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芝浦工業大学工学部建築工学科 2010年度卒業論文・卒業設計梗概

研究指導:赤堀忍 教授

Hiroki OTSUKA

1

grand jete

- 脱美術館的志向から考える美術館 -

Keywords

脱美術館的志向 現代アート 第4世代美術館

K07025

大塚 弘樹 ホワイトキューブ 社会性 公共性

1. Prologue

展示空間と美術作品は極めてパブリックな存在であり、

それらを取り巻く社会環境の変化によって、常に変化し 進化を遂げてきた。しかし近年、美術作品から社会性・

公共性は失われてしまった。

2

.研究背景

2.1

展示空間と作品の歴史

建築家・磯崎新は「構造主義論」の中で美術館を大き く3つの世代に分類している。

2.1-1 第 1世代

第1世代は、16世紀から17世紀にかけてヨーロッパの 王侯貴族が競って設けた「ヴンダーカマー」や「ステュ ディオーロ」であり、ルーブル美術館がその典型的な例 である。このころの展示方法はいかに余白を残さず作品 で埋め尽くせるかが重視された過密な展示方法であった。

また展示対象は芸術作品のみではなく自然物なども含ま れていた。

2.1-2 第 2世代

それまで壁面全体をおおっていた作品も時代に沿って

1列に並べ替えられ、観客は順路に沿って部屋をめぐる

だけで美術の流れが追えるようになる。こうして美術館 の展示は、面的ディスプレイから線的ディスプレイへと 移行した。こうした手法を極限まで追求したのが1929 年MoMAの採用した「ホワイトキューブ」であり、第2 世代の代表的な例である。抽象芸術の台頭もあり、20 世紀の作品は「ホワイトキューブ」に展示されることを 前提として製作されるようになった。

2.1-3

3

世代

1960年代に近代アートから現代アートへと移ると、

ホワイト・キューブでは成立しなくなった。現代アート においては作品は歴史や用途など場所の特性を読み取り、

その場所に合わせてつくられる。そこで、特殊な場所性 を持った展示空間を持つ美術館が誕生した。そのような 美術館が地中美術館に代表されるような第3世代である。

写真1 第1世代の展示空間(左) 写真2 第2世代の展示空間(中央)

写真3 第3世代の展示空間(右)

2-2 問題

2.2-1

脱美術館的志向

そもそも美術とは、それが「芸術」として多くの人の 目にさらされる限りパブリックな存在といえる。人々の 共感を得る作品はパブリックな価値があるからこそ「芸 術」と呼ばれ、大切にあつかわれてきたといえる。つま り、それまで権力者に占有されていた美術品は、美術館 のなかに保護され一般公開されていたのである。その意 味で美術館はパブリックな存在であるべきである。しか し、美術館の権威的で特殊な空間が美術館そのものを特 殊な存在とし、美術品の社会性・公共性は失われた。近 年、「瀬戸内国際芸術祭」や「六本木アートナイト」の ような屋外でのインスタレーション企画が流行している 背景には芸術家の美術館への反発があり、脱美術館的志 向のあらわれといえる。

これは新たな作品展示の方法と考えられるが、美術に 関心を持つ人が、作品を鑑賞するためにその場所に訪れ るいう状況は以前のままである。

2.2-2 第 3世代美術館における三巴

第3世代美術館において建築家は美術品に最適な空間 を提供しようとし、芸術家は自らの作品がよりよく見え

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芝浦工業大学工学部建築工学科 2010年度卒業論文・卒業設計梗概

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る展示空間を求める。しかし、それだけでは美術館の運 営は成立せず、建築家・芸術家・美術館の三者の立場の みが考慮され本来重要視されるべき鑑賞者の立場が考慮 されていない。

3.研究目的

脱美術館的志向の背景、第3世代美術館における現状 から社会との密接な関係を持つ第4世代美術館を提案す ることで、美術の社会性・公共性を取り戻し、美術に対 する関心を高めることで美術と美術館が相互に関係しあ い、今後さらに発展を目指す

4.設計趣旨

これまでの美術館は美術に関心のある限られた一部の 人が美術館を目的として訪れる場であった。本計画では 美術館を最終目的地としてのみ捉えるのではなく、美術 に関心を持たない人も興味を持ち、美術館がより身近な 存在となるよう計画する。

また、芸術家の求める美術館から失われた社会性・公 共性は作品と鑑賞者の関り方に変化を与えることで取り 戻すことができると考える。そこで第3世代美術館にお ける3つの立場に新たに「鑑賞者」という立場を考慮す る。鑑賞者と作品の出会い、鑑賞する視点、作品の展示 空間が訪れるたびに変化し常に新たな美術体験のできる 美術館を計画する。

5.敷地

東京都江東区青海

2

丁目

(

現 青海南ふ頭公園

)

敷地面積

4,5404㎡

写真4 敷地周辺航空写真

敷地は東京湾

13号埋立地(通称:お台場)に位置する臨

海副都心開発の基本方針4)により定められた土地利用に

よって開発された公園で、ゆりかもめ、都バスが通りア クセスの良い場所である。

現在、この公園は利用者が非常に少ない。人々から見 放された都市の隙間であり周辺とは大きな差を持った敷 地である。しかし、敷地周辺は現在も開発が続き、今後 さらに発展することが期待される地域であるため公園の 利用者も増加することが予測される場所である。

さらに同基本方針により、質の高い文化活動の展開を 目指しており、様々な文化施設があるが周辺に美術館は 存在しない。この場所に新たな美術館を計画することで 臨海副都心開発の基本方針が目指す都市に近づけること ができると考える。

6

.設計操作

敷地周辺の敷地では1つの街区に対し1つの大きなボ リュームをもつ建物が街区の形に合わせて建てられてい る。そこでまず、敷地の形に添った幅16メートルの1つ の線状のボリュームを敷地全体を使い切るよう配置する。

そのボリュームを来館者の流れや周辺敷地状況による 景観などに合わせて分断、移動させることでこの敷地の 場所性を強める。

かみ合ったボリュームにそれぞれの展示空間の場所性 に合わせた壁の配置や高さの操作を行い、多数の鑑賞順 路の分岐、鑑賞する視点を生みだす。その際、美術館全 体に1つの大きな流れ持たせ、外部との関りを曖昧に持 たせる。

7

Epilogue

美術の社会性・公共性を取り戻すことは人々の美術に 関する関心を高めることにつながり、文化レベルの向上 につながる。文化レベルの向上は、より質の高い生活水 準の社会へと成長するきっかけとなる。

参考文献

1) artscape http://artscape.jp/index.html

2)

工藤安代:パブリックアート政策 -芸術の公共性 とアメリカ文化政策の変遷-,2008年6月 第1版

3) 10+ 1 web site http://tenplusone.inax.co.jp

4)

東京都港湾局HP http://www.kouwan.metro.tokyo.jp

(3)

plan from sky scale: 1/2000

scale: 1/3000 section

Tokyou Bay

Station

Container Yard

scale: 1/2000

puls 1000 plus 4500 plus 6500 plus 12000

diagram

1st 周辺敷地状況より敷地全体に

   幅 16m のボリュームを配置2nd ボリュームの分断・移動を行い、

      敷地の場所性を強める

3rd 壁の配置・高さの操作を行い多数の鑑賞順路の分岐、鑑賞する視点を生みだす

(4)

NE elevation

scale: 1/2000

参照

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