人間の福祉 第31号(2017)31〜46
〈原著論文〉
小地域福祉活動の展開条件
一埼玉県寄居町社会福祉協議会の事例から一※稲葉一洋※※
はじめに
21世紀の日本社会では,地域福祉の推進に向けた小地域への関心が頗る高い。高齢者分野で 注目を集める地域包括ケアシステムの構築にしても,地域における孤立や無縁化の進行により,
住民による見守りや支えあいが必須の条件となっている。もともと小地域は,住民生活の中心 部分といってよく,地域福祉推進の母胎にほかならない(注D。そこに近年,地域住民による共助 の必要性が声高に強調されるが,必ずしも各地で小地域活動が活発化し,住民による福祉力を 高めているわけではない。福祉政策として国も地域福祉の推進を掲げたが,行政による施策化 や条件整備の進展も緩慢である。
小地域においても住民活動が,自生的に展開することは少ない。それゆえに社会福祉協議会
(以下,「社協」という)に代表される専門機関による,継続的で的確な住民の参加支援が欠か せない。社会福祉法では市町村社協を,地域福祉の推進を目的とする団体として規定し,住民 活動を支援する役割を期待した。この社協の基本的使命を一言でいえば,コミュニティ・住民 に働きかけ,住民参加のもとに地域の生活課題・福祉課題の解決に取り組み,福祉コミュニティ の形成化を図ることにある。そこに住民参加を支援する社協の戦略と方策,地域に働きかける 専門性が指摘されてきた由縁がある。各地の市町村社協は,多くの小地域福祉事業を実施して いるが,その事業内容や実践方法,力の入れ方や熱意活動の広がりやそれが担う機能は多様 であるだけでなく,取り組み自体の弱さを指摘されることも多い。
いわゆる地域福祉では,「人」という要素が重視され,その成否も人次第といわれることが多 い(注21。それは社協による小地域福祉活動推進の場合も例外ではなく,むしろ典型といってよ い。専門職員であるワーカーと活動を担う地域住民,つまり人講主体が実践の成否を左右する
※Dω8♂o力辮8フπCoフ24読。フz3(ゾ漉θS酌一R69ガ。πα1腕駈zプ6・4c 勿漉θ∫
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※※Kazuhiro INABA 立正大学社会福祉学部社会福祉学科教授
キーワード:小地域福祉活動福祉委員,コミュニティワーク,社協実践
要因とされる。小地域の社協実践も人を媒介として,人と密接な連関を持って進められるが,
その成否の要因を人だけに,全てを一括りに還元してよいわけではない。活動を推進して実践 する人,つまり主体と区別できる要因(要素・条件)を析出し,活動支援の成否や成果を各要 因に即して捉え,総合的に把握することはコミュニティワーク実践にとって有益である。
本稿では,埼玉県寄居町社協による小地域福祉活動(地域支えあい活動)の取り組みを事例 として,活動の推進に向けた社協実践に焦点を絞り,その展開を可能とした諸要因に照射した い。そこで先ず,本稿の目的に即して先行する所説をも踏まえ,小地域福祉活動推進の要因を 提示しておきたい。牧里毎回『地域福祉論』(放送大学教育振興会,2003年p.154)は,地域 福祉活動の構成要件を,「主体」と「対象」と「目標」,「機能」と「方法」と「手段」などとし ている。前三者(主体・対象・目標)には,地域住民と地域社会の問題,活動の目標を,後の 三者(機能・方法・手段)では,活動の機能や活動を進める方法・手段を掲げている。これは 標準的な整理ともいえるが,本稿で意図する活動推進の要因を捉えるには,どうしてもプロセ ス(過程)と時問的経過が不可欠である。平野隆之『地域福祉推進の理論と方法』(有斐閣,
2008年,pp.103−104)も,地域福祉実践の構成要素を「活動主体」と「プログラム」の循環部 分と,それを推進する「コミュニティワーク」の部分に整理している。プログラムを構成要素
とする点は示唆的であるが,プロセス自体を独立の要素としてはいない。
牧里と平野ともに構成要件・要素に,プロセスを位置づけていないが,コミュニティワーク の基本要素には,一般的に過程(プロセス)を含めて説明される(注3}。小地域福祉活動の推進要 因を明らかにするには,社協による継続的な取り組みの蓄積,プロセスや手順を抜かすことは できない。そこで本稿では,実践の歴史を含めた「プロセス」,「方法①(仕組み)」と「方法②
(地域支援)」,「主体(人と組織)」としての社協を推進要因として析出して検討する。最初に,
小地域実践の背景となる寄居町の地域概況と,活動の推進実施に不可欠な同町の行政区・地区・
町全域という,三層に重層化した地域単位に注目して捉える。次いで,社協による小地域実践 の歩み(プロセス)を捉え返し,その後に「方法①(仕組み)」と「方法②(地域支援)」を検 討する。そして,この小地域活動の機能に整理を加えた後に,活動推進の要因としての社協の
「主体(人と組織)」を考察する。そして最後に,本論文の結論を概括し,同実践の地域福祉推 進に向けた課題を提示したい。
1 地域の概況と重層的な小地域福祉の推進
埼玉県の北西部に位置する寄居町は,奥秩父に源を発する荒川が関東平野に出る谷口に古く より発達した地域であり,秩父地方の玄関口にあたる。同町は首都圏70kmに位置し,その面積 は64.17k㎡と県内63市町村で16番目に広い。また,人口3万4,915人,世帯数1万4β07世帯高 齢者人口29,0%,年少人口10.7%である(20!5年10月1日「住民基本台帳」)。人口面からいえ ば,町としての人口規模は大きい方だが,2001年の3万8,542人をピークに人口減少が続いてい
人間の福祉 第31号(2017)
る。高齢化率が全国平均よりも2%強,埼玉県の平均よりも5%強高く,また年少人口の比率 は国や県の平均よりも2%ほど低い,少子高齢化が進行する町である。近年,ひとり暮らし高 齢者は1,!24人と増え続けているが,在宅の認知症高齢者は104人と横ばいで推移し,在宅の寝 たきり高齢者のみが55人と減少傾向にある(2015年6月1日現在,寄居町「健康福祉課」)。
現在の寄居町は1955年2月11日に,1町4村(寄居町折原村,鉢形村,男血餅,用土村)
が昭和の大合併により誕生した。平成の大合併を経験しなかった同町は,旧寄居町の市街地,
西部,桜沢の3地区に,旧村の4地区を加えて,合計7つの「地区」に地域公民館を設置し,
