理 学 療 法 士 養 成 校 学 生 の 学 習 支 援 に 関 す る 実 践 的 研 究
- 専 門 学 校 に お け る 学 習 動 機 づ け を 中 心 に -
原 賢治
目 次
序 論 ・・・・・ 1 1 . 研 究 の背 景
2 . 研 究 の目 的 と 内 容
第 1 章 理 学療 法 と 理 学 療 法 士 及 び 理 学療 法 士 教 育 の 現 況 ・ ・ ・ ・ ・ 9
第 1 節 理 学療 法 の 概 念 と 理 学 療 法 士 の法 的 規 定1 . 理 学 療法 の 概 念
2 . 理 学 療法 士 の 法 的 規 定
第 2 節 理 学療 法 業 務 の 現 況 1 . 理 学療 法 の ね ら い と 対 象
2 . 臨 床現 場 に お け る 理 学 療 法 士 の現 況
第 3 節 理 学療 法 士 教 育 の 現 況
1 . 理 学療 法 士 養 成 課 程 の 概 要 と 課題 2 . 理 学療 法 士 国 家 試 験 の 現 況
第 2 章 学 習支 援 に 関 す る 理 論 的 背 景 ・ ・ ・ ・ ・ 28
第 1 節 学 習動 機 づ け第 2 節 学 習方 法
第 3 節 自 己効 力 感
第 4 節 学 習動 機 づ け 、 学 習 方 法 、 自 己効 力 感 に 関 す る 総合 的 考 察
第 3 章 学 習支 援 に 関 す る 実 態 分 析 ・ ・ ・ ・ ・ 47
第 1 節 学習 動 機 に 関 す る 実 態 分 析1 . 内 容関 与 的 動 機 と 内 容 分 離 的 動機 の 量 的 経 時 的 変化 1 ) 調 査 目 的 と 調 査 方 法
2 ) 結 果 と 考 察
2 . 内 容関 与 的 動 機 と 構 成 3 志 向 の質 的 経 時 的 変 化 1 ) 調 査 目 的 と 調 査 方 法
2 ) 結 果 と 考 察
3 . 学 習 動 機に 関 す る 実 態 分 析 の 総 合 的考 察
第 2 節 学習 動 機 と 学 習 方 法 の 実 態 分析 1 . 調 査 目 的と 調 査 方 法
2 . 結 果 と 考察
第 3 節 学習 動 機 と 自 己 効 力 感 の 実 態分 析 1 . 調 査 目 的と 調 査 方 法
2 . 結 果 と 考察
第 4 節 学習 方 法 と 自 己 効 力 感 の 実 態分 析 1 . 調 査 目 的と 調 査 方 法
2 . 結 果 と 考察
第 5 節 実態 分 析 の 総 合 的 考 察
第 4 章 学 内に お け る 学 習 支 援 ・ ・ ・ ・ ・ 86
第 1 節 学 内教 育 の 現 況1 . 学 内教 育 ( 卒 前 教 育 ) の 到 達 目標 2 . 養 成期 間 ・ 養 成 形 態 の 現 況
3 . 養 成校 の 教 育 評 価 4 . 教 員が 備 え る べ き 条 件
5 . 現 代学 生 の 特 徴
6 . 教 育向 上 プ ロ グ ラ ム の 現 況
7 . 卒 前の 態 度 ・ 人 間 性 ・ 倫 理 の 育成 8 . 卒 前教 育 の 現 況 と 問 題 点
第 2 節 学 内に お け る 学 習 支 援 方 法 1 . 一 般的 な 学 習 方 法
2 . 具 体的 な 学 習 方 法
3 . 学 習方 法 及 び 学 習 支 援 に 関 す る近 年 の 傾 向 4 . 授 業評 価 の 意 義
5 . 学 習支 援 方 法 の 実 際
第 5 章 臨 床実 習 に お け る 学 習 支 援 ・ ・ ・ ・ ・ 185
第 1 節 臨 床実 習 教 育 の 現 況1 . 臨 床実 習 の 意 義 及 び 到 達 目 標 2 . 臨 床実 習 体 系 及 び 臨 床 実 習 モ デル
3 . 臨 床実 習 指 導 者 が 備 え る べ き 条件 と 役 割 4 . 臨 床実 習 に お け る 教 員 の 役 割
5 . 臨 床実 習 に お け る 実 習 生 の 特 徴 6 . 臨 床実 習 の 現 況 と 課 題
第 2 節 臨 床実 習 に お け る 学 習 支 援 方 法 1 . 学 習方 法 の 特 色
2 . 学 習方 法 の 課 題 3 . 学 習支 援 方 法 の 実 際
第 6 章 卒 後に お け る 学 習 支 援 ・ ・ ・ ・ ・ 222
第 1 節 理 学療 法 士 の 卒 後 教 育 の 現 況1 . 卒 後学 習 の 必 要 性 2 . 卒 後学 習 の 現 況 3 . 卒 後学 習 の 方 向 性
第 2 節 卒 後に お け る 学 習 支 援 方 法 1.「 理 学 療 法 学 」 の 方向 性
2.「 理 学 療 法 学 以 外 の隣 接 領 域 」 の 方 向 性 3 . 学 習支 援 方 法 の 実 際
結 論 ・・・・・ 238
参 考 文 献 一 覧
・・・・・ 257序 論
1 . 研 究 の 背景
今 日 の 理 学 療 法 士 教 育 に お い て は 、 理 学 療 法 士 養 成 校 学 生 ( 以 下 学 生 ) 及 び 学 生 の 中 の実 習 学 生( 以 下 実 習 生 )を 主体 と す る 効 果 的な 学 習 支 援 の 実 践 が 最 重 要 課 題 とな っ て い る 。 つ ま り 、 多 様 化す る 現 代 学 生 の特 徴 を 考 慮 す る と 理 学 療 法 士 教 育の 在 り 方 を「 学 習 方 法」( 学 習に 関 す る 目 的 を達 成 す る た め の や り 方 、手 段 )の 側 面 から の み で な く 、今 後 は「 学 習 支 援」( 学 習 に 関 し て 力 を 貸し て 助 け る こ と、 支 え て 助 け る こ と ) の 側 面か ら の 総 合 的 な検 討 ・ 改 革 が 不 可 欠 と な っ て い る。 理 学 療 法 士 養 成 校 教 員 ( 以下 教 員 ) の 立 場か ら 論 ず る と 、「 学 習 方 法 」は 教 員 主 体 の 過 程 で 計 画 的な 措 置 の 要 素 が 強 く な るが 、「 学 習支 援 」は 学 生 主 体 の 過程 で あ り 、 学 生 の 学 習 に 対 する 想 い や 動 機 等の 様 々 な 条 件 を 考 慮 す る こ と が 必須 と な る の で あ る 。 換 言 す れば 、 学 生 各 々 の実 情 を 重 要 視 し た 学 習 支 援 を 発 展的 、 柔 軟 的 に 展 開 す る こ と によ り 、 学 生 主 体の よ り 良 い 学 習 方 法 の 確 立 が 促 され る の で あ る 。 こ の こ と は まさ に 、 理 学 療 法士 養 成 に お け る 学 習 支 援 に お い て「 学 習 動 機 づ け 」 が 以 下 に 述べ て い く よ う に、 最 も 重 要 な 実 践 的 な 方 法 、 改 革理 念 と な り 、 こ の 正 し い 定 着に よ り 、 学 習 意欲 の 向 上 と と も に 、 理 学 療 法 士 に向 け て の 学 生 自 身 の 自 己 実現 が 可 能 と な る 。
そ こ で 、 こ の「 学 習 動 機 づ け 」 の 重 要 性を 問 わ れ る 背 景 とし て 、 学 生 の 気 質 面 、 学 習 面 、そ し て 養 成 教 育 の 現 状 の 3つ の 観 点 か ら 整 理し た い 。
ま ず 第 1 の現 代 学 生 の 一 般 的 な 気 質 面で あ る が、そ の 特 徴 と し て、湯 舟 ら は 、
「 無 気 力」、「 無 関 心 」を 挙 げ、「 理 解 し て い る の み で 実 践 がな く 、指 示 を 受 け る ま で や ら な い、 知 性 偏 重 の 中 で 育 っ て お り創 造 性 が な い 、友 人 同 士 ま た 縦 の つ な が り が な く連 帯 感 を 持 ち に く い 」1) 、片 岡 は「 進 学 動 機の 多 様 化 、不 本 意 就 学 の 増 大 、 学 習 活 動 ( 学 業 活 動 ) の 受 動 性 、 学 習 意 欲 の 欠 如 」2 )を 挙 げ 、 さ ら に 越 智 ら は 生徒 の 自 己 意 識 と し て 「 無 力 感」、「 低 い 自 己 評価 、 断 片 的 な 自 己 」 を 挙 げ、「 低 い 自 己 評 価 を 補填 す る た め に 友 だ ち か ら 高 い 評価 を 得 よ う と す る、
自 分 を 押 し 殺 し て ま で も 友 だ ち の 目 を 気 に す る 」3 )、 齊 藤 は 「 覇 気 の 無 さ 、 真 面 目 だ が 消 極 的 で 反 応 が 薄 い 」4 )と し て い る 。 理 学 療 法 士 教 育 に お い て 、 保 村
ら は 、 実 習 生の 社 会 常 識 に 反 す る 行 動 と して 「 挨 拶 や 適 切な 言 葉 づ か い が で き な い」、「 遅 刻欠 席 が 多 い 」、「 約 束 事 が 守 れな い 」 等 、 意 欲低 下 に 関 す る 行 動 と し て 「 自 ら 調べ な い 」、「 質 問 を し な い 」等 を 指 摘し 5)、 さら に 日 本 理 学 療 法 士 協 会 は『 臨 床 実 習 教 育 の 手 引 き 第 5 版』の 中 で 、「 現 代 学 生 は 責 任感 が 欠 如 し 、 自 発 的 な 行 動が 苦 手 で ス ト レ ス に 弱 く 、 要点 を 捉 え る の が苦 手 で あ る 。 不 安 感 が 強 く 、 自 分の 短 所 を 他 人 に 知 ら れ た くな い 」6)と 指 摘 し て い る 。
上 記 見 解 を踏 ま え つ つ 、 現 代 の 学 生 及 び実 習 生 の 気 質 面の 特 徴 を 総 合 的 に 考 察 す る と 、 心身 と も に ス ト レ ス に 弱 く 、 実習 等 負 荷 が 掛 かる よ う な 場 面 を 耐 え る こ と が 難 しく 逃 避 傾 向 と な る 危 険 性 も 高く 、 社 会 性 、 自主 性 及 び 積 極 性 に 欠 け 、 目 標 を 持て ず 、 意 欲 や 取 組 み に 関 す る言 動 が 一 致 せ ず動 け な い 、 他 者 と の 人 間 関 係 が 希薄 な た め 、 他 者 に 対 す る 配 慮に 欠 け る 、 他 罰的 で 責 任 転 嫁 傾 向 で あ る 等 が 挙 げら れ 、 学 内 教 育 現 場 も し く は臨 床 実 習 教 育 の実 践 場 面 で 問 題 視 さ れ て い る 。
