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山口 仁孝 論文内容の要旨 主 論 文

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Academic year: 2021

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山口 仁孝 論文内容の要旨

主 論 文

Biological and biochemical characterization of mice expressing prion protein devoid of the octapeptide repeat region after infection with prions

プリオンタンパク質オクタペプチドリピート領域欠損マウスのプリオン感染における生 物学的および生物化学的特徴

山口仁孝、宮田博規、内山圭司、大津山彰、犬伏祥子、森剛志、村松直美、片峰 茂、

坂口末廣

PLoS One 2012 ; 7(8) : e43540

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学系専攻 (主任指導教員:西田 教行 教授)

緒 言

プリオン病は、プリオンの感染により起こる神経変性疾患である。プリオンが感染す ると、神経細胞に発現する正常プリオンタンパク質(PrPC)が、部分的にプロテナーゼ

K(PK)抵抗性を獲得した異常プリオンタンパク質(PrPSc)へ構造変換する。しかし、この

構造変換のメカニズムは不明である。

PrPCN末領域には、8個のアミノ酸配列が5回繰り返されたオクタペプチドリピー (OR)と呼ばれる特徴的な領域が存在する。この領域は銅イオンと結合することが知ら れている。しかしPrPCの機能における銅イオンの役割はいまだ不明である。我々は、以 前、OR領域のみを欠損したPrP∆ORを発現するTg(PrP∆OR)/Prnp0/0マウスを作出した。

本研究では、プリオン感染時のPrP構造変換におけるOR領域の役割を明らかにするた め、Tg(PrP∆OR)/Prnp0/0マウスにプリオンを感染させ、潜伏期間、神経症状、病理学的 変化等を野生型対照群と比較検討した。

対象と方法

Tg(PrP∆OR)/Prnp0/0 マウスと野生型(C57BL/6)マウスの脳内にスクレイピー由来プリ オン(RML )を接種し、潜伏期を算出した。発症したマウスの脳と脊髄を採材し、免疫 学的及び組織化学的解析を行った。臓器の感染価はバイオアッセイ法にて算出した。

またプリオン持続感染細胞(N2aC24L1-3)に、各種変異 PrP 発現ベクターをリポフ ェクション法にて導入した。2日後に細胞ライセートを作製し、ウェスタンブロッティン (WB)に供した。導入したPrPには3F4抗体エピトープを挿入し、内因性PrPと区別 した。

結 果

野生型マウスは感染後165 ± 4日に、Tg(PrP∆OR)/Prnp0/0マウスは147±9日にて発症 した。野生型マウスの脳組織内 PrPScと比べ、Tg(PrP∆OR)/Prnp0/0マウス脳内の PrPSc

(2)

蓄 積 量 は 少 な く 、 一 方 脊 髄 内 で は や や 多 く 検 出 さ れ た 。 免 疫 組 織 染 色 で は Tg(PrP∆OR)/Prnp0/0マウスのアストログリオーシスは野生型マウスと比べて脳内では弱 く 、 脊 髄 内 で は や や 強 く 観 察 さ れ た 。 感 染 価 も 野 生 型 マ ウ ス と 比 べ て 、 Tg(PrP∆OR)/Prnp0/0マウスの脳内では低く、脊髄ではやや高く検出された。これらの結 果から、OR領域の有無がプリオン感染部位に影響することが分かった。

OR領域を含むアミノ酸32−88を欠損したPrP∆32-88発現ベクターを用いて、プリオ ン感染細胞での構造変換を検討した。N 末領域には、3 個のリジンと 2 個のプロリンを 含む塩基性領域が存在する。N末領域の塩基性領域の役割を解析するために、PrP∆32-88 の塩基性領域のアミノ酸に変異を導入し、感染細胞に導入した。リジン残基、特に24 目と 27 番目のリジン残基に変異を有するプリオン蛋白は感染細胞内で異常化せず、24 番目と27番目のリジン残基が構造変換に重要であることがわかった。

考 察

今回我々は、中枢神経系におけるプリオン感染および増殖が、宿主の正常PrPN OR 領域の有無によって大きく変化することを明らかにした。とくに脳においては、

PrPCの構造変換の効率が OR の有無によって異なることがわかった。また、OR 領域の さらにN末側の塩基性領域のリジン残基がPK抵抗性への変換に重要であることを明ら かにした。

OR 領域は銅イオンと結合することから、この銅イオンと PrP の結合が構造変換の効

率に重要な役割を担っている可能性が示唆された。また、脳組織においては、OR領域と 結合する特異的因子があり、構造変換に影響を及ぼしたとも考えられる。OR領域のさら N末側に存在するリジン残基については、構造変換を促進すると言われているグリコ サミノグリカンの結合に関与している可能性が考えられる。これらのさらなる疑問を解 決するため、OR 領域に銅イオンが結合した場合の正常 PrP の構造安定性(不安定性)

の変化や C 末側の高次構造に及ぼす影響、他の因子との結合性の変化などを分子レベル で解明する必要がある。

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