カルマン・フィルターモデル
著者 田中 勝人
雑誌名 金沢大学経済論集 = The Economic Review of Kanazawa University
巻 18
ページ 172‑141
発行年 1981‑03‑31
URL http://hdl.handle.net/2297/37234
カルマン・フィルターモデル
田 中 勝 人
0.序
本論では,第1章の(1)式で定義されるカルマン・フィルター(KF)モデ ルの理論,及びその応用について議論したい。KFモデルに関する今までの 研究は,工学を中心に,物理学,経済学等,広汎な分野に及んでおり,これ らすべてを把握するのは,筆者には不可能である。又,経済学だけに限った としても,過去10年の間に,数多くの論文が出ており,これらをサーヴェイ するだけでも,相当の紙数を費す事になるので,本論では,統計学的視点か
ら,はなはだ主観的ではあるが,以下のトピックだけを取り上げる事にした
い。
まず第1章では,KFモデルを,回帰モデルの一つの拡張と考えて,その 統計的性質を議論する。ここでは,モデルに含まれる定数パラメーターを既 知として,時間と共に変化する回帰係数の,漸近的安定性に関する諸結果に
注目したい。
第2章では,KFモデルの応用として,季節変動を含むデータのモデル分 析を取り上げる。実際の分析においては,定数パラメーターは未知であるの で,推定の問題が生じるが,ここでは,シミュレーション,及び現実のデー
タを分析しながら議論を進める。そして,最後に予測を行なう。
第3章では,KFモデルが,Bo"‑兆九h航s(BJ)モデルの一つの拡張で ある,という視点に立って,二つの問題について論ずる。現在,BJモデル は,時系列解析における強力な分析手段となっており,その有効性は,数多 くの実証研究によって裏打ちされている。しかし,背後に横たわる仮定は,
回帰モデルと同様に,係数パラメーターは定数である,という事である。も ちろん,パラメーターを時間に依存させたKFモデルを考える事もできるが,
回帰モデルと違って,BJモデル固有の性質の故に,推定の手続き上,困難
な問題が生ずる。そこで,パラメーターが時間と共にある程度変化したとし
ても,その影響を敏感に受けないような推定方式が望まれる事になる。この
問題は,一般に,頑健性の問題と呼ばれるが,KFモデルを利用した,一つ
−171−
の頑健な推定方式を紹介したい。他方,BJモデルは,いわゆる ケチの原 理,に基いており,その単純さは,無視しがたいものである。我々は,常に KFモデルを使う必要もないのであり,BJモデルで事が進めば,それに越 した事はないから,データがBJモデルを許容しているかどうかを検定する 問題も,興味ある・本章では,この2点について議論したい。
1.KFモデルの性質
KFモデルは,工学のKα伽α (1960)に由来し,以後,制御理論の中核を なしており,応用面においても,非常に多くの研究がなされてきている。経 済学においても,主として1970年代になって,これに関連する論文が出てき た。経済学におけるKFモデルの有効性は,実用的観点からは,未だ明確な 結論を出すに至っていないが,このモデルの持つ様々な性質は,理論的観点 からだけでも,充分注目に値すると思われる。本章では,KFモデルを導入 後,このモデルが持つ諸性質について論じたい。
今,時点tにおいて,ル×1の説明変数ベクトル"#,観測値y@が与えられ たものとする。但し'9tは,ある分布に従う確率変数の実現値とみなすが,
苑fは,各時点において,既知で固定されているものとする。さらに,Ytを,
時点オまでの観測値{9,,92,…,9t}の集合とする。又,β蔭を,時点tに おける回帰係数としておく。この時,KFモデルは,
" =蝿β(ilj−1)+り
(1)と表わされる。但し,8(tlオー1)は、Yt‑1を与えた時の,βtの条件つき期待 値である。即ち,β(オ│オー1)=E(6#IY#‑1)。又,{'7t}は,イノベーションと 呼ばれるもので,E("tIYf‑')=E("t)=0であり,さらに,条件つき分散Vαγ (77#IY:‑')も,この場合,無条件分散Vαγ("f)に等しい。しかし,一般に時
間tに依存するので,この値をo:とおく。通常の回帰モデルは,(1)の特殊な 場合で,8(flt‑1)=6,o:=。2となり,Yt‑'にも,時間オにも依存しない。
KFモデル(1)は,観測値9#の生成過程を表現したものである。我々にとっ て興味があるのは,むしろ条件つき期待値β(tlt−1)の具体的な値である。
そこで,(1)のように条件つきで表現されたKFモデルを,無条件なKFモデ
ルに戻して考える。即ち,
f
#E 制汁 t一 噸〃
一一一一
t2 9︹β
( 2 )
から出発する。ここで,{"'},{et}は,ともに無相関過程で,
E("f)=0,E(et)=0,E("2es)=0んγα〃#,s Vαγ("f)="Vαγ(E')=Z
とする。そして,ケは正,三は非負定符号になるものとする。回帰モデルで は,Fが単位行列,二が零行列となる。さらに,{6f}は,t=0から出発 するので,凡の初期分布を考え,E(A)=6,Vαγ(A)=室とし,Aは,秘
ともEtとも無相関とする。
以上より,モデル(2)に含まれる定数パラメーターは,{壼亘,F,B,Z}
であるが,本章では,これらの値は既知とする。さて,βtの条件つき期待値 の計算であるが,8(tlt‑1)の他に,Yfを与えた時のβfの条件つき期待値β
(tlt)も計算する事にして,まず最初に,"2,Et凡がすべて正規分布に従 うものとする。この時,我々は次のような解を得る(例えば,Juzwj"s"
(1970),A derso α"dMooγe(1979)参照)。
B(tlオー1)=FB(オー11オー1)
B(ilt)="(#│オー1)+Kt77f ( 3 ) 但し,
K2=P(tl#‑1)"@/"
壼='+";P(ilオー1)"'
"t=9#−苑;"(tlt−1)
P(21t‑1)=FP(t‑11t‑1)F'+Z P(flt)=(I‑Kf"I)P(tlt−1)。
以上の結果から明らかなように,条件つき期待値β(tlt‑1),及びβ(#lt)
の計算は,時間の経過と共に,逐次的に行なう事ができる。このようにして
得られる値,特にβ(tlオ)を,カルマン・フィルター(KF)と呼ぶ。もっ
と一般に,任意の時点sに対して,E("tlYs)の値を計算する事も可能であ
るが,本論では触れない。ほとんど自明と思われるKFの性質としては,以
−169−
下の点をあげる事ができる。
(1){りt}は,独立で,平均0,分散ぴ:の正規分布に従う。又,KFによ る観測値の推定誤差{z/#一苑IB(tlt)}も,独立で,平均0,分散び4/
d:の正規分布に従う。この分散は,当然。2よりも小さく,又,α:より も小さくなっている。
(II)P(tl#−1),P(#│#)は,それぞれ,6(tlt‑1),6(tlt)の共分散行 列であり,KFの計算には,この他にofが必要であるが,KFの値は,