マ ス コ ミ を 中心 に 、 現 代 学 生 は 、 過 剰 に個 性 を 大 切 さ れ たこ と で 「 褒 め ら れ る こ と に 慣 れて い て 、 叱 ら れ る こ と に 慣 れて い な い 」 と 論じ て い る 内 容 を 目 に す る 。 実 際 、現 在 若 者 の 態 度 に 関 し 、 叱 責す る 内 容 を そ の場 し の ぎ の 態 度 で 真 剣 に 聞 い て いな か っ た り 、 逆 に 褒 め る と 「ど の 学 生 に も 同じ 褒 め 言 葉 を 使 っ て い る み た い です が 、何 が 目 的 で す か」と 言 わ れ た 経 験 か ら 推察 す る と 、「 叱 ら れ る こ と に 慣 れて い て 、 褒 め ら れ る こ と に 慣れ て い な い 」 ので は な い だ ろ う か 。 も し そ う で あれ ば 、「 褒め る 」こ と の 真 の 意 味 合 い 、特に 動 機 づ け と の 関 係 性 等 を 再 考 す る 必要 が あ る 。
次 に 第 2 の学 習 面 を み る と 、そ の 特徴 と し て 、「 学 力 低 下 論 争 」は、マ ス コ ミ と さ ま ざ ま な分 野 の 研 究 者 、論 者 の論 述 に よ り 形 成 さ れ、い つ し か「 学 力 低 下」
は 現 在 の 教 育を 語 る 際 の キ ー ワ ー ド に な って い る 。 し か しな が ら 、 学 習 面 で の 問 題 に 対 す る結 論 が 出 な い 状 況 と い う か 結論 を 出 せ な い 状態 で あ る 。 で は 実 際 に 学 力 が 低 下し て い る の で あ ろ う か。年 々 、理 学 療 法 士 養 成課 程( 以 下 養 成 課 程 ) に お け るカ リ キ ュ ラ ム 及 び 各 教 科 ( 科目 ) の 難 易 度 は上 昇 し て い る 現 況 の 中 で 、大 半 の 学 生 が 進 級 し 、卒 業 を 迎 え 、理 学 療 法 士 国 家 試験( 以 下 国 家 試 験 )
に 合 格 し、理 学 療 法 士 と し て臨 床 現 場 に 入 っ て い く こ と を 考え る と 、「 学 力 低 下」
を 裏 付 け る 論証 は 難 し い 。 む し ろ 、 基 礎 を基 盤 と し た 応 用力 と 創 造 力 の 低 下 、 学 習 に 対 す る方 法 の 要 領 の 悪 さ 、 そ し て 人間 力 の 低 下 等 が原 因 で 、 学 習 し た 知 識 を 展 開 で きに く い 状 況 を 「 学 力 低 下 」 と称 し た の で あ る。 こ れ は 経 済 協 力 開 発 機 構( O EC D )に お け る「 生 徒 の 学習 到 達 調 査( P I SA )」の 結 果 7)へ の 偏 見 で あ る 。た だ 確 か に 、 年 々 、 情 熱 、 野望 を 持 っ た 、 意気 揚 々 な 学 生 が 少 な く な っ て い るこ と は 否 め な い 現 状 で あ る。
現 在 の 若 者の 学 習 に 対 す る 思 考 過 程 は 、好 奇 心 旺 盛 で 自主 的 に な る よ り 、 与 え ら れ た 内 容を そ の ま ま 暗 記 す る 方 が 良 いと い う 傾 向 が 強い 。 高 等 学 校 ま で の 学 習 方 法 、 つま り 、 積 み 上 げ 式 学 習 方 法 (帰 納 的 思 考 過 程に 基 づ く 学 習 方 式 - ボ ト ム ア ッ プ方 式 ) に お け る 暗 記 中 心 の 学習 姿 勢 か ら 抜 けき れ ず 、 養 成 課 程 に 関 す る 未 知 の領 域 の 難 解 な 質 、 膨 大 な 量 に戸 惑 っ て い る 学生 が 殆 ど で あ る 。 そ の 状 態 に て、教 員 か ら 演 繹 的 思 考過 程( ト ッ プ ダ ウ ン 的 思 考過 程 )を 求 め ら れ 、 整 理 が つ か ず、戸 惑 い が エ スカ レ ー ト し 、理学 療 法 の 学 術 性の 特 質 を 見 出 せ ず 、 そ の よ う な 状況 に 耐 え か ね て 、 退 学 も し くは 、 休 学 の 意 向を 示 す 者 も 少 な く な い 。
こ こ で い う 「帰 納 的 思 考 過 程 」 と は、「 帰 納」( 個 々 の 具 体的 事 実 か ら 一 般 的 な 命 題 な い し法 則 を 導 き 出 す こ と ) を 基 盤に 、 個 々 の 事 象か ら 事 象 間 の 因 果 関 係 を 推 論 し、結 論 と し て 一 般 的 原理 を 導 く 方 法 で あ る。一 方 、「 演 繹 的 思 考 過 程」
と は、「 演 繹 」( 一 定 の 前 提 か ら 論 理 規 則 に基 づ い て 必 然 的に 結 論 を 導 き 出 す こ と ) を 基 盤 に、 一 般 的 な 原 理 か ら 論 理 的 推論 に よ っ て 、 結論 と し て 個 々 の 事 象 を 導 く 方 法 であ る 。「 帰納 的 思 考 過 程 」及 び「 演 繹 的 思 考 過程 」は 対 極 的 で あ る が 、 そ れ ぞ れの 利 点 を 考 慮 し て 、 学 生 が 状況 に よ っ て 各 々の 思 考 過 程 を 選 択 、 融 合 す る こ とが 必 要 と な る 。こ の 現状 を 打 破 す る た め に は、「 暗 記 中心 か ら 理 解 中 心 の 学 習 方法 へ の 意 識 転 換」、「 帰 納 的 思考 過 程 と 演 繹 的思 考 過 程 の 選 択 と 融 合 」 を 推 奨 する 必 要 が あ る 。
ま た 、学 生 が 、養成 課 程 に お け る 科 目( 教 科 )の 位 置 づ け と重 要 性 よ り 、「 得 意 か 苦 手 か」、「 好 き か 嫌 い か 」を 重視 す る 傾 向 に あ る。「 苦 手 」な のは 仕 方 が な
い に し て も 「嫌 い 」 と ま で 思 い 込 む と 、 その 科 目 に 対 す る対 応 が 困 難 と な り 、 結 果 と し て 、そ の 科 目 が 以 降 、 繋 が っ て 関連 す る 、 よ り 高度 な 科 目 へ の 対 応 が よ り 難 解 に なる と い っ た 悪 循 環 を 作 り 出 す危 険 性 を 含 む 。こ の 事 態 に 対 応 す る た め に は 、 学生 - 教 員 間 に お い て 、 該 当 科目 の 開 講 意 義 、授 業 目 標 、 授 業 内 容 及 び 他 科 目 への 繋 が り 等 を 共 有 す る こ とが 先 決 と な る。「 共 有 」す る こ と は 、学 生 - 教 員 間 の関 係 性 、 す な わ ち 「 信 頼 関 係」 を 基 盤 と す る。 そ の た め に は 「 信 じ る 」こ と、「 許 し 、再 度 信 用 す る 」こ と が 重 要 で あ る 。つ ま り 、多 様 化 す る 現 代 学 生 の 特 徴を 踏 ま え た 上 で の 、 理 学 療 法士 教 育 に お け る教 員 の 役 割 は 重 要 と な る 。
最 後 に 第 3 の 理 学 療 法 士 教 育 の 現 況 を み る と 、 理 学 療 法 士 養 成 校 ( 以 下 養 成 校)、 臨 床 実 習 現 場 及 び 教員 、 臨 床 実 習 指 導 者 に 関 し て も課 題 が 指 摘 で き る 。
学 校 の 役 割、目 的 に お い て デ ュ ーイ は 、「社 会 的 な 力 と 洞 察力 の 発 達 に あ り 、 こ の 狭 隘 な 功利 性 か ら の 解 放 、 こ の 人 間 精神 の 可 能 性 に むか っ て す べ て が う ち ひ ら か れ て いる こ と こ そ が 、 学 校 に お け るこ れ ら の 実 際 的活 動 を 芸 術 の 友 た ら し め 、 科 学 と 歴 史 の 拠 点 た ら し め る 」8 )と 述 べ て い る 。 学 校 は 、 社 会 の 関 係 を 無 視 し て 存 在す る こ と は あ り 得 ず 、 し た がっ て 社 会 の 変 化に 対 応 し て 、 学 校 も そ の 内 容 を 変え て い く こ と が 求 め ら れ る 。つ ま り 養 成 校 にお い て は 、 教 育 を 受 け た 学 生 が 現実 の 医 療 ・ 保 健 ・ 福 祉 の 各 臨床 現 場 で ど の よう に 育 っ て い く か 、 各 臨 床 現 場 が望 む よ う な 教 育 が 行 わ れ て いる か が 重 要 な 視点 と な る 。 そ の た め に は ま ず 、 養成 校 は 学 生 の た め に 門 戸 を 開き 、 そ の 中 で 教育 活 動 に 従 事 す る 教 員 は 、 学 生 の将 来 展 望 を 共 有 し 、 成 長 に 発展 的 に 働 き か ける 協 力 者 と な る 必 要 が あ る 。
あ ら ゆ る 教 育 現 場 で 共 通 に 求 め ら れ る 教 員 像 及 び 臨 床 実 習 指 導 者 像 と は 、
「 伝 達 者 」 と「 指 導 者 」 の 意 味 を 兼 ね 備 えな が ら 、 未 来 への 洞 察 力 と 教 養 を 兼 ね 備 え た 人 物で あ る 9)。 し か し な が ら 、 現在 の 教 員 及 び 臨床 実 習 指 導 者 は 、 各 学 生 の 気 質 面、 学 習 面 の 特 徴 に 無 関 心 な ため 、 知 識 ・ 技 術の 詰 め 込 み 教 育 、 偏 り 、 成 績 ( 点数 ) 重 視 の 傾 向 が 感 じ ら れ 、情 意 領 域 や 学 習に 対 す る 動 機 づ け へ の 教 育 的 働 き掛 け が 希 薄 で あ る 。
