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(1)

川部 健

Chaos Analyses by the Use of a Logarithmic Map       Takeshi KAWABE

 Intermittent chaos of types 1 and III ean be numerically generated by a logarithmie map. Universal scaling laws can be clearly found near the critical points. Numerieal simulations using the Full Basic aim a pedagogical development, in college of technology.

1. はじめに

 自然界の現象には,その対象の種類によらず一定の法 則1生をもっていることが多い。相転移の統計力学では,

その臨界現象(臨界指数とよばれるもの)が体系の相互 作用の種類や詳細に依らず,体系の次元や対称性によっ て決まる普遍性の存在が知られている。理論物理学の究 極の目的である統一場の理論も4種類の力を統一的な一 つの法則で記述することを目指している。物理学はその ような法則性を見出す学問であるとも云える。加えたカ とひずみの大きさが比例するフックの法則や電圧と電流 の間に成り立つオームの法則などは物理で学ぶ最も初歩 的な例である。そのような法則は特に普遍則とはよばれ ていないが,ここでとりあげるカオス現象に見出される 法則も,これを作り出す関数の種類によらないという意 味で普遍則とよばれ,意味するところは類似している。

 カオスの研究が学会の注目を浴びるようになって約30 年が経過した。この間,カオス研究の対象は,数学や物 理学に限らず,生物学,地球物理学,天文学,医学,生 理学,気象学,工学,計算機科学,さらには経済学など の社会科学にまで及んでいる1)。しかし,このような研 究領域め拡がりにもかかわらずカオスが教育の対象とし て,一般的に取り上げられるまでに至っていない。ここ では,最近10年ほどの間に著者らが行ってきたカオスに 関連した研究Pt  11)を高専レベルの学生教育の場に役立て る内容としてこれを精選し,教育的な目的で開発された Full Basicのプログラム言語12)を用いて数値解析を行

った。ここに紹介する数値シミュレーションを通して,

カオスはサイコロ投げのようなでたらめな現象と明確に 違うこどが認識されるだろう。

2.対数写像がつくるカオス

 カオスの発生は非線形現象が関係しているから,これ を人工的に作り出すには簡単な数式を選んでやればよい。

カオスの説明によく用いられるロジスティヅク写像

  X.+1 = a(1−X. )X. (1)

はパラメータaを変化させることによって周期倍分岐と カオスの出現をみることができる。これを確認するには 電卓があれば十分である。オーストラリア生まれの生物 学者RobertMayは,以前この差分方程式を用いて昆虫の 個体数の増殖を調べていたが,彼はこの単純な方程式が もつ多様な数理の世界を発見して,雑誌NatUre13)にその 教育的意義の重要性を感動的に述べている。

 ここで取り扱う対数写像も極めて単純な差分方程式

  x..i =a+ln(1 x. 1) (2)

で表される。(1)式と同様にこの差分方程式がパラメータ aの変化によって,どのような振る舞いを示すかをみる には電卓でも調べることはできるが,パソコンを使えば,

2,3秒で図1に示すような分岐図が得られる。最初,aに 数値を与え,適当な初期値Xoから出発して繰り返し計算 を実行すればよい。 図1ではa ・一3.0から2.0まで 変えて,いずれのaに対してもx。=0.2から始めて,

最初の5000個の繰り返し計算結果は捨て,次の200 個のXttをプロットしたものである。 lal≧1では固定 点(どのような点から出発しても特定の一点に到達す る)を与えるが,Ial<1では一見ランダムな値をとる

Xn

   一7 一1

爺羅

43

     a

///ttt,t・.i・lilil/lllllill/////,1・li−li.・

;ジ

図1対数写像(2)式の分岐図 原稿受付 平成14年8月31日

t

(2)

カオスになることが分かる。 最初の5000個の計算結 果を捨てる理由は初期値の影響を消すためである。この ようにすると図1の分岐図は初期値Xoの値には全くよ らない結果を与える。この計算は初歩的なプログラミン グの例題としては格好の問題で,Full Basici2)20行程 で書ける。

100!対数写像 X(n+1)=a+1n(IX(n)1)

