-1-
論文の内容の要旨
1 申 請 者
防衛医科大学校 石切山 拓也
2 論文題目
Liver X Receptorが肝臓の固有Kupffer細胞と遊走マクロファージの機能に及ぼす 役割の検討
3 論文の内容の要旨(博士:2,000字程度)
(1)目的
肝臓のマクロファージ(Mφ)には、貪食と殺菌を主体とする胎生期のYolk Sac 由来の肝固有Kupffer細胞(固有KCs)と、サイトカイン産生や抗腫瘍機能に関与す る骨髄由来の遊走マクロファージ(遊走 Mφ)の 2 種類が存在し、それぞれ役割分 担をしている。本研究の目的は、2種類のMφの特徴をより詳細に検討した上で、
コレステロール代謝を調節する核内受容体の Liver X Receptor (LXR)を介したシ グナルが、これらの固有KCs及び遊走Mφの免疫機能及び脂質代謝に対してどの ように影響を与えるかを解明することである。
(2)対象並びに方法
C57BL/6Jマウス(WT)の肝臓をコラゲナーゼ処理した後に、Percoll 比重遠心法 を用いて単核球(MNCs)を分離した。それらの細胞からフローサイトメトリー法に よりCD45、Ly6G、F4/80、CD11bを用いて固有KCs及び遊走Mφを分類し、そ れらのMφにおけるLy6C、MerTK及びCLEC4Fの発現、E. coliの貪食能、TNF αの産生能について比較した。2 Gyの放射線照射が両細胞群に及ぼす影響につい ても検討した。次に、LXR agonist (T0901317)にて肝MNCsをin vitroで刺激し、
固有KCsによるE. coliの貪食能及びLPS刺激における遊走MφのTNFαとIL-12
の産生能をcontrol群(DMSOのみ)と比較した。また、野生型、LXRαノックアウ トマウス(LXRαKO)、LXRα/βノックアウトマウス(LXRα/βKO)における 2 種 類のMφの分布を比較し、E. coliの貪食能及びE. coli投与時のサイトカイン産生 能について検討した。LXRαKO マウスについては貪食能だけでなく貪食殺菌能 についてもpHrodo-E. coliを用いて検討した。さらに、WT、LXRαKO、LXRα/ βKOにおいて両細胞群のacetylated low density lipoprotein(acetylated LDL)の貪 食能と変性LDLのスカベンジャー受容体であるCD36の発現を比較検討した。
-2-
(3)成績
肝単核球はF4/80high CD11blow Ly6C-の肝固有KCsとF4/80low CD11bhigh Ly6Chigh
or lowの遊走Mφに分類された。固有KCsの多くはMerTK陽性であり、対照的に 遊走MφはMerTK陰性であった。固有KCs の特異的なマーカーであるCLEC4F は、固有KCsの細胞表面だけでなく細胞内にも発現しており、その発現の無い遊 走Mφと明確に区別された。固有KCsは高いE. coli貪食能を持つがTNFαは産 生していなかった。また、放射線照射を受けても割合はむしろ増加し、貪食能に も変化は見られなかった。遊走MφはTNFαの産生能を有するが、放射線照射に より割合および数が減少し、また TNFα産生能も減弱した。LXR agonist による LXRの活性化は固有KCsの細菌貪食能を亢進し、遊走 MφによるTNFαの産生 能を低下させた。LXRα/βKOマウスはWTマウスに比較し固有 KCsは減少し、
E. coli貪食能も低下していた。LXRα/βKOマウスの遊走MφはWTマウスに比
較し増加し、E. coli投与後のサイトカイン産生能もWTマウスに比較して高かっ た。LXRαKO マウスの固有 KCs おいては貪食殺菌能を評価する pHrodo-E. coli の取り込み能がWTマウスに比較して低かった。LXRαKOマウスおよびLXRα/
βKOマウスの固有KCsはacetylated LDLの取り込み能がWTマウスに比較して 低く、逆に変性LDLのスカベンジャー受容体であるCD36の発現はWTマウスに 比較して高かった。
(4)考察
マウスの肝臓のMφは表面抗原により固有KCsと遊走 Mφの2種類に分類で き、非致死性の放射線照射は固有KCsに影響を与えないが、遊走Mφを減少させ そのサイトカイン産生能を抑制した。この2種類のMφにおいて、コレステロー ル代謝の核内受容体であるLXRの活性化が固有KCsの機能亢進および遊走Mφ の機能低下を促した。そのためLXRKOマウスでは固有KCsの機能が低下し、逆
に遊走Mφの機能が亢進することを見出した。また同時にLXRKOマウスにおい
てコレステロールの取り込み低下とCD36の発現亢進を認めることから、LXRは 固有KCs の機能と遊走 Mφの免疫能だけでなく、主に固有KCs を介してコレス テロール代謝に影響を及ぼすと考えられた。
(5)結論
固有 KCs の表面マーカーは Ly6C-MerTK+CLEC4F+であり、一方で遊走 Mφ の表面マーカーはLy6C+MerTK-CLEC4F-であった。また、固有KCsは放射線感 受性が低く、低線量放射線による機能的影響をほとんど受けないが、遊走Mφの 放射線感受性は高く、低線量放射線によって機能が減弱することが明らかになっ た。
LXR を介するシグナルは固有 KCs の細菌貪食能およびコレステロールの取り 込み能を増強する一方で、相反して遊走MφによるTNFαの産生を抑制すること が明らかになった。