成 績 ( 点 数) 等 を 重 視 し 、 外 発 的 動 機 づけ を 優 先 的 に 多用 す る こ と で 、 学 生
- 教 員 間 で の信 頼 関 係 が 構 築 で き な い 状 況も 多 々 み ら れ る。 ま た 、 入 学 定 員 を 満 た す こ と を重 視 し 、 様 々 な 高 等 学 校 生 や社 会 人 に 対 し て入 学 を 勧 誘 す る に も 関 わ ら ず 、 入学 前 ま で の 教 育 に 対 し て 、 個々 の 一 般 的 発 達水 準 や 課 題 を 学 習 す る た め の 前 提と な る 知 識 や 技 術 が 既 に 習 得さ れ て い る か 否か と い う レ デ ィ ネ ス に 関 し て 過 剰に 問 題 視 す る 傾 向 が あ る。職 業 観 に 関 し て も 同様 で 、「理 学 療 法 士 の 職 業 観 を 十分 に 理 解 し 、 自 分 の 考 え を 持っ た 上 で 入 学 すべ き で あ る 」 と い う 考 え 方 が あ る。
実 際 の 臨 床 場 面 で 実 施 さ れ る 臨 床 実 習 教 育 に お い て 、「 備 わ っ て い な け れ ば な ら な い と 思わ れ る 職 業 観 や 学 習 意 欲 が 欠如 し 、 そ こ か ら教 育 し な け れ ば な ら な い こ と が 多々 あ り 、 養 成 校 の 教 育 の 質 等の 教 育 体 制 を 疑う 」 や 「 理 学 療 法 士 に な る た め の資 質 が 感 じ ら れ な い た め 、 理学 療 法 士 に な って 欲 し く な い 」、「 知 識 技 術 の 不 足も さ る こ と な が ら 、 学 生 の 人間 力 が 低 下 し 、理 学 療 法 士 の 将 来 が 心 配 で あ る 」と い っ た コ メ ン ト を 臨 床 実 習指 導 者 及 び 現 場ス タ ッ フ よ り 聞 く こ と が あ っ た 。そ の よ う な 様 々 な 意 見 の 中 で実 習 生 が 窮 地 に追 い 込 ま れ 、 貴 重 な 体 験 で あ る はず の 臨 床 実 習 を 自 ら 中 止 し 、退 学 も し く は 休学 す る こ と が 少 な く な い 現 状 で ある 。
以 上 の よ うに 大 き く 3 つ の 側 面 か ら 学 生及 び そ の 教 育 を整 理 し て い く と 、 学 内 、 臨 床 実 習及 び 卒 後 の そ れ ぞ れ の 教 育 環境 に て 、 認 知 領域 、 精 神 運 動 領 域 は 元 よ り 情 意 領域 や 学 習 に 対 す る 動 機 づ け へも 教 育 的 に 働 き掛 け 、 揺 ぎ 無 い 全 人 的 教 育 シ ス テム を 早 期 に 構 築 す る こ と が必 須 と な る 。
現 在 、 医 療 者像 と し て 、 豊 か な 人 間 性 を備 え 、 医 療 を 受 ける 人 の 意 思 を 尊 重 し た 医 療 を 提供 で き る 人 、 チ ー ム 医 療 の 中で の 各 医 療 者 の専 門 性 を 発 揮 で き 、 倫 理 的 ・ 法 的な 知 識 や 医 療 経 済 等 の 社 会 問題 に 対 す る 知 識が あ り 、 医 療 事 故 を 防 止 す る た めの シ ス テ ム づ く り に 貢 献 でき る 人 が 期 待 さ れて い る 10)。い う ま で も な く 、 養 成校 に 在 籍 す る 学 生 も こ う し た医 療 者 像 を め ざし て 、 養 成 課 程 を 設 置 す る 養 成 校( 3 年 制 及 び 4 年 制 専 門 学校・3 年 制 短 期 大 学・大 学 11)、以 下 養 成 校 ) を 卒 業し 、 理 学 療 法 士 国 家 資 格 を 取得 後 、 医 療 ・ 保健 ・ 福 祉 分 野 に て 活
動 で き る た めに 、 学 内 教 育 、 臨 床 現 場 に おけ る 臨 床 実 習 教育 、 卒 後 教 育 全 て の 教 育 環 境 の 中で 理 学 療 法 士 と し て の 適 性 と専 門 性 を 高 め 、社 会 貢 献 で き る 資 質 能 力 を 高 め てい る の で あ る 。
2 . 研 究 の 目的 と 内 容
本 研 究 は 、理 学 療 法 士 養 成 の 基 本 理 念 とそ の 教 育 現 状 、そ し て 既 述 し た 現 代 学 生 の 特 徴 を踏 ま え た 上 で 、 専 門 学 校 を 主体 と し た 学 内 、臨 床 実 習 そ し て 卒 後 の 各 領 域 に おけ る 理 学 療 法 士 教 育 の 現 状 と課 題 を 調 査 ・ 分析 し 、 学 生 主 体 の 学 習 支 援 に 関 する 在 り 方 と 方 法 の 再 検 討 を 行う こ と 、 つ ま り今 日 の 理 学 療 法 士 養 成 の 重 要 課 題で あ る 「 学 習 動 機 づ け 」 を 基盤 と し た 学 習 支援 方 法 の 在 り 方 を 実 践 的 に 明 ら かに す る こ と で あ る 。
論 文 構 成 は 以 下 の よ う に 6 章 構 成 で あ る 。 第 1 章 「 理 学 療 法 と 理 学 療 法 士 及 び 理 学 療 法士 教 育 の 現 況 」 で は 、 第 1 節「 理 学 療 法 の 概念 と 理 学 療 法 士 の 法 的 規 定」、 第 2 節 「 理 学 療 法業 務 の 現 況 」、第 3 節 「 理 学 療法 士 教 育 の 現 況 」 の 内 容 に て 理 学療 法 士 教 育 を 理 論 的 に 考 察 し、 そ の 現 況 を 踏ま え た 上 で 、 第 2 章
「 学 習 支 援 に関 す る 理 論 的 背 景 」 及 び 第 3章 「 学 習 支 援 に関 す る 実 態 分 析 」 を 理 論 的 根 拠 とし な が ら 、第 4 章「 学内 お け る 学 習 支 援」、第 5 章「 臨床 実 習 に お け る 学 習 支 援」、第 6 章「 卒 後 に お け る 学 習 支 援 」に おい て 理 学 療 法 士 の 学 習 支 援 を 実 践 的 に考 察 し 、 そ れ を 基 に 自 律 的 な学 習 動 機 づ け を基 盤 と し た 学 習 支 援 に 結 び つ け る根 拠 を 探 求 し た 。
特 に 本 研 究で は 、 専 門 学 校 に 在 籍 す る 学生 の 学 習 支 援 に関 連 す る 実 態 分 析 を 基 盤 と し て 学習 動 機 づ け の 必 要 性 及 び 重 要性 を 強 調 す る ため に 、 第 3 章 「 学 習 支 援 に 関 す る実 態 分 析 」 で は 4 つ の 調 査 を行 っ た 。 第 1 は学 習 動 機 に 関 す る 実 態 分 析 、 第 2は 学 習 動 機 と 学 習 方 法 の 実 態分 析 、 第 3 は 学習 動 機 と 自 己 効 力 感 の 実 態 分 析 、第 4 は 学 習 方 法 と 自 己 効 力感 の 実 態 分 析 で ある 。
- 注 - ( 序 論)
1)湯 舟 貞 子 、貞 岡 美伸「 看 護 学 臨 地 実 習 に お け る 指 導 者・教 員 及 び 学 生 の 体 験 に つ い て の 調 査 研 究」(『新 見 公 立 短 期 大 学 紀 要 』 第 20 巻 、1999 年 )53-6 頁 。
2) 片 岡 徳 雄 『 教 職 科 学 講 座 第 4 巻 社 会 教 育 学』( 福 村 出 版 、2001 年 )110 頁 。
3) 越 智 貢 『 教 育 と 倫 理』( ナ カ ニ シ ヤ 出版 、 2008 年) 23-24 頁 。 4) 齊 藤 孝 『 若 者 の 取 扱 説 明書 』( P H P新 書 、2013 年 )13-16 頁 。
5) 保 村 譲 一 他 「 教 育 水 準 と 卒 前 ・ 卒 後教 育 」(『 理 学 療 法 学 』 第 32 巻 第 1 号 、 2005 年 ) 21-25 頁 。
6) 公 益 財 団 法 人 日 本 理 学 療 法 士 協 会 『臨 床 実 習 教 育 の 手引 き 第 5 版』( 日 本 理 学 療 法 士 協 会 、2007 年 )15 頁 。
7) 内 閣 府 「 平 成 23 年 度 子 ど も ・ 若 者 の状 況 及 び 子 ど も ・若 者 育 成 支 援 施 策 の 実 施 状 況 ( 平 成 24 年 版 子 ど も ・ 若 者白 書 )」14 頁 。
8) John Dewey,
The School and Society
,revised edition(Chicago,1915) . 宮 原 誠 一 訳 『 学 校 と 社会 』( 岩 波 書店 、 1957 年) 31 頁。9) 教 師 養 成 研 究 会 『 教 育 原理 十 訂 版 教 育 の 目 的 ・ 方 法 ・制 度 』( 学 芸 図書 株 式 会 社 、 2009 年 )169-170 頁 。
10) 津 田 彰 『シ リ ー ズ 医 療の 行 動 科 学 Ⅱ 医 療 行 動 学 の ため の カ レ ン ト ・ ト ピ ッ ク ス』( 北 大 路 書 房 、2002 年 ) 116-117 頁 。
11)千 住 秀明 他『 理 学療 法 学 概 論 第 4 版 』( 神 陵 文 庫、2013 年)105-109 頁 。
第 1 章 理 学療 法 と 理 学 療 法 士 及 び 理 学療 法 士 教 育 の 現 況
第 1 節 理学 療 法 の 概 念 と 理 学 療 法 士の 法 的 規 定
1 . 理 学 療 法 の 概 念
千 住 ら は 「 理学 療 法 の 概 念 」 を 、 理 学 療法 士 の 法 的 規 定 と障 害 学 的 、 人 間 学 的 観 点 に お け る 理 学 療 法 及 び 理 学 療 法 士 の 独 自 性 を 踏 ま え た 上 で 、
