テ ニ ス 技 術 差 異 に お け る 筋 力 特 性
宮尾芳一 芳賀武 加藤俊也
Muscular Strengths Feature by Differential Skill of Temnis Swing Tectlnic
Yoshikazu MIYAO Takeshi HAGA and Toshinari KATOU
Te nni s ,l i keot he r s ,i soneoft hes por t st ha tc a nr e a c h t hego a loft ec hni cby me a nsofc ont i nuouspr ac t i c e .Weha vede c i de dt oexa mi neandde t e r mi neho w and wha tt ypeofmus c l emi ghthaveapr ogr e s s i veef f e c tt oc r e a t ebe t t e rr e s ul ti npl a yi ng t e nni s .Weha vef oundt hef ol l o wi ng.
1 )Modeofe l e c t r omyogr am i sl ar ge l yde pe ndi nguponi t sdi f f er e nc eoft hes ki l l ne s s ofi ndi vi dua lpl a ye r s .
2 )We l lexpe r i e nc edpl a ye r s ,i ncompar i s o nwi t hune xper i e nc e done s ,dot het e nni s s w ingsa l lt het i meatt hea ve r ege d pa t t er n w it h we l lt r a ine ds t a bl er yt hm and f o r m a sa qui r e d.Thi sa ut oma t i c a l l y me a nst ha tt hedi s c har gepa t t e r n per f or med bywe l le xpe r i e nce dpl a ye r si sobni ous l ycons t a nt .
3 )Fore xa mpl e,i ns wi ngi ngwi t hahi ghl e ve lt e c hni cl i keba c kvo l l e y,We l le xpe r i ・ e nc e dpl a yer sge ne r a l l yus ee xt e ns i vemus c l ef unc t i o n,whi l eune xpe r i enc e dpl a yer s of t e nt e ndt ous et he i rwr i s tmus c l eonl y.
Fr om a bove,t oge t he rwi t h ge ne r a lmus c l et r a i ni ng,i ti sc ons i de r e d t ha tt he e nf or c e me ntofmus
cul ide l t o i de usand mus c ul ie xt e ns orc ar pir a di a l i sl ongus i s e s s e nt i a ll ye f fe c t i ve.
1 . は じ め に
テニスは,他の多 くのスポーツと同様に,長時間の練習に より技術が向上す る.テニスの 基本動作であるス トロ」ク,ボ レー,スマ シュ,サーブなどにおいて,テニスの経験者 と未 経験者 とでは技術に微妙の差がある.すなわち,同 じボ レーにおいても, フォア‑ シ ドとバ ック‑ ソ ドでは,経験 の有無による技術的 な差の様子が異なる.一般に,冬期間中屋外の コ ー トで練習ができない ときは,テニスに必要な筋力を向上 させ ることが,テニス技術の上達 の一助になると考えられる. ところで,筋電図的研究は ドライブス トロークを中心に測定 さ れ(1), この研究は熟練者のみを対象 としている. また, グラン ドス トロークについて は,筋
*昭和
6 3
年12
月 日本体育学会長野支部学会第2 6
回大会講演会において発表** 椀枕工学科 助教授
*** 一 般 科 教 授
原稿受付 平成元年
9
月29
日電図,16mm映画等を熟練者,経験者,未経験者を対象に測定 している研究(2)(3)がある.負 近,上肢 ・下肢帯の筋電図 と動作の同時記録を熟練度差について研究 し,テニスのス トロー クに関与す る上肢 ・下肢帯の9筋の筋肉を測定 した結果(4)(5)もある.本報では測定結果の少 ないサービス とボ レーなどについての筋電図測定の解析を行ない,テニス経験 の有無に よる 筋電図様相,すなわち筋力に どのような差を生 じるかを調べ, どの筋力を向上 させることが
テニス技術向上に効果的であるかを検討 した.
2 .
測 定 方 法2 ‑1
測定装置測定に使用 した システムを図
1
に示す.筋電図測定は小型生体用電極を使 ってテニスの被 験者の測定す る筋肉に貼 る.測定では実際のプレイと同様にコー ト反対側か ら球出 しを し, ボ レー,スマ ッシュなどを行な う.実験は素振 りと実打などを行ない,その と.きの筋電状態 を無線にて送信 し,マルチテレメーター ((秩) 日本光電工業製)にて 受信 し, 威力の変化 を記録測定す る. また,同時にその状態を 8mm ビデオカメラにて記録 し,対応 させて筋電 図を検討す る.2 ‑2
被験者被験者は,テニス歴が3
0
年以上,元国体候補選手を経験者,テニス歴が4
年 の高専テニス 部員を中程度経験者,テニス歴が2ケ月未満の高専テニス部員を未経験者 として測定 した.実験はテニスのそれぞれの打法に関与す ると思われ る筋肉の うち,図
2
に示す4つの筋肉 を選び,種々のテニスの動作において,それぞれの筋力を測定 した.a
:記録機 b:受信機 C:送信機 d:小型生体用電桂e:
8mmVTRf:球出し
図
1
測 定 筋 肉 図2
測 定 装 置3 .