これらの分散を,一斉にぴ2で割っても変わらない。即ち,KFは,ぴ2
−尺度不変である。
(m)KFの値は,Ytに関して線形であり,通常の回帰モデルに対する最小 二乗推定値と似た表現
B(ili)=P(tli)(P‑'(tlj−1)6(tli‑1)ナュw#/o2) によって表わすこともできる。
以上は,正規性の仮定の下で得られる結果であり,もともと,条件つき平 均二乗誤差E(IIB'−a││21Yt)を,αに関して最小にするものとして,6(t
lt)が得られたわけである。従って,β(オ|オ)は,これを期待損失とした場 合,Bayesとなっているが,正規性の仮定をはずした場合には,(3)式のよう な形で得られるとは限らない。そして,一般には,β(tlオ)は,Yfの線形関 数になる,という保証もない。β(オ|オ)は,Ytを与えた時の,βtの条件つき 期待値であるから,Ytの分布がわからない限り,これは当然である。そこで,
正規性をはずした場合には,評価関数として,条件つきの平均二乗誤差を取 る事には変わりがないが,もっと条件をきつくして,Ytそのものではなく,
"1,"2,……,96の線形結合のクラスの中で,最小にするものを求める事に する。この時には,直交射影の考え方で,そのような解は,やはり(3)式を満 足することが示きれる。正規性をはずして,このような条件の下で得られる 解も,KFであるとしておけば,前述した性質は,(II),(III)はそのまま,
又,(I)については,独立を無相関に,正規分布をある分布に変更すれば 成立する。
以下,正規性の仮定をはずして議論する。KFは,条件つき,という制限
はあるが,β の一つの推定量である。従って,推定量としてのKFの性質を
考えるのも,興味のある所である。そのために,次の3つの概念を導入する。
定義1(一様完全可観測性)
KFモデル(2)が,一様完全可観測(UCO)であるとは,ある正の整数て】
と,正の定数C11C2が存在して,
c,I≦O(t,オ−て,)≦C2I
が,すべてのオ(>r,)に対して成立する事である。但し,
O ( t , t ‑ て , ) = 冒 皇 で I T ' s, " s " & F s'
回帰モデルの場合には,F=Iであり,この条件は,いかなるtから始ま るr,+'(≧ル)期間をとっても,多重共線とはならない事を示唆している。
一般の場合には,9sを,"f(j>s)を用いて表現した時に現われるベクトル が,"&Fs tとなっている。従って,この積和行列が正則であるという条件は,
言わば,時点#までのr,+1個の観測値に基いて,β を一意的に決める事が できるという,識別性の条件と解釈できる。
定義2(一様完全可制御性)
KFモデル(2)が,一様完全可制御(UCC)であるとは,ある正の整数r2 とウ正の定数C31C4が存在して,
c3I≦C(t,オーrz)≦C4I
が,すべてのオ(>r2)に対して成立する事である。但し,
t−1
C ( t , t 一 酌 ) = 量 ̲ 迄 F t ‑ s' Z F ' ts ‑ '
回帰モデルの場合には,Z力ざ零行列となり,この条件は,明らかに成立し ない。一方,Fが単位行列の時には,重の正則性と同値になる。一般には,
βtを,て2期前に戻して表現した時に現われる誤差項の共分散行列が,C(f, t−r2)となっている。従って,この行列が正則であるという事は,言わば,
で2期前の状態から,Es(s<t)を適当に選ぶ事により,任意の希望する状態 へ,βtを持って行く事ができる条件と解釈できる。
定 義 3 ( 一 様 漸 近 安 定 性 )
条件つきKFモデルは,(3)の結果より,
B(tli)=(I‑Kt"i)M(t‑11t‑1)+K#"#
−167−
=G#B(t‑11t‑1)+K#z/#
(4)と表現できる。この時,(4)が一様漸近安定(UAS)であるとは,ある正の 定数C59C6が存在して,
││"t)││=IIG#……G1││≦C5e‑"
が,すべての#に対して成立する事である。但し,行列ノルムIIAilは,A'A の最大固有値の平方根とする。
回帰モデルの場合には,KFがUASでない事が,簡単な例によって示さ れる(AnderSo"(1971))。
さて,KFの性質を,上に与えた定義との関連で議論しよう。まず,UC O及びUCCを仮定する。この時,次の事が示される(J(zz"j,zsルj(1970) 参照)。
( a ) 有 界 性
e(tli)の誤差共分散行列P(tlt)は,一様に上に有界である。従って,
P(tl#−1)もそうである。
( b ) U A S
β(オ│オ)は,UASである。
(c)初期条件頑健性
任意の初期条件から出発して得られたKFを,8(tlt)とし,その誤差共 分散行列を,P(#lt)とする時,P(tl#)はP(tlt)へ収束し(オ→oo),収 束の程度は指数的である。
以上の事実は,推定量としてのKFにとっては,非常に好ましいものであ る。又,Fが単位行列の時には,β はγα兇dO77Z"qjルに従う事になるが,そ のような非定常性が入り込んでいるモデルに対しても,UASが成立すると いう点において,驚くべき事実でもある。
参考のため,通常の回帰モデルの場合の結果をあげておく。この場合には,
UCCは成立しないが,UCOは成立しているものとする。この時,
(a)'P(tli)は,零行列に収束し,#P(tlt)はt→COの時,有界である。
(b)'8(tli)は,漸近的に安定であるが,一様ではない。
(c)'P(21t)は,P(#li)に収束するが,収束の程度は,指数的ではない。
さらに,回帰モデルにおいて,係数の一部分は定数であるが,残りの部分
はγα伽dO77Z"qjんに従っている場合について考える。即ち,
"t= ( 篭 ) + ( ! ; )
という場合である。この時には,三は零行列ではないが,特異な行列となる。
今,UCOは依然として仮定すると,(b)'及び(c)'が成立する(A"de7・so (1971))。又,民')のKF"')(fl#)に対応する誤差共分散行列P,,(tl#)は,
(a)を満たす(A"de7・So"(1971))。それに対して,〃のKF"2)(21t)に対応 する誤差共分散行列P22(tli)は,(a)'を満たす(H(zt(z"αka(1980))。従っ て,"2)(tlt)は,β)の一致推定量である。βI')と〃は,分離して独立に推 定する事はできず,一方の推定には他方が依存しているから,この結果は決
して自明ではなく,この点でも,KFは好ましい推定量といえる。
以上,本章では,KFモデルの性質,特にKFの推定量としての性質を中 心に述べてきたが,回帰モデルとの関連で,次の事を付言しておく。KFモ デルの最も単純な形である回帰モデルに限っていえば,KFの導出は,さら に10年遡って,Pjqcke"(1950)に端を発する。但し,KFの計算は,t
=ルから出発しているという違いがあるが,これにより,(1)式のようにイノ ベーションリ が得られ,〃 は検定統計量としても,重要な役割を持っている