「 リ ハ ビ リ テー シ ョ ン 医 学 は 運 動 障 害 及び そ の 関 連 諸 障 害を 対 象 と し 、 そ の 基 盤 は 『 障 害 を 知 る 』 こ と で あ り 、『 障 害 の 医 学 』 で あ る 。 理 学 療 法 そ し て 理 学 療 法士 は 、 狭 義 に は 損 傷 や 障 害の 回 復 、 改 善 を 図る 治 療 手 段 で あ り 、 広 義 に考 え れ ば 損 傷 や 障 害 を も つ 患者 が 可 能 な 限 り 人間 ら し く 生 き る 権 利 を 回 復 す る 援 助 で あ る た め 、『 障 害 の 医 学 』 の 中 で 欠 く こ と の で き な い 役 割 を 担 っ てい る 」1 )と し 、 その 上 で 「 そ の 役 割 を 果 た すた め に は 、 臨 床 、 教 育 、 研究 を 含 め た 総 合 的 水 準 を 高め る こ と が 求 め られ 、 さ ら に 、 人 間 と し て の 倫理 観 を も と に 社 会 の 中 で 特定 の 役 割 を 担 い、 特 定 の 状 況 に お け る 目 的 意 識を 求 め ら れ る 。 そ し て 、 その 上 で 専 門 家 で ある こ と を 主 張 す る な ら ば 、特 定 の 分 野 に 関 し た 問 題 解 決能 力 レ ベ ル が 信 頼で き る も の で な け れ ば な ら ない 」2 )と 提 言し て い る 。
現 在 、 す べ ての 理 学 療 法 士 に 臨 床 推 論 (clinical reasoning) の 向 上 が 期 待 さ れ て いる 。 こ の よ う な 「 障 害 学 」的 観 点 の 重 要 性 は十 分 理 解 で き る が 、 具 体 的 、実 践 的 な 「 人 間 学 」 的 観 点で の 論 述 が 少 な い。「 障 害 を 知る 」 こ と は 重 要 な要 素 で あ る こ と は 論 を 俟 たな い が 、 そ れ が 全て 「 対 象 者 ( 患 者 ) を 知 る 」こ と に 繋 が る か は 疑 問 で ある 。 特 に 現 状 の 、理 学 療 法 及 び 理 学 療 法 士 の 世界 で は 、 対 象 者 ( 患 者 ) の精 神 心 理 面 よ り 身体 機 能 面 を 重 要 視 す る 傾 向 にあ る 。
2 . 理 学 療 法 士 の 法 的 規定
1965 年 ( 昭 和 40 年 ) 6 月 29 日 に 制 定 、 公 布 さ れ た 「 理 学療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 法 」 の 第 2 条 で は 、「 理 学 療 法 と は 身 体 に 障 害 の あ る 者 に 対 し 、
主 と し て そ の基 本 的 動 作 能 力 の 回 復 を 図る た め 、 治 療 体操 そ の 他 の 運 動 を 行 な わ せ 、 及び 電 気 刺 激 、 マ ッ サ ー ジ 、温 熱 そ の 他 の 物 理的 手 段 を 加 え る こ と を い い 、理 学 療 法 士 は 、 厚 生 労 働 大臣 の 免 許 を 受 け て理 学 療 法 士 の 名 称 を 用 い て 、 医師 の 指 示 の 下 に 、 理 学 療 法 を 行 な う こ と を 業と す る 者 」3 ) と 規 定 さ れ てい る 。 理 学 療 法 は 、 疾 病 や障 害 等 に よ り 、 人間 ら し い 生 活 を 営 む 権 利 を 喪 失 し た 対 象 者 ( 患 者 ) に 対 し て 、「 人 間 ら し い 生 活 の 確 保 」、
す な わ ち 「 全人 間 的 復 権 」 を 目 指 し た 「リ ハ ビ リ テ ー シ ョン 」 の 一 翼 を 担 う 分 野 で あ る 。 理 学 療 法 の 対 象 が 「 身 体 に 障 害 の あ る 者 」、 目 的 が 「 そ の 対 象 者 の 基 本 的 動 作 能 力 の 回 復 」、 手 段 が 「 治 療 体 操 そ の 他 の 運 動 、 電 気 刺 激 、 マ ッ サー ジ 、 温 熱 そ の 他 の 物 理 的手 段 」 で あ り 、 対象 、 目 的 、 手 段 の 3 点 に お いて 、 こ の 定 義 を 満 た さ な い行 為 は 法 的 に 理 学療 法 と は い え な い 4)。 こ れは 理 学 療 法 士 の 身 分 と 制 度 が、 国 家 の 法 体 系 のも と に 規 定 さ れ て い る た め であ る 。 し か し な が ら 、 理 学療 法 の 定 義 の 中 に「 身 体 に 障 害 が あ る 者 」 に 限定 さ れ 、 い わ ゆ る 健 常 者 に対 す る 障 害 予 防 的観 点 が 含 ま れ て い な い こ と は、 今 後 の 理 学 療 法 士 の 将 来を 語 る 上 で 議 論 の対 象 に な る 。 理 学 療 法 の法 体 系 を 基 盤 と し て 、 解 釈を 広 げ か つ 深 い もの と す る 意 味 で 、 学 術 及 び 職 能団 体 で あ る 日 本 理 学 療 法 士協 会 (1966 年 - 昭 和 41 年 設 立 、 1972 年 - 昭 和 47 年 法 人 化 )は、理 学 療 法 及 び 理 学 療 法 士 につ い て 、「理 学 療 法 と は 病 気、 け が 、 高 齢 、 障 害 等 に よっ て 運 動 機 能 が 低下 し た 状 態 に あ る 人 々 に 対 し、 運 動 機 能 の 維 持 ・ 改 善 を目 的 に 運 動 、 温 熱、 電 気 、 水 、 光 線 等 の 物 理 的 手 段 を 用 い て 行 わ れ る 治 療 法 」5 )で あ り 、「 理 学 療 法 士
(Physical Therapist: P T ) は 、 ケ ガや 病 気 等 で 身 体 に障 害 の あ る 人 や 障 害 の 発 生 が予 測 さ れ る 人 に 対 し て 、基 本 動 作 能 力( 座る 、立 つ 、歩 く 等)
の 回 復 や 維 持、 及 び 障 害 の 悪 化 の 予 防 を目 的 に 、 運 動 療 法や 物 理 療 法 ( 温 熱 、 電 気 等 の物 理 的 手 段 を 治 療 目 的 に 利用 す る も の ) 等 を用 い て 、 自 立 し た 日 常 生 活 が 送 れ る よ う 支 援 す る 医 学 的 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の 専 門 職 で あ る 。 治 療 や支 援 の 内 容 に つ い て は 、 理学 療 法 士 が 患 者 ひと り ひ と り に つ い て 医 学 的 ・社 会 的 視 点 か ら 身 体 能 力 や 生 活 環 境 等 を 十 分 に 評 価 し 、 そ れ
ぞ れ の 目 標 に向 け て 適 切 な プ ロ グ ラ ム を作 成 す る 」6)と 説 明 し て い る 。 理 学 療 法 は 、 図 1 - 1 に 示 し て い る よ う に 、「 運 動 療 法 」、「 物 理 療 法 」、
「 日 常 生 活 動作 練 習 」 の 3 大 項 目 か ら 構成 さ れ る 。 そ の 中で 「 運 動 療 法 」 が 中 核 と な る。
「 運 動 療 法 」 は 、 身 体 運 動 を 治 療 に 適 用 す る 手 段 で あ り 、「 関 節 可 動 域 運 動」、「伸 張 運 動 」、「 筋 力 増 強 運動 」、「 持 久 力 増 強 運 動」、「 協 調 性 運 動」、
「 歩 行 練 習」、「 体 重 負 荷 練 習」、「 神 経 筋再 教 育」、「 全 身 調整 運 動 」、「 呼 吸 練 習 」 等 で 構成 さ れ る 。 対 象 者 ( 患 者 )の 個 人 的 な 心 身 機能 及 び 罹 患 し た 疾 患 の 内 容 等で そ の 各 種 方 法 の 内 容 が 変化 す る 。
「 物 理 療 法」 は 、「 水 治療 法 ( 水 、 湯 の 特 性 を 利 用)」、「 温 熱 ・ 寒 冷 療法
( 温 熱 療 法:温 め る、寒 冷 療 法:冷 や す )」、「 電 気・光 線 療 法( 電 気 療 法 : 電 気 刺 激 、光 線療 法:赤 外 線 、紫 外 線 、レ ー ザ ー 光 線 の 特 性を 使 用 )」、「 牽 引 療 法 ( 頸 部 、 腰 部 を 牽 引 す る )」 が 含 ま れ 、 そ れ ぞ れ の 治 療 媒 体 に 関 し て の 人 体 へ の影 響 ( 生 理 学 的 作 用 ) を 熟考 し な が ら 適 応 させ る 。 こ の 中 で
「 マ ッ サ ー ジ ( ス ポ ー ツ マ ッ サ ー ジ 含 )」 も 物 理 療 法 の 構 成 要 素 に 含 ま れ る 。
「 日 常 生 活動 作 練 習 」 は 、 疾 病 等 の 影響 で 身 の 回 り の 動作 の 困 難 と な っ た 対 象 者 に 対 し て 導 入 さ れ る 。「 日 常 生 活 動 作 練 習 」 に は 対 象 者 の 在 宅 生 活 の 充 実 と い う 観 点 に て 生 活 器 具 や 住 宅 環 境 の 整 備 も 重 要 な 要 素 と し て 含 ま れ る 。
こ の 「 運 動療 法 」、「 物 理 療 法」、「 日 常生 活 動 作 練 習 」 の3 大 項 目 は 個 々 に 独 立 し て いる わ け で は な く 、 相 互 作 用的 に 位 置 付 け ら れ、 必 要 に 応 じ て 柔 軟 的 に 発 展的 に 実 施 さ れ る 。 以 上 の よう な 3 大 項 目 で 構成 さ れ る 理 学 療 法 の 内 容 に て、 医 学 的 ( 学 術 的 ) 及 び 学際 的 観 点 に お け る理 学 療 法 及 び 理 学 療 法 士 の 具体 性 と 独 自 性 を 認 識 す る こと が で き る 。