測 定 結 果3 ‑1
筋肉の使い方のば らつき図
3
はテニス基本的動作であるフォアボ レーの素振 りお よび実打を,経験者および未経験 に より行なった ときの筋電図である・ これ より,素振 りにおいては経斡者 と未経験者を比べ ると長 ぎ ょう側手根伸筋 の筋電図に差はあるが,他の筋電図はほぼ同 じ筋放電パターンを示糸∃窮ヨ巨∃ ≡言 糸召 旨弓ヨ≡≡;
票拐 り
実 打 慧 拐 り
僧 碍 管‑ 叫 麻 ‑ { 止 ‑
柵や ヤ
三 角 筋 I
僧 帽 筋
法 指
T./
図
3
フォアボレーの筋電図 経 験 者1打 日 2打日
3
打 目⊇還鮭・
I
lsec 7旦 生 巌 一 一一一 二‑ ‑ 1一 十 一 未 経 験 者
1
打 日 2打日一3
打 日僧 帽 ‰ ヰ 」 一 汁 ‑* 叶
三 角筋 ‑ 長ぎょう
側 手 根 恥 ‑ 一 法指屈筋
l Isee I 図
4
フォア‑ソドボレーの実打における経故の有無による筋電図のばらつき
してい る. しか し,経験者は素振 りと実打 とであま り筋放電バターンに変化が無いが,未経 験者は素振 りと実打では筋放電パターンが異なっている・
実打において,経験者は打球が飛んで来 る間, タイ ミングを取 りなが ら力を抜 いて待 って いるのに対 し,未経験者は打球を打つ商か ら,特に三角筋に力が入 り,他 の筋 において もカ の入 りす ぎがみ られ る.
3 ‑2
フ ォアハン ドボレーにおける筋力 図4
はフォア‑
ソ ドボレーの実打における 筋電図である. これに より経験者は個々の実 打において,ほ とん ど筋放電パターンは変化 しないのに 対 して, 未経験者は 実打の たび に, 筋放電パターンは 変化 している. これ経 放 着 京 経 旗 老
僧 棺 芯
地ル
:▲乙.∴ 珊 ‑ 一 一は,経験者は実打において も,短い時間に素
振 りの ときと同様に理想の体制 とな り,打球 長ぎょう と打球 の間のタイ ミングの取 り方が優れてい
側手板讐 車 崩
1
るので,いつ も同 じ状態で球を打つ ことがで
きるためと思われ る. これに対 して,未経験 浅指屈 者は実際に球を打つ とき, タイ ミングが取れ
ず理想の体制にもどることができず,一打, 一打異なった状態で球を打って しま うため と
l
lsec ‑図5 ,㌔‑ク‑ソドボレーの筋電図 思われ る. この債向は他の打ち方で も同 じことがいえる.
筋放電パターンをみると.,経験者は長ぎ ょう側手根伸虜を良 く使 っている・浅指屈筋をみ る と球 のあたる瞬間に力をいれてお り,それ以外の ときは力をぬいてタイ ミングを取 ってい ることが分かる.未経験者は主に浅指屈筋を使 って打っている.