(例えば,B7・ot"",Dw・6j α"dEひα〃s(1975))。
本章では,KFモデルに含まれるパラメーターは,すべて既知としてきた が,実際の分析においては,未知である。従って,これらを推定する必要が あるが,第2章では,経済時系列における応用として,季節変動を含むデー タを取り上げ,KFモデルによる推定,及び予測を行なう。
2.季範変動を含むデータのKF分析
月別,あるいは四半期別経済データは,ほとんどが季節変動を含んでいる。
データ分析の目的によって異なるであろうが,ともかく,季節変動の生成過
程をモデル化するというのは,不可欠な事であろう。その場合,季節変動の
パターンが,年毎に全く変わらず一定である,と仮定するのは,非現実的で
ある。実際,現在の季節変動の研究においては,時間と共に変化するものと
して,種々のモデルが提案されている。ここでは,その一例として,Hα冗冗α
(1964)のモデルを取り上げる。
−165−
今,生のデータを何らかの変換により,季節変動,及び残差項だけを含む ようなものにできたとする。そして,この値が,加法的に
"t==st+"2
(5)と表わされるものとする。以下,我々は,9tを観測値9Stを季節変動,秘 を 残差項と呼ぶ。そして,データは,一般性を失う事なく,月別とする。この 時,もし季節変動が年毎に全く変化しないものであれば,
12
( 6 )
s : = Z i c ' D i #
と,ダミー変数D.jtを用いて書ける。但し,Djtはt−jが12の倍数の時は1で,
その他の時は,0である。一方,cjは.和が1となるように制限されたパラ メーターである。従って9Cjは最小二乗法により推定できる。しかし,我々 は季節変動が年毎に変わるものを考えたいので,そのために,(6)と同値な表
現s , = , , c 。 s j , , ' + 6 , s i n i , , , ) ( 7 )
に書き換える。ここで,Aj=21rj/12(j=1,……,6)であり,季節周波数 と呼ばれる。そして,Stの時間変化を考慮するために,(7)におけるαj,6.jを
tに依存させて,
s , = = l q i ' c 。 S j ( , , + a , : s i M , t ) ( 8 )
なるモデルを考える。HQ""@"(1964)に従って,qjt及び雌は,次のよう な確率過程に従うものとする。
(9)
α j t : = p j a j f ̲ , + E j :
βjt=RAt̲,+7Zi&
以上より,我々は,(5),
るが,これは次のように,
(8),(9)を合わせた季節変動モデルを得たわけであ KFモデルに直す事ができる。即ち,
"t=(cos入,オ,sinA,i,……,COS入6t)' β= ( α ,, β ,, … … , α 6) ,
F=djqg(p,,p,,……,!o6)
;11×1
;11×1
;11×11
et=(,t,'7,t,……,f62)';11×1 を定義する事によって,
9f=";",+":
( 1 0 6f=FBf̲,+E#
という,(2)と全く同じ表現を得る。但し9etの共分散行列三は,11×11の対 角行列で,Fと同様に,最後の1つを除いて,2つずつの値が等しく,計6 個のパラメーターを含んでいる。このパラメーターを,。;(ノー1,……,6)
とする。即ち,
Z=dj(mg(of,of,……,o:) ;11×11
である。従って,初期値を除いて,pj,。:(j=1,……,6)及び。2=Va7・
(" )という13個の推定すべきパラメーターがある。以下,これらのパラメ ーターの推定について論ずる。
我々は,各必は,絶対値が1より小であると仮定する。又,・;は,すべて 正とする。この時,モデルの特殊性より9"tがオに依存しているという意味 で,時間変化のKFモデルを扱っているにもかかわらず,9t自身は,期待値
0の定常過程に従う。その自己共分散関数は,
γ(r)=E(":"'̲r)
=皇欝。扇ル,+い Ⅲ
となる。この表現から明らかなるように,|γ(γ)|は,γ→COの時,指数的 に減衰して行く。従って,季節変動モデルとしての意味を持つには,各必が なるべく1に近い事が望ましい。しかし,とにかく,│pjl<1であれば,
スペクトラムカ罫定義され,
( " ) = 岸 彙 γ ( , ) 。 ‑
= 燕 . : { , Ⅲ ̲ 角 . : 。 ‐ " ド + ,̲ , , 参 " . , . } +
‑ 1 6 3 ‑
+̲Lび2
27r
( 1 3
なる連続,かつ正のスペクトラムが得られる。
今,標本サイズTのデータ{",,……,"T}が与えられたとして,以下の議 論のため,さらに次の量を定義する。
( " ) = 会
′ 鍔( " ) 一 志 │ ,一 岬 " 。 ‑
1" , , , + 1̲ 角 。 … ,
1, 。 }
(ノー1,……,6)
( " ) = ☆ ' 皇 "。 '
ここで,I(co)は,ピリオドグラムである。この時(12)は,
I ( の ) = " ' ( の ) q + e ( の ) 側 と表わす事ができる。但し,
苑(の)=(苑1(の),……,苑7(の)),;7×1 q = ( o : o f , … … , o : ) ' ; 7 × 1 e(m)=I(の)‑/(の)
従って,もし必が与えられれば,パラメーターは,αだけで,周波数領域に おける最小二乗法により推定できる。今'""etに正規性の仮定をおけば次 の結果が得られる(T(z"αルα(1979))。
定理1"f,Etが正規分布に従う時
面 = { 亨 妬 ( の Z ) f ( m ! ) } ‑ ! 亭 苑 ( c I J I ) I ( m ! ) ( 1 0
は,T→COの時,αに確率1で収束し,JT(d−α)は,漸近的に平均0,共 分 散 行 列
4汀(/̲Wt"(の)"'(の)dの)‑'JE:/z(の)"(の)"'(の)cIの(烏妬(の)"'(の)dの)‑'
の正規分布に収束する。但し,の'=2'rl/T(J=1,……,T)。
しかし,aは,(1]における残差項e(の!)の分散が一定でないから,有効推 定量とはなり得ない。又一般に,βjが未知であるから,この方法はあまり有 意味でない。そこで,角をαにつけ加えたパラメーターをβとして,有効推
定は,スコア法によって,
β = β + ( 夢 ( の) 元 , ( の) 〃 ( の) )』 亭 轟 ( の) 百 ( ") / / 謬 ( の) ( 1 ,
から計算すればよい。ここで,βは,βの一致推定量である。又,他の〜が
ついた量は,βを用いて得られる。推定量タは,jと同様に,最小二乗法に
基いているが,/2(の )をウェイトにした一般化最小二乗推定量とみなす事 ができる。この時,次の結果が得られる(Tα αルα(1979))。
定理2"t,etが正規分布に従う時,(1,から計算されるβは,T→COの時,
βに確率1で収束し,JT(8−8)は,漸近的に,平均0,共分散行列 4汀(鰯鉛(の)鉛,(の)/〆(の)duj‑!