日 本 の 理 学 療 法 士 の 法体 系 の 枠 組 み と し て 、 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療法 士 法 の 中 で、「 理 学 療 法 士又 は 作 業 療 法 士 は 保 健 師 助 産 師 看 護師 法 ( 昭 和 23 年 法 律 第 203 号 ) 第 31 条第 1 項 及 び 第 32 条 の 規 定 に か か わ ら ず 、 診療 の 補 助 と し て 理 学 療 法 又 は 作 業 療 法 を 行 な う こ と を 業 と す る こ と が で き る 。 理 学 療 法士 が 、 病 院 若 し く は 診 療 所に お い て 、 又 は 医師 の 具 体 的 な 指 示 を 受 け て 、理 学 療 法 と し て 行 な う マ ッサ ー ジ に つ い て は、 あ ん 摩 マ ッ サ ー ジ 指 圧 師 、は り 師 、 き ゅ う 師 等 に 関 する 法 律 ( 昭 和 22 年 法 律 第 217 号 ) 第 一 条 の 規 定は 適 用 し な い 。 前 2 項 の 規定 は 、 第 7 条 第 1項 の 規 定 に よ り 理 学 療 法 士 又 は 作 業 療 法 士 の 名 称 の 使 用 の 停 止 を 命 ぜ ら れ て い る 者 に つ い て は、適 用 し な い」7 )と 定め 、こ の 中 で守 秘 義 務 と し て は、「 理 学 療 法 士 又 は 作 業 療 法士 は 、 正 当 な 理 由 が あ る 場合 を 除 き 、 そ の 業務 上 知 り 得 た 人 の 秘 密 を 他 に漏 ら し て は な ら な い 。 理 学療 法 士 又 は 作 業 療法 士 で な く な っ た 後 に お い て も同 様 と す る 」8 )とし 、 さ ら に 「 名 称 の 使 用 制限 と し て 、 理 学 療 法 士 で ない 者 は 、 理 学 療 法 士 と い う名 称 又 は 機 能 療 法士 そ の 他 、 理 学 療 法 士 に ま ぎら わ し い 名 称 を 使 用 し て はな ら な い 」9)と 定 め て い る 。
運動療法 運動療法
日常生活動作 練習 日常生活動作
練習
水治療法 水治療法
温熱・寒冷療法 温熱・寒冷療法 電気・光線療法 電気・光線療法
マッサージ マッサージ
物理療法 牽引療法
牽引療法
生活器具整備 住宅環境整備
図 1-1 理学療法の構成
千住秀明『理学療法学概論 第4版』(神陵文庫,2013年)72頁 参照,一部改変
一 般 的 に 「 身 分 」 は 社会 全 体 に お け る 位 置 を 意 味 し 、 そ の 役 割 に 応じ て 権 利 や 義 務 を 法 令 に よ っ て 規 定 し 、「 制 度 」 は 社 会 的 に 定 め ら れ て い る 仕 組 み や 決 ま りを 意 味 し そ の 内 容 か ら 逸 脱し た 行 為 は 罰 せ られ る 。 つ ま り こ れ は 、 理 学 療法 士 に 関 し て 身 分 は 保 障 され て い る も の の 、制 度 の 枠 組 み の 中 で 責 任 が 重い こ と を 意 味 す る 。 つ ま り、 理 学 療 法 士 及 び作 業 療 法 士 法 に よ る 「 法 体 系 」、 日 本 理 学 療 法 士 協 会 に よ る 「 医 学 的 ( 学 術 的 ) 及 び 学 際 的 観 点 に お ける 理 学 療 法 及 び 理 学 療 法 士の 具 体 性 と 独 自 性」 に よ っ て 、 現 在 の 理 学 療 法及 び 理 学 療 法 士 の 基 盤 が でき あ が っ た 。
日 本 の 理 学 療 法士 の 具 体 的 な 業 務 形 態 に 関 し て い え ば 、 現 在の 日 本 の 理 学 療 法 士 に は、 開 業 権 や 医 師 の 診 察 前 に評 価 し た り 治 療 する こ と ( direct access)は認 め ら れ て い な い 。ち な みに 、2006 年 現在 、個 人 ク リ ニ ッ ク を 開 業 で き る 国 は 世 界 理 学 療 法 連 盟 ( World Confederation for Physical Therapy;W CP T )加 盟 国 92 ヵ 国 中 79 ヵ 国( 85.9%)で あ り 、direct access が 可 能 な 国 は 38 ヵ 国 (41.3% ) で あ る 1 0)。
つ ま り、「 医 師 の 指 示 の 下に 、理 学 療 法 を 行 な う 」に 準 じて 業 務 を 行 う こ と を 法 的 義 務と し て 、 開 業 権 や direct access を 認 め て いな い の で あ る。
こ の 内 容 に 関 し て 、 法 律 上 の 、「 名 称 独 占 」 と 「 業 務 独 占 」 の 違 い に 基 本 的 理 由 が あ る 。「 名 称 独 占 」 は 資 格 を 有 し な い も の が 当 該 資 格 の 名 称 ま た は こ れ と 紛 ら わ し い 名 称 を 使 用 す る こ と を 禁 止 す る こ と で 、「 業 務 独 占 」 は 特 定 の 資 格 を 有 す る も の の み に 一 定 の 領 域 の 業 務 を 行 う こ と が 許 さ れ る こ と で あ る。 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法士 は 「 名 称 独 占 」で あ り 、 柔 道 整 復 師 に 代 表 され る よ う に 、 開 業 が 可 能 な職 種 は 「 業 務 独 占」 で あ る 。 つ ま り 、 法 体 系 の観 点 か ら は 、 こ の よ う に 理学 療 法 及 び 理 学 療法 士 の 業 務 上 の 具 体 性 と 独 自性 を 確 認 で き る 。
し か し な が ら 、direct access に 関 す る 事 項 に 関 し て は 、 医 療 ・ 福 祉の 臨 床 現 場 に おい て 理 学 療 法 業 務 の 法 体 系か ら 逸 脱 し た 事 例が 存 在 す る 。 医 療 現 場 に お け る 医 師 の 業 務 の 一 つ で あ る 「 障 害 評 価 」( 身 体 障 害 者 手 帳 申 請 に 関 す る 障害 評 価 等 )に 関 し て、医 師 が 理 学 療 法 士 に 委 託し た 場 合 に は 、
理 学 療 法 士 は独 自 の 知 識 ・ 技 術 を 基 盤 とし た 評 価 を 実 施 し、 そ の 評 価 内 容 を 基 に 医 師 が診 断 、 業 務 を 進 め る こ と があ る 。 一 つ の 事 例を 挙 げ れ ば 、 理 学 療 法 士 に 対し て 、 理 学 療 法 業 務 の 最 中に 「 障 害 評 価 」 を優 先 的 に 実 施 す る よ う に 命 令 し た 医 師 と 討 議 し た 場 合 で あ る 。 そ の 討 議 の 結 果 、「 医 師 の 指 示 の 下 に 」と い う 内 容 を 当 該 医 師 が 履き 違 え 、 業 務 遂 行上 や み く も に 命 令 し て い た 現実 を 確 認 し た 事 例 で あ る 11)。ま た 、介 護 領 域 にお い て 、理 学 療 法 を 展 開 する 際 、 医 療 場 面 と 同 じ よ うに 医 師 の 指 示 が 必須 事 項 と な る の で あ る が 、 その 指 示 が 十 分 で は な く 介 護支 援 専 門 員 ( ケ アマ ネ ー ジ ャ ー ) を 通 し て 、 主治 医 に 障 害 評 価 を 再 依 頼 する 場 面 も 多 く 存 在し て い る 。
第 2 節 理学 療 法 業 務 の 現 況
1 . 理 学 療 法 の ね ら いと 対 象
理 学 療 法 業 務 が展 開 さ れ る 際 の ね ら い と 対 象 に つ い て 、 日 本理 学 療 法 士 協 会 は 、 理 学療 法 業 務 の 多 義 性 、 広 い 職域 、 そ し て そ れ ぞれ の 領 域 で の 可 能 性 を 、 現 況 を 踏 ま え た 上 で 、「 理 学 療 法 の 直 接 的 な 目 的 は 運 動 機 能 の 回 復 に あ る が 、 日 常 生 活 活 動 ( Activities of daily living:A D L ) の 改 善 を 図 り 、 最終 的 に は 生 活 の 質 (Quality of life:Q O L ) の 向 上 を 目 指 す こ と が 目 標と な る 。 病 気 、 け が 、 高 齢等 何 ら か の 原 因 で、 動 作 が 不 自 由 に な る と 、 生活 の 中 で 不 便 が 生 じ る 。 日常 生 活 活 動 ( A DL ) の 改 善 は 生 活 の 質 ( Q OL ) 向 上 の 大 切 な 要 素 に 繋が る 。 理 学 療 法 では 病 気 、 障 害 が あ っ て も 住 み慣 れ た 街 で 、 自 分 ら し く 暮ら し た い と い う ひと り ひ と り の 思 い を 大 切 に する 」1 2)と 説 明 して い る 。
こ の 中 で「 生活 の 質( Q O L)」の「 life」は「 人 生 」とも 解 釈 さ れ 、今 後 の 対 象 者 (患 者 ) の 人 生 に も 影 響 す る。 理 学 療 法 の 対 象は 主 に 運 動 機 能 が 低 下 し た 者 で あ る が 、 そ う な っ た 原 因 を 問 わ ず ( 区 別 せ ず )、 病 気 、 怪 我 は も と よ り、 高 齢 や 手 術 に よ り 体 力 が低 下 し た 者 等 が 含ま れ る 。 受 け 入
れ に 関 し て は原 因 を 問 わ な い が 、 理 学 療法 を 展 開 す る に あた っ て は 、 発 症 要 因 や 受 傷 機転 等 の 原 因 追 求 は 必 須 と なる 。
