

松尾孝之、秋下雅弘、永田泉、近藤宇史

(Free Radical Research, 42:957-965, 2008)

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科放射線医療科学専攻

(指導教授:近藤宇史 教授)

[緒言]

Dehydroepiandrosterone (DHEA)が酸化ストレスによる細胞傷害を防御する働きがある

ことや、血中に高濃度に存在して

Estradiol

などの他の性ホルモンとは関係せずに抗老 化に働くことが知られている。しかし、その分子機構は不明であり、放射線による酸 化ストレス傷害に及ぼす影響についても不明である。多くのストレスや受容体を介し た情報伝達は、細胞内の酸化還元(レドックス)状態によって制御されること、その

制御に

thioredoxin family

が重要であること、レドックス制御は受容体、シグナル伝達

因子、更にタンパク質脱リン酸化酵素

2A(PP2A)などの Cys

残基を標的にしているこ とが明らかにされてきている。本研究では、ヒト神経膠腫

H4

細胞株を用いて放射線照 射によってもたらされる細胞内情報伝達機構に及ぼす

DHEA

の働きを詳細に検討する ことを目的とした。DHEA

PP2A

のレドックス調節を介して放射線感受性を増加さ せる機構を明らかにしたので報告する。

[対象と方法]

1)細胞株:ヒト脳神経組織由来の神経膠腫

H4

細胞を用い、10% FBSを含む

DMEM

中で培養し、実験

24

時間前に

FBS

0.5%にした。

2)細胞数と細胞増殖:18時間前に

200 nM DHEA

で処理した細胞に3-Gyのγ-線を照 射した。細胞数は

Nucleo counter

で、apoptosis

TUNNEL

アッセイで各々測定し た。

3)細胞周期の解析: Cell Cycle softwareを用いて

Flow Cytometer

で測定した。

(2)

4)免疫学的測定:タンパクを

SDS-PAGE

で展開後、ニトロセルロース膜に移し immunoblot法で測定した。

5)PP2A活性:Ser/Thr phosphatase assay を分光光度法で測定した。

6)定量

RT-PCR:

グルタチオン合成の律速酵素γ-glutamylcysteine synthetase (GCS)重鎖 の遺伝子発現を定量

RT-PCR

法で解析した。GCS

546-bp nucleotide

とβ-actin

404-bp nucleotide

を合成して測定に用いた。

[結果]

1)

γ-線照射に反応して上昇する

Akt

Ser473

リン酸化が、DHEAで前処理した細胞

では抑制された。

Akt

シグナルの下流に存在して

Aktによって負の制御を受ける p21

walf1の発現は上昇した。

Akt

によって正の制御を受ける

Rb

のリン酸化は減少した。

P53

のタンパクレベルとリン酸化には変化が認められなかった。

2) DHEA

は放射線に対する

apoptosis

を増加させた。細胞周期では、DHEA

G

2

/M arrest

を生じた。

3) DHEA

Akt

の脱リン酸化に働く

PP2A

活性を上昇させた。PP2Aタンパク発現の 変動は認められなかった。

4) DHEA

GCS

の遺伝子発現を増加させた。この結果細胞内の

GSH/GSSG

比が上昇 し還元型(活性型)PP2Aが維持されることが認められた。

[考察]

放射線照射に対して細胞の生存と抗

apoptosis

に働く

Akt

シグナルの重要性は知られて いる。本研究では

DHEA

によって放射線照射に反応する

Akt

シグナルが抑制されるこ とを初めて明らかにした。PP2Aは種々の

kinase

に働くことが知られているが、Akt 脱リン酸化はこの

PP2A

によってのみ引き起こされる。このことより、

DHEA

がγ-線照 射に対して細胞生存に働く

Akt

PP2A

による脱リン酸化を介して放射線感受性増加 に作用すると考えられた。

PP2A

は触媒部位を有する

c-subunit (PP2Ac)のほか、 Scafford subunit

Regulatory subunit

からなる。このうち

PP2Ac

のレドックス状態がカルシウム イオンなどで制御されていることが明らかにされている。本研究では、DHEA

PP2c

を還元型に維持することによって活性を維持することを見出した。

P21

walf1

Rb

は細胞周期を制御する重要な因子である。DHEAが放射線照射後

p53

依存性に

p21

walf1の発現を上昇させ、

Rb

リン酸化を減少させて

G

2

/M

期の

cell cycle arrest

を引き起こしたことからも、DHEA

Akt

シグナルに負の制御に働くことが放射線感 受性の重要な制御機構であることを示している。更に、今回これらの

DHEA

の働きが

GSH

依存性レドックスシステムに働く遺伝子の発現上昇によるものであることを明ら かにした。これらの結果は腫瘍細胞の増殖や癌化を回避するように働く

DHEA

の意義 を示したものであると考えられる。

参照

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