Abs t r act
The wavel engt h t unabl e l i qui d cr ys t al col or f i l t er i s devel oped f or t he i mage anal ys i s . The cont r ol of t he t r ans mi t t ed s pect r um i s r eal i zed by i nt r oduci ng t he new des i gn concept . I t i s cl ar i f i ed t hat t he compens at i on of t he di s per s i on pr oper t y i n l i qui d cr ys t al i s pos s i bl e by us ual r et ar dat i on f i l m.
:Li qui d Cr ys t al ,Lyot ‑Fi l t er ,Ret ar dat i on,Hal f Bandwi dt h
1.
は じ め に近年,リタデーション制御に基づいた光学 フィルタの性能に関して,透過波長を短時間で 任意に設定可能で,光学特性を高精度で抽出可 能あることが多分野から強く要求されている。
これらの要求条件を満足しうる分光解析素子と して液晶波長可変フィルタ[1]が上げられる。
このフィルタは液晶の複屈折特性を利用し,
多層構造とすることで選択波長の透過スペクト ルの狭帯域化が図られる[2]。また,印加電圧 を制御することによって可視領域のいかなる波 長帯域も簡便かつ迅速に選択可能であるなど,
優れた特徴を有しているため,この技術は画像 解析,特に医療や検査用としての応用が可能で あると考えられる。しかし,広く用いられるま でには至っていない。この理由に ECBモード
を用いた液晶波長可変フィルタは波長依存性が あるため,半値幅の波長依存性,半値幅が広帯 域,そして応答速度が遅いといった問題が挙げ られる。これら全ては液晶波長可変フィルタの 解析精度の根源に関わるものであるため,これ らの問題を考慮した新しい光学設計が求められ ている。
そこで本研究では液晶と同様に複屈折特性を 有する補償フィルムを積層し,材料特性に応じ た任意の波長分散特性を設計することで,多様 な要求条件に即した高性能な液晶波長可変フィ ルタの設計概念を考案し,その基礎特性につい て検討を行った。
2.
液晶の複屈折特性液晶波長可変フィルタは液晶の複屈折特性
(ECB効果 ;El ect r i cal l y Cont r ol l ed Bi r ef r i n- gence Ef f ect )を利用したカラーフィルタであ るため,始めに ECB効果[3]について解説す る。
液晶セルの基本構成を Fi g.1に示す。二枚の 偏光の間に,液晶セルを配置している。このと 平成 17年 12月 16日受理
大学院工学研究科電気電子工学専攻博士後期 課程・3年
大学院工学研究科電気電子工学専攻・教授
青森県地域結集型共同研究事業(JST:独立行
政法人科学技術振興機構)
きの偏光子の光軸は平行,液晶セルは垂直で偏 光子に対して 45度傾けた構造をとる。光学系の ジョーンズベクトルを次式に示す。
=
= 1 0 0 0
cos Γ 2 si n Γ
2
si n Γ 2 cos Γ
2 1 0
(1)
は偏光の 成分, は偏光の 成分,そ して Γは液晶の位相差を示している。また,こ の式で右辺第 1項は検光子,第 2項は液晶セル,
3項は入射する光の偏光を表すジョーンズベク トルである。また, の絶対値の 2乗は透過光 強度 に対応しており,次式で与えられる。
= + =cos Γ
2 (2) ここで Γはリタデーション の関数であり,
次のように求められる。
Γ= 2π
λ (3)
は液晶セルのリタデーション値であり液晶 の複屈折 Δ と液晶層の厚さ の積で与えら れる。また, λ は波長を示している。(2)式に示 すように,二枚の偏光子を平行に組んだ場合の 波長透過率は正弦の式によって表される。また,
式の中身を見ると,リタデーション値 Δ は 波長で規格化した値 Δ / λ として扱われてい るため,リタデーション値は波長で規格化した
Δ / λ として検討を行う必要がある。このこと から,偏光子を平行に組み合わせた場合,リタ デーション値 Δ / λ が πの整数倍 ( =0, 1,2,…)で透過光が最大,半整数倍 ( =0. 5, 1. 5,2. 5,…)では最小といった特性を示すことが 分かる。また,透過スペクトルの最大透過率を 1 (100%)としたとき,透過率が 50%となる波 長 λの差(Δ / λ = π ±π /4)を半値幅と定義 している。
このときの波長分散特性と透過スペクトルの 波長依存性を示したのが Fi g.2である。リタ デーション値 Δ / λ が整数倍で透過率最大,
半整数倍で最小となることが分かる。透過スペ クトルを見るとピークが 3点現れているが,そ れぞれの半値幅は波長によって大きく異なる。
これは液晶の屈折率異方性の波長分散特性に依 存し,波長によってリタデーション値が異なる ことに起因する。一般的な液晶材料は長波長側 ほど波長分散の傾きが小さいため長波長側ほど 広くなるといった特性が得られる。
また,電圧係数 を制御し,リタデーション 値 Δ / λ を変化させたときの波長依存 性 を Fi g.3に 示 す。図 を 見 る と リ タ デーション 値 Δ / λ が πの整数倍となる波長が短波長側へ 変化していることが分かる。このことにより,透 過スペクトルを可視領域で任意に制御すること が可能である。このときの各リタデーション値 における半値幅波長依存性(Fi g.4)を見ると,
Fi g.1 ECBモードの基本構成
Fi g.2 液晶の波長分散と波長透過率特性
半値幅は長波長側ほど大きくなる傾向を示して いるため,長波長側ほど解析精度が低下するも のと考えられる。
3.