最 近 で は 、 理 学療 法 は 運 動 機 能 低 下 が 予 想 さ れ る 高 齢 者 の 予防 対 策 、 メ タ ボ リ ッ ク シン ド ロ ー ム の 予 防 、 ス ポ ーツ 分 野 で の パ フ ォー マ ン ス 向 上 等 、 障 害 を 持 つ 人に 限 ら ず 健 康 な 人 々 に も 広が り つ つ あ る 。 また 、 運 動 ・ 動 作 の 専 門 性 を 生か し 、 福 祉 用 具 ( 障 害 者 の生 活 、 学 習 、 就 労と 、 高 齢 者 、 傷 病 者 の 生 活 や介 護 の 支 援 の た め の 用 具 、機 器 ) の 適 用 相 談、 住 宅 改 修 ( 家 庭 で 自 立 し た生 活 を 続 け る た め 、 自 宅 に手 す り を 設 置 し たり 段 差 を 解 消 す る 等 ) の 相 談 等 も 行 う 。 今 後 、 さ ら に 理 学 療 法 領 域 で の 可 能 性 は 高 ま り 、 か つ 範 囲 が 広が る こ と が 予 想 さ れ る 。 しか し な が ら 、 理 学療 法 及 び 理 学 療 法 士 の 対 象 とす る 者 が 「 身 体 に 障 害 が ある 者 」 に 限 定 さ れて い る と い う 法 的 規 制 が 理 学療 法 領 域 の 発 展 の 妨 げ と な る 危 険 性 も 同 時 に 含 ま れ て い る 。
2 . 臨 床 現 場 に お け る 理学 療 法 士 の 現 況
理 学 療 法 の 目 指す も の 及 び 理 学 療 法 の 対 象 に 対 し て 、 臨 床 現場 に お い て 理 学 療 法 士 は医 療 分 野 、 健 康 づ く り 施 策、 福 祉 施 策 そ れ ぞれ に お け る 役 割 を 担 っ て い る。
1965 年 ( 昭 和 40 年 ) 理 学 療 法 士 及 び作 業 療 法 士 法 制 定公 布 後 、 約 半 世 紀 に わ た り 、多 く の 理 学 療 法 士 が 、 病 院そ の 他 の 施 設 に おい て 、 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン チー ム の 一 員 と し て 理 学 療 法を 実 施 し て き た。 そ の 間 に 対 象 と な る 疾 患 や 介 入 す る 領 域 が 拡 大 、 多 様 化 し 、 対 象 者 ( 患 者 ) は も と よ り 、 地 域 や 社 会 に 対 し て も 責 任 を 果 た し 、 そ の 結 果 、「 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 」 が「 理 学 療 法 」とイ メ ー ジ さ れ る ほ ど 社 会 的 に 認 知 さ れ て き た 13)。し か し
「 リ ハ ビ リ テー シ ョ ン 」 が 「 理 学 療 法 」と イ メ ー ジ さ れ るこ と は 必 ず し も 良 い 面 だ け では な い 。 包 括 概 念 で あ る 「リ ハ ビ リ テ ー シ ョン 」 を 構 成 す る す べ て の 領 域、 職 種 の 位 置 付 け と 協 業 の重 要 性 を 、 特 に 理学 療 法 士 は 自 覚 し な け れ ば なら な い 。 対 象 者 ( 患 者 ) の疾 患 、 症 状 や 個 人因 子 、 環 境 因 子
の 多 様 化 に 伴い 、 そ れ ぞ れ の 領 域 の 専 門性 の 向 上 と 、 か つて 分 業 的 関 係 で あ っ た 作 業 療 法 士 や 言 語 聴 覚 士 等 の 理 学 療 法 隣 接 領 域 職 種 と の 協 業 的 考 え 方 が 重 要 とな る 。 ま た 、 医 療 施 設 と 福祉 施 設 に 関 し て 、そ れ ぞ れ の 領 域 で の 業 務 内 容に 違 い が あ る も の の 、 対 象は 身 体 に 障 害 の ある 者 で あ り 、 そ れ ぞ れ の 領 域に 沿 っ た 専 門 性 を 如 何 な く発 揮 す る た め に は、 領 域 間 の 連 携 が 必 須 で あ る。
理 学 療 法 士 が 業務 実 践 す る 分 野 と し て は 、 医 療 施 設 、 福 祉 施設 ( 中 間 施 設 を 含 む )、 保 健 施 設 の 他 に 、 教 育 ・ 研 究 施 設 、 行 政 関 係 施 設 等 が 存 在 す る 。施 設 別の 日 本 理 学 療 法 士 協 会 会 員数 を み る と 、2009 年(平 成 21 年 )4 月 の 時 点 で は、 医 療 施 設 は 39,523 名 、 福 祉 施 設 ( 中 間 施 設も 含 む ) 6,182 名 、 保 健 施 設 148 名 、 教 育 ・ 研 究 施 設 2,048 名 、 行 政 関 係施 設 364 名 、 そ の 他 5,486 名で あ る が 14)、2013 年( 平 成 25 年 )6 月 現在 、医 療 施 設 は 57,862 名 、福 祉 施設( 中 間 施 設 も 含 む )9,445 名 、保 健 施 設 35 名 、教 育・研究 施 設 2,326 名 、行政 関 係 施 設 379 名 、そ の 他 15,080 名 15)と な っ て い る 。そ れ ぞ れ の 分 野 で の 業 務 の 質 が 高 ま っ て い る と 同 時 に 理 学 療 法 士 の 職 域 が 拡 大 し て い る。
日 本 理 学 療法 士 協 会 員 は 表 1 - 1 に 示し た よ う に 、 全体 的 な 会 員 数 の 増 加 に 伴 い、「 医 療 施 設」、「 福 祉 施 設( 中 間施 設 含)」、「 教 育・研 究施 設 」、「 行 政 関 係 施 設 」に 従 事 す る 会 員 数 に 関 し ては 増 加 し て い る が、 一 方 で 「 保 健 施 設」は 減 少 し て い る。こ れ は、2009 年 4 月 時 点 で「 保 健 施 設」の 中 に 位 置 付 け ら れ てい た 、「 企 業」、「 そ の 他 の 健 康 産 業 」 が 、2013 年 6 月 で はそ の 枠 組 み か ら 外 れ 「 そ の 他 」 の 中 に 含 ま れ 、「 ス ポ ー ツ 関 係 施 設 」、「 フ ィ ッ ト ネ ス 施 設」 の み に 限 定 さ れ た た め であ る (2009 年 4 月 保 健 施 設 148 名 中 、 ス ポ ーツ 関 係 施 設 19 名、 フ ィ ッ ト ネ ス 施 設 12 名 、 企 業 86 名 、 そ の 他 の 健 康 産業 31 名 2013 年 6 月 保 健施 設 35 名 中 、 スポ ー ツ 関 係 施 設 29 名 、 フ ィ ッ ト ネ ス 施 設6 名 )。 ス ポ ーツ 関 係 施 設 と フ ィッ ト ネ ス 施 設 の 合 計 の 会 員 数は 若 干 増 加 し て い る 。
健 康 づ く り 施 策と 理 学 療 法 に 関 し て 、 健 康 づ く り は 健 康 を 保つ こ と が 保 健 の 目 的 で あり 、ヘ ル ス プ ロモ ー シ ョ ン の 世 界 的 な 流 れ の 中で 、2000 年( 平 成 12 年 )に、わ が 国 の 健 康 づ く り運 動 で あ る「健 康 日 本 21」が 厚 生 省( 現 厚 生 労 働 省 )に よ り 始 め ら れ た が 、 そ の中 で 健 康 増 進 と して の 運 動 療 法 が 見 直 さ れ 、 その 環 境 下 で 健 康 運 動 士 の 認定 資 格 を 取 得 す る等 し て 、 直 接 指 導 す る 理 学 療法 士 も 存 在 す る 16 )。また 、福 祉 施 策 と 理 学 療法 に 関 し て 、障 害 者 の 福 祉 施策 は「 在 宅 福 祉 対 策」と「 福 祉 施 設 利 用 対 策」に 分 け ら れ 17 )、 理 学 療 法 士 は両 対 策 に 関 わ っ て い る 。
理 学 療 法 の 将 来 展 望 の 観 点 に て 奈 良 は 、「 理 学 療 法 の 開 拓 職 域 」 と し て
「 精 神 領 域 の理 学 療 法 」、「 産 業 理 学 療 法」、「 被 災 地 の 理 学療 法 支 援 」、「 動 物 の 理 学 療 法 」を 挙 げ て い る 1 8)。こ のよ う に 視 野 を 広 げ 、必要 性 を 確 認 し た 上 で 、 理学 療 法 士 の 職 域 が 拡 大 す る こと は 理 学 療 法 界 の発 展 に も 繋 が り 、 好 ま し い こ とで あ る 。 そ の た め に も 次 節で 述 べ る よ う に 、理 学 療 法 士 教 育 の 現 状 を 分 析し つ つ 、 よ り 充 実 し た そ の在 り 方 を 追 求 し てい か ね ば な ら な い 。
2009 年4月 2013 年6月 医療施設
福祉施設(中間施設含)
保健施設 教育・研究施設 行政関係施設 その他
39,523 6,182 148 2,048 364 5,486
57,862 9,445 35 2,326 379 15,080 (73.5 %)
(11.5 %) (0.3 %) (3.8 %) (0.7 %) (10.2 %)
(68.0 %) (11.1 %) (0.04 %) (2.7 %) (0.5 %) (17.7 %)
計 53,751 85,127
表 1-1 日本理学療法士協会員の会員数
2009年4月のデータは 千住秀明 高橋精一郎他『理学療法学概論 第3版』(神陵文庫,2010年)111頁,
2013年6月のデータは 公益財団法人 日本理学療法士協会『日本理学療法士協会について 資料・統計』平成25年12月2日 http://www.japanpt.or.jp/about/about_jpta/05_index/ 参照
第 3 節 理学 療 法 士 教 育 の 現 況
1 . 理 学 療 法 士 養 成 課程 の 概 要 と 課 題
理 学 療 法 士 教育 は 、 養 成 課 程 に お け る 学内 教 育 と 臨 床 実 習教 育 、 養 成 課 程 修 了 後 の 卒後 教 育 で 構 成 さ れ る 。 養 成課 程 を 設 置 す る 養成 校 は 制 度 的 に は 大 学 、 短 期大 学 、 専 門 学 校 ( 専 修 学 校専 門 課 程 、 3 年 制、 4 年 制 、 昼 間 部 ・ 夜 間 部 )で あ り 、 い ず れ も 法 的 に は「 学 校 教 育 法 」 及び 「 理 学 療 法 士 法 及 び 作 業 療法 士 法 」 を 基 盤 と し て い る。
