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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 歯 学 ) 中 島 愛 子      学 位 論 文 題 名

Cross − talk between Wnt and BMP ― 2signaling      ●

    1nOSteoblaStiCdia ・ : erentiation

( 骨 芽 細 胞 分 化 に お け るWntとBMP−2の ク ロ ス ト ー ク )

学位論文内容の要旨

【緒言】

  骨組 織に おいて,骨形成は骨芽細胞によって担われている.骨芽細胞は,いわゆる 間 葉系 の未 分化な細胞から分化すると考えられており,その分化機構に関する研究が 進 展し てき た.近年,全身の骨量が低下する遺伝性疾患のーつであるosteoporosls・ pseudoglyomasyrl(bme(OPPG) の原 因遺 伝子 とし て,LRP(LDLrecepto卜related protein)‐5が同定された.また,全身の骨量が増加する疾患においてLPR・5遺伝子の 機 能獲 得型 変異 が見 出さ れた .同 様の 変異 マウ スでも ,骨 量の 変化 が報告された.

LPR一5は ,Wntと呼 ばれ る一 種の 細胞 成長 因子 の受 容体Fdzzedと会 合す る膜 タン パ ク 質で あり ,Wntのc0‐receptor分子である.Wntは,胚発生に伴う形態形成における 分 泌 性 シ グ ナ ル 分 子と して 同定 された .現 在ま でWntフ ァミ リーに は19種以 上の メ ン バー が知 られ,線虫,昆虫からマウス,ヒトに至るまでの動物において発生のさま ざ まな 局面 で時間的・位置的に特異的な発現を示し,形態形成の誘導因子,細胞の極 性 決 定 因 子 , 増 殖 分化 の調 節因 子とし て機 能し てい る.LPR15が骨 量調 節に 機能 し て いる こと は,Whtを介し た情 報伝 達が 哺乳類の骨形成において重要であることを示 し て い る . し か し なが ら, 一体 どのよ うな 分子 メカ ニズ ムに よっ て, このWnソLRP シ グ ナ ル が 骨 形 成 を 調 節 し て い る の か , そ の 機 構 に つ い て は 明 ら か で は な ぃ .   そ こ で , 本 研 究 で は , 未 分 化 な 筋 芽 細 胞 で あるC2C12細胞 を用 い, 古典 的Wntシ グ ナ ル を 促 進 す るWnt3aなら びに この シグ ナル を抑 制す るW11t5aを それ ぞれ 過剰 発 現 させ たstableな細 胞株 を作 製し ,骨 芽細胞分化におけるWロ仇ーRPシグナルの役割 と , 異 所 性 骨 形 成 誘 導 作 用 を 有 し 骨 芽 細 胞 の 分化 を誘 導す る細胞 成長 因子 であ る BMP‐2との関連を明らかにすることを目的とした.

【方法,結果および考察】

  C2C12細 胞にWnt3aも し く はWnt5aの 発 現 プ ラ ス ミ ド を 導 入 しGenestein/G418で 選択し,stableに発現する細胞株(Wnt3a一C2C12ce11s,W11t5a‐C2C12cells)を作製した・

Wnt3aIC2C12cellsに 韜 い てWnt3amRNAが 発 現 す る こ と な ら び にWnt応 答 領 域 (Tcf /Lef結合 領域 )を 含むTopFLASHレポ ータ ーの ルシ フェラ ーゼ 活性 が増 加す ることを 確認 した .こ の細 胞では,アルカリフオスファターゼ活性染色法によってその活性が 検出 され た.C2C12細 胞にBMP‐2を作 用さ せる と,オステオカルシン等が産生され,

(2)