同町の重要な地域単位になっている。寄居町における小地域福祉活動を代表し,地域福祉推進 の中核を担っているのが「地域支えあい活動」である。その活動の特徴は行政区(自治会)ご とに,町内全区で小地域福祉活動の推進組織「地域支えあいの会」を設置し,福祉委員・区長・
民生委員の三者を中心とした活動を展開している点にあるが,この活動の推進にとって「地区」
の位置づけと,その担う役割も大きい。公民館単位の地区ごとに行政区数をみると,市街地
(6),西部(9),桜沢(6),折原(10),鉢形(10),男裳(14),用土(12)であり,行政区 の総数は67を数える。
2001年に寄居町社協は,全行政区での福祉委員の配置を達成する。それを活動の中核として,
社協の福祉協力員をも兼ねる行政区長,地域福祉のキイパーソンといわれる民生委員との協力 のもとに,三者一体となった地域支えあい活動を推進してきた。この行政区福祉ともいえる活 動の基本単位は,町内に67ある行政区=小地域である。同町の行政区は,「区の設置等に関する 規則」により,町行政の円滑な運営を期すために,区の設置及び区長,衛生委員,道路委員の 職務を定めている。区長等の役員は,各区住民の総意で選出され,それを町長が委嘱する。行 政区という名称は,行政との係わりの深い,行政協力組織としての印象を与えるが,それにと どまるものではない。一定の地域を単位に,全世帯加入を原則とする地域の担い手として,包 括的に地域課題を取り扱う特性をもつ。それは一般的には,自治会・町内会等の呼称で呼ばれ
る地縁組織である。日本のほぼ全ての市町村に存在し,もっとも身近な社会集団である近隣住 民組織にほかならない(脚。
近年日本の自治会等の事業でも,「行事開催」と「社会福祉活動」は上昇傾向にある(注5)。寄 居町の町民アンケート調査(2015年)から,ボランティア活動への参加率をみると,46.4%と
4割台半ばを超えるが,そのうち活動内容の最多回答は「自治会の活動」(41.6%)である(注6 。 このデータは,同町の行政区(自治会)の存在の大きさを示唆しているし,「社会生活基本調 査」の最近2回(2006年26.2%,201!年26.3%)の全国調査データと比較しても,寄居町の参加 率は20%も高い。同町の行政区は,身近な近隣を舞台として,住民の問題や参加が見えやすく,
小地域福祉活動を可能にする適切な単位といえる。
地域支えあい活動は,各行政区を活動の基盤としつつも,行政区内で完結する活動ではない。
住民ニーズの充足や問題の解決に向けて,行政区を超えて公的な施策やサービスにつなげる機 能を有する。また公民館単位の各地区には,「地域支えあいの会連絡会」を組織し,そこで区
長・代表福祉委員・民生委員を構成員とする,情報交換や研修会の開催,民生委員・福祉委員 を対象とする会議や研修も,「地区別推進会議」の名称で実施されている。さらに全町的な「代 表福祉委員会議」の開催をはじめ,この活動の推進・支援を町社協が担う構図となっている。
このように寄居町社協は,行政区一地区一町全域という三層の構造で,小地域福祉活動とそ れを支えて推進する仕組みを整えている。
2 寄居町社協による小地域実践の発展
(D 「地域支えあい活動」以前
寄居町で「地域支えあい活動」と呼ばれる小地域福祉活動は,1998年の「福祉委員の設置」
に端を発する。2001年には町内全行政区に福祉委員が設置され,それ以来15年が経過した。い うまでもなく福祉委員の設置という事業構想も,ある日突然に浮上したものではない。そこに 至る地域組織化に対する,社協の試行錯誤と認識の熟成というプロセスを経て,初めて社協事 業として誕生している。
1963年8月に結成された寄居町社協が,本格的に稼働するのは1982年の法人化以後である。
法人化初期の社協を特徴づけていたのは,寄居町総合社会福祉センター(かわせみ荘)運営の 比重の高さである。この町からの委託事業に真摯に取り組みつつも,当時の社協事務局長はじ め,職員の問にも社協のあるべき姿を求める意識は高く,これからの同社協の方向性を探る方 途として,社協法人化の数年後には,埼玉県社協「民間在宅福祉サービス促進モデル事業」
(1985−1987年)の指定を受けている(泣7)。法人化して10年ほどの問は,町行政からの業務の引 継,社協会員制度の設置,福祉基金の積み立て,社協だよりの発行など,社協組織と社協事業 の展開に向けた基盤づくりの時期といってよい。この時期の実施事業をみると,日赤・赤い羽 根・歳末の募金活動ボランティアの組織化に向けた養成講座や活動支援,ボランティアだよ りの発行,福祉協力校や高校生ワークキャンプなどの福祉教育,老人クラブによる友愛訪問活 動にも着手しているが,そこに社協の小地域への強い指向性を見いだすことは困難である。
埼玉県内でも寄居町社協は,比較的早くから計画づくりに着手してきた。埼玉県社協の調査 によると,1993年12月現在で,「社協強化・発展計画」の策定済(計画実行中)市町村社協は,
県内92市町村中18社協と2割を下回っている(注81。寄居町社協はそれよりも2年早く,法人化10 年目を迎えた1991年度に,町民に見える社協を目指して「社協強化発展計画」(5力年計画)を 策定している。それ以後も,地域福祉活動計画等の計画手法を重視した社協事業の展開は,同 社協の一つの大きな特徴となっている。そこに地域支えあい活動の歩みも,ほぼ社協が策定し てきた計画を通して捉えることができる。
寄居町社協は,社協強化発展計画の中間見直しを機に,同計画を「地域福祉活動計画」(1995
−1999年度)に切り替えて計画を策定した。この2つの計画をみると,社協が小地域福祉活動 への指向性を次第に強めていく様子が確認できる。前者の社協強化発展計画では,町内7地区
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の支部が機能していないとの認識の下,将来的には自治会の役員構成のなかに,福祉委員制度 を設けるための調査研究の必要性を提起しだ注9)。それが後者の地域福祉活動計画に至ると,基 本計画の柱の!つに「5.ネットワークづくりの推進」を据え,ひとり暮らし老人や介護者の 組織化に具体的な進展はなく,見守り活動も未着手の状態として,地域組織化事業の引き続い ての取り組みを課題としている伽)。そして,その実施項目には「③援助ネットワークシステム の構築」を掲げ,ひとり暮らし老人等の見守り活動の組織化を,小地域単位でネットワーク化 を図り,地区社協につながるように推進するとし,1995年度・1996年度を実施に向けた研究期 間,1997年度にモデル指定を定めている(注11)。このように寄居町社協による小地域福祉活動は,
