• 検索結果がありません。

現 代 生 活 と 身 体 運 動

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "現 代 生 活 と 身 体 運 動"

Copied!
22
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

(49)

現 代 生 活 と 身 体 運 動

1緒

H健 康 と体力 m身 体運 動の必要性

1.運 動の効果 2.運 動の逆 効果 身 体運動の生活 化

1.生 活化の条件 と態度 2.運 動 の処方

歩 行 運 動

ス ポ ー ツ

V結

1緒

いつ の時 代 に も健康 ほ ど大 切 な もの は な い。 現 代 に お け る文 明 の発 達 は, 都市 化 や 生 活 様 式 の機 械 化,技 術 革新 に よる 作業 形 態 の 著 しい 変 化 を きた

し,生 活 水 準 の 向上 や 自由時 間 の 増加 な どの利 益 を もた ら した反 面,人 間 阻 害 や ス トレス,有 害 食 品や環 境 汚 染 に と もな う生 活 妨 害,身 体活 動 の不 足 と 栄 養 過 剰 に よ る肥 満 症 な ど,健 康 上 の面 で さ まざ まな 問 題 を 提 起 して い る。

交 通 機 関 の発 達 は,わ た く した ちに 労 力 と 時 間 の 節 約 を もた ら して くれ た 。 しか し,そ の反 面 多 くの交 通 事故 に よって不 幸 を まね く人 々が 増加 し, マ イ カ ーの普 及 と相 ま って歩 行 運動 が 極 度 に減 少 し,脚 力 の低 下 や 内臓 障 害 を 誘発 して い る。 猪飼 氏 は,現 代人 は 生 物 学 的 にみ て 「身 体 は大 き くな るの

(2)

に 反 し,足 が 弱 くパ ラ ソス を失 してい る」 この ま ま推 移 すれ ば 生存 を おび や

(D

か す 危 機 さえ あ る と警 告 してい る くらい で あ る。

この よ うな 中 で心 身 の健 全 な発 達 を 図 るた め の体 育 的価 値 が 重 視 され,昭

(2)

和36年6月 に ス ー ポ ツ振興 法 が制 定 され,さ らに 昭和42年8月 に は 公害対 策 基 本 法 が 制定 され るな ど,お そ ま きな が ら国民 の健康 管理 に対 す る国 の姿 勢 が示 され は した もの の,そ の施 策 は 十 分 とい えず 立 遅 れ の現状 で あ る。

現 代社 会 に お け る生 活 妨 害 とい わ れ る公害 は,人 間 が 作 り出 した文 化 の遺 産 で あ り,こ の浄 化 に あた っ て も文 化 の 進展 に よっ て これ を 防 除 して ゆか な け れ ば な らな い。

しか し,た とえ これ らの生活 妨 害 条 件 が浄 化 され,快 適 な環 境条 件 が作 り 出 され た と して も 「自分 の健康 は,自 分 自身 が 管理 す る」 とい った 思 想 を も た な い限 り健 康 は 自分 の もの とは な らな いで あ ろ う。 この よ うな時 代に こそ 自分 の意 志 と工 夫 に よっ て環 境条 件 の害 作 用 を 最 少 限 に くい止 め よ う とす る 努 力 が 必要 で あ る。

健 康 管 理 の手 段 や 努 力 を お こた り,為 政 者 や環 境破 か い者 の み を せ め,運 動 施設 の不 足 を理 由に 自由時 間や 余 暇 時 間を耽 溺 的,射 倖 的 遊 び え と志 向 し

て い て は益 々悪 循 環 を 繰 返 す結 果 とな るだ け で あ る。 現 代社 会 を 健 康 に 生 き ぬ くた め に は,文 化 生活 と生産 手 段 とは分 化 して と らえ,身 体 運 動 を 日常 生 活 の 中 に組 み 入 れ た 「身 体 運動 の生 活 化 」 に よ って,健 康 な身 体 と強 靱 な体 力 を育 成 し,こ れ が個 人 と しては 人 間 形 成 の 目標 と して の高 い 意 義 と価 値 を 有 し,社 会 的 に は 未来 の 明 るい社 会 建 設 のた め の活 動 力 とな る もの と思 われ る。

健 康 と 体 力

健 康 の 定 義 に つ い て は,一 般 的 に 世 界 保 健 機 構(WorldHealthOrganiga‑

tion)の 「健 康 と は,単 に 病 気 ま た は 病 弱 の 存 在 しな い とい うだ け で な くて,

(1)猪 飼道夫 「足が 弱い現代 人」 第18回 日本医学 会総会資料 よ り 昭和46年4月 北海道新 聞

(2)文 部 法令要覧 帝 国地 方政学会 昭和44年 版

(3)

現代生活 と身体運動(藤 江) (51) 完 全 な 肉 体 的,精 神 的 お よび社 会 的 に 良 好 な状 態 を い う」 と し 「到達 し うる

くヨ 

最 高 水 準 の 健康 を 享 有す る こ とは,万 人 の 有 す る 基 本 的 権 利 の ひ とつ で あ る」 とい う言葉 が よ く 用 い られ るが,こ れ もそ れ ぞ れ の 時 代 に よ って 異 な り,科 学 的 知識 を 背 景 と して変 化 して ゆ くもの だ け に 固定 した概 念 で は きめ られ な い 問 題 で あ る。

した が って,現 代 ほ ど健 康 の問 題 に つ い て の 関心 が 高 ま っ てい る時 代 も少 ない と思 う。 何 故 な らば,生 活 妨 害 問 題 が人 の健 康 との関 連 で 注 目され て い るわ け で あ り,重 化 学工 業 を 主 軸 とす る地域 開発 の急 速 な進 行 に よって起 っ た とい わ れ る 水俣 病,イ タ イ イ タ イ病,四 日市 喘 息 な どの 公害 病 に は じま り,騒 音,大 気 汚 染,水 質 汚 濁,土 壊 汚 染,BHC,PCB等 に よる生活 妨 害 が 広 域 化 し,こ れ が 個 人 の一 生,子 孫 お よび 地 域 社 会 の影 響 を 考 え る と

き,何 人 た りと も無 関心 で い られ る筈 はな い か らで あ る。

(4)

体 力 の意 義 と内容 につ い ては,人 文 研 究 第34輯 で述 べ た が,健 康 と体 力 の関 係 は,筋 作業 能 力 テ ス トな どの結 果 か ら一 般 に健 康 度 の低 い 人 は 体 力 も 劣 る とい う関 係 を示 す が,健 康 度 の高 い 時 点 で は必 ず しもは っ き り しな い面 が あ る。 た とえば,社 会生 活 を さ して疲 労感 もな しに お くれ る健康 人 といわ れ る人 で も,5,000mも 走 れ な い人 もい る し,50kgの バ ーベ ル を上 げ られ な い人 もい る。 これ を 体 力的 な面 か らみ る と,前 者 は持 久 力 に 劣 り,後 者 は 筋 力 とい う体 力 に 劣 る とい うこ とが で き るわ け で,体 力 と健康 は 必ず しも一 致 しな い とい え よ う。 これ は体 力 の可 逆 性 とい う点か らも明 白で あ るが,健 康 な身 体 に 強 靱 な 体 力 を 育成 してゆ こ うと努 力す る と ころに 意 義 が あ る もの