骨 芽 細胞 分 化 を誘 導 する こ と が知 ら れ てい る .そ こ で これ ら の細 胞株 にBMP‑2を作 用 さ せ24時 間 後 のRNAを 回 収 し ,RT‑PCR法 を 用 い て 種々 のmRNAの発 現 を 調べ た . 骨 芽 細 胞 と 骨 細 胞 が 特 異 的 に 産 生 す る 骨 基 質 タ ン パ ク 質 の ー っ で あ るMEPE (matrix extracellular phosphoglycoprotein)のmRNAは,C2C12細胞にBMP‑2を添加し て も 発 現 は 誘 導 さ れ なか っ た が,Wnt3a‑C2C12細胞 で はBMP‑2によ っ て 発現 が 誘導 さ れ た . ま た ,RT‑PCR法な ら ぴ にり ア ルタ イ ムPCR法 で ,Wnt3a‑C2C12細 胞 では 骨 芽 細 胞 や 骨 細 胞 が 産 生す る こ とが 知 られ て い る細 胞 外基 質 分 解酵 素 のー っ で ある MMP (matrix metalloproteinases )‑13の発現 がBMP‑2によっ て誘導さ れ,MMPの阻 害 物質であるTIMP (tissue inhibitors of metalloproteinases)‑lの発現が抑制された.これら の 発 現 の 誘 導 と 抑 制 は,BMP‑2の 用 量依 存 的 であ っ た. 以 上 の結 果 か ら,C2C12細 胞 に お い てWnt3aとBMP‑2の 組 み 合 わ せ に よ っ て , 骨 芽 細 胞 特 異 的 なmRNAの 発 現 が調節されていることが明らかになった.

  C2C12細 胞 は , 低増 殖 培 地で 培 養す る と 筋管 細 胞 に分 化 する が ,BMP‑2存在 下 で は 筋分化が抑 制され骨 芽細胞ヘ 分化する ことが知 られてい る.この実験モデルを利用 し ,Wntシ グ ナ ル のBMP‑2の 作 用 に 対 す る 効 果 を 検 討し た .BMP‑2の筋 管 細胞 へ の 分 化 の 阻 害 効 果 が ,Wnt3a‑C2C12細 胞 にお い て は減 少 した . す なわ ち , 古典 的Wnt シ グ ナ ル . がBMP‑2シ グ ナ ル を 制 御 し て い る こ と を 示 唆 す る 結 果 を 得 た ・   この 両 者のシグ ナルにお ける相互 作用を調 べるため,BMP‑2によって 誘導され るへ り ッ ク ス ・ ル ー プ ・ ヘ リ ッ ク ス 型 転 写 調 節 因 子 の ー っ で あ るinhibitor of DNA binding/di銑rentiぬonod)1の発現に ついて調 べた.BMP−2によって 誘導されたId1 m心 岨 は ,WnbかC2C12細 胞 で はC2C12細 胞 と 比 べ て 低 下し た ‐そ こ で ,こ のWnt3a に よ るIdmRNAの 発 現 低 下 の 機 構 に つ い て 明 ら か に する た め に, ヒ トId1遺 伝 子プ ロ モ ータ ー を 用い た 解析 を 行 った . 転 写開 始 点上 流9851tlpを含 むId985WTLucの 転 写 活 性はBMP‐2に よっ て 増大 し た が,Wnt3aを 発 現さ せ る とこ の 転写活 性は抑制 さ れ た . こ のWnt3aの 抑制 は ,29−bpのGCリ ッ チ 領域 を 含むBMP・2応 答領 域 (BRE) が 関 与 し て い る こ と を 示 し た .4つ のBREを 含 むIdWT4FLucレ ポ ー ター を 用い た と こ ろ,W11t3aによる 抑制はDkk1に よって阻 害された .了方, 構成的活性型p‐catenin に よ る 抑 制 はDkkに よ る 阻 害 は 受 け な か っ た . ま た , こ のIdWT4FLucに お い て Smad1ル によるプロ モーター 活性の上 昇が,構 成的活性 型p―catemnによって抑制され た .BREを プ ロ ーブ と したEMSA¢lectrophoresismobil吋shiRassay)法で ,BREに対 す る 核 抽 出 物 中 の 結 合活 性 はBMP.2に よ って 増 加 した が ,Wht3a一C2C12細胞 で は C2C12細 胞 と 比べ て 減 少し た .こ れ ら の結 果 から , 骨 芽細 胞 分化 に 機能するBMP‐2 に 応 答 す るId1遺 伝 子 のBREに お いて ,WIItシグ ナ ル がBMP‐2の シグ ナ ル を修 飾 し て お り , こ れ ら2っ の シ グ ナ ル に ク ロ ス ト ー ク が あ る こ と が 考 え ら れ た .   他 方 ,Wntシ グ ナ ルの 応 答 領域 を 含む レ ポ ータ ーT0pFLASHをC2C12細胞 に トラ ン ス フ ェク トした 実験から ,BMP.2は単 独ではp‐catemnを介する古 典的W11tシグ ナル の応答を増強させなかった.しかし,W・nt3aもしくは構成的活性型B‐cateninによって 誘 導 され た 転 写活 性 を,BMP−2は 促進 し ,BMP‐2は 古 典的Wntシグ ナル応 答の活性 化を引き起こした.

