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1.はじめに 財団法人インターネット協会の調べによる と、日本のインターネット人口は2005年2月の時 点で7000万人強、インターネットの世帯普及率は 82.8%にのぼるという1)。インターネットは今や われわれの日常生活に深く浸透しており、生活の 一部になっているといっても過言ではない。 こうしたインターネットの普及にともない、心 身の健康との関連からインターネットの活用法を 検討している研究も数多くみられる。たとえば、 インターネットを利用した運動促進プログラムの 開発2)や、インターネットを介したスポーツ関連 ビデオ教材の配信とその教育的効果について検討 した研究3)、さらには、インターネットを利用し た禁煙指導に関する研究4)などである。また、イ ンターネットを利用することで精神的健康や対人 関係にどのような影響がもたらされるかを検討し ている研究もみられる5)6)7) たとえば、Krautら5)はインターネットの導入 前後における精神的健康や、家族関係、近隣住人 との交流頻度について2年間にわたる調査をおこ なっている。その結果では、インターネットの導 入後に家族や近隣住人の間でコミュニケーション や交流活動が減少したという。また、精神的健康 にも影響がみられ、インターネットの使用により 抑うつ感や孤独感が増加したことが明らかにされ ている。わが国でも同様の調査が実施されており、 Krautらとほぼ一致した結果が得られている6)。た だし、インターネットを通したコミュニケーショ ンによって社会的孤独感や対人不安が減少し、結 果的にインターネット使用者の幸福感が高まった とする結果も得られている6)。このように、イン ターネットの使用はわれわれの精神的健康に正負 両面の影響を与えていることが示唆される。 では、健康行動に対してはどのような影響を

大学生におけるインターネット利用状況と健康行動との関連

田 口 雅 徳

The influence of habitual internet usage

on the health management behavior in university students.

Masanori Taguchi

〈要旨〉 本研究は首都圏内の大学生266名を対象に質問紙調査を実施して、日常のインターネット利用およびメー ル利用の状況を検討し、さらにこれらの変数と睡眠習慣、食習慣、運動習慣との関連について検討した。本 調査の結果から、インターネットの利用時間が長い被験者ほど就寝時刻が遅く、また就寝時刻が不規則にな りがちであり、睡眠途中での覚醒頻度も多いことが明らかとなった。さらに、ネットの利用時間と食習慣と の関連もみられ、ネットやメールの利用時間が長い被験者ほど夕食を摂らない傾向にあることが示唆された。 本調査の結果から、一般に指摘されているとおり、インターネットやメールを長時間利用することで、睡眠 習慣や食習慣といった健康行動が乱れやすくなることが示された。 〈キーワード〉 大学生、インターネット、睡眠習慣、食習慣、運動習慣

