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2. アクリル樹脂の接地トリーイング特性

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Academic year: 2021

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(1)

ア ク リ ル 樹 脂 の 接 地 ト リ ー イ ン グ 特 性

山田達朗 峯村賢次

1.

ま え が き

実用状態にある電力横器, ケーブルな どの絶縁 システムには

10‑20

年さらに

30

年以上 とい う長期間にわたる信頼性が要求され る. しか し長期の電圧印加に基 く,極めて局部的な微小 な破壊が累積 され,最悪の場合は全路破壊に至る. この絶縁劣化を伴 う破壊のため実際の絶 縁物の設計電界は,真性破壊電界 ( 絶縁物の有す る本質的な破壊強 さ)の

1/10‑1/100

とい う極めて低い倍に見込まねばならぬ現状である.絶縁劣化は高電界の集中する電極上中突起 とか,電荷注入の生 じ易い電極の局部表面,あるいは絶縁物内部の欠陥か ら開始 され る. こ の局部的な高電界は針電極に高電圧を印加することで模擬可能で,針先電界が絶縁物の真性 破壊強さを越えると,局部破壊が生 じ,樹枝状の トリー

(Tree)

が発生,伸展 し,やがて全 路破壊に至る.

トリ⊥イングは印加電圧の波形に より数種掛 こ分類 されている

(1).

本研究では接地 トリー ( 短絡 トリーともい う)を取扱 う.接地 トT )‑は,絶縁物に電圧印加中には発生せず,接地 時にかつ針対平板電極使用時のような極端な不平等電界下に限 り出現するが,その実態につ いては未だ不 明な点 も多 く,絶縁設計上 の解決すべ き課題 となっている

(2)I(3)

従来, ト1 )‑イソグ現象は,実用上の観点か ら,お もにポ リェチ レンを対象に調査,研究 されてきた. しか し,接地 トリーは トT )一長が極めて短 く, トリー像 も不鮮明なため,不透 明なポ リェチ レンでは観察は極めて困難である.そ こで筆者 らは無色透明なア クリル樹脂を 用いて,接地 ト1 )‑を観測 し,既報のポ リェチ レンの接地 トリーイソグ現象

(2)

(

4)

と実験的に 比較検討 し,掛 こ接地方式の違いに よる トリーの発生,お よびその性状の相違を明 らかにす ることを 目的 としている.

2.

試料 と実験方法

アクリル樹脂はポ リメチルメタクリル レ‑ ト

(Polymethylmethacrylate,PMMA)

に代 表 される無定形の熱可塑性樹脂の一種で,比重

1.18‑1.19

を有 し,光学特性にす ぐれ,普通 ガラスの約1 0倍もの衝撃値を有す る有機 ガラスとして,また一般成型品,板な どに広 く使用 されている.

試料は市販の

3mm

厚のア クリル板 ( 三菱 レイヨン( 樵) 輿)を

3×10×15mm

の ブロック 状に切断 した ものを用い, 長 さ

30mm

, 太 さ

0・82mm

卓の鋼線を,先端半径が

6± 1〝m

* 昭和5

9年度電気通信学会信越支部大会において発表

** 電気工学科助教授

*** 電気工学科技官

原稿受付 昭和6

09

28

(2)

32 長野工業高等専門学校紀要 ・第16

なるよう電界研摩 した針電極 (オグラ宝石 精機( 秩) 製 トリーイソグ針)をそう入 した・

そ う入時,試料は予め白熱 ランプで

120oC1

に加熱 してお り, また常に針電極 と対向平 板電極が

3mm

の絶縁厚さになるように設 定 した.さらにその後加熱処理を再び施 し, 針先端の機械的残留ス トレスの除去につ と

めた. この針対平板電極系の試料を,所定

1 実験装置

温度に制御 したシ リコーン油中に収め,図

1

に示 した実験装置を用い,直流電圧

‑50kV

を一定時間印加 した後,針電極を接地 し,両 電極間を短絡 した.

接地方式は,図

1

の回路において,スイッチを開 き,印加電圧を一旦除去 した後, トリガ ーパルスにより接地す る方法 と,電圧印加のまま,針電極を直接 アース棒で強制的に接地す る方法を用いたが,前者の場合,電圧解除か ら約

1

秒経過 した後接地がお こなわれた.なお 生 じた接地 トリーは,光学顕微鏡 とカメラで観測,撮影 した.

