フィッシャーの経営政策論(下)
菅家正瑞
一、序
二、フィッシャー経営経済学の特質
三、経営管理論の展開………以上前号 四、経営政策論の内容………以下本号 五、フィッシャーの所論の検討
六、結
四、経営政策論の内容
さて,フィッシャーによれば,経営管理の職分をなすものは,前述した
「経営的人間指導」と並んで, 「経営政策」である。それでは,彼において は,経営政策とはいかなる概念として理解されているのであろうか。ザン
1)
ディッヒは、経営経済政策を「経営管理の目標設定と意思決定」として把握 しているが,フィッシャーにおいても,基本的には同様の捉え方である。す なわち,彼によれば,経営政策ないし経営経済政策とは,経営管理全体の
「精神的基本態度」 (die geistige Grundhaltung)と,それを実現するためのさま ざまな「方策」(die Ma息nahmen)を総括する概念をなすのである。それはまた,
「経営管理の目標設定と方策J2)でもあるのである。ところで,経営政策につ いて論ぜられる場合,実践や文献において,それが, 「計画」 (Planung)もし
くは執行の「技術」 (Technik)と同一視されたり混同されたりするが,これは 誤りである。なぜならば,計画とは,選択された経営政策の判蔵と執行の 手段であり,経営組織の一形態をなすものであるからである。それに対して, 経営政策とは,その本質において,経営組織に,それ故,計画に先行するも のである。また,執行の技術と経営政策が混同される場合がある。例えば,
3)減価償却政策が論ぜられる時,減価償却法のさまざまな技術が経営政策とし
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て理解される。しかし,減価償却政策とは,経営管理によって選択された評 価政策に基づいて,さまざまな減価償却技術からの意識的選択をさすのであ る。選択された技術ではなくて,選択をもたらすものが問題なのである。執 行の技術とそれに先行する経営政策的熟慮とは,明確に区別されなければ、な
らないのである
4)さて,上述のように理解される経営政策の前提をなすのが持っている「理 念 J ( I d e e ) である。この理念は,経営管理の村 j 神的基本態度から生ずるもので あり,したがうて,経営政策は常に経営信:理にとって重要な粕神的態度の流 出として理解される。経営政策のこの理念は,指導像であり,目ざされる目 標の観念であり,それ故,それに,経営政策の「長期目標 J ( F e r n z i e l e ) が結合 されなければならない。したがって,経営政策の理念あるいは粘神的基本態 度の範囲の中において,達成の努力に値する長期目標が形成されるのぞあ る。精神的基本態度や理念は,この長期目標への途上で継続的に存在する管 理理忽,あるいは基本原則を意味するのである。経営政策には,このような 長期目標のみならず,長期目標を達成するために設定される一連の「短期目 標 J ( N a h z i e l e ) もが含まれる。これらの短期目標は,時間の経過の中で ) 1 1 t ! 次 的に達成されていき,最終的には長期目標の達成に結びつかなければならな い。長期目標に対してとは異なり,知 m J 目標に対しては達成への意思は早く から目ざめており,経営政策は蝉力性を得て,生き生きとしたものになる。
経営政策の短期目標には,さらに,別の種類の知期目標が含まれる。 これ は,経営経過の中で現われる妨害を除去するために必要な,経営政策の戦術 的方策から生ずる「処置的短期目標
J( i m p r o v i s i e r t e N a h z i e l e ) である。経営政 策によって彩響される対抗者(例えば従業員,市場構成者)が,その経営政 策に対して対抗方策を構ずる場合,その対抗方策に対して処置する必要から 生ずる知期目標がそれである。しかし,いずれの場合の短期目標であれ,そ れらは,常に,最
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