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遠藤 紗耶  今井  昇

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Academic year: 2021

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Vol.38 No.1 2018 静岡赤十字病院研究報

三叉神経・自律神経性頭痛に薬剤使用過多による 頭痛を併発した患者への関わり

遠藤 紗耶  今井  昇

1)

  杉山 奈々  繁田 敏恵

静岡赤十字病院 3-5病棟 1)静岡赤十字病院 神経内科

要旨 :今回,三叉神経・自律神経性頭痛に薬剤使用過多による頭痛(MedicationOveruse Headache;MOH)を併発した患者が断薬目的で入院された.MOHの再発率は高く早期からの 介入が必要である.

 再発予防のためには,患者の頭痛の姿を明らかにして,患者と医療者が共通理解の基に,正 しい治療につなげることが重要である.しかし慌ただしい日常診療の中で患者が症状を正確に 表現することも,医師が患者から様々な情報を聞き出すことも困難なのが実情である.

 今回入院中,看護師が患者とのコミュニケーションから信頼関係を構築し,外来では知り得 ない多くの情報を導き出すことで,患者の頭痛の姿を明らかにし,診断の助けとなり,頭痛の コントロールとともに患者教育のきっかけにつなげることができた.医師だけでなく患者を取 り巻く医療チーム全体での関わりがよりよい医療を提供することにつながると考える.

Key words:薬剤使用過多による頭痛,再発予防,コミュニケーション

Ⅰ.はじめに

  今 回, 三 叉 神 経・ 自 律 神 経 性 頭 痛 に 薬 剤 使 用 過 多 に よ る 頭 痛(MedicationOveruse Headache;MOH)を併発した患者が断薬目的で入 院された.今回入院中,看護師が患者とのコミュ ニケーションから信頼関係を構築し,外来では知 り得ない多くの情報を導き出すことで,患者の頭 痛の姿を明らかにし,診断の助けとなり,頭痛の コントロールとともに患者教育のきっかけとなっ た症例が生じたため,ここに報告する.

Ⅱ.倫理的配慮

 対象本人に口頭・文面にて,プライバシーの保 護,匿名性を保持すること・得られた情報は本研 究だけに用いること・これにより不利益を得るこ とはないこと・協力は自由意志であり拒否する権 利があること・研究結果は病院内外で公表する予 定であることを説明を行い,説明書・同意書に署 名を得た.さらに静岡赤十字病院看護部の倫理委

員会の承認を得た.

Ⅲ.患者紹介 患者:40代女性

入院期間:○月4日~○月12日の8日間 現病歴:群発頭痛

今回の主症状:左側頭部の持続する痛み,群発期 の左目をとりたくなるような激しい痛み,トンネ ルの中にいるような左耳の耳閉感

家族背景:元々独居であったが,長女の出産を機 に娘夫婦と同居.家事全般は患者本人が担い,他 の家人からほとんど手助けが得られていない.娘 は看護師であるが,頭痛についての知識が乏し い.頭痛についての話を聞いてもらえず,頭痛は 患者の気持ちの弱さから鎮痛剤をむやみに内服し ていると認識している.

キーパーソン:長女

入院前の生活:20代で群発頭痛の診断を受け近医

でワソラン,トリプタンなど処方されていたが効

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果がないため通院を自己中断.20年来の頭痛あり 通院しても症状改善しないため指示された内服量 ではなく自己で内服量を調整していた.仕事や家 事でなかなか休む時間を確保できず,鎮痛剤を過 剰に内服しなんとか生活している状況であった.

外来では頭痛の記録として頭痛ダイアリーを用い ており,頭痛の経過を事細かに残していた.

性格:おとなしく,他者に自分のことをあまり話 さない.

入院に対する本人の思い:頭痛の原因を精査し,

なんとか頭痛を和らげたい.入院時,「藁にもす がる思いで入院した」と発言あり.

退院後の生活に対する本人の希望:頭痛をコント ロールしながら,普通の日常生活を送りたい 退院後の生活に対する家人の希望:入院し頭痛を 治してきてほしい.入院前の生活のままでは困る

Ⅴ.考 察

 MOHの再発率は,はじめにで述べたとおりで 早期からの再発予防のための指導が必要である.

再発予防のためには患者の頭痛の姿を明らかに し,患者と医療者が共通理解の基に正しい治療に つなげることが重要と考えられる.しかし鈴木ら

1)

が「頭痛情報を聞き出すのはかなりの時間とコ ミュニケーションスキルを必要とするため多忙な 診療時間内に患者から十分な情報を得ることは容 易ではない」と述べている.慌ただしい日常診療 の中で患者が症状を正確に表現することも,医師 が患者から様々な情報を聞き出すことも困難なの が現状である.

 頭痛ダイアリーに記載のあった耳閉感や鼻汁の 症状について看護師がより深く問診していったと ころ,MOHを合併した群発頭痛と考えられてい たが,本当は三叉神経・自律神経性頭痛にMOH を合併していたことが明らかとなった.隠れてい た本当の頭痛の姿を明らかにしたことで正しい診 断・治療に結びつけることができた.内服治療行 い症状改善,現在も薬剤乱用することなく外来通 院を継続できている.

 入院中,受け持ち看護師が患者とのコミュニ ケーションから信頼関係を構築し外来では知り得 ない多くの情報を聞き出すことで正確な診断がさ れ,適切な治療に結びつけることができた.

 鈴木ら

2)

も「頭痛診療は医師が診断し処方する だけで完了することはない.患者自身の頭痛を観 察し,痛みの程度や現れ方,または食事や睡眠な どの生活習慣について記録し整理・見直しをして いくことで診察室における問診をより効果的なも のとし,また治療効果を高めることができる」と 述べている.また慢性頭痛の診療ガイドライン作 成委員会

3)

では「頭痛看護師は慢性頭痛患者の問 診,頭痛の悩み,不安および個人的・社会的バッ クグラウンド情報の聴取,スマトリプタン在宅自 己注射の技術指導などが求められる」と述べてい る.医師,患者間のやりとりだけでなく,看護師 等も含めた医療チーム全体で患者をサポートする ことで,よりよい医療を提供することにつながる と考える.今後もよりよい医療を提供するために 医療チームが更なる連携を強化していく必要があ

図1.初診時の慢性頭痛問診票

図2.頭痛ダイアリー

(3)

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ると考える.

文 献

1)鈴木則宏.頭痛診療ハンドブック.東京:中 外医学社;2009.P.31.

2)鈴木則宏.頭痛診療ハンドブック.東京:中 外医学社;2009.P.38.

3)慢性頭痛の診療ガイドライン作成委員会.慢 性頭痛の診療ガイドライン2013.東京.医学書 院2013.P.62.

連絡先:遠藤紗耶;静岡赤十字病院 3-5病棟

    〒420-0853 静岡市葵区追手町8-2 TEL(054)254-4311

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