と思 わ れ る。

私 た ちが 風 邪 を 引 きに くい とか,暑 さ寒 さに へば らない な どの環 境 に耐 え る能 力 や,生 命 を 維 持 し,寿 命 を長 らえ る とい った生 存 能 力 を 我 々は 防衛 体 力 と呼 び,単 な る生 命維 持 に と と ま らず,外 界 に対 して積 極 的 に働 きか け る 能 力,す なわ ち走 る,跳 ぶ,投 げ る,物 を もち あ げ るな ど意 志 に よって 身 体

(3)栗 本 義 彦 体 力 づ く りへ の 道 第 一 法 規 出 版 株 式 会 社

(4)藤 ラ グ ビ ー に お け る 体 力 ト レ ー ニ ン グ の 一 方 法 人文研究第34輯

(4)

を動 か した り,身 体 運 動 を 調 整 した りす る能 力 を行 動 体 力 と呼 ん で い る。

健 康 の維 持 増 進,体 力 の 向上 は 日常 生 活 と密 接 なつ なが りを も っ てい る。

人 間 は環 境 との有 機 的 な関 係 に お い て生活 を営 ん で い る以上 当 然 の こ とで あ る。 遺 伝 な ど恒 常 的 といわ れ る内 的条 件 は 別 と して,人 間 の発 育 ・発 達 に 及 ぼす あ らゆ る外 的 悪 条 件 に つ い て は,社 会 的 規 制 と個 人 の生活 規 制 お よび 適 度 な身 体 運 動 に よっ て これ を くい止 め な けれ ば な らな い。

健 康 の維 持 増 進 のた め の基 本的 条 件 と しては,先 ず 第 一 に 「生活 程 度 の 向 上 と食 生 活 の知 識 で あ る」。 経 済 的 に 貧 困 で あれ ば,い か に健 康 的 な生 活 を 営 も うと努 力 して も栄養 も とれ ず,健 康 の増 進 は お ろか保 持 もむ つ か しい。

逆 に 経 済 的 に 恵 まれ て い て も,好 み に まか せ て 偏食 して い た の で は栄 養 的 に バ ラン ス の とれ た 食事 が で きず,不 健 康 を まね く結果 とな るで あ ろ う。

第 二 は,「 定 期 健康 診 断 の励 行 と病 気 の 治ゆ で あ る」。 健 康 診 断 の 目的 は, 疾 病 や 自覚症 状 の な い疾 病 を早 期 に発 見 し,適 切 な処 置 を施 す とい った 治 療 医 学 で あ り,異 常 が発 見 され た ときは 完 全 に 治 ゆ 回復 させ る こ とが 肝 心 で あ る。

(5)

表 一1は,順 天 堂 大学 内科 の 塩 川 氏 の調 査 で あ るが,20才 前 後 の しか も 全 く健 康 と思 わ れ てい た 人 の死 亡 が い か に多 いか が うか が え る。 健康 診 断 に よ って そ のす べ て の危 険 が 回 避 で き る とは限 らな いが,そ の何割 か は 回避 で き る もの と思わ れ る。

第 三 は,「 生 活環 境 の改 善 」 で あ り,個 人 の生 活 規 制 で は ど うに もな らな い生 活 妨 害 等 も あ るが,個 人 の 不摂 生 や 無 知 に よ っ て健康 を 害 して い る者 も 少 な くな い。 健康 に対 す る価値 観 の 相違 に も よるが,こ れ は 生活 の工 夫 な ど 個 人 の力 に よっ て解 決 で きる問 題 で あ る。

第 四 は,「 身 体 運動 に よる体 力 養 成 」 とい う ことで あ るが,詳 し くは運 動 の必 要 性 の項 で 述 べ る ことにす るが,ス ポ ー ツ マ ソ とい われ る人 々は,日 の トレー ニ ン グが 習慣 化 され,学 校 に 通 って い る児 童 ・生 徒 ・学 生 達 は 教科 時 間 内 で 身 体 を 鍛 え る機 会 と可 能 性 が 与 え られ て い る。 しか し,そ れ 以 外 の

小野三嗣 健康をもとめて④ 不昧堂新書

(5)

(1)年 次別死 亡原 因

現代生活 と身体運動(藤 江) (53)

表一1最 近 の突然 死資料

(東京都23f区,東 京都監察医務 院)

兜 違 」 昭」F[i"・年1昭 秘 酬 昭秘2年1昭 秘 劃 昭和44年

数11,78・ 1,855巨97・i2,・63i2,264

頭 蓋 内 出 血 矧 365【 41・[ 43・i

i

516 574

725 836 771 801 821

吃騒 夢藷く 9・1 82 116【 971 88

死 因不 明の犯罪 に よるもの を除 く

(2)死 亡直 前の状況 (4)死 亡 前 の 状 況

(3)死 亡 時 間

65人(44.8%)【

44人(30.3%) 13人 IO人L

4人 3人 2人 2人 1人 1人1

i隼繋=鉾

正 午 〜 午 後6時 午 後6時 〜 夜 半

90人(66.4%) 17人(12.6%)

7人 21人(15.6%)

.

81人(59.6%) 10人

7人 6人 4人 4人 4人 3人 3人 3人 3人 2人 2人 4人

人 々は誰 れ か らも 「か らだ作 り」 の ため の運動 を強 制 され る こ とは ない 。 さ らに,機 械 化 され た 現 代 の労 働 環 境 は,そ れ ほ どの 体 力 を 必要 とせ ず,「 か らだ作 り」 に 必要 な 運動 刺 激 は 非常 に 少 な い とい え る。 した が って,今 後 の 対 策 と しては,職 場 に お け る業 間体 育 の採 用 と職 場 を離 れ た社 会 体 育 ・家 庭 体 育 とい った 立 場 で の身体 運 動 を積 極 的 に 押 し進 め て ゆ くこ とで あ る。 と く

に職 場 に おけ る健康 管理 ・休 力管 理 につ い ては,経 営者 や 管 理 者 の積 極 的 な

(6)

理 解 と協 力 が 必要 で あ る。

身 体 運 動 の必 要 性

身 体 運 動 のすべ て を 直 ちに 体 育運 動 と解 され る場 合 もあ るが,体 育 の 目的 を実 現 す るた め の身 体 運 動 と広 義 の身 体 運 動 とは 区 別 され る必 要 が あ る。