1990年代の計画化と模索の段階を経て,初めて地域支えあい活動という実践化の段階へと移行 する。そこで社協が選択した小地域実践の方策は,地区社協といった活動の推進組織づくりで はなく,地域での支えあい活動の具体的推進や実践者の確保と拡大であった。
(2)地域支えあい活動の進展と推進組織
一般に,地域で新規の委員をつくることには抵抗を伴うが,寄居町社協は1998年に市街地地 域を皮切りとして,地域支えあい活動の担い手となる「福祉委員の設置」に踏み切る。それ以 後,1999年(男裳・用土),2000年(折原・鉢形),2001年(西部・桜沢)と福祉委員の配置区 を広げ,2001年11月には全行政区での配置を達成する。その後も,地域支えあい活動と活動者 の確保を重視した事業展開が続き,社協による行政区や地区,全町的な活動支援の取り組みが 継続的に実施されていった。福祉委員の創設期以後,次のような活動の発展充実策を社協は採 用している。つまり地区別の「地域支えあい活動推進会議」の開催,「地域支えあい活動報告集
(第1集)」(2000年1月)の発行をはじめ,寄居町社会福祉大会における活動報告(2000年5 月),地域支えあい事業の研修会開催,配食サービスの意向調査を継続的に実施している。さら に社協による全町的な「代表福祉委員会議」(2002年)をスタートさせたほか,「地域福祉だよ り」(2005年)を作成し,それを活動の担い手である区長・民生委員・福祉委員に配布等を行っ てきた。
やがて地域支えあい活動も,寄居町全域の活動となって10年が経過し,地域の福祉課題も変 化する中で,一つの大きな転機を迎える。社協は20!1年1月中,この活動の新たな発展を期し て大幅な見直しを図った。これまでの同活動の成果や課題を捉え返し,今後の活動財源や推進 体制を検討・確立すべく,地域支えあい活動に気化した計画策定の委員会を立ち上げている。
そこで最大の眼目となったのは,区単位の活動推進組織の結成を据えて,関係者の協働化を前 進させ,主体的な住民活動の活性化を図ることにあった。それは一見,これまでの地域福祉の 推進組織化よりも,活動自体の活性化を図ってきた社協方針の転換にもみえるが,それは二者 択一を迫られる問題ではない。もともと同社協が小地域社協に関心を寄せてきたことは,1990 年代の計画づくりでも認められるし,『寄居町地域福祉活動計画一後期5旧年計画』(2001年3 月)でも,社協の基盤強化策として公民館単位の「地域社協組織化」を位置づけ,住民活動と
の連携を模索し続けてきた。20!1年に始まる見直しでは,社協事業の具体的目標として67行政 区を基礎単位とする,小地域の活動推進組織化を全面的に掲げた。それは7地区の「地域社協」
という発想を超えて,地域支えあい活動の発展充実,福祉ネットワーク化を進める手立てとし て,より身近な行政区という小地域の活動推進組織が役に立ち,有益であるという判断に基づ く選択である。小地域実践としての有効性を判断基準とした決定であり,むしろ地域福祉推進 に向けた社協戦略の発展といってよい。
策定委員会では早くも20!1年3月には,計画の素案をつくり,それに基づいて4月掛は,市 街地地域を対象としてモデル事業を実施している。モデル事業の検証と総括を踏まえて,同年 11月置12月には同委員会で計画素案に修正を加えて,「地域支えあい活動活性化プラン(201!−
2013年度)」(以後,「活性化プラン」という)を策定し,翌年1月には社協組織として正式決定 した。活性化プランは急ピッチで実行に移され,プランの最終年度には全行政区で,福祉活動 の推進組織「地域支えあいの会」が結成されていった。
活性化プラン策定後の5年間の進展を踏まえ,2015年度には「寄居町地域福祉活動計画」,活 動計画との連携を重視した行政の「寄居町地域福祉計画」が相次いで策定された。この2つの
「地域福祉の計画」では,ともに地域福祉推進の柱として,同町の地域支えあい活動を重視して いる。地域福祉活動計画では当然のごとく,地域支えあい活動とその推進組織を前面に打ち出 し,地域包括ケアシステムの一部を担える基盤づくりと,住民活動で対応できない生活福祉課 題を,公私で解決する体制づくりを目標に掲げた㈱2〕。町行政の地域福祉計画においても,地域 支えあい活動の存在は大きい。この行政計画の第5章「計画の推進に向けて」では,地域福祉
を推進する主体を5つに分類し,その1つの主体に地域支えあいの会を位置づけ,それに強い 役割期待を込めた解説を加えている(注 3}。このように小地域住民による地域支えあい活動は,今 や寄居町における地域福祉活動の中心に位置しているのである。
3 地域支えあい活動の方法一「仕組み」と「地域支援」
(D 活動の仕組みと活動を支える仕組み
寄居町の地域支えあい活動は,行政区という小地域単位で実施されている。活動の担い手は,
①福祉二丁②民生委員,③区長の三者を中心に,それらの連携と役割分担で行う仕組み(装 置)を採用しているが,ここで活動の核となるのは福祉委員である。従来から地域で選出され ていた②民生委員(厚生労働大臣委嘱)と③区長(町長委嘱)に①福祉委員(社協会長委嘱)
という新たな活動主体を創出し,三者の連携で活動化を図るという着想を得て,はじめて可能 となった活動の仕組みである。
①福祉委員は,全国各地で活躍する小地域福祉活動の担い手であり,法律や条令を根拠とし ない福祉ボランティアである。その名称も福祉推進委員,福祉協力委員,福祉活動推進員など 一定でないし,具体的な役割は各市町村によっても異なる。①福祉委員と②民生委員では,そ
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の性格に異なる点もあるが,地域で担う役割の多くは共通し,ほぼ同一である〔温%民生委員よ りも福祉委員の人数は多く,きめ細かな小地域での福祉活動の担い手として期待を集めている。
寄居町の福祉委員は30世帯に!人の割合で選出され,その任期は2年である。各行政区の区長 の推薦により,社協会長が委嘱する形をとっている。同町の福祉委員の性別・年齢別データは ないが,女性が大半を占め,年齢的にも50〜60歳代が中心である。
②民生委員は,任期3年で地域福祉のキイパーソンといわれる。寄居町では定数73名に不充 足はないが,民生委員が担当地区の個々人の支援やサポートを一手に引き受けることは難しい。