の正規分布に収束する。
実際に(,,を計算するには,5から出発して,繰り返し計算によって収束し
へ
た値をβとすればよい。問題は,初期値βの決め方である。これについては,
後で議論する事にして,⑭,側の推定量としての良さを,シミュレーション によって調べてみる。そのために,パラメーターの値を与えて,正規乱数泌 , Efを発生させ,それから〃 を作る。以下で報告する結果は,標本サイズを25 年間の月別データに相当するものとして,T=300としたものである。そして,
(10,(19の計算を行なった。但し,簡単化のため,必の値はすべて等しく,か つ,既知であると仮定した。従って,推定すべきパラメーターαは,ぴ2と6 個のび;の計7個である。シミュレーションで用いたパラメーターの組み合わ せは,次の通りである。まず,!o(=,oj)の値については,1に近い3つの場 合 ,
(a)p=0.97(b),o=0.98(c),o=0.99 を調べた。その各々に対して,ぴ2の値を2通り考えた。即ち,
(a)o2=16,36(b)o2=25,49(c)o2=49,100
‑ 1 6 1 ‑
である。(c)の方力:,(a),(b)に比べβの値が大き<,従って季節変動部分が占 める割合が大きくなるので,それを割り引く意味で,ぴ2の値も(c)の方を大き
くした。ぴ:の値は,(a),(b),(c)すべての場合に同一で,
o:=2,o:=1.5(j=2,3,4),o:=1(j=5,6) とした。
表1には,上述した計算手続きを,独立に30回繰り返して得られた30個の 推定量",及び&の平均(Meα ),分散(Vαγ),そして,定理1,2から 計算される理論分散が示されている。但し,面は(10式から,6は,βをパラ メーターからはずして,(1,式から計算したものである。又,理論分散は,括 弧内に示してある。
表1.推定量㈹ ㈹のシミュレーション結果
。 ; び ; α : d : α : 。 :
ぴ2
(a)p=0.97
02=16Meα九 Vαγ
1.20
.44 ( . 3 5 ) 1.38
.23 ( 、 2 2 )
、86
.37 ( 、 3 0 ) 1.03
.13 ( 、 1 6 ) 30.9
202.9 ( 2 3 2 . 7 ) 19.5 57.3
( 4 4 . 7 )
1.78
.69 ( 、 6 1 ) 2.03
.33 ( 、 3 4 )
1.47
.53 ( 、 3 5 ) 1.61
.24 ( . 2 2 )
1.34
.60 ( . 3 5 ) 1.54
.34 ( 、 2 2 )
、89
.26
(.16)
1.06
.20 ( 、 1 2 )
〜
a
Meα九 Vαγ
八
a
d2=36
1.46
.57
(、37)
1.55
.28
( 、 2 9 )
β=0.98Meaれ
〜
α
Vαγ
51.6 222.7
(256.4)
41.6 92.1
( 7 5 . 0 )
1.79
.76 ( 、 6 4 ) 2.01
.34 ( . 4 4 )
1.17
.46 ( 、 3 7 ) 1.32
.27 ( 、 2 9 ) ( b )
1.32
.65
(、37)
1.48
.40 ( . 2 9 )
、88
.30 ( 、 1 8 ) 1.01
&23 ( . 1 6 )
、85
.33
(、31)
1.01
.18 ( 、 2 1 ) Meα九
Vαγ
八
a
九aγ雌肋
5
2一一
2ぴ一a
1.05
.41 ( 、 5 0 ) 1.41
54.0329.4 ( 6 0 2 . 0 ) 29.9
1.70
.80 ( 、 8 8 )
2.08
1.40
.64 ( . 5 0 ) 1.66
1.29
.63 ( . 5 0 )
1.58
、89
.35 ( . 2 3 )
1.08
、82
.51 ( 、 4 3 ) 1.06
公
a
Meα九
ぴ f ぴ ; ぴ : び : び : 。 :
ぴ2
ぴ2=25
へ
α
Vαγ
、 2 6 、 2 9 . 4 1 . 2 2 、 1 6(.24)(.24)(.24)(.13)(.18)
、32 ( 、 3 7 ) 68.2
( 5 9 . 3 )
刀aγ
9肌叱
一一a 4
一2ぴ
1 1 294402844022 ●●e●0● く1i 1
1 884237832021 ●●●●●○ く1く
1 . 3 9 1 . 2 6
. 6 6 、 7 0
(、52)(.52)
1 . 6 1 1 . 5 2
. 3 5 . 4 7
(、31)(、31)
(c)P=0.99 1.02
.41
(.52)
1.35
.30 ( 、 3 1 )
1.70
.84 ( 、 9 0 ) 2J06
.34 ( 、 4 7 ) 78.6
345.0 ( 6 3 6 . 3 ) 56.3 108.2
(109.9)
Mea7z Vaγ
公
a
o2=49
、68
.67 ( 、 8 4 ) 1.15
.24 ( 、 2 2 )
、78
.41 ( 、 4 3 ) 1.14
.31 ( 、 1 6 ) 1.19
.79 ( . 9 7 )
1.81
.57 ( 、 3 0 )
1.01
.62 ( 、 9 7 )
1.72
.71 ( 、 3 0 ) 1.43
.93 ( 1 . 7 1 ) 2.23
.37
( . 4 5 )
、72
.27 ( 、 9 7 ) 1.50
.37 ( 、 3 0 ) 144.6
1119.2 ( 3 7 0 0 . 6 ) 57.0 106.2
( 1 0 6 . 2 ) Meα九
Vαγ
ー
a
Meα〃
Vαγ
へ
a
邦
aγ 0
肌叱0 1
一一
2ぴ一a
、67
.63 ( 、 8 6 ) 1.10
.31 ( 、 2 9 )
.78
.44 ( 、 4 4 ) 1.04
.30 ( 、 2 2 ) 1.01
.66 ( 、 9 8 ) 1.61
.75 ( . 4 0 ) 1.44
.94
(1.73)
2.18
.49
(、60)
j j O58910729344 p●■●C● く11 1 1 898420179774 ●●●●●C 1111
195.8 1229.3
(3819.6)
112.8 186.5
( 2 4 3 . 7 ) Meα〃
Vαγ
ハ
α
表の結果に関する限り,我々は次の事を結論できる。丘に関しては,ぴ2の 推定値に上方への偏りを与え,ぴ:の推定値には下方への偏りを与えている。
特に(c)の場合,即ち,βが極めて1に近い場合には,52の偏りは,標本標準 偏差の2倍を越えており,有意である。従って,定理1の事実が成立するた めには,かなりのデータカ:必要と思われる。それに対して,aの場合には,
62についても,鐸についても,かなりの不偏推定量を与えており,分散に関
しても,程良〈理論と一致している。
さて,pjの値が未知の場合を考えよう。βは,(11)式より,γ(γ)の推定値
−159−
7(γ)をγ=0,1,……,12に対して計13個求め,13個のパラメーターに関す る非線形方程式を解く事により,原理的には求める事ができる。しかし,こ れは,それ程容易ではない。そこで,必は通常1に極めて近い事実を利用し て,次のように考える。今,モデルとして,変数がすべてスカラーの,
"f=6f+"t
( 1 0 βt=ββ2̲1+E2