体 育 の 目的 を実 現 す るた め に用 い られ る身 体 運 動 で は,人 間形 成 上 で の価 値 が問 題 とな る。 運 動 の実 践 を通 して な しとげ られ る人 間形 成 作 用 は二 つ の 側面 を も って い る とい え よ う。 そ の ひ とつ は,生 理 ・解 剖学 的 側 面 か らで あ り,人 間 が 生 存 す るた め に必 要 な身 体 機 能 の 面 で あ り,も うひ とつ は 思想 ・ 精 神 的 側 面 で あ って,運 動生 活 の充 実,対 人 関 係 の 態 度等 の 側 面 で あ る。

そ して,こ れ らの 二 つ の体 系 を 科 学 的 か つ 実 験 的 な学 習 の 展 開 に よ って, 運 動 の 教 育 的価 値 を求 め よ うと して い るの が体 育 運 動(PhysicalEducation Activities)で あ る。

健康 を維 持 増 進 す るた め に は,身 体 運 動 が 不 可 欠 な ことは一 般 的 に 認 め ら れ な が らもそ の実 践 とな る と消 極的 に な る人 が 多 い よ うで あ る。 私 た ちは 三 度 の食 事 を一 度 欠 い て も腹 がす き,運 動 に よって 汗 を流 せ ば 水 分 や 塩 分 が ほ しくな る。 この よ うな欲 求 は運 動 が 不 足 して も不 足 感 を 訴 え る こ とは な い。

また,運 動 の効 果 も運 動 不 足 に よ る障 害 も ともに 徐 々に 現 わ れ る現象 だけ に 健康 な生 活 を営 んで い る時 に は 案外 気 がつ か ない もの で あ る。

成 人 病 や 肥 満 症 とい わ れ る大 部 分 の もの も,急 激 に 異 常 が 現 われ る もので は な く,10年 も20年 もか か っ て徐 々に 起 って くる もの であ り,40代 を 健 康

にす ごす た め に は20代,30代 の健康 が大 切 と杉 氏 は い っ てい る。

予 防 医 学 が い か に重 要 で あ り,治 療 に よ る多 額 の投 資 が い か に 不経 済 で あ るか は 明 らか で あ りな が ら,障 害 が 起 きて は じめ て健康 や 体 力 の 価値 を知 る 人 が 以 外 と多 い よ うで あ る。 つ ぎに 運動 不 足 に よっ てあ らわれ る障 害 に つ い て 例 を あ げ てみ た い と思 う。

(6)杉 靖三郎 まちが いだ らけの健康法 実業之 日本社

(7)

現代生活 と身体運動(藤 江) (55) 40〜50才 代 で腕 が上 に あが らな くな った とい う,い わ ゆ る40肩,50肩 い われ る 肩 痛 の大 きな 原 因 のひ とつ に 可 動範 囲 を広 め る 柔 軟 性運 動 の不 足 (肩 関 節 の サ ビつ き現象)が あげ られ,腰 痛 に お け る背 筋 群 の劣性,衰 え が あ げ られ て い る。

小野 氏 は,運 動不 足 が 心 臓 血 管 系 の 機 能不 全 の原 因 に な りやす く,そ れ が 近 年 心 臓 血 管 死 を激 増 させ て い る と考 え られ る と し,病 理 的 な機 転 の ひ とつ に 線維 素 溶 解 能 の低 下 を あ げ て お り,中 程度 以上 の ラン ニ ング(1分 間 の脈 拍 数 が150以 上 に な る位 の速 さ)を す る こ とが,線 維 素 沈 着 に よる動 脈 硬 化 な どを予 防 す る のに大 い に役 立 ち,反 対 に常 に運 動 不 足 の状 態 に あれ ば,こ

(7)

の よ うな線溶 能 の 高 ま りが み られ な い の で血 管 の硬 化 が 進 行す る とい って い る。

また,千 葉 で発 見 され た 脊 柱側 湾症 は,千 葉 大 学 医 学 部 整 形外 科 の井 上 氏 に よる と 「骨 の成 長 に 背 筋,腹 筋 な どの筋 肉 の発 達 が追 いつ か な く,都 市 部 の子 供 ほ ど発 病 が 多 い の も,身 長 の 伸 び 率 が 高 い うえ に 運動 不足 で 筋 肉 の発 育 が お そ いた め で あ ろ う」 とい って い る。 完 全 に 背骨 が くの字 に な る状 態 ま で 進 む と,圧 迫 され た 片 方 の肺 は肺 活量 も極 端 に 小 さ くな り,機 能 が 著 しく 低 下 し,影 響 は ほ とん どの 内臓 に及 び,血 管 な どの圧 迫 で心 臓 障 害 や 脳 機 能 障 害 の例 も出 てい る とい う。 対 策 と しては,背 筋,腹 筋 を強 化 す る運動 の実

(8)

施 とバ ラソ ス の とれ た栄 養 摂 取 に よる予 防 が 第一 で あ る と訴 え てい る。

白井 氏 は,白 血 球 の ふ え ぐあ いか ら病 気 の抵 抗 力を 調 べ,農 繁 期 の農 家 の 人 達 で は 白血 球 が 具 合 よ く増 加 してゆ くのに対 して,頭 を使 う仕 事 を忙 し く

して い る人 々の 白血 球 のふ え具 合 は非常 に低 く 「近 代 文 化 生 活 に 伴 な う運 動

(9)

不 足 で 起 る 体 力 の 低 下 を 防 ぐに は,適 度 の ス ポ ー ツが 必 要 」 とい っ て い る。

さ らに リハ ビ リテ ー シ ョン(Rehabilitation)の 分 野 で も,歩 行 訓 練,筋 再 訓 練,姿 勢 矯 正 運 動,徒 手 体 操,水 中 運 動 な ど の 身 体 運 動 が 各 症 例 に 応 じ て 利 用 さ れ て い る。

小 野 三 嗣 健 康 を も・と め て(4)不 昧 堂 新 書

(8)井 上 駿 一一 学 童 の 近 代 病 北 海 道 新 聞 昭 和44年2月14日 (9)白 井 伊 三 郎 ス ポ ー ツ の 医 学 北 海 道 新 聞 昭 和44年4月11日

(8)

運 動 の 効果 は,正 しい 知 識 に 立脚 した 強 い信 念 の もとに 自 ら進 ん で や ろ う とす る態 度 の比 重 に よ って差 異 が 生 じて くる。

ム ー ア女史 の実 験 は,知 的 な要 素が 実 際 的 運 動 能 力 に どの よ うな影 響 を与 え る も ので あ るか を物 語 って い る とい え よ う。