3 ‑3
バ ックハン ドボレーにおける筋力図
5
は,技術的に差 のでやすいバ ック‑ ソ ドボ レーを,経験者 と未経験者に より行なった ときの代表的な筋電図である. これ より,経験者は長 ぎよう側手根筋,浅指屈筋をは じめ と して僧帽筋,三角筋 も良 く使いバランスの とれた筋力を使用 している.未経験者は僧帽筋, 三角筋 の筋力をあま り使わない, また力をいれている時間 も短 い. ところが,長ぎ ょう側手 根伸筋 の筋力は,未経験者の方が弱いが,長い時間使っていることが分か る.すなわち,未 経験者は難 しい動作になると,主に手首の力で打球を とらえて,力の入れ方 のタイ ミングが 悪 いことが ここで もいえる.縁 故 者
薫 振 り 実 打
二 二 :I J W ‑‑ I‑‑=‑I‑ ‑ ‑‑ : 一一一
側手根伸筋
D . ,
. Iう
浅 指屈 筋
中 程 度 経 験 着
京 振 り 実 打
図
6
バック‑ソドスマッシュの筋電図3
‑4
バ ックハン ドスマ ッシュにおける筋力難 しい打球に属するバ ック‑ソ ドスマ ッシュについて調べたのが図
6
である.未経験者は, まだ打てる状態でな く形だけ とい う状態であるので, ここでは経験者 と中程度経験者 とで比 較 してみる.経験者は素振 りの状態でも安打 と同様に各筋力をバ ランス良 く使用 している.しか し,中程度経験者は,各筋力 と.も弱 く,素振 りと実打で三角筋 の使い方が異なる・ これ は打つ瞬間に筋力を使用 していることが分か る. また,経験者 と中程度経験者 とでは,僧帽 節,三角筋の使い方の差が大 きい. これ よりいえることは,僧帽筋 と三角筋を強化 しない と バ ック
‑
ソ ドスマ ッシュを打つ ことが難 しい と思われ る.3 ‑5
サー了における筋力図
7
はサーブの打ち方の違 いに よる筋電図である. どんな打ち方のサーブにおいても経験 者は,a)球をあげるとき,b)
打つ体制でラケッ トを上げてか まえるとき,C)
球 を打つ とき の3回力を入れている箇所が明確に現れている.すなわち,打つ前に力を抜いている時間が ある.中程度経験者は2
つの力すなわち球をあげるときと打つ ときしか無 く,打つ前 (ラケッ トを上げてか まえているとき)に力を抜いている時間が無い.
このことか ら経験者は,打つ ときに リズムがあ り,力の出 し方に.,'ランスがあるように思 われる.従 って,上達するためには リズムをつけ力の出 し方に注意す ることが必要である.
つ ぎに,打ち方 のちがいについては, フラット,スライス, トップスピソに分 けて考える . と, フラッ トとスライスでは長 ぎ ょう側手根筋の使い方に違いのあることが分か る. フラッ
トの際は打つ直前に力のピークがあ り,あ とは遠心力に より力を加えているのに対 し,スラ 経 験 者
フラッ ト ス ラ イ ス トンプスピン
a b c
倍 帽 収 ̲
叶
̲軸 ̲̲a
b c
中程度縁故
者フ ラ ッ ト ス . ライ ス ト ッ プ ス ビ ン l = ‑ : I ̲ : ‑ I ̲ = ヰ l 二 二 一 a bc ‑ I : : = : I ‑ ・ = ‑ ‑ ‑ ニI ‑ ・ : ‑ : bc ; ‑ . I ‑ i t = ‑
軸 ‑
欄
軸‑冒:‑‑I‑
ヤ
ー‑
二・ ; :
虹.Isee.
ー如 ㈹ 柵叫軒 ‑
・・l . ト ー 図
7
異なるサーブによる筋電図60 50
103
♪n巽■一一・・一・・■■■t
/
′/
/
長ぎょう 側手板伸滋
/一8浅 籍屈 方
/ 這≦ ≦
プ 孟言霊o l O 20 30 40 50
kgぎ阿 EE
糸茎 数 着
僧 暗影 角 筋
o
lo 20 30̲405
D k8i,1力
邑言 張∃ 巨晩 ≡∃
図8 撞力と筋力との関係
イスの場合は打つ瞬間に力のピークがある. これは球をこするような感 じで力を加えている と思われる・ フラッ トと トップスピソも長ぎ ょう側手根筋 の使い方が違い, トップス ピソは 力を最後 まで保持 していなければならないため と思われる. フラッ トと トップスピソの場合 には,すべての筋力 とも, スライスの場合 とはば同様であ り差異は感 じられなかった.中程 度経験者のフラッ トとスライスでの大 きな違いは,三角筋 の使い方である. フラッ トにおい て三角筋は打つ瞬間に力の ピークをみるのに対 して,スライスではそれほど三角筋を使用 し てない. また, フラッ トと トップス ビンを比較 してみると三角筋は,ほぼ同程度で,打つ瞬 間に力のピークをみる. また, トップス ピンでの特数的なのは,打つ瞬間にこす り上げる動 作のためで浅指屈筋は他のサーブよりも打つ瞬間に力のぎークをみる.僧帽筋,長 ぎJ:う側 手伸筋に関 しては, どのサーブでもほぼ同様の変化を示 している. トップス ピソの場合は他 のサーブと打つ前 と打つ瞬間の力の ピークの現れかたに相違があ り,特殊な打ち方 といえる.