を考えよう。そして,真の値がβであるにもかかわらず,これとは別の値力 を使って,側式から,勉#及びE2の分散α=(。2,d:)'の推定値面を求めたとす る。この時,推定値の偏りは,漸近的に
|Ⅷ
( 悪 ) ‐
〜
α − α 二 =
となる。従ってこの事より,次の結論を得る。
(I)aの偏りは,o:,β及びβに依存するが,ぴ2には依存しない。
(II)o2の推定値は,。:の推定値よりも,βの誤った特定化に,より敏感で ある。
(Ⅲ)ケ2とけ:の偏りの方向は,逆である。
以上より,βが1に近い時には,βを誤って特定化すれば,(II),(HI)よ り,結果として得られる分散の推定値が負となり得る事がわかる。参考のた め,表2に,1に近い3つのβの値に対して,それぞれ2通りの誤った特定 化をした時の偏りを与えておく。但し,偏りは,ぴ:で割ったものである。
表2.βの誤った特定化による偏り
97 98
99β
●
β
52の偏り 5:の偏り
801952 ●●●
3−、99 8.61
−.51
、97
−5.27
.21
、99 8.56
−.34
、97
−26.10
.52
、98
−17.21
.34
表2の結果は,確かに上述の結論を支持している。即ち,52の方が,βの
誤った特定化に敏感であり,偏りは互いに異符号である。又,βの値を誤っ
て小さくすると,ケ2の偏りは下方への偏りとなって敏感に現われるので,ケ2 そのものが負となり得る事も,前述した通りである。この事から,βのおよ その値を,ある程度見つける事が可能である。我々は,非常に単純なモデル 側に関してのみ議論を進めてきたが,季節変動モデルについても,同様に考
えられる事を,現実のデータにより示そう。
ここで取り上げるデータは,四半期データで,1951年の第3四半期から,
1971年の第2四半期の,日本における食費データである。出所は,経済企画 庁編の国民所得統計年報である。生のデータ(単位:10億円)に,中心化さ れた移動平均を施してytを得た。従って,標本サイズは,76である。パラメ ーターは,四半期データなので,p,,p2,of,o;及びぴ2の5個である。まず,
簡単化のため,β,=β2=βとして,q=(o2,of,of)'を,3つのβの値に対 して,側から計算して次の結果を得た。
ぴ2
ぴ f ぴ :
β=.97‑2436.8746.0332.5
= 、 9 8 9 9 4 . 7 3 3 2 . 7 1 4 8 . 4
= 、 9 9 3 3 1 8 . 0 8 2 . 7 3 6 . 9
従って,βの値に制限を加えはしたが,真の値は,0.98に近い事が予想さ れる。実際,β,=β2という制約の下で,側の推定法を適用して,
62
6 f 鐺 β
5 0 4 . 5 4 4 8 . 3 9 7 . 5 0 . 9 8 0
(278.2)(170.3)(58.5)(0.009)
という結果を得た。但し,括弧内の値は,推定値の標準誤差であり,これは,
定理2における共分散行列の対角要素の推定値を,Tで割ったものの平方根 である(以下同じ)。一方,pi=pZ=0.98を初期値として(19を適用した結果は,
62
6 f 6 : β 】 島
4 8 1 . 5 4 7 2 . 9 9 0 . 2 0 . 9 7 6 0 . 9 8 5
(279.9)(181.8)(58.3)(0.013)(0.012)
であった。β,と島は,かなり近い値を取ったため,β,=β2という仮説を,尤
度比検定した所,この仮説は,50%の有意水準でも,有意でなかった。
−157−
本章では,主として推定の問題を議論してきたが,予測の観点からKFモ デルを考えるのも,興味深い。ここでは,データが時点Tまで与えられてい る時,9…を,77z=1,2,……に対して予測する問題を考える。この予測値 を,"(T+'7DIT)とすると,KFモデルによる予測は,β のKFB(TIT)を
計算しておけば,
"(T+'nlT)=恥加β(T+'7zIT)
β(T+mlT)=剛(T+m−11T)(、=1,2,……)
より,非常に簡単に計算できる。予測の平均二乗誤差についても,
E(〃(T+mlT)‑97:+、)2=恥,"P(T+mlT)苑ァ+",+02 P(T+,7zIT)=FP(T+'"‑1IT)F"+Z
より計算できる。
さて,先程扱った食費データの予測を行なってみよう。比較の意味で,経 済変動を含む場合のBJモデルも取り上げよう。変換後の〃fとしては,移動 平均法は将来の値も使うので適当でないから,ここでは,生のデータを対数 変換後,第一階差を取り,それを 00倍したものを考える。従って,KFモ デルは,パラメーター。2,of,d;,p]そしてp2の5個を含む側式であり,他 方,BJモデルは,試行錯誤の後
9'=(1+qL)(1+6L4)。#
が選択された。ここで,Lは,ラグ・オペレーターである。両者とも,最終 的に,データ数は80として,まずKFモデルの推定結果は,
62
鋸 鎧 β ] β 2
1 . 0 8 4 、 5 1 2 、 4 1 6 、 9 8 9 . 9 9 0
(、476)(、217)(.206)(、006)(、008)
であった。それに対して,BJモデルの推定結果は,
a=‑.303(.102),6=‑.599(.080)
であった。ラグ24までの自己共分散関数に基く,Bo"‑Pje7・ceの検定統計量
の値は,13.79で,自由度22のカイニ乗分布の90%有意点は14.04なので,
モデルの適合度については,問題がないと思われる。
以上の推定結果を基にして,T=80以後,77z==6までの予測を行なった。
KFモデルでは,KFの計算に,初期値β(OIO),P(OIO)が必要であるが,
これらをそれぞれ,零ベクトル,零行列とした。我々のKFモデルは,UC Oかつ,UCCであるから,この選択は第1章の結果より,6(TIT)(T=80) の値には,ほとんど影響を与えない。又,BJモデルの予測は,Bo鞄α刀d Je"ん航s(1976)に従った。さらに,予測を比較可能にするために,予測値 は,9tではなく,生のデータの対数変換を100倍したものとした。結果は次 の通りである。
4 830.5
−4.0
836.5
1.96 817.1
1.2 824.8 8.9 1
811.5
.6 812.7 1.8
2 817.0
1.1 819.2 3.3
3 821.6
−1.4
826.4
3.45 811.9
5.8 818.4 8.3
FりJり ︑K偏B偏
たった‑一つの例だけで,公正な比較は不可能であるが,この例に限ってい えば,BJモデルに基く予測は,上方への偏りが存在するのに対して,KF モデルの方は,ある程度不偏な予測値が得られている。予測の平均二乗誤差 の平方根は,KFモデルが,3.02で,BJモデルカi,5.44であった。
季節変動を含むモデルを扱う場合,一般に,KFモデルは,BJモデルに 比べて,推定すべきパラメーターの数が多い。月別データを扱う場合には,
それ力§さらに顕著となる。この意味での欠点をカバーする位,他の有利な点 を,KFモデルに見い出そうとするならば,予測の観点からであろうと思わ れるが,この点については別の機会に譲りたい。