液晶波長可変フィルタ液晶波長可変フィルタは画像の二次元情報を 分光することで詳細に解析することが可能な技 術である。基本構成を Fi g.5に示す。この素子 はリタデーション値 Δ / λ の異なる液晶セル を多層化した構成をしているが,各層により特 性が異なり,一層目は透過スペクトルのシフト 範囲と基本となる半値幅を決定,二層目は,二 枚の偏光子を垂直,リタデーション値 Δ / λ を一層目の 1. 5倍と設定することで一層目のサ
イドピークを打ち消す効果が得られる。三層目 はリタデーション値 Δ / λ を大きく設計した ことで,波長分散特性の傾きが大きくなり,透 過スペクトル特性が波長に対して密になること から半値幅の狭帯域化が可能となる(Fi g.6)。
このときの透過光強度は,各層の透過光強度を 積算した次式によって求められる。
=cos π
λ ×si n 1. 5π
λ ×cos 2π λ (4) 液晶波長可変フィルタの波長透過率特性を Fi g.7に示す。電圧係数 を変化させ,リタデー ション値 Δ λ を制御することで,ピーク波長 をシフトが可能であるが,このときの半値幅は 比較的広くなることが分かる。半値幅の波長依 存性を Fi g.8に示す。半値幅波長依存性を見る と,半値幅は長波長側ほど大きくなる傾向を示 している。これは,液晶の波長分散特性はリタ Fi g.3 リタデーション値を変化させたときの波長
分散特性と波長透過率特性
Fi g.4 各リタデーション値における半値幅波長依 存性
Fi g.5 液晶波長可変フィルタの基本構成
Fi g.6 液晶波長可変フィルタの透過スペクトル特
性
デーション値 Δ λ に対して絶対値で変化し,
ピーク波長を単波長側へシフトさせると,傾き の大きい短波長側の波長分散特性が支配的にな るためである。このことから,リタデーション 値 Δ λ を変化させても長波長側の波長分散 特性の傾きを保ったまま,短波長側へシフトさ せることが液晶波長可変フィルタにおいて最も 望ましい特性であると言える。
4.
新しい液晶波長可変フィルタの設計概念ECBモードを用いた液晶フィルタにおける 設計指針は,電圧印加状態のピーク波長のシフ トとともに半値幅一定の条件を見出すことであ る。しかし,複屈折を制御する時,液晶だけで は制限を受けてしまうため,液晶と同様に複屈 折特性を有する補償フィルムを積層することで
この条件の実現を図った[4]。
新しい液晶波長可変フィルタの基本構成を Fi g.9に,波長分散制御の理想的なモデルを Fi g.10に示す。本設計を用い場合,電圧係数
=1では液晶とフィルムの複屈折が打ち消し 合うことで,ピークを示す波長の半値幅は =1 では両者の短波長側の Δ λ 特性で決まる。そ して電圧係数 の低下に伴い,フィルムの長波 長側の特性が反映される。 =0ではフィルム自 身の複屈折が特性を決めることになる。これら の特性を考慮して得られた波長分散特性の理論 計算結果を Fi g.11に,半値幅の波長依存特性 を Fi g.12に示す。ここでは複屈折フィルムと して一般的なポリカーボネートを仮定した。液 晶単体で設計したときの特性に比べ半値幅の半 値幅の変化が少なくなっていることから,本理 論の妥当性が得られた。しかしながら波長依存 性は一定ではなく 30% 程度の変動が見られる。
また,可変領域範囲が 400 nm から 600 nm と狭 く,当初の目的を満足していない。これらはポ Fi g.7 液晶可変フィルタの透過スペクトル電圧係
数依存
Fi g.8 液晶波長可変フィルタの半値幅波長依存性
Fi g.9 新しい液晶波長可変フィルタの構成
Fi g.10 新しい波長分散設計の概念
リカーボネートの波長依存性が大きいことに起 因すると考えられる。これらのことを踏まえ,可 変範囲の拡大や,半値幅の一定化には液晶と フィルムの特性を改善する必要がある。
5.