110 DEF f(x)ニa+しOG(ABS(x))

120 LET xl :一3 130 LET x2=2 140 LET yl=一8 150 LE丁 y2::4

160 SET WINDOW xl,x2,yl,y2

170 ASK PIXEL SIZE(xl,yl; x2,y2) p,q 180 DRAW grid

190 SET POINT STYLE 1

200 FOR a=xl TO x2 STEP (x2−xl)/p

210 LET x=O.2 220 FoR n=1 To sooo 230 LET x=f(x)

240 NEXT n

250 FOR n=1 TO 200

260 LET x=f(x)

270 PLOT POINTS:a,x

280    NEX丁 n 290 NEXT a 300 END

.:勘、:

・・﹁﹁ートη2・Q2・4著幽. 9.一7層目卜..幽 幽噛一 .IOO I ・疾一20σ

・ ・ nl. ..i. 200

 パラメータaを固定して,時間に相当するnに対 するx、,の変化を示す時系列が図2である。 (a)

a ・一〇.95や(c)a = O.95は規則的な運動がカオスに移 行するはざまの状態を表しており,間激性カオス13>・ 14)

とよばれる。しかし,時系列のパターンは明らかに違っ ていて,(c)はタイプ1の間雨性カオス,(a)はタイプIII の間祝性カオスとして区別される。(b)a=Oは規則運 動から遠く離れた乱雑なカオス状態になっている。この

ように単純な数式(差分方程式)から様々な時系列を作 り出すことができる。 ロジスティック写像(1)はよく知 られた周期倍分岐からカオスに至る分岐図を与えるが,

対数写像②から得られるような間敏性カオスは出てこな い。タイプHIの間欺性カオスの振る舞いは図2の(a)の 時系列を観察すればその特徴をつかむことが出来る。こ の場合にもプログラムは簡単で一例を以下に示す。

100 ! time sequence of l ogmap.bas 110 LET a=O.95

120 LET x=O.2

130 LET F$ A:DATA4.TXT 140 OPEN #1 : NAME F$

150 ERASE #1

160 FOR t=O TO 5000 STEP 1 170 LET y=a+LOG(x)

180 LET x ABS(y)

190 meXT t

200 FOR t=O TO 200 STEP 1 210 LET y=a+LOG(x)

220 LE[II FABS(y)

230 PRINT #1 : t;  , ; y 240 maXT t

250 CLOSE #1 260 Emo

3.不規則運動の中の規則性

4⁝2.0

・lc>タ・即g5一

/・ o:       lloo,

図2対数写像(2)式の時系列

ni i coct

 かって寺田寅彦は非常に複雑で,でたらめに近い現象 の時系列について,隣あう極大間(或いは極小間)の間 隔が3に近い値を示すことを実験的に確かめた16)。ここ では規則運動に近いa=一1やa・1近傍の時系列の振

る舞い(a)や(c)に着目して何らかの法則性を探してみる。

特に,a=一1近傍では図2(a)で与えた時系列の振る舞 いがどのようになっているのか見てみよう.図3は上か ら下へa=一1に近づくが,一つの規則性をもっている ことが分かる。いずれの時系列もラミナーとよばれる長 い規則的な部分とバーストとよばれる短い不規則部分か らなっている。ラミナーの長さの平均eはa・・=一1へ 近づくにしたがって長くなって,a=一1でeは無限大 になる。 そこで,どのような関数形で長くなっていく

(3)

・ト

1

ε=0,05

バースト

ε=0,005

@      塵

0          500 ,ze. IPOO

図3 a=一1近傍のラミナーとバースト伝含一1+ε)

か調べてみよう。ラミナーとバーストの特徴を考え,ラ ミナーの出発点と終点をうまくプログラムに記述しなけ ればならない。そのプログラムは図1,2を与えるプロ グラムほど簡単ではない。例えば,a=一1+0。Olに固定