ア メ リカの水 泳教 室 で,マ リー ラン ド大学 の 女 子学 生31名 を実 験 グル ー プ15人 と対 照 群16人 との2群 に分 け て8週 間 の訓 練 を 行 な っ て い るわ け で あ るが,両 群 の水 泳 能 力 は 平 均 値 と して みた 場 合,差 の な い よ うに 配 慮 さ れ,毎 日の トレー ニ ン グ ・ス ケジ ュール も両 群 とも全 く同 じこ とを させ て い る。 た だ ひ とつ だ け違 う点 は,実 験 群 に のみ 泳 法 の 力学 的 原 理 の 応 用理 解 に つ い て の講 義 を 充 分 に した とい う点 だ け で あ る。 そ の結 果 は,泳 法 の上 達, 遊 泳 ス ピー ドの増 加 ともに 実験 群 の方 に 有 意 が 認 め られ,力 学 的 原理 の 応 用

く 

理 解 の不 充 分 な者 の上 達 度 は劣 る と結 論 して い る。

この よ うな運動 技術 の 向上 を 目指 す トレー ニ ン グ とか らだ 作 りを 目指 した 身 体 運 動 とで は多 少 の差 異 は あ るが,そ の原理 ・効果 を知 った うえ で の 実践

は意 志 ・意 欲 とも関連 して楽 し く効 果 的 な もの とな るで あ ろ う。

1.運 動 の 効 果

̲̲ψ"一 一一(11)

身 体運 動 の経 験 が 体 力 向上 に い か に影 響 す るか は,人 文 研 究 第34輯 で本 学 々生 の1年 目運 動 部 員(18,19才)と 非運 動 部 員 の前 期 と後 期 の 比較 を報 告 して い るが,さ らに 運 動 経 験 の 頻度 が増 す に した が って 体 力 ・運動 能 力 の

(12)

向上 に どの よ うな影 響 を 及 ぼ す もの か,文 部 省体 育 局 の調 査 資料 か ら考 察 し て みた い と思 う。

表一2の 中 学 生 の運 動 能 力 テ ス トで は,ス ポ ー ツの経 験 年 数 の 頻度 が増 す に つ れ て 男 女 とも著 しい 向上 を示 して い る。 と くに女 子 生 徒 の経験3年 の者 で は,全 日制 高校 の16才 ・17才 を 除 い たす べ て の対 象 年 令 の 合 計 点 よ り高

くな って い る。

小野三嗣 健 康を もとめて(4)不 昧堂新 書

杉山 登,藤 江 体 力に 関す る調査研究(そ の1)

昭和40年 度体 力 ・運動能 力調査報告書 文 部省体育局

人文研 究第34輯 昭和41年3月

(9)

現代生活 と身体運 動(藤 江)

表一2ス ポー ツ経験年 数別両テス トの合 計点 (中学校生徒)

(57)

3

12才

13才

14才

1年

12

123

運動能力 テス トの 合 計 点

16.1 19.1

21.3 25.4 29.6

27.7 33.3 36.2 40.6

体力診断 テス トの 合 計 点

16.4 15.9 17.6 18.8 19.8 19.6 20.9 21.4 21.9

運 動能 力 テス トの 合 計 点

38.0 40.8

36。3 42.4 46.9

35.1 40。8 46.1 49.1

体力診断 テス トの 合 計 点

19.6 19.1 20.6 22.0 21.6

21.3 22.5 23.8 24.4

表 一3ス ポー ツ経験年 数別両テス トQ合 計点(全 日制 高等学校 生徒)

\ ≦ミ ミこ一

̲ \ 性

%奪 到

15才

16才

17才

1234

12345

123456

運動能力 テス トの 合 計 点

35.6 40。6

38。8 42.7 44.6

40.1 4・5.9 47.4 49.7 52.4 55.7

43.9 47.2 50.9 50.6 53.3 58.5 59.0

体 力診断 テス トの 合 計 点

21.8 22.5 22.4 23.3 24.5 22.9 23.9 24.1 24.5 24.7 25.8 23.7 24.7 25.1 25.0 25.7 26.1 26.1

運動能 力 テス トの 合 計 点

37.9 43.0 47.0 46.9 61.8

38.6 45.8 48.9 54.0 54.0 55。3

38.9 43.6 48.1 47.3 47.4 57.0 55.3

体 力診 断 テス トの 合 計 点

22.7 23.4 24.1 24.0 25.4 23.1 24.4 24.8 26.5 26.5 25.1 23.4 24.7 25.2 25.6 25.4 27.2 26.1

(10)

表一一4ス ポ ー ツ経 験年 数別両 テス トの合計点(教 員養成大学 の学 生)

》 ミ

令 酵 験

18才

19才

20才

1234567

12345678

123456789

運動能力 テス トの 合 計 点

40.2 43.8 44.2 49.0 48.2 51.2 53.2 61.8 41.0 45.8 47.3 45.0 52.1 54.7 57.2 58.2 68.6

40.7 44.8 43.8 47.5 48.2 53.7 57.0 53。4 55.3 63.1

体力診 断 テス トの 合 計 点

22.9 23.5 24.0 24.3 24.6 25.1 24.6 25.5 23.2 23.7 24.3 23.9 25.2 26.8 26.1 25.6 27.1

23.0 23.6 23.9 23.6 25.6 25.9 26.5 24.9 26.2 27.6

運動能 力 テス トの 合 計 点

35.0 39.4 37.7 44.1 49.2 46.3 49.5 40.7 33.5 40.6 41.8 44.3 43.9 44.7 52.5 64.0 60.7

32.4 38.9 41.8 41.3 46.2 48.3 55.8 55.0 67.5 46.0

体 力診 断 テス トの 合 計 点

22.8 23。9 23.9 24.2 25.6 25.3 26.4 26.3

23。0 23.9 24.9 24.4 25.6 26.6 26.4 24.5 26.3

23.0 24。1 24.5 24.4 25.4 25.9 26.9 29.0 28.3 22.0

体 力 診 断 テ ス トは元 来,体 力 の素 質 的 な もの を見 る立場 で 作成 され て い る の で,運 動 能 力 ほ どの影 響 は受 け な い もの とみ な され てい た が,13才,14才 で は 明 らか に経 験 者 の 合計 点 の 向上 が み られ,運 動 能 力 の 基礎 と考 え られ る 体 力 も運 動 能 力 の発 達 に つ れ て 向上 す る もの と考 え られ る。

(11)

現代生活 と身体運動(藤 江) (59) 表 一3の 高 校 生 の運動 能 力 テ ス トに お い て も中学 生 と同 じよ うな増 加 傾 向 を示 し,と くに経 験1年 後 の伸 びが 顕 著 で あ る。15才 女 子 の経 験4年 の もの は,高 校 時代 の最 高 の値 を示 し,こ の時代 が 女 子 の ピ ー ク と も考 え られ る。

体 力 診 断 テ ス トの面 で は,中 学 校 生 徒 と同様 な 現 象 が み られ,運 動 を は じ opた1年 後 の 向上 が顕 著 で あ る こ とは運 動 能 力 の場 合 と同 じで あ る。