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与えているのだろうか?インターネットがもたら す弊害の1つとしてしばしば取り上げられるのが、 インターネット中毒の問題であろう。インター ネット中毒とは「寝食を忘れてインターネットに 没頭している状態」だとされる7)。こうした中毒 症状までには至らないとしても、インターネット の使用によって日常の睡眠習慣や食習慣、運動習 慣などの健康行動が害されるケースは少なくない といわれている。 しかし、これまでのところ、インターネットの 使用と健康行動との関連について実証的に示して いる研究はあまり多くみられない。インターネッ トの使用は、実際に健康行動を阻害する要因に なっているのであろうか?本研究では、健康行動 として夜間の睡眠習慣、日常の食習慣、および、 運動習慣を取り上げ、インターネットやメールの 使用状況との関連を検討することとした。 2.方法 1)調査協力者 調査に協力してくれたのは首都圏の私立大学に 通う大学生であった。記入漏れがなく、調査へ の協力が得られた266名(男性139名、女性127名) の回答を分析対象とした。対象者の平均年齢は 19.2歳(SD = 0.92)であった。 2)手続き 大学内の教室において集団式の質問紙調査を実 施した。質問紙はメールやインターネットの利用 状況、夜間の睡眠習慣、日常の運動習慣に関する 項目から構成されていた(表1)。 メールやインターネットの利用状況については、 一日の平均的な利用時間、および、利用する時 間帯を尋ねた。平均利用時間は1. 利用しない、2. 30分未満、3. 30分以上1時間未満、4. 1時間以上2 時間未満、5. 2時間以上3時間未満、6. 3時間以上 4時間未満、7. 4時間以上5時間未満、8. 5時間以 上6時間未満、9. 6時間以上のうちから1つを選択 してもらった。 また、インターネットをよく利用する時間帯に 関しても質問した。回答については、1. 午前6時 ~午前10時、2. 午前10時~午後2時、3. 午後2時 ~午後6時、4. 午後6時~午後10時、5. 午後10時 ~午前2時、6. 午前2時~午前6時のうちから、あ てはまるものをすべて選択してもらった。 つぎに、夜間の睡眠習慣に関しては、平日の就 寝時刻と起床時刻を各被験者に記入するように求 めた。また、就寝時刻および起床時刻が日によっ てどの程度異なるのかを5件法で回答してもらっ た(表1)。さらに、睡眠途中での覚醒頻度、目覚 めの気分、眠りの深さをそれぞれ5段階評定で回 答させた。 食事については、朝食・昼食・夕食を摂取する 習慣があるかどうかを、それぞれ3件法で評定し てもらった(表1)。さらに、運動習慣は、日常の 運動頻度、および、運動時間を尋ねた。運動頻度 は、「1. まったく運動しない」から「5. 毎日運動 する」までの5件法で回答を求めた。また、運動 時間については、「1. まったく運動しない」から「5. 120分以上」までの5段階評定で回答してもらった。 3)統計的処理 統計的検定については、χ2検定およびPearson の相関を求めた。統計的処理にはWindows版SPSS を使用した。 3.結果 1)インターネットの利用状況 メールやインターネットの利用時間別の人数を 表2に示した。表2からもわかるように、メールや インターネットを1日に全く使用しないという学 生は皆無であった。 また、利用時間でもっとも回答が多かったのは 30分以上~ 1時間未満であり(全体の28%)、次 が1時間以上~ 2時間未満であった(全体の27%)。 さらに、3時間未満までの回答を加えると被験者 の80%以上が含まれることになり、大半の大学生 は、メールやインターネットの利用時間が3時間 未満であることが明らかになった。逆に、利用 時間が6時間を超えるのは全体の3%程度にすぎな かった。

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問1)携帯電話やパソコンでのインターネットやメールの使用時間は1日平均してどの程度ですか? 1. 利用しない  2. 30分未満  3. 30分~ 1時間未満  4. 1時間~ 2時間未満  5. 2時間~ 3時間未満 6. 3時間~ 4時間未満  7. 4時間~ 5時間未満  8. 5時間~ 6時間未満  9. 6時間以上 問2)携帯電話やパソコンでインターネットやメールをする時間帯はおもに何時ごろですか? 1. 午前6時~午前10時   2. 午前10時~午後2時   3. 午後2時~午後6時   4. 午後6時~午後10時 5. 午後10時~午前2時   6. 午前2時~午前6時 問3)ふだん寝床(ベットや布団)に入って、眠ろうとする(消灯する)時間は平均して何時頃ですか? 時・分を記入して下さい。 午前・午後(○で囲む)       時       分頃 問4)日によって消灯時刻はどのくらい変わりますか?(休日前を除く) 1. ±10分ぐらい  2. ±30分ぐらい  3. ±1時間ぐらい  4. ±1時間30分ぐらい  5. ±2時間以上 問5)ふだんの平均的な起床時刻は何時頃ですか? 時・分を記入して下さい。 午前・午後(○で囲む)       時       分頃 問6)日によって起床時刻はどのくらい変わりますか?(休日を除く) 1. ±10分ぐらい  2. ±30分ぐらい  3. ±1時間ぐらい  4. ±1時間30分ぐらい  5. ±2時間以上 問7)夜中に何回くらい目が覚めることがありますか? 1. 0回       2. 1回       3. 2回       4. 3回       5. 4回以上 問8)ふだんのあなたの眠りの深さはどの程度だとおもいますか? 1. 非常に浅い方だとおもう   2. 比較的浅い方だとおもう   3. 普通だとおもう 4. 比較的深い方だとおもう   5. 非常に深い方だとおもう 問9)ふだん、朝、目覚めたときの気分はどうですか? 1. 非常に良くない  2. あまり良くない  3. 少し良い  4. わりと良い  5. 非常に良い 問10)どの程度の頻度で運動をしていますか? 1. 運動は全くしない    2. あまりしない(月1 ~ 3日)    3. ときどきする(週1 ~ 3日) 4. ほぼ毎日運動する(週4 ~ 6日)    5. 毎日運動する 問11)運動をした日の運動時間は平均してどの程度ですか? 1. 運動は全くしない   2. 30分未満   3. 30分~ 1時間30分未満 4. 1時間30分~ 2時間30分未満   5. 2時間以上 問12)朝食は食べますか? 1. 食べない  2. ときどき食べる(週に2 ~ 3日)  3. ほぼ毎日食べる 問13)昼食は食べますか? 1. 食べない  2. ときどき食べる(週に2 ~ 3日)  3. ほぼ毎日食べる 問14)夕食は食べますか? 1. 食べない  2. ときどき食べる(週に2 ~ 3日)  3. ほぼ毎日食べる 表1 質問項目