行政区を束ねる③区長の任期は2年であり,その職務は町の規則で「町長が委嘱する事務を適 正に処理する」と規定されているが,その守備範囲はそれよりも遥かに広く,近隣住民組織と
して地域や住民生活全般を対象とする。区長は福祉課題の対応に特認した担い手ではなく,個 別ニーズへの支援やサポートを期待することは妥当でない。地域支えあい活動は,民生委員・
区長という地域の担い手二者の役割可能性を直視し,新たに直接活動を担う住民ボランティア としての福祉委員を加えて,構想化された小地域サポートシステムといってよい。
福祉委員の配置定数について寄居町社協は,あくまでも目安と断りつつ397人という数字を示 している(次頁の表1)。全行政区の実際の配置数は361人であり,その充足率を計算すると,
91%と9割を超えている(2015年4月1日現在)。町全体の世帯数でいえば,40世帯に1人の割 合である。配置定数を上回る行政区が13(いずれも1名増員)ある一方で,定数を下回る行政 区も20存在する。配置が定数を下回った区に注目すると,!名程度の減員が多いが,5人以上 の減員となっている行政区(常木・本村・西浜)は,いずれも世帯数の多い区であり,定数通
りの選任の難しさが垣間見られる。定数を下回った20行政区のうち,寄居町全体の高齢化率 28.9%を超えていたのは10区と半分であったが,35%以上では1区のみである。高齢化率35%
以上の16行政区では,15区が定数配置をしており,高齢化率の高まりが福祉委員の配置を促す 要因とみられる。これら福祉委員の配置状況からは,次の4点を確認できる。①配置は概ね全 町的に広がっていること,②継続的に選任がされていること,ただし③世帯数の多い2・3の行 政区で配置率が低いこと,④各区の必要性や実態を反映した福祉委員の選任が行われている。
地域支えあい活動の存立には,活動の核となる福祉委員の確保が欠かせないが,区内で選ぶ 人数も多く,民生委員(定数76名,主任児童委員3名を含む)や区長(67名)とは異なる選出 の難しさがある。福祉委員の選任が負担になる地域もあり,その任期や選任方法をめぐっては.
201!年の活性化プラン,2015年の地域福祉活動計画の両策定委員会でも主要課題として議論さ れた。「活性化プラン」の6つの推進項目では,第1項目に福祉委員の安定した選任と配置を掲 げたように,福祉委員の確保は本活動の最大の課題であり,人材の発掘や育成のための手立て が模索されてきた。区役員経験者の活動への取り込み,元気な高齢者参加の促し.2011年度か
らは「アクティブシニア応援講座」や「子育てボランティア養成講座」を開催している.注し㌔
先に見たように活性化プランを契機に,社協は小地域における福祉活動の推進組織の立ち上 げを決意する。そして活動を始めて15年後の2013年には,全行政区で民生委員,福祉委員.区
表可 寄居町における行政区と福祉委員の配置 2015年12月10日現在
也⁝凶コi −
行政区名 福祉委員数(人) 下郷 8 8
26.2
826配置定数 現配概数 高齢化 ヲ(%)
人口
i人)
塚越13 10 26.2 1,170
本町
10 9
369 653 伊勢原6 7 29.5 404
中町 10
10 31.4 70! 谷津 1 1 31.0
158
市街地
栄町
4
447.4
230 蔵田3 2 32.8 235
武町
4 5 38.5 317 中郷 8
8 31.0
700
茅町 6
6 39.7 380 上郷南 10 9 33.5 815
花町 3 3
30.4
293男裳
上郷北 !2 8
33.4
876計 37 37 362
2,574
赤浜 25 1629.3 2,174
六供 7 8
24.2
768 塚田9 10 20.5 859
常木 20
ll 32.0 1,455 牟礼 9 8 20.1 916
菅原 6 5 239 440 今市 6 6
26.6
708本宿
7
524.5
523 鷹ノ巣2 2 38.4 190
西 部
末野2
5 5 32.0 490 西古里 1 1 34.4
64
末野3 3
3 34.6 283 計 113 96 28.0 !0,095
下野4
4
4 478 291 用土12
222.0
282金尾
4 4 35.6 320 用土2 3 3 26.9 349
風布 1
2 46.7 120 用土3 3 3 29.3 266
計 57 47 309 4,690 用土4 4 4
36.5
446本村
15
!018.3 1ユ56 用土5 4 5 24.6
378
岩崎
6 6 38.3 545 用土6 13 14 24.5 !ρ60
中小前田 !!
10 25.9 927
用土
用土7
5 3 25.0 492
桜 沢
山崎
13 11
2421,151
用土82 2 29.0 23!
南飯塚
4
324.6
378 用土9 2 2 278 2!2上組 8 8
31.9
727 用土103
423.3
352計 57 48
25.9
4,884 用土112 2 25.5 259
上郷
3 3 30.4 316 用土12 1 2 42.2 128
折原下郷
3
230.1
326 計 44 4627.0 4,455
上平下小路 1 2 341 179 総合計 397 361
28.9
34,949立原 4 4
35.1
407折 原
秋山 2
2 51.6 182
三品 1
2 33.3 114
平倉
6 5 31.9 442
山居 1
2 34.6 107
皿谷 2 2
37.5
160五ノ坪 1
2 34.1 164
計 24 26
34.4
2,397木下 5 4 299 468
上の町 4 4
36.3
350下宿 4 4
29.3
409関山
5
426.3
419鉢 形
上の原 15 15
24.3 !β29
立ケ瀬
9 7 22.8 924
露梨子 8
8 28.0
718
三ケ山
7 7 25.5 609
保田原 6 6
36.8
468小園
2
228.1
160計 65 61 274 5,854
注1:高齢化率および人口は,2015年9月1日現在の数字である。
出所:寄居町社会福祉協議会「寄居町地域福祉活動計画」(2016年,p.57)および同社協の作成した「寄居町地区心高 齢化率一覧」(2015年9月1日現在〉をもとに筆者作成。
入間の福祉 第31号(2017)
長および三者の経験者に,ボランティア等で構成する「地域支えあいの会」を組織化している。