表 一4の 教 員養 成大 学 々生 の場 合 も,全 般 的 に 中学 ・高校 生 と類 似 の傾 向 を示 し,大 学 に 入 学 してか らの ス ポ ー ツ経 験 が 体 力 や 運動 能力 に与 え る影 響 の大 きい こ とが 認 め られ る。

以 上,12才 〜20才 まで の 若 い年 代 に お け る 運 動経 験 の影 響 につ い て考 察 して きた わ け で あ るが,つ ぎに壮 年 期 の 日常 に お け る運 動 の実 施 状 況 に よる

(13)

体 力 に 及 ぼす 影 響 に つ い て,文 部 省体 育 局 の調 査報 告資 料 よ り考 察 してみ た い と思 う。

表 一5で は全 般 的 に 各 年令 と もA(週 に3〜4日 以上 運 動 を す る人)が い値 を示 し,運 動 の実施 頻度 の 高 い ものほ ど体 力 が優 れ て い る傾 向を示 して い る。 これ を種 目別 に 見 た場 合,30才 代 で は 急 歩,反 復 横 とび,垂 直 とび

表一5運 動の実施状 況別 にみた体力の比較

30〜34才 35〜39才 40〜44才 45〜49才 50〜54才 55〜59才

体 力診断 テス トの合計点

A BtC D

77.2 71.7 65.6 56.9 49.2 40.6

71.2 66。6 58.3 56.7 48.8 40.7

66.3 60.4 54,8 51.1 43.7 36.7

62.1 56.2 50,3 46.0 40.2 34.3

体力診断 テス トの合計点

A B C D

77.4 72.6 61.7 55.0 48.1 45.7

72.1 68.8 63.0 55.4 47.5 44.5

66.9 63.5 58,2 51.5 44.3 39.5

64.1 59.0 53.7 47.2 39.4 34・.3

t注 .A… … 週 に3〜4回 以 上 は 運 動 す る 人

B… … 週 に1〜2回 程 度

C… … 月 に1〜2回 程 度 D… … 全 然 運 動 を し な い 人

昭和44・45年 度 体力 ・運動能 力調査報告書 文 部省体育局 昭和46年3月

(12)

等 の 敏 捷 性,瞬 発 力,持 久 力 を 必要 とす る種 目で 大 きな差 を生 じて い る。 ま た,ジ グザ グ ・ ドリブル,握 力 の種 目で あ ま り 目立 った差 が な い の は技 術 的 要 素 の含 まれ る ドリブル は反 復 練 習 に よって 習得 され る もので あ り,握 力 等 の筋 力 は そ の部 位 に おけ る運動 刺激 の強 弱 に よって 異 な る点か ら考 え,日 常 にお け る運 動 刺 激 の質 と量 の差 が この よ うな結 果 を もた ら した もの と推 測 さ れ る。

40〜59才 の 女 子 で は,反 復 横 とび,垂 直 とび でAがBよ りも劣 った値 を 示 し,垂 直 とびで は45〜49才,55〜59才 の 女 子 を除 き,男 女 と もAがBよ

り劣 って い る。 この よ うに,こ の年 代 の特 徴 と して,敏 捷 性 とか 瞬 発 力 を 必 要 とす る種 目の劣 性 が 目立 つ反 面,持 久 性 を必要 とす る急 歩 で は 男 女 と もA が優 れ て い る点 で あ る。 この年 代 の運 動 種 目と して は歩 行 を伴 な う運動 な ど 一 人 で楽 しむ ス ポ ー ツへ の志 向が 強 く,さ らに被 トレーニ ン グ性 の 強 弱 が運 動 効果 の大 小 を 決 定 して い る もの と思 わ れ る。

と もあれ,C・Dの よ うに 「と きた ま」 運 動 をす る程 度 や 「全 然 しな い」

もの で は,体 力 の劣 性 は 明 らか で あ り,少 な くと も週3回1日 お き位 の 運動 は是 非 と も実 施 した い もの で あ る。

2.運 動 の逆 効 果

身 体 運 動 が 健康 ・体 力 の維 持増 進 に有 益 な もの で あ る こ とに つ い て述べ て きた が,身 体 運 動 の すべ て が 健康 上 有 益 な もの とは か ぎ らな い。 そ れ は 運動 中 に 突然 死 した とか,運 動 を した た め に 外 傷 を起 し,障 害 が起 きた とい う例 が 少 な くな いか らで あ る。

昭 和47年11月21日 大雪 山系 旭 岳 で雪 崩 遭難 した 北 大 山 ス キ ー部 の死 亡 事故 とか登 山 中 に 足 を 踏 み はず して の転 落 死 。 遊 泳 禁 止 区域 で の死 亡 。 浅 い プ ールや 海 に飛 び込 ん で の頭 蓋骨 々折,頸 椎 損 傷 。 ス キ ー練 習 中 に おけ る立 木 また は対 人衝 突 に よる頭 部 打撲 。 狭 い グ ラン ドで 多 くの 運動 クラ ブが 同時 に練 習 して いた た め に 円盤 や 硬球 ボ ールが 頭 に 当 った 。 グ ラソ ドの整 備不 良 の た め に発 生 した 鎖 骨 々折 ・捻挫 ・アキ レス腱 断 裂 な ど,こ の種 の 突発 死 や 外傷 を 含 め る と相 当 の数 に な るで あ ろ う。 しか し,こ れ らの 例 は あ る程 度 の

(13)

現代生活 と身体運動(藤 江) (61) 知 識 と注 意 力 お よび ル ール を守 る気 持 が あ れ ば 未然 に 防止 で き る ものば か り で あ り,運 動 中 に 発 生 した事 故 に は違 いな い が,運 動 そ の もの が健 康 を 害 す

る とい う範 ち ゅ うに は 含 まれ な い もの と思 わ れ る。

な お,基 礎 技術 の 未 熟,練 習 不 足 に よる外 傷 の比 率 も多 い が,こ れ も細 心 の注 意 と トレ・一ニ ン グの原 則 を 守 る こ とに よ って 大 半 は防 止 で きる もので あ

る。

問 題 は これ ら以外 の急 性 的 に 発 生 しやす い疾 病 ・異 常 に つ い てで あ る。 こ れ らの防 止 策 と して は,当 然 の こ となが ら事前 に 医師 の健 康 診 断 を 受 け,ど の程 度 の運動 に耐 え うる健 康 状 態 で あ るか 否か の診 断 が 必 要 で あ り,徐 々に あ らわ れ る障 害 の対 策 につ い て は,定 期 お よび臨 時 の健 康 診 断 に よ り疾病 異 常 の早 期 発 見 とそ の結 果 に基 づ く合理 的 な 事 後措 置 が と くに 肝 要 で あ る。 何 故 な らば,運 動 の経 験 を重 ね るに した が って徐 々に あ らわ れ る形 態 的 変 化 と そ の結 果 が と きに は不 可 逆 的 異 常 を 起 す 可 能性 を 占め てい るか らで あ る。 あ る疾 病 ・異 常所 見 に つ い て も,こ れ を禁 止 しな けれ ば な らない 場 合 と,か え って 適 度 な 運動(生 理 的 疲 労 の限 度 を 越 さな い程 度,と くに 中 高年 者 は翌 日 に 疲 労 が の こ らな い程 度)を した 方 が 早 く治 る場 合 が あ るか らで あ る。

