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学位授与番号 13301甲第4129号

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(1)

地域雇用政策の意義と課題:条件不利地域における 生活と社会の維持を中心として

著者 神? 淳子

著者別表示 Kanzaki Junko

雑誌名 博士論文要旨Abstract

学位授与番号 13301甲第4129号

学位名 博士(経済学)

学位授与年月日 2014‑09‑26

URL http://hdl.handle.net/2297/40334

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

様式 7

学 位 論 文 要 旨

学位請求論文題名

地域雇用政策の意義と課題:条件不利地域における生活と社会の維持を中心として

(和訳または英訳)

Roles and challenges of regional employment policy: a case study of aging and depopulated regions facing difficulties in sustainability.

人間社会環境学 専 攻

氏 名 神﨑 淳子 主 任 指 導 教 員 氏 名 武田 公子

(注)学位論文要旨の表紙

(3)

<Abstract>

In recent years, the concept of regional employment policy has come to the fore.

Previously employment policy came under the umbrella of the central government but this has changed.

There are two aspects in the background of this this phenomena.

1. Post 2000, changes have been made to fiscal structure giving local government more independence under decentralization reforms.

2. Local governments are now expected to handle social, economic and industrial activities comprehensively as a regional policy unit.

In this research, within the current framework of regional employment policy, which is developed, enforced and evaluated by the local government, particular

attention should be given to the formation of employment opportunities, business support and vocational training, that go beyond the previous concept of employment policy.

There are 3 points of particular significance to regional employment policy in this research.

1. Regional employment policy creates income, including income to cover household expenses disposable income.

2. In addition to providing services and utilizing regional resources, it also has the potential to act on local issues.

3. It should also be evaluated on its ability to contribute to social sustainability,

the formation of social infrastructure, economic and non-economic bargaining points,

and community functions.

(4)

<学位論文要旨>

近年、地域雇用政策という政策領域が注目されている。雇用政策は中央政府の役割とされて いた概念が覆されてきているのである。2000年以降の地方分権改革の下で、自治・生活圏・経 済活動の政策単位としての地域の自立が掲げられてきたことが背景の一つにある。本研究では、

労働市場の需給調整手段としての事業者支援や職業訓練等の雇用政策の枠組みが拡張する中で、

地域雇用政策がどのような固有の意義を持つかを明らかにすることを目的とした。その際には、

生産条件、生活条件に不利性を抱える条件不利地域を事例地域とし、住民の生活と地域社会の 維持に地域雇用政策がどのように貢献するか、という問題視角から研究を行った。

まず、第1章、第2章では、現在の地域雇用政策が形成される社会的背景を明らかにするため、

国家レベルの雇用創出に関わる政策の歴史的経緯を整理した。第1章では、戦後復興期から1987 年の地域雇用開発等促進法制定までの地域に関わる雇用対策の変遷を取り上げた。この時期は、

国民国家を単位とする国の施策により、失業対策を含む雇用政策や地域開発が実施されていた。

戦後以降の雇用政策の基本方針は国による労働市場管理であり、1966年の雇用対策法に見られ るように、完全雇用の達成を目指すものであった。具体的には、国が全国的な労働市場を、労 働力移動や人材育成・職業訓練、雇用維持、公共事業による雇用吸収といった方法を用いて調 整していた。また、地域開発も国民経済の成長のために、国土計画に基づき国家レベルで実施 されるものであった。1987年までの地域雇用政策は、旧産炭地等の問題地域への個別対策とし て存在していた。地域開発については、1960年代以降、労働力不足地域への過度の人口移動に より農村地域の過疎化問題が既に現れていた。問題が深刻化したのは、1980年代以降の国際分 業体制の変化による構造不況期からであった。構造的不況産業の問題から生まれる失業に対し、

経済政策と連携した雇用対策の必要性が認識されるようになった。このような中で、地域単位 で発生する雇用問題に対して、地域の経済・産業開発と併せた雇用計画を実施するため、1987 年に地域雇用開発等促進法の枠組みが作られた。あくまで国の雇用政策や国土計画の中でとい う制約はあるが、地域の雇用課題に取り組むために、地域の経済・産業政策が連携して取り組 む点で、画期的であった。

第2章では、現在の地域雇用政策の特徴を明らかにするために、地域雇用開発等促進法制定以 降の国と地域の関係性の変化と、2000年以降の地域雇用政策の変化を整理した。1990年代以降 について、長期的な経済低迷と失業率の上昇といった社会構造の変化と、国と地方の行財政改 革の動き、地方分権化の流れを概観した。この時期は、知識経済化が進む中で、都市への産業 と人材の集中が進み、地域間格差が拡大していた。2000年に地方分権改革が行われ、その一つ として、雇用課題に地方自治体が責任主体としてかかわる努力義務が課せられた。このことは、

戦後一貫して雇用政策を国家が担ってきたことからの大きな変革点であると言える。産業集積

や地域資源をもとにした地域レベルの産業政策や、生活圏の課題に取り組むNPOや社会的企業に

よるコミュニティビジネスが、雇用吸収力を持つ産業として注目されるようになった。雇用創

出が生活・福祉等に関わり地域レベルで実施されることへの注目が集まる中で、2005年の地域

再生法により、新たに地域雇用政策に地域課題解決への取り組みとの連携も期待されるように

なった。2005年以降、地域雇用政策は、失業対策を含む雇用政策と地域経済、産業の創出、福

祉政策、地域再生といった領域にかかわる政策として、独自の意義を持つようになった。また、

(5)