ここに行政区における活動者のネットワークづくり,課題の共有化などを支えて発展させる組 織的な仕組みを整えている。従来の福祉委員,民生委員,区長の三者に,地域支えあいの会の 会長が加わる組織構成となったが,区長が会の会長を兼務する区が約75%を数え,区長への過 度な負担と活動への影響が懸念されている刷61。
行政区を単位とする地域支えあいの会を支え,充実させる仕組みとして社協は,7つの公民 館単位に各区の会相互をつなぐネットワーク,「地域支えあいの会連絡会」を発案した。それは 各区の地域支えあいの会の会長,区長,民生委員,代表福祉委員を構成員に年2回の連絡会を 開催し,意見交換の場となっている。さらに社協は,全行政区を対象とする「代表福祉委員会 議」を年1回開催するほか,関係者への福祉情報の提供や認識の共有化を図るべく,「地域福祉 だより」(年2圓)を発行する。また,地域支えあい活動を支援・育成し,地域課題を公的制度 につなぐ「地域福祉コーディネーター」を2名配置した。社協の正規職員による兼務だが,地 域へのアウトリーチの姿勢を積極的に打ち出している㈱7〕。
地域支えあいの会の拠点は,全ての区に自治会館(公会堂や集落センター,集会所等)があ り,都市部のように活動拠点の確保に困ることはない。社協による地域支えあい活動への財源 支援は,次の通りである。①福祉委員一人あたり活動費として2,000円(代表福祉委員3,000円),
会議費として1,000円を助成②地域支えあいの会に活動費の助成(一律1万円と社協会費の実 績の20%),③ふれあい・いきいきサロン開催費の補助,④ボランティア活動保険への加入を実 施している。そして,この地域支えあい活動には,町行政による事業費補助が安定的に行われ ていることも,活動を支える条件として見逃せない点となっている職8〕。
(2)社協による小地域支援の方法
寄居町社協による地域支えあい活動の実践は,その前史を含めると20年を超える歴史をもつ。
今日に至る活動の展開も,小地域福祉活動の推進方策をめぐる模索と実践を積み重ね,社協事 業としての取り組みを続けた成果であることは間違いない。社協の地域に対する働きかけには,
息の長い取り組みが不可欠として強調されるが,それは「言うは易く行うは難し」の好例でも ある。同社協による取り組みは,「継続は力なり」を痛感させる実践例である。そこには当然な がら,同社協による小地域支援の実践が存在している。
寄居町における福祉委員の選出方法は,住民が自主的に応募するというよりも,行政区で選 ばれる。それも地域の役割として頼まれ,順番だからやるという形をとるのが一般的である。
それは自分の思いや気持ちをバネに,自発的に参加するというボランティア像とは性格を異に する。この福祉委員に関する構想は,いうまでもなく社協の地域特性や住民性を考慮しての帰 結である。それが小地域の福祉活動の担い手を確保するという面では,安定性・継続性を担保 し,かつ全町を網羅するという広がりにつながっているように,住民活動としての展開という 点でも,よく地域性を捉えた社協の判断と実践の結果といえる。
住民活動を側面的に支援することに社協の固有役割がある。寄居町社協は小地域福祉活動の 推進において,住民の参加に伴う負担の軽減と,達成感・やりがいの両立を重視してきた。そ れは地域住民の参加に対する社協の実践方針といってよい。住民にとって過度の負担とならず,
可能な範囲で,しかも達成感・やりがいを持てるような活動推進を掲げる。住民の参加を引き 出し,参加意欲を高めるための社協の方針として,そのことを地域でも強調し,意識的に模索 して実践化してきた。同社協による小地域実践では,地域の自主性・主体性を尊重しつつも,
積極的に活動の提案や地域支援を実施する。新たな事業提案を地域に行う場合も,事業を実施 するか否か,その実施方法も住民の判断に委ねることが基本方針である。以下では,近年の地 域支えあいの会結成に焦点を絞り,こうした実践方針のもとに,社協がどのような方策と実践
を採用もしくは駆使し,重視してきたのかを検討する。
小地域福祉活動の推進にあたって寄居町社協は,活動自体の推進を先行させたが,福祉委員 の全区設置から10年後には,区単位の福祉活動推進組織(地域支えあいの会)づくりに着手し,
2013年4月には全行政区で結成に漕ぎつけている。この地域支えあいの会組織化にあたって社 協は,活性化プランの策定中に,活動が活発な市街地(6行政区)をモデル地区として検証を 行い,そこで得た知見やノウハウを活用して,残りの6地区を「桜沢・折原・鉢形」(前期),
「西部・男裳・用土」(後期)と2段階に分け,計画的・集中的に会の結成支援を実施した。活 動の活発な地域をモデル事業に選定することは,小地域福祉活動の定石である四9>。寄居町では 市街地がその先進地域に該当し,1988年置福祉委員設置事業」でも市街地がモデル地区として の役割を担ったが,ここでも定石通りにモデル地区を選定している。地域支えあいの会の立ち 上げでも,社協は周到な準備のもとに地域支援の体制をつくり,活性化プランの策定とも連動 させた事業展開が,戦略的かつ合理的に遂行された。この戦略的もしくは統合的ともいえる事 業の進め方は,地域支えあい活動推進に共通してみられる特徴といってよい。
地域支えあいの会の立ち上げでは,寄居町社協は十分に練られた方法と手順を定めて,地域 への働きかけを行った。そのことは同社協の「地域支えあいの会」の立ち上げを,「近県におけ
る地区社協の立上げ・支援事例」として紹介した,東京都社会福祉協議会「課題発見・解決志 向型地区社協整備事業検討委員会報告書」からも明らかである(注20)。同報告書をもとに,寄居町 社協による「地域支えあいの会」結成の実践手順を意識しつつ整理すると,次の通りである。
①地域の顔役への事前相談を行い,打ち合わせの場を持つように働きかけを行う。②少人数の 打ち合わせの場では,丁寧に説明して疑問に答えるなかで,地域支えあいの会の意義を理解し てもらう。③ある程度の事前了解を取り付けた後に,7つの公民館単位ごとに区長会,地区民 生委員協議会で「事前調整会議」を開催する。④その後に,公民館単位ごとに区長,民生委員,
福祉委員長三会(老人クラブ),公民館長等を集めた「全体説明会」を開催する。⑤各行政区 で会議を数回開催し,了解が得られた区から会の立ち上げにつなげていった。こうした手順に 従って社協は,地域支えあいの会の立ち上げに向けて地域特性や実情に即しつつ,⑤各行政区 での会議に入る前に,①〜④の4つの段階を丁寧に踏んで進めている。まさに「地域の 根回