次章では,季節変動を含まないデータを分析する場合の,KFモデルとB Jモデルの選択の観点から議論を展開したい。
本章の最後に,次の事を付言しておく。本章で取り上げた季節変動を含む
KFモデルは,データを変換して,トレンドを消去した後のものに対して考
えたが,生のデータに対しても,KFモデルを与える事は,もちろん可能で
ある。しかし,その場合には,推定すべきパラメーターの数も多くなり,最
尤法の考え方ではうまく行かなくなるので,他の推定法が望まれる。
−155−
3 . B J モ デ ル と K F モ デ ル
本章では,データは季節変動を含まないものとして,KFモデルの考察を,
BJモデルの一つの拡張であるという視点がら行なう。前章までは,KFモ デルは回帰モデルの拡張であるという視点に立って,議論を行なってきた。
そして,モデル(2)における も,時間#に依存しているという意味で,時間 変化モデルを扱ってきたわけであるが,本章では,苑fは時間に依存しない時 間不変モデルに限定して考える。しかし,苑 がただ単に定数ベクトルという だけでは,その場合明らかなように,(2)におけるEtの共分散行列亘の要素は,
識別不能になるので,韮 として第1要素が1で,他はすべて0となるk次元 ベクトルeを考える。又,以下では,(2)における"t,8tという記号をそれぞ れ,Yt,"tに変えると,結局我々は,
Y2==e'"t+"t
( 1 1
@"2=F"2‑1+E2
というKFモデルを考える事になる。
一方,季節変動を含まないBJモデルは,一般に
p 9
9一 員 伽 を ‑ ' = α ′ + 昌 伽‑ m
のように表現できる。但し,"tは観測値,atは撹乱項で,吟(j=1,……,p), a,(j=1,……,9)がパラメーターである。これらのパラメーターは,
源惑 吟晶 ZZ 一十 11
一一一一j︐j
苑妬 くく の9
を0とする根苑の絶対値が,すべて1よりも大きくなるようなものに制限し ておく。又,共通根は持たないとする。この時,(1Dが側の拡張になっている 事を示そう。まず,p>9の時には,eをp×1のベクトル,そして,
隙 ! ' 『 I I │1 1
F =
とすれば,(13は,(11において〃fを0とおいたものと同値になる。又,p≦9 の時には9eを(9+1)×1のベクトル,そして,
偽.40.0 1
一F
1 0●
●
.●
●
●
●
●
●
●
、1
0 … … 0
, 8
とすれば,p>9の場合と同じ事がいえる。従ってKFモデルは,(1Dのよう に,さらにもう一つの撹乱項哩t力罫加わっている,という意味で,BJモデル の一つの拡張と考えられる。この最も単純な形は,第2章の側式にあるよう に,1次の自己回帰(AR)に,秘tが加わったものである。
以上の事を踏まえて,本章では次の2つの問題を考える。1つは,KFモ デルとBJモデルの間の選択の問題である。BJモデルは,いわゆる ケチ の原理 に基いた単純なモデルであり,KFモデルより扱い易い事は,明ら かである。従って,与えられたデータに対して,すぐKFモデルを考えるの ではなく,最初にBJモデルがデータによって許容されないかどうかを考え る。即ち,BJモデルを帰無仮説に取り,KFモデルを対立仮説に取った検 定問題を考えるのである。もう1つは,KFモデルの推定の問題であるが,
これは第2章における方法で行なえるので,ここでは,KFモデルとBJモ デルの中間のモデルの推定問題を考える。即ち, は,各オに対して常に存 在するのではなく,観測値が異常な値を取る場合にのみ存在するようなモデ ルの推定を考える。このような場合を想定するのは現実的であり,BJモデ ルそのものの推定よりも,より頑健な推定となる事が予想される。以上の問 題を,2つの節に分けて議論する。
3 . 1 B J モ デ ル の 検 定
本節では,BJモデルとしては,ARモデルに限って議論を進める。我々 の目的は,データがARモデルを許容するかどうかを検定する事である。A Rモデルだけを考えているので,(1Wに現われている諸量を,以下のように定 義しておく。
= ( 9, 〃 オ ー , , ……,"'̲p+,)'
;p×1−153−
40⁝0 1
●1●
●● ●●
●●︿︑叩﹀●●
●●O●●●●●●
●●
●1
︐︵︑︶︐旬︲︲︽●●●︿皿叩︶
一
F
; p × p
Et==eat
但し分散パラメーターに関しては,Vαγ("t)=902,Vαγ(q#)=9としておく。
ここで 9は常に正,又,ぴ2は非負とする。さらに,正規性の仮定の下で,
zt=E(I"#IY,,・・…・,Y'),即ち,t"tのKFをZtとすれば'Ztは(3)式と同様,
次のように計算できる。
zt=Fzt‑,+Kt〃# ( 1 ,
ここで,K'=P(オ|オー1)e/o:
o:=。2+e'P(21t‑1)e
P(tl#‑1)=FP(t‑11#−1)F'+ee' P(ilt)=(I‑Kte')P(tlt−1)
であり,イノベーションリtは,の=(偽,……,dp)'として
77t=Yt−の'Zt̲1 伽
として計算される。ここで,初期条件はZo=0,P(OIO)=0とする。
さて,大きさTの標本{Y,,……,Yr}が与えられた時,パラメーターβ
=(9,の',ぴ2),の対数尤度関数L(8)は,定数項を無視して,
L ( 8 ) − 吾 l o g 9 ‑ 告 喜 。 g o f ‑ 夫 妻 ' : / ・ : @ 1 )
と表現できる。一方,仮説の下で,即ち,o2=0の下での尤度は,p次のA Rモデルに対する尤度であり,
L(,,・,0)=‑='・g,‑夫菫ff"
と表現できる。
ところで,この場合検定すべき仮説に対応するパラメーターの値は,パラ
メーター空間の境界点である。従って,仮説検定でよく使われる尤度比検定
は,少なくとも帰無仮説の下では,統計量が望ましい分布を持たない事にな る。それ故に,尤度比検定を行なったとしても,有意水準の決め方に困難が 生じ,さらに検出力についても,第1種の誤りの確率がはっきりしない以上,
あまり有意味な検定とはなり得ない。そこで,これに代わるものとして,以 下では,ラグランジュ乗数(LM)検定と呼ばれる方法を考える。この名称 の由来は,もちろんラグランジュ乗数を使っている事による。その方法の基 本的考え方については付録 に書いてあるので参照されたい。
LM検定統計量は,このような場合でも,カイニ乗分布に従う事が,Mo‑
γα (1971),C加冗t(1974)によって,観測値が,独立同一分布の場合に 証明された。我々の観測値は,この仮定を満たしていないので,これらの結 果を直接には使う事ができない。又,結果は,漸近理論であり,有限標本の ものではない。そこで,ここでは若干のシミュレーションにより,有限標 本の場合の,我々の統計量の分布を調べる事にする。
その前に,我々のモデルにおけるLM検定の統計量を導かねばならない。
詳細は,付録2を参照する事にして,結局
LM=÷(且鶚当'(6‑…)CJ
という統計量が得られる。但し,八は仮説の下でのパラメーターの最尤推定 値を代入したものを示す。そして,側に現われている諸量の定義を,八なし で示しておく。
3 L (
3ぴ29 , 4 0 ) 一 23ぴ229 上 重 亜 ‑ 上 亘 ( 2 . 器 一 ・ 祭 }