してもうミナーの長さは様々であるから十分長い時系列 をとって平均を取る必要がある。そのプログラム例を以 下に示すが,a・ 一一1+εとおいたとき,ε=0.00005に対 して,最大長さ80万のラミナーを仮定,50万個のラミ ナーの平均を取っている。a=一1近傍では1個のaに 対して108−109個の時系列を計算しなければならない。

a=一1近傍のラミナー長さの平均を求めるプログラム 例を以下に示す。

100 ! fi l e narne l ami typ3.bas 110 DIM J(O TO 800000)

115 LET ma500000

120PRINT 平均ラミナー長:a=一1近傍average= 125 PRINT剛

130 FOR EP=O.OOOO5 TO O.OOOO4 STEP 一〇.OOOOI

000000000000045679012345671111122222222

LET AL=一1→モP

LET × :O.2

LET AA=O LET S=O.O

FOR 1=O TO 800000  LET J(1)=O NEXT I

PRINT

PRINT  Epsilon =  ;

PRINT USING  一一%.##### :EP;

PRINT   Al pha =  ;

PRINT USING  一一〇1,.###### :AL FOR M=1 TO wt

端㎜翻認謝翻溜鎚鷲糊瑠三三認翻翻

 FOR K=1 TO 400000    LET y=LOG(x)十AL    LET ×=ABS(y)

   LET yy=LOG(x)十AL    LET ×=ABS(yy)

   LET A=ABS(y−yy)

   LET D=A−AA    LET E=ABS(D/A)

   LET AA=A

   IF E =〈 1.OE−15 OR D >O THEN

    GOTO 42to    ELSE

    LET KK=2*(K−1)

    LET J(KK)=J(KK)+1     GOTO 450

   END !F  NEXT K

NEXT M

FOR K=2 TO 800000 STEP 2  1F K>700000 AND j(K)>O THEN    PRINT USING  ###### :K;

   PRINT USING  ########### :J(K)

 END IF

 LET S=S+K*J(K)

NEXT K

PRINT 平均ラミナー長=ss ;

PRINT USING  一一一一%.## :S/(rvN−J(O))

PRINT , Sample(Lafni nar)の個数■ ; PRINT USING , #######紫 : 剛一J(0)

570 NEXT EP 580 END

(4)

 パラメータを(a)a == 一一1+ε或いは(b)a=1_ε とお

いてラミナーの長さがカオス出現の臨界点a=±1に向 かってεのどのような関数形で無限大になるのかが問題 である。変数εに対し,106個程度のラミナーをとって 平均値4をプロットすると図3のようになる。a ==一1の 近傍ではε一〇496,a・・1の近傍ではε一〇501のきれいな

列を調べると図2のような特徴を見出すことができる。

図4ではa=±1近傍のラミナーの長さが従うベキ則を求 めたが,変数ε(或いはa)を固定したとき様々な長さ のうミナーがでたらめな川頁序で現れる。長さnのうミナ ーがどのような頻度ノで出現するのだろうか。図5はそ の計算結果を示したもので,この場合にもタイプ1とタ

・1

iO3

iO2

(a)ρ=一1近傍

1(rガ04蜥

106 1 o−s loq s lo−s

10s

f

lQ4

103

1o2

、(a) =1.逝滲   r .;,一3

  StS/0

IQi

 o 50 1OD n 150

i

lot

102

1 oc s r50j

(b)a=7近傍

10di lo6 s lo 1ぴ3 ε 1() 2

  図4ラミナー長さが従うベキ則

ベキ則に従って変化していることが分かる。タイプ1間 歓性カオスに対しては簡単な解析からε 112が知られて いる17), 18)。これに対してタイプ激烈歌性カオスの場合 は簡単ではないが,繰り込み群の手法を用いた解析によ

りε 1!2になる19), 20)ことが予測されている。そして,

我々は対数関数をカオス発生の臨界点で展開することに より解析的にこの結果を導いているの。その際に大型計 算機(岡山大学ACOS)による数値解析(最大13×108の 時系列計算)も行い,ε一〇508を得た。今回のパソコンに よるシミュレーションの結果ε一〇496はこれときわめてよ い一致を示している。

 ラミナーの長さに対するベキ則に対しては解析的な考 察や他の写像関数による数値解Ffiで調べられていて,タ イプ1,HIのどちらの指数も一〇.5となる。対数写像を 用いた数値解析でもベキ則