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表2 各利用時間の回答数 利用時間 人数 利用しない        30分未満  30分以上~ 1時間未満 1時間以上~ 2時間未満 2時間以上~ 3時間未満 3時間以上~ 4時間未満 4時間以上~ 5時間未満 5時間以上~ 6時間未満 6時間以上        0 39 75 73 45 10 10  5  9 つぎに、インターネットの利用時間数と利用時 間帯との関連を検討するためクロス表を作成した。 各群ごとに、どの時間帯にインターネットをよく 使っているかを利用率(%)として示したのが表 3である。どの時間帯においても、利用時間数が 長い被験者群の方が利用率が高くなっていること がわかる。χ2検定の結果、午前10時~午後2時で は有意差がみられ(χ2(7)= 14.95, p <.05)、また、 午後2時~午後6時(χ2(7)= 13.64, p <.10)、午 後10時~午前2時(χ2(7)= 12.54, p <.10)では 有意な傾向がみられた。インターネットの利用時 間が長い学生ほど、昼間および深夜において利用 率が高い傾向にあることが示された。 2)インターネットの利用時間数と健康行動との関連 インターネットの利用時間と睡眠習慣、食習 慣および運動習慣との関連について検討するた め、Pearsonの相関係数を求めた(表4)。その結 果、睡眠習慣とインターネットの利用時間との間 に関連がみられ、就寝時刻(r =.158, p <.05)、就 寝時刻の誤差(r =.121, p <.05)、睡眠途中での覚 醒頻度(r =.137, p <.05)においてそれぞれインター ネット利用時間と正の相関があることが示された。 この結果から、インターネットの利用時間が長い 被験者ほど、就寝時刻が遅延しやすいこと、また、 就寝時刻が不規則になりがちであることが示され た。さらに、インターネットを長く使用する被験 者ほど睡眠途中で頻繁に目を覚ます傾向にあるこ とが示唆された。 つぎに、インターネットの利用時間と食習慣と の関連についてみてみると、夕食の摂取とイン ターネット利用時間との間に有意な負の相関がみ られた(r = -.132, p <.05)。この結果は、インター ネットや電子メールの利用時間が長い被験者ほど 夕食を摂らないことが多いことを示している。イ ンターネットやメールに依存した生活により、食 習慣が乱れやすくなることが示唆される。いっぽ う、運動習慣の各尺度との間には有意な相関はみ られなかった。インターネットの利用時間は運動 習慣と関連がなく、インターネットの利用時間が 長いために運動不足になるわけではないことが示 された。 表4 ネットの利用時間と夜間睡眠・運動習慣の諸変数との相関 各変数 r p 就寝時刻 起床時刻 就寝時刻の誤差 起床時刻の誤差 睡眠時間 睡眠途中の覚醒頻度 目覚めの気分 眠りの深さ 朝食摂取 昼食摂取 夕食摂取 運動頻度 運動時間 .158 .095 .121 .080 -.046 .137 -.017 -.049 .001 .071 -.132 -.001 .076 p <.05 n.s. p <.05 n.s. n.s. p <.05 n.s. n.s. n.s. n.s. p <.05 n.s. n.s. 4.考察 1)インターネットと健康行動との関連 本研究では大学生を対象にメールやインター 表3 利用時間別の各利用時間帯の利用率(数値は%) 利用時間 午前6 ~ 10時 午前10 ~午後2時 午後2 ~ 6時 午後6 ~ 10時 午後10 ~午前2時 午前2 ~ 6時        30分未満 30分以上~ 1時間未満 1時間以上~ 2時間未満 2時間以上~ 3時間未満 3時間以上~ 4時間未満 4時間以上~ 5時間未満 5時間以上~ 6時間未満 6時間以上        3  7 11  7 10 20 20 33 10 20 22 20 20 50 40 56 18 33 29 29 20 60 40 67 67 60 70 64 70 70 40 89 46 41 52 62 50 90 60 67  3  4  4  2  0 10 20 11