水 泳 な どでは,脚 気 とか 心 臓 等 の器 質 的 変化 な どのあ る場 合,運 動 刺 激 の 増 加 と と もに 温 水 で あ れば 血 液循 環 の 負担 量 の増 大 な ど,相 乗 的 変化 に よ っ

て一 層 危険 率 の増 加 す る よ うな もの もあ る。

(14)(15)(16)

一 般 的 な運 動 障 害 と してあ げ られ て い る ものに は ,つ ぎの 三 つ が あ る。

消耗 性 変 化(退 行 性 変 化)

◎ 刺 激 が 強 す ぎ る と消耗 し,◎ 刺 激 が 弱 す ぎ る と萎 縮 し,◎ 適 度 の刺 激 は 成 長 を促 す 。 とい うのは 生物 学 的 法 則 で よ く知 られ て い るが,人 体 の あ らゆ る器 官 に も これ が 適 用 され,と くに これ が 慢 性 化 す る と障害 が発 生 す る とい

うもの で あ る。

小野 三嗣 トレー ニ ング施 設 とそ の運営(ト レー ニ ングのため の健康管 理) 第一 法規 出版KK

斎藤一 男,佐 藤 スポー ツ医学概 論 文 光堂

鈴木克也 スポ ー ツ科学講座(7)大 修館書店

(14)

例 と して,重 量 あ げ,砲 丸投 げ,器 械 体 操 の選 手 に よ く見 られ る鎖 骨 の 変 形 が あげ られ てい る。 鎖 骨 と第 一 助 骨 との接 触 摩擦 に よ る といわ れ,鎖 骨 に 削 られ た よ うな欠 損 部 を生 ず る。 第 ニ ケ ー ラー氏病 は扁 平 足 に な る よ うな条 件や 履 物 の影 響(ハ イ ヒール)が 強 い と考 え られ てお り,第 二 〜 第 四中 足 骨 々頭 が 押 しつ ぶ され た よ うな 形 に な り,10〜18才 の女 子 に 圧 倒 的に 多 い と い わ れ て い る。

増 殖 性 変 化(形 成 性 変 化)

主 に骨 系 統 に あ らわ れ る障 害 で,ス ポ ー ツ障 害 の大 部 分 は この 変 化 に属 す る もの で あ る とい わ れ てい る。 変化 の 部位 と して は,行 な う運 動 の種 目に よ って 相違 は あ るが,激 しく使 われ る関節 嚢 や 関 節 を固 定 す る靱 帯 と盛 ん に活 動す る筋 腱 の 付着 部 に あ らわ れ,こ の 変化 を変 形 性 関 節 症 と呼 ん で い る。

例 と して は,陸 上 競 技,野 球,サ ッカ ーな どの 上 手 な12〜17才 位 の健 康 な 男 子 に多 く,膝 関 節 の下 方(脛 骨 凸起 部)が 出張 っ て痛 み を訴 え る骨 端 線 の病 気 で,そ の場所 の血 液 循環 が悪 くな るた め と考 え られ て い るが,体 質 的 な もの も影 響 す る といわ れ る 「オ ス グ ッ ド・シ ュ ラ ッテル 氏病 」。 「肘 頭 の棘 形成 」 は 槍投 げ,剣 道,野 球,庭 球 な どに熟 練 した 人 に 多 く見 られ,こ れ に 付 着 して い る腱 が強 く牽 引 され る こ とに よ って起 る といわ れ てい る。

変 性 も起 り方 に よっ て は適 応 現 象 とな り,あ る場 合 は障 害 とな る とい われ る。 適 応 現 象 と解釈 した 方 が よい例 と しては,ボ ー トや 器 械 体 操選 手 の 手掌 に で きる タ コ とか,剣 道 高段 者 に 見 られ る肘 蓋 骨(膝 の膝 蓋 骨 に 相 当す る骨 が あ らわれ る)な どで,肘 を保 護 す る働 きを持 って い る といわ れ る。

障 害 とな る変性 と して は,激 し く筋 を使 用す る と,そ の筋 が 硬 くな る もの で,準 備 運 動 ・整理 運動 ・マ ッサ ージ な どを長 く怠 る と,こ の硬 さが 何 時 ま で も とれ ず,骨 の よ うに硬 いか た ま りとな って しま う ミオ ロ ーゼ と呼 ば れ る もの で,円 滑 な 筋 運動 が で きな くな り,痛 み を感 ず る よ うに な る。 甚 だ しい 時 に は筋 肉 に化 骨 形 成 が起 り,こ うな る と筋 と して の働 きを失 っ て しま うと

い われ る。

(15)

現代生活と身体運動(藤 江) (63) 以上 の よ うに,運 動 に は外 傷 ・障 害 が あ る程 度 つ き もの で あ る。 外 傷 ・障 害 の皆 無 を願 うな らば 全 く運 動 を しな い の が第 一 で あ る。 しか し,全 く運動 を しな い場 合 の弊 害 を 考 え るな らば不 可 抗 力に よる外傷 ・障 害 は非 常 に 少 な い もので あ る。 現在 の ス ポ ー ツ医学 で は今 だ解 決 で きな い問 題 もあ るが,現 時 点で の予 防 策 と して は,運 動 の実 施 に あた り,年 令,性,体 質,過 去 の 運 動 経 験,健 康 ・体 力 の現 状 把 握,運 動 適 性 な どの 面 で充 分 な配 慮 が な され, 適 切 な 計 画 ・管理 と運 動 処 方 お よび各 自の摂 生 と 自覚 に よっ てそ の効 果 を も た ら しこれ が 外傷 ・障 害 の防 止 に もつ な が る もの と考 え る。

W身 体 運動 の生 活 化

1.生 活 化 の 条件 と態 度

日常 生 活 お よび職 場 で 使 わ れ る身 体 運 動 は多 種 多様 で あ り,そ の運 動 量 も また さま ざ まで あ る。

運 動 を 生活 化す るた め の基 底 とな る もの は,そ れ に対 す る生 活 意 識,生 水 準,労 働 時 間 な どで あ る。

わ が 国 に お け る生 活 水 準 は 決 して 高 い とは い え ない が,製 造 業 に おけ る賃

(17)

金 は年 を 追 って上 昇 してお り,生 活 費 の中 で 占め る教 養 娯 楽 費 もス ポ ーツの 観 覧 料 の 支 出が 目立 って増 加 して い るな ど,ス ポ ー ツに対 す る関 心 の 高 ま り を 見 せ て い るが,積 極 的 に 実施 しよ うとす る者 は30%〜42%程 度 で 必 ず し