  1 oc E−05 (3)

los

f

一} b4

1a3

s1 02

10i

  一1 8

focn

(b)a=Pノ蒼傍   εごノ。 4・

をパソコンで確認した。すなわち写像関数によらない普 遍性がこのような一見,ランダムに見える数理現象に潜 んでいることが分かった。

 対数写像の分岐図1を見る限り,タイプ1とタイプHI の間欺性カオスの特徴を捉えることはできないが,時系

lol . 102

  や

n lo3

図5 ラミナーの長さ(n)の頻度分布

イブIIIの間敏性カオスのラミナーは明らかな特徴的分 布をもっていて,しかもきわめてsystematicな振る舞い をしていることが分かる。

4.おわりに

 何げなく見過ごしてしまいそうな現象の中に規則性が ある。法則性を探すために,一見乱雑に見える図2(a),

(c)の時系列のラミナー長さに注目して,その特徴を捉え て数値解析を行った。図2(b)のようなランダムな時系列 についても隣り合う極大間の長さに注目して解析すれば,

平均値が3に近い数値が得られる。このような性質を利 用すれば乱数の検定も可能21)29)である。カオスを科学 教育やプログラミング教育の材料として用いるために,

著者がこれまで研究の対象としていた対数写像を取り上 げた。そして,Robert Mayが述べているように,これは 単なる数学のお遊びではない。写像関数によらない普遍 則が存在して,自然現象や実験系(タイプ1:非線形RCL 振動子,BZ反応, Lorenz Mode1,タイプIII=レイリー・

ベナール熱対流)で間局欠性カオスの存在が確かめられて

(5)

いる14)l15)のである。

 最後に,タイプHの間敏性カオスについて簡単に 触れておく。タイプ1,IIIの間敏性カオスが1変数の写 像関数で作り出されたのに対して,タイプIIの間歌1生カ オスは2変数以上の写像関数が関係していて解析は簡単 ではない。我々は対数関数の複素力学系

Zn+i =C 1 (1 Zn 1) (4)

の考察を行った5), 6)。但し,Cは複素数制御パラメータ で,(4)式のZはθの多価関数になっている。変数Zを

一x/2sarg(Z.)sn/2 (5)

に限るとき,複素tw Cのつくる複素平面には分岐図(マ ンデルブロ集合)として,周期解の他にカオス領域が現 れる。その境界にHopf分岐と呼ばれる2次元系特有の 分岐とタイプHの間敏性カオスが生ずることを見出した。

2周期点ABとカオス領域の境界(転移点)近くの点

。=←o.65,一1.17852)における時系列を図6に示す9)。

4,0 1Zn1

3.O

B

2.0

..  ■夢一累餓運︐胃

ま譲︑肇機.懇

1

ワ一

3

4

5

6

1,0

A 「::E講 羅: an壽      5         n

[.10310

7

8

9

10)

11)

e.o

図6 複素力学系(・1)の転移点近傍の時系列

この数値解析からタイプIIの場合にはタイプ1, III のべキ則1 ・・ E 05と違って,非常にきれいなべキ則 1 ・・ E 1・oooの成り立つことが示された。

 タイプHの場合を除外したのは特に問題が複雑でカオ スを教育の場に持ち出せなかった為である。我々は単純 な対数写像(2)式からタイプ1とタイプIHIの2種類の間欧 性カオスを見出した。1つのタイプの間塞性カオスも決

して単純なものではない。そして,制御パラメータaを 変えることによって様々なカオスの出現をみた。更に,

一見ランダムに見える時系列にも隠された規則性と写像 関数によらない普遍性があることが分かった。

 この論文での数値解析は,白石i2)の開発した十進 BASICを用いた。そこにはプログラミングに大した苦 労をせずに,目的の数値解析ができるように工夫されて いて,学生のカオスなどの科学教育には相応しいもので ある。この論文の主旨は,教育研究集会23)で紹介してい る。 また,学生の卒業研究の参考に供している。

12)

13)

14)

15)

16)

17)

18)

19)

20)

21)

22)

23)

参考文献

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参照

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