人間の福祉 第31号(2017)
し の技術」〔注2L)と呼ぶにふさわしい,コミュニティワーク実践の展開である。
地域支えあいの会の結成に臨んで社協は,周到な準備を行い,各地域への働きかけも丁寧に 段階を踏み,計画的で意図的な実践を展開した。この小地域実践と並行して,活動の新たな発 展充実を図るべく,社協は活動を支える財源と職員の確保にも乗り出し,町行政との協議のも とに一定の成果を挙げている。同社協による財源・人員確保の方策は,次の通りである膿1。社 協事業の見直しを図り,介護保険事業(居宅介護支援事業,訪問介護事業)を縮小し,その分 の人員を「地域福祉コーディネーター」1名の増員につなげて,2名の職員配置とした。また 従来,社協の自主財源で実施してきた「紙おむつの支給事業」を町行政補助に転換し,その分 の財源を地域支えあい会の助成金として確保している。ここには小地域福祉活動の推進に欠か せない,専門職員と財源の確保という難しい課題にも,行政の理解と協力を得て,徐々に条件 整備を進める社協の姿が端的に示されている。
4 小地域福祉活動の機能と推進主体
(D 地域支えあい活動の機能
ここでは地域支えあい活動の機能を検討する。それは活動推進の直接的要因とはいえないが,
社協実践や住民の福祉力の果実であり,活動の意義や評価,輪郭を捉えるのに不可欠である。
寄居町社協は福祉委員の基本的活動として,①要支援者の日常的な見守り活動,②社協の配食 サービスへの協力(週3回のうち1回の弁当配達),③把握したニーズの民生委員への連絡を掲 げている㈱)。この3つの活動に,④ふれあい・いきいきサロンの実施⑤簡易な日常生活支援 活動(ゴミ出し,買い物,草取り,話し相手など)を加えた5活動が福祉委員の主要な活動内 容である。これら5つの活動は,小地域における見守り・生活支援の役割を担い,孤立の防止 やつながりを強め,住民の交流を育み,コミュニティ形成に寄与する。さらに住民のニーズを キャッチし,民生委員につなぎ,地域で解決できないニーズや問題に対しては,公的サービス や専門機関等につなぐ機能をもつ。そこでは「ニーズ発見リレーシステム」の機能,福祉課題 を抱える人々の生活を支える支援機能,コミュニティ形成機能を担っている。
この活動の具体的な取り組みは,行政区の住民をつなぎ,小地域における福祉ネットワーク の形成機能をもつ。ふれあい・いきいきサロンも,三者が連携して実施する活動の典型といえ るし,地区単位の「地区別推進会議」も,民生委員と福祉委員の問題や課題の共有,連携・協 働を高める機会となっている。地域支えあいの会の組織化は,行政区内で民生委員,福祉委員,
区長の三者が協力・協働する場を用意し,これまでの区関係者,民生委員,地域ボランティア による縦割りの活動にも噴霧が通り,ネットワーク化の進展に有効である〔1捌。地域福祉コー ディネーターの配置をはじめ,関係者への福祉情報の提供や認識の共有化を目指した「地域福 祉だより」(年2回)は,福祉ネットワークづくりの支援策でもある。
地域支えあいの会による見守り活動は,登録制の仕組みを採用している。地域で見守りの登
録を呼びかけ,本人同意のもとに登録台帳で情報が共有化され,民生委員・福祉委員を中心に,
両者の連携のもとに見守りが行われる。同町のひとり暮らし高齢者の約半数は,見守り活動の 登録者(2014年度末)である。見守りの方法は「声かけ」,「遠目の見守り」(雨戸,郵便受け,
洗濯物等)に区分される。登録の際には,災害時の安否確認や避難支援の希望の有無を確認す る。見守りを望まない未登録者には,民生委員が情報を管理して訪問や声かけを行い,福祉委 員が遠目で見守る。民生委員と福祉委員は協力して,見守りの必要な人向けに年2回社協が発 行する「ほっとライン通信」(2106年度より年3回),ひとり暮らし高齢者等への「救急医療情 報キット」を配布するだけでなく,登録情報の更新も希望に応じて支援する。
地域支えあい活動の実績(2014年度)をみると,全行政区で救急医療情報キットの利用者は,
777人で見守り登録者数と近似した数値を示し,ともに人数は増え続けている。配食利用者のみ は98人目前年度よりも減少している。ふれあい・いきいきサロンは,寄居町全区での実施に漕 ぎつけたが,その開催回数は全区で211回,一行政区あたりの実施回数の平均は3回強と,未だ 行事としての色彩が濃く,活動の日常化には至っていない(注25)。地域支えあい活動には,活動推 進上の課題もいくつか存在し,行政区ごとの地域格差も否めないが,それが担っている住民福 祉活動の機能は十分注目に値するものといえる。
(2)地域支え合い活動の推進主体
地域支えあい活動に対する社協実践をみると,地域の実情や実態に即して,細やかな目配り や配慮のもとに事業を組み立て,戦略的・計画的に実践化されているとの印象を深くする。そ
うした社協実践は,直接的には社協職員とその組織的な力量に依拠する。先の東京都社協の報 告書では,社協事務局を束ねる事務局長の存在に注目し,社協の現場を知り,職員を引っ張る リーダーの存在が,社協の支援や計画推進の原動力と評価している(注26)。現在の事務局長は,同 社協の法人化を契機に,1982年4月に入回して35年の経験と意欲を持つ,生え抜きの社協プロ パー職員であり,まさに「何十年の苦節をくぐったプロパーの事務局長は,その意識姿勢,
意欲が違う」(注27)ことを実感させる。社協の基盤づくりの時期を経て,福祉委員の導入,地域福 祉活動計画や活性化プランの策定といった,住民の参加と計画化を連動させ,地域支えあい活 動を主導してきた人である。2010年度からは事務局長職を務めているが,その存在を抜きに寄 居町における小地域実践の進展を語ることは難しい。
しかもそれは,次のような寄居町社協の職員組織の仕組みで強化され,社協の方針や取り組 みに一貫性や一体性を確保し,地域支えあい事業における高い統合力の発揮を可能とした点も 看過できない〔醐)。2015年4月!日現在,寄居町社協の事務局は正規職員12名,派遣職員2名,
嘱託職員9名,非常勤職員19名,合計42名で構成される。このうち一般事業職員について埼玉 県内の同規模の社協(人口3万人台の三芳町・毛呂山町・小川町・上里町・宮代町・松伏町)
と比較すると,同社協は常勤(正規・派遣・非正規)および非常勤ともに,やや多くの職員配 置をしている(注2%同社協の事務局体制は①法人事業グループ,②地域福祉グループ,③地域二
