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河村 弘文 学 位 の 種 類

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Academic year: 2021

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全文

(1)

かわむら ひろふみ

河村 弘文

学 位 の 種 類

博士(工学)

甲第 1642 号

学位授与の日付

平成 29 年 3 月 21 日

学位授与の要件

学位規則第 4 条第 1 項該当(課程博士)

学 位 論 文 題 目

超臨界および液体二酸化炭素抽出法による植物からの生体関連 物質の抽出

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

末次 正

(副 査) 福岡大学 教授

松隈 洋介

福岡大学 教授

三島 健司

九州大学大学院 准教授

岩井 芳夫

内 容 の 要 旨

1.緒言

植物に含まれるフラボノイド類は、様々な機能性を有し、多くの種類が食品や医薬品な どへ使用されている。その抽出溶媒としては、環境や人体へ有害性があるが収量のよい 有機溶媒が使用されている。そのため安全な二酸化炭素が抽出溶媒として注目されてい る。一方で、従来の液体有機溶媒抽出への超音波照射の併用は、超音波キャビテーショ ンにより抽出成分の収量向上に効果があることが既に知られている。しかし二酸化炭素 抽出への併用は、超音波振動子を装着する特殊な高圧セルを設計する必要があるため、

これまでは超臨界二酸化炭素抽出への間接照射や固体振動法などの報告があるのみであ る。この課題を解決するため、本研究では、独自の高圧セルを製作し、新規の方法とし て抽出液への超音波の直接照射を併用した液体二酸化炭素抽出を初めて行った。超臨界 状態よりも大スケールでの条件設定が容易な液体二酸化炭素を溶媒とし、超臨界と比較 し液体二酸化炭素抽出が収量がよいこと、助溶媒としたエタノールの最適なモル分率が あること、シソの葉とアルファルファの葉で同じ抽出挙動を示すこと、それぞれにおい て超音波照射の併用は、明らかに抽出収量が向上することを実験により確認した。

また、関連する実験として超臨界二酸化炭素に対する 2 種類のフラボノイド類の溶解度の 測定と正則モデルへ相関できることを実験と推算により確認し、フラボノイド類の二酸 化炭素抽出時の条件設計事例を述べた。更に柑橘系の香り嗅ぎによる脳血流量の変化を 測定して fNIRS により表し、抽出物の今後の客観的な評価方法のひとつとして今後の展 望を述べた。

(2)

2.原材料

抽出実験は、シソの葉とアルファルファの葉を原料とし、目的成分をルテオリンとアピ ゲニンとした。溶解度の測定にはレスベラトロールとバイカレインを使用し、fNIRS にお いては、レモン外皮とグレープフルーツ外皮を香り嗅ぎの柑橘系原料とした。

3.実験装置および方法

溶解度の測定と抽出実験には、流通型の超臨界二酸化炭素抽出装置を使用した。超臨界二 酸化炭素への溶解度は、温度 35、40、45℃、圧力 8、10、15MPa にて測定した。

超音波照射を併用した抽出実験は、凍結粉砕装置にて微粉砕したシソの葉の 0.3g を体積 約 150m3 の高圧(抽出)セルに投入し、使用した二酸化炭素の量は、ガス流量計で測定し た。超音波発生器を高圧セルの上部に設置し、セル中に超音波振動子を挿入し抽出液へ超 音波を直接照射した。照射は、周波数 20kHz、振幅 15.3μm(振幅制御 25%)にて行い、温 度上昇を防ぐため断続的に行った。抽出は、温度 5、20、25ºC、圧力 8、10、14 MPa、液体二 酸化炭素中のエタノールのモル分率(xEtOH) 0、0.06、0.131、0.262、0.393、1 の範囲で 設定し、各条件を変動させて抽出を実施した。抽出成分の含量は、HPLC を用いて分析し た。香り嗅ぎ時の脳血流の測定は、島津製作所の研究用光脳機能イメージング装置 FOIRE3000 を使用した。

4.実験結果

液体二酸化炭素抽出におけるルテオリンとアピゲニンの抽出収量が、温度 25℃、圧力 10MPa、超音波の照射条件は、合計時間=125 秒、振幅=15.3μm、周波数=20kHz、そして液体 二酸化炭素とエタノールの混合物におけるエタノールのモル分率(xEtOH))が 0.131 の 時に最も改善されることを実験により求めた。実験はそれぞれの抽出条件を変更する単 一ファクター法により複数回再現し、実験値に信頼性があることを確認した。さらに超 音波照射を併用した場合に抽出収量が 2 倍以上に向上したことをそれぞれの実験データ により示した。またそれが超音波キャビテーションによることをアルミ箔での実験と原 料粒子の拡大観察により検証した。

超臨界二酸化炭素に対する 2 種類のフラボノイド類の溶解度は、抽出温度と圧力が増加 するとともに増し、それらの溶解度がジガー(Ziger)とエッカート(Eckert)によって提案 された正則モデルに基づく溶液モデルに相関できることを確認した。

柑橘類の香気を人体が嗅いだ時の刺激による脳血流量の変化を測定した結果、柑橘系の 香りは、百マス計算により活性化し増加した脳血流を下げる効果があり、安静時よりも 酸素結合ヘモグロビンと総ヘモグロビンを増加させ、深呼吸と同様に人体をリラックス させる効果があることがわかった。

