Science & Technology Trends August 2010 トピックス
4 正極にカーボンナノチューブを用いた高出力リチウムイオン電池
2010 年 6 月、米国マサチューセッツ工科大学の研究グループは、カーボンナノチューブ積層膜を正極 材料に用いた、高出力のリチウムイオン電池の開発を発表した。独自に高密度積層方法を開発して、低抵 抗かつ密着性の高い積層膜を作製し、一方、負極としてはチタン酸リチウムを用いてリチウムイオン電池 を試作したところ、市販のリチウムイオン電池と比較して出力密度が約 10 倍に向上した。今回開発され た電池の構成では、さらなる特性向上の可能性があり、動力用電池のほか、極薄でフレキシブルな携帯 端末機器の電池も期待できる。
リチウムイオン電池は、二酸化炭素排出量の低減に 大きな効果がある電気自動車のほか、携帯機器で用い られている
1)。動力用電源として用いるために、高出力 密度で、かつ、高エネルギー密度が要求される。
2010 年 6 月、米国マサチューセッツ工科大学の研究 グループは、独自に開発した積層方法による高密度カ ーボンナノチューブ(CNT)積層膜を正極としたリチウム イオン電池で、市販の電池と比較して、出力密度が約 10 倍向上したと発表した
2)。
同研究グループでは、CNT を電池に適用するため、
液相のレイヤーバイレイヤー(LBL)法で CNT の高密度 積層方法を開発した
3)。まず、市販の多層 CNT の表 面を、カルボキシル基(-COOH)あるいはアミノ基
(-NH
2)で化学修飾した。カルボキシル基は負に、アミ ノ基は正に、それぞれ帯電している。次に、それぞれ の CNT を超純水に均一に分散した液体に、基板を交 互に浸漬するサイクルを繰り返し、基板上の膜厚方向に 帯電によって結合した CNT 積層膜を形成した(図表 1)。
続いて、真空中で 150℃、水素中で 300℃の熱処理を 施すことで、膜密度を向上させ、低抵抗かつ密着性の 高い CNT 積層膜を作製した。
200 サイクル浸漬して作製した約 3μm 厚の CNT 積 層膜を正極、リチウムを負極とした正極特性評価用デ バイスを試作したところ、出力密度 100kW/kg、エネル ギー密度約 200Wh/kg、数千サイクルを超える安定性 を示した。また、負極としてチタン酸リチウム(LTO)を 用いた実用構成に近い電池の構成では、市販のリチウ ムイオン電池との比較で、出力密度が約 10 倍に向上し た(図表 2)。研究グループでは、性能向上は、高密度 CNT 積層膜の多孔質構造に加え、CNT に表面修飾 した官能基が、電極表面の酸化還元反応に寄与してい
ると考えている。
今回開発された正極は、CNT 積層厚みが、わずか 数μmで市販の電池の正極材料の10 分の1 以下と薄く、
かつ、レイヤー間の密着性が高く安定しているため、
極薄でフレキシブルな携帯端末機器用の電池としての 応用も期待される。同研究グループでは、このほか簡 便なスプレー法による正極作製方法も開発している。
CNT 層の厚膜化と大面積化および負極材料の最適化 により、さらなる特性向上の可能性がある。
参 考
1) 河本洋、「自動車用高出力・大容量リチウムイオン電池材料の研究開発動向」、科学技術動向、2010年1月号、p.19 2) S. W. Lee et al., High-power litium batteries from functionalized carbon-nanotude electrodes , Nature
Nanotechnology, 5, 531(2010)
3) S. W. Lee et al., Layer-by-Layer Assembly of All Carbon Nanotube Ultrathin Films for Electrochemical Applications , J. Am. Chem. Soc., 131, 671(2009)
ナノテク・材料分野 TOPICS
NanoTechnology & Materials
図表 1 CNT 積層膜の作製方法
参考文献3)を基に科学技術動向研究センターにて作成
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図表 2 今回報告されたリチウムイオン電池の性能
科学技術動向研究センターにて作成
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