人問の福祉 第31号(2017)
括支援センターグループ,④受託事業グループに区分される。このうち①と②を次長が,③を センター長が取りまとめる組織となっているが,局長が次長とセンター長を兼務している。こ こに地域支えあい活動の推進や地域への対応も,局長と職員という関係のみでなく,直属の上 司としても,直接に指揮・指導・協議し,まとまりをつけやすい組織となっていた。このよう な事務局の組織体制も,社協としての意思の統一,迅速な対応を支えた要因といえる。
社協事業の展開にとって,職員の配置と育成は重要課題である。小地域における活動推進に も,地域社会に働きかけ,住民の参加や活動を支援する専門職員の配置が欠かせない。それは 従来,コミュニティワーカーという名称で呼ばれてきた。それも1990年代に入ると,ふれあい のまちづくり事業の「地域福祉活動コーディネーター」を皮切りに,住民の参加や地域の組織 化に加えて,生活上の問題・ニーズを抱える人々への個別支援を重視する専門職への関心を高 めていく。寄居町の地域支えあい活動でも,2012年度より地域福祉コーディネーターという呼 称で,社協の正規職員2名を兼務で配置した。新たな名称と役割をもつ職員が,地域で業務を 担って実績を積み,それが行政からも地域からも「見える社協」をつくる意図といえる。最初 は正規職員による兼務でも,非常勤職員・嘱託職員でも,やがて職員体制の充実に繋げる,も しくは繋がるという同社協の発想と戦略に基づく職員配置である。
寄居町社協では,①地域福祉コーディネーターの2名と事務局長との合計3名が中心となり,
地域支えあい活動の支援を担っている。地域福祉コーディネーターの1名は,主に個別支援を 担当し,他の1名と事務局長が地域支援を担当している。同社協も地域福祉コーディネーター が,地域に積極的にでかけるアウトリーチの姿勢を重視し,地域支えあいの会の活動支援・育 成地域課題と公的制度をつなぐ業務と位置づけている。しかし,現状では,活動のなかで対 応が必要な個別ケースへの関わり,地域支えあいの会の運営支援,登録台帳管理が中心業務と いった段階であり,他機関等との連携のもとに,地域の課題解決や調整業務を定着させていく のは,今後の実践的課題となっている〔働)。
5 結 語
寄居町における地域支えあい活動は,町社協が20年にわたって推進を図った社協実践の成果 といってよい。活動の主体は小地域(行政区)の住民であり,住民の参加なくして活動は成立 しなかった。この住民の力を引き出す方策・仕組みとして導入されたのが,地域支えあい活動 である。それは地域の担い手であった区長と民生委員に,福祉委員という新たな活動の担い手 を核に据えて構想された。それゆえに活動は,福祉委員の設置に始まると言ってよいだけでな く,小地域における福祉の担い手の創出・確保の仕組みでもある。この活動の特徴は,本論に おける考察から次の5丁目整理できる。①小地域(行政区)を単位とした住民活動であり,② 全町・全行政区に広がる網羅性をもち,③担い手が継続的に確保され,④近年に至って全行政 区で活動を推進する組織(地域支えあいの会)の結成を終え,⑤活動が担う地域福祉機能にも
大きいものがある。
本稿で目的とした寄居町社協による小地域福祉活動推進の各要因に関する分析と考察は,本 論で検討した通りである。それを結論として簡潔に示すと,以下の通りである。小地域実践の
「歴史(プロセス)」からは,社協の模索の段階を経ての活動の発展と,さらなる展開に向けた 継続的な取り組みの努力と実践の蓄積を確認できる。「方法①(仕組み)」では,小地域福祉活 動を担う三者(福祉委員・民生委員・行政区長)一体の仕組み,三層地域(行政区・地区・全 町)の区分と重層的な支援の仕組みを創出し,ともに連携・連動して有効な仕組みとして展開・
活用している。活動を推進するための「方法②(地域支援)」では,社協は地域特性を熟知し,
用意周到な準備のもとに,地域への丁寧で有効な働きかけを戦略的・計画的に実施している。
小地域実践を担った「主体(人と組織)」では,本活動の推進を構想し,実践として発展させた 主体を,個人レベルと組織レベルで推進要因として確認することができた。
この小論で検討してきた各要因は,いずれも実践を担った「人」を抜きにしてはあり得ない。
しかし,そこで選択・採用された「方法①(仕組み)」と「方法②(地域支援)」が,適切さや 適合1生を欠いていたならば また実践に継続性がなければ,今日のような寄居町における小地 域福祉活動の展開はなかった。それをもし,「福祉は人」として全てを集約するというのであれ ば小地域での社協実践を粘り強く続けた熱心な人がいたというだけでは十分ではない。そこ には実践を担った人々と実践の長い「歴史(プロセス)」があり,さらに社協の職員と組織が,
適切で適合性の高い「方法①(仕組み)」と「方法②(地域支援)」を構想し,実践化したこと を明示することが重要である。
ここでは最後に,寄居町社協による地域支えあい活動の展開と到達点を睨みつつ,地域福祉 推進上の課題を3点ほど列挙する。これらの課題達成にとっても,本稿で検討した小地域福祉 活動推進の諸要因を相互関連的に捉え返すことは有益といえる。
第1に,福祉委員は行政区(自治会)ごとで選任されるが,全行政区への配置を実現し,更 新を続けて現在に至っている。任期ごとに繰り返される担い手の選任と確保は,地域支えあい 活動でも,最大の実践課題として存在した。地域福祉活動の永遠のテーマともいえるが,担い 手確保の方策には引き続いて工夫と模索が求められる。この実践的課題の解決にとっても,地 域における問題の存在のみでなく,解決すべき福祉課題を誰が見ても分かるように,明確に提 起することが,地域福祉を推進する社協の使命である(注3D。
第2に,小地域を単位とする同活動の場合も,住民の自主的な活動ゆえに,活動の活発な区 とそうでない区が存在する。よく活動している地域のみでなく,活動の不十分な地域もある。
そのため社協は住民の参加を引き出す,住民主体の小地域福祉活動の基礎単位を「行政区」と 定め,その推進組織の結成を図ったのみでなく,公民館単位の「地区」を重視して連絡会をつ くり,さらに「町全域」を含めた三層の活動構想と支援策を講じてきた。この重層的な活動構 想と支援の仕組みを発展させるという課題である。
第3に,2015年度に策定された寄居町の地域福祉計画・地域福祉活動計画は,地域福祉の推
