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イノシトール遊離能を持つフィターゼに関する研究 応用生物科学専攻

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2017 年 2 月 8 日

イノシトール遊離能を持つフィターゼに関する研究

応用生物科学専攻 生命分子化学講座 応用分子微生物学 佐々木 海

1.はじめに

フィチン酸は植物種子中での主要なリン酸貯蔵形態である。しかし,豚や鶏などの動物はフィチン 酸を消化できないため,フィチン酸リン酸の大部分は吸収されることなく排出される。フィターゼ はフィチン酸から無機リン酸を段階的に遊離させる酵素で,飼料のリン利用率を高めるため広く用 いられている。報告されている大部分のフィターゼはフィチン酸の全リン酸基を加水分解すること ができないため,反応生成物としてイノシトール 1 リン酸を与える。本研究ではフィチン酸を完全 分解し,イノシトールを遊離させる新規フィターゼの獲得と,その触媒機構解明を目的とした。

2.方法

①先行研究により土壌中から単離されたKlebsiella pneumoniae 9-3B 株由来のフィターゼ Phy9-3B はイノシトール遊離能を有する。本実験では Phy9-3B とイノシトール遊離能を持たないことが報告 されているフィターゼ AppA との立体構造比較を行うことで最終生成物決定に関与する領域の特定 とその検証を試みた。

②これまで多様な微生物源からフィチン酸を唯一炭素源,リン源とした培地(MM9 培地)を用いて 集積培養によるスクリーニングを行ったが,単離される菌は K.pneumoniae ばかりだった。これは フィターゼのイノシトール遊離能よりも,微生物のイノシトール資化性がより強い選択性を示した ものと考えられた。そこで,イノシトール資化能を持つBacillus subtilis AHU1972 株を異種タン パク発現ホストとしたスクリーニング系の構築を行うこととした

3.結果と考察

①両酵素の活性中心構造を比較した結果,Phy9-3B 上の Tyr238 に相当するアミノ酸残基が基質との 相互作用において違いが見られた。そこで,Tyr238 はイノシトールの遊離に必須の残基であると仮 定し,本残基とこれに対応する AppA 上のアミノ酸である Phe254 を交換した 1 アミノ酸置換体を作 成し,活性測定を行うことで検証を試みた。この結果,Tyr238 はイノシトール遊離能に必須ではな いものの,イノシトール 2-5 リン酸のいずれかに対する基質認識に関わっていることが示唆された。

②本探索系ではフィチン酸を過剰に処理した土壌サンプルから DNA 抽出を行い,大腸菌-枯燥菌シ ャトルベクターにクローニングすることでメタゲノムライブラリーを構築し,このライブラリーを 用いて AHU1972 株の形質転換を行い,MM9 培地に生育可能なコロニーを得ることで,フィチン酸完 全分解能を持つフィターゼが導入された細胞を特定する予定である。これまでの実験で,ホストで ある AHU1972 株はポジティブコントロールとして用いたフィチン酸完全分解能を持つフィターゼ Phy9-3B を活性のある状態で発現できることが確認されたが,MM9 培地上でのコロニー形成には至 らなかったため,異種タンパクの発現量向上が今後の課題であると結論付けた。

4.まとめ

AppA と Phy9-3B の比較により,Phy9-3B のイノシトール遊離能は本酵素の基質選択性の広さによっ てもたらされている可能性が高まった。今後は活性中心に柔軟性をもたらすアミノ酸残基の特定が 課題だと考えている。また,新探索系構築にあたっては,異種タンパク発現能を向上させるベクタ ー・培地条件の検討を行い,ポジティブコントロール株を確立したい。

参照

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