3.

実験結果 と考察

2

に,前述の

2

通 りの接地方式に基 く, ア クリル樹脂の トリー長さの温度依存性を示す が,いずれ も接地前の課電時間は

15

分 とした.図中 Ⅰ印は約

20

個の測定値のバラツキの範囲 を, また

印 と●即は各温度における トリー長 さの平均値を示す.

強制接地を行 うと, トリー長 さは温度上昇につれ増加す る.接地 トリーは,電圧印加時針 電極 より注入 されたホモ空間電荷が,接地時,針先近傍に高電界を誘起 し,局部破壊をお こ すため発生す ると説明され ている

(2).

針電極が負極性の場合, 注入 された電子が絶縁物中の 或 る飛期距離

(Flightdistancei‑FFLT

,ただ し

,F

・ .電界

,FL:

移動度

,T:

電子の ライフ タイム)に トラップされ 空間電荷を形成す ると考えるな ら( 1 ) , 接地 トリーの長 さは , ほぼ

20 40 60 80 100

Temperature tOc)

図2 トリー長さの温度依存性

(3)

アクリル樹脂の接地 トリーイソグ特性

33

飛期距離 1程度 とみなす ことができる.従 って,温度が高 くなるとキャリヤの移動度

P

が増 加すること,さらに電極か らの電子注入がショッ トキー効果に基 くなら,温度の上昇は電荷 注入を促進する.その結果,多量の空間電荷が試料内部にまで分布され,温度上昇 と共に ト

リー長 さが増加するものと考えられる.

しか し, 電圧除去後, 約

1

秒経過 して接地を行 った場合

, 60oC

を越えると トリー長さは 逆 に短 くな り

, 90oC

以上の高温になると再び増加する. ポ リェチ レンの接地 トリーに関 し ても,今回のアクリル樹脂 と同様,接地方式によりトリー長 さに差異が生 じ,一旦電圧を除 去 した場合,やは り

70oC

付近で トリー長 さが短 くなる現象が指摘 されている

(4).

さらに

,‑50kV

15

分間前課電 したアクリル樹脂の接地 トリーの発生率を測定 した とこ ろ,強制接地の場合,試料温度にかかわ らず,常にほぼ

100%

であった.一方回路を一旦解 放後接地 した場合,各温度毎に約

50

本の試料を用いて測定 した結果, トリー発生率は,図

3

に示す ように トリー長さの温度依存性 と極めて似か よった特性を示 し, トリー発生率 と トリ ー長さの間には,. 相関々係が存在することが実験的に認められた・

特に, 一旦電圧を除去後接地 した場合に生 じる トリーは

,70‑80oC

の温度領域で, トリ ー発生率は

25%

前後 と極めて低 く,かつ トリー長 さも短 く,そのバラツキも小 さい.またこ の温度領域の トリーを顕微鏡で観察すると, 図

4(

a ) の

50oC

における代表的な接地 トリーの 写真 と比較 して, トリー管は細 く, トリー像も不鮮明である.

50511000(U人tUE)quaTaaJL 50▲U0 uoTdauuTaaJJOOTtZ

0

2 0 4 0 6 0 80

100

Te m p e r at ur e ( O c)

Eg3

トT )‑発生率とトリー長さの温度依存性 ( 電E E除去後接地)

図 2,図 3で示 した 2通 りの接地方式に基 くアクリル樹脂の接地 トリーの性状の差異は, 電圧解除後接地するまでの約

1

秒間の時間遅れが

, 70‑80oC

の温度領域に於て, 接地 トリ ーの発生 と伸展を抑制していることを示唆 している. この実験結果は電圧印加中に針先近傍 に蓄積 された空間電荷が,約

1

秒間の期間中に, ドリフ ト,あるいは拡散,再結合などによ り減少 し, その結果,接地時の電界が緩和 されるためと考えられる. なお

60oC

以下の温度 では,接地方式によって トリー長さに有意差は認められず,低温領域では, 1秒程度の短時 間内には,空間電荷はほとんど減衰 しない ことが うかがわれる.