人間の福祉 第31号(20!7)
進を具現化するための行政と社協の計画だが,両計画ともに地域支えあい活動を高く評価し,
その役割を大きく位置づけている。今やこの活動も,新たな発展段階を迎えたかに見える。地 域包括ケアシステムを内包する地域福祉の構築を,行政との協働のもとに実現すべく,地域支 えあい活動を進化させる構想と実行力が求められている。
追記
本稿では,小地域福祉活動の展開条件を明らかにすることを目的に,埼玉県の寄居町社会福祉協議 会の取り組みを事例として検討した。同社協と筆者の係わりは古く,1985年度に同社協が「民間在宅 福祉サービス促進モデル事業」(埼玉県社協)の指定を受け,その調査研究を立正大学短期大学部在宅 福祉研究会が,引き受けたことに始まる。近年の同社協「地域支えあい活動活性化プラン策定委員 会⊥「地域福祉活動計画策定委員会」,また同地域福祉活動計画と連携して策定された寄居町行政の
「地域福祉計画策定委員会」にも,筆者は委員・委員長として参加する機会が与えられた。そこでの貴 重な経験からも,同社協による小地域福祉活動の推進要因に関する,多くの知見と示唆を得ている。
ここに追記を終えるにあたり,資料提供や事実の確認を含むヒアリング等に,ご協力頂いた寄居町社 会福祉協議会の矢部吉春事務局長をはじめ,社協役職員の方々には深く感謝の意を表します。
注
1 塚口伍喜夫「小地域の福祉実践」牧里毎治・山本隆編『住民主体の地域福祉論一理論と実践』法 律文化社,pp.210−212
2 地域福祉実践の成否をめぐっては,人という要素で説明されることが多い。かつて岡村重夫も,
「これまでの地域福祉の研究でわかった結論は何かというと,要するに熱心な人がいるかいないか ということでした」と,ある座談会で述懐している(三浦文夫・右田紀久恵・大橋謙策『地域福祉 の源流と創造』中央法規出版,2003年,p.132
3 近年の野口定久『人口減少時代の地域福祉』(ミネルヴァ書房,2016年,pp.260−266>でも,コミュ ニティワークのもっとも重要な基本要素の一つを,「手順=過程(プロセス)」であるとし,コミュ ニティワークの具体的な展開場面で用いる「技法」を説明している。
4 辻中豊・ロバート・ペッカネン・山本英弘『現代日本の自治会・町内会一団5回全国調査にみる 自治力・ネットワーク・ガバナンス』木鐸社,2009年,p.3
5 森裕 亮「地域における自治会の役割とその担い手一可能性と課題」『都市問題』106巻第5号,
後藤・安田記念東京都市研究所,2015年5月,p.12
6 寄居町「寄居町地域福祉計画(平成28年度〜平成32年度)」寄居町2016年,p.71
7 寄居町社協が埼玉県社協の指定を受けた「民間在宅福祉サービス促進モデル事業」は,立正大学 短期大学部在宅福祉研究会(代表:田口正巳)が調査研究を担い,筆者も「在宅老人福祉のニーズ 調査とサービス調査の報告」を担当した。
8 埼玉県社会福祉協議会「平成5年度版市町村社会福祉協議会の現状」埼玉県社会福祉協議会,平 成6年1月,p.11
9 寄居町社会福祉協議会「寄居町社会福祉協議会強化発展計画(答申〉」1991年12月,p12 10 寄居町社会福祉協議会「寄居町地域福祉活動計画」寄居町社会福祉協議会,1995年,p.23 11 同上書,pp44−45
12 寄居町社会福祉協議会「寄居町地域福祉活動計画(平成28年度〜平成32年度)」2016年3月,p,3
13 寄居町「寄居町地域福祉計画(平成28年度〜平成32年度)」寄居町,2016年,p.49。同計画では,
「地域支えあいの会」以外の主体として「町民⊥「社会福祉協議会⊥「他の組織・団体⊥「町」の 役割を掲げている。筆者も参加した寄居町の地域福祉計画と地域福祉活動計画の策定委員会は,ほ ぼ同一のメンバーで構成され,内容的にも一体的な計画策定に近いものである。
14 沢田清方「小地域福祉活動のすすめ方」同編著『小地域福祉活動』ミネルヴァ書房,1991年,
pp.59−63
15 前掲書,「寄居町地域福祉活動計画(平成28年度〜平成32年度)」p.11 16 同上書,p.18
17 同上書,p.17
18 同上書=,p.3
19金坂直仁『地域をたがやす一コミュニティづくりとワーカーの役割』全国社会福祉協議会,1979
年,PP.141−144
20 東京都社会福祉協議会「福祉委員制度を定着させ,〈地域支え合いの会〉の組織化へ(埼玉県・寄 居町社会福祉協議会)」『東京都内区市町村社協における新たな挑戦「課題発見・解決志向型の新た な地区社協づくりに向けて〜先進地区の事例から〜』2014年。この報告書では千葉県2事例(市川 市・佐倉市〉,神奈川県3事例(座間市・茅ヶ崎市・大和市),埼玉県2事例(ふじみ野市・寄居町)
の社協の取り組みを掲載している。
21岡田眞『コミュニティ・ワーク論一地域づくりのノウ・ハウ』大明堂,1981年,p.3 22 東京都社会福祉協議会,同上書,p118
23 寄居町社会福祉協議会「地域支えあい活動活性化プラン」寄居町社会福祉協議会,2012年2月,
p.8。2016年度からは地域福祉活動計画策定での議論を踏まえ,福祉委員の配食サービスへの協力は 行われていない。
24 埼玉県社会福祉協議会「埼玉の福祉広報S・A・1」埼玉県社会福祉協議会,2014年10月号,p.11 25 前掲書,「寄居町地域福祉活動計画(平成28年度〜平成32年度)」,pp.13−16
26 東京都社会福祉協議会,同上書,p.120
27 塚口伍喜夫「21世紀の地域福祉を展望して」塚口伍喜夫・明路咲子編『地域福祉論説一地域福祉 の理論と実践をめぐって』みらい,2006年,p.267
28 寄居町社協の事務局体制は,2016年度に大きく変更され,事務局長の次長兼務を解き,新次長を 任命している。今後の社協組織体制づくりを狙っての対応といえるものである。この論文では,「地 域福祉活動計画」(2016年3月)策定までを,同社協実践の一つの時代区分として捉え,2015年度の 事務局体制に基づいた検討を加えている。
29 埼玉県社会福祉協議会「市町村社協組織及び事業の取り組み状況について」埼玉県社会福祉協議 会,2015年9月,pp.15−16
30 前掲書「寄居町地域福祉活動計画(平成28年度〜平成32年度)」p.17,p.19
31沢田清方「事業計画の立て方(地域福祉活動計画①)」右田紀久恵・牧里毎治共編『〈地域福祉講 座⑥〉組織化活動の方法』中央法規出版,1985年,pp.128−129