ま ず 、 入 学 資格 者 に 関 し て は 、 各 養 成 校共 通 に 「 学 校 教 育法 」 に て 規 定 さ れ て い る よ う に 、 高 等 学 校 卒 業 者 ( 高 等 学 校 卒 業 程 度 認 定 試 験 合 格 者 含)、 3 年 制 の 高 等 専 修 学 校 卒 業 者と な り 19)、 専 門 学 校 修 了者 に 関 し て は 大 学 へ の 編 入学 可 能 と な っ て い る 20)。実 際 、各 養 成 課 程 共通 に 高 等 学 校 卒 業 者 が 殆 ど であ る が 、 大 学 卒 業 者 、 社 会人 経 験 者 ( 高 卒 、大 卒 含 ) も 含 ま れ る 。 ま た 、実 業 高 等 学 校 ( 工 業 科 、 商業 科 、 農 業 科 、 福祉 科 等 ) か ら の 志 願 者 も 見 受け ら れ る 。
次 に 、 養 成課 程 に お け る カ リ キ ュ ラ ム( 教 育 課 程 ) に 関し て は 「 理 学 療 法 士 法 及 び 作業 療 法 士 法 」 第 14 条 及 び附 則 第 6 項 の 規 定に 基 づ き 制 定 さ れ た「 理 学 療 法 士作 業 療 法 士 学 校 養 成 指 定 規 則 」21 )によ り 、基 礎 科 目 、専 門 基 礎 科 目 、 専 門 科 目 ( 臨 床 実 習 含 ) を 教 育 内 容 の 主 項 目 と し て 定 め ら れ て い る 。 理学 療 法 士 の 教 育 課 程 は 表 1- 2 に 示 し た よ うに 、 基 礎 分 野 は
「 科 学 的 思 考 の 基 礎 」、「 人 間 と 生 活 」、 専 門 基 礎 分 野 は 「 人 体 の 構 造 と 機 能 及 び 心 身 の 発 達 」、「 保 健 医 療 福 祉 と リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の 理 念 」、 専 門 分 野 は 「 基 礎理 学 療 法 学 」、「 理 学 療 法 評価 学 」、「 理 学 療 法 治 療 学」、「 地域 理 学 療 法 学」、「 臨 床 実 習 」 が 構 成 領 域 とし て 定 め ら れ て いる 。 こ の 構 成 領 域 を 基 に 、 各養 成 課 程 に て 授 業 科 目 を 作成 、 実 施 し て い る。
各 養 成 校 にお け る 教 育 目 的 に お い て 、専 門 学 校 は 「 臨 床の 理 学 療 法 で 即 戦 力 と な り え る 必 要 な 専 門 的 な 知 識 と 技 術 を 習 得 さ せ る 理 学 療 法 士 の 養 成 」 と し 、 これ に 対 し て 大 学 は 「 学 術 の中 心 と し て 、 広 く理 学 療 法 の 知 識 を 授 け る と とも に 、 深 く 専 門 の 理 学 療 法を 教 授 研 究 し 、 知的 、 道 徳 的 お よ び 応 用 的 能 力 を 展 開 さ せ る こ と が で き る 高 度 専 門 能 力 を 身 に つ け た 理 学 療 法 士 の 養 成 」と し て い る 2 2)。つ まり 、専 門 学 校 と 大 学 に関 し て 、そ の 置 か れ た 立 場 の違 い ( 学 術 の 中 心 的 役 割 、研 究 へ の 着 手 等 )は 少 々 あ る も の の 、「 医 療 ・ 保 健 ・ 福 祉 の 実 践 に ふ さ わ し い 理 学 療 法 士 と 成 る べ く 、 必 要 な 知 識、技 術 、及 び 倫理 を 習 得 し 、併 せ て科 学 的 思 考 能 力 と創 造 性 に 富 み 、 地 域 社 会 の 発展 に 貢 献 で き る 人 材 を 養 成す る こ と 」 と いう 内 容 は 共 通 な の で あ る 。
こ の 養 成 校に お け る 共 通 な 教 育 目 的 に関 し て 、 長 寿 ・高 齢 化 社 会 に お い て 、 人 間 中 心 、 対 象 者 ( 患 者 ) 中 心 の 医 療 、 福 祉 社 会 を 確 立 す る た め に 、 障 害 者 や 高 齢者 に 対 す る 理 学 療 法 サ ー ビス を 通 じ て 、 国 民の 保 健 ・ 福 祉 に
基礎分野
専門基礎分野
専門分野
合 計
教育内容 単位数 備 考
科学的思考の基盤 人間と生活
人体の構造と機能及び心身の発達 疾病と障害の成り立ち及び回復過程の促進 保健医療福祉とリハビリテーションの理念 基礎理学療法学
理学療法評価学 理学療法治療学 地域理学療法学 臨床実習
14
12 12 2 6 5 20
4 18
93
実習時間の3分の1以上は病院 又は診療所において行うこと。
表 1-2 理学療法士 教育課程
荘村明彦『医療六法 平成25年度版』(中央法規出版,2013年)1599頁 参照
寄 与 す る こ と の で き る 医 療 専 門 職 と し て の 理 学 療 法 士 を 養 成 す る こ と は 重 要 で あ り 、そ の 理 念 を 実 現 さ せ る た めに は 質 の 高 い 教 育内 容 と 、 よ り 充 実 し た 教 育 環境 が 不 可 欠 で あ る 23)。
理 学 療 法 士教 育 の 現 況 を み る と 、 養 成校 が 急 増 し 、 理 学療 法 士 の 医 療 ・ 保 健 ・ 福 祉 分野 の 量 的 補 充 も 十 分 に な され て い る に も か かわ ら ず 、 学 生 及 び 実 習 生 の 課題 も 多 く 、 養 成 校 及 び 臨 床実 習 施 設 に お い ては 質 の 高 い 教 育 内 容 ・ 充 実 し た教 育 環 境 が 整 っ て い る と は 言 え な い 2 4)。 具体 的 に い え ば 、 こ う し た 養 成課 程 の 下 で 、 学 内 教 育 に 関し て 、 学 生 の 理 学療 法 士 と し て の 適 性 と 人 間 力 の 低 下 、 養 成 校 の 教 育 理 念 と 教 育 現 場 で の 教 育 内 容 の 差 異 、 多 様 な 入 学 動機 と 職 業 観 を 持 つ 学 生 に 対す る 柔 軟 的 対 応 の欠 如 、 教 員 の 教 育 力 の 低 下 等、 学 生 、 養 成 校 及 び 教 員 とも に 様 々 な 課 題 が存 在 す る の で あ る 25 )。
ま た 、 臨 床実 習 教 育 に 関 し て は 、 実 習生 の 理 学 療 法 士 とし て の 適 性 と 人 間 力 の 低 下 と、 臨 床 実 習 指 導 者 と 教 員 との 間 に 存 在 す る 教育 に 関 す る 考 え 方 の 差 異 、 臨床 実 習 指 導 者 の 教 育 力 、 臨床 実 習 指 導 者 と 教員 の 連 携 の 希 薄 化 、 現 在 の医 療 情 勢 を 踏 ま え た 上 で の 臨床 実 習 教 育 の 多 様性 等 が 課 題 と な っ て い る 。
こ う し た 現況 に お い て 養 成 校 は 、 医 療・ 福 祉 の 臨 床 現 場と の 強 い 関 連 を 意 識 し な が ら、 そ の ニ ー ズ に 応 え る べ き教 育 的 方 向 性 が 大き く 問 わ れ て お り 、 そ の 教 育的 方 向 性 を 定 め る 際 の 主 役が 学 生 で あ る だ けに 、 養 成 校 、 臨 床 現 場 、 そし て 学 生 の 三 位 一 体 の 揺 ぎ 無い 教 育 シ ス テ ム を構 築 す る こ と が 不 可 欠 で あ る。 そ の た め に は 教 員 自 身 が「 何 の た め の 、 誰の た め の 教 育 な の か 」 を 強 く 自 覚 し 、 学 生 を 中 心 と し た 人 間 性 教 育 の 重 要 性 を 再 確 認 し 、 自 発 的 、 自 律的 な 学 習 姿 勢 の 促 進 を 前 提と し な が ら 、 理 学療 法 士 教 育 に 関 す る 学 習 動 機づ け の 向 上 、 学 習 方 法 の 改善 、 自 己 効 力 感 の向 上 を 目 標 に 教 育 に 臨 む こ とが 肝 要 と な る 。
一 方 、 卒 後教 育 に 関 し て は 、 こ の 教 育が 学 内 教 育 、 臨 床実 習 教 育 の 延 長 上 に あ る だ け に 、 学 内 教 育 と 臨 床 実 習 教 育 の 成 否 に 左 右 さ れ る こ と か ら 、
そ の 教 育 の 在 り 方 そ の も の か ら 理 学 療 法 士 と し て の 人 間 形 成 に ま で 大 き く 影 響 し て いる 。 先 ず は 、 学 内 教 育 及 び臨 床 実 習 教 育 に 対す る 教 育 内 容 ・ 教 育 環 境 を 再考 、 整 備 す る こ と が 急 務 とな る の で あ る 。
こ の 現 況 の中 で 、 学 内 教 育 及 び 臨 床 実習 教 育 に 共 通 す る課 題 で あ る 「 学 生 及 び 実 習 生の 理 学 療 法 士 と し て の 適 性と 人 間 力 の 低 下」 は 過 剰 に 論 じ ら れ 、 そ の 上 、学 生 、 実 習 生 の 立 場 が 過 小評 価 さ れ て い る 。以 下 に 論 じ て い く よ う に 、 学内 教 育 及 び 臨 床 実 習 教 育 の主 体 は 学 生 、 実 習生 で あ る こ と を 再 認 識 し 、「 理 学 療 法 及 び 理 学 療 法 士 の 価 値 観 」 の 教 示 及 び 人 間 力 向 上 を 前 提 と す る 「育 て る 」 観 点 が 不 可 欠 と なる の で あ る 。
2 . 理 学 療 法 士 国 家 試 験の 現 況