1 # ÷ i l … ・ ・ ・ ・ ・ ・ , Y # ) ( ; Z )
A =
= (去 妾 , . , ‑, )
c=(1+j'd)2/2+。'J(。)J'(d)の
| 『恵 呈 二 1 l
J(d)=
−151−
推定量を代入した場合には,,=乏鎧/Tであり,又,付録2より,3。:/
3o2=1+の'のであるから,Lの偏導関数は,
3 L ( '
3ぴ2, 3 , 0 ) = ̲ 含 亘 ' ' ¥
但し,
祭 = − 3 , ' ( 6 ) (‑ " … … ,← , ) ,
として,簡単に計算される。
参考のため,p:=1とp==2の場合の統計量を示しておく。
(I)p=1
L M , = ( z " , ̲ ! ) 2 / ( T ' 2 3 f )
(II)p=2
L M = " " 一 ゐ ) a ' ̲ , + @ z a : ̲ 2 ) } '
T";(6;+4jf)
pが2より大きい場合も,計算はそれ程困難でないが,唯一の問題は,p×p の共分散行列Cpの計算であろう。なぜなら,これはスペクトラムのフーリ エ変換から計算されるが,p>2の場合は,留数計算が非常に複雑となるか らである。しかし実際の計算では,ノンパラメトリックに標本共分散を用い れば,特に問題はないと思われる。
さて,仮説の下での分布であるが,ここではp==1とp:=2の場合のシミュ レーション結果を,簡単に報告しておく。真のパラメーターをそれぞれの場 合 に つ い て
(1)9=1,d,=0.8(H)9=1,d,=0.75,d2=‑0.5
とし,正規乱数を用いて観測値を作る。標本サイズは,T=100と,T=200 の2通りの場合を考え,統計量の計算を行なう。この手続きを,独立に340 回繰り返した。これら340個の値から作られるヒストグラムを,自由度1の カイニ乗分布とみなす事ができるかどうかを検定したい。そのために,ヒス トグラムの区間を等確率の34個の階級に分けて適合度検定を行なう。そして,
得られた値を,自由度33のカイニ乗分布の点と比べて,次のような有意水準
を得た。
有意水準(I)T=100200(II)T=100200
2 1 % 7 4 % 7 % 9 0 %
従って,(Ⅲ)のT=100の場合(しかし,この場合も5%で有意でない)を 除いて,カイニ乗分布に従わない,という根拠はない事がわかった。
次に興味あるのは,検出力の問題である。即ち,実際のモデルがBJモデ ルでない時に,LM検定はどの程度にその事実を反映するか,その程度を調 べる問題である。LM検定は,帰無仮説の下でのパラーメーターだけに依存し ており,その意味では,有意性検定の性格を有している。従って,帰無仮説 が棄却された場合には,必ずしも当該の対立仮説であるKFモデルが選択さ れる事を,即座に意味するのではなく,単に,仮説のモデルの適合度が良く ない事を意味するに過ぎない。例えば,2次のARモデルをLM検定して棄 却された場合でも,3次のARモデルは棄却されない事もあり得る。検出力 を調べるには,大がかりなシミュレーションが必要であるので,ここでは行 なわない。しかし,一つだけ実際のデータを用いた例を上げて,本節の終わ りとしたい。Bo難α7,dJe ル航s(1976,p、239)では,太陽黒点のデータに対 して,
Z=14.35+1.42Yt̲,‑0.73Yt̲2+qf
,=228
という,2次のARモデルを選択しているが,このLM検定の統計量の値は,
4.42であった。5%点は,3.84だから,このモデルの適合度は,あまり良く ない事力苛わかる。
3 . 2 B J モ デ ル の 頑 健 な 推 定
本節では,BJモデルの頑健な推定を,KFモデルの観点から行なう方法 を考察する。
BJモデルは,通常の回帰モデルと同様,係数パラメーターは時間不変で ある。しかし,この仮定は異常値が存在すれば当然そこなわれる事になる。
そこで我々は,BJモデルを基礎として,正の異常値が存在する場合には,
観測値を割り引くために,新たに正の撹乱項を考慮し,負の異常値がある場 合には,割り増しするために,負の撹乱項を考慮するようなモデルを考える。
既にみたように,通常のBJモデルは,伽式において,"2:=0としたもの
−149−
と同値であるので,この役目をになうものとして秘 が現われる。De7,69α d Maγ伽(1979)に従って,このようなモデルを加法的異常値(AO)モデル
と呼ぶ事にする。我々の主たる目的は,パラメーターの推定にあるが,AO モデルの性格が故に観測値は正規分布に従わないから,前章までに行なわれ た最尤法に基く議論はできない。KFについては,"tが無相関(あるいは,
独立)過程に従う事を仮定できれば,観測値の線形関数の中で平均二乗誤差 を最小にするものとして,依然として求める事が可能である。しかし,この 場合に得られるイノベーションは,似tと同様に無相関であっても,正規分布 からは程遠いものであろう。
以上の議論より,我々はまず頑健なKFを求める必要がある事がわかった。
そのために,M(zsl・e"ez(1975)による次の結果は非常に興味深い。
定理3モデル(11において,{":},{ef}は,必ずしも正規過程ではないが,
互いに独立で,それぞれ平均0,分散ぴ2及び平均0,共分散行列三の独立過 程に従うものとする。又,時点tまでの観測値の集合をYtで表わす。この 時,Yt‑'を与えた時の"2の分布が,
E("'│Yf‑')="(tlt‑1) Vαγ("'IY#‑')=P(ilt‑1)
の正規分布に従うものとすれば,"(jlf)=E("#IY')は次のように計算さ れる。
但し,
"(tlt‑1)=F"(t‑11i‑1)
" ( t l 2 ) = " ( t l t ‑ 1 ) + P ( f l オ ー 1 ) e ' # ( Y # ) "
P(tl#‑1)=FP(t‑11t‑1)F'+Z
P ( t l t ) = P ( # l t ‑ 1 ) − β t ( Y 2 ) P ( r l t − 1 ) e e , P ( t l t ‑ 1 ) @ 9
ここで,
" ( Y : ) = 一 副 o g f ( Y 2 I Y f ‑ ' )
3Y#
, 。 ' ( y ' ) = " = g
3Yt
であり,/(Y'IYt‑')は,時点#−1までの観測値が与えられた時の,Ytの
条件つき分布の密度関数である。
証明は,Mqsre"ez(1975)を参照する事にして,この定理の示唆する点 を若干述べてみたい。まず,第1章で説明したように,{"f│,{e:}が正規分 布に従わない場合には,一般に条件つき期待値としてのKFを求める事は不 可能である。上の結果は,このような場合にも,KFが具体的に求められる 一つの例となっている。又,正規性を仮定した時は,P(ilt−1),P(tli)共 に,無条件共分散行列であったが,この定理から分かるように,今の場合に はこれらの値は,Yt‑1に依存している。拡張になっている事は,正規性の下
で
' : ( Y : ) ‑ : { * z ( y 、 , ' H ) ) '
=(YI‑e'"(ilt‑1))/o:
p ' ( y l ) = 4