つ ぎに,未経験者のフラッ トの筋電図では,長 ぎ ょう側手伸筋 と僧帽筋 の筋放電パターン が強いことか ら,主に手首を使ってサーブを打っていることがわか る.
3 ‑6
撞力と筋力との関係 ●テニスの動作において, ラケットをにぎる捉力は重要な要因 と考えられ る.簡単な実験は 捉力 と筋力の関係か ら, まず捉力を増加 させた ときの筋力の大 きさを示 したのが図
8
である.これにより,未経験者は最高の垣力をだすまで,ほ とん ど,三角筋を使わず,浅指屈筋 (辛 首の筋肉)をかな り使 っている.経験者は三角筋 もよく使い,体全体の筋肉を も ち い て お
り,最大垣力 も大 きい. この結果か らもテニスの素振 り,実打 と同様なことがいえる.
また, ラケッ トの代 りに提力計を振 り,バ ックボ レーのスタイルの素振 りを した ときの筋
経 験 者 く握力4
3 k g)
未 経 験 者 (握力34kg)
僧 帽 筋 ⊥
‑ 潮軸叫
̲
"肌
定 一 ̲̲ 一、.̲州 へ叫 岬 虹
‑」
⊥ 三三 三 ・ ・ .
」図
9
握力計を握ってのバックポY‑スタイル電図を図
9
に示す. ここで も経験者は三角筋を使い この筋力で力をだ している,これに対 し て未経験者は手首の筋肉で力を出していることがわかる・4 .
結 論本研究において,経晩者,中程度経験者,未経験者がテニスの基本動作を行な うなかで, 筋電図に よる解析を行ない, どの筋力に差を生 じるかを調べた・その結果,次 のことが分か
った.
( 1 )
テニスは技術の差により,筋電図の様相が異なる・( 2 )
経験者は,未経験者に比べ,素振 りと実打において,いつ も理想的な体制で打ち,筋放 電パターソのば らつ きが少ない.( 3 )
バ ックボレーのように少 し難 しい技術 となると,経験者は背中など体全体の筋力でプレ ーしているが,未経験者は,主に手首 の筋力のみでプレーしている.経験者は,体全体を 用いてプレーしているのでそれだけ力のある球を打つ ことができる・( 4 )
サ ービスにおいて,中程度経験者,未経験者は リズムがな く,経験者は三つの力の入れ' 出 しとい うリズム的なパターソを持 っている・これ らの実験結果か ら,総合的筋力を強化 しなければならないが,特に三角筋,長 ぎ ょう 側手根筋を強化すれば良いと思われる. しか し,テニスは筋力の他に リズム的センスのある 運動を必要 とし,総合能力を身につけて初めてテニス技術に効果的な働 きを もた らす もので
あると考える.
謝 辞
宮尾,芳矧 ま硬式テニス部の顧問 として,加藤は体育教官 として,部員が効率良 くテニス 技術の上達することを願 って指導 している・そのために筋力 トレーニングについて関心があ
る・本研究 の一部は,硬式 テニス部点 で もあ る小林和典君 (現在 山梨大学在学中)お よび太 田慎一君 (現在富士電機株式会社勤務)の卒業研究 として行なった. ここで,研究を共に し た両君, さらに被験者 とな りいろいろなプレーを して,データ作製に協力 していただいた本 校硬式 テニス クラブ部員 の皆 さんに感謝いた します. また,専門的立場か ら貴重 なご意見を いただいた本校里見弘教授,筋電図記録に便宜を計 っていただいた 日本光電株式会社 の渡辺 富士雄氏に感謝いた します.
参 考 文 献
(1)
Br o er .M. R.a ndS . J . Ho ut z:Pa t t e r nsofmus c ul a r a c t i vi t yi ns e l e c t e ds po r t ss ki l l s . Ane l e c t r omyogr a phi cs t udy.Char l e sCThoma sPubl i s he r ,Spr i ngf ie l d
,I l l i no i s ,U. S. A.
1 9 6 7.
( 2 )
永田歳ほか :テニス,グランドストロークのバイオメカニック的分析一技術的基礎研究.昭和5 6
年 度日本体育協会スポーツ医 ・科学研究報告.第5
報.19 8 2 .
( 3 )
菅沢正平,熊本水鏡 :テニス ・グランド・ス トロークの動作業的ならびに筋電図学的 研究,J . J . Spor t ss a .2 ‑ 5;3 9 4 ‑ 4 0 0 ,1 9 8 4 .
(4)岡本勉ほか :上肢の伸展動作の筋電図的研究.体力科学,I