地域内の労働力の育成や事業主に対する支援等、従来の地域雇用政策の手段だけでなく、事業 創出のための市場開発など、総合的な政策手法が用いられるようになった。

第3章では、石川県珠洲市の共同体的機能が残る農村地域の生活実態調査をもとに、地域に新 たな就業機会と労働力供給を生み出した地域雇用政策が、地域社会や住民生活にもたらす意義 を明らかにした。「株式会社N」にかかわる地域雇用政策の成果として、地域に住む年金受給者 世代が就業する家計補助的な所得形成機会と、家族内多就業による家計形成により支えられる 労働力世代のフルタイム就業の2つの就業形態が生み出されていた。また、地域雇用政策により、

雇用就業機会が地域内に形成されたことで、これまで住民生活の中で家族や近親者の負担に転 嫁されていた地域に住むための生活課題が、「株式会社N」の追加的サービスとして住民に提供 されている状況もみられた。また、地域住民が参加する株式会社の設立により、生産条件の整 備に関わる共同体機能の一部が再編成されていた。しかし、高齢化率が上昇し続けている対象 地域では、10年後の地域社会の生活課題に応える次世代がいないことが課題となっている。

第4章では、島根県海士町を事例に、地域雇用政策がもたらす多面的な効果を検証した。海士 町では、以下の4点の特徴が見られた。①生活可能な就業の場づくりの成果として、子育て世代 のUIターンを可能としている。②都市部での就業経験を持つ移住者を獲得することで、新たな 事業創出と地域就業の担い手として確保の両方を可能としたこと、③住宅の提供だけでなく、

医療や福祉、教育等の生活サービスを再構築し、地域雇用政策で生まれた労働で得られる所得 で、生活可能な生活基盤の整備がなされていたこと。また、求人情報では職務内容だけでなく、

地域生活で必要とされ、活躍できる人物像を情報として提供していた。④子育て世代や高齢者 が住み続けるための生活関連サービスが新たな就業機会となっていることである。海士町の事 例では、地域に雇用機会があることがUIターンのきっかけではあるものの、そこからの所得形 成で生活維持が可能なことが、UIターン者が定住している要因であると考えられる。医療や教 育環境の改善を行い、生活基盤の整備により、地域に住み続けられる環境整備を行っている。

また、海士町では、地域雇用政策関連事業だけでなく生活基盤整備のために国の事業を積極的 に利用し、役場職員や委託事業職員などとしての雇用機会を創出している。

以上の分析を踏まえ、条件不利地域の課題として、第一に、賃労働機会の不足、第二に、共同

体機能の低下、第三に、生活関連サービス等社会資本の不足といった、生活基盤の弱体化、の

問題として整理した。以上のような課題を抱える条件不利地域に対して、地域雇用政策はどの

ような役割と機能を示しうるのだろうかということを検討した。条件不利地域における地域雇

用政策の意義として仮説的に一般化したものが図1である。

(6)

[図1]条件不利地域における地域雇用政策の意義

①地域生活に必要な所 得と貨幣経済循環

②新たな社会的紐帯と 地域経営

③地域の生活と社会の 維持可能性への貢献

②共同体機能の再編成

→地縁型組織から目的型組織 への再編

→地域産業/生業の育成支援

→地域ガバナンスの変化

①所得形成(現金収入)

・個人や世帯の 家計維持/家計補助

→市場供給サービス(衣食住、

医療介護、教育)の購入費用

→貨幣化された共同体機能へ の対応(冠婚葬祭、交際費等)

→自給的生産活動(食糧生産、

生きがい就労)への投資

地域雇用政策の 固有の意義

条件不利地域の構造的課題

①生産条件

・企業立地、産業立地

・農林業の低生産性

②共同体機能の低下

・相互扶助機能(物品・労力の交 換、互助、等)

・共同作業(生産手段や地域資 源の共同利用・共同管理)

③生活関連事業の撤退 生活基盤の脆弱化

現在の 地域課題

③生活関連サービスの再生

→教育、福祉、情報等の社会 インフラの再構築

・地域が雇用政策に積極 的に関わること

・雇用、経済(産業)、福 祉政策の領域を統合す る政策であること

・労働力の育成、事業支 援、新規事業創出までを 対象とする総合的政策で あること

地域雇用政策の 枠組み

出所:筆者作成。

本研究では以上の分析を通じて、地域雇用政策の固有の意義として、以下の3点について明ら

かにした。①「地域」が産業・事業創出や生活圏として就業機会を創出する単位となっている

こと。②地域雇用政策が地域の就業機会に対する需給両面からの取り組みを行う政策であると

いう性質から、地域の課題解決やニーズに対応するだけでなく、潜在化された地域課題への取

り組みにつながる可能性を持つこと。③地域雇用政策の有効性は、生み出された就業機会の量

や質のみで評価されるのではなく、個々の就業機会の雇用条件や職務内容により評価されるの

ではなく、地域の経済的、非経済的交換条件やコミュニティの活性化など、地域社会の持続可

能性への貢献によっても評価されるべきであることを明らかにした。

参照

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