(18)(19)(20)

も多 くな い。

しか し,今 後 の週 休2日 制 の普 及 な どに よ り,さ らに スポ ー ツへ の 欲 求 は 急 激 に 高 ま る もの と予 想 され る。

労 働 態様 の 変化 に よる運動 不足 は必 然 的 な もの と もい え る。 文 明の 発 達 が もた ら した生 活 革 新 と もい わ れ る家事 労 働 の減 少,余 暇 時 間 の増 大 は 好 ま し い状 態 で あ り,要 は この余 暇 を健 康 的 な 内容 の充 実 した もの とす るた め に は

⑰ ⑱ 野 口義 之 新体育学講座 遣遙書院

栗本義彦 体 力づ くりへ の道 第 一法規 出版KK

⑫0松 坂弘康 市民 のスポー ツ活動 に関す る一 考察 日本体育学 会北海道支部大 会 昭和47年12月24日

(16)

如 何 に す べ きか が問 題 で あ り,そ れ に は,そ れ ぞ れ の状 態(性 別,年 令,健 康 状 態,職 業)に お い て身 体 運 動 を生活 の 中 に位 置 づ け てゆ く こ とが 重要 な の で あ る。

2.運 動 の処 方

運 動 の処 方 を す る際 に は,そ れ ぞれ 個 人 差 が あ るの で一 概 に規 定 で きな い が,少 な くと も私 た ち が健 康 な 日常 生 活 を送 るた め に必 要 な運 動 量 を 知 っ て お く必要 が あ る。

ヘ ッテ ン ガ ー(Hettinger,T.)ら の 上肢 の静 的 作 業 の 実験 で は,負 荷 量 が 最 大 筋 力 の%〜%以 下 で はそ の 効果 は殆 ん どな く,%以 上 の 負荷 量 の必 要

 の

性 を唱 え てい る。

小 野 氏 は エ ネル ギ ー代 謝 率(RMR)か ら最 少必 要 運 動 量 と して500RM R分 必 要 であ る と し,ど ん な人(男 女 差,身 体 の大 小,体 質 に 関 係 な く)で も1日 に500RMR分 の運 動 また は 労 働 を しな けれ ば,寿 命 を 短 縮 した り,

(22)

病 気 に な っ た りす る と い っ て い る 。

こ の 説 に よれ ば,家 庭 の 主 婦 が 炊 事,後 片 づ け,掃 除,洗 濯,ア イ ロ ン か け,シ ョ ッ ピ ン グ,フ トン の あ げ お ろ し等 で 使 わ れ る エ ネ ル ギ ー代 謝 率 を 算 出 して み る と,お よそ460〜470RMR分 位 で 最 少 必 要 運 動 量 に も足 らず,

こ の 不 足 分 は 他 の 身 体 運 動 に よ っ て 補 わ な け れ ば な らな い と い う こ とに な る 。 補 う場 合 の 目安 と して は,ラ ジ オ 体 操 で は 男 子 で2〜5RMR分,女 で3.8〜4.5RMR分 。 ス キ ー を1時 間 す れ ば270RMR分 。1分 間 に70m の 速 さ で30分 間 の 歩 行 を す れ ば66RMR分 。 同 じ歩 行 で も1分 間 に50m の 速 さ で30分 間 歩 い た 場 合 は48RMR分 と い う よ うに,同 じ種 類 の 運 動 で

も方 法 や 動 作 の 強 弱,ス ピ ー ド等 の 条 件 に よ っ てRMRの 値 が 変 化 す る こ とを 知 っ て お か な け れ ば な らな い 。 い う まで も な く500RMR分 と い う値 は 生 存 に 必 要 な 最 少 運 動 量 で あ る の で,健 康 増 進 ・体 力 の 向 上 を 目指 す 人 々は 更 に 他 の 身 体 運 動 に よ っ て 補 わ な け れ ば な らず,栄 養 摂 取 量 とエ ネ ル ギ ー消

野 口義之 新体育学講座㈲ 迫遙書院 小野三嗣 鰹康をもとめて④ 不昧堂新書

(17)

現代生活と身体運動(藤 江) (65) 費 量 のつ り合 った運 動 処 方 が 肝 要 で あ る。

体 質 的 な面 で と くに 注 意 を 要 す る もの は,運 動 を す る と疲 れ て食 欲 が減 少 し,何 に も しな い と 食 欲 が 出ず,ト レ ーニ ソ グ して も 一 向 に 力 がつ か な い

「無 力性 体 質 」 とい わ れ る もの と,こ れ とは逆 に 激 しい運 動 を す る とす ぐパ テ て しまい,安 静 に して い るほ ど食 欲 が 充進 す る とい う 「肥 満型 体 質 」 の運 動 処 方 で あ るが,前 者 は 健康 の た め の 最少 限 の運 動 量 を守 り,後 者 は 比較 的 軽 い運 動 を長 時 間 続 け る こ とが 必要 と され る もの で あ るが,今 後 の ス ポ ー ツ 医 学 の 開発 と と もに 更 に 研 究 を 進 め な けれ ば な らない 問 題 で あ る。

か らだ作 りの方 法 と して は,身 体 の調 和 的 発 達 を 目指 した 「全 面 的 か らだ 作 り」 と,ス ポ ー ツ選 手 に 必 要 な身 体 的 能 力 を高 め よ う とす る 「専 門的 か ら だ 作 り」 の二 つ に分 け られ るが,本 稿 で は 「全 面 的 か らだ 作 り」 とい う観 点 か ら,と くに どの よ うな人 々に も容 易 に で きる種 目に つ い て述べ る こ とにす る。

運動 の 適性 は先 天 的 素 因 と後 天的 環 境 に よっ て左 右 され るが,運 動 選 手 を 志 向す る場 合 と違 うの で先 ず 第 一 に多 くの種 目を経 験 してみ る こ とで あ る。

そ の 中 で 自分 の好 み に 合 った 運 動 を発 見 し,そ れ に 精 進 す る ことで あ る。 練 習 回 数 の 増加 に と もない 体 力 ・技術 が 向上 し,そ れ に した が って運 動 適 性 も あ る程 度変 化 す る もので あ るか ら,こ れ を ひ とつ の基 盤 と して他 の適 性 範 囲 を 広 め て ゆ くこ とが 望 ま しい 。 と くに青 少 年 期 に あ って は,全 身 の調 和 的 発 達 とい う観 点 か らこれ を志 向す る必要 が あ り,ひ とつ の種 目に こだわ る こ と な く,多 くの形 の変 った 種 目を 経験 す る こ とが肝 心 で あ る。

