論文の内容の要旨
申請者 松田 謙一 論文題目
急性期内科系病棟に所属する勤務帯リーダー看護師のためのせん妄ケア実践能力自己評 価尺度の開発および関連要因の探索
〔目的〕急性期内科系病棟に所属する勤務帯リーダー看護師のための「せん妄ケア実践能 力自己評価尺度」を開発すること、ならびに、勤務帯リーダー看護師のせん妄ケア実践能 力に関連する要因を探索的に検討することである。
〔方法〕尺度開発では、急性期内科系病棟に所属する勤務帯リーダー看護師や看護管理者、
専門・認定看護師計12名のインタビュー調査、文献検討、2回のデルファイ調査を経て58 項目の尺度原案を作成した。次に、尺度原案の精選のため急性期内科系病棟の勤務帯リー ダー看護師にパイロットスタディを行い、分析対象者 50 名の項目分析から 55 項目を最終 の尺度原案とした。その後、全国の急性期内科系病棟の勤務帯リーダー看護師に質問紙調 査を行い、尺度の信頼性と妥当性を検討した。関連要因の検討では、勤務帯リーダー看護 師のせん妄ケア実践能力に関連すると考えられる26変数について単変量解析およびロジス ティック回帰分析を行った。従属変数は、尺度の合計得点の分布から中央値、平均値±標 準偏差をカットオフポイントとする 3 条件を設定して分析した。本研究は、国立研究開発 法人国立国際医療研究センター倫理審査委員会の承認を得て実施した。
〔結果〕調査への同意が得られた病院は68施設であり、急性期内科系病棟に所属する勤務 帯リーダー看護師 735 名に質問紙を配布した。回収数 326名(回収率44.3%)、有効回答数 301 名(有効回答率40.9%)であった。尺度原案 55項目について項目分析と探索的因子分析 を行い、9因子40項目が抽出された。9因子は、【第Ⅰ因子. せん妄ケアを提供する過程で多 職種を適切に巻き込む行動】、【第Ⅱ因子. せん妄ケアに適した看護師を配置する行動】、【第
Ⅲ因子. 多職種・家族の参加を促し、病棟のせん妄ケア体制を強化する行動】、【第Ⅳ因子. せ
ん妄患者の危険回避に関する勤務帯メンバーの認識を確認する行動】、【第Ⅴ因子. せん妄の 発症要因に対する介入が適切に行われるよう勤務帯メンバーの実践を支援する行動】、【第
Ⅵ因子. せん妄患者の苦痛に配慮したルート・カテーテル類の管理方法を医師と検討する行
動】、【第Ⅶ因子. せん妄の発症要因を多角的にアセスメントする行動】、【第Ⅷ因子. せん 妄の状態を見極める行動】、【第Ⅸ因子. せん妄患者の特性から最適な病床環境のあり方を率 先して検討する行動】と命名した。確証的因子分析の結果、適合度はGFI=.984、AGFI=.982、
SRMR=.048、尺度全体のCronbach’s α=.935であった。本尺度と「勤務帯リーダー役割自己 評価尺度」は、有意な相関関係を認め併存妥当性が確認された(ρ=.558, p< .001)。
関連要因の検討では、単変量解析で p<.1を示した10変数を独立変数としたロジスティ ック回帰分析を行った。従属変数3条件のうち、2条件でモデルが成立し、「臨地実習指導
の経験」、「認知症ケアやせん妄ケアに関する研修の受講経験」、「認知症ケア加算取得状況」、
「せん妄に関して相談可能な精神科医の存在」の 4 変数が、勤務帯リーダー看護師のせん 妄ケア実践能力と関連していることが明らかとなった。
〔考察〕開発された尺度は、9側面40項目から構成され、一定の信頼性と妥当性を有する ものと考えられる。また、本研究で見いだされた 9 因子の関連性から本尺度の内容は、現 実の臨床現場に即した勤務帯リーダー看護師に必要なせん妄ケア実践能力を反映している ものと考えられる。すなわち、勤務帯リーダー看護師は、せん妄ケアが必要な患者の状態 や発症要因に関するアセスメントに基づいて、患者の安全確保に留意しつつ、せん妄の原 因となった要因、ならびにせん妄症状の緩和・解消にむけて勤務帯メンバー看護師や看護 管理者、多職種と積極的に連携しているものと考えられる。また、せん妄ケアが確実に提 供されるよう勤務帯メンバー看護師の配置を検討したり、医療者間や家族との情報共有を 密にしたりしてせん妄ケア体制を強化しているものと考えられる。これらのことから本尺 度は、勤務帯リーダー看護師の実践上の課題の検討に活用可能である。関連要因の探索結 果より本尺度は、認知症ケア加算を取得していない病院やせん妄に関して相談可能な精神 科医がいない病院に所属する勤務帯リーダー看護師に積極的に活用されることが望まれる。
〔結論〕開発された尺度は、9側面40項目から構成され、一定の信頼性と妥当性を有して いた。また、勤務帯リーダー看護師のせん妄ケア実践能力の高さには、臨地実習指導の経 験を有する場合、認知症ケアやせん妄ケアに関する研修の受講経験を有する場合、認知症 ケア加算を取得している病院に所属している場合、せん妄に関して相談可能な精神科医が いる病院に所属している場合の4つが関連していた。