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ネットの利用状況と睡眠習慣、食習慣、および、 運動習慣との関連を検討した。その結果、イン ターネットの利用時間が長い被験者ほど就寝時刻 が遅く就寝時刻が不規則になりがちであり、また、 睡眠途中で目を覚ます回数も多いことが示された。 さらに、インターネットやメールの利用時間が長 い被験者ほど夕食を摂らない傾向にあることも示 唆された。このように、インターネット使用量は 夜間の睡眠習慣や食習慣の乱れと関連しているこ とが示唆された。 墨岡8)は、インターネット中毒者の多くが、仕事 や学校から帰宅するとすぐにインターネットを使 いはじめ、いつまでも止められずに深夜に及んだ り、徹夜になったりしていると指摘している。本 研究でも、この知見と一致した結果が得られたと いえるだろう。実際、本研究ではインターネット の利用時間の長さと利用時間帯との関連も検討し ているが、その結果ではインターネットの利用時 間が長い被験者ほど昼間や深夜でのインターネッ ト利用率が有意に高かった。インターネットの利 用時間が長い被験者は、昼夜を問わずにインター ネットに興じており、そのため生活習慣が乱れて 夕食を摂ることを忘れたり、就寝時刻が遅れたり、 不規則になったりすると推察される。また、こう した不規則な睡眠習慣が睡眠途中で目を覚ますな どの睡眠障害の一因になっているとも考えられる。 いっぽう、運動頻度、運動時間とインターネッ ト利用時間との間には有意な相関はみられなかっ た。運動習慣の形成には「運動自体への好み」や 「一緒に運動する人の有無」などさまざまな要因 がかかわっているという指摘がある9)。運動習慣 とインターネット利用との関連を検討するために は、これら運動習慣形成にかかわる諸要因を考慮 する必要があったとおもわれる。今後、この点を 充分に精査し、さらに検討していく必要があるだ ろう。 2)今後の課題 これまでの研究では、インターネット使用が抑 うつ感や孤独感などの精神的健康に影響を与えて いることが指摘されてきた。本研究結果からは、 インターネットの乱用がとくに睡眠などの健康行 動を阻害していることが示唆された。睡眠は日中 の活動性や情緒的安定に影響しているという指摘 もある10)。この点を考慮すると、インターネット の乱用は精神的健康に直接的に影響を与えるだけ でなく、睡眠の乱れなどを媒介として間接的に精 神的健康に影響している可能性が考えられる。こ の点について検討することが、今後の課題だとお もわれる。 5.引用文献 1) 財団法人インターネット協会:インターネッ ト白書2005.インプレス,2005. 2) 久保田晃生ほか:インターネットによる運動 習慣定着支援プログラム(i-exer: アイエクサ) の開発および有効性について.体育の科学, 53(7):543-547,2003. 3) 和田 智:獨協大学内LANを利用した、スポー ツ学習のためのビデオ映像データ配信に関す る研究.情報科学研究,20:11-20,2001. 4) 橋本栄里子ほか:電子コミュニティを利用し た禁煙指導プログラムの有効性の検討-「イ ンターネット禁煙マラソン」の再喫煙者への フォローアップの取り組み.医療と社会,10 (3):39-59,2000.

5) Kraut, R., et al. : Internet paradox A social technology that reduce social involvement and psychological well-being? American Psychologist, 53:1017-1031,1998. 6) 安藤玲子ほか:インターネット利用と幸福 感との因果関係-孤独感と対人不安の媒介効 果-.日本性格心理学会第10回大会発表論文 集:48-49,2001. 7) 小林久美子ほか:大学生のインターネット 中毒-中毒症状の分布と関連する要因の検 討-.日本心理学会第65回総会発表論文集: 863,2001. 8) 墨 岡 孝: イ ン タ ー ネ ッ ト 依 存 症 の 実 態. PSIKO,2(4):62-67,2001. 9) 岡野五郎:中年婦人の運動教室参加後の運動 習慣形成度とその影響因子.体力科學,53(6): 904,2004. 10)田口雅徳ほか:幼児における睡眠習慣と攻撃 的行動傾向との関連.保健の科学,48(3): 225-229,2006.

参照

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