スポーツと地域との結びつき−プロ野球千葉ロッテ マリーンズを事例として‑
著者 金子 昌弘
雑誌名 金沢大学文学部地理学報告
巻 10
ページ 164‑165
発行年 2002‑03‑15
URL http://hdl.handle.net/2297/3154
スボ「ツと地域との結びつき
−プロ野球千葉ロッテマリーンズを事例としヤー
金 子/昌 弘
1980年代後半以降,注目を集めつつあった「地域」と「スポーツ」は,1993年のJリーグ開幕でその結
びつきが顕著になった.一般に「地域とのつながりは希薄で,企業色が濃厚」(杉本,1998)と言われるプ ロ野球においても,80年代後半以降,いくつかの球団が球団名に「地域名」.を冠し,地域との結びつきを 今まで以上に強める姿勢を明確にした.
本稿の目的は,プロ野球におけるこの新しい流れを踏まえて,プロ野球と地域との関わりを再考し,プ ロスポーツが地域を求める意味,地域がプロスポーツに求めるものを明らかにすることを通して,現代に おけるスポーツと地域との結びつきが意味するものを明らかにすることである.事例として,千葉ロッテ マリーンズと千葉市を中心とした地域を取り上げる.スポーツを地理学の分野で取り上げ,論じることは,
その研究蓄積の少なさを考えても意味あることであるが,さらに具体的な地域を取り上げ,地域住民等,
行政以外の視点も踏まえて,スポーツと地域との関わりを論じることは,今後の両者のあるべき姿を考え る上でも意義あることである.
本稿では,第5・6章で中心となる考察を行っている.その際必要となる予備知識を第2〜4章で取り上 げた(プロ野球界概観,対象地域概観,千葉マリンスタジアム建設から千葉ロッテ球団誕生までの過程).
第5章では,プロ野球が地域を求める意味について,主に千葉ロッテ球団への聞き取り調査と文献資料か ら考察した.その際,プロ野球は「球団」とそれをバックアップする「親会社」からなっているものと考 え,それぞれの視点から地域を求める意味を考察した.第6章では,地域がプロ野球に求めるものについ て,主に千葉市への聞き取り調査と地域住民へのアンケート調査,文献資料から考察した.その際,地域 は行政である「千葉市」と「地域住民」からなっているものと考え,それぞれの視点からプロ野球に求め るものを考察した.第7章で本稿の目的に沿う形でまとめを行った. 本稿の内容をまとめると以下のよ うになる.
・プロ野球は経営面から地域を欲した.資金力のない球団が自立した球団経営を目指すならば,その拠り 所として地域との結びつきを強めざるをえない状況が生まれた.親会社は球団への経費削減とイメージア ップをもくろみ,地域と球団とが結びつきを強めることを受容したと考えられる.
・プロ野球は日常生活の中に「野球」というスポーツ文化を浸透させ,また地域の魅力を創出し,それを 地域内外ヘアピールする役割を担っていた.それによって新たな郷土意識が生み出される.プロ野球は心 の豊かさ,生活の質の向上を求める地域住民や地域間競争に立ち向かおうとする行政が求めるものをまさ に満たしてくれる存在であった.そして地域全体の関心がさらに高じてくると,地域は球団に真の市民・
県民球団としてのより深い関係を求め始めるのである.
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・1980年代の後半頃から「地域」と「スポーツ」がお互いに結びつきを強め始めた.それは現代の社会状 況を背景とした両者の思惑が一致したからに他ならない.時代の潮流の中で地域,スポーツそれぞれが求 めるものを,スポーツ,地域それぞれが満たすことが可能であったのだ.こうして両者の相互依存関係が 生まれた,そこではその共存共栄が最も適した両者のあり方であり,お互いがお互いの要望を可能な限り 聞き入れ 歩み寄っていく姿勢が重要となる.こうすることによって,私的な面の強かったプロスポーツ が公的な存在となり始める.すると,スポーツが地域と渾然一体となり,文化としてのスポーツが息づく 地域が形成される.結局,それが現在の社会状況における一つのあるべき姿なのではないだろうか.
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