5.結言

本研究において最も抽出収量が改善されたメタノールは有機溶媒であったが、生体へ有 害性がある。超音波の直接照射を併用した本研究は、抽出作業者と環境にほとんど影響 を与えない二酸化炭素が抽出溶媒として工業的に有効であることを示しており、今後の 他の植物からの成分抽出における収量の改善にとっても有効であることを示している。

(3)

またフラボノイド類の超臨界二酸化炭素への溶解度が正則モデルに相関できることを確 認したことは、今後の二酸化炭素抽出時の条件設計の参考となる。更に fNIRS によって香 りの成分を有する抽出物の客観的な評価が可能であることを示した。

これらのことから、近年の企業の社会的責任や継続性を考慮すれば、安全な二酸化炭素を 溶媒とした本研究の方法が、天然の植物原料からの生体関連物資の抽出において、今後の 工業的な応用に有効であると考える。

以上

審査の結果の要旨

平成 28 年 11 月 16 日(水)に開催された博士論文事前審査委員会において、申請者は申請 資格に定める「申請者が第一著者である査読付学術論文 1 編(冊)以上の研究業績を有 する者」であると確認された。審査の結果、申請者は申請資格の条件に適合する者であ ると判定された。平成 28 年 11 月 30 日に開催された博士課程後期通常委員会において、

主査予定者の末次 正から申請者の経歴、研究業績、論文題目、論文内容と副査予定者の 説明があった。審議の結果、申請論文の受理と審査委員が下記の提案の通り承認され た。主査 末次 正 教授、副査 三島 健司 教授、松隈 洋介 教授、九州大学 岩井 芳 夫 准教授。

第 1 回審査会は平成 28 年 11 月 26 日 10:00~11:00、6 号館 4 階 会議室において行わ れた。申請者本人から申請論文の内容説明を受けた。審査委員から以下の質疑並びに指 摘があった。

・実験中のデータの測定回数を複数回と記載しているが、具体的に何回実施した平均なの か、記載したほうがよい。

・脳血流の実験は、N数1であり、データ数が少ない。データ数を増やすべき。例えば、香 り嗅ぎを実施しない場合でも、安静状態で、リラックス状態になる場合があるとおもう。

その場合のデータなども記載したほうがよい。

・論文中の「収率」と「収量」の文言が、統一されていない。割合なのか測定量なのか、

意味に応じて統一すること

・抽出実験において抽出前の原料のパウダーの大きさは測定しているが、抽出後のパウダ ーの大きさは測定しているのか?

・超音波の周波数の条件を変化させてみた場合はどのようになるか?

・第 4 章(抽出)と第 5 章(脳血流)の間の関連がわかりにくい。もっとわかりやすい記載 にしたほうがよい。

脳血流については、アレルギー物質を鼻に入れ、アレルギー鼻炎について調査し、PM2.5 に 対する影響の実験も報告されている。そのような事例を参考にすること。

(4)

・超臨界抽出に超音波照射を使用した過去の事例が記載されているが、本論文との方法の 違いが明確でない。

過去お論文の方法では、抽出容器の外から超音波照射しており、材料へ超音波を直接照射 する効果については、不明であった。本論文は高圧容器内の原料へのダイレクトな照射 が可能であり、超臨界中での超音波照射の効果を検討する最初の研究となった。その差 をわかりやすく記載すること。

指摘事項に基づく学位論文の修正対応については、申請者が各審査委員に直接報告す ることになった。また、学位論文の内容と審査会中の質疑応答から、申請者は、専門領 域に関する十分な学識と研究能力を有すること、国際学術雑誌への投稿、国際会議での 口頭発表などの実績から十分な英語能力を有することを認めた。以上を踏まえ、第 2 回 の審査会は行わないこと、公聴会を開催することを全会一致で了承した。

続いて公聴会は、平成 28 年 1 月 23 日 10:00~11:00、14 号館 4 階 1441 室において 行われた。出席者は 14 名(審査員 4 名を含む)であった。公聴会では申請者による約 60 分の発表後、出席者から 5 件の質問があり、申請者はすべての質疑に対し的確に回答し た。主な質問事項は以下の通りである。

・超音波照射の直接照射と間接照射の抽出セル中の抽出液への影響の違いは?

・超音波の総照射時間を 125 秒として、抽出時間が 60 分の時に抽出収量が飽和している としている。60 分間のどの時点で 125 秒照射したほうが、より抽出収量がよかったのか?

・液体二酸化炭素抽出における温度依存において 25℃で最大の抽出収量となっている。

更に温度を上げた場合に収量は大きくなると思うが、その実験をしていない理由は?

・二酸化炭素の世界での総排出量は?

・fNIRS の実験において安静とする時間が 20 秒~120 秒と実験により異なる。安静時間を 長くすれば脳がリラックスすると思うが、どのように安静時間を設定したのか?

公聴会後、11:05〜11:35 に 6 号館会議室において主査と副査全員が審査員(4 名)と なり申請者に対し口頭試験を実施した。回答はいずれも的確であり、口頭試験の結果も 合格と判定した。その後 11:35~11:55 に同会議室にて審査員 4 名にて最終審査会を開 催した。学位論文の内容、口頭試験の結果、審査会および公聴会での質疑応答の内容を 踏まえ、全会一致で当該学位論文を合格と判定した。

審査委員の結論として、申請学位論文は工学研究科博士学位申請取扱細則第 7 条の審査 基準に照らして学位論文に値すると判定した。

参照

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