【結 語 】

本研 究 か ら, 骨 芽細 胞 分 化に お い て古 典 的Wntシ グ ナルとBMP‑2は 協調してMEPE,

(3)

MMP‑13

ならびにTIMP‑1 の発現を調節していることが示された.また,Wnt と

BMP‑2

はそれぞれのシグナル伝達分子であるp‑catenin ならぴにSmad の2 つの分子間相互作

用によって,お互いのシグナルの抑制や促進を介して協調しながら機能的に制御して

いることが明らかになった.

(4)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Cross −talk between Wnt and BMP ―2signaling     in osteoblastic differentiation

( 骨 芽 細 胞 分 化 に お け るWntとBMP―2の ク ロス ト ーク )

審 査は , 全審 査 委 員出 席 のも と,学 位申請者 に対して 提出論文 の内容の 説明 を 求 め た . 学 位 申 請 者 か ら は 以 下 の 内 容 の 論 述 が な さ れ た .   骨 芽細胞は ,いわゆ る間葉系 の未分化な細胞から分化すると考えられており,

そ の 機 構に 関 する研究 が進展して きた,近 年,全身 の骨量の 調節に機 能する遺 伝子として,LRP (LDL receptor‑related protein)‑5が同定された.LRP‐5は,Wnt の 受 容 体と 会 合 する 膜 タン パ ク 質で あ りWntのco‑receptor分子で ある.LRP‑5 が 骨 量 調節 に 機 能し て いる こ と は,Wntを介 した情報 伝達が哺 乳類の骨 形成に お い て 重要 で あること を示してい る.しか し,一体 どのよう な分子メ カニズム に よって, このWnt/I,RPシ グナルが 骨形成を 調節して いるのか,その機構につ い て は 明ら か で はな い .そ こ で ,本 研 究で は,未 分化な筋 芽細胞で あるC2C12 細 胞 を 用 い , 古 典 的Wnシ グ ナ ル を促 進 するWnt3aな ら ぴ にこ の シグ ナ ル を抑 制 す るWnt5aを それ ぞ れ過 剰 発 現さ せ たstableな細胞 株を作製 し,骨芽 細胞分 化 に お ける 役 割と,異 所性骨形成 誘導作用 を有する 細胞成長 因子であ るBMP―2 との関連を明らかにすることを目的とした.

  C2C12細 胞 にW11t3aもし く はWnt5aの 発現 プ ラス ミ ド を導 入 し,stableに発 現する細胞株(Wnt3かC2C12ce11s,Wnt5a−C2C12cells)を作製した.Wnt3a‐C2C12 cellsでは , ア ルカ リ フオ ス フ ァタ ー ゼ活 性が 検出され た.これ らの細胞 株に BMP.2を 作 用 さ せ24時 間 後 のRNAを 回 収 し ,R1坤CR法 を 用 い て 種 女 のmRNA の 発 現 を調 べ た.骨芽 細胞が特異 的に産生 する骨基 質タンパ ク質のー つである MEPE(mamxextrace11ularphosphoglycoprotein冫 のmRNAは ,C2C12細 胞 に BMP‐2を 添 加して も発現は 誘導されな かったが ,Wnt3a‐C2C12細胞 ではBMP−2 に よ っ て発 現 が誘導さ れた.また ,Wnt3a.C2C12細胞 では骨芽 細胞が産 生する こ と が 知 ら れ て い る 細 胞 外 基 質 分 解 酵 素 の ー つ で あ るMMP( matrix metanoprotemases).13の発現がBMP‐2によって誘導され,TIMP(tissueinhibitors ofmetむoproteinases)―1の発現が抑制された.以上の結果から,Wnt3aとBMP‐2     ―816―

人 明

正 邦

村 木

田 鈴

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

の組 み 合 わせ によっ て,骨芽 細胞特異 的なmRNAの発 現調節が 明らかに なった.