理論の実証そこで本理論が正しいことを証明するため,
実在する液晶材料と補償フィルムを用いて検討 を行った。設計条件として補償フィルムのリタ デーション値 Δ λ は波長 550 nm で 3. 3 π ,液 晶のリタデーション値 Δ λ は従来法と同様 に一層目を 1. 5 π (λ =550 nm)と設定した。透過 スペクトル特性を Fi g.13に示す。この図を見 ると,液晶セルのセル厚は従来法と同様である にも関わらず,波長分散特性の傾き変化が抑え られ,かつ半値幅が 1/3程度まで狭帯域化され
ることが分かる。また,670 nm にピークを有す るサイドピークが現れているが,これは特性評 価時に各層のピーク波長(電圧リタデーション 特性)が設定値と一致しなかったため,十分な 波長選択効果が得られなかったものと考察され る。しかし,Fi g.14の半値幅波長依存性を見る と,理論と実測がほぼ一致した値を示している ことから,本設計手法の理論が正しいことが実 証された。なお,波長依存性が右上がりになっ ているのはポリカーボネートの波長依存性が大 きいことに起因しているため,より波長分散の 少ない材料により改善ができる。
6.
線形係数LNC
の提案先の検討結果より,本理論では液晶と組み合 わせる補償フィルムの分散特性による依存が大 きいことが上げられる。そこでこの分散特性を Fi g.11 理想補償フィルムと液晶を組み合わせたと
きの波長分散特性
Fi g.12 各リタデーション値における半値幅波長依 存性
Fi g.13 波長スペクトル特性(測定結果)
Fi g.14 半値幅波長依存性の比較
定量的かつ理想の組み合わせを相対的に評価す るため,分散度を定義する新しいパラメータと し て 線 形 係 数 LNC (Li near i t y Coef f i ci ent )
[5]を提案する。
この LNCは,Fi g.15に示すように可視領域 全体(λ =400〜700 nm)における三角形の傾き の比率を表すもので,複屈折材料の厚さによる 特性変化が無いといった特徴を有する。このと き LNC=1は,波長分散特性が直線の関係にあ ることを意味する。
Fi g.16は,半値幅の変化が無い液晶波長可変 フィルタを実現する液晶及び補償フィルムの LNC の相関を示す。図に示すように,理想的な 組み合わせとなる液晶と補償フィルムの分散度 はリニアであることが分かる。また,理想的な 補償フィルムの LNCは液晶よりも大きな特性 を示している。このことにより,光学補償フィ
ルムの小さな分散度を液晶の大きな分散特性が 補償することで,補償フィルムの分散補正効果 を大きくし,半値幅変化を抑える効果が現れる ものと考察される。そこで LNCを用い,先に使 用した液晶材料と補償 Fi l m (ポリカーボネー ト)に つ い て 評 価 を 行った と こ ろ,液 晶 は LNC=0. 54,ポリカーボネートは 0. 61であるこ とが分かった。この評価結果を理想補償フィル ムの分散特性と比較すると,補償フィルムの分 散度が理想よりも 0. 1ほど小さい値を示してい る。このことから,理論よりも補正効果が小さ くなり,半値幅変化の低減化が十分に図れな かったことが考察される。しかし,理想分散特 性と異なった分散特性を示す補償フィルムを用 いた場合でも,液晶単体の時に比べかなりの改 善が見られることから,補償フィルムを組み合 わせる本設計は大変有用であると考える。
7. LNC
を考慮した設計次に,液晶の分散特性 LNCを考慮し,理想補 償フィルムと理想に最も近い分散特性を示す実 在の補償フィルム(Nor bor nene)を用いたとき の,波長‑半値幅特性について検討を行った。
Fi g.17は半値幅の波長依存を示す。
この特性が現実のフィルムによって達成され るとき,理論計算では “LC+Nor bor nene”とし て示すように,短波長領域以外では半値幅変化 を格段に小さくすることが可能であるとの結果 Fi g.15 線形係数 LNCの定義
Fi g.16 半値幅変化の無い液晶と補償フィルムの相 関
Fi g.17 半値幅波長依存性の比較
ネートの波長分散特性に比べて依存性の少ない 補償フィルムが求められる。これについて報告 は多くは無いが,可能性を持っている材料が公 開されていることから,今後複数材料の積層な どにより設計範囲の拡大を図る必要がある。
8.
結 論液晶と同様に波長分散特性を有する補償フィ ルムを液晶セルに積み重ねる新しい設計概念に より,分散特性の緩和と半値幅変化一定の可能 性が示されると共に,補償フィルムの効果によ り半値幅の狭帯域化が可能となり解析精度の向 上が図れる。また,本理論は補償フィルムの効 果により液晶層のリタデーション値を透過スペ クトルのシフト領域のみと薄く設計することが できるため,液晶波長可変フィルタの問題であ る応答速度の高速化が図れる。以上のことより,
本研究で提案した波長分散補正技術の適用によ り,優れた特性を持つ液晶波長可変フィルタの
謝 辞
本研究の一部は独立行政法人科学技術振興機 構からの受託事業である青森地域結集型共同研 究事業として行われたものである。
参 考 文 献