学 生 は 養 成 校 にお い て 、 国 家 試 験 に 合 格 す る こ と が 重 要 な 目標 と な る 。 し か し な が ら、 国 家 試 験 合 格 は あ く ま でも 通 過 点 で あ り 、そ の 後 、 臨 床 場 面 で の 個 々 の 理 学 療 法 士 と し て の 在 り 方 自 体 の 真 価 が 問 わ れ る こ と は い う ま で も な い。 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法士 法 で は 国 家 試 験の 受 験 要 項 に お い て 国 家 試 験 対 象 者 を 、「 文 部 科 学 省 令 ・ 厚 生 労 働 省 令 で 定 め る 基 準 に 適 合 す る も の とし て 、 文 部 科 学 大 臣 が 指 定し た 学 校 又 は 厚 生労 働 大 臣 が 指 定 し た 理 学 療 法士 養 成 施 設 に お い て 、 三 年以 上 理 学 療 法 士 とし て 必 要 な 知 識 及 び 技 能 を 修得 し た も の 、 外 国 の 理 学 療法 に 関 す る 学 校 もし く は 養 成 施 設 を 卒 業 し 、 又は 外 国 で 理 学 療 法 士 の 免 許に 相 当 す る 免 許 を受 け た 者 で 、 厚 生 労 働 大 臣 が 掲 げ る 者 と 同 等 以 上 の 知 識 及 び 技 能 を 有 す る と 認 定 さ れ た も の 」26)と 規 定 し て い る 。
理 学 療 法 士 に なる た め に は 、 国 家 試 験 に 合 格 し 、 厚 生 労 働 大臣 の 免 許 を 受 け な け れ ばな ら な い 27)。そ の 養 成 校(大 学 、短 期 大 学 、専 門 学 校)は 全 国 に 点 在 し (2013 年 -平 成 25 年 8 月 12 日 現 在 、 学 校 総 数 249 校 、 定 員 13,500 名 28))、そ れ ぞ れ「 学 校 教 育 法 」の「 高 等 専 門 学 校 」や「 専 修 学 校」
規 定 及 び 「 理学 療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 法」 の 中 の 「 理 学 療法 士 作 業 療 法 士
学 校 養 成 施 設指 定 規 則 」29 )に基 づ い て 学 生 教 育 ・ 指 導 を 実施 し て い る 。 で は 、 実 際 の 教育 現 場 は ど の よ う な 現 状 な の だ ろ う か 。 各 養成 校 ( 特 に 専 門 学 校 ) は、 高 等 学 校 へ の 啓 発 訪 問 、オ ー プ ン キ ャ ン パス や ホ ー ム ペ ー ジ 、 リ ー フレ ッ ト 等 へ の 掲 示 等 に て 理 想高 く 崇 高 な 教 育 目標 を 掲 げ て い る の に も 関 わ らず 、 国 家 試 験 合 格 が 事 実 上の 学 内 目 標 に な って い る 雰 囲 気 が 否 め な い 。2008 年 (平 成 20 年)、2011 年 ( 平 成 23 年 )、2012 年( 平 成 24 年 ) の 国 家 試 験 問 題 の 難 易 度 上 昇 を 受 け て 、「 理 学 療 法 士 と し て 社 会 貢 献 す る こ と は 、国 家 試 験 合 格 が あ っ て の こと 。 ま ず は 国 家 試験 に 合 格 す る こ と が 重 要 」 とし 、 自 ず と 国 家 試 験 合 格 が学 内 の 教 育 目 標 とな り 、 国 家 試 験 受 験 者 、 在 校生 、 教 員 そ れ ぞ れ の 学 内 教育 に 対 す る 考 え 方に か な り の 混 乱 を 招 い て い る 現 状 が 存 在 す る の は 事 実 で あ る 。 つ ま り 、「 結 果 重 視 」、「 成 果 主 義 」 の 考え 方 で あ る 。 そ の 状 況 の 中に は 、 実 際 の 学 内教 育 目 標 と は 異 な る 「 理 想 的で 崇 高 な 教 育 目 標 」 を 提 示す る こ と で 養 成 校の 教 育 理 念 を ア ピ ー ル し 、 入学 生 を 集 め る と い っ た 経 営的 側 面 も 存 在 し 、い わ ば 、 そ の 教 育 理 念 に よ る「 学 生 集 め 」 の 色 彩 が 強 くな っ て い る 。 そ の経 営 的 側 面 を 重 視 す る 多 く の 養 成 校 が 目 標 に し て い る 国 家 試 験 合 格 は あ く ま で も 「 通 過 点 」 で あ り、 学 内 教 育 と 同 じ く 国 家 試 験合 格 後 の 臨 床 現 場で の 卒 後 教 育 が 極 め て 重 要 とな る 。 そ の 卒 後 教 育 を 充 実さ せ る た め に は 、先 ず 、 社 会 貢 献 が で き る 理 学療 法 士 と し て の 適 性 、 人 間力 、 そ し て 、 基 礎力 を 踏 ま え た 上 で 、 あ ら ゆる 臨 床 場 面 に お い て 対 応 で きる 柔 軟 性 の あ る 応用 力 を 育 て る 学 内 教 育 、 臨 床実 習 教 育 の 充 実 が 重 要 で ある 。
以 上 、 第 1章 で は 、 理 学 療 法 の 概 念 と理 学 療 法 士 の 法 的規 定 と し て 理 学 療 法 の 概 念 、理 学 療 法 士 の 法 的 規 定 を 、理 学 療 法 業 務 の 現況 と し て 理 学 療 法 の ね ら い と対 象 、 臨 床 現 場 に お け る 理学 療 法 士 の 現 況 を、 理 学 療 法 士 教 育 の 現 況 と して 養 成 課 程 の 概 要 と 課 題 、国 家 試 験 の 現 況 を論 じ た 。 こ の 内 容 を 踏 ま え た上 で 、 養 成 校 及 び 臨 床 実 習指 導 者 は 理 学 療 法士 と し て 自 己 実 現 で き る 志 のあ る 学 生 を 育 成 す る こ と が重 要 で あ り 、 この こ と が 今 後 の 理
学 療 法 界 の 発展 に 繋 が る の で あ る。こ の 点 に お い て 、櫻 井 は 学 習 に 関 し て、
「 欲 求 ・ 動 機 レ ベ ル 」 か ら 「 学 習 行 動 レ ベ ル 」、 そ し て 「 認 知 ・ 感 情 レ ベ ル 」へ の 推 移 を「 自 ら 学 ぶ プ ロ セ ス モ デ ル 」と し て 説 明 し てい る 30)。こ の 際 の 「 欲 求 ・動 機 レ ベ ル 」 に は 「 学 習 動機 づ け」、「 学 習 行動 レ ベ ル 」 に は
「 学 習 方 法」、「 認 知 ・ 感 情 レ ベ ル 」 に は「 自 己 効 力 感 」 が含 ま れ る 。 理 学 療 法 士 教 育 の中 の 「 学 習 支 援 」 に 関 し て主 要 な テ ー マ と なる 「 自 己 主 導 型 学 習 の 確 立 」を 実 現 す る た め に は 、 学 習行 動 の 方 向 づ け とな る 「 学 習 動 機 づ け 」 が 最 も重 要 な 要 素 と な る 。 そ れ 故に 、 第 2 章 「 学 習支 援 に 関 す る 理 論 的 背 景 」 では 、 養 成 校 に お い て 学 習 支援 を 実 践 す る に あた り 、 そ の 理 論 的 に 主 要 な 項目 と な る 「 学 習 動 機 づ け」、「 学 習 方 法」、「 自己 効 力 感 」 の そ れ ぞ れ の 重 要性 を 踏 ま え な が ら 論 述 す る。
- 注 - ( 第 1章 )
1) 千 住 秀 明 他 『 理 学 療 法学 概 論 第 3版 』( 神 陵 文 庫 、2010 年 )8-9 頁 。 2) 同 前 、8-9 頁 。
3) 荘 村 明 彦『 医 療 六 法 平 成 25 年 度 版』( 中 央 法 規 出 版 、2013 年) 1584 頁 。 4) 千 住 秀 明 他 『 理 学 療 法学 概 論 第 4版 』( 神 陵 文 庫 、2013 年 )47 頁 。 5) 公 益 財 団法 人 日 本 理 学療 法 士 協 会 「 理 学 療 法 士 に つ いて 理 学 療 法 とは 」
平 成 25 年 12 月 2 日<http://www.japanpt.or.jp/physicaltherapy/
about/>
6) 公 益 財 団法 人 日 本 理 学療 法 士 協 会『 理学 療 法 士 に つ いて 理 学 療 法 士と は 』 平 成 25 年 12 月 2 日<http://www.japanpt.or.jp/physicaltherapy/
physicaltherapist/>
7) 荘 村 明 彦、 前 掲 『 医 療 六 法 平 成 25 年 度 版 』1585 頁 。 8) 同 前 、1585 頁 。
9) 同 前 、1585 頁 。
10) 奈 良 勲 『理 学 療 法 概 論 第 5 版 』( 医歯 薬 出 版 、2009 年 )372 頁 。
11) 平 成 8 年 9 月 福 岡 市 内の A 病 院 で の エ ピ ソ ー ド。「 医 師 の 指 示 の 下 に」 と い う 法 的 見 解を 当 該 医 師 は 理 学 療 法 業 務を 「 医 師 の 命 令 の下 に 」 と 履 き 違 え 、 当 該 医 師の 診 察 行 為 を 優 先 し よ う とし た 結 果 の 言 動 であ っ た 。 討 議 の 結 果 、 我 々 理学 療 法 士 ( リ ハ ビ リ テ ー ショ ン 科 ) の 意 見 が尊 重 さ れ 、 理 学 療 法 業 務 を 優先 す る こ と で き た 。
12) 公 益 財 団法 人 日 本 理 学療 法 士 協 会 、 前 掲 『 理 学 療 法 士に つ い て 理 学療 法 と は』。
13) 千 住 秀 明 他 、 前 掲 『 理学 療 法 学 概 論 第 3 版 』110-111、113-115 頁 。 14) 同 前 、111 頁 。
15) 公 益 財 団法 人 日 本 理 学療 法 士 協 会 『 日 本 理 学 療 法 士 協会 に つ い て 資料 ・ 統 計 』 平 成 25 年 12 月 2 日<http://www.japanpt.or.jp/about/
about_jpta/05_index/>