  C2C12細 胞 は ,低 増 殖培 地 で 培養 す ると 筋 管細胞に 分化する が,BMP‐2存 在 下で は 筋 分化 が抑制 され骨芽 細胞ヘ分 化する. このBMP.2の 筋管細胞 への分化 の 阻 害 効 果 がWnt3かC2C12細 胞 に 茄 い て は 減 少 し , 古 典 的WIltシ グ ナ ル が BMP・ 2シ グ ナ ル を 制 御 し て い る こ と を 示 唆 す る 結 果 を 得 た .   こ の 両 者 の シ グ ナ ル に お け る 相 互 作 用 を 調 べ る た め ,in拭bitorofDNA bindin〆di銑re11tiation(Id)1の発現について調べた.BMP‐2によって誘導された IdlmRNAは ,Wnt3かC2C12細 胞 で はC2C12細 胞 と 比 べ て 低 下 し た . そ こ で , ヒトId1遺 伝子 プロモー ターを用 いた解析 を行った .このWnt3aに よる抑制 は,

BMP‐2応 答 領 域(BRE)が関 与し,こ の抑制はDkkによる阻 害は受け なかった . また,BREをプローブとしたEMSA¢lec伽phoresisn10bilityshiRaSsay)法で,BRE に対 す る 核抽 出物中 の結合活 性はBMP・2に よって増 加したが ,Wnt3a一C2C12細 胞で はC2C12細 胞と 比 べ て減 少 し た. こ れら の結果 から,骨 芽細胞分 化に機能 す るBMP・2に 応 答 す るIdl遺伝 子 のBREに お いて ,W・ntシ グ ナル がBMP‐2の シグ ナ ル を修 飾 して お り ,こ れ ら2つの シ グナ ルにクロ ストーク があること が 考 え ら れ た , 他 方 ,T0pFLASHを 用 い た 実 験 か ら ,BMP‐2は 単独 で は 古典 的 Whtシ グ ナ ルの 応 答を 増 強 させ な かっ た が ,古 典 的Wntシ グ ナル 応 答 の活 性化 を引き起こした.

  本 研 究よ り ,骨 芽 細 胞分 化 に おい て 古典 的Wntシ グナルとBMP‐2は協調 して MEPE,MMP‐13な ら び にTIMPの発 現 を 調節 し てい る こ とが 示 され た , また , WntとBMP.2は それ ぞ れの シ グ ナル 伝 達分 子 で あるp‐catemnな ら び にSmadの 2っ の分 子 間 相互 作 用に よ っ て, お 互い の シグ ナルの抑 制や促進 を介して協 調 しながら機能的に制御していることが明らかになった.

  以 上の 論 述に 引き続き ,各審査 委員より 提出論文 の内容に っいて口頭 により 質 疑 が 行 わ れ た . 主 な 質 疑 項 目 は ,MMP‑13とTIMP‑1と の 関係 ,WntのBMP‑2 応 答 性 の低 下 と骨芽細 胞分化に ついて,Wnt3aとWnt5aの生理 的機能に っいて,

Idlプ ロ モー タ ーのWnt応 答領 域 につ い て ,Smadとp‑cateninの分子間 相互作用 に つ い て,LRP‑5と 脂 質代 謝 に っい て ,LRP‑5の変 異 部位 に っ いて ,p300の機 能 に つ いて , 等であっ た。また ,関連す る遺伝子 発現制御 法について も多岐に わ た る 関連 事 項の質問 を行った .学位申 請者から は,いず れの質問に 対しても 適 切 か つ明 快 な回答が 得られ, 研究の立 案と進行 ,結果の 解析につい て十分な 能 カ を 有し て いると考 えられた .更に, 今後の研 究の方向 性にっいて も明確な 将 来の展望 が示され た.

  本 論文 は ,骨 芽 細 胞分 化 に おけ るBMP‑2シ グナ ル とWntシ グ ナル の 相 互作用 を 解 明 し, こ れらの制 御により 骨形成を 調節する 可能性を 明らかにし た点が評 価 さ れ ,こ の 業績は, 今後の研 究の発展 に大きく 寄与する ものと考え られた.

ま た,試問 の結果よ り学位申 請者は十分な学識を有していることが認められた.

従 っ て ,学 位 申請者は ,博士( 歯学)の 学位を授 与される にふさわし いと認め ら れた.

参照

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