歩 行 運 動

歩 く場 所 さえ あれ ば,何 時 で も,身 体 の強 弱 を とわ ず 誰 れ で もで き,し か も特 別 な 用 具 や 費用 が か か らない とい う点 か ら推 奨 され,そ の運 動 量 は随 意 筋 の60〜70%を 動 か す とい わ れ てい る。 と くに 中 高 年 層 に お け る運 動 不 足 の人 々に は 適 した運 動 とい え る。 この 運動 も歩 行条 件(平 地,坂 地,歩 巾, ス ピー ド,負 荷物 の有 無)に よって 運動 量 が異 な る の で年 令,性,体 力 に 応

じた 条 件 に よって運 動 量 を設 定 しなけ れ ぽ な らな い。 と くに これ か ら始 め よ

(18)

うとす る中 高年 者 で あれ ば,毎 分70〜80m位 のペ ー スで5分 位 歩 くこ とか ら開始 し,徐 々に ス ピー ドと時 聞 の増 加 を考 え てゆ くことが賢 明 で あ る。

青年 期 の場 合 で は,歩 行 運動 はや や 運 動 量 が 弱 い とい う点 もあ るの で走 運 動 を進 め た い。 走 運 動 の効 果 は,血 液 循 環 の面 で良 好 に な る こ とで あ る。 こ れ は単 に 酸 素 が 組 織 の 末端 に まで運 ば れ るだ け で な く,栄 養 物 の供 給,老

(23)

物 の 除 去 が ス ム ー ズ に 行 な わ れ,し た が っ て 組 織 細 胞 の 疲 労 や 老 化 を 防 ぐの に 役 立 つ と い わ れ て い る。

処 方 に つ い て は 各 種 の 説 が あ る が,イ ソ タ ー バ ル ・ トレ ・一ニ ソ グ の 処 方 に お い て,ゲ ル シ ュ ラ ー は 活 動 期 の 運 動 の 強 さ,距 離 と時 間 を 能 力 の 差 と無 関

(24)

係 に 細 か く指 定 し,こ れ らの 運 動 刺 激 に よ っ て 心 拍 数 が180程 度 に 高 ま る と して い る。

松 井 氏 は テ レ メ ー タ ー で 運 動 中 の 心 拍 数 を 測 定 し,100m〜400mの 距 離 を 走 り終 る 頃,呼 吸 が 苦 し くな り 心 拍 数 が 選 手 の 場 合 で160〜180,・ 一般 の

(25)

人 で あ れ ば150〜170に な る位 の ペ ースで 走 る と よい と して い る。

運 動施 設 が な く,ま た,ス ポ ー ツを や る時 間 が少 な い人 々のた め の最 も容 '易 な 「か らだ作 り」 の ひ とつ と して あ げ る こ とがで き る

。 体 操 は 誰 で も,何 時 で も,何 処 で も手軽 に で き,運 動 形 式 も 自由で しか も 自分 に 必 要 な だ け の 運 動 量 を 適 当 に と る こ とが で きる とい う特 徴 を も って い る。

生理 的 に は筋 肉 を支 配 す る 中枢 神経 に お け る変化 と身 体 諸 関 節 の 可動 範 囲 を広 め る とい う点 で 効果 が あ る。

しか しな が ら,そ の 効果 は継続 的 に続 け,し か もあ る程 度 正 確 な動 作 に よ って得 られ る ことは他 の運 動 や トレー ニ ソ グ と同様 で あ る。 つ ぎに 家庭 や職 場 にお い て多 少 の 余暇 時 間 が あれ ば 手 軽 に で き る と思 われ る種 目の一 例 を あ

げ る こ とに す る。

小野三嗣 健康をもとめて(4)不 昧堂新書

小野三嗣 健康をもとめて(4)不 昧堂新書

(19)

現代生活 と身体運動(藤 江)(67)

頸 の 運 動

椅 子 に 座 り,机 に 向 った ま まの姿 勢 で,頸 を 前後左 右 に まげ 回す 運 動 。 各 8呼 間 位。

@背 伸 び の 運動

④ の 姿勢 か ら,両 手 を 頭 上 に 伸 ば して組 み,手 の平 を返 して真 上 に 突 きあ げ る よ うに して背 中 を伸 ば し,大 き く深 呼 吸す る。2〜3回 位 。

腕 の 回 旋

椅 子 に 座 った姿 勢か ら,椅 子 ご と右 を 向 き,右 腕 を 前 か ら16呼 間,後 か ら16呼 間 回す 。 右腕 が 終 った ら反 対 を 向 い て左 腕 の 回 旋 を す る。

e上 体 の後 反

椅子 の背 を横 に して 座 り,机 の脚 の横 木 に 両 足首 を か け,両 手 を後 頭 部 ま た は胸 の前 で組 み,上 体 を 後 ろに反 らす 。5秒 間 位 で も とに戻 し,5回 位 繰 返 す。

そ の場 か け足

両 手 を 開 い て腰 の前 に 出 し,か け足 の 際 に 股 がそ の手 に 触 れ る まで 引 きあ げ る よ うにす る。10秒 〜30秒 。

腕 の 屈 伸

机 か ら80〜90㎝ 位 離 れ た 地 点 よ り 机 に 両 手 をつ き,腕 の 屈 げ 伸 しを す る。20回 以上 ら くに で き る よ うに な った ら,ソ フ ァー等 の 高 い所 に 両 足 を あげ,頭 の 位 置 を低 く した姿 勢 で や って み る。

片 脚 屈 伸

机 の前 に 立 って右 を 向 き,左 手 を机 の 上 に の せ て 支 え と し,左 膝 を徐 々に 屈 げ な が ら同時 に右 脚 を 床 に つ け な い よ うに 前 に 伸 ば し,左 膝 は半 分 位 屈 げ た ら伸 ば す よ うに す る。 左 脚 が 終 った ら向 き を変 え て右 脚 の屈 伸 を行 な う。

最初 は左 右 各1回 位 か ら徐 々に 回数 を増 し,膝 の 屈 げ 方 も半 屈 か ら全 屈 へ と 負 荷 を 増 して ゆ くと よい。

ス ポ ー ツ

運 動 刺 激 に よって 現 われ る形 態 お よび機 能 上 の 変化 は,襖 刺 激 性 と刺 激 の

参照

関連したドキュメント

Large sound occurred in two cases: when healds collided with the heald bar vertically near the upper dead point of shedding motion and when healds collided at random by rebounds

70年代の初頭,日系三世を中心にリドレス運動が始まる。リドレス運動とは,第二次世界大戦

本プログラム受講生が新しい価値観を持つことができ、自身の今後進むべき道の一助になることを心から願って

キャンパスの軸線とな るよう設計した。時計台 は永きにわたり図書館 として使 用され、学 生 の勉学の場となってい たが、9 7 年の新 大

救急現場の環境や動作は日常とは大きく異なる

Exploring organizational management techniques and development of primary school outdoor activity

生活環境別の身体的特徴である身長、体重、体

[r]