4(

こ100oC

における トリー形状を示すが, この温度では,アクリル樹脂に注入 してい

た針が加熱のため押 し戻 され,細島い

Void

が針先に出現 した.その結果電圧印加中に

Void

(4)

長野工菜芯等坤門学校紀要 ・約16 Ptエー

卜 .仙

( a

)50oC (1

' ) 川O C

鼠4

トリ

‑)r

火(1日 必 60. OI I l l 1 1 1

を介 して トI )‑が伸放 し. よ l )低鮎で の脚 也 トリー とは

tl

隅が邦 y Jことが

.

i aI V )ら)lた.

次に. ア ク リル 刷 胴 とホ リエ チ レンrおいて

,

必 仙 劇也 Lf 日)

‑)

ささの 珊

叫 附依 榊1 :

を図

5

に示す. 試料温度 は

50oC

で あ るが, いず)Lの 切 l T も. m T に

L uか良い と, トリ の 伸 びは長 い.長時間唱L Eを印加す る ことで , 針 7 電極か ら試料探 部 まで空 間 †

何 の分イ r 也 H I J かJ L '

が り トリー長 さは増加 した もの と考 え られ る.

10

20 30 40 50 60

Prestress time (min) 5

トリー長さの課

硯 時間依存性

また同図か らア ク リル樹脂 の トリー長 さは, ポ リエチ レンに比較す ると,半分 以下 と短 い

ことが認 め られ る.筆 者 らの測定 した室温 以上 の温度領域 では, ア ク リル樹脂 は ガ ラス状態

(ガラス転移点

Tg378‑380K)

であ り, 一方 ポ リエチ レンは ゴム状態

(Tg240K

付近) で あ

る. また ポ リエチ レン ( 比重

0.91‑0.93)

に比較 して, ア ク リル樹脂 (比重

1.18

1.19)

密 で, かつ均質 な凝集構造 を有 してお り, その結果 直流破 壊強 さを比べ ると, 例 えば

20oC

の ア ク リル樹 脂 は

10MV/cm

で, ポ リ‑チ レソの

7MV/cm

よ りか な り高

い (5).

ァ ク リル樹

脂 の接地 トリーの伸 びが ポ リェチ レンよ り短 い ことは,定 性的 に これ らの性質 の違 いを反映

してい る もの と解釈 で きる. しか しア ク リル樹脂 とポ リ‑チ レソの熱的性質 が異 るのに もか

(5)

アクリル樹脂の接地 トリーイ

ソグ特性 35

かわ らず, 一旦電圧を解除 した後の接地 トリーが, 両者 ともほぼ

70‑80oC

の温度領域で最

も短 くなる類似の現象を どの ように解釈すれば よいか更に検討を要す る.

4.

あ と が き

ア クリル樹脂において,強制接地を行 うと, トリーの伸びは温度上昇につれ長 くなるが, 一旦電圧除去後約

1

秒経過 して接地を行 うと, ポ リェチ レンと同様

, 70‑80oC

の領域で ト

リ‑長 さは短 くなることが確認 された.

また

‑50kV

15

分間諜電後の トリー発生率は, 強制接地の場合,各温度 とも常にほぼ

100

%であった. しか し,一旦電圧除去後の接地 トリー発生率は,やは り

70‑80oC

の温度領域 で最小で,約

25%

まで低下 し, トリー発生率 と トリー長 さの間に相閑 々係が存在す ることが 実験的に認め られた. この現象を電子の注入に よる空間電荷の形成 と,減衰か ら定性的に説 明した.

針一平板電桂系での不平等電界下における空間電荷の挙動は複雑で,その解析は困難であ るが,工学的にも重要な問題を含んでお り, さらに今後の課題 とす る予定である.

最後に,本研究をすすめるに当 り御指導頂いた信州大学工学部宮入圭一助教授に厚 くお礼 申し上げます.また実験に協力された本校卒業生,滝沢一彦氏 ( 現在横河 ヒュレッ トパ ッカ ー ド株式会社) と百瀬繁寿氏 ( 現在本多通信工業株式会社)に感謝致 します.

参 考 文 献

(1)MasayukiIEDA:IEEETrans.Elect.Insulation,γol

1

,EI

1

5.(1980)206224. (2)

細田,河村,家田 :電学論文誌

,9㌃A

,

(1975)423430.

(3)

福沢,斉藤 :電学論文誌

,100A.(1980)155‑161.

( 4 ) 宮入

,M.Beyer:

56

年電気通信学会信越支部大会

,No.85 (5)

大石,中島, 川辺,家田 :誘電体現象論,電気学会 ( 昭和

48

年)

参照

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