。
:
}
となる事から明らかである。
さて,以上の結果において問題となるのは,f(Y2IYf‑')の計算であるが,
これはelt"tの条件つき分布と,似 の分布のたたみ込みである。前者は,平 均e'"(tl2−1)=Y(tl#−1),分散e'P(tlt−1)e=P,,(flオー1)の正規分 布である。泌 の分布については,これをF迦とすれば,
/(Y'IYf‑')=[N(Y(flt‑1),P,,(flt‑1))*F"](Yf)
=[N(0,P,,(flオー1))*F"](Y2‑Y(tlt−1))
=9t(Yt‑Y(ilt‑1))
となる。但し,9,=N(0,P,,(ilオー1))*F狸である。例えばF鰹として混合 正 規 分 布
F"=(1−γ)N(0,of)+γノv(0,o:) を考えれば,
㈱
−147−
92("f)=[(1−γ)N(0,of(#)+γノv(0,o:(t)]("f)
となる。但し,"f=Yt‑Y(tlt−1)であり,又,
o:(t)=Pu(tli−1)+o:(j=1,2)
この時,定理3における妙tは簡単に計算され,
ル ( x ' I ‑ ' = , , { ! ‑ ( ' ‑ : ; { ; ) ' ( ' + " : ( " 。 ' ) }
となる。ここで,
/ j f ( " : ) = 1 ラ 鶚 " , { ‑ 告 倫 ‑ 赤 ) " : }
@7)
従って,我々はこの場合対数尤度関数
T
L ( 8 ) = l o g / ( Y , ) + Z 2 1 o g f ( Y @ │ Y # ‑ ' )
を持ち,これを最大にするようなパラメーター8の値を求めればよい事にな る。しかし,βにはBJモデルのパラメーター以外に,xof,o:が入り込 んでおり,又,尤度の計算では,妙 及びβ を各tについて求める必要がある ので,この最大化は相当に複雑となる。この複雑さを回避するために,Mαγ−
抑(1980)により一つの提案がなされているが,実際の分析との関連で,
なお研究を要する課題であると思われる。その際,扱っている問題は異なる が,KJej7ze7,Martj7zα dThomSo"(1979)は多いに参考となる。
付 録 1 ラグランジュ乗数検定について
S〃ひey(1975)に従って,ラグランジュ乗数(LM)検定の概略を以下に 示す。
今,パラメーターβ(j×1)に関する'72(<J)個の制約条件 Hb:6i(6)=0(j=1,・…・,"z)
を検定したい。この時,Hoの下での制約つき尤度方程式は,上つき添字0で
制約条件を考慮した値を示すものとすれば,
3 L ( 8 0 ) ̲ B o 入 = = 0
38
6(80)=0
(A1)
となる。但し,Bはj×、の行列であり,その(j,j)要素は,6i(8)のa, に関する偏導関数である。又,入は、×1のラグランジュ乗数ベクトルで あり,6(80)は,6,(80)を第j要素に持つ、×1ベクトルである.制約条 件の下での最尤推定量をaこれより得られる入の値をスとすれば,適当な
正則条件の下で,(A1)より次の方程式が得られる。
〆 1 = F 3L(80)
、
38
0
さらに,観測値が独立で同一分布に従うものとすれば,大数の法則,及び中 心極限定理より,
132L(60)̲/132L(80)
(γ,〃)=")
− − → E T3838'
13L(80)
−−→Ⅳ(0,1(80)) イ T 〃
が成立する。従って,
1 1 : " : 「 岸 1
であり,この左辺は,漸近的に,平均0,共分散行列
( P ( r ' " ( : , I )
−145−
の正規分布に従う。但し,P(60),‑R(80)は,上の逆行列の(1,1)ブロ ック,(2,2)ブロックに対応する。
この結果を利用すれば,
L M = 坐 ス ' g ' I ‑ ' ( 9 ) "
T
|〃 j
︿n同﹀く L
31
︿ハHU
く
1
−
1 1
︿n月﹀︐
くβ L3
31|T
一一
(A2)
が,脇の下で,漸近的に自由度、のカイニ乗分布に従う事が示される。この 統計量を用いた検定が,LM検定に他ならない。特に,検定すべき仮説がβ の要素j個のうち,畑個の要素がある値に等しい,というような場合,即ち,
&:6(6)=8,‑8W=0;'7z×1
の時は,BoA=3L(80)/〃の要素のうち,J‑77z個が0となるので,計算は ずっと簡単になる。
LM検定の有利な点は,凡の下での推定値しか必要としない事で,この点,
尤度比検定とは異なる。標本サイズが有限の時には,通常前者の方が小さい 値を取るが,漸近的には両者は同等な検定になる事が証明される。但し,以 上の結果は,観測値が独立で同一分布に従い,かつ検定すべきパラメーター が,パラメーター空間の内点である場合のものである。
付 録 2
BJモデルのLM検定統計量の導出
ここでは,第3章の統計量側を導出する事を目的とする。但し以下では,
パラメーターは推定値を使わずに議論する。又,期待値は帰無仮説の下で,
真の値に関して取るものとする。
付録1より,我々のLM検定統計量を導くに必要なものは,L(8)のぴ2 に関する偏導関数,及びL(8)のβに関する2階の偏導関数の期待値である。
前者が,
一 告 三 等 ‑ 圭 亘 ( 2 。祭 一 ・ 等 )
3L(9,。,0)
3ぴ2
となるのは明らかである。後者については,βを8,=(9,の,),とび2に分ける
と,
( ' 竈 ( 会 。 ) )
0
1
1
‑Cp
9
( 器 ' 。
E
1−T
一A
E
︑﹂峠砕︲︲にwl−T
一
一一6
)
匡ゞ
二=二
)
)
1
(
c = − − E
T
32L(8,,0)
3ぴ23ぴ2㈱ +方加 ㈱
1
ニーニ
ー ヱ
2 T
となる事が分かる。従って,求めるべき値は
筆 , β 烏睾)β 際 ) 。
の3つである。証明は省略するが,次の3つの補題が成立する。
補題1KFの誤差共分散行列P(ili)のび2に関する偏導関数は,仮説 の下で,p以上のtに対して定数となり,それは単位行列である。即ち,
3P(zIt)
= I /b7・
t≧p 3ぴ2
この事より,
3P(tlt‑1) = F 3 P ( ' ‑ ' " ‑ ' ) F , = F F ,
3ぴ2
3ぴ2
−143−
が,pより大きいtに対して成立するから,
筆 =+, " ' 。 。 = 」 +, . (A3)
が得られる。
補題2仮説の下で,
E ( 募 遷 :) = ‑ 9 I / b γ # ≧ p これより,
β偽筆)=E"=)
=−9の が,f>pに対して成立する。
補題3仮説の下で,
の
fa−
j
のく J
一一一〃 2肱
/b7・t≧p
但し,22=(cMt̲,,……,(Mf̲p)' これより,
β際)"‑.""隙碧)
="'J(d)J'(')d が,2>pに対して成立する事がわかる。
以上の結果より,
の
I I 3L(9,。,0)
0( 。 、 3L(9,d,0) ) ( 夢 : )
1−T
3ぴ2
( ' L ( ' " 0 )
3ぴ2
) ' / ( ‑ " 』 ‑)
1−T
一一
となり,側式が得られる事になる。
参 考 文 献
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